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【発明の名称】 クラッチ機構付き車両の制御装置
【発明者】 【氏名】田中 浩八

【要約】 【課題】ドライバビリティを向上することのできるクラッチ機構付き車両の制御装置を提供する。

【解決手段】車両減速中にECU30は、トルクコンバータ11に設けられたロックアップクラッチ機構12を作動させ、エンジン10と無段変速機14とを直接的に連結し、燃料カットを実施する。ECU30は、そのロックアップクラッチ機構12が作動している車両減速中にエアコンディショナ(A/C)用コンプレッサ21の作動要求がなされたとき、ロックアップクラッチ機構12の解除を指令するとともに、同クラッチ機構12の解除が完了するまでの間、作動要求に応じたA/C用コンプレッサ21の作動を遅延させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】エンジンと変速機とを断接するクラッチ機構を車両減速中に作動させるクラッチ機構付き車両の制御装置において、前記車両減速中の前記クラッチ機構の作動時においてエアコンディショナ用コンプレッサの作動要求がなされたときに、前記クラッチ機構の解除を指令するクラッチ機構解除指令手段と、その指令解除手段の指令に基づいて前記クラッチ機構の解除されるまでの期間、前記作動要求に基づく前記エアコンディショナ用コンプレッサの作動を遅延した後で、同エアコンディショナ用コンプレッサを作動させるコンプレッサ制御手段とを備えることを特徴とするクラッチ機構付き車両の制御装置。
【請求項2】請求項1に記載のクラッチ機構付き車両の制御装置において、前記クラッチ機構解除指令手段は、車速が所定の速度以下のときにのみ、前記エアコンディショナ用コンプレッサの作動要求に応じて前記クラッチ機構の解除を指令するものであって、前記コンプレッサ制御手段は、前記車速が前記所定車速以下にないときには、前記クラッチ機構の解除に拘わらず前記エアコンディショナ用コンプレッサを作動させるものであることを特徴とするクラッチ機構付き車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンと変速機とを断接するクラッチ機構付き車両の制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えばエンジンと変速機との間にロックアップクラッチ付きトルクコンバータが介設された車両などのように、エンジンと変速機とを断接するクラッチ機構付きの車両が知られている。こうした車両では、所定条件下でクラッチ機構を作動して、エンジンと変速機とを直接的に接続するロックアップを実行することで、トルクコンバータでの流体すべりによる動力伝達効率の低下を抑制するようにしている。
【0003】また、そうしたクラッチ機構付き車両において、例えば特開平8−290730号公報にみられるように、車両減速時にクラッチ機構を作動させた状態を保持するようにすれば、駆動輪の回転が直接的にエンジンへと伝達されて、同エンジンを稼動せずともその回転が維持されるため、燃料カット領域を拡大して、燃費向上を図ることができる。
【0004】特に、変速比を連続的に変更することのできる無段変速機(CVT)を備える車両では、クラッチ機構を作動させた状態のままでの変速が可能なため、より長期間に亘って車両減速中のクラッチ機構の作動を保持し、燃料カット領域を更に拡大することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、エアコンディショナの使用中は、エアコンディショナ用コンプレッサの作動のため、エンジンの回転負荷が増大する。このため、車両減速中のクラッチ機構が作動された状態で、エアコンディショナ用コンプレッサの作動要求がなされ、同コンプレッサが作動されれば、一時に減速加速度が増加して、ショックが発生する。
【0006】そこで、エアコンディショナ用コンプレッサの作動要求がなされると、クラッチ機構を解除し、減速加速度の増加を回避することが考えられる。しかしながら、上記作動要求とともにクラッチ機構の解除を指令するようにしたとしても、クラッチ機構の動作にはある程度の遅れがあるため、クラッチ機構が解除されないまま、コンプレッサが作動を開始してしまう。そのため、上記作動要求とともにクラッチ機構の解除を指令したとしても、やはり減速加速度が増加してしまい、ショックの発生を回避することはできない。
【0007】特に、低車速時には、再加速時の動力性能の確保のため、変速比がロー側に設定されており、上述のエアコンディショナ用コンプレッサの作動に伴う減速加速度の増加が大きく、そうしたショックの発生が運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0008】本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ドライバビリティを向上することのできるクラッチ機構付き車両の制御装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。請求項1に記載の発明は、エンジンと変速機とを断接するクラッチ機構を車両減速中に作動させるクラッチ機構付き車両の制御装置において、前記車両減速中の前記クラッチ機構の作動時においてエアコンディショナ用コンプレッサの作動要求がなされたときに、前記クラッチ機構の解除を指令するクラッチ機構解除指令手段と、その指令解除手段の指令に基づいて前記クラッチ機構の解除されるまでの期間、前記作動要求に基づく前記エアコンディショナ用コンプレッサの作動を遅延した後、同エアコンディショナ用コンプレッサを作動させるコンプレッサ制御手段とを備えるようにしたものである。
【0010】この構成では、車両減速中のクラッチ機構の作動時に、エアコンディショナ用コンプレッサの作動要求がなされると、クラッチ機構解除指令手段によってクラッチ機構の解除が指令されるようになる。そして、コンプレッサ制御手段によって、上記作動要求に基づくエアコンディショナ用コンプレッサの作動が、クラッチ機構が解除されるまでの期間、遅延されるようになる。すなわち、この構成では、クラッチ機構が解除された後、エアコンディショナ用コンプレッサの作動が開始されるようになる。そのため、車両減速中にクラッチ機構の作動が保持された状態でエアコンディショナ用コンプレッサが作動することによる減速加速度の増大が回避されるようになる。
【0011】したがって、この請求項1に記載の発明によれば、エアコンディショナ用コンプレッサの作動に伴う減速加速度の増大によるショックの発生が防止されるため、ドライバビリティを向上することができるようになる。
【0012】また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のクラッチ機構付き車両の制御装置において、前記クラッチ機構解除指令手段は、車速が所定の速度以下のときにのみ、前記エアコンディショナ用コンプレッサの作動要求に応じて前記クラッチ機構の解除を指令するものであって、前記コンプレッサ制御手段は、前記車速が前記所定車速以下にないときには、前記クラッチ機構の解除に拘わらず前記エアコンディショナ用コンプレッサを作動させるようにしたものである。
【0013】この請求項2に記載の構成では、上記クラッチ機構解除指令手段は、車速が所定の速度以下のときのみにクラッチ機構の解除を指令するようになり、所定の速度以上では、エアコンディショナ用コンプレッサの作動要求に拘わらず、クラッチ機構の作動が保持されるようになる。また、コンプレッサ制御手段は、車速が所定の速度以上のときには、クラッチ機構の解除に拘わらずエアコンディショナ用コンプレッサを作動させるようになる。
【0014】上述したように、低車速では、再加速時の動力性能を確保すべく変速比がロー側に設定されるため、減速加速度の増加も大きく、上述のエアコンディショナ用コンプレッサの作動に伴うショックがドライバビリティに与える影響も顕著となる。こうした低車速時にのみ、エアコンディショナ用コンプレッサの作動要求に伴うクラッチ機構の解除を実施しても、十分にドライバビリティを向上することができる。また、ドライバビリティに与える影響の小さな高車速時には、上記作動要求に拘わらずクラッチ機構の作動を保持するようにすれば、燃料カット領域の縮小も回避することができる。
【0015】したがって、この請求項2に記載の発明によれば、燃費性能の悪化を避けながらも、ドライバビリティを向上することができるようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明のクラッチ機構付き車両の制御装置を具体化した一実施形態について、図を参照して詳細に説明する。
【0017】図1は、本実施形態にかかるクラッチ機構付き車両及びその制御装置を示す概略構成図である。まず、この車両においてそのエンジン10と駆動輪17との間の動力伝達を司る動力伝達系の構成を、同図1に基づき説明する。
【0018】同図1に示すように、エンジン10の出力軸10aは、トルクコンバータ11に連結されている。このトルクコンバータ11は、入力された回転を流体(オイル)を媒介して伝達する流体継ぎ手の1種であり、流体を媒介することによってエンジン出力軸10aの回転トルクを適宜に調整して駆動輪17側へと伝達するようにしている。
【0019】このトルクコンバータ11は、ロックアップクラッチ機構12を備えている。このロックアップクラッチ機構12は、油圧制御回路19による油圧制御に基づき作動して、トルクコンバータ11のエンジン10側と駆動輪17側との直接的な動力伝達を可能としている。
【0020】また、こうしたロックアップクラッチ機構12を備えるトルクコンバータ11の駆動輪17側は、車両後進時にエンジン10側から入力される回転の方向を反転する前進後進切替機構13に連結されており、その更に駆動輪17側は、変速を行うための変速機14に連結されている。したがって、ロックアップクラッチ機構12の作動/解除によって、エンジン10と変速機14とが断接されるようになる。
【0021】そしてそのロックアップクラッチ機構12を作動して、上記トルクコンバータ11の流体(オイル)を媒介しない、エンジン10と変速機14との間の直接的な動力伝達を許容する、いわゆる「ロックアップ」を実行するようにしている。そうしたロックアップを実行することで、トルクコンバータ11内での流体すべりによる動力伝達効率の低下を好適に回避し、エンジン10の燃費向上を図ることができるようになる。
【0022】本実施形態の車両では、上記変速機14として、変速比を連続して無段階に変更することのできる無段変速機(CVT)が採用されている。このCVT14は、互いに巻掛けられたベルト14aによって駆動連結された駆動プーリ14bと従動プーリ14cとを備えている。それら駆動及び従動プーリ14b、14cは、油圧によってベルト14aの挟み幅を変更することができるように構成されている。そして、上記油圧制御回路19による油圧制御に基づいて、両プーリ14b、14cのベルト14aの挟み幅を変更し、ベルト14aの巻き掛け半径を可変とすることで、連続的に変速比を変更するようにしている。
【0023】また、このCVT14の駆動輪17側は、エンジン10側からの回転を減速して伝達する減速機構15、及び左右の駆動輪17の差動を許容するためのディファレンシャル(差動機車装置)16を介して駆動輪17に連結されている。
【0024】こうして、エンジン10と駆動輪17との間では、ロックアップクラッチ機構12を備えるトルクコンバータ11や、CVT14等を通じて動力伝達が行われるようになる。
【0025】一方、エンジン10の出力軸10aは、エアコンディショナ(「A/C」)の冷媒を圧縮して、空気を冷却するA/C用コンプレッサ21にも伝達可能となっている。ここでは、エンジン10の出力軸10aの回転を、巻掛伝達機構20を介してそのA/C用コンプレッサ21に伝達するようにしている。そして、そのエンジン出力軸10aとA/C用コンプレッサ21との駆動連結を電磁クラッチ22によって選択的に断接することで、同A/C用コンプレッサ21の作動/停止が切り替えられる。
【0026】続いて、こうしたクラッチ機構付き車両において、上記ロックアップクラッチ機構12やCVT14などの駆動伝達系の制御や、エンジン10の制御、A/C用コンプレッサ21の制御を司る同車両の制御系の構成について、同図1に基づき説明する。
【0027】本実施形態にかかるクラッチ機構付き車両では、上記の制御系として役割を司る電子制御装置(ECU)30を備えている。このECU30は、燃料噴射制御や点火時期制御などのエンジン10の制御を司るエンジン用ECU、油圧制御回路19の作動制御に基づくCVT14やロックアップクラッチ機構12などの制御を司るCVT用ECU、A/C用コンプレッサ21の作動/停止を行うなどのA/C制御を司るA/C用ECUなどを含む電子回路群によって構成されている。
【0028】このECU30の入力ポートには、車両の走行速度(車速「SPD」)を検知する速度センサ33や、アクセルペダル35aの踏み込み量(「ACCP」)を検知するアクセルセンサ35をはじめとして、車両やエンジン10の運転状態を検知する各種センサの出力が入力される。また、その入力ポートには、上記A/C用コンプレッサ21の稼動に伴い冷却された冷媒が流通するエバポレータ(図示略)の内部温度(冷却温度「TE」)を検知する温度センサ34の出力も入力される。
【0029】一方、ECU30の出力ポートには、エンジン10の制御にかかる各種アクチュエータや、上記油圧制御回路19、A/C用コンプレッサ21などを駆動する各駆動回路などが接続されている。そしてECU30は、上記各種センサの出力に基づき、燃料噴射などのエンジン10の運転制御、油圧制御回路19を駆動制御してのCVT14の変速制御やロックアップクラッチ機構12の作動制御なども実行する。更に、ECU30は、エアコンディショナ制御の一環として、上記A/C用コンプレッサ21の作動制御を実行する。
【0030】このA/C用コンプレッサ21の作動制御は、上記温度センサ34の検知する冷却温度TEに基づき行われる。A/Cの使用中、ECU30は、冷却温度TEが所定温度(例えば4℃)以上に上昇したときに、電磁クラッチ22を連結してA/C用コンプレッサ21を作動する。また、別の所定温度(例えば3℃)以下まで低下したときに、電磁クラッチ22を停止してA/C用コンプレッサ21の作動を停止する。こうしてECU30は、冷却温度TEが所定の温度範囲(上記例では3〜4℃)内に保持するようにA/C用コンプレッサ21の作動制御を行っている。
【0031】なお、A/C用コンプレッサ21の作動が開始されれば、その分負荷が増大するため、同コンプレッサ21の作動開始とともに、出力トルクを増すようにエンジン10の制御が行われる。ただし、エンジン10の出力トルクの増大には、若干の応答遅れがある。そのため、ここではA/C用コンプレッサ21の作動に際して、ディレイ時間DT0を設けるようにしている。そして、A/C用コンプレッサ21の作動要求がなされてから、上記ディレイ時間DT0が経過した後に電磁クラッチ22を連結し、同コンプレッサ21を実際に作動開始するようにしている。このディレイ時間DT0は、上記エンジン10の出力トルクの増大にかかる応答遅れ分に相当する時間(例えば0.5秒程度)として設定されている。
【0032】次に、車両減速時におけるECU30の各種制御態様について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。先述したように、車両減速中にロックアップクラッチ機構12を作動させれば、駆動輪17からエンジン10側へと直接的に動力が伝達されて、同エンジン10を稼動せずともその回転が維持されるようになる。そのため、こうした車両減速中の燃料カットの実施に際して、ロックアップクラッチ機構12を作動すれば、燃料カット領域を拡大して、燃費向上を図ることができるようになる。
【0033】特に、本実施形態のようなCVT14を備える車両では、ロックアップクラッチ機構12を作動させたままでの変速が可能なため、より長期間に亘って車両減速中の同ロックアップクラッチ機構12の作動を保持し、燃料カット領域をより拡大することが可能である。
【0034】そこで、本実施形態では、アクセルペダル35aがオフとされて、車両が減速されると、エンジン10の燃料カットを実施すると共に、ロックアップクラッチ機構12を作動して、燃料カット領域を拡大するようにしている。
【0035】一方、車両が減速されるにつれ、CVT14の変速比は、再加速時の動力性能を確保するためにロー側に設定される。そのため、車両がある程度よりも低速度となってからも、ロックアップクラッチ機構12の作動を保持すれば、多大なエンジンブレーキが作用して、運転者の意図するよりも急激に車両が減速されるようになる。
【0036】そこで、本実施形態のクラッチ機構付き車両の制御装置では、ロックアップ解除速度を設定し、車両の速度がその解除速度V0を下回れば、ロックアップクラッチ機構12を解除するようにしている。そして、減速加速度が過大となる前に、車両のエンジン10側と駆動輪17側との直接的な駆動連結を解放することで、ドライバビリティの悪化を防止するようにしている。
【0037】また更に、上述のようにエンジン出力軸10aに駆動連結されたA/C用コンプレッサ21の稼働時にはその分、エンジン10の回転負荷が増大するため、ロックアップ中の車両減速に伴う減速加速度の増加もより大きくなる。そこで、A/C用コンプレッサ21の作動時には、非作動時よりも高い速度(「所定速度」)V1[V1>V0]以下で、ロックアップクラッチ機構12を解除するようにしている。
【0038】すなわち、上記速度V0は、A/C用コンプレッサ21が停止された状態における減速中のロックアップクラッチ機構12の作動を保持可能な車速の上限として、また速度V1は、同A/C用コンプレッサ21が作動された状態での同車速の上限としてそれぞれ設定されている。
【0039】そのため、A/C用コンプレッサ21が継続的に作動されているときには、車速が上記速度V1まで減速された時点で、ロックアップクラッチ機構12が解除されるようになる。また、車速が速度V1以下であれば、車両減速中のロックアップクラッチ機構12の作動時において、A/C用コンプレッサ21の作動要求がなされれば、その時点でロックアップクラッチ機構12は解除されるようになる。
【0040】続いて、本実施形態でのロックアップクラッチ機構12が作動された状態での車両減速中に、A/C用コンプレッサ21の作動要求がなされたときの制御態様について説明する。
【0041】図2は、車両減速中のA/C用コンプレッサ21などの制御にかかる「減速時A/C制御ルーチン」のフローチャートである。本ルーチンは、ECU30によって所定時間毎に周期的に実行される。
【0042】本ルーチンに移行すると、ECU30は先ずステップ100において、アクセルペダル35aがオフとされて車両減速中で、且つ車速が速度V1以下であり、しかも燃料カット中であるか否かを判断する。すなわちこのステップ100では、車速が速度V1以下で、ロックアップクラッチ機構12が作動中であるか否かを判断している。ここで、それらの条件を満たしていなければ(ステップ100:NO)、処理をステップ140に移行する。また、上記条件が全て満たされていれば(ステップ100:YES)、続くステップ110の処理に移行する。
【0043】このステップ110では、A/C用コンプレッサ21の作動要求の有無を判断する。ここで、作動要求がなされていなければ(ステップ110:NO)、上記ステップ140の処理に移行し、作動要求がなされていれば(ステップ110:YES)続くステップ120の処理に移行する。
【0044】このステップ120においてECU30は、ロックアップクラッチ機構12を解除すべく指令を出力する。そして、続くステップ130において、A/C用コンプレッサ21の作動までのディレイ時間として、上述の時間DT0の代わりに、時間DT1を設定した後、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0045】この時間DT1は、上記解除指令の出力からロックアップクラッチ機構12が実際に解除されるまでの応答遅れ分に相当する時間として設定されている。ちなみに、油圧制御回路による油圧制御に基づき行われるロックアップクラッチ機構12の解除には、上述のエンジン10の出力トルクの増大に比して、応答遅れ時間が長くなる(例えば数秒程度)。したがって、この時間DT1は、時間DT0よりも十分に長い時間が設定されている[DT1>DT0]。
【0046】このように、本実施形態では、車両減速中のロックアップクラッチ機構12の作動時に、車速が速度V1以下となった状態で、A/C用コンプレッサ21の作動要求がなされると、ECU30はロックアップクラッチ機構12を解除すべく指令を出力する。そしてその指令に基づいてロックアップクラッチ機構12が解除するまでの期間、上記作動要求に基づくA/C用コンプレッサ21の作動を遅延した後、はじめて同コンプレッサ21の作動するようにしている。
【0047】なお、上記ステップ100及びステップ110のいずれかで否定判断されると、ステップ140において、上記A/C用コンプレッサ21の作動にかかるディレイ時間として、上述した通常時のディレイ時間DT0を設定するようにしている。
【0048】図3は、本実施形態のクラッチ機構付き車両の制御装置における車両減速時の制御態様の一例を示している。一方、図4は、従来のロックアップ機構付き車両の制御装置における車両減速時の制御態様の一例を示している。以下、これら図3及び図4を対比しながら、それら各制御装置における車両減速時の制御態様を説明する。
【0049】これら図3及び図4において、(a)は車速の推移を、(b)はA/C用コンプレッサ21の作動要求の推移を、(c)はロックアップクラッチ機構12の解除指令の推移を、(d)はロックアップクラッチ機構12の作動状態の推移をそれぞれ示している。また各図(e)は燃料カットの実施状態の推移を、(f)はA/C用コンプレッサ21の作動状態の推移をそれぞれ示している。そして、各図(g)は、車両の加速度の推移を示している。
【0050】各図(a)に示すように、車両が上記速度V1まで減速された時刻T10、T0において、各図(f)に示すように、A/C用コンプレッサ21が停止されているため、各図(d)に示すように、この時刻、T10、T0以降もロックアップクラッチ機構12の作動は継続されている。
【0051】ここで、各図(b)に示すように、時刻T11、T1において、A/C用コンプレッサ21の作動要求がなされると、その時点で、各図(c)に示すようにロックアップクラッチ機構12の解除指令が出力される。またそれとともに、各図(e)に示すように燃料カットが停止(オフ)となる。一方、各図(d)に示すように、解除指令の出力とともにロックアップクラッチ機構12の解除が開始されるものの、油圧制御回路19による油圧制御の応答遅れなどに起因して、時刻T12、T2になるまでロックアップクラッチ機構12の解除は完了されず、エンジン10とCVT14とが部分的に連結された状態が維持される。
【0052】このとき、図4に示す従来のクラッチ機構付き車両の制御装置では、作動要求からのディレイ時間として、エンジン10の制御にかかる応答遅れ分に相当する比較的短い時間DT0しか設定されていない。そのため、同図4(f)に示すように、未だロックアップクラッチ機構12の解除されていないうちに、A/C用コンプレッサ21の作動が開始されてしまう。そしてその結果、同図4(g)に示すように、A/C用コンプレッサ21の作動開始に伴う負荷の増大が、直接的に駆動輪17に作用して、車両の減速加速度が一時に増大し、ショックが発生する。また、車両には、その減速加速度の一時的な増大の後も、揺りもどしによる前後方向の加速度変動、いわゆる「しゃくり」が発生してしまう。
【0053】これに対して、図3に示す本実施形態のクラッチ機構付き車両の制御装置では、このときA/C用コンプレッサ21の作動にかかるディレイ時間として、ロックアップクラッチ機構12の応答遅れ分に相当する比較的長い時間DT1が設定されている。そのため、同図3(f)に示すように、ロックアップクラッチ機構12が解除される時刻T12まで、A/C用コンプレッサ21の作動が遅延されるようになる。したがって、同図3(g)に示すように、車両の減速加速度の増大を伴うことなく、A/C用コンプレッサ21の作動が開始されるようになる。
【0054】以上説明したように、本実施の形態のクラッチ機構付き車両の制御装置によれば、以下に記載する効果を得ることができるようになる。
(1)本実施形態では、車両減速中のロックアップクラッチ機構12の作動時にA/C用コンプレッサ21の作動要求がなされるときに、同ロックアップクラッチ機構12の解除を指令するようにしている。そして、その解除の指令に基づいてロックアップクラッチ機構12が解除されるまでの期間、上記作動要求に基づくA/C用コンプレッサ21の作動を遅延した後、同コンプレッサ21を作動するようにしている。そのため、車両減速中にクラッチ機構が作動されたまま、A/C用コンプレッサ21が作動することによる減速加速度の増大が回避されるようになる。したがって、A/C用コンプレッサ21の作動によるショックの発生が防止されて、ドライバビリティを向上することができるようになる。
【0055】(2)本実施形態では、車速が所定速度V1以下のときにのみ、A/C用コンプレッサ21の作動要求に基づいてロックアップクラッチ機構12の解除を指令するようにしている。更に、車速が所定速度V1以下でなければ、同ロックアップクラッチ機構12の解除に拘わらず、作動要求に応じたA/C用コンプレッサ21の作動を開始するようにしている。そのため、A/C用コンプレッサ21の作動がドライバビリティに及ぼす影響が小さな高速時には、同コンプレッサ21の作動に拘わらず、ロックアップクラッチ機構12の作動が保持され、燃料カット領域が拡大される。したがって、燃費性能の悪化を避けながらも、ドライバビリティを向上することができるようになる。
【0056】(3)また、本実施形態では、上記のようにA/C用コンプレッサ21の作動に伴うドライバビリティの悪化を懸念することなく、ロックアップクラッチ機構12を作動し、車両減速中の燃料カットを実施することができる。そのため、従来であれば、A/C用コンプレッサ21の作動がドライバビリティに与える影響が大きくて、車両減速中のロックアップクラッチ機構12の作動が困難であった低車速まで、同クラッチ機構12の作動を継続可能となる。したがって、燃料カット領域を更に拡大し、車両の燃費性能をより一層向上することができるようにもなる。
【0057】(4)本実施形態では、かかる制御装置を、ロックアップクラッチ機構12を作動させたままでの変速比の変更が可能で、より長期に亘り燃料カットを実施可能なCVT14を備えるクラッチ機構付き車両に適用するようにしている。したがって、A/C用コンプレッサ21の作動に伴うドライバビリティの悪化を懸念もなく、CVT14による燃料カット領域の拡大を存分に図ることができるようにもなる。
【0058】なお、以上説明した本実施形態のクラッチ機構付き車両の制御装置は、以下のように変更することもできる。
・上記実施形態では、車速が所定の速度V1以下のときに限り、A/C用コンプレッサ21の作動要求に応じてロックアップクラッチ機構12の解除を指令するようにしている。また、その速度V1以下でなければ、ロックアップクラッチ機構12の解除に拘わらず、作動要求に応じてA/C用コンプレッサ21を作動させるようにしている。こうした制御を行わずとも、ロックアップクラッチ機構12が作動されている車両減速中に、A/C用コンプレッサ21の作動要求に応じてロックアップクラッチ機構12を解除するよう指令し、その指令に基づく同機構12の解除が完了されるまでの間、上記作動要求に応じたコンプレッサ21の作動を遅延するようにすれば、上記(1)(3)(4)に記載の効果を得ることはできる。
【0059】・また、上記各実施形態の制御装置の適用されるクラッチ機構付き車両では、変速機として連続的に無段階の変速が可能な無段変速機(CVT)14を採用する構成としているが、上記各実施形態と同様或いはそれに準じた態様での車両減速中の各種制御は、多段式自動変速機や手動変速機などのその他の変速機を採用するクラッチ機構付き車両にも適用することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成12年1月17日(2000.1.17)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
【公開番号】 特開2001−200927(P2001−200927A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−7962(P2000−7962)