| 【発明の名称】 |
無段変速機の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】杉浦 正典
【氏名】小崎 哲司
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| 【要約】 |
【課題】ベルトスリップや無段変速機の損傷を防止するための下限ガードは、プライマリプーリの押し付け力の下降を実現できないため過渡応答性が課題となっていた。また、2つのプーリに十分な押し付け力を付与することで下限ガードに掛からないようにすると、燃費を悪化させていた。
【解決手段】本発明は上述の相反する2つの課題を解決するために、プライマリプーリの油圧を低い押し付け力にて制御することで燃費を低減する。そして、過渡応答時のようにプライマリ油圧指示値が下限ガードを下回る場合に、その油圧指示値と下限ガード値との差に基づいてセカンダリプーリの油圧を増加させる。これにより常に所望の変速比を維持することができ変速応答性を損なわない制御を実現する。さらに、スライディングモードPID制御器を用いることによって従来よりも適合工数の低減と目標変速比への追従性を向上させている。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 1次プーリと2次プーリとをベルトにより連動させ、内燃機関の駆動力を所定の変速比で車輪に伝達する無段変速機において、前記1次プーリと前記2次プーリとの目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、前記目標変速比となるように前記1次プーリを制御するための油圧指示値を設定し、該指示値となるように前記1次プーリに供給される油圧を制御する第1の制御手段と、前記目標変速比となるように前記2次プーリを制御するための油圧指示値を設定し、該指示値となるように前記2次プーリに供給される油圧を制御する第2の制御手段と、前記1次プーリの供給油圧および前記2次プーリの供給油圧のうち、供給油圧が低いほうの油圧指示値を所定の下限値でガードする下限ガード手段とを備え、前記供給油圧の低い方の前記油圧指令値が前記所定の下限値以下となるとき、前記下限値と前記供給油圧が低い方の油圧指示値とに基づいて他方の前記油圧指示値を大きい側に補正する補正手段を備えることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項2】 前記1次プーリの供給油圧が前記2次プーリの供給油圧より低く、前記下限ガード手段は、前記1次プーリの油圧指示値を所定の下限値でガードし、前記補正手段は、前記1次プーリの油圧指示値と前記下限値とに基づいて前記2次プーリの油圧指示値を補正することを特徴とする請求項1に記載の無段変速機の制御装置。 【請求項3】 請求項2に記載の無段変速機の制御装置において、前記1次プーリの供給油圧と前記2次プーリの供給油圧との供給油圧比を設定する供給油圧比設定手段を備え、前記補正手段は、前記1次プーリの油圧指示値と前記下限値との差分に基づいて前記補正値を前記2次プーリの油圧指示値に加えるものであり、前記補正値は、前記供給油圧比設定手段により設定される油圧比と、前記1次プーリの油圧指示値と前記下限値との差分とに基づいて算出されることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項4】 請求項3に記載の無段階変速機の制御装置において、エンジントルクと無段階変速機が伝達できる最大のトルクとの入力トルク比を設定する入力トルク比設定手段と、前記供給油圧設定手段は、前記目標変速比と前記入力トルク比との関係から前記供給油圧比を求めるマップを備え、前記補正値は、前記マップにより求められる前記供給油圧比と、前記1次プーリの油圧指示値と前記下限値との差分と、に基づいて算出されることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項5】 請求項4に記載の無段変速機の制御装置において、前記マップはあらかじめ決定された代表的な前記入力トルク比と前記目標変速比との関係から前記供給油圧を求めるマップであることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項6】 請求項4に記載の無段変速機の制御装置において、前記供給油圧比は任意の係数から成ることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項7】 請求項4に記載の無段階変速機の制御装置において、前記供給油圧比は、過去の供給油圧比を用いることを特徴とする無段階変速機の制御装置。 【請求項8】 請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の無段変速機の制御装置において、前記下限ガード値は前記ベルトがスリップすることを防止する値に設定されていることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項9】 請求項1乃至請求項8のいずれか一つに記載の無段変速機の制御装置において、用い、前記下限ガード値を前記1次プーリ自身の回転運動によって発生する遠心油圧をに基づいて設定されることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項10】 請求項1乃至請求項9のいずれか一つに記載の無段変速機の制御装置において、前記下限ガード値は前記1次プーリに対する供給油圧もしくは前記2次プーリに対する供給油圧を調整するアクチュエータの機械的なばらつきの下限値を考慮して設定されていることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項11】 請求項1乃至請求項10に記載の無段変速機の制御装置において、前記1次プーリ供給油圧と前記2次プーリ供給油圧とをフィードバック制御するフィードバック制御手段を備え、前記フィードバック制御手段は、前記フィードバック制御に用いられるフィードバックゲインを前記目標変速比と実際の変速比との偏差に応じて連続的に変更するスライディングモードPID制御手段を備えることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項12】 請求項1乃至請求項10に記載の無段変速機の制御装置において、車両の走行状態を検出する走行モード検出手段と、前記1次プーリ供給油圧と前記2次プーリ供給油圧とをフィードバック制御するフィードバック制御手段とを備え、前記フィードバック制御手段は、前記フィードバック制御に用いられるフィードバックゲインを、前記走行モード検出手段によって検出された走行モードに基づいて設定する前記ゲインスケジューリングPID制御手段を備えることを特徴とする無段変速機の制御装置。 【請求項13】 1次プーリと2次プーリとをベルトにより連動させ、内燃機関の駆動力を所定の変速比で車輪に伝達する無段変速機において、前記1次プーリと前記2次プーリとの目標変速比を設定する目標変速比設定手段と、前記目標変速比となるように前記1次プーリを制御するための目標操作量を設定し、該目標操作量となるように操作量を制御する第1の制御手段と、前記目標変速比となるように前記2次プーリを制御するための目標操作量を設定し、該目標操作量となるように操作量を制御する第2の制御手段と、前記1次プーリの目標操作量および前記2次プーリ目標操作量のうち、いずれか一方の目標操作量を所定の下限値でガードする下限ガード手段とを備え、前記いずれか一方の目標操作量が前記下限ガード手段によりガードされる下限値以下となるとき、前記下限ガード値と前記目標操作量とに基づいて他方の目標操作量を補正する補正手段を備えることを特徴とする無段変速機の制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は車両用のベルト式無段変速機を電子的に制御する変速機用の制御装置に関する。 【0002】 【従来技術】近年、燃費低減という観点より、車両用の変速機として無段変速機を採用する動向がある。無段変速機の一例としてはVベルト式のものがある。これは、Vベルトとの接触プーリ幅が油圧に基づいて可変制御されるプライマリ側プーリとセカンダリ側プーリとの一対の可変プーリを備えている。このプーリのベルトへの押し付け力の駆動源として、エンジンあるいはその他の駆動源によって駆動される油圧ポンプより発生する油圧を用いているものがある。燃費を低減するという観点では、プーリのベルトへの押し付け力を必要最低限に制御する必要がある。 【0003】このため、プライマリ側プーリあるいはセカンダリ側プーリにおいて、ベルトスリップが発生しない最低限の押し付け力を演算によって求めこの最低限の圧力で制御を行う制御方法がある。一方で、キックダウンあるいはシフトダウンのような過渡応答時には、プライマリ側とセカンダリ側の押し付け力の差を大きく確保する必要があるため、過渡応答時と判断するとあらかじめ決定しておいた押し付け力に増加させ変速応答性を確保する制御を行っている。 【0004】一方で、目標とする変速比に追従するために、特開平9−229172号公報、特許第2900282号公報、特開平11−37277号公報にあるように、目標値と実際値との偏差に応じて、変速フィードバック制御を行っている。 【0005】ダウンシフト側の変速を行う際、一時的にセカンダリ側プーリの押し付け力を上昇させ、プライマリ側プーリの押し付け力を低減させる。この際、セカンダリ側プーリの押し付け力は、目標とする変速比に追従するように目標値と実際値との偏差に応じてフィードバック制御を行っている。このフィードバック制御の結果によってプライマリ側プーリの押し付け力は目標変速比に追従できるまで一時的に下降する。ただし、押し付け力下降側の制御はベルトスリップ等、無段変速機の耐久性を低下させる虞があるため、セカンダリ側プーリ、プライマリ側プーリの押し付け力ともに下限ガードを設けることがある。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この下限ガードがあると無段変速機の耐久性の低下は防止できるが、十分なプライマリ押し付け力の下降を実現することができないため、結果として変速応答性を確保しようとするあまり過渡応答時の判断の度に押し付け力を増加させることとなり、燃費の低下を招く。 【0007】さらに、どの程度押し付け力を上昇すれば適当かを決定するため、すなわち、燃費低減の要求と変速応答性を両立させるためには、車両状態やセンサ信号よりドライバの要求する変速応答を推定するための複雑なロジックと多くの工数が必要となっていた。 【0008】そこで、本発明は従来技術に比してセカンダリおよびプライマリ側プーリ押し付け力を低減することによって燃費を向上させ、かつこれに伴って発生する変速過渡応答性能の低減を最小限とする無段変速機の制御処置を提供することを目的とする。 【0009】さらに、これらの相反する制御要求を多くの適合工数を必要とせずに両立させる無段変速機の制御装置を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、請求項1に記載の無段変速機の制御装置は、1次プーリの供給油圧および2次プーリの供給油圧のうち、供給油圧が低いほうの油圧指示値を所定の下限値でガードする下限ガード手段と、供給油圧の低い方の油圧指令値が前記所定の下限値以下となるとき、該下限値と供給油圧が低い方の油圧指示値とに基づいて他方の前記油圧指示値を大きい側に補正する補正手段を備える。 【0011】本構成よれば、下限ガード手段により供給油圧が低いほうの油圧指示値をガードするので、供給油圧を必要最低限の油圧で制御できる。また、過渡応答時において下限値を下回るような油圧指示値であっても下限ガードによりベルトスリップや無段変速機の破損が生じない制御が可能である。さらに、下限ガード値と前記油圧指示値に基づいた補償手段により油圧指示値の大きい側に補正することにより目標変速比への応答性を損なうことなく、燃費を低減することができる。 【0012】請求項2記載の無段変速機の制御装置は、1次プーリの供給油圧が2次プーリの供給油圧より低いものにおいて、下限ガード手段により1次プーリの油圧指示値を所定の下限値でガードし、補正手段により1次プーリの油圧指示値と前記下限値とに基づいて2次プーリの油圧指示値を補正する構成を備える。 【0013】本構成によれば、1次プーリと前記2次プーリを必要最低限の油圧で制御できるので燃費が改善される。また、前記1次プーリの油圧指示値が下限ガード値を下回る場合でも下限ガード手段によりベルトスリップや無段変速機を損傷することがない。さらに前記下限ガード値と前記1次プーリの油圧指示値に基づいた補正手段を備えることにより目標変速比への応答性も改善される。 【0014】請求項3記載の無段変速機の制御装置は、1次プーリの供給油圧と2次プーリの供給油圧との供給油圧比を設定する供給油圧比設定手段を備え、補正手段により1次プーリの油圧指示値と前記下限値との差分に基づいて前記補正値を2次プーリの油圧指示値に加える構成を備える。 【0015】本構成によれば、前記補正値が、前記供給油圧比設定手段により設定される油圧比と、前記1次プーリの油圧指示値と前記下限値との差分とに基づいて算出されるので、2次プーリに必要最低限の補償値を加えることができるとともに、目標変速比を変更することなく過渡応答時などの変速に優れた追従性を実現することができる。 【0016】請求項4記載の無段変速機の制御装置は、エンジントルクと無段変速機が伝達できる最大のトルクとの入力トルク比を設定する入力トルク比設定手段と、前記供給油圧設定手段は、前記目標変速比と前記入力トルク比との関係から前記供給油圧比を求めるマップを備え、このマップにより求められる前記供給油圧比と、前記1次プーリの油圧指示値と前記下限値との差分と、に基づいて前記補正値を算出する構成を備える。 【0017】本構成によれば、目標変速比と入力トルク比との関係からマップにより求められた前記供給油圧比と、前記1次プーリの油圧指示値と前記下限値との差分と、に基づいて補正値を算出するため、より精度良く必要最低限の補償値を算出することができる。 【0018】請求項5記載の無段変速機の制御装置は、請求項4記載の無段変速機の制御装置において、前記マップとして、あらかじめ決定された代表的な前記入力トルク比と前記目標変速比との関係から前記供給油圧を求めるマップを備える。 【0019】これにより、前記油圧比を求める演算を容易にできることにより制御装置の演算負荷を低減することができる。また、マップを代表的な入力トルクに対して設定するため、複数の入力トルクに対する値を適合により求める必要がないため、適合工数を低減することができる。 【0020】請求項6記載の無段変速機の制御装置では、請求項4記載の無段変速機の制御装置において、供給油圧比は任意の係数とすることにより、より容易な演算により前記油圧比を求めることができるため、複雑な演算を必要とせず、制御装置の演算負荷を低減することができる。また、適合工数の低減とこれによるコストの削減を実現することができる。 【0021】請求項7記載の無段変速機の制御装置では、請求項4記載の無段変速機の制御装置において、供給油圧比に、過去の供給油圧比を用いることにより供給油圧比を求めるための複雑な演算が不要となり、制御装置の演算負荷を低減することができる。また、適合工数の低減とこれによるコストの削減を実現することができる。 【0022】請求項8記載の無段変速機の制御装置では、請求項1乃至請求項7に記載の無段変速機の制御装置において、下限ガード値を前記ベルトがスリップすることを防止する値に設定することにより、ベルトのスリップによる無段変速機の耐久性の低下を抑制することができる。 【0023】ところで、無段変速機のプーリはそれ自身の回転運動により遠心油圧を発生する。この遠心油圧が発生するとプーリに供給する油圧を遠心油圧より下げることができない。このため、プーリへの供給油圧指示値が遠心油圧以下になっても供給油圧を下げることができず、制御応答性を損なう虞がある。 【0024】そこで、請求項9記載の無段変速機の制御装置では、請求項1乃至請求項8に記載の無段変速機の制御装置において、下限ガード値を1次プーリ自信の回転運動によって発生する遠心油圧に基づいて設定する構成を備えることにより、目標変速比への応答性を損なうことを防止することができる。 【0025】請求項10記載の無段変速機の制御装置では、請求項1乃至請求項9に記載の無段変速機の制御装置において、前記下限ガード値を前記1次プーリに対する供給油圧もしくは前記2次プーリに対する供給油圧を調整するアクチュエータの機械的なばらつきの下限値を考慮して設定する。 【0026】これにより、ベルトスリップによる無段変速機の耐久性低下を抑制することができる。 【0027】請求項11記載の無段変速機の制御装置では、請求項1乃至請求項10に記載の無段変速機の制御装置において、1次プーリ供給油圧と2次プーリ供給油圧とをフィードバック制御するフィードバック制御手段を備え、フィードバック制御手段により、フィードバック制御に用いられるフィードバックゲインを目標変速比と実際の変速比との偏差に応じて連続的に変更する構成を備える。 【0028】本構成によれば、あらゆる偏差に応じて最適なフィードバックゲインを設定することができるので目標変速比への応答性を向上でき、また、安定性を向上することができる。 【0029】請求項12記載の無段変速機の制御装置では、請求項1乃至請求項10に記載の無段変速機の制御装置において、車両の走行状態を検出する走行モード検出手段と、1次プーリ供給油圧と2次プーリ供給油圧とフィードバック制御するフィードバック制御手段とを備え、フィードバック制御手段は、フィードバック制御に用いられるフィードバックゲインを、走行モード検出手段によって検出された走行モードに基づいて設定する。 【0030】これにより走行モードに応じて最適なフィードバックゲインを設定することができ、目標変速比への応答性を向上することができ、また、安定性を向上することができる。 【0031】 【発明実施の形態】<第1実施例>次に、本発明の実施形態の第1実施例を説明する。 【0032】図1は本実施例に用いられる無段変速装置である。符号20はエンジンであり、このエンジン20は、トルクコンバータ21と前後進切替機構22とを介して無段変速機23のプライマリプーリ1に連結される。無段変速機23はプライマリプーリ1とセカンダリプーリ2とベルト3とから構成される。無段変速機23は、プライマリプーリ1に対しセカンダリプーリ2が平行に配設されており、このプライマリプーリ1とセカンダリプーリ2とにはベルト3が掛けらている。そして、このベルト3の巻き付け径の比を変えることで無段階に変速比を変更することが可能になっている。また、この巻き付け径はプライマリプーリ1とセカンダリプーリ2とに供給する油圧を調整することにより制御される。例えば、プライマリプーリ1への供給油圧を低くし、セカンダリプーリ2への供給油圧を高くすると、プライマリプーリ1の巻き付け径は小さくなり、セカンダリプーリ2の巻き付け径は大きくなり、結果として変速比を大きくすることができる。そして、セカンダリプーリ2から更にギア24、デファレンシャル装置25、車軸26を介して車輪27に駆動力が伝達される。 【0033】また、無段変速機23の油圧制御系において、セカンダリプーリ側圧力制御弁5は油路29を介してセカンダリシリンダ2aに油圧を供給する。また、セカンダリプーリ制御弁5は、伝達トルクに応じた油圧をセカンダリ油圧としてセカンダリプーリ2に供給し、セカンダリプーリ2に伝達トルクに応じた押しつける力を付与する。 【0034】プライマリプーリ側圧力制御弁4は油路30からのセカンダリ油圧を利用し油路28を介してプライマリシリンダ1aに油圧を供給する。また、プライマリプーリ側圧力制御弁4は、伝達トルクに応じた油圧をプライマリ油圧としてプライマリプーリ1に供給し、プライマリプーリ1に伝達トルクに応じた押しつける力を付与する。 【0035】この際、プライマリプーリ側圧力制御弁4はセカンダリ油圧を利用してプライマリ油圧を供給しているため、セカンダリ油圧を超える油圧を供給することはできない。しかし、プライマリシリンダ1aに加わる油圧の受圧面積を小さく設計することでプライマリプーリ1に大きな押し付け力を加えることを可能にしている。 【0036】プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2を所望の変速比に制御するために、従来技術においては、プライマリプーリ側圧力制御弁4が供給する油圧に対して下限ガードを設けることでベルト3のスリップを防止している。しかし、燃費を考慮してプライマリプーリ1に加える油圧をベルト3がスリップしないぎりぎりの油圧で制御すると、実際値と目標値との偏差が大きい過渡応答時に常にプライマリ油圧が下限ガードを下回ってしまい、応答性を確保することが困難であった。 【0037】逆に、過渡応答時の応答性を確保しようとすれば、セカンダリプーリ側圧力制御弁5にあらかじめ高い油圧を加え、プライマリプーリ1に供給される油圧が下限ガードを下回らないようにしなくてはならない。供給油圧を全体的に上げるためにはオイルポンプの駆動力を高めることとなる。また、オイルポンプの駆動力を高めるためには、何らかの形でエンジンにかかる負荷を大きくする必要があり、これが燃費を低下させる原因となる。 【0038】本実施例では、セカンダリプーリ2の油圧を必要最低限の油圧指示値に設定し、その後、目標変速比に基づいてプライマリプーリ1の油圧指示値を設定することから燃費の向上を実現させている。さらに、プライマリプーリ1への油圧指示値に対して下限ガードを設定し、過渡応答時などのときにプライマリプーリ1側の目標油圧がこの下限ガード値を下回るときに、プライマリプーリ1の油圧指示値と下限ガード値に基づいた補償値をセカンダリプーリ2に補償するようにしている。これにより、燃費の悪化を抑制しつつ、目標変速比への応答性を向上させることが可能な無段変速機用のフィードバック制御を実現している。 【0039】次に、本実施例の特徴である無段変速機のフィードバック制御について述べる。 【0040】フィードバック制御系は、図1に示される制御ユニット35によってプライマリプーリ側圧力制御弁4とセカンダリプーリ側圧力制御弁5との制御を行っている。これにより、プライマリプーリ1側のベルト3の巻き付け径とセカンダリプーリ2側のベルト3の巻き付け径との比を制御し、変速比を目標変速比に制御している。 【0041】制御ユニット35は、エンジントルク推定処理手段7と、目標変速比設定手段6と、第2の制御手段としてのセカンダリプーリ必要油圧算出処理手段8と、セカンダリ圧計測手段9と、実変速比検出手段14とから得られるパラメータに基づいて油圧指示値を設定し、圧力→電流変換処理手段12、19によりこの油圧指示値を所望の油圧を加えることのできる電流値に変換し、圧力制御弁4、5に与える。 【0042】エンジントルク推定処理手段7はエンジンの回転数とスロットル開度からエンジン20のトルクを推定する処理を行い、目標変速比設定処理手段6は車速もしくはセカンダリプーリの回転数とスロットル開度とから目標変速比を設定する処理を行う。セカンダリプーリ必要油圧算出処理手段8はセカンダリプーリ2に必要な油圧指示値を設定する処理を行ない、セカンダリ圧検出手段9はセカンダリプーリ2の油圧を計測する。実変速比検出手段14はセカンダリプーリ2の回転数とプライマリプーリ1の回転数との比によって実変速比を検出する。また、圧力→電流変換処理手段12、14は図示しないアクチュエータを駆動するために油圧指示値を電流値に変換する素子である。 【0043】上記の手段によって設定されるパラメータに基づいて制御ユニット35はプライマリプーリ1とセカンダリプーリ2との油圧を制御する。 【0044】セカンダリ必要油圧算出処理手段8は、エンジントルク推定処理手段7と実変速比検出処理手段14とからセカンダリプーリ2に必要な油圧指示値を算出する。第1の制御手段としての変速比→油圧変換処理手段15は、セカンダリ必要油圧算出処理手段8で算出したセカンダリプーリ2の油圧指示値と、目標変速比設定処理手段6で算出した目標変速比とからプライマリプーリ1に必要な油圧指示値を設定する。 【0045】スケジューリングモードPID制御手段10は、目標変速比設定処理手段6から得られる目標変速比と実変速比検出手段4から得られる実変速比との偏差を小さくするために油圧指示値をフィードバック制御する。下限ガード手段としてのプライマリ下限ガード処理手段17は、プライマリプーリ1に加える油圧の下限値を設定するとともに、プライマリプーリ1の油圧指示値に対してガード処理を行う。 【0046】プライマリ油圧切り捨て処理手段18は、変速比→油圧変換処理手段15で得たプライマリプーリ1の油圧指示値とプライマリ下限ガード処理手段17で得た下限ガード値とを比較しプライマリプーリ1の油圧指示値が下限ガード値を下回った場合に、油圧指示値と下限ガード値との差を算出する処理を行う。補償手段としてのセカンダリ油圧補償処理手段11は、セカンダリ必要油圧算出処理手段8で得たセカンダリプーリ2の油圧指示値と、プライマリ油圧切り捨て処理手段18で算出した値とに基づいてセカンダリプーリ2に必要な油圧補償値を算出する。 【0047】PID処理手段16は、セカンダリ圧計測手段9で得たセカンダリ圧のセンサ値と、セカンダリ油圧補償処理手段11から得られるセカンダリプーリ2の油圧補償値とから偏差を求め、偏差に対しフィードバック制御を行い圧力→電流変換処理12に入力する。同様に、プライマリ下限ガード処理手段17にて、得られたプライマリプーリ1の油圧指示値を圧力→電流変換処理手段19に入力する。 【0048】上記制御のフローを図2のフローチャートを用いて説明する。 【0049】ステップS1では、エンジントルク推定処理手段7によりエンジントルク推定値が推定され、目標変速比設定処理手段6に基づいて目標変速比が設定される。また、実変速比検出処理手段14においてプライマリプーリ1の回転数とセカンダリプーリ2の回転数の比から実変速比を演算する。 【0050】ステップS2では、ステップS1で得たエンジントルク推定値および目標変速比よりベルトスリップが生じず、無段変速機23の耐久性を低下させないために必要な油圧、すなわちセカンダリプーリ2の油圧指示値をセカンダリ必要油圧算出処理手段8にて算出する。 【0051】ステップS3では、変速比→油圧変換処理手段15においてステップS2で算出されたセカンダリプーリ2の油圧指示値とステップS1で求められた目標変速比およびエンジントルク推定値から、目標変速比を実現するために必要なプライマリプーリ1の油圧指示値を算出する。 【0052】ステップS4では、実変速比を目標変速比に追従させるために上述の目標変速比と実変速比との偏差を演算し、この偏差に応じたフィードバック制御をスライディングモードPID処理手段10にて行う。本実施例ではフィードバック制御としてスライディングモードPID制御を用いている。このサブルーチンの詳細を図3に示す。 【0053】図3のステップS7は上述のステップS3と同一で、セカンダリプーリ2の油圧指示値と目標変速比、エンジントルク推定値よりプライマリプーリ1の油圧フィードフォワード値を算出する。次にステップS8において目標変速比と実変速比の偏差を求める。この偏差を補正するための補正量は次の関係で表される。 【0054】補正量=比例補正量+非線型比例補正量+非線型積分補正量+微分補正量そして、目標変速比と実変速比の偏差が0となるように上述のそれぞれの補正量を求める。スライディングモードPID制御手段として、ステップS9aでは比例補正量演算を行い、ステップS9bでは目標変速比とスロットル開度とから非線形比例補正量に対する境界層幅を演算し、ステップ9cにて非線形比例補正量を演算する。 【0055】ここで境界層幅とは、図19に示すように、偏差eに基づいて設定されるゲインPppが飽和するまでの偏差eの幅のことをいう。この境界層幅が大きいとき(境界層幅B)は、偏差eに対するゲインの変化が小さくなり、境界層幅が小さいとき(境界層幅A)は、偏差eに対するゲインの変化が大きくなる。 【0056】ステップS10aではステップS9bと同様に非線形積分補正量に対する境界層幅を目標変速比とスロットル開度とから演算し、ステップS10bでは非線形積分補正量演算を行う。ステップS11では微分補正量演算を行う。そして、ステップS12にて、上記で求めたプライマリプーリ1の油圧フィードフォワード値にフィードバック補正値を加え、プライマリプーリ1の油圧指示値を算出し、このルーチンを終了する。 【0057】なお、スライディングモード制御の特徴として、目標変速比と実変速比との偏差が小さいときはそれに応じたゲインを設定し、安定した制御性を発揮し、また、過渡応答時のように変速比の偏差が大きくなるときは、この偏差量に応じてゲインを設定するので大きい偏差に対しては目標変速比に素早く追従できるという効果を持つ。さらに上記の特徴は、後述するゲインスケジューリングPID制御に比べると走行モードの判定などが不要になるため適合工数を減らすことができ、また、同時にコストの削減にもつながる。 【0058】ところで、過渡応答時のようなフィードバック補正量によっては、プライマリプーリ1の油圧指示値が非常に小さい値になったり、負の値になることも有り得る。 【0059】このような場合、プライマリプーリ1に加わる油圧が低くなり、ベルト3がスリップしてしまうため所望の変速比を実現できない。そこで、ベルト3のスリップしてしまう油圧を下限ガード値として設定し、プライマリプーリ1の油圧指示値が下限ガード値を下回った場合にプライマリプーリ1の油圧指示値を下限ガード値に設定する。 【0060】ところが、プライマリプーリ1の油圧を下限ガード値に設定するとセカンダリプーリ2とプライマリプーリ1との油圧比が変わってしまい所望の変速比に制御することができなくなる。そこで、図2のステップS5では、下限ガード手段と補償手段により所望の変速比を得るため、セカンダリプーリ2の油圧指示値に必要な油圧補償分を算出する。 【0061】以下、図4のフローチャートを用いてステップS5の詳細を説明する。 【0062】ステップS14ではプライマリ下限ガード処理手段17において、目標変速比とエンジントルク推定値、もしくは実変速比とセカンダリプーリ2の油圧指示値とに応じたマップによりプライマリプーリ1がスリップしない油圧に下限ガード値を設定する。下限ガード値の設定に関しては詳細を後述する。 【0063】ステップS15では、先に求めた下限ガード値とプライマリプーリ1の油圧指示値とを比較したときに、プライマリプーリ1の油圧指示値が下限ガード値を下回った場合、ステップS16に移行する。 【0064】プライマリプーリ1の油圧指示値が下限ガード値に設定されることにより所望の変速比を維持できなくなる問題が生じる。そこで、実変速比を目標変速比に制御するために補正手段により、ステップS16からステップS19の処理を行ないセカンダリプーリ2の油圧指示値を補正する。 【0065】ステップS16では、まず、下限ガード値とプライマリプーリ1の油圧指示値との差を求める。以下、下限ガード値とプライマリプーリ1の油圧指示値との差をプライマリガード切り捨て油圧と称する。 【0066】次に、ステップS17ではエンジントルク推定値と、ステップS16で用いたプライマリガード切り捨て油圧とにより入力トルク比を求める。入力トルク比とは、エンジントルク推定値/最大伝達トルクで求まる値であり、最大伝達トルクはエンジントルク推定値に応じて無段階変速機が伝達できる最大のトルクである。 【0067】そして、ステップS18では油圧比を算出する。図6は横軸を目標絵変速比、縦軸を油圧比とした時の目標変速比に対する入力トルク比ごとのプライマリプーリ1とセカンダリプーリ2との油圧比を示したものである。本実施例ではこれをマップとしてあらかじめ備えており、入力トルク比と目標変速比が定まれば、油圧比を一意に求めることができる。ここで油圧比を決定した後ステップS19に移行する。 【0068】ステップS19では、セカンダリ油圧補償手段11においてプライマリ油圧切り捨て油圧を油圧比で除算することにより、所望の油圧比を得るために必要なセカンダリプーリ2の油圧補償値を算出する。以下、セカンダリプーリ2に必要な油圧補償値をセカンダリ油圧補償値と称する。このようにステップS16からステップS19において得られるセカンダリ油圧補償値は、プライマリガード切り捨て油圧に対して変速比の比例関係から求められている。 【0069】ところが、同一の油圧比においても機械的誤差によりプライマリプーリ1の油圧とセカンダリプーリ2の油圧にばらつきを生じることがある。即ち、同一油圧比であってもプライマリガード値が異なることがある。これにより、同一油圧比でも変速が行われない可能性があり、以上の事由を考慮に入れてステップS20では、安全に変速が行われるために所定の油圧を乗ずる演算を行っている。以下、上記を安全率の演算と称する。次に、ステップS21に移行しプライマリプーリ1の油圧指示値に下限ガード処理を施し図4のフローを終了する。 【0070】ところで、ステップS15にて下限ガード値がプライマリプーリ1の油圧指示値より小さいときは、ステップS22に示すようにセカンダリプーリ2の油圧補償値を0とする。セカンダリプーリ2の油圧補償値の演算が終了したら、ステップS21に移行しプライマリプーリ1の油圧指示値の下限ガード処理を行い図4のフローを終了し図2のステップS6に移行する。 【0071】最後に、図2のステップS6において、上記の制御フローより得られたセカンダリプーリ2の最終的な油圧指示値およびプライマリプーリ1の最終的な油圧指示値を、アクチュエータを作動させるのに必要な電流値に変換し、各プーリに加える油圧を制御し、このフローを終了する。 【0072】図4のフローチャートに示されるステップS14において、プライマリプーリ1の油圧指示値に下限ガード値を設定する下限ガード処理手段について、図7を用いて詳細を説明する。 【0073】図7は、ステップS14aにて得られる目標変速比およびエンジントルク推定値より、ステップS14bにてベルトスリップを防止あるいは無段変速機の破損を防止するようなプライマリプーリ1側の圧力下限マップにより、下限ガード値を求めている。 【0074】この圧力下限マップは、無段変速機の機械的特性により決定され、図10に示すような特性を有する。つまり、プライマリ圧下限ガード値は、目標変速比が大きいほど大きな値となり、また、エンジントルクが大きいほど大きな値となる。さらに、無段変速機の機械的特性には固体差あるいは計測誤差等のばらつきが含まれるため、ステップS14cにてこのばらつきを見込んで安全に変速が行われるように安全率を乗ずる。 【0075】図5のタイムチャートを用いて実際の動作の一例を示す。図5は、例えば、ドライバーの意志などによるシフトダウンを行ったときの本制御装置の動作を示す。シフトダウンと同時に目標変速比はLo方向へ変化する。このとき、実変速比と目標変速比との間に偏差が生じ、この偏差に応じてプライマリプーリ1の油圧指示値にフィードバック補正が行われる。 【0076】しかしながら、フィードバック補正を施したプライマリプーリ1の油圧指示値が目標変速比に対して大きな偏差を伴う場合、プライマリプーリ1の油圧指示値は、下限ガード値を下回る。ここで、プライマリプーリ1の下限ガード値よりプライマリプーリ1の油圧指示値を減算することによってプライマリ切り捨て油圧を求める。プライマリ切り捨て油圧を算出後に無段変速機の耐久性が低下しないようにプライマリプーリ1の油圧指示値は下限ガード処理を施す。 【0077】次にプライマリ切り捨て油圧に基づいて、目標変速比および入力トルク比を用いて、目標変速比を実現するためのプライマリプーリ1とセカンダリプーリ2との油圧比よりセカンダリプーリ2の油圧の必要上昇分すなわちセカンダリ油圧補償値を算出し、算出されたセカンダリ油圧補償値でセカンダリ油圧指示値を補償する。 【0078】以上示したように、第1の実施例によれば、無段階変速機の制御装置で目標値と実際値との偏差に基づきフィードバック制御する方法において、通常は必要最低限のプーリに対する油圧にて燃費を最小限とし、過渡時等でフィードバック補正後の油圧指示値が、下限ガードを下回る場合、ガード処理による切り捨て分に基づいて他方のプーリの油圧増加量を演算することによって、変速応答性を一時的に確保することができる。変速が終了し、下限ガードを下回らなくなれば、必要最小限の押し付け力に復帰するため、必要最小限の燃費と変速応答性を両立することが可能となる。 【0079】さらに、この下限ガードにベルトスリップや無段変速機の耐久性が低下するのを防止するような下限値マップを設定することで、制御性を損なうことなく上記の制御を行うことができる。 【0080】<第2実施例>第2実施例においては、第1実施例の図7の下限ガード演算処理の代わりに、図8に示す処理を実行する。 【0081】図8の処理においては、無段変速機23のプライマリプーリ1およびセカンダリプーリ2内の遠心油圧により、実現できる圧力の下限が存在するため、これを油圧指示値の下限ガードとする。遠心油圧とは、プライマリプーリ1の回転によってプーリ内の油圧に押し付け力を供給しなくてもプライマリプーリ1の回転数に応じた油圧がかかることにより発生する油圧である。 【0082】ステップS14eで図9に示すようなプライマリプーリ1の油圧下限値マップを検索することで下限ガード値を求める。この図において、高回転域になるにつれて遠心油圧が上昇している。例えば、第1実施例に示した下限ガード処理と比較すると、第1実施例で用いた下限ガード値はエンジントルク値や目標変速比に応じて上昇している。従って、この遠心油圧を下限ガード値とすることで、ベルトスリップや無段変速機23の損傷を防ぎ、かつ、変速応答性に優れた制御を実現することが可能となる。そして、ステップS14cで第1の実施例の図7と同様の理由により安全率を乗ずる。 【0083】上述のようにプーリに発生する遠心油圧に基づいて下限値を設定することでベルトスリップや無段変速機23の耐久性が低下するのを防ぎ、変速応答性に優れた安全な制御を行なうことが可能になる。 【0084】<第3実施例>第3実施例は、第1実施例の図7のステップS14における下限ガード処理に代わり、図15のフローチャートに示す処理を実行するものである。 【0085】図15のフローチャートは、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2とに加える油圧を圧力制御弁4、5の調圧範囲において油圧指示値を下限ガード処理するものである。圧力制御弁4,5のソレノイドに電流を流すとき、図17に示すように、高圧側と低圧側とにおいて、実際の圧力は理想の圧力特性に対してずれを生じる。ここでは、このずれにより圧力制御弁4、5が実際に制御可能な圧力範囲のことを調圧範囲と称している。本実施例では、電流を流さない状態で加わる油圧を下限値としている。 【0086】ステップS14gでは、圧力制御弁4、5の調整範囲において下限値を設定し、ステップS14cで実施の形態1の図7と同様の理由により安全率を乗ずる。 【0087】上述のように下限値を設定することでベルトスリップや無段変速機23の耐久性が低下するのを防ぎ、安全な制御を行うことを可能としている。 【0088】<第4実施例>第4実施例においては、第1実施例の図2のステップS5におけるセカンダリプーリ2の油圧指示値に必要な油圧補償分を算出する制御の代りに、図11に示す処理を実行している。 【0089】図11は第1実施例に対して、図4のステップS17の処理が不要となる。すなわち、油圧比を求めるための複雑な演算が不要となる。複雑な演算を省略するため、第4実施例では、油圧比として過去の油圧比、本実施例では前回の油圧比を用いてセカンダリプーリ2に必要な油圧補償分を求めている。尚、前回の油圧比を用いることにより過去の油圧比を記憶しておくメモリを最小限にすることができる。 【0090】図13のタイムチャートを用いて本実施例を説明する。図13は、車両が停止状態Aから発進Bにて発進し、定常走行Cにて定常走行に移り、そこから、キックダウンDにてキックダウンし、目標変速比Eに至る一連の変速比の変化を表した図である。 【0091】この図13の定常走行C以降において、発進を除いた通常走行時での変速比は、発進時の変速比に比して大きく変わることがないため油圧比も大きく変化しない。このような理由から発進時以外の通常走行時において、セカンダリプーリ2に必要な油圧補償値を求めるために前回の油圧比を用いることができ、第1の形態のセカンダリプーリ2に対する油圧補償と同様の効果を得ることができる。さらに、複雑なロジックを必要としないめ、適合工数の低減やコストの削減を実現することができる。 【0092】<第5実施例>第5実施例は、第1実施例の図4のステップS17からステップS19におけるセカンダリプーリ2の油圧指示値に必要な油圧補償分を算出する処理の代りに図18に示すフローチャートを実行するものである。 【0093】第1実施例と比較すると、図4のステップS17、S18の処理が不要となる。すなわち、油圧比を求めるための複雑な演算が不要となる。この複雑な演算を省略するために第5の実施例では、油圧比に0.5〜0.7の範囲内で代表的な係数を設定し、油圧比としてこの代表的な係数を用いることで、セカンダリプーリに必要な油圧補償分を求めている。変速の際には、この係数が小さいほどセカンダリプーリ2に補償する油圧補償値が大きくなるため、0.5〜0.7の範囲内で設定される係数は使用頻度の高い変速比において安全に変速が行われる値である。 【0094】以下、図18にしたがって本実施例を説明する。 【0095】ステップS16においてプライマリ油圧切り捨て分が算出された後、ステップS19aにおいて、プライマリ油圧切り捨て分を0.5〜0.7の範囲内であらかじめ定められた係数で除算することによりセカンダリ圧補償値を演算する。その後、ステップS20に進み、安全率が演算される。 【0096】これにより第1実施例に示したステップS17のような複雑な演算を不要となる。これにより、適合工数の低減やコストの削減を実現する。 【0097】<第6実施例>第6実施例を、図14を用いて説明する。 【0098】第6実施例は、第1実施例の図1の変速フィードバック制御器の代りにゲインスケジューリングPID制御を用いている。 【0099】ゲインスケジューリングPID制御はスライディングモードPID処理手段10を図示しないゲインスケジューリングPID処理手段に変更することにより、実現する。ここでゲインスケジューリングPID制御処理を実行するためには、制御ゲインを決定するための車両走行モード判定手段が必要となる。ゲインスケジューリングPID制御は、車両走行モードに応じて最適なゲインを設定できる。例えば、比較的変速比の変化の少ない定常走行時は低ゲイン、素早い変速比応答が必要なキックダウンあるいはシフトダウンのような過渡走行時は高ゲインにてフィードバック補正量を切り替えることによって、滑らかな制御と応答性を両立することが可能となる。 【0100】<第7実施例>第7実施例を、図16を用いて説明する。 【0101】第7の実施例は、第1実施例のスケジューリングモードPID処理10の代わりにPID制御処理手段(図示せず)を用いている。PID制御処理のフローチャートを図16に示す。ステップS7にて、セカンダリプーリ2の油圧指示値と目標変速比、エンジントルク推定値よりプライマリプーリ1のフィードフォワード値を算出する。ステップS8において目標変速比と実変速比との偏差を求める。そして、この偏差が0となるように、ステップS9、ステップS10、ステップS11に示すようにPIDフィードバック補正を行う。ステップS12にて、上記で求めたフィードフォワード値にフィードバック補正値を加え、プライマリプーリ1の油圧指示値を算出する。 【0102】上記のようなPID制御によってもフィードバック制御を行うことが可能である。 【0103】<第8実施例>第8実施例は、第1実施例、第2実施例、第3実施例で用いたそれぞれの下限ガード値の設定を組み合わせて設定するものである。 【0104】即ち、ある運転状態において、図9の車速あるいはプライマリ回転数から求まる下限ガード値と、図10の目標変速比から求まる下限ガード値と、図17の調圧範囲の下限値と、を比較してもっとも大きな下限ガード値を示すものを本実施例の下限ガード値とする。 【0105】これにより、様々な運転状態に適した下限ガード処理を実行することができ、セカンダリプーリ2の油圧補償値がより正確に設定されるため、フィードバック制御の応答性を向上することが可能となる。 【0106】なお、上記実施例においては、プライマリプーリに供給される油圧がセカンダリプーリに供給される油圧より低くなるように設定されているが、例えば、プライマリプーリに供給される油圧がセカンダリプーリに供給される油圧より高くなるように設定されているものにおいても本発明を適用することができる。 【0107】具体的には、セカンダリプーリの油圧を制御する際に設定される油圧指示値に対して下限ガードを設定すると共に、セカンダリプーリの油圧指示値が下限ガードを下回った時には、下限ガード値と油圧指示値との差分に基づいてプライマリプーリ側の油圧指示値を補償するようにすれば良い。例えば、下限ガード値と油圧指示値との差分を油圧比で乗算した値を補償値として算出し、プライマリ側の油圧指示値にこの補償値を加算することにより、補償するようにすれば良い。 【0108】これにより、プライマリプーリに供給される油圧がセカンダリプーリに供給される油圧より高くなるように設定されているものにおいても本発明と同様の効果を奏することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004260 【氏名又は名称】株式会社デンソー
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| 【出願日】 |
平成12年2月2日(2000.2.2) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100096998 【弁理士】 【氏名又は名称】碓氷 裕彦 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−173770(P2001−173770A) |
| 【公開日】 |
平成13年6月26日(2001.6.26) |
| 【出願番号】 |
特願2000−25152(P2000−25152) |
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