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【発明の名称】 電動パワーステアリング装置
【発明者】 【氏名】吉村 英雄

【要約】 【課題】操舵ピニオンと補助ピニオンがラック軸を回動させようとする力を相殺して歯面間で発生する衝撃音を抑制し、作動性及び耐久性の優れた電動パワーステアリング装置を供する。

【解決手段】ステアリング側に連結された操舵ピニオン12と噛み合うラック軸3の摺動により操舵輪を転舵させるとともに、ステアリングの操舵トルクに応じて制御される電動機出力を操舵ピニオン12と離間してラック軸3と噛み合う補助ピニオン22に伝達し操舵を補助する電動パワーステアリング装置において、操舵ピニオン12と補助ピニオン22が互いに逆向きの傾斜角のはす歯を有し、斯かる操舵ピニオン12と補助ピニオン22にそれぞれ噛み合う互いに逆向きに傾斜したラック歯3a,3bがラック軸3に形成されている電動パワーステアリング装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ステアリング側に連結された操舵ピニオンと噛み合うラック軸の摺動により操舵輪を転舵させるとともに、ステアリングの操舵トルクに応じて制御される電動機出力を前記操舵ピニオンと離間して前記ラック軸と噛み合う補助ピニオンに伝達し操舵を補助する電動パワーステアリング装置において、前記操舵ピニオンと前記補助ピニオンが互いに逆向きの傾斜角のはす歯を有し、斯かる操舵ピニオンと補助ピニオンにそれぞれ噛み合う互いに逆向きに傾斜したラック歯が前記ラック軸に形成されていることを特徴とする電動パワーステアリング装置。
【請求項2】 前記ラック軸の互いに逆向きに傾斜したラック歯の傾斜角が互いに異なることを特徴とする請求項1記載の電動パワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステアリング側に連結された操舵ピニオンと電動機出力側の補助ピニオンがラック軸と噛み合う所謂ダブルピニオンラックアシストタイプの電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】電動パワーステアリング装置のラックピニオン機構は、噛み合いを歯の傾斜面に沿って連続して行い滑らかな動力伝達とともに、所定の噛合い強度を維持するために、ピニオンははす歯でこれと噛み合うラック軸のラック歯は軸方向に対して垂直ではなくある傾斜角を有している。
【0003】操舵ピニオンとは別に電動機出力で駆動する補助ピニオンがラック軸に噛み合うダブルピニオンタイプの電動パワーステアリング装置では、従来操舵ピニオンと補助ピニオンのはす歯の傾斜角は同じ向きをしていた。
【0004】すなわち図9に要部を模式図で示すようにラック軸01のラック歯01aに操舵ピニオン02のはす歯02aが噛み合い、同ラック軸01のラック歯01bに補助ピニオン03のはす歯03aが噛み合っている。
【0005】ラック軸01のラック歯01aとラック歯01bとは、軸方向に対して傾斜しており、傾斜の向きは同じ向きであり、ラック歯01a,01bにそれぞれ噛合する操舵ピニオン02と補助ピニオン03のはす歯02a,03aは、同じ向きの傾斜角を有する。
【0006】したがって操舵ピニオン02の回転によりラック軸01に掛かる荷重Aと補助ピニオン03の回転によりラック軸01に掛かる荷重Bとは同じベクトル方向の荷重である。この荷重A,Bを軸方向の分力Ah,Bhと垂直な分力Av,Bvとに分解すると、軸方向の分力Ah,Bhが合わさってラック軸01を左右方向に移動する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そして軸方向と垂直な分力Av,Bvは、同じ上向き又は下向きであってラック軸01を軸中心に同じ方向に回動させるように働く(図10,図11参照)。したがって操舵を左から右あるいは右から左へ切り返すときに、軸方向と垂直な分力Av,Bvがともに上下逆転してラック軸01を一斉に軸心に対して反対方向に回動する力が働くことになり、ラック歯01a,01bと操舵ピニオン02及び補助ピニオン03のはす歯02a,03aとの歯面間で歯当りが生じて衝撃音が発生することがある。また適正な噛合いを保持できない。
【0008】本発明は斯かる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、操舵ピニオンと補助ピニオンがラック軸を回動させようとする力を相殺して歯面間で発生する歯当りや衝撃音を抑制し、作動性及び耐久性の優れた電動パワーステアリング装置を供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段及び作用効果】上記目的を達成するために、本発明は、ステアリング側に連結された操舵ピニオンと噛み合うラック軸の摺動により操舵輪を転舵させるとともに、ステアリングの操舵トルクに応じて制御される電動機出力を前記操舵ピニオンと離間して前記ラック軸と噛み合う補助ピニオンに伝達し操舵を補助する電動パワーステアリング装置において、前記操舵ピニオンと前記補助ピニオンが互いに逆向きの傾斜角のはす歯を有し、斯かる操舵ピニオンと補助ピニオンにそれぞれ噛み合う互いに逆向きに傾斜したラック歯が前記ラック軸に形成されている電動パワーステアリング装置とした。
【0010】操舵ピニオンと補助ピニオンが互いに逆向きの傾斜角のはす歯を有し、ラック軸の互いに逆向きに傾斜したラック歯にそれぞれ噛合するので、操舵ピニオンと補助ピニオンがそれぞれラック軸に与える荷重のうち軸中心に回動させようとする分力が、互いに逆方向となりラック軸を回動させる力が相殺されて、特に操舵切り返し時に歯面間で発生する衝撃音を抑制でき、ギヤ噛合を適正に保持することができる。
【0011】請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動パワーステアリング装置において、前記ラック軸の互いに逆向きに傾斜したラック歯の傾斜角が互いに異なることを特徴とする。
【0012】運転者の操舵力に比べ電動機の駆動力は大きいので、操舵ピニオンと補助ピニオンがそれぞれ噛み合うラック軸のラック歯の各傾斜角を互いに異ならしめることで、操舵ピニオンと補助ピニオンがそれぞれラック軸に与える荷重のうち軸中心に回動させようとする分力を、互いに逆方向で略同じ大きさとして略完全に相殺するよう調整することができ、歯面間で発生する音を抑制し、作動性をさらに改善し良好とすることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下本発明に係る一実施の形態について図1ないし図7に基づき説明する。本実施の形態に係る電動パワーステアリング装置1の概略全体の後面図を図1に示す。
【0014】電動パワーステアリング装置1は、車両の左右方向(図1における左右方向に一致)に指向した略円筒状のラックハウジング2を有し、そのラックハウジング2内にラック軸3が左右軸方向に摺動自在に収容されている。
【0015】ラックハウジング2の両端開口から突出したラック軸3の両端部にそれぞれジョイントを介してタイロッド4,4が連結され、ジョイント部を覆うブーツ5,5からタイロッド4,4が側方に突出しており、ラック軸3の移動によりタイロッド4,4が動かされ、さらに転舵機構を介して車両の転舵輪が転舵される。
【0016】ラックハウジング2の右端部にステアリングギヤボックス10が設けられている。ステアリングギヤボックス10には、ステアリングホイールが一体的に取り付けられたステアリング軸にジョイントを介して連結される入力軸11が軸受を介して回動自在に軸支されており、入力軸11はステアリングギヤボックス10内でトーションバーを介して相対的なねじり可能に操舵ピニオン12と連結されている。
【0017】この操舵ピニオン12のはす歯12aがラック軸3のラック歯3aと噛合している。したがってステアリングホイールの回動操作により入力軸11に伝達された操舵力は、トーションバーを介して操舵ピニオン12を回動して操舵ピニオン12のはす歯12aとラック歯3aの噛合によりラック軸3を左右軸方向に摺動させる。
【0018】ステアリングギヤボックス10は、図2に示すように操舵ピニオン12とラック歯3aとの噛合い部のラック3の背後にラック3及び操舵ピニオン12と直交する方向にラックガイド円筒部10aが突出形成されている。
【0019】ラックガイド円筒部10aに摺動自在にラックガイド13が嵌挿され、ラックガイド円筒部10aの開口に螺着されロックナット15で固定されたラックガイドスクリュー14との間に介装されたラックガイドスプリング16によりラックガイド13が付勢されて操舵ピニオン12に噛合するラック軸3の背後を押圧している。
【0020】ラックハウジング2の左端部には、図3及び図4を参照して補助ギヤボックス20が形成されており、補助ギヤボックス20は、ラックハウジング2に若干傾いて上下方向にピニオン円筒部20aが形成されるとともに上下方向に直行するようにラックガイド円筒部20bが形成されている。
【0021】ピニオン円筒部20aの内部にラック軸3のラック歯3bに噛合して補助ピニオン22が収容され、ラックガイド円筒部20bに摺動自在にラックガイド23が嵌挿され、ラックガイド円筒部20bの開口に螺着されロックナット25で固定されたラックガイドスクリュー24との間に介装されたラックガイドスプリング26によりラックガイド23が付勢されて補助ピニオン22のはす歯22aにラック歯3bが噛合するラック軸3の背後を押圧している。
【0022】ピニオン円筒部20aに収容される補助ピニオン22は、下端がピニオン円筒部20aの下端開口部にベアリング27を介して軸支され、その下方を栓部材28により閉塞されており、補助ピニオン22の上端はピニオン円筒部20aの上端開口部から突出している。
【0023】ピニオン円筒部20aの補助ピニオン22が突出する上側には、径方向に延出して矩形に展開した側壁20cが形成されており、対向した側壁21aを有する扁平なウオームギヤケース21が側壁20cに取り付けられてギヤボックスが形成されている。
【0024】ピニオン円筒部20aから突出した補助ピニオン22の上端部は、ウオームギヤケース21の側壁21aの中央の凹部に嵌入されたベアリング29により回転自在に軸支され、補助ピニオン22の突出部にはウオームギヤケース21内でウオームホイール30が一体に嵌着されている。
【0025】ウオームギヤケース21の一部に半円筒状周壁21bが形成されて、内部にウオーム31が回転自在に軸支され、ウオームホイール30と噛み合ってウオーム減速機構がウオームギヤケース21内に構成されている。
【0026】半円筒状周壁21bの一端は大きく開口しモータ取付部21cを形成しており、同モータ取付部21cにモータ32が取り付けられ、モータ32の駆動軸32aがウオーム31に同軸に連結されている。
【0027】モータ32の駆動によりウオーム31が回転すると、ウオーム31に噛み合ったウオームホイール30を回転させ、ウオームホイール30の回転は、補助ピニオン22を一体に回動し、補助ピニオン22のはす歯22aがラック歯3bと噛み合うラック軸3を左右軸方向に摺動するように作用する。
【0028】モータ32は、前記トーションバーにより検出したステアリングホイールの操舵トルクに応じて制御され、人力による操舵力が操舵ピニオンを介してラック軸3に伝達される一方で、その操舵トルクに応じて制御されるモータ32による駆動力がウオーム減速機構,補助ピニオン22を介して同じラック軸3に作用し、人力を補助して転舵が行われる。
【0029】ここにラック軸3の両端部に形成されたラック歯3aとラック歯3bは、軸方向に対して傾斜しており、傾斜の向きは互いに逆向きであり、ラック歯3a,3bにそれぞれ噛合する操舵ピニオン12と補助ピニオン22のはす歯12a,22aは、互いに逆向きの傾斜角を有する。
【0030】操舵ピニオン12と補助ピニオン22からラック軸3に伝達される力の作用を図5ないし図7に模式図で示し説明する。操舵ピニオン12の回転によりラック軸3に掛かる荷重Aと補助ピニオン22の回転によりラック軸3に掛かる荷重Bとは異なるベクトル方向の荷重である。
【0031】この荷重A,Bを軸方向の分力Ah,Bhと垂直な分力Av,Bvとに分解すると、軸方向の分力Ah,Bhは同じ方向で合わさってラック軸3を左右いずれかの方向に移動する。そして軸方向に垂直な分力Av,Bvは、互いに逆方向に作用することになる。
【0032】例えば図5のように荷重A,Bが加わるときは、操舵ピニオン12による荷重Aの軸方向に垂直な分力Avは、ラック軸3に下方向への力として作用し、図6に示すようにラック軸3を時計回りに回動するように働き、補助ピニオン22による荷重Bの軸方向に垂直な分力Bvは、ラック軸3に上方向への力として作用し、図7に示すようにラック軸3を反時計回りに回動するように働く。
【0033】このように軸方向に垂直な分力Av,Bvは、ラック軸3を互いに軸心に対し逆方向に回動しようとして相殺される。完全に相殺されなくともラック軸3を回動しようとする力は大幅に削減される。
【0034】そのため特に操舵を左から右あるいは右から左へ切り返すときにも、ラック軸3を逆回動しようとする力は小さく、ラック歯3a,3bと操舵ピニオン12及び補助ピニオン22のはす歯12a,22aとの歯面間での歯当り音の発生を抑制することができる。
【0035】一般に運転者の操舵力に比べ電動機の駆動力は大きく、ラック軸3への操舵ピニオン12の荷重Aより補助ピニオン22の荷重Bの方が大きい。そこで図8に示す第2の実施の形態では、ラック軸50における操舵ピニオン51のはす歯51aが噛み合うラック歯50aと補助ピニオン52のはす歯52aが噛み合うラック歯50bの互いの傾斜を逆向きとするとともに、ラック歯50aよりラック歯50bの傾斜を急傾斜とし傾斜角度を大きくしている。
【0036】ラック歯50bの傾斜角度を大きくすることで、補助ピニオン52からラック軸50に作用する荷重Bの軸方向に垂直な分力Bvを小さくすることができ、この分力Bvを操舵ピニオン51からラック軸50に作用する荷重Aの軸方向に垂直な分力Avと逆方向でかつ大きさを等しくすることができる。
【0037】ラック軸50に働く軸方向に垂直な分力AvとBvを略完全に相殺してラック歯50a,50bと操舵ピニオン51及び補助ピニオン52のはす歯51a,52aとの歯面間での衝撃音の発生を防止できるとともに、作動性を向上させることができる。
【0038】これは使用するモータの出力に応じてラック軸のラック歯の傾斜角を調整して加工形成することにより、所要の出力のモータが使用可能となる。
【出願人】 【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
【出願日】 平成11年12月22日(1999.12.22)
【代理人】 【識別番号】100067840
【弁理士】
【氏名又は名称】江原 望 (外2名)
【公開番号】 特開2001−173756(P2001−173756A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−364535