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【発明の名称】 動力伝達装置
【発明者】 【氏名】木村 克己

【氏名】木村 芳一

【氏名】杉山 和彦

【氏名】田中 裕久

【要約】 【課題】転がり軸受クラッチにおける内輪外周と外輪内周のローラ転動面に介装するローラの表面に油膜保持のための措置を行って、過酷な条件下でも油膜切れによる材料の損傷が生じないようにすることができる動力伝達装置を提供する。

【解決手段】流体を動力伝達の媒体とし、原動機で流体に与えた運動エネルギーを回転動力として取り出す動力伝達装置の駆動側と被動側との間に、内輪6と外輪10と内輪外周と外輪内周の転動面6a,10a間に介装される多数のローラ9とを有し、内輪6と外輪10の転動面6a,10aを互いに接近または離間させることにより動力の伝達及び遮断を行う転がり軸受クラッチCを設け、該転がり軸受クラッチCで動力の伝達を行うことによって駆動側と被動側とを流体を介さずに機械的に結合することを可能にした動力伝達装置において、内輪外周と外輪内周の転動面6a,10a間に介装されるローラ9の表面に油膜を保持するための油膜保持部を形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 流体を動力伝達の媒体とし、原動機で流体に与えた運動エネルギーを回転動力として取り出す動力伝達装置の駆動側と被動側との間に、内輪と外輪と内輪外周と外輪内周の転動面間に介装される多数のローラとを有し、内輪と外輪の転動面を互いに接近または離間させることにより動力の伝達及び遮断を行う転がり軸受クラッチを設け、該転がり軸受クラッチで動力の伝達を行うことによって駆動側と被動側とを流体を介さずに機械的に結合することを可能にした動力伝達装置において、内輪外周と外輪内周の転動面間に介装されるローラの表面に油膜を保持するための油膜保持部を形成したことを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】 前記油膜保持部は、ローラ表面に形成された周方向の微細な同心溝からなることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項3】 前記油膜保持部は、ローラ表面に形成された周方向の微細な螺旋溝からなることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項4】 前記油膜保持部は、ローラ表面に形成された長手方向の斜め溝からなることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【請求項5】 前記油膜保持部は、ローラ表面に形成された独立した多数の凹部からなることを特徴とする請求項1記載の動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トルクコンバータや流体継手など流体の運動エネルギーを利用して動力伝達を行う動力伝達装置において、クラッチ機構を設けて駆動側と被動側を機械的に結合して原動機からの駆動軸回転速度と被動軸回転速度を同一にすることによってスリップ損失をなくし、動力伝達効率の向上を図ることができる動力伝達装置に関する。
【0002】
【従来の技術】駆動軸にポンプ作用をするインペラを結合するとともに被動軸に水車作用をするランナを結合し、ケーシング内に満たされた流体の運動エネルギーを利用して動力の伝達を行う流体継手やトルクコンバータ等の動力伝達装置が知られている。
【0003】動力伝達装置として流体継手を例に挙げて説明すると、流体継手を用いた回転数制御においては、負荷側の回転数を、スクープチューブを使用して最低回転数から最高回転数まで無段階に変化させるか、もしくはインペラ、ランナ及びインペラケーシングで形成される流体継手羽根車への作動油の給油を通あるいは断することによって最低回転数か最高回転数かのいずれかを得るようにしている。
【0004】上記いずれの場合においても、被動機回転数を最高回転数で運転する場合、その最高回転数は、原動機であるモータあるいはエンジン等の入力回転数に対して通常、約3%程度スリップした回転数である。このスリップは流体継手を用いて回転数制御した場合必ず生じる現象である。この時、スリップのために流体継手効率はそのスリップパーセント分だけ低下する。従って、伝達動力が大きければ大きい程、損失動力は大きくなる。
【0005】被動機回転数を最高回転数で運転する場合、原動機回転数と被動機回転数との間のスリップ損失をなくすために、本件出願人は、先に特願平7−169215号において、駆動側と被動側との間に、内輪と外輪と内輪外周と外輪内周の転動面間に介装される多数のローラとを有し内輪と外輪の転動面を互いに接近又は離間させることによりオンオフ動作を行う転がり軸受クラッチを設け、該転がり軸受クラッチをオンすることにより駆動側と被動側とを流体を介さずに機械的に結合することを可能にした動力伝達装置を提案した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来の転がり軸受クラッチにおいては、過度の高ヘルツ圧力下や瞬間的な動力負荷変動時に油膜切れを生じ、内輪とローラもしくは外輪とローラとの間に直接的なメタル接触(金属接触)を生じて材料の損傷を起こすことがあった。
【0007】本発明は、上述の事情に鑑みなされたもので、転がり軸受クラッチにおける内輪外周と外輪内周のローラ転動面に介装するローラの表面に油膜保持のための措置を行って、過酷な条件下でも油膜切れによる材料の損傷が生じないようにすることができる動力伝達装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するため本発明は、流体を動力伝達の媒体とし、原動機で流体に与えた運動エネルギーを回転動力として取り出す動力伝達装置の駆動側と被動側との間に、内輪と外輪と内輪外周と外輪内周の転動面間に介装される多数のローラとを有し、内輪と外輪の転動面を互いに接近または離間させることにより動力の伝達及び遮断を行う転がり軸受クラッチを設け、該転がり軸受クラッチで動力の伝達を行うことによって駆動側と被動側とを流体を介さずに機械的に結合することを可能にした動力伝達装置において、内輪外周と外輪内周の転動面間に介装されるローラの表面に油膜を保持するための油膜保持部を形成したことを特徴とするものである。
【0009】本発明においては、転がり軸受クラッチの内輪外周と外輪内周のローラ転動面に介装するローラの表面に油膜保持のための溝や凹部からなる油膜保持部を設けている。そのため、ローラが過度の高へルツ圧力下や瞬間的な伝達動力負荷変動時においても潤滑油の油膜切れを生ずることがなく、内輪とローラあるいは外輪とローラとの間に直接的な金属接触を生じて材料の損傷を起こす恐れがない。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る動力伝達装置の一実施形態を図面を参照して説明する。本実施形態においては、動力伝達装置として流体継手を例に挙げて説明する。図1は流体継手の全体構成を示す断面図である。図1において、符号1は駆動軸であり、駆動軸1に隣接して被動軸4が配置されている。駆動軸1と結合しているインペラ2に隣接して被動軸4と結合しているランナ3が配置されている。原動機(図示せず)に連結された駆動軸1が回転駆動されると、転がり軸受クラッチ(後述する)が開放された状態ではインペラ2の回転によってインペラ内の流体に運動エネルギーが与えられ、インペラ2から飛び出した流体の運動エネルギーをランナ3で回転動力として回収して被動軸4を介して被動機に動力伝達を行う。このような構成の流体継手においては、流体を動力伝達の媒体としているので、スリップを生じ、駆動軸1の回転速度に対して被動軸4の回転速度は数%程度低くなる。
【0011】インペラ2にはインペラケーシング5が固定され、インペラケーシング5にはケースリング8が固定されている。そして、ケースリング8にはケースフランジ13が取付けられ、ケースフランジ13にはカバー16が取付けられている。インペラケーシング5、ケースリング8、ケースフランジ13、及びカバー16で囲まれた空間には、転がり軸受クラッチCが配設されている。転がり軸受クラッチCは、内輪6と、外輪10と、内外輪6,10間に配設された多数の円筒状のローラ9と、多数の円筒状のローラ9を所定位置に保持する保持器18とから構成されている。そして、外輪10はボールスプライン機構12を介してケースフランジ13に連結され、内輪6はランナ3に直接結合されている。前記円筒状のローラ9は外輪10と内輪6の間で軸方向に対してある角度ねじられて配置されている。
【0012】またケースフランジ13とカバー16とで囲まれた部分はシリンダ部を構成しており、このシリンダ部内にピストン15が軸方向に可動に配設されている。そして、シリンダ部内面とピストン15との間にはクラッチオンオフ用作動油室20が画成されており、この作動油室20内に、軸受ケーシング21及びカバー16に形成された作動油供給路17a,17b,17c,17dを介して作動油が供給されるようになっている。なお、作動油供給路17aはパイプを介して油ポンプに接続されている。
【0013】前記ピストン15と外輪10との間には、複数のボール11が介装されている。なおボール11は円板状の保持器22に保持されている。また、外輪10とケースリング8との間には圧縮コイルスプリング7が介装されており、外輪10はスプリング7の付勢力により右方向に常時押されている。ケースリング8と内輪6との間にはラジアル軸受24が介装されている。駆動軸1、インペラ2、インペラケーシング5、ケースリング8、ケースフランジ13および外輪10は機械的に結合されており、これら部材2,5,8,13,10は駆動軸1と一体となって回転する。また被動軸4、ランナ3および内輪6は機械的に結合されており、これら部材3,6は被動軸4と一体となって回転する。
【0014】作動油室20に作動油供給路17a,17b,17c,17dから作動油を供給して圧縮コイルスプリング7に抗してピストン15で外輪10を内輪6側に押しつけると、ローラ9が回転移動して内輪6と外輪10をロックする。この結果、外輪10と内輪6のローラ転動面が互いに接近しクラッチがオン(結合)した状態となり、駆動軸1と被動軸4が同一の回転速度で回転して動力伝達を行う。この時、インペラ2とランナ3も同じ回転速度で回転するので、内部にある作動流体には回転に伴う遠心力が作動するだけでこの部分での動力損失は発生しない。
【0015】図2は転がり軸受クラッチの構成図を示す斜視図である。図2に示すように、転がり軸受クラッチCは、内輪6、外輪10、内輪6の外周と外輪10の内周の間に介装した多数のローラ9で構成されている。図3は外輪10を断面した部分断面図である。なお、図2および図3に示す転がり軸受クラッチと図1における転がり軸受クラッチとは、左右が逆に図示されているが、機能および作用的には同一である。図3に示すように、内輪6の外周は先細となるような円錐台形状のテーパ面で、外輪10の内周も内輪6の外周に対応した円錐台形状に形成されている。駆動側である外輪10の回転方向と外輪10の円錐台形状の向きで決まるねじれ方向に、ローラ9は内輪6の回転中心軸xに対して所定のねじれ角βで配置されており、ローラ9の転動するこれら内周面、外周面はローラ9が線接触することが条件となるので、ローラ9をx軸を中心にして回転させた軌跡である単葉双曲面となる。内外輪6,10のローラ転動面6a,10aは中心軸xに対して所定のソケット角φでもって傾斜している。
【0016】図3において、外輪10がA方向に回転しているとき、外輪10にF方向の力を加えてローラ9に外輪10の内周を接触させるとローラの転がりによって転がり軸受クラッチCが接続し、外輪10と内輪6が軸方向に接近してロック状態となり、この結果、内外輪6,10が一体となって回転する。外輪10に図1の圧縮コイルスプリング7によりFと反対方向の力を加えると内外輪6,10が軸方向に離れるので転がり軸受クラッチCが外れる。
【0017】図4はローラを介装した状態のローラの配列を示した斜視図である。ローラ9は、図4に示すように、内外輪6,10の中心軸xに対して所定のねじれ角βでもって配置されている。
【0018】図5は転がり軸受クラッチに介装する本発明のローラの一例を示す図であり、図5(a)はローラの正面図、図5(b)は図5(a)のB部詳細を示す拡大図である。図5(a)及び図5(b)に示すように、円柱状のローラ9は、その表面に油膜を保持するための油膜保持部を構成する円周方向の同心溝9aを有している。この同心溝9aは軸方向に多数形成されており、同心溝9aのピッチpは0.1〜5mmであり、溝深さhは0.002〜0.1mmである。
【0019】図6乃至図8は、ローラ9の表面に形成された油膜保持部の他の例を示す図である。即ち、図6に示す例においては、油膜保持部として、ローラ9の表面に円周方向の螺旋溝9bを形成している。螺旋溝9bのピッチpは0.1〜5mmであり、溝深さhは0.002〜0.1mmである。また螺旋溝9bの傾きθは0.1〜20°である。図7に示す例においては、油膜保持部として、ローラ9の表面に任意角度の斜め溝9cを形成している。斜め溝9cのピッチpは0.1〜5mmであり、溝深さhは0.002〜0.1mmである。図8に示す例においては、油膜保持部として、ローラの表面に多数の凹部9dを形成している。凹部9dの直径は0.005〜0.2mm、軸方向に列状に並んだ凹部9d間の間隔は0.01〜0.6mm、列間の間隔は0.01〜0.6mm、凹部9dの深さは0.002〜0.1mmである。本発明によれば、図5乃至図8に示す溝9a,9b,9c又は凹部9dにより、油膜を保持することができるため、内輪6とローラ9あるいは外輪10とローラ9との間に直接的な金属接触を生じて材料の損傷を起こす恐れがない。
【0020】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、過度の高ヘルツ圧力下や瞬間的な動力負荷変動時でも油膜切れを生じることがなく、ローラ及び内外輪の損傷の問題を解決できる。また本発明によれば、上述の油膜保持部を有したローラを備えた転がり軸受クラッチにより、駆動側と被動側とを機械的に結合することによりスリップ損失をなくし、動力伝達効率を向上させることができる。そして、本発明の一例としての流体継手を鉄鋼設備のデスケーリング装置用ポンプに適用すると、無負荷時には最低回転数で運転でき、負荷時には流体継手によるスリップ損失を含まない原動機と同一の定格回転数で運転でき、簡単な制御で多大な省エネルギー効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
【出願日】 平成11年12月17日(1999.12.17)
【代理人】 【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇 (外1名)
【公開番号】 特開2001−173754(P2001−173754A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−359141