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【発明の名称】 トルクコンバータ
【発明者】 【氏名】吉本 篤司

【要約】 【課題】トルクコンバータにおいて,異物ポケットを設けずとも,侵入した異物を,動力伝達に支障を来すことなく,オイルと共に外部に排出する。

【解決手段】タービン羽根車11の外周及び背面を覆うポンプ延長部35をポンプ羽根車10に連設してポンプ組立体36を構成し,このポンプ組立体36の外周部に,ポンプ羽根車10の回転数が常用回転数未満のときポンプ組立体36内を外部に開放してポンプ組立体36内のオイルを異物と共に遠心力により流出させ,ポンプ羽根車10の回転数が常用回転数以上になると前記オイルの流出を停止する弁手段50を設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン(E)に連なるポンプ羽根車(10)と,このポンプ羽根車(10)に対向して負荷に連なるタービン羽根車(11)とを備え,タービン羽根車(11)の外周及び背面を覆うポンプ延長部(35)をポンプ羽根車(10)に連設してポンプ組立体(36)を構成し,ポンプ羽根車(10)及びタービン羽根車(11)間にオイルポンプ(27)の吐出油路(26)を接続したトルクコンバータにおいて,ポンプ組立体(36)の外周部に,ポンプ羽根車(10)の回転数が常用回転数未満のときポンプ組立体(36)内を外部に開放してポンプ組立体(36)内のオイルをリークさせ,ポンプ羽根車(10)の回転数が常用回転数以上になると前記オイルのリークを停止する弁手段(50)を設けたことを特徴とする,トルクコンバータ。
【請求項2】 請求項1記載のトルクコンバータにおいて,前記弁手段(50)を,ポンプ組立体(36)の外周部に開口する逃がし孔(45)と,ポンプ組立体(36)に取付けられ,ポンプ羽根車(10)の回転数が常用回転数未満のとき前記逃がし孔(45)を開き,ポンプ羽根車(10)の回転数が常用回転数以上になると前記逃がし孔(45)を閉じる遠心弁(46)とから構成したことを特徴とする,トルクコンバータ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はトルクコンバータに関し,特に,エンジンのクランク軸に連なるポンプ羽根車と,このポンプ羽根車に対向して負荷に連なるタービン羽根車とを備え,タービン羽根車の外周及び背面を覆うポンプ延長部をポンプ羽根車に連設してポンプ組立体を構成し,ポンプ羽根車及びタービン羽根車間にオイルポンプの吐出油路を接続したトルクコンバータの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】オイルポンプからトルクコンバータ内に供給されるオイルには,切粉や摩耗粉などの異物が含まれていることがあるので,そのような異物を捕集する異物ポケットをトルクコンバータ内に設けることが既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで,上記のような異物ポケットは,トルクコンバータの特別な分解修理を行わない限り清掃されることはないので,多量の異物を収容するに足る充分な容積が必要がある。しかしながら,異物ポケットを大容量に形成することは,トルクコンバータの大型化を招くことになって好ましくない。
【0004】本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,異物ポケットを設けずとも,侵入した異物を,動力伝達に支障を来すことなく,オイルと共に外部に排出し得るようにして,異物ポケットを不要にした前記トルクコンバータを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明は,エンジンに連なるポンプ羽根車と,このポンプ羽根車に対向して負荷に連なるタービン羽根車とを備え,タービン羽根車の外周及び背面を覆うポンプ延長部をポンプ羽根車に連設してポンプ組立体を構成し,ポンプ羽根車及びタービン羽根車間にオイルポンプの吐出油路を接続したトルクコンバータにおいて,ポンプ組立体の外周部に,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数未満のときポンプ組立体内を外部に開放してポンプ組立体内のオイルをリークさせ,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数以上になると前記オイルのリークを停止する弁手段を設けたことを第1の特徴とする。
【0006】この第1の特徴によれば,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数未満のときには,弁手段によりポンプ組立体の外周部が開放されるので,トルクコンバータ内のオイルの一部が遠心力を受けて外部にリークする。その際,トルクコンバータ内のオイル中に摩耗粉等の異物が存在すれば,その異物は,それに働く遠心力によりオイルと共にトルクコンバータ外に排出される。したがって,トルクコンバータ内には異物を滞留させないので,異物ポケットをトルクコンバータに設ける必要はなくなり,トルクコンバータのコンパクト化を図ることができる。
【0007】ポンプ羽根車の回転数が常用回転数以上になると,弁手段がオイルのリークを停止するので,トルクコンバータ内の圧力を正常に復して,正規の伝動効率を確保することができる。
【0008】また本発明は,上記特徴に加えて,前記弁手段を,ポンプ組立体の外周壁に開口する逃がし孔と,ポンプ組立体に取付けられ,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数未満のとき前記逃がし孔を開き,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数以上になると前記逃がし孔を閉じる遠心弁とから構成したことを第2の特徴とする。
【0009】この第2の特徴によれば,ポンプ組立体からの異物の排出及びオイルのリーク停止を簡単に行うことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0011】図1は本発明に係るトルクコンバータの縦断面図,図2は図1の2−2線断面図,図3は図2の3部拡大図である。
【0012】先ず,図1において,エンジンEのクランクケース1にベアリング3を介して支承されるクランク軸2に,クランクケース1の右外側面側から1次減速装置4の駆動ギヤ4a,トルクコンバータT及び変速クラッチCcが順次取付けられ,クランク軸2の出力が変速クラッチCc,トルクコンバータT及び1次減速装置4を介して,図示しない多段変速機の入力軸に伝達するようになっている。
【0013】トルクコンバータTは,ポンプ羽根車10,タービン羽根車11及びステータ羽根車12から構成される。ポンプ羽根車10は変速クラッチCcに隣接して配置され,このポンプ羽根車10の中心部に形成されたボス10aは,ステータ羽根車12の中心部に形成されたボス12aの右側面に対向して配置されると共に,ニードルベアリング13を介してクランク軸2に支承される。
【0014】ポンプ羽根車10の外側面には,変速クラッチCcの出力部に係合する伝動板15が固着されている。したがって,変速クラッチCcの出力トルクは,この伝動板15を介してポンプ羽根車10に伝達される。変速クラッチCcは,図示しない多段変速機の切換え時に,変速ショックを回避すべくオフ状態に制御されるものである。
【0015】またクランク軸2上には,ポンプ羽根車10のボス10aと,クランク軸2を支持する前記ボールベアリング3との間で円筒状のステータ軸20が配設され,このステータ軸20の右端に形成されたドグ20aがステータ羽根車12のボス12aの内周に形成された切欠き40に係合される。こうしてステータ軸20はステータ羽根車12に連結される。このステータ軸20は,その右端部がニードルベアリング14を介してクランク軸2に相対回転自在に支承される。ステータ軸20の左端部にはステータアーム板16が固着されており,このステータアーム板16が中間部に有する円筒部16aの外周面がボールベアリング17を介してクランクケース1に支承される。またステータアーム板16の外周部はフリーホイール18を介してクランクケース1に支持される。
【0016】タービン羽根車11の中心部に固設されたボス11aはステータ軸20にニードルベアリング21を介して相対回転自在に支承されると共に,ステータ羽根車12のボス12aの左端面に対向して配置される。
【0017】ステータ羽根車12のボス12aは,ポンプ羽根車10及びタービン羽根車11のボス10a,11aによって軸方向の移動が規制されるようになっており,ポンプ羽根車10及びステータ羽根車12のボス10a,12aの対向面にオイル入口30としての放射状溝が形成される。
【0018】タービン羽根車11のボス11aにはタービン軸19が一体に連設されており,その左端部はステータアーム板16の円筒部16a内周面にボールベアリング22を介して支承される。このタービン軸19とクランク軸2間には,ステータ軸20の横孔23を貫通して一方向クラッチ24が設けられる。この一方向クラッチ24は,タービン軸19に逆負荷が加えられたときオン状態となって,タービン軸19及びクランク軸2間を直結するようになっている。
【0019】タービン軸19の左端部外周には,1次減速装置4の駆動ギヤ4aが一体に形成され,変速機の入力軸に設けられる被動ギヤ4bがこの駆動ギヤ4aに噛合される。こうして構成される1次減速装置4は,クランクケース1とトルクコンバータTとの間に配置される。
【0020】ポンプ羽根車10に,タービン羽根車11の外周を囲繞する円筒部10bが一体に形成され,この円筒部10bの開放口にタービン羽根車11の背面を覆うサイドカバー34が嵌合されると共に止め環37で固定される。上記円筒部10bとサイドカバー34とでポンプ延長部35が構成され,このポンプ延長部35とポンプ羽根車10とでポンプ組立体36が構成される。
【0021】サイドカバー34はタービン軸19の外周面に相対回転可能に嵌合される。そしてサイドカバー34は,タービン羽根車11の背面との間に,ポンプ羽根車10及びタービン羽根車11間の油路に連通する油室41を画成する。
【0022】ポンプ羽根車10の軸方向位置は,クランク軸2の中間段部2aに固定される押し板42がボス10aの外端面に当接することにより決定され,タービン羽根車11の軸方向位置は,タービン軸19を支承するボールベアリング17によって決定される。
【0023】クランク軸2には,その右端面に開口する上流供給油路25aと,クランク軸2周りの潤滑部に連なる下流供給油路25bとが設けられ,上流供給油路25aには,クランク軸2により駆動されるオイルポンプ27の吐出通路26が接続される。その吐出通路26にはオイルフィルタ38が介裝され,オイルポンプ27は油溜め28から吸い上げたオイルをオイルフィルタ38を通して上流供給油路25aに圧送するようになっている。油溜め28は,クランクケース1の底部に形成される。
【0024】またクランク軸2には,上流供給油路25aをステータ羽根車12のボス12a内周面に連通する入口孔32が穿設される。したがって,この入口孔32は,ボス12aの切欠き40を介してオイル入口30と連通する。
【0025】またタービン軸19には,タービン羽根車11背面側の油室41に連なるオイル出口31が穿設され,このオイル出口31は,ステータ軸20の横孔23と,クランク軸2に穿設された出口孔33とを介して下流供給油路25bに連通する。
【0026】図1及び図2に示すように,ポンプ延長部35の円筒部10bには,その周方向に等間隔に並んで油室41を外部に開放する複数の逃がし孔45が穿設され,これら逃がし孔45を開閉する複数の遠心弁46が円筒部10bに設けられる。各遠心弁46は,図3に明示するように,対応する逃がし孔45の近傍の円筒部10b内面に基端をリベット48で固着されて,先端部を対応する逃がし孔45に対向させる弾性弁板47と,この弾性弁板47の先端に付設される重錘49とから構成される。
【0027】而して,弾性弁板47は,ポンプ羽根車10の常用回転数未満(望ましくはエンジンEのアイドル回転数未満の所定値未満)のときには,それ自体の弾性力で逃がし孔45を開いており(図3実線示状態),ポンプ羽根車10の常用回転数以上(望ましくはエンジンEのアイドル回転数未満の所定値以上)になると,遠心力により円筒部10bの内周面に向かって撓んで対応する逃がし孔45を閉じる(図3鎖線示状態)ようになっている。上記逃がし孔45及び遠心弁46によって弁手段50が構成される。
【0028】次に,この第1実施例の作用について説明する。
【0029】エンジンEの運転中,クランク軸2により駆動されるオイルポンプ27がクランク軸2の上流供給油路25aにオイルを圧送すると,そのオイルは,先ず流入孔32,切欠き40及びオイル入口30を通ってトルクコンバータT内に流入し,ポンプ羽根車10及びタービン羽根車11間の油路を満たし,さらに油室41を満たした後,オイル出口31から横孔23へ移って一方向クラッチ24を潤滑し,そして出口孔33を経てクランク軸2の下流供給油路25bへと流れ,クランク軸2周りの潤滑に供される。こうしてトルクコンバータT内ではオイルが新旧入れ替わり,その冷却が図られる。
【0030】変速クラッチCcのオン状態により,クランク軸2の回転がポンプ羽根車10に伝達されると,トルクコンバータT内のオイルは,ポンプ羽根車10の回転により,ポンプ羽根車10→タービン羽根車11→ステータ羽根車12→ポンプ羽根車10のようにトルクコンバータT内を循環しながら,ポンプ羽根車10の回転トルクをタービン羽根車11に伝達する。このとき,ポンプ羽根車10及びタービン羽根車11間でトルクの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力がステータ羽根車12に負担され,ステータ羽根車12は,フリーホイール18のロック作用によりクランクケース1に固定的に支持される。
【0031】トルク増幅作用を終えると,ステータ羽根車12は,これが受けるトルク方向の反転により,フリーホイール18を空転させながらポンプ羽根車50及びタービン羽根車51と共に同一方向へ回転するようになる。
【0032】ところで,ポンプ羽根車10の回転数が常用回転数未満のときには,遠心弁46の開弁により逃がし孔45を開放しているので,トルクコンバータT内のオイルの一部が遠心力を受けてポンプ組立体36の円筒部10bの逃がし孔45から外部にリークする。その際,トルクコンバータT内のオイル中に摩耗粉等の異物が存在すれば,その異物は,遠心力によりオイルと共に逃がし孔45からトルクコンバータT外に排出される。ポンプ組立体36外に排出された異物は,オイルと共にクランクケース1底部の油溜め28に戻され,再びオイルポンプ27により吸入,圧送されたとき,オイルフィルタ38により除去される。
【0033】かくして,トルクコンバータT内には異物を滞留させないので,従来のような異物ポケットをトルクコンバータTに設ける必要はなくなり,トルクコンバータTのコンパクト化を図ることができる。
【0034】ポンプ羽根車10の回転数が常用回転数以上になると,遠心弁46は閉弁して逃がし孔45を閉鎖するので,逃がし孔45からのオイルのリークがなくなり,トルクコンバータT内の圧力を正常に復して,正規の伝動効率を確保することができる。
【0035】また,トルクコンバータT内からの僅かなオイルリークは,トルクコンバータTの伝動効率に殆ど影響を与えないものであり,しかもトルクコンバータTからのリークオイルは,クランクケース1底部の油溜め28で回収されるので,遠心弁46の閉弁状態での多少のオイルリークや,円筒部10b及びサイドカバー34の嵌合部からの多少のオイルリークは,トルクコンバータTの性能上,許容される。したがって,遠心弁46の製作が容易となり,また円筒部10b及びサイドカバー34の嵌合部にシール部材を介裝する等の油密構造をポンプ組立体36に採用する必要がなくなり,コスト低減に寄与し得る。
【0036】遠心弁46の開閉を切換えるポンプ羽根車10の回転数を,エンジンEのアイドル回転数以下の所定値に設定するときは,エンジンEが始動後,アイドリング状態になるまでに,トルクコンバータT内の異物の排出を完了させることができ,アイドリング状態では,トルクコンバータTからの遠心力によるオイルリークを実質的に阻止して,トルクコンバータTの作動開始に備えることができる。
【0037】本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0038】
【発明の効果】以上のように本発明の第1の特徴によれば,エンジンに連なるポンプ羽根車と,このポンプ羽根車に対向して負荷に連なるタービン羽根車とを備え,タービン羽根車の外周及び背面を覆うポンプ延長部をポンプ羽根車に連設してポンプ組立体を構成し,ポンプ羽根車及びタービン羽根車間にオイルポンプの吐出油路を接続したトルクコンバータにおいて,ポンプ組立体の外周部に,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数未満のときポンプ組立体内を外部に開放してポンプ組立体内のオイルをリークさせ,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数以上になると前記オイルのリークを停止する弁手段を設けたので,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数未満のときには,遠心力を利用してトルクコンバータ内のオイルの一部と共にオイル中の摩耗粉等の異物をトルクコンバータ外に排出することができ,したがって,トルクコンバータ内には異物を滞留させないので,異物ポケットをトルクコンバータに設ける必要はなくなり,トルクコンバータのコンパクト化を図ることができる。またポンプ羽根車の回転数が常用回転数以上になると,オイルの前記リークを停止してトルクコンバータ内の圧力を正常に復し,正規の伝動効率を確保することができる。
【0039】また本発明の第2の特徴によれば,前記弁手段を,ポンプ組立体の外周壁に開口する逃がし孔と,ポンプ組立体に取付けられ,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数未満のとき前記逃がし孔を開き,ポンプ羽根車の回転数が常用回転数以上になると前記逃がし孔を閉じる遠心弁とから構成したので,ポンプ組立体からの異物の排出及びオイルのリーク停止を簡単に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000138521
【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
【出願日】 平成11年12月17日(1999.12.17)
【代理人】 【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
【公開番号】 特開2001−173752(P2001−173752A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−358412