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【発明の名称】 プランジャポンプ又は油圧式無段変速機
【発明者】 【氏名】笹原 謙悟

【要約】 【課題】従来の油圧式無段変速装置等に用いられるプランジャポンプにおいては、高速回転時や低温時にチャージポンプの吸込負圧が大きくなり、異音や吐出不良が発生することを防止するため、吸入部の流路径を大きく形成したり、流路断面積の変化が滑らかになるようにして吸込負圧を抑えていたが、チャージポンプ自身の吸入効率によっては、該チャージポンプの自吸性が向上しない場合があった。また、吸入部の流路径を大きくするのには限度があった。

【解決手段】チャージポンプ101の吸入ポート101aとプランジャポンプである油圧ポンプ21のハウジング31とを補給回路42で接続し、該補給回路の途中部に、作動油の流れをハウジング側から吸入ポート側への流れに規制するチェックバルブ39を介装し、該チェックバルブは、ハウジング内の圧力と吸入ポートの吸込圧力との差圧Pdが一定値より大きくなると開弁するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 プランジャポンプ又はチャージポンプを備える油圧式無段変速機において、ハウジング内圧力が一定値以上であるときのみ、ハウジング内の作動油をチャージポンプの吸入ポートへ流入させる回路を設けたことを特徴とするプランジャポンプ又は油圧式無段変速機。
【請求項2】 チャージポンプの吸入ポートとプランジャポンプのハウジングとを油回路で接続し、該油回路の途中部に、ハウジング側から吸入ポート側への作動油の流れを規制するチェックバルブを介装し、該チェックバルブは、ハウジング内の圧力と吸入ポートの吸込圧力との差圧が一定値より大きくなると開弁することを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ又は油圧式無段変速機。
【請求項3】 前記ハウジング内の作動油をオイルタンクへ排出するドレン配管の径を調節可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載のプランジャポンプ又は油圧式無段変速機。
【請求項4】 前記プランジャポンプのハウジング内の作動油をオイルタンクへ排出するドレン配管の配管長さを調節可能に構成したことを特徴とする請求項2に記載のプランジャポンプ又は油圧式無段変速機。
【請求項5】 前記チャージポンプをハウジングに直接取り付け、プランジャポンプのハウジングに、該ハウジング内部とチャージポンプの吸入ポートとを連通するキリ孔を形成し、該キリ孔内に前記チェックバルブを挿入したことを特徴とする請求項2に記載のプランジャポンプ又は油圧式無段変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プランジャポンプ又はチャージポンプを備えた油圧式無段変速機の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、プランジャポンプ又はチャージポンプを備えた油圧式無段変速機においては、高速回転時や低温時にチャージポンプの吸込負圧が大きくなり、異音や吐出不良が発生することがあった。そこで、該チャージポンプの吸入部の流路径を大きく形成したり、該吸入部の流路形状変化や流路断面積の変化が滑らかになるように構成して、該吸入部の流路抵抗を小さくし、吸込負圧を抑えていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の如く、吸入部の流路抵抗を小さくして吸込負圧を抑えるように構成した場合でも、チャージポンプ自身の吸入効率によっては、該チャージポンプの自吸性が向上しない場合があった。また、吸入部の強度や周辺機器との組合せの関係上、吸入部の流路径を大きく形成するのには限度があり、充分に吸込負圧を低減することができなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次に該課題を解決するための手段を説明する。即ち、請求項1においては、プランジャポンプ又はチャージポンプを備える油圧式無段変速機において、ハウジング内圧力が一定値以上であるときのみ、ハウジング内の作動油をチャージポンプの吸入ポートへ流入させる回路を設けた。
【0005】また、請求項2においては、チャージポンプの吸入ポートとプランジャポンプのハウジングとを油回路で接続し、該油回路の途中部に、ハウジング側から吸入ポート側への作動油の流れを規制するチェックバルブを介装し、該チェックバルブは、ハウジング内の圧力と吸入ポートの吸込圧力との差圧が一定値以上大きくなると開弁する。
【0006】また、請求項3においては、前記ハウジング内の作動油をオイルタンクへ排出するドレン配管の径を調節可能に構成した。
【0007】また、請求項4においては、前記プランジャポンプのハウジング内の作動油をオイルタンクへ排出するドレン配管の配管長さを調節可能に構成した。
【0008】また、請求項5においては、前記チャージポンプをハウジングに直接取り付け、プランジャポンプのハウジングに、該ハウジング内部とチャージポンプの吸入ポートとを連通するキリ孔を形成し、該キリ孔内に前記チェックバルブを挿入した。
【0009】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を説明する。図1はチャージポンプを備えた本発明のプランジャポンプである油圧ポンプを用いて構成される油圧式無段変速機を示す油圧回路図、図2は作動油温度と油圧式無段変速機各部の圧力との関係を示す図、図3は油圧式無段変速機の別実施例を示す油圧回路図、図4は油圧ポンプのハウジングにキリ孔を形成してハウジング内とチャージポンプの吸入ポートとを連通した例を示す図である。
【0010】本発明のプランジャポンプを用いて構成される油圧式無段変速機の構成について説明する。図1において、油圧式無段変速機(以降HST式変速機と記す)10は、プランジャポンプとしての油圧ポンプ21、及び油圧モータ22により構成され、該油圧ポンプ21および油圧モータ22はハウジング31に内包されている。該油圧ポンプ21は可変容量式油圧ポンプに構成され、油圧モータ22は固定容量式油圧モータに構成されている。
【0011】油圧ポンプ21と油圧モータ22とは主回路32mにより接続されており、該油圧ポンプ21にはチャージポンプ101が付設されている。該チャージポンプ101の吸入ポート101aには吸入回路40が接続され、オイルタンクT内の作動油を、該吸入回路40を通じて吸入するようにしている。そして、チャージポンプ101により吸入された作動油が、フィルタ36を介して主回路32mへ供給されている。
【0012】主回路32mのチャージ圧はチャージリリーフバルブ37により、ある一定値に保持され、チャージポンプ101から供給される余分な作動油は、チャージリリーフバルブ37から、ドレン油路32dを通じてハウジング31内へ排出される。また、ハウジング31内の作動油は、ドレン配管41を通じてオイルタンクTへ排出されるが、排出途中にオイルクーラー38により冷却されている。
【0013】即ち、チャージポンプ101により吸入回路40を通じてオイルタンクTから吸入される作動油がHST式変速機10内に圧送され、チャージリリーフバルブ37から前記ドレン油路32dを通じてハウジング31内へ排出された余分な作動油、及び油圧ポンプ21、油圧モータ22の各摺動部から漏れた作動油は、ハウジング31内からドレン回路41を通じてオイルクーラー38により冷却されながらオイルタンクTへ戻るように構成されている。
【0014】上記の構成により、駆動力が油圧ポンプ21の駆動軸に入力されて該油圧ポンプ21が駆動されると、該油圧ポンプ21により吐出された作動油が主回路32mを介して油圧モータ22に供給され、供給された作動油により油圧モータ22が駆動されることとなる。
【0015】そして、本HST式変速機10においては、ハウジング31内とチャージポンプ101の吸入回路40との間に補給回路42を介装している。該補給回路42の途中部にはチェックバルブ39が設けられ、作動油の流れがハウジング31側から吸入回路40側への流れのみとなるように規制している。該チェックバルブ39は、ハウジング31内の作動油圧力と、チャージポンプ101の吸入ポート101a部の吸込圧力との差圧が一定値以上大きくなると開弁するように構成されている。
【0016】ここで、図2に、作動油温度とHST式変速機10の各部圧力との関係を示す。図2において、Phはハウジング31内の作動油圧を示し、Psはチャージポンプ101の吸入ポート101aでの吸込負圧を示し、Pdは該ハウジング内圧力Phと吸込負圧Psとの差圧を示している。
【0017】ハウジング内圧力Phは作動油温度が低いと高くなり、作動油温度が高くなるにつれて低下する。また、吸込負圧Psも、作動油温度が低いときには(−側に)大きく、作動油温度が高くなると小さくなる。従って、ハウジング内圧力Phから吸込負圧Psを減算して求めた差圧Pdは、作動油温度が低いと高くなり、作動油温度が高くなるにつれて低下していく。
【0018】そして、前記チェックバルブ39は、差圧Pdの値がP0 より大きくなると(ハウジング内圧力Phの値がP1 よりも大きくなると)開弁するように設定されている。即ち、差圧Pdの値がP0 より大きくなるとチェックバルブ39が開弁し、ハウジング31内の作動油が、補給回路42を通じてチャージポンプ101の吸入ポート101a側に流入することとなる。
【0019】図2より、差圧Pdの値が大きい場合には、チャージポンプ101の吸込負圧Psも大きくなっているため、異音や吐出不良が発生し易い状態となるが、このように、差圧Pdの値がP0 より大きくなると、ハウジング31内から吸入ポート101a側に作動油が流入するように構成しているので、チャージポンプ101の自吸性が向上して吸込負圧Psが低下し、異音や吐出不良の発生を回避することが可能となる。
【0020】また、差圧Pdの値が大きい場合には、ハウジング31内のハウジング内圧力Phも高くなるが、差圧Pdの値がP0 より大きくなると、ハウジング31内の作動油はチャージポンプ101の吸込ポート101a側へ流入するので、該ハウジング31内の作動油圧が必要以上に上昇することを抑えることができ、ハウジング31におけるオイルシールやパッキンの取付部分から油漏れが発生する等の不具合を防止することができる。
【0021】さらに、差圧Pdの値がP0 より小さく吸込負圧Psが低いときには、チェックバルブ39が閉じた状態となっており、オイルタンクT内の作動油よりも高温であるハウジング31内の作動油が吸入ポート101a部に流入しないので、チャージポンプ101により吸入される作動油の温度上昇を防止することができる。
【0022】また、本HST式変速機10においては、差圧Pdの値が大きくなった場合に、作動油がハウジング31内から吸入ポート101a部へ流入する構成を、作動油がハウジング31内と吸入ポート101aとの間に介装される補給回路42、及び該補給回路42の途中部に設けられるチェックバルブ39にて構成しているので、簡単且つ安価に構成することが可能となる。
【0023】尚、チェックバルブ39が開弁する差圧Pdの値P0 は、前述の如く異音や吐出不良の発生を回避や、油漏れの発生等の防止や、作動油の温度上昇の防止を効率良く確実に行うことができるような適正な値に設定しており、例えば、1.5〜2.0kgf/cm2 程度に設定している。
【0024】そして、該差圧Pdは、次のように構成してハウジング31内の作動油圧を変化させることにより、適宜作動油温度にて適正な値に設定することができる。即ち、図3に示すように、ハウジング31内の作動油をオイルタンクTへ排出するためのドレン配管41にオリフィス35を設けて、該ドレン配管41の径を変え、これによりハウジング31内の作動油圧を変化させて、差圧Pdを調節することができる。この場合、用途や使用状態に合わせて異なった径のオリフィス35を選択することで、それぞれの用途及び使用状態において適性な開弁圧P0 となるように、差圧Pdを調節することができる。
【0025】また、差圧Pdの調節は次のように構成して行うこともできる。即ち、用途や使用状態に合わせて前記ドレン配管41の配管長Lを設定し、配管長Lの違いによるドレン配管41の流路抵抗の変化により、ハウジング31内の作動油圧を変化させて、差圧Pdを調節することができる。このように、ドレン配管41の配管長を調節可能とし、用途や使用状態に合わせて異なった配管長Lを選択することで、それぞれの用途及び使用状態において適性な開弁圧P0 となるように、差圧Pdを調節することができる。尚、ドレン配管41の径及び配管長Lの両方を調節可能に構成することもでき、この場合、差圧Pdを微妙に調節することが可能となる。
【0026】また、チャージポンプ101がHST式変速機10のハウジング31に直接取り付けられている場合、チャージポンプ101とハウジング31内とを連通する前記補給回路42を、図4に示すように、該ハウジング31に形成したキリ孔により構成し、該キリ孔の途中部にチェックバルブ39を設けることもできる。このように、補給回路42をハウジング31に形成したキリ孔により構成することで、該補給回路42を設けるための配管部品を必要としなくなり、低コスト且つ簡単な構成とすることができる。
【0027】
【発明の効果】まず、請求項1に記載のごとく、プランジャポンプ又はチャージポンプを備える油圧式無段変速機において、ハウジング内圧力が一定値以上であるときのみ、ハウジング内の作動油をチャージポンプの吸入ポートへ流入させる回路を設けたので、ハウジング内圧力が高い場合のチャージポンプの自吸性が向上して吸込負圧が低下し、異音や吐出不良の発生を回避することが可能となる。また、ドレン回路及び該ドレン回路に設けられるオイルクーラを通過する作動油の流量が減少するので、該作動油が冷却されて適温になるまでの時間を短縮することができる。また、ハウジング内圧力が一定値より大きくなると、ハウジング内の作動油はチャージポンプの吸込ポート側へ流入するので、該ハウジング内の作動油圧が必要以上に上昇することを抑えることができ、ハウジングにおけるオイルシールやパッキンの取付部分から油漏れが発生する等の不具合を防止することができる。さらに、差圧の値が一定値よりが小さく吸込負圧が低いときには、オイルタンク内の作動油よりも高温であるハウジング内の作動油が吸入ポート部に流入しないので、チャージポンプにより吸入される作動油の温度上昇を防止することができる。
【0028】請求項2に記載のごとく、チャージポンプの吸入ポートとプランジャポンプのハウジングとを油回路で接続し、該油回路の途中部に、ハウジング側から吸入ポート側への作動油の流れを規制するチェックバルブを介装し、該チェックバルブは、ハウジング内の圧力と吸入ポートの吸込圧力との差圧が一定値より大きくなると開弁するように構成したので、ハウジング内の圧力が高い場合のチャージポンプの自吸性が向上して吸込負圧が低下し、異音や吐出不良の発生を回避することが可能となる。また、該差圧の値が大きい場合には、ハウジング内のハウジング内圧力も高くなるが、差圧の値が一定値よりも大きくなると、ハウジング内の作動油はチャージポンプの吸込ポート側へ流入するので、該ハウジング内の作動油圧が必要以上に上昇することを抑えることができ、ハウジングにおけるオイルシールやパッキンの取付部分から油漏れが発生する等の不具合を防止することができる。さらに、差圧の値が一定値よりが小さく吸込負圧が低いときには、チェックバルブが閉じた状態となっており、オイルタンク内の作動油よりも高温であるハウジング内の作動油が吸入ポート部に流入しないので、チャージポンプにより吸入される作動油の温度上昇を防止することができる。
【0029】また、差圧の値が大きくなった場合に、作動油がハウジング内から吸入ポート部へ流入する構成を、作動油がハウジング内と吸入ポートとの間に介装される油回路、及び該油回路の途中部に設けられるチェックバルブにて構成しているので、簡単且つ安価に構成することが可能となる。
【0030】請求項3に記載のごとく、前記ハウジング内の作動油をオイルタンクへ排出するドレン配管の径を調節可能に構成したので、該ドレン配管の径を調節することによるハウジング内の作動油圧の変化により、該ハウジング内の作動油圧とチャージポンプの吸入ポート部の吸入負圧との差圧を調節することができる。そして、用途や使用状態に合わせてドレン配管を異なった径に形成することで、それぞれの用途及び使用状態において、作動油がハウジング内から吸入ポート側へ流入を開始する差圧の値を、適正な大きさの値に調節することができる。
【0031】請求項4に記載のごとく、前記プランジャポンプのハウジング内の作動油をオイルタンクへ排出するドレン配管の配管長さを調節可能に構成したので、該ドレン配管の配管長さを調節することによるハウジング内の作動油圧の変化により、該ハウジング内の作動油圧とチャージポンプの吸入ポート部の吸入負圧との差圧を調節することができる。そして、用途や使用状態に合わせてドレン配管を異なった配管長さに形成することで、それぞれの用途及び使用状態において、作動油がハウジング内から吸入ポート側へ流入を開始する差圧の値を、適正な大きさの値に調節することができる。
【0032】請求項5に記載のごとく、前記チャージポンプをハウジングに直接取り付け、プランジャポンプのハウジングに、該ハウジング内部とチャージポンプの吸入ポートとを連通するキリ孔を形成し、該キリ孔内に前記チェックバルブを挿入したので、ハウジング内部とチャージポンプの吸入ポートとを連通するための配管部品を必要としなくなり、低コスト且つ簡単な構成とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーディーゼル株式会社
【出願日】 平成11年12月8日(1999.12.8)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
【公開番号】 特開2001−165308(P2001−165308A)
【公開日】 平成13年6月22日(2001.6.22)
【出願番号】 特願平11−348841