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【発明の名称】 車両の減速制御装置
【発明者】 【氏名】田端 淳

【要約】 【課題】回生制動に替えて車輪での制動をおこなっている状態での変速ショックやロックアップショックを防止する。

【解決手段】変速機を含む動力伝達系統を介して駆動輪にトルクを伝達し、その変速機の入力側と出力側とのそれぞれに、前記駆動輪でのトルクを減じる減速をおこなう減速手段が設けられ、一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記変速機での変速を禁止する変速禁止手段(ステップS11)を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 変速機を含む動力伝達系統を介して駆動輪にトルクを伝達し、その変速機の入力側と出力側とのそれぞれに、減速をおこなう減速手段が設けられ、一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記変速機での変速を禁止する変速禁止手段を備えていることを特徴とする車両の減速制御装置。
【請求項2】 前輪と後輪とのいずれか一方に、変速機を含む動力伝達系統を介して駆動力を伝達するとともに、その変速機の入力側に減速をおこなう第一の減速手段が設けられ、かつ前輪と後輪とのいずれか他方が減速をおこなう第二の減速手段に連結され、第一の減速手段と第二の減速手段とのうちの一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記変速機での変速を禁止する変速禁止手段を備えていることを特徴とする車両の減速制御装置。
【請求項3】 直結クラッチ付きの流体伝動装置を含む動力伝達系統を介して駆動輪にトルクを伝達し、その流体伝動装置の入力側と出力側とのそれぞれに、前記駆動輪でのトルクを減じる減速をおこなう減速手段が設けられ、一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記直結クラッチの係合態様を減速をおこなっていない場合に比べて変更する直結クラッチ制御手段を備えていることを特徴とする車両の減速制御装置。
【請求項4】 前輪と後輪とのいずれか一方に、直結クラッチ付きの流体伝動装置を含む動力伝達系統を介して駆動力を伝達するとともに、その流体伝動装置の入力側に減速をおこなう第一の減速手段が設けられ、かつ前輪と後輪とのいずれか他方が減速をおこなう第二の減速手段に連結され、第一の減速手段と第二の減速手段とのうちの一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記直結クラッチの係合態様を減速をおこなっていない場合に比べて変更する直結クラッチ制御手段を備えていることを特徴とする車両の減速制御装置。
【請求項5】 前記減速手段のいずれか一方が、前記動力伝達系統からトルクが伝達されて強制的に回転させられることにより電力を発生する発電機によって構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の車両の減速制御装置。
【請求項6】 前記直結クラッチが滑り状態でトルクを伝達するスリップ状態に制御可能なクラッチによって構成され、かつ前記直結クラッチ制御手段が、直結クラッチのスリップ状態を禁止する手段を含むことを特徴とする請求項3もしくは4に記載の車両の減速制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、動力伝達系統における変速機あるいは直結クラッチなどの入力側に設けられている減速手段および他の減速手段によって減速をおこなう車両の減速制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】車両におけるエンジンなどの駆動力源は、燃料の燃焼などによって動力を出力する反面、外力で強制的に回転させようとすれば、大きい抵抗力を示す。これを有効に利用して車両の減速時の制動力とするのが、エンジンブレーキである。その場合、車両の有している慣性エネルギを、空気を圧縮することによる熱や摺動部分での摩擦による熱として消費することにより、制動力を生じさせている。このようなエネルギの消費は、無駄な消費であるから、最近では、燃費の向上および排ガスの低減を目的として、減速時のエネルギを回収して有効利用することが図られている。その一例がハイブリッド車である。
【0003】ハイブリッド車は、元来、内燃機関を効率のよい状態でのみ駆動し、それ以外の運転状態では、燃料の燃焼を回避して燃費の向上および排ガスの低減を図ることを主目的としたものであるが、内燃機関と併せて発電機能あるいは回生機能のある装置を搭載することにより、減速時のエネルギを電力などの形で回生し、これを発進や大きい駆動力が必要な場合の動力として使用するようになっている。したがってエネルギの回生に伴って制動力が生じ、内燃機関のみを駆動力源とする一般的な車両におけるエンジンブレーキと同様な制動機能を得ることができる。
【0004】発電機やこれに類するモータ・ジェネレータなどのエネルギ回生のための装置は、内燃機関から駆動輪に到る動力伝達系統からトルクを受けるようにするために、その動力伝達系統に連結されているが、その動力伝達系統には、大きい駆動トルクを得るため、あるいは内燃機関を最適運転点で駆動するためなどの目的で変速機が介在される場合もある。このような場合、減速時に変速機の入力側に現れるトルクが、変速比によって相違するので、エネルギの回生をおこなって制動している際に変速比が変化すると、ショックが生じる場合がある。
【0005】そこで、例えば特開平10−73161号公報に記載されている発明では、モータ・ジェネレータによっていわゆる回生制動をおこなっている状態では、変速機での変速を禁止することとしている。すなわち制動力の変化を防止している。またこの公報に記載された発明では、モータ・ジェネレータが故障して回生制動をおこなうことができない場合には、変速比を増大させてモータ・ジェネレータによる制動力を得られないことによる制動力の不足を補い、またタイヤの制動をおこなって制動力を確保するように制御している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の装置におけるタイヤの制動は、モータ・ジェネレータによる回生制動をおこなえない場合の補助的もしくは付加的な制動であり、その場合、変速機に対してその出力側にトルクが加わる。このようなトルクの入出力状態は、動力伝達系統に直結クラッチを有する流体伝動装置が介在されていれば、その直結クラッチについても同様に生じる。
【0007】これに対して変速機での変速制御や直結クラッチの係合・解放もしくはスリップ状態の制御は、その入力側に連結されている内燃機関やモータ・ジェネレータが正常に機能し、それに伴って所期のトルクが入力側に作用していることを前提に実行される。すなわち変速制御もしくは直結クラッチの係合・解放あるいはスリップ状態の制御のための油圧などの制御パラメータは、入力側の内燃機関やモータ・ジェネレータが正常に機能して所定のトルクが作用している状態を前提に設定されている。
【0008】したがって、上述したようにモータ・ジェネレータの異常によってタイヤ制動をおこなっている状態では、変速機あるいは直結クラッチの入力側のトルクが大きく低下している。これは、変速制御もしくは直結クラッチの制御で前提とする動力の伝達状態とは異なっているので、この状態で変速もしくは直結クラッチの係合・解放もしくはスリップ状態の制御を実行すると、不適切な制御を実行することになり、その結果、駆動トルクの急激な変化が生じてこれがショックとなる可能性がある。
【0009】このような事態を解消するために、タイヤ制動をおこなっている状態を想定して制御パラメータや制御プログラムなどを予め用意することが考えられる。しかしながら、そうした場合、制御ロジックや制御プログラムさらには必要とするデータが増え、制御が複雑になり、また制御装置が大容量化するなどの不都合が生じる。
【0010】この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、変速機の入力側と出力側との一方の減速手段に替わって他方の減速手段によって制動をおこなっている場合であってもショックの発生を防止することのできる減速制御装置を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段およびその作用】この発明は、上記の目的を達成するために、変速機や直結クラッチを含む動力伝達系統でのトルクの作用状態が通常の状態とは異なっている場合には変速制御や直結クラッチの制御を禁止するように構成したことを特徴とするものである。具体的には、請求項1の発明は、変速機を含む動力伝達系統を介して駆動輪にトルクを伝達し、その変速機の入力側と出力側とのそれぞれに、減速をおこなう減速手段が設けられ、一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記変速機での変速を禁止する変速禁止手段を備えていることを特徴とする減速制御装置である。
【0012】したがって、請求項1の発明では、一方の減速手段によって減速をおこなうことができないことにより他方の減速手段によって減速をおこなっている状態では、変速機での変速が禁止されて変速比が一定に維持される。その結果、トルクが作用する状態が通常とは異なる状態での変速が回避されるので、いわゆる不適切な変速に起因するショックが確実に防止される。
【0013】また、請求項2の発明は、前輪と後輪とのいずれか一方に、変速機を含む動力伝達系統を介して駆動力を伝達するとともに、その変速機の入力側に減速をおこなう第一の減速手段が設けられ、かつ前輪と後輪とのいずれか他方が減速をおこなう第二の減速手段に連結され、第一の減速手段と第二の減速手段とのうちの一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記変速機での変速を禁止する変速禁止手段を備えていることを特徴とする減速制御装置である。
【0014】したがって請求項2の発明によれば、前輪と後輪とのいずれか一方が駆動輪であり、他方が前記一方とは独立して駆動される他の駆動輪もしくは非駆動輪である車両を対象とし、前記一方の車輪を第一の減速手段で減速できないことに伴って他方の車輪を第二の減速手段で制動して減速する場合、変速機での変速が禁止される。そのため、変速時の変速機に対してトルクが作用する状態が通常と異なる状態での変速が生じないので、いわゆる不適切な変速に起因するショックが確実に防止される。
【0015】また、請求項3の発明は、直結クラッチ付きの流体伝動装置を含む動力伝達系統を介して駆動輪にトルクを伝達し、その流体伝動装置の入力側と出力側とのそれぞれに、前記駆動輪でのトルクを減じる減速をおこなう減速手段が設けられ、一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記直結クラッチの係合態様を減速をおこなっていない場合に比べて変更する直結クラッチ制御手段を備えていることを特徴とする減速制御装置である。
【0016】したがって請求項3の発明では、一方の減速手段によって減速をおこなうことができないことにより他方の減速手段によって減速をおこなっている状態では、直結クラッチの係合・解放の状態が一定に維持され、もしくはスリップ状態とされないので、動力伝達系統でのトルク伝達特性もしくは直結クラッチの入力側もしくは出力側のトルクが変化せず、その結果、駆動輪でのトルクが変化しないので、ショックの発生することが防止される。
【0017】さらに、請求項4の発明は、前輪と後輪とのいずれか一方に、直結クラッチ付きの流体伝動装置を含む動力伝達系統を介して駆動力を伝達するとともに、その流体伝動装置の入力側に減速をおこなう第一の減速手段が設けられ、かつ前輪と後輪とのいずれか他方が減速をおこなう第二の減速手段に連結され、第一の減速手段と第二の減速手段とのうちの一方の減速手段による減速をおこなえない場合に他方の減速手段によって減速をおこなうように構成された車両の減速制御装置において、前記一方の減速手段による減速をおこなうことができないことに伴って前記他方の減速手段によって減速をおこなっている場合に、前記直結クラッチの係合態様を減速をおこなっていない場合に比べて変更する直結クラッチ制御手段を備えていることを特徴とする減速制御装置である。
【0018】したがって請求項4の発明では、前輪と後輪とのいずれか一方が駆動輪であり、他方が前記一方とは独立して駆動される他の駆動輪もしくは非駆動輪である車両を対象とし、前記一方の車輪を第一の減速手段で減速できないことに伴って他方の車輪を第二の減速手段で制動して減速する場合、直結クラッチが減速をおこなっていない場合とは異なる係合・解放の状態に設定される。その結果、直結クラッチの制御の前提となるトルクの作用状態が通常とは異なる状態での直結クラッチの制御が生じないので、ショックが回避される。
【0019】上記の請求項1ないし4のいずれかの発明におけるいずれか一方の減速手段は、請求項5に記載してあるように、発電機によって構成することができる。
【0020】したがって請求項5の発明によれば、発電機を強制的に回転させて回生制動をおこなうことができない状態で、変速比が変化せず、また直結クラッチが減速をおこなっていない場合とは異なる係合態様に制御されるので、ショックの発生することが防止される。
【0021】そして請求項6の発明は、請求項3もしくは4の発明において、前記直結クラッチが滑り状態でトルクを伝達するスリップ状態に制御可能なクラッチによって構成され、かつ前記直結クラッチ制御手段が、直結クラッチのスリップ状態を禁止する手段を含むことを特徴とする減速制御装置である。
【0022】したがって請求項6の発明では、一方の減速手段によって減速をおこなうことができないことにより他方の減速手段によって減速をおこなっている状態で、直結クラッチが伝達トルクの安定しないスリップ状態に制御されないので、動力伝達系統でのトルク伝達特性もしくは直結クラッチの入力側もしくは出力側のトルクが変化せず、その結果、駆動輪でのトルクが変化しないので、ショックの発生することが防止される。
【0023】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明を図を参照して具体的に説明する。図3はこの発明で対象とする車両の一例における動力伝達系統と制御系統とを模式的に示している。駆動力源としてエンジン1およびモータ・ジェネレータ(MG)2とが設けられている。エンジン1は、要は、燃料を燃焼させて動力を出力する装置であって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、LPGエンジンなどのいずれかであってよい。またエンジン1の形式は、レシプロエンジンやロータリーエンジンあるいはタービンエンジンであってもよい。
【0024】エンジン1は、電子スロットルバルブ(図示せず)の開度や燃料噴射量あるいは点火時期などを電気的に制御できるように構成され、その制御のための電子制御装置(E−ECU)3が設けられている。この電子制御装置3は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。そして、この電子制御装置3において、アクセル開度や車速、変速信号、エンジン水温などの入力データに基づいて予め記憶しているプログラムに従って演算をおこない、その演算結果に基づいて制御信号を出力するように構成されている。
【0025】また、前記モータ・ジェネレータ2は、要は、電力が供給されてトルクを出力する装置であり、永久磁石型同期モータを使用することができる。なお、モータ・ジェネレータ2には、インバータを介してバッテリ(それぞれ図示せず)が接続されている。そして、モータ・ジェネレータ2を制御するコントローラとして、マイクロコンピュータを主体として電子制御装置(MG−ECU)4が設けられている。この電子制御装置4は、入力されるデータに基づいて演算をおこなって、モータ・ジェネレータ2に供給する電流や周波数、モータ・ジェネレータ2を発電機として用いてバッテリに充電する電力、モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させる場合の回生制動トルクなどを制御するように構成されている。その回生制動トルクは、モータ・ジェネレータ2での発電量や発電効率などによって制御できるので、その発電量や発電効率を所定値に設定して所期の減速度を得るためのスイッチすなわち減速度設定スイッチ5が設けられている。図4はその一例を示しており、スライドノブ6を移動させることにより、減速度すなわちモータ・ジェネレータ2で得られる回生制動トルクを大小に調整するように構成されている。
【0026】上記のエンジン1およびモータ・ジェネレータ2とが、変速機7の入力側に連結されている。この変速機7の具体例を図5にスケルトン図で示してある。ここに示す変速機7は、直結クラッチ(ロックアップクラッチ)8付きの流体伝動装置であるトルクコンバータ9を介してエンジン1およびモータ・ジェネレータ2に連結されている。そのトルクコンバータ9は、従来知られているものと同様の構成であって、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2からトルクの伝達される入力部材であるフロントカバー10にポンプインペラ11が一体化されており、このポンプインペラ11に対向してタービンランナ12が回転自在に配置されている。そして、ポンプインペラ11が回転することにより生じたオイルの螺旋流をタービンランナ12に供給することにより、タービンランナ12にトルクが伝達されてこれが回転し、さらにそのオイルがステータによって流動方向を制御されてポンプインペラ11側に戻るようになっている。このタービンランナ12がハブ13を介して変速機7の入力軸14に連結されている。
【0027】ロックアップクラッチ8は、ハブ13と一体となって回転する状態で、前記フロントカバー10の内面に対向して配置され、油圧によってフロントカバー10の内面に押し付けられることにより係合状態となり、入力部材であるフロントカバー10と出力部材であるハブ13とをトルク伝達可能に連結するように構成されている。なお、ロックアップクラッチ8の押し付け力すなわち油圧を調整することにより、滑りを伴ってトルクを伝達する半係合状態とするいわゆるスリップ制御をおこなうことができる。
【0028】一方、図5に示す変速機7は、前進5段・後進1段の変速段を設定することができるように構成されている。すなわちここに示す変速機7は、トルクコンバータ9に続けて副変速部15と、主変速部16とを備えている。その副変速部15は、いわゆるオーバードライブ部であって1組のシングルピニオン型遊星歯車機構17によって構成され、そのキャリヤ18が前記入力軸14に連結され、またこのキャリヤ18とサンギヤ19との間に一方向クラッチF0 と一体化クラッチC0 とが並列に配置されている。なお、この一方向クラッチF0 はサンギヤ19がキャリヤ18に対して相対的に正回転(入力軸14の回転方向の回転)する場合に係合するようになっている。またサンギヤ19の回転を選択的に止める多板ブレーキB0 が設けられている。そしてこの副変速部15の出力要素であるリングギヤ20が、主変速部16の入力要素である中間軸21に接続されている。
【0029】したがって副変速部15においては、一体化クラッチC0 もしくは一方向クラッチF0 が係合した状態では遊星歯車機構17の全体が一体となって回転するため、中間軸21が入力軸14と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0 を係合させてサンギヤ19の回転を止めた状態では、リングギヤ20が入力軸14に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0030】他方、主変速部16は、三組の遊星歯車機構22,23,24を備えており、三組の遊星歯車機構22,23,24を構成する回転要素が、以下のように連結されている。すなわち、第1遊星歯車機構22のサンギヤ25と、第2遊星歯車機構23のサンギヤ26とが互いに一体的に連結されている。また、第1遊星歯車機構22のリングギヤ27と、第2遊星歯車機構23のキャリヤ29と、第3遊星歯車機構24のキャリヤ31とが連結されている。さらに、キャリヤ31に出力軸32が連結されている。さらにまた、第2遊星歯車機構23のリングギヤ33が、第3遊星歯車機構24のサンギヤ34に連結されている。
【0031】この主変速部16の歯車列においては、後進側の1つの変速段と、前進側の4つの変速段とを設定することができる。このような変速段を設定するための摩擦係合装置、つまりクラッチおよびブレーキが、以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、リングギヤ33およびサンギヤ34と、中間軸21との間に第1クラッチC1 が設けられている。また、互いに連結されたサンギヤ25およびサンギヤ26と、中間軸21との間に第2クラッチC2 が設けられている。
【0032】つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1 はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構22のサンギヤ25、および第2遊星歯車機構23のサンギヤ26の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ25,26とケーシング35との間には、第1一方向クラッチF1 と、多板ブレーキである第2ブレーキB2 とが直列に配列されている。第1一方向クラッチF1 はサンギヤ25,26が逆回転、つまり入力軸14の回転方向とは反対方向に回転しようとする際に係合するようになっている。
【0033】また、第1遊星歯車機構22のキャリヤ37とケーシング35との間に、多板ブレーキである第3ブレーキB3 が設けられている。そして第3遊星歯車機構24はリングギヤ38を備えており、リングギヤ38の回転を止めるブレーキとして、多板ブレーキである第4ブレーキB4 と、第2一方向クラッチF2 とが設けられている。第4ブレーキB4 および第2一方向クラッチF2 は、ケーシング35とリングギヤ38との間に相互に並列に配置されている。なお、この第2一方向クラッチF2 はリングギヤ38が逆回転しようとする際に係合するように構成されている。さらに、変速機7に対する入力回転数を検出する入力回転数センサ(タービン回転数センサ)39と、出力軸32の回転数を検出する出力回転数センサ(車速センサ)40とが設けられている。そして、出力軸32がデファレンシャル41を介して左右の駆動輪42にトルクを伝達するようになっている。
【0034】上記のように構成された変速機7においては、各クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置を、図6の図表に示すように係合・解放することにより、前進5段・後進1段の変速段を設定することができる。なお、図6において○印は摩擦係合装置が係合することを示し、◎印は、エンジンブレーキ時に摩擦係合装置が係合することを示し、△印は摩擦係合装置が係合・解放のいずれでもよいこと、言い換えれば、摩擦係合装置が係合されてもトルクの伝達には無関係であることを示し、空欄は摩擦係合装置が解放されることを示している。
【0035】図6におけるP,R,Nの各符号は、上記の変速機7で設定可能なシフトポジションを示し、上記の変速機7では、これに加え、更に、D、M、“3”、“2”、Lの各ポジションを設定することができる。すなわちPポジションは車両を停止状態に維持するためのパーキングポジションであり、Rポジションは後進走行するためのリバースポジションであり、Nポジションは出力軸32にトルクが現れないニュートラルポジションであり、Dポジションは前進5段の変速段を設定可能なドライブポジションである。また、前進走行するためのM、“3”、“2”、Lの各ポジションは、前進走行時に所定の変速段でエンジンブレーキを効かせることのできるいわゆるエンジンブレーキポジションであり、Mポジションは手動操作に基づいて前進走行のための各変速段を設定することのできるいわゆるマニュアルシフトポジションであり、後述するアップスイッチおよびダウンスイッチを手動操作することにより1段ずつ変速段が切り替わりかつそれぞれの前進段でエンジンブレーキの効くポジションであり、“3”ポジションは第3速でエンジンブレーキを効かせることができるとともに第3速までの変速段の設定が可能なポジションであり、“2”ポジションは第2速でエンジンブレーキを効かせることができるとともに第2速までの変速段の設定が可能なポジションであり、Lポジションは第1速でエンジンブレーキを効かせることができるとともに第1速のみの設定が可能なポジションである。
【0036】これらの各シフトポジションは、図示しないシフト装置を手動操作することにより設定することができ、そのシフト装置においては各ポジションが図7に示すように配列されている。また、前進走行時の各変速段は、車速やタービン回転数あるいはアクセル開度などで決まる車両の走行状態に基づいて設定されるようになっており、その変速制御のための電子制御装置(T−ECU)43が設けられている。この変速機用電子制御装置43は、他の電子制御装置と同様に、マイクロコンピュータを主体として構成され、入力されるデータおよび予め記憶しているデータならびにプログラムに基づいて変速段を決定し、変速機7に変速信号を出力して前述した各摩擦係合装置を適宜に係合・解放させるように構成されている。
【0037】さらに、Mポジションで変速段を選択するアップスイッチおよびダウンスイッチは、運転者が操作可能な範囲のいずれかの箇所、例えば図8に示すように、ステアリングホイール44に設けられており、図8においては、ステアリングホイール44の表面側の左右両側にダウンスイッチ45が設けられており、ステアリングホイール44の裏面側の左右両側にアップスイッチ46が設けられている。そして、Mポジションでアップスイッチ46が操作されると変速段が1段アップシフトされ、ダウンスイッチ45が操作されると変速段が1段ダウンシフトされる。
【0038】前記駆動輪42には、人為的操作によらずに電気的に制御できる自動ブレーキ装置47が取り付けられている。この自動ブレーキ装置47は、一例として従来のアンチ・ロック・ブレーキ装置を転用することができ、マイクコンピュータを主体とする電子制御装置(ABS−ECU)48によって油圧装置49を制御することにより、駆動輪42の制動を適宜におこなうことができるように構成されている。
【0039】上記の各電子制御装置3,4,43,48のそれぞれがハイブリッド用電子制御装置(HV−ECU)50にデータ通信可能に接続されている。このハイブリッド用電子制御装置50は、走行時における駆動力源の選択、モータ・ジェネレータ2の駆動・回生の選択、各駆動力源の駆動内容、変速状態などの制御をおこなうためのものであり、マイクロコンピュータを主体として構成されている。そしてこの電子制御装置50に対する入出力信号を例示すれば、図9のとおりである。すなわち入力信号は、エンジン回転数NE 、エンジン水温、イグニッションスイッチからの信号、バッテリの充電量(残容量)であるSOC(State of Charge)、ヘッドライトのオン・オフ状態を示す信号、デフォッガの動作状態を示す信号、エアコン(空調装置)の動作状態の信号、車速、変速機7の油温、シフトポジションを示す信号、サイドブレーキの動作状態を示す信号、フットブレーキの動作状態を示す信号、触媒温度、アクセル開度、クランク位置の信号、Mポジションが選択されていることを示す信号(スポーツシフト信号)、車両加速度センサからの信号、駆動力源ブレーキ力スイッチすなわち前記減速度設定スイッチからの信号、タービン回転数NT センサからの信号、発進時の変速比を最も大きい変速比である最低速比より小さい変速比に設定するスノーモードスイッチからの信号などである。
【0040】また出力信号は、点火信号、噴射(燃料の噴射)信号、スタータに対する信号、前記モータ・ジェネレータ2を制御するコントローラへの信号、減速装置に対する信号、ATソレノイドへの信号、ATライン圧コントロールソレノイドへの信号、ABSアクチュエータへの信号、駆動力源インジケータに対する信号、エアコンに対する信号、スポーツモードインジケータへの信号、電子スロットルバルブに対する信号、スノーモードインジケータへの信号、エンジン1の吸気バルブおよび排気バルブの開閉タイミングを変更する可変バルブタイミング装置(VVT)に対する信号などである。
【0041】上述したハイブリッド車においても、排ガス量を可及的に削減し、かつ燃費が向上するようにエンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動作状態が制御される。具体的には、発進の際の低速時や後進走行時などにはモータ・ジェネレータ2が駆動力源として動作させられ、また走行中に大きい駆動力が要求された場合には、エンジン1に加えてモータ・ジェネレータ2が駆動され、すなわちモータアシストがおこなわれ、高車速時にはエンジン1が駆動力源として動作させられ、さらに減速時には、モータ・ジェネレータ2が発電機として動作してエネルギの回生をおこなう。
【0042】減速時にモータ・ジェネレータ2が発電機として機能してエネルギの回生をおこなうと、モータ・ジェネレータ2を回転させるために必要とするトルクが制動トルクとして駆動輪42に発生し、制動作用が生じる。すなわちモータ・ジェネレータ2が減速手段として機能する。その制動トルクは、前記電子制御装置4によって発電量やモータ・ジェネレータ2での発電効率などを制御し、また変速機7で設定される変速比を電子制御装置43によって制御することにより所定のトルクに設定される。このようにして発生した電力は、図示しないバッテリに充電される。しかしながら、バッテリの充電量(SOC)が予め定めた量以上のいわゆる満充電の場合、さらにはモータ・ジェネレータ2の発電機能に異常があるなどの場合には、モータ・ジェネレータ2による発電すなわち回生をおこなうことができない。その場合、制動力を確保するために前記自動ブレーキ装置47が動作させられ、モータ・ジェネレータ2による回生制動力に相当する制動力で制動がおこなわれる。すなわちこの場合には、自動ブレーキ装置が減速手段となる。
【0043】自動ブレーキ装置47がモータ・ジェネレータ2の回生制動に替わって制動をおこなっている場合、変速機7およびロックアップクラッチ8の入力側のトルクが、正常に回生制動が実行されている場合に比較して低下する。この状態では、変速機7で変速が実行される通常の状態、あるいはロックアップクラッチ8の係合・解放ならびにスリップ制御が実行される通常の状態とはトルクの負荷状態が異なっており、そこでこの発明に係る上記のハイブリッド車における減速制御装置では、以下の制御を実行する。
【0044】図1はその制御例を説明するためのフローチャートであって、先ず、入力信号の読み込みなどの処理(ステップS1)をおこなった後、モータ・ジェネレータ2を使用して制動が実行されているか否か、すなわち回生制動中か否かが判断される(ステップS2)。回生制動中でないことによりステップS2で否定的に判断された場合には、特に制御をおこなうことなくリターンし、また肯定的に判断された場合には、バッテリのSOCが予め定めた基準値A以上か否かが判断される(ステップS3)。すなわち満充電状態か否かが判断される。これは、要は、モータ・ジェネレータ2を使用した回生制動が実行可能か否かを判断するものであり、バッテリのSOCが基準値A未満であって回生制動が可能な状態であれば、モータ・ジェネレータ2による回生制動を継続する(ステップS4)。
【0045】これに対してバッテリのSOCが基準値A以上であることによりモータ・ジェネレータ2による回生制動をおこなうことができない状態であるために、ステップS3で肯定的に判断された場合には、停車中か否かが判断される(ステップS5)。停車中であれば、モータ・ジェネレータ2による回生制動を中止する(ステップS6)。これは、バッテリのSOCが前記基準値A未満に低下するまで継続される。そして、高速側の所定の変速段(例えば第5速)の使用が制限される。モータ・ジェネレータ2による回生制動をおこなうことができなければ、エンジン1のみによって制動をおこなうことになるので、モータ・ジェネレータ2で発生していた制動力の分だけ、制動力が小さくなるが、これを避けるために、変速機7で設定される変速比を大きくして駆動輪42で発生する制動力を増大させる。
【0046】その場合、前述した変速機7が有段変速機であって変速比がステップ的に変化するので、所定の変速段の設定を禁止することにより、エンジンブレーキ力が過大となることがある。このような事態が生じる場合には、モータ・ジェネレータ2を駆動してトルクを出力することにより、制動力が過剰になることを防止してもよい。例えば図2に示すように、第5速でのエンジンブレーキ力(駆動力源ブレーキトルク)が実線A5 で示され、第4速でのエンジンブレーキ力(駆動力源ブレーキトルク)が実線A4 で示される場合、第4速でのエンジンブレーキ力が過大であれば、モータ・ジェネレータ2を駆動してトルクを出力させることにより、全体としてのエンジンブレーキ力を実線A45で示すように低下させる。すなわち、実線A4 と実線A45とのトルク差が、モータ・ジェネレータ2によるアシスト分のトルクである。
【0047】なお、上記の所定の変速段の使用を制限する制御と併せて、あるいはこれに替えて、エンジン1による制動力を調整してもよい。この調整制御は、スロットル開度を変えることにより実行し、あるいは吸気バルブと排気バルブとの開閉タイミングを調整することにより実行してもよい。
【0048】他方、走行中であることによりステップS5で否定的に判断された場合には、モータ・ジェネレータ2による回生制動を中止する(ステップS8)。これは、バッテリのSOCが前記基準値A未満に低下するまで継続される。そして、モータ・ジェネレータ2によって制動力を発生することができないことを補うために、車輪での制動が実施される(ステップS9)。これは、前述した自動ブレーキ装置47を動作させることにより実行される。したがってモータ・ジェネレータ2による回生制動が可能な場合と不可能な場合とで制動力もしくは減速特性が大きく異なることが回避される。
【0049】自動ブレーキ装置47による制動がおこなわれている場合、自動ブレーキ装置47に替えてエンジン1を使用可能か否か、すなわちエンジンブレーキを代用可能か否かが判断される(ステップS10)。
【0050】ステップS10で否定的に判断され、自動ブレーキ装置47による制動が継続される場合には、変速機7での変速が禁止される(ステップS11)。前述したように、減速時にモータ・ジェネレータ2に替えて自動ブレーキ装置47で車輪の制動をおこなっていれば、変速機7の入力側に掛かるトルクが通常の状態とは大きく低下していることになり、この状態で変速を実行すると、クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置の係合・解放が所期どおりに進行せず、そのために変速機7の出力軸37に生じるトルクの変化によりショックが生じる可能性がある。そこで、このような状態での変速を禁止し、ショックを回避する。
【0051】このような状況はロックアップクラッチ8についても同様である。すなわち減速時にモータ・ジェネレータ2に替えて自動ブレーキ装置47で車輪の制動をおこなっていれば、ロックアップクラッチ8の入力側に掛かるトルクが通常の状態とは大きく低下していることになり、この状態でロックアップクラッチ8をスリップ状態に維持するスリップ制御を実行すると、作用するトルクと油圧とが不一致状態となって所期どおりのスリップ状態を設定することができず、そのためにジャダーが発生したりロックアップクラッチ8が係合してしまったりする可能性がある。そこで、上記の変速の禁止と併せて、あるいはその制御とは別に、このような状態でのロックアップクラッチ8のスリップ制御を禁止(L/Uスリップ禁止)し、ショックを回避することとしてもよい。
【0052】これに対してエンジンブレーキで代用できることによりステップS10で肯定的に判断された場合には、スロットル開度を絞るなどのことによりエンジンブレーキを作動させる(ステップS12)。また、これと同時に自動ブレーキ装置47による車輪の制動を中止する(ステップS13)。そして、変速機7による変速が許可される(ステップS14)。これと併せてロックアップクラッチ8のスリップ制御を許可(L/Uスリップ許可)してもよい。この場合、変速機7あるいはロックアップクラッチ8の入力側には、エンジンブレーキが作動していることに伴うトルクが作用しており、これは通常の変速あるいはスリップ制御の場合と同様の状態であり、したがって変速やロックアップクラッチ8のスリップ制御が通常と同様に実行され、変速やロックアップクラッチ8の係合などになるショックあるいはロックアップクラッチ8のジャダーやそれに起因する振動が生じることが防止される。
【0053】また、上記のように、モータ・ジェネレータ2による回生制動に替えて車輪での制動がおこなわれているときには、変速やロックアップクラッチ8のスリップ制御をおこなわず、モータ・ジェネレータ2に替えてエンジン1が制動作用をしている場合には、変速やロックアップクラッチ8のスリップ制御を許可することとしてあるので、その変速やスリップ制御は通常の状態と同様の条件の下に実行できる。したがってそれらの制御のためのロジックすなわち制御プログラムや制御ゲインなどは多種類設ける必要がなく、そのため制御が容易になり、また制御装置の容量の増大を回避することができる。
【0054】上述した具体例は、駆動輪を二つの減速手段のいずれかで選択的に制動するように構成した例であるが、この発明は、一方の減速手段で減速させる車輪と他方の減速手段で減速させる車輪とが異なる車輪であってもよい。その例を以下に示す。
【0055】図10に示す例は、ハイブリッド四輪駆動車の例である。すなわち、エンジン1と第一のモータ・ジェネレータ2とが変速機7Aの入力部材に連結されている。この変速機7Aは、上述した具体例における変速機7とほぼ同様にロックアップクラッチを有するトルクコンバータと歯車変速機構とを主体として構成され、これに加えて図示しないセンタデファレンシャルを備えており、そのセンタデファレンシャルを介して左右の前輪もしくは後輪のいずれか一方(図示の例では前輪)60に駆動力を伝達するように構成されている。
【0056】これに対して前輪もしくは後輪のいずれか他方(図示の例では後輪)61には、第二のモータ・ジェネレータ62が連結されている。そして、エンジン1を制御するための電子制御装置3と、変速機7Aを制御する電子制御装置43と、各モータ・ジェネレータ2,62を制御する電子制御装置4Aとが設けられ、さらにこれらの各電子制御装置3,43,4Aとの間でデータ通信可能なハイブリッド用電子制御装置50が設けられている。
【0057】この図10に示すハイブリッド四輪駆動車では、加速要求や制動要求あるいは旋回要求もしくは回頭性からの要求などに基づいて第二のモータ・ジェネレータ62を駆動し、あるいは第二のモータ・ジェネレータ62によって回生制動するようになっている。そして、変速機7Aの入力側に設けられている第一のモータ・ジェネレータ2によって回生制動できない場合、第二のモータ・ジェネレータ62が、第一のモータ・ジェネレータ2に替わって、あるいはその制動力の不足分を補うように、回生制動をおこなう。
【0058】図10に示す車両を対象とするこの発明に係る制御装置は、減速時に第一のモータ・ジェネレータ2が回生制動機能を発揮せずに第二のモータ・ジェネレータ62が代替え的にもしくは補助的に回生制動をおこなう場合、変速機7Aでの変速が禁止される。また、第一のモータ・ジェネレータ2を使用して回生制動する通常時に実行されるロックアップクラッチのスリップ制御が禁止される。
【0059】これらの変速禁止制御およびロックアップクラッチのスリップ禁止制御は、上述した具体例での制御とほぼ等しい制御である。すなわち、減速時に第一のモータ・ジェネレータ2が回生制動をおこなっていないと、変速機7Aの入力側のトルクが低下しており、そのために変速を実行すると、クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置の係合・解放のタイミングが不適切になり、その結果、ショックが発生する可能性があるが、その変速を禁止することにより、ショックが回避される。またロックアップクラッチのスリップ制御をおこなう場合、入力側にある程度の反力トルクが存在することを前提に制御するが、第一モータ・ジェネレータ2による制動トルクが入力側に生じていないと、スリップ制御を所期どおりに実行することが困難になるが、そのスリップ制御自体を禁止するので、ロックアップクラッチのジャダーなどによるショックを回避することができる。
【0060】またこの発明は、上記の第二のモータ・ジェネレータ62に替えて、自動ブレーキ装置47を使用し、変速機7Aの入力側のモータ・ジェネレータ2に対して代替え的にもしくは補助的に制動をおこなってもよい。その制御系統を図11に模式的に示してあり、自動ブレーキ装置47としては前述したようにABSを使用することができ、そのための電子制御装置48と油圧装置49とが設けられ、その電子制御装置48がハイブリッド用電子制御装置50にデータ通信可能に接続されている。
【0061】この図11に示すいわゆる二輪駆動車を対象とした場合、モータ・ジェネレータ2によって回生制動できないことにより、自動ブレーキ装置47で代替え的にもしくは補助的に制動(減速)をおこなう際に、変速機7Aでの変速が禁止され、および/またはロックアップクラッチのスリップ制御が禁止され、その結果、ショックが回避される。
【0062】ここで、上記の具体例とこの発明との関係を説明すると、上記の変速機7、7Aがこの発明の変速機に相当し、また、上記のエンジン1から駆動輪42もしくは車輪60に到る動力の伝達系統がこの発明における動力伝達系統に相当し、さらにモータ・ジェネレータ2、62および自動ブレーキ装置47がこの発明の減速手段に相当する。そして、図1に示すステップS11の制御を実行する機能的手段が、この発明の直結クラッチ制御手段に相当する。
【0063】なお、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、変速機は無段変速機などの他の形式の変速機であってもよい。また、変速機もしくは直結クラッチの入力側の減速手段は、上記のモータ・ジェネレータに限定されないのであって、単純な発電機やフライホイールなどのエネルギの回生などに伴って制動トルクが発生するものであればよい。
【0064】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1あるいは2の発明によれば、変速機の入出力側のいずれか一方の減速手段によって減速をおこなうことができないことにより他方の減速手段によって減速をおこなっている状態では、変速機での変速が禁止されて変速比が一定に維持される。その結果、トルクが作用する状態が通常とは異なる状態での変速が回避されるので、いわゆる不適切な変速に起因するショックを確実に防止することができる。また、一方の減速手段によって減速できない状態で変速制御するためのプログラムなどを予め備える必要がないので、制御装置を簡素化することができる。
【0065】また、請求項3あるいは4の発明によれば、直結クラッチの入出力側のいずれか一方の減速手段によって減速をおこなうことができないことにより他方の減速手段によって減速をおこなっている状態では、直結クラッチの係合・解放状態が一定に維持されるので、動力伝達系統でのトルク伝達特性もしくは直結クラッチの入力側もしくは出力側のトルクが変化せず、その結果、駆動輪でのトルクが変化しないので、ショックを確実に防止することができる。また、一方の減速手段によって減速できない状態でロックアップクラッチを制御するためのプログラムなどを予め備える必要がないので、制御装置を簡素化することができる。
【0066】さらに請求項5の発明では、回生制動をおこなえない状態での変速がおこなわれず、また直結クラッチが回生制動できる場合とは異なる係合態様に制御され、例えばスリップ制御が制御が実行されないので、ショックを確実に防止することができる。
【0067】そして、請求項6の発明によれば、直結クラッチの入出力側のいずれか一方の減速手段によって減速をおこなうことができないことにより他方の減速手段によって減速をおこなっている状態で、直結クラッチが伝達トルクの安定しないスリップ状態に制御されないので、直結クラッチの制御が不適正になってショックが生じるなどの事態を確実に回避することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年12月6日(1999.12.6)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2001−165305(P2001−165305A)
【公開日】 平成13年6月22日(2001.6.22)
【出願番号】 特願平11−346904