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【発明の名称】 車両用ロックアップクラッチの制御装置
【発明者】 【氏名】田端 淳

【要約】 【課題】複数種類の燃料を切り換えながらエンジンを作動させて走行する車両において、ロックアップクラッチ係合時のNVHの悪化を防止する。

【解決手段】エンジンの燃料を切り換える時にステップS5でロックアップクラッチを解放するとともに、燃料の切換え終了後にステップS13でロックアップクラッチの係合解放制御を再開する前に、ステップS9〜S12で使用する燃料の種類に応じてロックアップクラッチの係合・解放を切り換えるロックアップ切換マップやスリップ領域のスリップ率の設定を変更する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数種類の燃料の燃焼で動力を発生して車両を走行させるエンジンと、予め定められた切換条件に従って前記複数種類の燃料を切り換えながら前記エンジンを作動させる燃料切換制御手段と、前記エンジンから車輪までの動力伝達経路に設けられた流体継手と、該流体継手と並列に設けられて該流体継手の前後を直結する摩擦係合式のロックアップクラッチと、該ロックアップクラッチを所定の係合解放条件に従って係合・解放するクラッチ制御手段と、を有する車両用ロックアップクラッチの制御装置において、前記クラッチ制御手段は、前記エンジンの燃料の種類に応じて定められた異なる係合解放条件に従って前記ロックアップクラッチの係合解放制御を行うものであることを特徴とする車両用ロックアップクラッチの制御装置。
【請求項2】 複数種類の燃料の燃焼で動力を発生して車両を走行させるエンジンと、予め定められた切換条件に従って前記複数種類の燃料を切り換えながら前記エンジンを作動させる燃料切換制御手段と、前記エンジンから車輪までの動力伝達経路に設けられた流体継手と、該流体継手と並列に設けられて該流体継手の前後を直結する摩擦係合式のロックアップクラッチと、該ロックアップクラッチを所定のスリップ条件下でスリップ係合させるクラッチ制御手段と、を有する車両用ロックアップクラッチの制御装置において、前記クラッチ制御手段は、前記エンジンの燃料の種類に応じて定められた異なるスリップ状態で前記ロックアップクラッチをスリップ係合させるものであることを特徴とする車両用ロックアップクラッチの制御装置。
【請求項3】 前記燃料切換制御手段によって前記エンジンの燃料が切り換えられる時には、前記クラッチ制御手段による制御を中止して前記ロックアップクラッチを解放するロックアップ解放手段を有するとともに、前記エンジンの燃料の切換えが終了して前記クラッチ制御手段による制御が再開される前に、前記燃料の種類に応じて前記係合解放条件または前記スリップ状態の設定が変更されることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ロックアップクラッチの制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は車両用ロックアップクラッチの制御装置に係り、特に、複数種類の燃料を切り換えながらエンジンを作動させて走行する車両用のロックアップクラッチの制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】複数種類の燃料を切り換えながらエンジンを作動させて走行する車両が提案されている。特開平3−92575号公報や特表平11−507310号公報などに記載されている車両はその一例で、ガソリンやLPG、水素、メタノール等の種々の燃料の使用が考えられており、排出ガス量などに基づいて予め定められたエンジン回転速度等の切換条件に従って燃料が切り換えられるようになっている。
【0003】一方、自動変速機を有するオートマチック車両は、一般にエンジンと自動変速機との間にトルクコンバータ等の流体継手が配設されているとともに、その流体継手と並列にロックアップクラッチが設けられ、エンジンのトルク変動が比較的小さい高速走行時などで燃費低減のためにロックアップクラッチを係合するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このようなロックアップクラッチ付きの車両において、複数種類の燃料を切り換えながらエンジンを作動させて走行する場合、同じエンジンでも燃料の種類によってトルク変動特性が異なるため、共通のロックアップ切換マップに従ってロックアップクラッチの係合解放制御を行うと、係合時(スリップ係合を含む)のNVHが悪化する可能性があった。NVHは、ノイズ(騒音)、バイブレーション(振動)、およびハーシュネス(粗い乗り心地)のことである。
【0005】本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、複数種類の燃料を切り換えながらエンジンを作動させて走行する車両において、ロックアップクラッチ係合時のNVHの悪化を防止することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 複数種類の燃料の燃焼で動力を発生して車両を走行させるエンジンと、(b) 予め定められた切換条件に従って前記複数種類の燃料を切り換えながら前記エンジンを作動させる燃料切換制御手段と、(c) 前記エンジンから車輪までの動力伝達経路に設けられた流体継手と、(d) その流体継手と並列に設けられてその流体継手の前後を直結する摩擦係合式のロックアップクラッチと、(e) そのロックアップクラッチを所定の係合解放条件に従って係合・解放するクラッチ制御手段と、を有する車両用ロックアップクラッチの制御装置において、(f) 前記クラッチ制御手段は、前記エンジンの燃料の種類に応じて定められた異なる係合解放条件に従って前記ロックアップクラッチの係合解放制御を行うものであることを特徴とする。
【0007】第2発明は、(a) 複数種類の燃料の燃焼で動力を発生して車両を走行させるエンジンと、(b) 予め定められた切換条件に従って前記複数種類の燃料を切り換えながら前記エンジンを作動させる燃料切換制御手段と、(c) 前記エンジンから車輪までの動力伝達経路に設けられた流体継手と、(d) その流体継手と並列に設けられてその流体継手の前後を直結する摩擦係合式のロックアップクラッチと、(e) そのロックアップクラッチを所定のスリップ条件下でスリップ係合させるクラッチ制御手段と、を有する車両用ロックアップクラッチの制御装置において、(f) 前記クラッチ制御手段は、前記エンジンの燃料の種類に応じて定められた異なるスリップ状態で前記ロックアップクラッチをスリップ係合させるものであることを特徴とする。
【0008】第3発明は、第1発明または第2発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置において、(a) 前記燃料切換制御手段によって前記エンジンの燃料が切り換えられる時には、前記クラッチ制御手段による制御を中止して前記ロックアップクラッチを解放するロックアップ解放手段を有するとともに、(b) 前記エンジンの燃料の切換えが終了して前記クラッチ制御手段による制御が再開される前に、前記燃料の種類に応じて前記係合解放条件または前記スリップ状態の設定が変更されることを特徴とする。
【0009】
【発明の効果】第1発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置は、エンジンの燃料の種類に応じて定められた異なる係合解放条件に従ってロックアップクラッチの係合解放制御が行われるため、燃料の種類によってエンジンのトルク変動特性が異なる場合でも、係合時のNVHの悪化が抑制される。
【0010】第2発明の車両用ロックアップクラッチの制御装置は、エンジンの燃料の種類に応じて定められた異なるスリップ状態でロックアップクラッチがスリップ係合させられるため、燃料の種類によってエンジンのトルク変動特性が異なる場合でも、スリップ係合時のNVHの悪化が抑制される。
【0011】第3発明では、燃料切換制御手段によってエンジンの燃料が切り換えられる時にロックアップクラッチが解放されるため、燃料の切換えに伴うエンジンのトルク変動に起因して大きな駆動力変動が生じることが抑制される。また、燃料の切換えが終了してクラッチ制御手段による制御が再開される前に、新たな燃料の種類に応じて前記第1発明の係合解放条件または前記第2発明のスリップ状態の設定が変更されるため、係合解放条件の変更に伴ってロックアップクラッチの係合・解放が短時間の間に繰り返されたり、スリップ係合中にスリップ状態が急に変化して駆動力変動が生じたりする恐れがない。
【0012】
【発明の実施の形態】ここで、エンジンの作動に使用する複数種類の燃料としては、ガソリンや水素、LPG、メタノールなど燃焼によって所定の出力が得られる種々の可燃性物質を採用できる。また、少なくとも2種類の燃料を使用してエンジンを作動させるようになっておれば良く、3種類以上の燃料を切り換えて使用することも可能である。2種類の燃料の混合割合を変更しながらエンジンを作動させる場合も、混合割合が異なる複数種類の燃料に相当する。
【0013】また、本発明は、例えば変速比が異なる複数のギヤ段を有する有段の自動変速機を備えているとともに、その自動変速機とエンジンとの間の動力伝達経路に、ロックアップクラッチ付のトルクコンバータが配設されている車両に好適に適用される。トルクコンバータは流体継手に相当するものであるが、フルードカップリング等の他の流体継手が用いられても良い。ロックアップクラッチとしては、油圧式や電磁式等の摩擦係合装置が用いられる。
【0014】第1発明の係合解放条件は、ロックアップクラッチを解放状態と完全係合状態とに切り換えるものでも、解放状態とスリップ係合状態とに切り換えるものでも、或いは解放状態と完全係合状態とスリップ係合状態とに切り換えるものでも良く、例えばアクセル操作量および車速等の運転状態をパラメータとして、解放領域と完全係合領域とスリップ係合領域とを有するマップなどで定められる。解放側の条件と係合側の条件とが、所定のヒステリシスを有するように別々に定められても良い。
【0015】燃料の種類に応じて定められる異なる係合解放条件は、燃料の種類毎に係合解放条件が予め別々に定められても良いが、一つの燃料の係合解放条件を基準にして所定の補正を行って別の燃料の係合解放条件が設定されるようになっていても良いなど、少なくとも燃料の種類毎に異なる係合解放条件が適用されるようになっておれば良い。第2発明のスリップ状態についても同様である。
【0016】第2発明のスリップ条件は、第1発明の係合解放条件に相当するもので、第2発明の実施に際しても、第1発明と同様にエンジンの燃料の種類に応じて異なるスリップ条件が設定されるようにしても良い。すなわち、燃料の種類に応じて異なるスリップ条件およびスリップ状態が設定されるようになっていても良いのである。
【0017】また、第2発明のスリップ状態は、例えば相対回転速度(回転速度差)等のスリップ率や、スリップ係合トルク(伝達トルク)などで表され、ロックアップクラッチが油圧式の摩擦係合装置の場合、クラッチ制御手段は、例えば所定のスリップ率(相対回転速度)になるように油圧をフィードバック制御したり、予め定められた油圧とスリップ係合トルクとの相関関係(マップなど)に基づいて所定のスリップ係合トルクが得られるように油圧を制御したりするように構成される。これにより、燃料の種類に応じて異なるスリップ状態でスリップ係合させることができる。油圧は、ロックアップクラッチの摩擦材を押圧する押圧力に相当し、電磁式の摩擦係合装置の場合は、油圧の代わりに電磁力を制御すれば良い。
【0018】第3発明では燃料の切換え時にロックアップ解放手段によってロックアップクラッチが解放されるようになっているが、他の発明の実施に際しては必ずしもロックアップクラッチを解放する必要はなく、係合状態のまま燃料の切換えを実施しても良い。また、例えばロックアップクラッチの係合中に燃料の切換え判断が為された場合は、所定のスリップ状態でスリップ係合させた状態で燃料を切り換えるようにしても良い。
【0019】以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明が適用されたハイブリッド型の車両用駆動装置の概略構成図で、図2は中心線より下半分を省略した骨子図である。これ等の図において、燃料の燃焼で動力を発生するエンジン10の出力は、流体継手としてのトルクコンバータ12を介して自動変速機14に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。エンジン10は走行用駆動源に相当し、本実施例ではガソリンおよび水素を燃料として作動させられるようになっており、燃料供給路を開閉する電磁開閉弁等を有する燃料切換装置102(図6参照)によって何れかの燃料に切り換えられる。トルクコンバータ12は、エンジン10のクランク軸16に入力クラッチ17および中間軸19を介して連結されたポンプ翼車18と、自動変速機14の入力軸20に連結されたタービン翼車22と、それらポンプ翼車18およびタービン翼車22の間を直結するロックアップクラッチ24と、一方向クラッチ26によって一方向の回転が阻止されているステータ28とを備えている。ロックアップクラッチ24は油圧式の摩擦係合装置で、ロックアップコントロールソレノイドバルブ104(図6参照)による油圧制御によって解放状態とスリップ係合状態と完全係合状態とに切り換えられる。
【0020】自動変速機14は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機30と、後進ギヤ段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機32とを備えている。第1変速機30は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリアK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置34と、サンギヤS0とキャリアK0との間に並列に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング41間に設けられたブレーキB0とを備えており、キャリアK0が前記入力軸20に連結され、リングギヤR0が中間軸44に連結されている。
【0021】第2変速機32は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリアK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置36と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリアK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置38と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置40とを備えている。
【0022】上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリアK2とキャリアK3とが一体的に連結され、そのキャリアK3は出力軸42に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3に一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸44との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸44との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング41に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング41との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸20と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0023】キャリアK1とハウジング41との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング41との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0024】このような自動変速機14は、例えば図3に示す作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段のギヤ段のいずれかに切り換えられる。図3において「○」は係合状態を示し、空欄は解放状態を示し、「●」はエンジンブレーキを発生させるときの係合状態を示し、「△」は係合するが動力伝達に関係無いことを表している。クラッチC0〜C2やブレーキB0〜B4(以下、特に区別しない場合は単にクラッチCやブレーキBという)は、それぞれ油圧シリンダに作動油が供給されることにより、その油圧に基づいて摩擦材が摩擦係合させられる多板式、単板式、バンド式等の摩擦係合装置で、変速用の複数のATソレノイドバルブ98(図6参照)等によって係合、解放状態が切り換えられるようになっている。
【0025】図5のシフトパターンに従って操作されるシフトレバー46(図4参照)がエンジンブレーキポジションである「3」ポジション、「2」ポジション、「L」ポジションのいずれかに操作されている時には、その最高速ギヤ段でエンジンブレーキが発生させられる。例えば、第1速ギヤ段(1st)のみで走行する「L」ポジションでは、ブレーキB4が係合させられることによってアクセルペダルの非操作状態(アクセルOFF)であるような非駆動(パワーOFF)走行においてエンジンブレーキが発生させられるが、シフトレバー46が「D」ポジションに操作されている第1速ギヤ段(1st)での走行時では、そのブレーキB4が解放させられることから、アクセルペダルの非操作状態であるような非駆動走行において一方向クラッチF2の滑りおよびリングギヤR3の空転が許容されるので、自動変速機14内において動力伝達経路が解放され、車両がエンジンブレーキが作用しない惰行走行とされる。第1速ギヤ段(1st)および第2速ギヤ段(2nd)で変速が行われる「2」ポジションでは、第2速ギヤ段(2nd)の走行時において、クラッチC0が係合させられることによりエンジンブレーキが可能とされ、「D」ポジションの第2速ギヤ段(2nd)ではクラッチC0が解放させられることにより一方向クラッチF0のすべりが許容されて惰行走行とされる。また、第1速ギヤ段(1st)〜第3速ギヤ段(3rd)で変速が行われる「3」ポジションでは、第3速ギヤ段(3rd)の走行時において、ブレーキB1が係合させられることによりエンジンブレーキが可能とされ、「D」ポジションではブレーキB1が解放させられることにより一方向クラッチF1のすべりが許容されて惰行走行とされる。
【0026】上記シフトレバー46は、図5に示すように車両の前後方向に位置するP(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)および4ポジション、3ポジション、2ポジション、L(ロー)ポジションへ操作されるとともに、Dポジションと4ポジションの間が車両の左右方向に操作されるようにその支持機構が構成されている。そして、Dポジションへ操作されると第1速ギヤ段(1st)〜第5速ギヤ段(5th)で変速制御を行うDレンジが設定され、4ポジションへ操作されると第1速ギヤ段(1st)〜第4速ギヤ段(4th)で変速制御を行う4レンジが設定され、3ポジションへ操作されると第1速ギヤ段(1st)〜第3速ギヤ段(3rd)で変速制御を行う3レンジが設定され、2ポジションへ操作されると第1速ギヤ段(1st)および第2速ギヤ段(2nd)で変速制御を行う2レンジが設定され、Lポジションへ操作されると第1速ギヤ段(1st)に固定するLレンジが設定される。また、シフトレバー46の近傍にはスポーツモードスイッチ48が設けられ、ステアリングホイール等に設けられた図示しないアップレンジスイッチやダウンレンジスイッチを操作することにより、運転者が任意に走行レンジ(Lレンジ〜4レンジ)を切り換えることができるようになっている。
【0027】上記シフトレバー46には、図4に示すように油圧制御部50に設けられたマニュアルバルブ60がケーブルやリンク機構等を介して機械的に連結されており、機械式オイルポンプ52または電動オイルポンプ54からプライマリレギュレータバルブ56を介して供給される作動油が、シフトレバー46の操作ポジション(シフトポジション)に応じて前記クラッチCやブレーキBへ出力されるようになっている。機械式オイルポンプ52は、トルクコンバータ12のポンプ翼車18と一体的にエンジン10によって回転駆動されるもので、電動オイルポンプ54は、エンジン10の作動とは無関係に図6に示すコントローラ(ECU)62によって作動させられる。油圧制御部50にはまた、入力クラッチコントロールソレノイドバルブ58が設けられており、プライマリレギュレータバルブ56から供給される作動油の油圧を調圧制御することにより、前記入力クラッチ17を係合、解放、スリップ係合させるようになっている。入力クラッチ17は、前記クラッチCやブレーキBと同様な油圧式の摩擦係合装置である。前記トルクコンバータ12にも、この油圧制御部50から作動油が供給されるようになっており、ロックアップコントロールソレノイドバルブ104による油圧制御でロックアップクラッチ24が係合解放制御される。
【0028】図1に戻って、前記エンジン10のクランク軸16にはベルトやチェーン等の駆動装置66を介して第2モータジェネレータ68が接続されている。第2モータジェネレータ68は、エンジン10の始動時にクランキングしたり、エアコン等の補機を駆動したりするもので、必要に応じてエンジン10との間にクラッチが設けられる。また、入力クラッチ17とトルクコンバータ12との間には、図2に示されているように第1モータジェネレータ70が配設され、中間軸19に連結されている。この第1モータジェネレータ70は、電動モータおよびジェネレータとして使用されるもので、例えば車両停止時にエンジン10の作動を停止させるエコランシステムにおいて、再発進時に第1モータジェネレータ70を用いて車両を速やかに発進させるとともに、ブレーキ操作時やコースト走行時等に回生制動により発電して図示しないバッテリを充電する。通常の車両走行時に、第1モータジェネレータ70を駆動源として使用することもできる。
【0029】図6は、本実施例の車両用駆動装置の制御系統を示す図で、コントローラ62には図6の左側に示すスイッチやセンサ等から各種の信号が入力されるとともに、マイクロコンピュータによりROM等に予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行って右側に示す各種の装置等に制御信号などを出力することにより、エンジン10の出力制御や自動変速機14の変速制御、ロックアップクラッチ24の係合解放制御などを行う。図6の左側に示すエンジン回転速度センサ76はエンジン10の回転速度NEを検出するセンサで、車速センサ78は出力軸42の回転速度Nout (車速Vに対応)を検出するセンサで、入力軸回転速度センサ80は入力軸20の回転速度Nin(厳密にはクラッチC0の回転速度)を検出するセンサである。また、エンジン水温センサ82はエンジン水温Tw を検出するセンサで、AT油温センサ84はAT油温TAT(自動変速機14の作動油の温度)を検出するセンサで、シフトポジションスイッチ86はシフトレバー46のシフトポジション(操作ポジション)を検出するスイッチで、フットブレーキスイッチ88はフットブレーキ操作の有無を検出するスイッチで、アクセル開度センサ90はアクセルペダルの操作量(アクセル開度)θthを検出するセンサで、ペダル踏力センサ92は運転者のブレーキ要求量であるブレーキペダルのペダル踏力(操作力)PBを検出するセンサで、燃料センサ106はエンジン10に供給される燃料の種類を燃料切換装置102の電磁開閉弁の開閉状態などから検出するセンサである。
【0030】また、図6の右側に示す電子スロットル弁94はエンジン10の吸入空気量を制御するもので、燃料噴射装置96はエンジン10に対する燃料の噴射量や噴射タイミングなどを制御するもので、ATソレノイドバルブ98はクラッチCやブレーキBの係合、解放により変速制御を行うもので、ABSアクチュエータ100は車輪がロックしないようにホイールブレーキのブレーキ油圧を制御するものである。電子スロットル弁94のスロットル弁開度や燃料噴射装置96の燃料噴射量、噴射タイミングなどの制御は、エンジン10の燃料としてガソリンを用いる場合と水素を用いる場合とについて、それぞれアクセル操作量θthやエンジン回転速度NE等をパラメータとして予め定められたデータマップや演算式などに従って行われる。また、ATソレノイドバルブ98による変速制御は、例えば図7に示すようにアクセル操作量θthおよび車速V等の運転状態をパラメータとして予め定められた変速マップ(変速条件)に従って行われ、(a) に示すアップシフト線を低速ギヤ段側から高速ギヤ段側へ横切った場合には、その高速ギヤ段へアップシフトする一方、(b) に示すダウンシフト線を高速ギヤ段側から低速ギヤ段側へ横切った場合には、その低速ギヤ段へダウンシフトする。
【0031】コントローラ62はまた、図8に示すように、機能的に燃料切換制御手段110、変速判断手段112、ロックアップ解放手段114、ロックアップ係合解放手段116、スリップ制御手段118、燃料判断手段120を備えており、図9に示すフローチャートに従ってエンジン10の燃料の切換えに伴ってロックアップクラッチ24の係合解放制御の設定を変更する。図9のフローチャートは予め定められた所定のサイクルタイムで繰り返し実行される。
【0032】図9のステップS1では、本制御に必要な各種の信号の読込み処理等を行い、ステップS2ではエンジン10の燃料を切り換えるか否かの判断を、前記燃料切換制御手段110によって実行する。この判断は、例えば(a) 水素燃料の残量が所定値以下になったらガソリンに切り換える、(b) 街中(停車頻度が高い場合など)では水素燃料を優先的に使用する、等の予め定められた切換条件に従って行われる。燃料の切換え判断が無ければそのまま終了するが、燃料の切換え判断が為された場合は、ステップS3で変速中か否かを判断する。この判断は前記変速判断手段112によって行われ、例えば前記ATソレノイドバルブ98に対する指令信号やその励磁状態、実際の変速比(入力軸回転速度Nin/出力軸回転速度Nout )などから判断できる。
【0033】変速中でない場合は直ちにステップS5以下の燃料切換え制御を実行するが、変速中の場合はステップS4でイナーシャ相か否かを判断する。この判断も前記変速判断手段112によって行われ、例えばイナーシャ相の開始は変速前のギヤ段の変速比および実際の出力軸回転速度Nout から求まるイナーシャ相前の入力軸回転速度Nina に対して実際の入力軸回転速度Ninが変化し始めたか否かによって判断でき、イナーシャ相の終了は変速後のギヤ段の変速比および実際の出力軸回転速度Nout から求まる変速後入力軸回転速度Ninb と実際の入力軸回転速度Ninとが略一致するか否か等によって判断できる。そして、イナーシャ相でなければそのまま終了し、イナーシャ相が開始したらステップS5以下の燃料切換え制御を実行する。なお、変速判断手段112によって変速中の判断が為された場合は、前記ロックアップ解放手段114によってロックアップコントロールソレノイドバルブ104が制御されることによりロックアップクラッチ24が解放される。
【0034】ステップS5では、前記ロックアップ解放手段114によってロックアップコントロールソレノイドバルブ104が制御されることによりロックアップクラッチ24が解放され、ステップS6では、前記燃料切換制御手段110によって燃料切換装置102が制御されることによりエンジン10の燃料が切り換えられる。ステップS7では、燃料の切換えが終了したか否かを燃料切換装置102に対する指令信号やその作動状態などから判断し、終了するまでステップS5およびS6を繰り返す。この燃料切換えは、燃料の切換えに伴って大きな駆動力変動などが生じないように、燃料毎のエンジン10のトルク特性等を考慮して行われる。
【0035】燃料の切換えが終了するとステップS8を実行し、前記燃料判断手段120によって燃料センサ106から供給される信号に基づいてエンジン10の燃料が水素か否かを判断する。そして、水素の場合は、ステップS9で水素用のロックアップ切換マップを読み出すとともに、ステップS10で水素用のスリップ率を読み出して、それぞれ設定する。また、水素でない場合、すなわちガソリンの場合には、ステップS11でガソリン用のロックアップ切換マップを読み出すとともに、ステップS12でガソリン用のスリップ率を読み出して、それぞれ設定する。そして、次のステップS13では、それ等の設定されたロックアップ切換マップおよびスリップ率を用いて、ロックアップコントロールソレノイドバルブ104による油圧制御でロックアップクラッチ24の係合解放制御が再開される。但し、変速中に燃料の切換えが行われた場合は、変速が終了するまでロックアップクラッチ24は解放状態に保持され、変速終了後に係合解放制御が再開される。
【0036】上記水素用およびエンジン用のロックアップ切換マップは、ロックアップクラッチ24の係合解放条件に相当するもので、例えばアクセル操作量θthおよび車速V等の運転状態をパラメータとして予めコントローラ62内のROM等の記憶装置に記憶されている。図10は、解放状態(OFF)から係合状態(ON)へ切り換える係合側(OFF→ON)のロックアップ切換マップの一例を示す図で、自動変速機14が第4速ギヤ段(4th)および第5速ギヤ段(5th)の時に、所定の車速Vおよびアクセル操作量θthでロックアップクラッチ24が完全係合或いはスリップ係合させられるようになっており、水素およびガソリンの場合のエンジン10のトルク変動特性に基づいて別々に定められている。すなわち、本実施例では水素が燃焼する時の方がエンジン10の爆発振動が大きく、(b)の水素の場合のロックアップ切換マップの方が(a) のガソリンよりも高車速側でロックアップクラッチ24を係合するように定められている。また、「スリップ」で示されているスリップ係合領域では、ステップS10、S12で設定されたスリップ率でロックアップクラッチ24がスリップ係合させられるが、本実施例では水素の方がスリップ率が大きめに定められており、例えばガソリンの場合のスリップ率(回転速度差)は50rpm程度で、水素の場合のスリップ率(回転速度差)は80rpm程度である。これ等のスリップ率もロックアップ切換マップと同様に予めコントローラ62内のROM等の記憶装置に記憶されている。なお、解放側(ON→OFF)のロックアップ切換マップは、係合側と同じであっても良いが、所定のヒステリシスを有するように少し低車速側に設定することが望ましい。
【0037】上記ステップS9、S11は前記ロックアップ係合解放手段116によって実行され、ステップS10、S12はスリップ制御手段118によって実行される。また、ステップS13のうちスリップ制御を除く係合解放制御はロックアップ係合解放手段116によって実行され、スリップ制御はスリップ制御手段118によって実行される。スリップ制御手段118によるロックアップクラッチ24のスリップ制御は、本実施例では前記ステップS10またはS12で設定されたスリップ率(回転速度差)になるようにロックアップコントロールソレノイドバルブ104によって油圧をフィードバック制御することによって行われる。ロックアップ係合解放手段116は第1発明のクラッチ制御手段に相当し、スリップ制御手段118は第2発明のクラッチ制御手段に相当する。
【0038】図11は、エンジン10の燃料が水素からガソリンへ切り換えられた場合のエンジン回転速度NEやロックアップクラッチ24のON(完全係合)、OFF(解放)の変化の一例を示すタイムチャートで、時間t0 は、水素を燃料とするエンジン10の作動中で且つロックアップクラッチ24が完全係合(ON)させられている時に、アップシフトの変速出力が為されてロックアップ解放手段114によりロックアップクラッチ24の解放制御が開始された時間である。時間t1は、燃料切換制御手段110によってエンジン10の燃料を水素からガソリンへ切り換える旨の判断が為されて、ステップS2の判断がYESになった時間である。時間t3 は、アップシフトの変速指令に従って自動変速機14がアップシフトされる際に変速状態がイナーシャ相になり、ステップS4に続いてステップS5、S6が実行されてエンジン10の燃料が水素からガソリンへ切り換えられた時間である。また、時間t4 は自動変速機14の変速が終了した時間で、これによりガソリン用のロックアップ切換マップに従ってロックアップクラッチ24の係合解放制御が再開される。なお、「燃料の種類」の欄の破線は、変速中でない場合にステップS3に続いて直ちにステップS5、S6が実行されて燃料が切り換えられた場合である。
【0039】このように、本実施例の車両用ロックアップクラッチの制御装置によれば、エンジン10の燃料の種類すなわち水素およびガソリン毎に異なるロックアップ切換マップに従ってロックアップクラッチ24の係合解放制御が行われるため、燃料の種類によってエンジン10のトルク変動特性が異なっても係合時のNVHの悪化が抑制される。具体的には、エンジン10の爆発振動が大きい水素を用いる場合には、ガソリンよりも高車速側でONになるロックアップ切換マップに従って係合解放制御が行われるため、爆発振動が大きい水素を用いた場合でも係合時のNVHの悪化が防止されるのである。
【0040】また、上記ロックアップ切換マップはスリップ領域を備えているが、そのスリップ領域のスリップ率も燃料の種類に応じて別々に定められ、水素を用いる場合はガソリンよりもスリップ率が大きくされているため、爆発振動が大きい水素を用いた場合でもスリップ係合時のNVHの悪化が防止される。
【0041】また、エンジン10の燃料を切り換える時にはロックアップクラッチ24が解放されるため、燃料の切換えに伴うエンジン10のトルク変動に起因して大きな駆動力変動が生じることが抑制される。また、燃料の切換えが終了してロックアップクラッチ24の係合解放制御が再開される前に、新たな燃料の種類に応じてロックアップ切換マップおよびスリップ率の設定が変更されるため、ロックアップ切換マップの変更に伴ってロックアップクラッチ24の係合・解放が短時間の間に繰り返されたり、スリップ係合中にスリップ率が変化して駆動力変動が生じたりする恐れがない。
【0042】以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年11月17日(1999.11.17)
【代理人】 【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸 (外2名)
【公開番号】 特開2001−141052(P2001−141052A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−326461