| 【発明の名称】 |
ロックアップクラッチの締結力制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】西山 安磨
【氏名】上野 隆司
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| 【要約】 |
【課題】トルクコンバータのスリップ制御の学習補正の簡素化と、該学習結果を取り入れたスリップ制御自体の簡素化とを図ることを課題とする。
【解決手段】ニューラルネットワークを用いて学習補正量Hを算出する。この補正量Hは制御開始時デューティ率D1を補正する学習量の変化分である。今回算出した学習補正量Hを今回用いた学習量に加算して運転状態毎にメモリに格納する。次回の同じ運転状態のスリップ制御時に学習量をメモリから読み出して制御開始時デューティ率D1を補正する。ニューラルネットワークは、制御開始時差回転S1及びデューティ率D1、ピストンストローク開始時差回転S2及びデューティ率D2、定常状態移行時差回転S3及びデューティ率D3、並びに制御開始からピストンストローク開始までの時間T1を入力情報とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トルクコンバータの入力部材と出力部材とを完全に締結するロックアップ状態、相対回転可能に締結するスリップ状態、又は完全に解放するコンバータ状態のいずれかに選択的に作動するロックアップクラッチと、該クラッチの締結力を、印加されたデューティ率に応じた大きさの作動圧を該クラッチに供給することにより調整する締結力調整手段と、車両の運転状態に基づいてトルクコンバータを上記のどの状態にすべきかを判定する判定手段と、該判定手段によりスリップ状態にすべきことが判定されたときに所定のデューティ率を制御開始時デューティ率として設定する制御開始時デューティ率設定手段と、該設定手段で設定された制御開始時デューティ率と所定のフィードフォワード制御量とから設定されたフィードフォワードデューティ率を締結力調整手段に印加していくフィードフォワード制御手段と、該制御手段により上記両部材間の差回転と所定の目標差回転との偏差が所定値まで小さくなったときに該時点でのデューティ率をフィードバック制御開始時デューティ率として設定するフィードバック制御開始時デューティ率設定手段と、該設定手段で設定されたフィードバック制御開始時デューティ率と、差回転と目標差回転との偏差に応じて設定されたフィードバック制御量とから設定されたフィードバックデューティ率を締結力調整手段に印加していくフィードバック制御手段とを備えるロックアップクラッチの締結力制御装置であって、上記制御開始時デューティ率設定手段で設定された制御開始時デューティ率を上記フィードフォワード制御手段及びフィードバック制御手段による締結力調整手段の制御の結果に基づいて学習補正する学習補正手段が備えられていることを特徴とするロックアップクラッチの締結力制御装置。 【請求項2】 学習補正手段は、差回転、デューティ率、又は制御開始時から差回転偏差が所定値まで小さくなったときまでの時間の少なくともいずれかの状態量を入力情報とするニューラルネットワーク演算を用いてデューティ率の学習量を設定し、該学習量を制御開始時デューティ率に加算することを特徴とする請求項1に記載のロックアップクラッチの締結力制御装置。 【請求項3】 学習補正手段は、差回転又はデューティ率として、制御開始時の差回転又はデューティ率と、差回転偏差が所定値まで小さくなったときの差回転又はデューティ率との偏差、及び、差回転偏差が所定値まで小さくなったときの差回転又はデューティ率と、フィードバック制御手段により差回転が安定したときの差回転又はデューティ率との偏差をニューラルネットワーク演算の入力情報とすることを特徴とする請求項2に記載のロックアップクラッチの締結力制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、トルクコンバータに備えられるロックアップクラッチの締結力制御装置に関し、より詳しくは、トルクコンバータの入力部材と出力部材とのスリップ量を目標スリップ量に収束させるスリップ制御の技術分野に属する。 【0002】 【従来の技術】例えば、車両に搭載される自動変速機は、トルクコンバータと変速歯車機構とを組み合わせ、この変速歯車機構の動力伝達経路をクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素の選択的作動により切り換えて、所定の変速段に自動的に変速するように構成したものであるが、その場合に、上記トルクコンバータに、そのエンジン側の入力部材と変速歯車機構側の出力部材とを締結したり解放したりするロックアップクラッチが備えられることがある。 【0003】このロックアップクラッチは、一般に、車速やエンジンのスロットル開度等の車両の運転状態に基いて制御される。例えば、トルク増大作用が要求される高負荷低速領域では、トルクコンバータの入力部材と出力部材とを完全に解放するように(コンバータ状態)、また、燃費性能が重視される低負荷高速領域では、上記両部材を完全に締結するように(ロックアップ状態)、そして、低負荷低速領域や変速時等には、良好な燃費性能を確保しながらショックや振動等を吸収するために上記両部材を相対回転可能に締結するように(スリップ状態)制御される。 【0004】その場合に、上記コンバータ状態又はロックアップ状態からスリップ状態への移行時には、トルクコンバータの入力部材と出力部材との間の差回転、すなわちスリップ量を所定の目標スリップ量とするために、油圧制御回路に配設したデューティソレノイドバルブ等の締結力調整手段に印加するデューティ率を制御することが一般に行なわれる(スリップ制御)。この制御は、例えばフィードバック制御によって遂行される。すなわち、上記両部材間の実スリップ量と目標スリップ量との偏差に応じてフィードバック制御量を設定し、このフィードバック制御量と、例えばタービントルク等に応じて設定された制御開始時のデューティ率とからフィードバックデューティ率を設定して、このフィードバックデューティ率を上記デューティソレノイドバルブに印加していくのである。 【0005】デューティ率が印加されたデューティソレノイドバルブは、該デューティ率に応じた大きさの作動圧を生成し、その作動圧をロックアップクラッチの油圧室に供給する。ロックアップクラッチはその作動圧を受けて目標スリップ量が実現するように作動する。このとき、制御開始時は、実スリップ量と目標スリップ量との偏差が大きいから、大きい値のフィードバック制御量が設定される。しかも、デューティ率が印加されてから、作動圧がロックアップクラッチに作用し、それがスリップ量に反映されるまで、どうしても油圧の応答遅れが生じるから、制御にオーバーシュートが発生する可能性がある。 【0006】例えばコンバータ状態からのスリップ制御時にオーバーシュートが発生すれば、ロックアップクラッチが目標スリップ量を実現させる締結状態を超えて締結方向に作動し過ぎ、不測にロックアップ状態となるショックや、振動、騒音等が発生する。また、ロックアップ状態からのスリップ制御時にオーバーシュートが発生すれば、ロックアップクラッチが目標スリップ量を実現させる締結状態を超えて解放方向に作動し過ぎ、不測にコンバータ状態となるショックが発生する。これらは、いずれも、ユーザの違和感、不快感となって現れる。 【0007】この問題に対処するためには、フィードバック制御を行う前に、フィードフォワード制御を実行することが考えられる。すなわち、実スリップ量と目標スリップ量との偏差の如何に拘らず予め定められた所定のフィードフォワード制御量と、制御開始時のデューティ率とからフィードフォワードデューティ率を設定して、このフィードフォワードデューティ率を上記デューティソレノイドバルブに印加していくのである。フィードフォワード制御によって実スリップ量と目標スリップ量との偏差が安定、且つ、確実、早期に所定値まで小さくなり、その時点でフィードバック制御に切り換えることによって該フィードバック制御の開始当初からフィードバック制御量が低く抑えられ、オーバーシュートの抑制が図られる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】ところで、トルクコンバータやロックアップクラッチあるいはデューティソレノイドバルブ等には個体差や経年変化が生じ、同一内容のスリップ制御を実行しても、あるものは応答特性が敏感でオーバーシュートし、またあるものは応答特性が鈍感で定常状態に落ち着くまでに時間がかかる。これを解消するものとしては、制御の成り行きや結果を理想形と比較してその差に応じた学習量(補正量)を算出しておき、次に同じ制御を同じ条件で実行するときに、該学習量を基本量に加算するいわゆる学習補正制御が知られている。 【0009】しかしながら、制御開始当初はフィードフォワード制御を行い、そののち所定のタイミングでフィードバック制御に切り換えるという上述のようなスリップ制御では、形態の異なる二つの制御の各々に対して学習補正量を設定する必要が生じる。その結果、例えばフィードフォワード制御で用いるフィードフォワード制御量に補正を加えたり、フィードバック制御で用いるフィードバック制御ゲインを変更したり、あるいはパラメータ検索用の種々のマップやテーブル等を修正したりして、学習補正制御自体が複雑化する。のみならず、そのようにして設定された学習量を用いてスリップ制御を実行する際においても、時々刻々状況が変化する制御中に用いる演算式や演算法、検索用マップやテーブル、ないしは制御則そのものが、それぞれ学習補正の結果に伴って変更され、スリップ制御自体が煩雑化する。 【0010】例えば、特開平8−28684号公報に開示されているロックアップクラッチの学習補正にあっては、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせて用いるスリップ制御において、スリップ制御出力値を決定する際に用いる、積分項を含むスリップ制御式、又は、制御偏差を解消するように設定するフィードバック制御出力値のうち、フィードバック制御出力値を学習補正して更新している。 【0011】本発明は、トルクコンバータのスリップ制御の学習補正における上記のような不具合に対処するもので、学習補正制御自体の複雑化、及び学習を取り入れたときのスリップ制御自体の煩雑化を回避することを課題とする。以下、その他の課題を含め、本発明を詳しく説明する。 【0012】 【課題を解決するための手段】すなわち、本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意研究、検討を重ねた結果、スリップ制御開始時にデューティソレノイドバルブに印可する制御開始時デューティ率が、その後の制御の成り行きに大きく影響することを見出し、該制御開始時デューティ率さえ学習補正の対象とすれば、その後のスリップ制御の成り行き全体を理想形に近づけることができることに着目して、本発明を完成するに至ったものである。 【0013】すなわち、本発明者らは、ある単一のロックアップクラッチ付きトルクコンバータを被検体とし、フィードフォワード制御及びフィードバック制御の内容を同一にして、スリップ制御開始時のデューティ率のみをいろいろに変化させ、詳細な実験を繰り返し行なったところ、表1及び図11に示すような結果を得た。 【0014】なお、この実験は、コンバータ状態からスリップ状態へのスリップ制御について行い、被検体は、デューティ率が高くなるほどロックアップクラッチ解放用の作動油圧が低くなって該クラッチの締結力が上昇し、スリップ量が減少するように構成されたものを用いた。 【0015】 【表1】
【0016】ここで、時間T1は、制御開始時刻t1から、フィードフォワード制御によりロックアップクラッチのピストンがストロークを開始し、その結果、差回転Sが目標差回転Soに所定の範囲まで近づいた時刻t2までの時間である。差回転S1,S2,S3は、それぞれ、制御開始時刻t1における差回転、上記ピストンストローク開始時刻t2における差回転、上記時刻t2から所定時間CTが経過し、フィードフォワード制御により差回転Sが定常状態に落ち着いた時刻t3における差回転である。デューティ率D1,D2,D3は、それぞれ、制御開始時刻t1におけるデューティ率、上記ピストンストローク開始時刻t2におけるデューティ率、上記定常状態移行時刻t3におけるデューティ率である。 【0017】明らかに、制御開始時デューティ率D1が高い場合は、該デューティ率D1が適正で理想的なスリップ制御が実現する場合と比べて、オーバーシュートを生じ、且つ、時間T1が短く、デューティ率D1とデューティ率D2との偏差が小さく、差回転S2と差回転S3との偏差が大きく、デューティ率D2とデューティ率D3との偏差が大きい。そして、この現象は、応答特性が敏感なロックアップクラッチで得られる現象と同じ傾向である。 【0018】一方、制御開始時デューティ率D1が低い場合は、該デューティ率D1が適正で理想的なスリップ制御が実現する場合と比べて、差回転Sが目標差回転Soに収束するまでの時間が長く、且つ、時間T1が長く、デューティ率D1とデューティ率D2との偏差が大きく、差回転S2と差回転S3との偏差が小さく、デューティ率D2とデューティ率D3との偏差が小さい。そして、この現象は、応答特性が鈍感なロックアップクラッチで得られる現象と同じ傾向である。 【0019】このことから、トルクコンバータないしロックアップクラッチの個体差は、特に、デューティ率の変化に対する差回転の変化に端的に表われ、しかも、たとえスリップ制御の途中で制御形態がフィードフォワード制御からフィードバック制御に切り換わっても、スリップ制御開始時のデューティ率を補正することで、該スリップ制御全体のその後の成り行きを理想形に近づけることができることがわかった。 【0020】すなわち、本願の特許請求の範囲における請求項1に記載の発明は、トルクコンバータの入力部材と出力部材とを完全に締結するロックアップ状態、相対回転可能に締結するスリップ状態、又は完全に解放するコンバータ状態のいずれかに選択的に作動するロックアップクラッチと、該クラッチの締結力を、印加されたデューティ率に応じた大きさの作動圧を該クラッチに供給することにより調整する締結力調整手段と、車両の運転状態に基づいてトルクコンバータを上記のどの状態にすべきかを判定する判定手段と、該判定手段によりスリップ状態にすべきことが判定されたときに所定のデューティ率を制御開始時デューティ率として設定する制御開始時デューティ率設定手段と、該設定手段で設定された制御開始時デューティ率と所定のフィードフォワード制御量とから設定されたフィードフォワードデューティ率を締結力調整手段に印加していくフィードフォワード制御手段と、該制御手段により上記両部材間の差回転と所定の目標差回転との偏差が所定値まで小さくなったときに該時点でのデューティ率をフィードバック制御開始時デューティ率として設定するフィードバック制御開始時デューティ率設定手段と、該設定手段で設定されたフィードバック制御開始時デューティ率と、差回転と目標差回転との偏差に応じて設定されたフィードバック制御量とから設定されたフィードバックデューティ率を締結力調整手段に印加していくフィードバック制御手段とを備えるロックアップクラッチの締結力制御装置であって、上記制御開始時デューティ率設定手段で設定された制御開始時デューティ率を上記フィードフォワード制御手段及びフィードバック制御手段による締結力調整手段の制御の結果に基づいて学習補正する学習補正手段が備えられていることを特徴とする。 【0021】この発明によれば、学習補正を加える対象が制御開始時デューティ率だけであり、その後に行なうフィードフォワード制御及びフィードバック制御の内容については、一切、補正する必要がない。したがって、学習補正制御自体において、例えば、フィードフォワード制御で用いるフィードフォワード制御量に補正を加えたり、フィードバック制御で用いるフィードバック制御ゲインを変更したり、あるいはパラメータ検索用の種々のマップやテーブル等を修正したりすることがなく、学習補正制御の複雑化が回避される。一方、該補正を考慮してスリップ制御を実行する場合においても、例えば、制御中に時々刻々用いる演算式や演算法、検索用マップやテーブル、ないしは制御則そのものが変更されることがなく、スリップ制御自体の煩雑化が回避される。 【0022】次に、請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明において、学習補正手段は、差回転、デューティ率、又は制御開始時から差回転偏差が所定値まで小さくなったときまでの時間の少なくともいずれかの状態量を入力情報とするニューラルネットワーク演算を用いてデューティ率の学習量を設定し、該学習量を制御開始時デューティ率に加算することを特徴とする。 【0023】この発明によれば、前述の差回転S、デューティ率D、又は制御開始時からピストンストローク開始時までの時間T1という、個体差の特徴が顕著に現われる車両状態量の少なくとも一つを、ニューラルネットワーク演算の入力情報とするので、精度に優れた学習補正が可能となる。また、ニューラルネットワーク演算を用いることで、学習量の算出、設定が容易化する。 【0024】次に、請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の発明において、学習補正手段は、差回転又はデューティ率として、制御開始時の差回転又はデューティ率と、差回転偏差が所定値まで小さくなったときの差回転又はデューティ率との偏差、及び、差回転偏差が所定値まで小さくなったときの差回転又はデューティ率と、フィードバック制御手段により差回転が安定したときの差回転又はデューティ率との偏差をニューラルネットワーク演算の入力情報とすることを特徴とする。 【0025】この発明によれば、上記差回転Sとして、時刻t1における差回転S1と時刻t2における差回転S2との偏差、及び、時刻t2における差回転S2と時刻t3における差回転S3との偏差、並びに、デューティ率Dとして、時刻t1におけるデューティ率D1と時刻t2におけるデューティ率D2との偏差、及び、時刻t2におけるデューティ率D2と時刻t3におけるデューティ率D3との偏差という、個体差の特徴がより具体的に顕著に現われる車両状態量を、ニューラルネットワーク演算の入力情報とするので、なお一層精度に優れた学習補正が可能となる。以下、実施の形態を通して本発明をさらに詳しく説明する。 【0026】 【発明の実施の形態】図1に示すように、本実施の形態に係る自動変速機10は、主たる構成要素として、エンジンの出力がエンジン出力軸1を介して入力されるトルクコンバータ20と、該コンバータ20の出力により駆動される変速歯車機構としての第1、第2の遊星歯車機構30,40と、これらの遊星歯車機構30,40の動力伝達経路を切り換えるクラッチやブレーキ等の複数の摩擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56とを有し、Dレンジの1〜4速、Sレンジの1〜3速、Lレンジの1〜2速、及びRレンジの後退速が達成される。トルクコンバータ20の反エンジン側には、コンバータケース21を介してエンジン出力軸1により駆動されるオイルポンプ12が配置されている。 【0027】遊星歯車機構30,40は、サンギヤ31,41と、サンギヤ31,41と噛み合う複数のピニオン32…32,42…42と、ピニオン32…32,42…42を支持するピニオンキャリヤ33,43と、ピニオン32…32,42…42と噛み合うインターナルギヤ34,44とを有する。 【0028】トルクコンバータ20のタービンシャフト27と第1遊星歯車機構30のサンギヤ31との間にフォワードクラッチ51が、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のサンギヤ41との間にリバースクラッチ52が、タービンシャフト27と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43との間に3−4クラッチ53がそれぞれ介設されている。また、第2遊星歯車機構40のサンギヤ41を固定する2−4ブレーキ54が備えられている。 【0029】第1遊星歯車機構30のインターナルギヤ34と第2遊星歯車機構40のピニオンキャリヤ43とが連結され、これらと変速機ケース11との間にローリバースブレーキ55とワンウエイクラッチ56とが並列に配置されている。また、第1遊星歯車機構30のピニオンキャリヤ33と第2遊星歯車機構40のインターナルギヤ44とが連結され、これらに出力ギヤ13が接続されている。 【0030】この出力ギヤ13と中間伝動機構60を構成するアイドルシャフト61上の第1中間ギヤ62とが噛み合い、また、アイドルシャフト61上の第2中間ギヤ63と差動装置70の入力ギヤ71とが噛み合って、出力ギヤ13の回転が差動装置70のデフケース72を介して左右の車軸73,74に伝達される。 【0031】表2に上記各摩擦要素51〜55及びワンウェイクラッチ56の作動状態と変速段との関係を示す。 【0032】 【表2】
【0033】図2に示すように、トルクコンバータ20は、エンジン出力軸1に連結されたコンバータケース21に固設されたポンプ22と、該ポンプ22に対向するように配置されて該ポンプ22により作動油を介して駆動されるタービン23と、該タービン23と上記ポンプ22との間で変速機ケース11にワンウェイクラッチ24を介して支持されてトルク増大機能を果たすステータ25と、コンバータケース21とタービン23との間に設けられて該ケース21を介してエンジン出力軸1とタービン23とを直結するロックアップクラッチ26とを有し、上記タービン23のボス23aがタービンシャフト27にスプライン結合されて、タービン23の回転がタービンシャフト27を介して遊星歯車機構30,40側に出力される。 【0034】ロックアップクラッチ26はコンバータケース21の平面部21aに対向して配置されたクラッチピストン26pを有し、該ピストン26pの反エンジン側のリヤ室26r内に供給される作動油圧によって上記平面部21aに締結される。このときエンジン出力軸1とタービンシャフト27とが直結する。また、ロックアップクラッチ26は、上記ピストン26pのエンジン側のフロント室26f内に供給される作動油圧によって解放される。そして、ロックアップクラッチ26は、フロント室26f内に供給される作動油圧を調整することによってスリップ状態に制御される。 【0035】油圧制御回路80には、上記リヤ室26r及びフロント室26fへの作動油圧の給排を制御するロックアップコントロールバルブ81が備えられている。このバルブ81には、図示しない油圧源から一定圧に調整されたコンバータ圧を供給するライン82と、パイロット圧を供給するライン83と、デューティソレノイドバルブ84で生成された制御油圧を供給するライン85とが接続されている。 【0036】パイロット圧供給ライン83からパイロット圧が供給されていないときは、スプール81aがスプリング81bの付勢力により図面上右側に位置し、コンバータ圧供給ライン82からのコンバータ圧が解放ライン86を介してフロント室26fに供給される。これにより、ロックアップクラッチ26が解放されてコンバータ状態が実現する。 【0037】一方、パイロット圧供給ライン83からパイロット圧が供給されると、スプール81aがスプリング81bの付勢力に抗して図面上左側に位置し、コンバータ圧供給ライン82からのコンバータ圧が締結ライン87を介してリヤ室26rに供給される。これにより、ロックアップクラッチ26が締結されてロックアップ状態が実現する。 【0038】そして、このロックアップ状態において、デューティソレノイドバルブ84で生成された制御油圧が、制御圧供給ライン85、ロックアップコントロールバルブ81、及び解放ライン86を介してフロント室26fに供給されると、ロックアップクラッチ26の締結力が該制御油圧に応じて制御され、トルクコンバータ20のポンプ22とタービン23との間のスリップ量が制御されてスリップ状態が実現する。 【0039】この自動変速機10は、図3に示すように、上記ロックアップクラッチ26の制御と変速制御とを併せて行うコントロールユニット100を備える。このコントロールユニット100は、車速を検出する車速センサ101からの信号、エンジンのスロットル開度を検出するスロットル開度センサ102からの信号、トルクコンバータ20の入力回転数であるエンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ103からの信号、トルクコンバータ20の出力回転数であるタービン回転数を検出するタービン回転数センサ104からの信号、及び運転者により選択されているシフト位置(レンジ)を検出するシフト位置センサ105からの信号等を入力する。 【0040】コントロールユニット100は、これらの各信号が示す車両の運転状態と予め設定された変速マップとから変速段を設定し、その変速段が達成されるように、油圧制御回路80に備えられた複数の変速用ソレノイドバルブあるいはデューティソレノイドバルブ106…106に制御信号を出力する。 【0041】また、コントロールユニット100は、これらの各信号が示す車両の運転状態と予め設定されたロックアップマップとからトルクコンバータ20をコンバータ状態、ロックアップ状態、又はスリップ状態のどの状態にすべきかを判定し、その判定した状態が得られるように、上記ロックアップクラッチ用デューティソレノイドバルブ84に制御信号を出力する。 【0042】ロックアップマップは車速やエンジンのスロットル開度等の車両の運転状態に応じて設定されている。例えば、図4に示すように、高負荷低速領域はコンバータ状態を実現すべきコンバータ領域とされ、トルクの増大が図られる。低負荷高速領域はロックアップ状態を実現すべきロックアップ領域とされ、燃費の向上が図られる。低負荷低速領域はスリップ状態を実現すべきスリップ領域とされ、燃費の向上とショックの吸収との両立が図られる。 【0043】次に、上記ロックアップクラッチ26の具体的制御動作の一例を、コンバータ状態からスリップ状態へ移行する場合のスリップ制御を例にとり説明する。なお、ロックアップクラッチ用デューティソレノイドバルブ(以下単に「DSV」と記す)84は、入力される制御信号のデューティ率(1ON−OFF周期におけるON時間の比率)が大きいほど低い制御油圧を生成し、ロックアップクラッチ26の締結力が増大する。したがって、コンバータ状態からスリップ状態へのスリップ制御時は、基本的にDSV84に印可するデューティ率が増大する。 【0044】図5に示すように、コンバータ状態からスリップ状態へのスリップ制御は、運転状態がコンバータ領域からスリップ領域に移行してスリップ制御を開始すべきことが判定された時刻(制御開始時刻)t1からロックアップクラッチ26のピストン26pがストロークを開始した時刻t2までの時間T1と、時刻t2から安定したスリップ状態に収束した時刻t3までの時間T2とに区分され、これらを過渡領域とし、時刻t3以降を定常領域とする。そして、過渡領域では、時刻t2までフィードフォワード制御を実行し、該時刻t2で制御形態を切り換え、時刻t3までフィードバック制御を実行する。また、定常領域では、引き続き、フィードバック制御を実行する。 【0045】図6のフローチャートにおいて、まずステップS1で、スリップ制御フラグFaが0か否かを判定する。このフラグFaは運転状態がスリップ領域にないうちは0にリセットされている。したがって、このスリップ制御の1回目のサイクルでは0であるから、ステップS2を実行して、上記スリップ制御フラグFaを1にセットする。 【0046】次に、ステップS3で、学習量Gを読み込む。すなわち、図9に示すように、このスリップ制御開始時t1におけるスロットル開度θ1、差回転(=エンジン回転数センサ103で検出されるエンジン回転数Ne−タービン回転数センサ104で検出されるタービン回転数Nt、又はその絶対値)S1、及び油温Tp1に基づいて検索テーブルから学習量Gを読み込む。図示したように、学習量Gは、スロットル開度(a)、差回転(b)、及び油温(c)の各領域毎に区分して検索テーブルに格納されている。 【0047】例えば、スロットル開度(a)は、10%未満、10%以上20%未満、20%以上30%未満、30%以上40%未満、及び40%以上の五つの領域に分けられている。また、差回転(b)は、400rpm未満、400rpm以上500rpm未満、500rpm以上600rpm未満、及び600rpm以上の四つの領域に分けられている。そして、油温(c)は、40℃以上50℃未満、50℃以上60℃未満、及び60℃以上の三つの領域に分けられている。 【0048】次に、ステップS4で、例えばタービントルク等に応じて別途設定される所定のデューティ率Daに上記学習量Gを加算したデューティ率をスリップ制御開始時t1のデューティ率Dfとしてセットする。 【0049】これにより、フロント室26f内の制御油圧がコンバータ圧の一定圧から一気に所定の油圧にまで低下し、クラッチピストン26pがストロークを開始するまでの時間T1、ひいては過渡領域時間(T1+T2)全体が適正に短縮される。 【0050】然る後、ステップS5で、このスリップ制御開始時t1における状態量を計測する。ここで計測された状態量は、後にステップS22で実行する学習制御量Hの算出及び学習量Gの更新に用いられる。ここで計測される状態量には、差回転(S=S1)、デューティ率(D=Df=D1)、作動油の温度(Tp=Tp1)、スロットル開度(θ=θ1)、及びタービントルク(Tt=Tt1)等が含まれる。 【0051】一方、2回目のサイクル以降は、ステップS1からステップS2〜S5をスキップして直接ステップS6に進む。 【0052】次に、ステップS6で、定常領域フラグFbが0か否かを判定する。このフラグFbはスリップ制御が定常領域にないうちは0にリセットされている。したがって、過渡領域にあるうちは0であるから、ステップS7,S8を実行して、第1カウンタの値Tを1づつインクリメントしたうえで、該カウンタ値Tが所定値Toより大きいか否かを判定する。 【0053】その結果、カウンタ値Tが所定値Toより大きい場合は、ステップS9を実行して、上記定常領域フラグFbを1にセットする。つまり、過渡領域時間(T1+T2)を上記所定時間Toに設定しているのである。 【0054】一方、カウンタ値Tが所定値Toより大きくない場合は、ステップS9をスキップして直接ステップS10に進む。また、定常領域に入った以降は、ステップS6からステップS7〜S9をスキップして直接ステップS10に進む。 【0055】次に、ステップS10で、フィードバック制御フラグFcが0か否かを判定する。このフラグFcはクラッチピストン26pがストロークを開始していないうちは0にリセットされている。したがって、時刻t2までは0であるから、ステップS11で、第2カウンタの値T1を1づつインクリメントしたうえで、ステップS12で、デューティ率Dのフィードフォワード制御を実行する。このフィードフォワード制御は、例えば、上記の制御開始時のデューティ率Dfに、所定のフィードフォワード制御量(デューティ率の増分)dfを順次加算していき、得られたデューティ率(フィードフォワードデューティ率:Df=Df+df)をDSV84に印加することにより行なわれる。 【0056】これにより、フロント室26f内の制御油圧が段階的に低下し、クラッチピストン26pがストロークを開始する状態に、安定、且つ、確実、早期に近づいていく。 【0057】次に、ステップS13を実行して、実差回転Sが所定の差回転Sa以下か否かを判定する。その結果、実差回転Sが所定差回転Sa以下である場合は、ステップS14を実行して、上記フィードバック制御フラグFcを1にセットする。つまり、クラッチピストン26pがストロークを開始したことを実差回転Sが所定差回転Sa以下まで低下したことで判定しているのである。 【0058】そして、ステップS15で、このクラッチピストン26pがストロークを開始した時点t2のデューティ率Dfをフィードバック制御開始時t2のデューティ率Dbとしてセットする。 【0059】然る後、ステップS16で、このピストンストローク開始時t2における状態量を計測する。ここで計測された状態量もまた後のステップS22で実行する学習制御量Hの算出及び学習量Gの更新に用いられ、ステップS5のスリップ制御開始時t1の場合と同様に、差回転(S2)、デューティ率(Db=D2)、油温(Tp2)、スロットル開度(θ2)、及びタービントルク(Tt2)等が含まれると共に、さらに、スリップ制御開始時t1からこのピストンストローク開始時t2までの時間、すなわち、ステップS11でインクリメントした第2カウンタの最終値T1が含まれる。 【0060】一方、フィードバック制御に入った以降は、ステップS10からS11〜S16をスキップして直接ステップS17に進む。 【0061】次に、ステップS17で、デューティ率Dのフィードバック制御を実行する。このフィードバック制御は、例えば、上記のフィードバック制御開始時のデューティ率Dbに、目標スリップ量Soと実スリップ量Sとの偏差に応じて算出したフィードバック制御量(制御デューティ率)dbを加算し、得られたデューティ率(フィードバックデューティ率:Db=Db+db)をDSV84に印加することにより行なわれる。 【0062】これにより、過渡領域においては、実スリップ量Sが目標スリップ量Soに向けて収束し、また、安定したスリップ状態に収束した定常領域においては、実スリップ量Sが目標スリップ量Soに維持されるように、ロックアップクラッチ26の締結力がフィードバック制御される。 【0063】次に、ステップS18で、定常領域フラグFbが0か否かを判定する。そして、まだ過渡領域が続いており、0であるときは、そのままリターンする。一方、過渡領域が終了しており、1であるときは、ステップS19で、第4のフラグFdが0か否かを判定する。このフラグFdもまた過渡領域が続いているうちは0にリセットされている。したがって、過渡領域終了後の最初の一回目は0であるから、そのときのみステップS20を実行して、この第4のフラグFdを1にセットする。 【0064】そして、ステップS21で、この定常領域移行時t3における状態量を計測する。ここで計測された状態量もまた次のステップS22で実行する学習制御量Hの算出及び学習量Gの更新に用いられ、ステップS5のスリップ制御開始時t1及びステップS16のピストンストローク開始時t2の場合と同様に、差回転(S3)、デューティ率(D3)、油温(Tp3)、スロットル開度(θ3)、及びタービントルク(Tt3)等が含まれる。そして、次に、ステップS22で、学習補正量Hの算出と、該補正量Hの学習量Gへの反映、すなわち学習量Gの更新とを実行する。 【0065】一方、過渡領域終了後の2回目のサイクル以降は、ステップS19からステップS20〜S22をスキップしてそのままリターンする。また、ステップS13において、実差回転Sが所定差回転Sa以下でないと判定した場合もまたステップS14〜S22をスキップしてそのままリターンする。 【0066】次に、ステップS22の学習補正量Hの算出及び学習量Gの更新を、図7のフローチャート、及び図8、図9のブロック線図に従って説明する。 【0067】すなわち、図示するように、学習補正量Hは、中間層、伝達関数、出力層を具備するニューラルネットワークを用いて演算する。ニューラルネットワークの出力層からは、今回ステップS3でテーブル検索して用いた学習量G(n−1)を補正するための学習制御量Hが出力される。つまり、この学習制御量Hは、今回の学習量G(n−1)からの変化分である。 【0068】そして、この出力値である学習制御量Hは、次回の同じ条件、すなわち同じスロットル開度(a)の領域、同じ差回転(b)の領域、及び同じ油温(c)の領域でのスリップ制御のために、学習量Gに反映される(学習量Gの更新)。すなわち、今回の学習量G(n−1)にこの学習制御量Hを加算して得られた値で、検索テーブルの該当する区域内に格納されている値を書き換えるのである。 【0069】これにより、条件(a),(b),(c)の略全領域に亘って学習量Gが更新されていき、いずれの運転状態においても、適正な学習補正が担保される。 【0070】図7のフローチャートにおいて、まずステップS31で、今回ステップS5,S16,S21で計測した状態量のうち、スリップ制御開始時t1、ピストンストローク開始時t2、及び定常状態移行時t3における各差回転S1,S2,S3、デューティ率D1,D2,D3、及びスリップ制御開始時t1からピストンストローク開始時t2までの時間T1を正規化する。 【0071】次に、ステップS32で、これらの状態量を入力信号(入力情報)とし、一方、理想とする差回転S1とS2との偏差ΔSo12、差回転S2とS3との偏差ΔSo23、デューティ率D1とD2との偏差ΔDo12、デューティ率D2とD3との偏差ΔDo23、及び時間To1を教師入力として、実差回転偏差ΔS12(=│S1−S2│),ΔS23(=│S2−S3│)、実デューティ率偏差ΔD12(=│D1−D2│),ΔD23(=│D2−D3│)、及び時間T1がそれぞれ上記理想値をとるときのスリップ制御開始時t1のデューティ率D1に関する学習制御量Hをニューラルネットネットワーク演算により演算する。 【0072】なお、図7のステップS32において、「W1」、「K1」、「W2」、「K2」と表記したのは、それぞれ、定数で、マトリックスである。また、「IN」と表記したのは、入力情報、「X」と表記したのは、その他の状態量、すなわち、油温Tp1,Tp2,Tp3、スロットル開度θ1,θ2,θ3、タービントルクTt1,Tt2,Tt3等の状態量、を含む複数の状態量である。さらに、「tanh」との表記はハイパボリックタンジェントである。 【0073】そして、ステップS33で、このようにして演算され、出力層から出力された学習制御量Hを学習量へ反映させて、今回テーブルから読み出した学習量G(n−1)の更新を行なう。更新された学習量Gは、次回、同条件でスリップ制御が行なわれるときに、この検索テーブルから読み出され、制御開始デューティ率Dfの設定に用いられる。 【0074】このように、トルクコンバータ20、ロックアップクラッチ26、ないしはDSV84の個体差や経年変化等により、スリップ制御中に同じデューティ率DをDSV84に印加しても、オーバーシュートしたり、定常状態になるまでに長い時間がかかったりする不具合を是正するための学習補正において、補正する対象が制御開始時デューティ率Dfだけであり、その後に行なう、例えばフィードフォワードデューティ率やフィードバックデューティ率の算出法等の制御の内容については、一切、補正しない。 【0075】したがって、学習補正制御自体において、例えば、フィードフォワード制御で用いるフィードフォワード制御量dfに補正を加えたり、フィードバック制御で用いるフィードバック制御ゲインを変更したり、あるいは学習量Gの検索用テーブル等の種々のマップやテーブル等を修正したりすることがないから、学習補正制御自体の複雑化が回避される。 【0076】また、学習補正を考慮してスリップ制御を実行する際においても、例えば、制御中に時々刻々用いる制御量の演算式や演算法、検索用マップやテーブル、ないしは制御則そのものが変更されることがないから、スリップ制御自体の煩雑化もまた回避される。 【0077】その場合に、差回転S、デューティ率D、あるいは制御開始時からピストンストローク開始時までの時間T1という、個体差の特徴が顕著によく現われる状態量を入力情報とするニューラルネットワークで上記学習量Gを演算するから、該学習量Gが簡単に算出され、また、精度に優れた学習補正が可能となる。 【0078】特に、制御開始時t1の差回転S1とストローク開始時t2の差回転S2との偏差ΔS12、ストローク開始時t2の差回転S2と定常領域移行時t3の差回転S3との偏差Δ23、及び、これらの各時刻t1,t2,t3に対応するデューティ率間の偏差ΔD12,ΔD23という、個体差の特徴がよりよく具体的に顕著に現われる状態量を入力情報とするから、なお一層精度に優れた学習補正が可能となる。 【0079】以上のように構築した、制御開始時デューティ率学習補正付きのスリップ制御システムを実機に適用してスリップ制御を実行した。すなわち、図10に示すように、最適な定常スリップ状態が実現するときの制御開始時デューティ率(実線)よりも5%高い制御開始時デューティ率(鎖線)からスタートして、同じ開始時差回転、同じ制御内容、及び同じその他の条件でスリップ制御を繰り返し行なった。 【0080】その結果、スリップ制御の実行回数が増えるに伴って、図中矢印アで示すように、ピストンストローク開始時刻t2が遅くなり、また、矢印イで示すように、差回転の変化が緩やかとなり、そして、矢印ウで示すように、制御開始時デューティ率が低下していった。 【0081】符号aで示す1回目のスリップ制御では、目標差回転を超えてオーバーシュートを起こしていたものが、符号bで示すように略5回目で最適な過渡領域時間で目標値に収束して定常スリップ状態に移行した。そして、符号cで示すように10回目で、最適な制御開始時のデューティ率に収束した。 【0082】この場合の過渡領域時間、つまりスリップ制御開始指令の出力から定常スリップ状態に落ち着くまでの時間は、およそ2.0〜2.5秒とした。これにより、図4に例示したロックアップマップのスリップ領域の略全域において、車種毎や、ロックアップクラッチの応答特性の違い毎に、制御開始時デューティ率の設定をやり直す必要がなくなることがわかった。 【0083】 【発明の効果】以上のように、本発明は、ロックアップクラッチのスリップ制御において、スリップ制御開始時にデューティソレノイドバルブに印可する制御開始時デューティ率が、その後のスリップ制御の成り行き全体を大きく支配することを見出し、したがって、スリップ制御開始時のデューティ率さえ学習補正すれば、その他の制御変数や制御内容等は、一切、補正、変更、修正する必要がないことに着目して完成されたものであるから、学習補正制御自体の複雑化が回避でき、学習を取り入れたときのスリップ制御自体の煩雑化が回避できる。本発明は、ロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを搭載した自動変速機等一般に広く好ましく適用可能である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003137 【氏名又は名称】マツダ株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年11月17日(1999.11.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083013 【弁理士】 【氏名又は名称】福岡 正明
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| 【公開番号】 |
特開2001−141051(P2001−141051A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−327050 |
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