| 【発明の名称】 |
無段変速機の変速制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】近藤 薫
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| 【要約】 |
【課題】無段変速機の変速制御装置に関し、降坂路走行時のエンジンブレーキの作動状態をドライバの好みに応じて制御できるようにする。
【解決手段】目標加速度設定手段52により道路勾配に応じて目標加速度を設定し、変速比制御手段56により車両の実加速度が目標加速度となるように無段変速機の変速比を制御するとともに、過不足判定手段52Cによりエンジンブレーキの過不足を判定して、過不足判定手段52Cの判定に基づき学習補正手段52Bにより目標加速度を学習補正する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 降坂路走行時に、エンジンブレーキの作動状態を制御すべくエンジンに接続された無段変速機の変速比を可変制御する、無段変速機の変速制御装置において、道路勾配に応じて目標加速度を設定する目標加速度設定手段と、実加速度が該目標加速度となるように無段変速機の変速比を制御する変速比制御手段と、エンジンブレーキの過不足を判定する過不足判定手段と、該過不足判定手段の判定に基づき該目標加速度を学習補正する学習補正手段とをそなえたことを特徴とする、無段変速機の変速制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の車両にそなえられる無段変速機の変速制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】降坂路では、アクセル,ブレーキを操作せずにエンジンブレーキのみを作動させて走行する場合がある。無段変速機をそなえた車両では、無段変速機の変速比を制御することによりエンジンブレーキの作動状態を制御することができ、道路勾配に応じて目標加速度(目標減速度)を設定し、実際の車両の加速度(実加速度)が設定した目標加速度となるように無段変速機の変速比を制御するようにした技術が提案されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、降坂路を走行するときの車両のエンジンブレーキの作動状態にはドライバの好みがあり、エンジンブレーキを効かさずに速く降りたいと思う者もいれば、エンジンブレーキを強く効かせてゆっくり降りたいと思う者もいる。したがって、降坂路走行時の目標加速度を道路勾配や車速に応じて画一的に設定するのでは、このようなドライバの好みを無視することになり、走行フィーリングの悪化につながってしまう。 【0004】本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、降坂路走行時のエンジンブレーキの作動状態をドライバの好みに応じて制御できるようにした、無段変速機の変速制御装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の無段変速機の変速制御装置では、降坂路走行時に、エンジンブレーキの作動状態を制御すべくエンジンに接続された無段変速機の変速比を可変制御する無段変速機の変速制御装置において、目標加速度設定手段により道路勾配に応じて目標加速度を設定し、変速比制御手段により車両の実加速度が目標加速度となるように無段変速機の変速比を制御するとともに、車両に作用するエンジンブレーキの過不足を判定して、過不足判定手段の判定に基づき学習補正手段により目標加速度を学習補正する。 【0006】なお、好ましくは、ドライバの加減速要求操作を検出する加減速要求操作検出手段をそなえ、この加減速要求操作検出手段により検出されたドライバの加減速要求操作に基づきエンジンブレーキの過不足を判定する。より好ましくは、加減速要求操作検出手段としてドライバのアクセル操作を検出する手段をそなえるとともに、過不足判定手段にアクセル操作割合(例えば、所定時間内におけるアクセル踏み込み時間)を演算する手段をそなえ、降坂路走行時のアクセル操作割合が所定値以上のときにはエンジンブレーキ過剰と判定し、学習補正手段により目標加速度を増大補正する。 【0007】さらに好ましくは、加減速要求操作検出手段としてドライバのブレーキ操作を検出する手段をそなえるとともに、過不足判定手段にブレーキ操作割合(例えば、所定時間内におけるブレーキ操作により減速した時間)を演算する手段をそなえ、降坂路走行時のブレーキ操作割合が所定値以上のときにはエンジンブレーキ不足と判定し、学習補正手段により目標加速度を減少補正する。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。本発明の一実施形態にかかる無段変速機の変速比制御装置について、図1〜図5を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、無段変速機(CVT)としてベルト式無段変速機を用いている。 【0009】まず、本実施形態にかかる動力伝達機構について説明すると、図2に示すように、本動力伝達機構では、エンジン1から出力された駆動力は、トルクコンバータ(トルコン)2,ベルト式無段変速機20及びディファレンシャル31を介してタイヤ30へ伝達されるようになっている。トルコン2の出力軸7とベルト式無段変速機20の入力軸24との間には、前後進切換機構4が配設されており、エンジン1からトルコン2を介して入力される回転は、この前後進切換機構4を介して無段変速機構20に入力されるようになっている。 【0010】無段変速機構20は、プライマリプーリ(入力側プーリ)21とセカンダリプーリ(出力側プーリ)22とベルト23とから構成されており、前後進切換機構4からプライマリシャフト24に入力された回転は、プライマリシャフト24と同軸一体のプライマリプーリ21からベルト23を介してセカンダリシャフト25と同軸一体のセカンダリプーリ22へ入力されるようになっている。 【0011】プライマリプーリ21,セカンダリプーリ22はそれぞれ一体に回転する2つのシーブ21a,21b,22a,22bから構成されている。それぞれ一方のシーブ21a,22aは軸方向に固定された固定シーブであり、他方のシーブ21b,22bは油圧アクチュエータ(例えば油圧ピストン)21c,22cによって軸方向に可動する可動シーブになっている。 【0012】オイルポンプ62は、オイルタンク61内の油を加圧,吐出するが、その吐出圧は調圧弁63により所定圧(所定ライン圧)に調圧される。セカンダリプーリ22の油圧アクチュエータ22cには調圧弁63により調圧されたライン圧PLが加えられ、プライマリプーリ21の油圧ピストン21cには調圧弁63の下流側に配設された流量調整弁64により流量調整された作動油が供給されて、この作動油が変速比調整用油圧として作用するようになっている。 【0013】なお、これらの調圧弁63及び流量調整弁64は、コントローラ(電子制御コントロールユニット=ECU)50により、エンジン回転速度センサ41,エアフローセンサ42,プライマリプーリ21の回転速度を検出するプライマリ回転速度センサ43,セカンダリプーリ22の回転速度を検出するセカンダリ回転速度センサ44,ライン圧PLを検出するライン圧センサ45の各検出信号に基づいて制御されるようになっている。 【0014】ところで、本実施形態では、降坂路走行時においてドライバの好みに応じたエンジンブレーキが得られるように無段変速機の変速比の制御を行なうようになっている。このため、ECU50には図1の機能ブロック図に示すように変速制御装置60が備えられており、この変速制御装置60により、降坂路走行時に車両の前後実加速度(実前後G)が目標加速度となるように目標プライマリ回転速度を設定し、実際のプライマリ回転速度(実プライマリ回転速度)が目標プライマリ回転速度に一致するようにフィードバック制御することにより無段変速機20の変速比制御を行なうようになっている。 【0015】本変速制御装置60は、図1に示すように、降坂路判定手段51,目標加速度設定手段52,目標駆動力設定手段53,目標出力設定手段54,目標プライマリ回転速度設定手段55、及び、目標プライマリ回転速度設定手段55により設定された目標プライマリ回転速度に基づいてプライマリプーリ21(油圧アクチュエータ21cへの油圧)を制御するプライマリプーリ制御手段(変速比制御手段)56を備えて構成される。 【0016】このうち、降坂路判定手段51は、道路勾配情報に基づいて車両が降坂路走行中であるか否かを判定するものであり、降坂路走行中である場合は本変速比制御装置による変速比制御を行なうべく、目標加速度設定手段52に信号を出力するようになっている。目標加速度設定手段52は、目標加速度設定部52Aと学習補正部(学習補正手段)52Bと過不足判定部(過不足判定手段)52Cとから構成されている。このうち、目標加速度設定部52Aは、車速Vと道路勾配SL(=重量・勾配抵抗RS/車両重量)とから目標加速度GXTを設定するものであり〔GXT(V,SL)〕、設定した目標加速度GXTに相当する信号を後述する目標駆動力設定手段53へ出力するようになっている。なお、重量・勾配抵抗RSはエンジン駆動力から加速抵抗,空気抵抗,転がり抵抗等を差し引いて求められる値である。 【0017】具体的には、目標加速度設定部52Aは、車速Vと道路勾配SLとに基づいて設定される目標加速度ベース値GXTBに、ドライバの運転操作に基づいて設定される目標加速度学習値GXTLを加算することにより目標加速度GXTを算出するようになっており、目標加速度GXTは次式(1)で表される。 GXT=GXTB+GXTL ・・・(1) 但し、目標加速度GXTが目標加速度上限値GXTCLU以上である場合(GXT≧GXTCLU)は、目標加速度GXTを目標加速度上限値GXTCLUとする。一方、目標加速度GXTが目標加速度下限値GXTCLL以下である場合(GXT≦GXTCLL)は、目標加速度GXTを目標加速度下限値GXTCLLとする。このように目標加速度GXTに上限,下限を設けることにより、制御の簡素化及び安定化を図っている。 【0018】ここで、目標加速度ベース値GXTBは、車速V,道路勾配SLに対して、図3の三次元座標中に網かけを付して示すように設定される。つまり、車速Vの特定値V1,V2と道路勾配SLの特定値SL1,SL2とに基づいて設定された目標加速度GXB11,GXB12,GXB21,GXB22のそれぞれに速度係数KV,道路勾配係数KSLを乗算することにより求められ、次式(2)で表される。 【0019】ここで、目標加速度ベース値GXTBの算出に際しては、車速係数KVが車速V,第1所定車速V1,第2所定車速V2(V2>V1)に基づいて算出される〔KV=(V−V1)/(V2−V1)〕。また、道路勾配係数KSLが道路勾配SL,第1所定道路勾配SL1,第2所定道路勾配SL2(SL2>SL1)に基づいて算出される〔KSL=(SL−SL1)/(SL2−SL1)〕。 【0020】 GXTB=(1−KV)・(1−KSL)・GXB11 +KV・(1−KSL)・GXB12 +(1−KV)・KSL・GXB21 +KV・KSL・GXB22 ・・・(2) なお、車速係数KVが0よりも小さい場合(KV<0)は車速係数KVは0とし、車速係数KVが1よりも大きい場合(KV>1)は車速係数KVは1とする。また、道路勾配係数KSLが0よりも小さい場合(KSL<0)は道路勾配係数KSLは0とし、道路勾配係数KSLが1よりも大きい場合(KSL>1)は道路勾配係数KSLは1とする。 【0021】具体的には、目標加速度設定部52Aを、図3に示すような車速V及び道路勾配SLに対して目標加速度ベース値GXTBを関係づけた三次元の目標加速度設定用マップを備えるものとして構成し、この目標加速度設定用マップに基づいて目標加速度ベース値GXTBを設定するのが好ましい。学習補正部52Bは、降坂路走行時のエンジンブレーキの作動状態をドライバの好みに応じて制御できるように、上記の目標加速度GXTを学習補正するものである。 【0022】具体的には、学習補正部52Bは、後述する過不足判定部52Cによるエンジンブレーキの過不足判定に基づき、上記の目標加速度学習値GXTLを増減補正することにより目標加速度GXT(GXT=GXTB+GXTL)を増減するようにしている。例えば、エンジンブレーキが過剰と判定された場合には、次式により目標加速度学習値GXTLを増大補正するようになっている。EPは所定の微小値である。 【0023】 GXTL(NEW)=GXTL(OLD)+EP ・・・(3) 逆に、エンジンブレーキが不足と判定された場合には、次式により目標加速度学習値GXTLを減少補正するようになっている。 GXTL(NEW)=GXTL(OLD)−EP ・・・(4) そして、補正したGXTL(NEW)を学習して図示しない記憶手段に記憶するようになっている。なお、学習補正部52Bによる学習が一度も行なわれていない初期状態では、目標加速度学習値GXTLは所定の初期値GXTL0に設定されている。また、目標加速度学習値GXTLには上限値GXTLHと下限値GXTLLとが設定されており、、学習補正部52Bは、この範囲内で目標加速度学習値GXTLを学習補正するようになっている。つまり、GXTL(NEW)が上限値GXTLHよりも大きくなった場合(GXTL(NEW)>GXTLH)はGXTL(NEW)を上限値GXTLHに設定し、下限値GXTLLよりも小さくなった場合(GXTL(NEW)<GXTLL)はGXTL(NEW)を下限値GXTLLに設定する。このように目標加速度学習値GXTLに上限,下限を設けることにより、制御の安定化を図っている。 【0024】上記の学習結果(GXTL(NEW))は、イグニッションキーがオフにされた後も上記記憶手段内で保持されるようになっている。そして、次回の制御では、目標加速度設定部52Aにより今回の制御において学習補正されたGXTL(NEW)が目標加速度ベース値GXTBに加算されて目標加速度GXTとして設定されるようになっている。 【0025】過不足判定部52Cは、ドライバの車両に対する加減速要求操作に基づき、エンジンブレーキの過不足判定を行ない、判定結果を上述の学習補正部52Bに出力するものである。具体的には、過不足判定部52Cは、降坂路走行中に、ブレーキにより減速している時間割合が小さく、アクセルを踏み込んでいる時間割合が大きい場合、エンジンブレーキが過剰と判定して学習補正部52Bに信号(過剰信号)を出力し、一方、降坂路走行中に、アクセルを踏み込んでいる時間割合が小さく、ブレーキにより減速している時間割合が大きい場合、エンジンブレーキが不足と判定して学習補正部52Bに信号(不足信号)を出力するようになっている。 【0026】より詳しく説明すると、過不足判定部52Cでは次のようにして過不足判定を行なっている。まず、過剰判定については、次の過剰判定タイマカウント条件(1)〜(5)が全て成立していることが過剰判定開始の前提となる。これらの過剰判定タイマカウント条件(1)〜(5)は過剰判定の開始時期を降坂路走行時の定常状態に限定して正確な判定を行なえるようにするためのものである。 【0027】(1)ブレーキによる減速操作が行なわれていない又は殆ど行なわれていないこと、即ち、ブレーキ操作に伴う前後方向減速度(ブレーキ減速度)GXBGが所定の学習ブレーキ減速度GXBGTKGよりも小さいこと(GXBG<GXBGTKG)。 (2)車速Vが所定範囲内であること、即ち、車速Vが所定の学習車速下限値VTKGA(例えば約10km/h)よりも大きく、かつ所定の学習車速上限値VTKGB(例えば約100km/h)よりも小さいこと(VTKGA<V<VTKGB)。 【0028】(3)道路勾配SLが所定範囲内であること、即ち、道路勾配SLが所定の学習道路勾配下限値SLTKGA(例えば約5%)よりも大きく、かつ所定の学習道路勾配上限値SLTKGB(例えば約10〜15%)よりも小さいこと(SLTKGA<SL<SLTKGB)。 (4)前後加速度GXと目標加速度GXTとの差の絶対値が所定の学習降坂路目標加速度偏差GXTKGよりも小さいこと(|GXT−GX|<GXTKG)。 【0029】(5)アクセルの踏み込み量が少ないこと、即ち、スロットル開度センサ(加減速要求操作検出手段)11から出力されるスロットル開度電圧VTHが所定の学習スロットル開度電圧VTHTKGよりも小さいこと(VTH<VTHTKG)。上記の各過剰判定タイマカウント条件(1)〜(5)が成立している状態で、スロットル開度電圧VTHが上記スロットル開度電圧VTHTKG以上になったとき(VTH≧VTHTKG)、過不足判定部52Cでは過剰判定タイマTKGのカウントを開始するようになっている。 【0030】そして、次の過剰判定開始条件(1),(2)の何れかが成立した時点で、エンジンブレーキが過剰か否かの過剰判定を行なうようになっている。 (1)アクセルの踏み込み開始から所定時間tKG経過したこと、すなわち、過剰判定タイマTKGのカウント値がtKGに達したこと(TKG=tKG)。 (2)アクセルが大きく踏み込まれたこと、即ち、スロットル開度電圧VTHが上記スロットル開度電圧VTHTKGより大きいVTHTKGS以上になったこと(VTH≧VTHTKGS)。 【0031】上記の過剰判定開始条件(1)は、過剰判定を行なうためのデータを十分にサンプリングするためのものであり、過剰判定開始条件(2)は、アクセル踏み込み量が大きくエンジンブレーキ過剰と判定される可能性が高いときには、サンプリングデータ量にかかわらず所定時間tKGに達していなくても過剰判定を行なうようにするためのものである。 【0032】過不足判定部52Cでは、上記の過剰判定開始条件(1),(2)の何れかが成立した時点で、次の過剰判定条件(1),(2)の成否について判定し、全ての条件が成立した場合にエンジンブレーキが過剰と判定して学習補正部52Bに信号(過剰信号)を出力するようになっている。 (1)アクセルを踏み込んでいる時間割合が大きいこと、即ち、過剰判定タイマTKGのカウントを開始してから前記の過剰判定開始条件(1),(2)の何れかが成立するまでの間に、スロットル開度電圧VTHが踏み込み判定スロットル開度電圧VTHTTHを越えていた時間の割合TTHが、所定の過剰判定踏み込み時間割合TTHKGよりも大きいことである(TTH>TTHKG)。この踏み込み判定スロットル開度電圧VTHTTHはアクセルが大きく踏み込まれていることを検出するための閾値であり、VTHTKGsよりも小さい値に設定されている。 【0033】(2)過剰判定タイマTKGのカウントを開始してから前記の過剰判定開始条件(1),(2)の何れかが成立するまでの間の車速Vの変動幅(加速幅)が所定の許容変動幅内であること、即ち、上記の間における車速Vの最大値VKGMAXと最小値VKGMINとから算出される加速幅VK(VK=VKGMAX−VKGMIN)が下限値VKKGAよりも大きく、上限値VKKGBよりも小さいこと(VKKGA<VK<VKKGB)。これは、加速幅があまりにも大きい場合にはエンジンブレーキによる降坂走行から加速状態に移行した可能性があり、また、加速幅が小さい場合には目標加速度GTXを補正する必要性が少ないので、このような場合には学習補正を行なわずに制御の簡素化及び安定化を図るようにしたものである。 【0034】次に、過不足判定手段52Cによる不足判定について説明する。不足判定についても、上述した過剰判定タイマカウント条件(1)〜(5)と同様の不足判定タイマカウント条件(1)〜(5)が全て成立していることが前提となる。 (1)ブレーキ減速度GXBGが所定の学習ブレーキ減速度GXBGTFGよりも小さいこと(GXBG<GXBGTFG)。 【0035】(2)車速Vが所定の学習車速下限値VTFGAよりも大きく、かつ所定の学習車速上限値VTFGBよりも小さいこと(VTFGA<V<VTFGB)。 (3)道路勾配SLが所定の学習道路勾配下限値SLTFGAよりも大きく、かつ所定の学習道路勾配上限値SLTFGBよりも小さいこと(SLTFGA<SL<SLTFGB)。 【0036】(4)前後加速度GXと目標加速度GXTとの差の絶対値が所定の学習降坂路目標加速度偏差GXTFGよりも小さいこと(|GXT−GX|<GXTFG)。 (5)スロットル開度電圧VTHが所定の学習スロットル開度電圧VTHTFGよりも小さいこと(VTH<VTHTFG)。これらの不足判定タイマカウント条件(1)〜(5)における各判定値は、過剰判定タイマカウント条件(1)〜(5)における各判定値と同設定とすることもできる。 【0037】そして、上記の各不足判定タイマカウント条件(1)〜(5)が成立している状態で、図示しないブレーキランプに連動するブレーキ減速スイッチ(加減速要求操作検出手段)12がオンになったとき、過不足判定部52Cでは不足判定タイマTFGのカウントを開始するようになっており、次の不足判定開始条件(1),(2)の何れかが成立した時点で、エンジンブレーキが不足か否かの不足判定を行なうようになっている。 【0038】(1)アクセルの踏み込み開始から所定時間tFG経過したこと、不足判定タイマTFGのカウント値がtFGに達したこと(TFG=tFG)。 (2)ブレーキが大きく踏み込まれたこと、即ち、ブレーキ減速度GXBGが学習ブレーキ減速度GXBGTFG以上になったこと(GXBG≧GXBGTFG)。上記の不足判定開始条件(1)は、不足判定を行なうためのデータを十分にサンプリングするためのものであり、不足判定開始条件(2)は、ブレーキ踏み込み量が大きくエンジンブレーキ不足と判定される可能性が高いときには、サンプリングデータ量にかかわらず所定時間tFGに達していなくても不足判定を行なうようにするためのものである。なお、不足判定開始条件(2)において、ハンチング防止のためGXBGTFGより大きいGXBGTFGSを用い、GXBG≧GXBGTFGSを条件としてもよい。 【0039】次に、過不足判定部52Cでは、上記の不足判定開始条件(1),(2)の何れかが成立した時点で、以下の不足判定条件(1),(2)の成否について判定し、全ての条件が成立した場合にエンジンブレーキが不足と判定して学習補正部52Bに信号(不足信号)を出力するようになっている。 (1)ブレーキを踏み込んでいる時間割合が大きいこと、即ち、不足判定タイマTFGのカウントを開始してから前記の不足判定開始条件(1),(2)の何れかが成立するまでの間に、ブレーキ減速スイッチ12がオンになっていた時間の割合TBRが、所定の不足判定ブレーキ時間割合TBRFGよりも大きいことである(TBR>TBRFG)。 【0040】(2)不足判定タイマTFGのカウントを開始してから前記の不足判定開始条件(1),(2)の何れかが成立するまでの間の車速Vの変動幅(減速幅)が所定の許容変動幅内であること、即ち、上記の間における車速Vの最大値VFGMAXと最小値VFGMINとから算出される減速幅VG(VG=VFGMAX−VFGMIN)が下限値VGFGAよりも大きく、上限値VGFGBよりも小さいこと(VGFGA<VG<VGFGB)。これは、減速幅があまりにも大きい場合にはエンジンブレーキによる降坂走行からブレーキ操作による減速状態に移行した可能性があり、また、減速幅が小さい場合には目標加速度GTXを補正する必要性が少ないので、このような場合には学習補正を行なわずに制御の簡素化及び安定化を図るようにしたものである。 【0041】目標駆動力設定手段53は、上述の目標加速度設定手段52により設定された目標加速度GXTを実現するための車両の目標駆動力FETを設定するものであり、この目標駆動力FETに相当する信号を後述する目標出力設定手段54へ出力するようになっている。具体的には、目標駆動力設定手段53は、車両重量Wと、ディファレンシャル軸部慣性相当重量WIDIFと、プライマリ軸部慣性相当重量WIPRIに変速比RATの自乗を乗算したものとを加算し、これに目標加速度設定手段52により設定された目標加速度GXTを乗算することで目標加速抵抗RA〔RA=(W+WIDIF+WIPRI・RAT2)・GXT〕を算出し、これに重量・勾配抵抗RS,空気抵抗RL,ころがり抵抗RRを加算することにより目標駆動力FETを算出するようになっており、次式(5)で表される。 【0042】 FET=(W+WIDIF+WIPRI・RAT2)・GXT+RS+RL+RR ・・・(5) 目標出力設定手段54は、上述の目標駆動力設定手段53により設定された目標駆動力FETとなるようにエンジン1の目標出力WETを設定するものであり、この目標出力WETを後述する目標プライマリ回転速度設定手段55へ出力するようになっている。 【0043】具体的には、目標出力設定手段54は、目標駆動力設定手段53により設定された車両の目標駆動力FETに、タイヤ径rを終減速比iFで除算したものとセカンダリ回転速度NSとを乗算して、目標駆動力相当の正味目標出力〔FET・(r/iF)・NS〕を算出し、この正味目標出力に、入力回転依存トランスミッション損失トルクTLRにプライマリ回転速度NPを乗算して算出されるプライマリ損失出力(TLR・NP)と、クランク軸慣性トルクTICとオイルポンプ駆動損失トルクTLPとを加算したものにエンジン回転速度NEを乗算して算出されるエンジン損失出力〔(TIC+TLP)・NE〕とを加算することにより目標出力WETを算出するようになっており、次式(6)で表される。 【0044】 WET=FET・(r/iF)・NS+TLR・NP +(TIC+TLP)・NE ・・・(6) なお、エアコン用コンプレッサの負荷を考慮する場合には第3項にコンプレッサ負荷トルクTLCにエンジン回転速度NEを乗算したものを加えれば良い。目標プライマリ回転速度設定手段55は、上述の目標出力設定手段54により設定されたエンジン1の目標出力WETと、エンジン1の基準回転速度NEEBと、学習基準トルクTEEBとに基づいて目標プライマリ回転速度NPTを設定してプライマリプーリ制御手段56へ出力するようになっている。 【0045】具体的には、目標プライマリ回転速度設定手段55は、基準回転速度NEEBから目標出力WETを基準トルクTEEBで除算して算出された目標出力相当の回転速度(WET/TEEB)を減算することにより目標プライマリ回転速度NPTを算出するようになっており、次式(7)で表される。 NPT=NEEB−(WET/TEEB) ・・・(7) ここで、図4はエンジン回転速度に対するスロットル全閉時の出力特性を直線で近似したものである。なお、ここではエンジン回転速度が低,中回転速度である場合を示している。 【0046】基準回転速度NEEBは、エンジン出力が0の場合のエンジン回転速度、即ちエンジンのアイドル回転速度であり、図4のスロットル全閉時の出力特性のエンジン回転速度を示す軸との交点の座標に相当する。また、基準トルクTEEBは、図4のスロットル全閉時の出力特性の傾きである。具体的には、目標プライマリ回転速度設定手段55を、図4に示すようなエンジン出力特性のマップを備えるものとして構成し、このマップを用いて目標出力WETに応じた目標プライマリ回転速度NPTを設定するようにすれば良い。 【0047】なお、目標プライマリ回転速度NPTが、オーバドライブ(OD)の場合のプライマリ回転速度NPよりも小さくならないように、セカンダリ回転速度NSをオーバドライブ(OD)の変速比iODで除算したものよりも小さい場合(NPT<NS/iOD)、目標プライマリ回転速度NPTはセカンダリ回転速度NSをオーバドライブ(OD)時の変速比iODで除算したものとする(NPT=NS/iOD)。 【0048】また、スロットル開度電圧VTHが目標プライマリ回転速度NPTに基づいて算出される目標スロットル開度電圧VTHNPTよりも大きい場合(VTH>VTHNPT)、目標プライマリ回転速度NPTは前回の目標プライマリ回転速度NPTとする。なお、ここでは、上述の式(5)により設定された目標プライマリ回転速度NPTは、互いに直列に配置されたフィルタリング遮断周波数fNPTの2つのローパスフィルタにより2段階でフィルタリングして、微小変動成分を除去している。 【0049】上述のように構成された本発明の一実施形態としての無段変速機の変速制御装置による変速制御は、図5のフローチャートに示すように行なわれる。つまり、図5に示すように、ステップS10で、降坂路判定手段51により車両が降坂路走行中であるか否かを判定し、この判定の結果、降坂路走行中であると判定した場合はステップS20へ進む。 【0050】ステップS20では、過不足判定部52Cは、過剰判定タイマカウント条件(ここでは不足判定タイマカウント条件も同条件とする)が成立したか否か判定し、条件が成立した場合はステップS30へ進む。ステップS30では、アクセル踏み込み開始から所定時間tKGが経過したかを判定し、所定時間tKGが経過したとき(TKG=tKG)にはステップS70へ進み、未だ経過していないとき(TKG<tKG)にはステップS40へ進む。 【0051】ステップS40では、アクセル開度の大きさ、即ち、アクセルが大きく踏み込まれたかを判定し、アクセルが大きく踏み込まれたとき(VTH≧VTHTKGS)にはステップS70へ進み、大きく踏み込まれなかったとき(VTH<VTHTKGS)にはステップS50へ進む。ステップS50では、ブレーキ踏み込みによる減速開始から所定時間tFGが経過したかを判定し、所定時間tFGが経過したとき(TFG=tFG)にはステップS90へ進み、未だ経過していないとき(TFG=tFG)にはステップS60へ進む。 【0052】ステップS60では、ブレーキ減速度GXBGの大きさ、即ち、ブレーキが大きく踏み込まれたかを判定し、ブレーキが大きく踏み込まれたとき(GXBG≧GXBGTFG)にはステップS90へ進み、大きく踏み込まれなかったとき(GXBG<GXBGTFG)にはステップS110へ進む。ステップS70では、アクセル操作割合(アクセルを踏み込んでいる時間割合)が所定値を越えたか否か、即ち、踏み込み時間割合TTHが所定の過剰判定踏み込み時間割合TTHKGよりも大きいか否か判定し、過剰判定踏み込み時間割合TTHKG以下のとき(TTH≦TTHKG)にはそのままステップS110へ進むが、過剰判定踏み込み時間割合TTHKGよりも大きいとき(TTH>TTHKG)には、過不足判定部52Cはエンジンブレーキが過剰と判定し、ステップS80へ進む。 【0053】そして、ステップ80では、学習判定部部52Bは過不足判定部52Cによるエンジンブレーキ過剰判定に基づき、目標加速度学習値GXTLを前記の(3)式を用いて増量補正した上で学習し、ステップS110へ進む。また、ステップS90では、ブレーキ操作割合(ブレーキを踏み込んでいる時間割合)が所定値を越えたか否か、即ち、ブレーキ時間割合TBRが、所定の不足判定ブレーキ時間割合TBRFGよりも大きいか否か判定し、不足判定ブレーキ時間割合TBRFG以下のとき(TBR≦TBRFG)にはそのままステップS110へ進むが、不足判定ブレーキ時間割合TBRFGよりも大きいとき(TBR>TBRFG)には、過不足判定部52Cはエンジンブレーキが不足と判定し、ステップS100へ進む。 【0054】そして、ステップ100では、学習判定部部52Bは過不足判定部52Cによるエンジンブレーキ不足判定に基づき、目標加速度学習値GXTLを前記の(3)式を用いて減量補正した上で学習し、ステップS110へ進む。次に、ステップS110では、目標加速度設定手段52は車速Vと道路勾配SL(SL=重量・勾配抵抗RS/車両重量W)とから目標加速度ベース値GXTBを設定する。 【0055】さらに、ステップS120では、ステップS110で設定された目標加速度ベース値GXTBに目標加速度学習値GXTLを加算することにより、目標加速度GXT(GXT=GXTB+GXTL)を設定する。この目標加速度学習値GXTLは、ステップS80において学習判定部部52Bにより増量補正して学習されたときには、その増量補正された目標加速度学習値GXTLであり、ステップS100において学習判定部部52Bにより減量補正して学習されたときには、その減量補正された目標加速度学習値GXTLであり、それ以外の場合には前回の降坂路制御において学習補正された目標加速度学習値GXTLである。これにより、ドライバの運転状態に応じた目標加速度GXTが設定されるようになる。 【0056】そして、ステップS130では、目標駆動力設定手段53は、上述のステップS120で設定された目標加速度GXTを実現するための目標駆動力FETを設定し、次に、ステップS140では、目標出力設定手段54は、上述のステップS130で設定された目標駆動力FETとなるように目標出力WETを設定する。 【0057】次いで、ステップS150へ進み、目標プライマリ回転速度設定手段55は、上述のステップS140で設定された目標出力WETとなるように目標プライマリ回転速度NPTを設定する。そして、ステップS160へ進み、プライマリプーリ制御手段56は、プライマリプーリ21の変速比制御を行なうべく、実プライマリ回転速度NPが上述のステップS150で設定された目標プライマリ回転速度NPTになるようにプライマリプーリ21の制御量に相当するフィードバック制御信号を設定し、流量調整弁64へ制御信号を出力する。これにより、実加速度がステップS120において設定された目標加速度GXTになるように変速比が制御され、ドライバの好みに応じたエンジンブレーキの作動状態が実現される。 【0058】なお、ステップS10で降坂路走行中でないと判定された場合はステップS170へ進む。ステップS170では、目標プライマリ回転速度設定手段55は車速とアクセル開度とに応じて目標プライマリ回転速度NPTを設定する。そして、ステップS160へ進み、プライマリプーリ制御手段56は、実プライマリ回転速度NPが上述のステップS170で設定された目標プライマリ回転速度NPTになるようにプライマリプーリ21の制御量に相当するフィードバック制御信号を設定し、流量調整弁64へ制御信号を出力して、プライマリプーリ21の変速比制御を行なう。 【0059】したがって、本無段変速機の変速制御装置によれば、降坂路走行中のアクセルの踏み込み時間割合が大きいときには、目標加速度学習値GXTLを増量補正して学習し、ブレーキの踏み込み時間割合が大きいときには、目標加速度学習値GXTLを減量補正して学習するので、ドライバの運転状態に応じた目標化速度GXTを設定することができ、ドライバの好みに応じたエンジンブレーキの作動状態を実現することができるという利点がある。 【0060】特に、無段変速機は有段自動変速機のようにシフトレバーのアップシフト/ダウンシフトによりエンジンブレーキの過不足を判定することができないが、本変速制御装置にようにスロットル開度センサ11やブレーキ減速スイッチ12の検出信号を用いてアクセル操作割合やブレーキ操作割合をモニターすることにより、エンジンブレーキの過不足を正確に判定することができるという利点もある。 【0061】以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々変形して実施することができる。例えば、上述の実施形態では、本発明をベルト式CVTに適用するものとして説明しているが、本発明をトロイダル式CVT等の他のCVTに適用することも考えられる。 【0062】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明の無段変速機の変速制御装置によれば、降坂路走行時には、道路勾配に応じて目標加速度を設定し、実加速度が目標加速度になるように変速比を制御するとともに、エンジンブレーキの過不足を判定して、その判定結果に基づき目標加速度を学習補正するので、運転状態に応じた目標加速度を設定することができ、ドライバの好みに応じたエンジンブレーキの作動状態を実現することができるという利点がある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006286 【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年11月9日(1999.11.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100092978 【弁理士】 【氏名又は名称】真田 有
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| 【公開番号】 |
特開2001−141048(P2001−141048A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−318598 |
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