| 【発明の名称】 |
変速機のクラッチ制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】末永 朗
【氏名】久世 隆
【氏名】柴田 公
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| 【要約】 |
【課題】車両パーキング状態からエンジン始動した直後の変速時でも、オペレータにクラッチ係合のタイムラグに違和感を与えることのない変速機のクラッチ制御装置を提供する。
【解決手段】速度段に対応した複数のクラッチ室に、油圧ポンプからの圧油が前記複数のクラッチ室のそれぞれに対応するクラッチ油圧制御弁及び管路を介して供給されて、クラッチを係合させ、選択された速度段によりエンジンの動力を伝達する油圧クラッチと、変速時、選択された速度段に対応したクラッチ油圧制御弁に制御信号を出力して変速するコントローラとを備えた変速機のクラッチ制御装置において、前記コントローラは、エンジン始動時に、前記それぞれのクラッチ油圧制御弁に、前記それぞれの管路に油を充満させる予備トリガ信号を出力する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 速度段に対応した複数のクラッチ室(11)に、油圧ポンプ(4)からの圧油が前記複数のクラッチ室(11)のそれぞれに対応するクラッチ油圧制御弁(3)及び管路(12)を介して供給されて、クラッチ(10)を係合させ、選択された速度段によりエンジンの動力を伝達する油圧クラッチと、変速時、選択された速度段に対応したクラッチ油圧制御弁(3)に制御信号を出力して変速するコントローラ(2)とを備えた変速機のクラッチ制御装置において、前記コントローラ(2)は、エンジン始動時に、前記それぞれのクラッチ油圧制御弁(3)に、前記それぞれの管路(12)に油を充満させる予備トリガ信号を出力することを特徴とする変速機のクラッチ制御装置。 【請求項2】 請求項1記載の変速機のクラッチ制御装置において、エンジン回転数検出センサ(21)と、クラッチ油圧制御弁(3)及び前記管路(12)に油圧ポンプ(4)から供給する油の温度を検出する油温検出センサ(20)とを付設し、前記コントローラ(2)は、前記それぞれの管路(12)毎にエンジン回転数及び油温に対応した予備トリガ時間マップを予め記憶し、エンジン回転数検出センサ(21)により検出されたエンジン回転数及び油温検出センサ(20)により検出された油温に基づいて予備トリガ時間マップにより予備トリガ時間を演算し、演算した予備トリガ時間に基づいて予備トリガ信号を対応するクラッチ油圧制御弁(3)に出力することを特徴とする変速機のクラッチ制御装置。 【請求項3】 請求項2記載の変速機のクラッチ制御装置において、エンジンの始動後所定の回転数に達してからの時間を検出するタイマ(22)を付設し、前記コントローラ(2)は、エンジン回転数が所定の回転数に達してから所定の回転数以上の状態が所定時間だけ継続したときに前記予備トリガ信号を出力することを特徴とする変速機のクラッチ制御装置。 【請求項4】 請求項2記載の変速機のクラッチ制御装置において、前記予備トリガ信号の出力をコントローラ(2)に指令する外部スイッチ(70)を備えたことを特徴とする変速機のクラッチ制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、クラッチ付き変速機のクラッチ制御装置に係り、特に、大型の建設機械等に用いられる大容量クラッチを備えた変速機のクラッチ制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】変速機は、一般的に、後進を含む複数の速度段用のクラッチを備えた主変速機と、高速及び低速用のクラッチを備えた副変速機とを有するとともに、主変速機と副変速機とのそれぞれのクラッチの組み合わせにより前後進切換及び変速を行う構成のものと、前進用クラッチ、後進用クラッチ及び速度段クラッチをそれぞれ備え、各クラッチの組み合わせにより前後進切換及び変速を行う構成のものとが知られている。 【0003】図8は従来の変速機のクラッチ制御装置80の回路図の一例である。油圧ポンプ4とクラッチ10のクラッチ室11とはクラッチ油圧制御弁3を介して接続しており、クラッチ油圧制御弁3とクラッチ室11とは管路12により接続している。クラッチ油圧制御弁3は、前進用3A、後進用3B、あるいは1速用、2速用(共に図示せず)等があり、それぞれに対応するクラッチ室11と接続する管路12も、前進用12A、後進用12B、あるいは1速用、2速用(共に図示せず)等がある。それぞれのクラッチ油圧制御弁3の流量を制御する比例ソレノイド33には、コントローラ2から制御信号が入力されている。また、コントローラ2には、変速機レバー5からの変速段指令信号が入力されている。クラッチ油圧制御弁3内で洩れた油及びクラッチ室11からの戻り油はタンク65にドレンする。 【0004】次に、作動について説明する。オペレータが変速機レバー5を操作するとコントローラ2は変速しようとする速度段に対応する比例ソレノイド33に制御信号を出力して対応するクラッチ油圧制御弁3を作動させ、油圧ポンプ4からの圧油を管路12を介して当該クラッチ室11に送り、対応するクラッチ10を係合させて変速する。 【0005】上述の各クラッチ室11に圧油を送りクラッチ10を係合させる場合、オペレータが変速レバー5を操作してからクラッチ10が係合するまでの時間、すなわちタイムラグが長いとオペレータは違和感を感じる。そのため圧油流量を多くしてクラッチ室11に油が充満する所要時間を短くする必要がある。しかしながら、圧油流量を多くするとクラッチ室11に油が充満し終わったときのクラッチ係合時にショックが発生し、オペレータは不快感をおぼえる。その対策の一例として図9に示すような、変速時の初期に大流量を、その後小流量をクラッチ室に流入させる国際公開番号WO98/01687号に開示されたものがある。図9において、横軸に時間tを、縦軸にクラッチ室に流入した油量をとり、大流量時及び小流量時の油量の時間的勾配をLA及びLBとする。これによれば、コントローラはクラッチ油圧制御弁3に、先ず、所定時間(以降、トリガ時間と呼ぶ)だけLAの時間的勾配で大流量の圧油をクラッチ室11に供給するための制御信号を出力し、トリガ時間経過後はLBの時間的勾配で小流量の圧油をクラッチ室11に供給するための制御信号を出力するようになっている。トリガ時間は、予め各クラッチ10毎に定められる。これにより、変速レバー5を操作してクラッチ室11に油が充満するまでの所要時間は短くなり、従ってクラッチ係合完了までの時間も短くできると共に、充満完了後のショックを低減できる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年、車両の大型化に伴い変速機も大型化しており、変速機の大型化に伴ってクラッチも大型化し、クラッチ油圧制御弁3及びクラッチ室11間の管路12の容積も大容量化している。エンジンを始動した後、2回目以降の変速時にはこの管路12内には油はほぼ充満した状態にあるが、車両を停止し、エンジンを停止して所定の時間が経過すると各油圧機器の漏れにより管路12内の油は抜けた状態になる。したがって、前述のトリガ時間を管路12がほぼ充満した状態を基準として設定すると、前記管路の油が抜けた車両停止状態でエンジンを始動させ、1回目の変速をさせた場合、大流量を供給する予め定められたトリガ時間の後で供給する小流量の供給時間が長くなり、クラッチ係合までのタイムラグが非常に長くなる。即ち、図9に示す管路分を補充する時間が余分に必要となる。そのため、オペレータはエンジン始動後の1回目の変速時のタイムラグと、2回目以降の変速時のタイムラグとの間に差を感じ、変速フィーリングを損なうという問題がある。 【0007】本発明は上記の問題点に着目し、エンジン始動後1回目の変速をした場合でも、オペレータにクラッチ係合時のタイムラグの違和感を与えることのない変速機のクラッチ制御装置を提供することを目的としている。 【0008】 【課題を解決するための手段、作用および効果】上記の目的を達成するために、本発明に係る変速機のクラッチ制御装置の第1発明は、速度段に対応した複数のクラッチ室に、油圧ポンプからの圧油が前記複数のクラッチ室のそれぞれに対応するクラッチ油圧制御弁及び管路を介して供給されて、クラッチを係合させ、選択された速度段によりエンジンの動力を伝達する油圧クラッチと、変速時、選択された速度段に対応したクラッチ油圧制御弁に制御信号を出力して変速するコントローラとを備えた変速機のクラッチ制御装置において、前記コントローラは、エンジン始動時に、前記それぞれのクラッチ油圧制御弁に、前記それぞれの管路に油を充満させる予備トリガ信号を出力する構成としている。 【0009】上記構成によれば、エンジン始動時にコントローラはそれぞれのクラッチ油圧制御弁に予備トリガ信号を出力し、それぞれのクラッチ油圧制御弁と対応するクラッチ室とを連結するそれぞれの管路に自動的に油を供給し、充満させる。そのため、クラッチ室に油を充満させるまでの時間は、エンジン始動後の1回目と、2回目以降とはほぼ同一となり、オペレータにタイムラグの違いによる違和感を与えることはない。したがって、大容量クラッチの場合でも、変速時の操作性を向上できる。 【0010】第2発明は、第1発明の構成に基づき、エンジン回転数検出センサと、クラッチ油圧制御弁及び前記管路に油圧ポンプから供給する油の温度を検出する油温検出センサとを付設し、前記コントローラは、前記それぞれの管路毎にエンジン回転数及び油温に対応した予備トリガ時間マップを予め記憶し、エンジン回転数検出センサにより検出されたエンジン回転数及び油温検出センサにより検出された油温に基づいて予備トリガ時間マップにより予備トリガ時間を演算し、演算した予備トリガ時間に基づいて予備トリガ信号を対応するクラッチ油圧制御弁に出力する構成としている。 【0011】上記構成によれば、コントローラは、それぞれ容積の異なる管路に対応し、かつ、エンジン回転数と油温とに基づいて予め予備トリガ時間マップにより設定された予備トリガ時間を演算する。したがって、各管路を充満させるのに過不足のない容量の油を供給する予備トリガ時間をエンジン回転数及び油温に適応させて求めることが可能となる。そして予備トリガ信号をクラッチ油圧制御弁に出力して前記求めた予備トリガ時間だけ油を供給させるため、必要かつ十分な油を管路に供給し、充満させることができる。 【0012】第3発明は、第2発明の構成に基づき、エンジンの始動後所定の回転数に達してからの時間を検出するタイマを付設し、前記コントローラは、エンジン回転数が所定の回転数に達してから所定の回転数以上の状態が所定時間だけ継続したときに前記予備トリガ信号を出力する構成としている。 【0013】上記構成によれば、コントローラは、エンジン回転数が所定の回転数に達した後に所定の回転数以上の回転数の状態が所定の時間継続したか否かを判断する。所定の時間継続したときに管路に油を供給する。これにより、予備トリガ信号を出力するときには油圧ポンプ及びクラッチ油圧制御弁間のメイン圧は所定の油圧に確実に上昇しているので、前記予備トリガ時間マップにより求めた予備トリガ時間だけの時間内で確実に管路内に油を充満させることができる。 【0014】第4発明は、第2発明の構成に基づき、前記予備トリガ信号の出力をコントローラに指令する外部スイッチを備えた構成としている。 【0015】上記構成によれば、エンジン始動後、自動的に予備トリガ信号が出力される他に、エンジン始動後、オペレータが操作する外部スイッチによりコントローラに予備トリガ信号を出力させることができる。これにより、もし自動的に予備トリガ指令を出力するための指令信号をコントローラに送るセンサ類が故障した場合でも、外部スイッチにより確実に予備トリガ指令を出力するための指令信号をコントローラに出力できる。そして、コントローラからクラッチ油圧制御弁に予備トリガが出力されて、管路内に油を充満でき、常に均一なクラッチ係合時間となるので操作性がよい変速機のクラッチ制御装置が得られる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下に、本発明に係る変速機のクラッチ制御装置の実施形態について、図面を参照して詳述する。 【0017】図1は第1実施形態の変速機のクラッチ制御装置の回路図であり、例えば図示しない大型の建設機械に搭載されている。クラッチ制御装置1は、コントローラ2、変速機の各クラッチ10毎に対応したクラッチ油圧制御弁3、及び油圧ポンプ4を有している。油圧ポンプ4はクラッチ油圧制御弁3と接続し、各クラッチ油圧制御弁3はそれぞれの管路12を介して各クラッチ10のクラッチ室11に接続している。回路の基本的要素であるフィルタ及びリリーフ弁等は装着されるが図示も説明も省略する。コントローラ2には変速機の前後進あるいは速度段を選択する変速機レバー5からの変速段指令信号、及び油圧ポンプ4の吐出回路6に設けられた油温検出センサ20からの信号が入力される。また、コントローラ2にはエンジン7に設けられたエンジン回転数検出センサ21、エンジン回転数が所定の回転数に達してからの運転時間を検出するためのタイマ22、及びパーキングブレーキが掛かっているときにON信号を出力するパーキングブレーキセンサ23からのそれぞれの信号が入力される。クラッチ油圧制御弁3はクラッチ油圧を制御する圧力制御弁30と、油圧ポンプ4から圧力制御弁30を介してクラッチ室11へ圧油が流れているか否かを検出する流量検出弁40と、クラッチ室11が油で充満したこと、すなわちフィリングが完了したことを検出するフィリング完了検出センサ50(以下、フィル用センサ50という)とを備えている。圧力制御弁30に取着されていてクラッチ室11への流量及び油圧を設定する比例ソレノイド33にはコントローラ2から制御信号が入力されている。また、フィル用センサ50からの検出信号はコントローラ2に入力されている。なお、通常の車両は、図8に示すように前進用3A、後進用3B、あるいは1速用、2速用(共に図示せず)等の複数のクラッチ油圧制御弁3を有していてそれぞれのクラッチ油圧制御弁3はコントローラ2と接続しており、また管路12もそれぞれ前進用12A、後進用12B、あるいは1速用、2速用(共に図示せず)等があるが、本図では一つのクラッチ油圧制御弁3だけを記載してある。 【0018】次に、クラッチ油圧制御弁3の構成ならびに作動について、図2の断面図を参照して詳述する。圧力制御弁30、流量検出弁40及びフィル用センサ50はボデー60に組み込まれている。ボデー60には、油圧ポンプ4から圧油が流入するポンプポート61と、クラッチ室11へ圧油を供給する出力ポート62と、クラッチ室11からの戻り油及び漏れた油をタンク65に戻すドレンポート63,64とが設けられている。圧力制御弁30は、圧力制御弁用スプール31(以降、制御弁用スプール31と呼ぶ)と、ピストン32と、比例ソレノイド33と、第1バネ34とを備えている。制御弁用スプール31の右端部は比例ソレノイド33のプランジャ33aに当接し、左端部は第1バネ34に当接している。第1ばね34は、制御弁用スプール31を比例ソレノイド33側に向けて押圧している。制御弁用スプール31とピストン32とによって形成されたスプール内油室35には、制御弁用スプール31内に形成された油路36を介して、油路37の圧力(クラッチ室11への圧力)が作用している。 【0019】流量検出弁40は、流量検出弁用スプール41(以降、検出弁用スプール41と呼ぶ)と、第2バネ42と、及び第3バネ43とを備えている。検出弁用スプール41には3個の突起部が形成され、この突起部により第1油室44、第2油室45及び第3油室46が形成されている。検出弁用スプール41の突起部で、かつ、第2油室45と第3油室46との間には、孔47が設けられている。検出弁用スプール41は、3つの異なる受圧面積Aa、Ab及びAcを有し、これらの面積間には、数式「Aa+Ac>Ab」及び「Ab>Ac」の関係を持たせている。検出弁用スプール41の左端部には第2バネ42が、右端部には第3バネ43が当接して挿入されている。検出弁用スプール41は、第2油室45及び第3油室46に圧力が生じていないときには、第2バネ42及び第3バネ43の各自由長さの位置で中立位置を保持している。上記において、第2バネ42と第3バネ43は検出弁用スプール41の戻し用のバネとして作用し、圧油の供給がない時には、検出弁用スプール41は中立位置になるようにしている。 【0020】フィル用センサ50は、検出ピン51と、直列に結線された第1抵抗Ra及び第2抵抗Rbと、絶縁体52とを備えている。検出ピン51は、検出弁用スプール41が右方へ移動したときその右端部に当接する位置に絶縁体を介してボデー60に取着されている。検出ピン51からはリード線53が引き出され、リード線53は直列接続の第1抵抗Ra及び第2抵抗Rbの間に結線されている。これらの第1抵抗Ra及び第2抵抗Rbの両端には所定の直流電圧が印加されており、また、ボデー60はアース線54によりアースされている。 【0021】次に上記構成での変速時のクラッチ油圧制御弁3の作動について説明する。オペレータが変速機レバー5を操作して該当する変速段のクラッチ10を係合しようとする場合に、コントローラ2は、対応する圧力制御弁30の比例ソレノイド33に所定のトリガ時間だけ大流量の圧油をクラッチ室11に供給するための大きい指令電流の制御信号を出力する。所定のトリガ時間経過後は、フィリング終了まで小さい指令電流の制御信号を出力する。 【0022】指令電流の制御信号の入力により、比例ソレノイド33のプランジャ33aは制御弁用スプール31を図2の左方向に移動する。これにより、油圧ポンプ4からの圧油は、ポンプポート61、制御弁用スプール31及び油路37を経て、検出弁用スプール41の第2油室45に流入する(図示の矢印Ya)。第2油室45に流入した圧油は、検出弁用スプール41の孔47、第3油室46、及び出力ポート62を経て、クラッチ室11に流れ込む。このとき、孔47により、第2油室45と第3油室46との間に差圧が生じて、検出弁用スプール41は図2の左方向に押される。この圧油の流れは、大電流で大流量を流した後、小流量に切り換え、小流量でクラッチ室11が充満するまで続く。 【0023】クラッチ室11が油で充満すると、フィリング終了となり、もはや油は流れなくなり、第2油室45と第3油室46との間の孔47の差圧がなくなる。これにより、検出弁用スプール41は右方向に移動し、中立位置まで復帰する。このとき、検出弁用スプール41の受圧面積の面積間の関係、即ち数式「Aa+Ac>Ab」による右方向へ作用する力と、第2バネ42の復帰力とを加えた力により、検出弁用スプール41は、さらに、右方向に移動する。そして、検出弁用スプール41が中立位置よりもさらに右方向に移動することにより、検出弁用スプール41の右端が検出ピン51に接触する。この接触により、抵抗Ra、Rbの中間点の電位がアース電位まで下がり、コントローラ2ではこの電位の変化によりクラッチ室11が油で充満してフィリングが終了したことを検出する。上記のように、クラッチ室11への流量が制御弁用スプール31により制御されることにより、油圧ポンプ4からクラッチ室11への圧油の供給量の時間的勾配は図9に示すように、時刻TaからのLBになる。これにより、変速ショック又は変速音等を生ずることなく、スムーズにクラッチを係合させて建設機械を走行させる。 【0024】以下に、本発明に係るクラッチ制御装置1の作動について、図3のフローチャートを参照して詳述する。 1)ステップ100で、車両が停車しており、変速機レバー5が中立位置にある状態で、オペレータはエンジンを始動させる。 2)ステップ101で、コントローラ2はエンジン回転数検出センサ21からの信号を入力し、エンジンが所定の回転数、例えば500rpm以上に達したか否かを判定する。未満の場合には所定の回転数に達するまでステップ101の処理を繰り返し、達したらステップ102へ移行する。 3)ステップ102で、コントローラ2はタイマ22からの信号に基づいてエンジンが前記所定の回転数に達した後、所定の回転数以上の状態が所定時間、たとえば3sec経過したか否かを判定する。NOの場合には条件を満たすまでステップ102の処理を繰り返し、満たした場合はステップ103へ移行する。これは、クラッチ制御装置1の油圧回路のメイン圧が十分に上昇するに必要なエンジン回転数を得るためである。したがって、機種によりエンジンの回転数及び運転時間は異なる。 4)ステップ103で、各クラッチのフィル信号がOFFの状態、即ち各クラッチ室11に油が充満されていない状態で、かつパーキングブレーキがONか否かを判定する。 5)ステップ103で、YESの場合にはステップ104に進み、クラッチ油圧制御弁3に、管路12を充満させる予備トリガ信号を出力する。NOの場合にはステップ105で予備トリガ信号を出力しない。これは、クラッチ油圧制御弁3のスプールがごみづまり等でスティックし、前後進クラッチ、もしくは速度段クラッチのいずれかに既に圧油が作用していて、かつパーキングブレーキがかかっていない場合、予備トリガ信号を出力すると車両が発進する可能性がある。これを防止するための処置である。 【0025】次に、予備トリガ信号について図4のグラフを参照して説明する。図4の上部のグラフはエンジン始動時のエンジン回転数と経過時間との関係を示すグラフであり、縦軸はエンジン回転数であり、横軸は時間である。下部のグラフは予備トリガ信号の各クラッチへの出力順序と、出力時間(予備トリガ時間)との関係を示すグラフであり、縦軸にはクラッチへの出力順、横軸は時間を示している。0点でエンジン始動させるとエンジン回転数は時間の経過とともに上昇し、前述のように所定の回転数N(例えば500rpm)に達し、その後、所定の時間Te(例えば3sec)経過した後、コントローラ2は各クラッチ油圧制御弁3に、前進F、後進R、1速、2速、3速の順序で、順次、予備トリガ時間だけ油を供給し、それぞれの管路12に油を充満させる予備トリガ信号を出力する。予備トリガ時間はそれぞれTf、Tr、T1、T2、T3であり、コントローラ2はそれぞれの管路容積と、エンジン回転数と、油温とからそれぞれの管路12を油で充満させるのに必要、かつ、十分な予備トリガ時間を演算する。 【0026】次に、予備トリガ時間の演算方法について説明する。予備トリガ時間は管路容積、エンジン回転数及び油温により異なる。コントローラ2には、図5及び図6に示すような、圧力制御弁30の比例ソレノイド33に出力する制御信号の出力時間(予備トリガ時間)と、エンジン回転数と、油温との関係を示すトリガ時間マップがそれぞれの管路毎に記憶されている。このトリガ時間マップは、例えば図5に示すように、エンジン回転数をパラメータにして油温と予備トリガ時間との関係を表す所定のトリガ時間マップとしたり、あるいは図6に示すように、油温をパラメータとしてエンジン回転数と予備トリガ時間との関係を所定のトリガ時間マップとすることができる。図5,6のトリガ時間マップは例えば前進F用クラッチの管路の場合を示しており、他の管路についても同様なトリガ時間マップがコントローラ2に記憶されている。コントローラ2は、エンジン回転数検出センサ21及び油温検出センサ20から検出信号を入力し、上記のトリガ時間マップに基づいてそれぞれの管路に対応して所要の予備トリガ時間を演算する。 【0027】本実施形態によると、エンジン始動時に、クラッチ油圧制御弁3とクラッチ室11間の管路12内の油を供給する。エンジンを始動したときには、管路12内の油はタンク65に戻っていて、管路12内は空になっている場合が多い。このため、本実施形態では、エンジン始動後の変速前に、まずこの空になっているそれぞれの管路12に油を充満させる。即ち、エンジン始動後に所定のエンジン回転数に達した後に所定のエンジン回転数以上の回転数の状態が所定時間継続したときに、各クラッチ10毎に個別に設定されている所定の時間幅の予備トリガ信号を各クラッチ10に対応するクラッチ油圧制御弁3に出力して管路12に油を充満させる。エンジン回転数が所定の回転数に達した後に所定の回転数以上の回転数の状態が所定時間継続したときには、油圧ポンプ及びクラッチ油圧制御弁間のメイン圧は所定の油圧に確実に上昇しているので、予備トリガ時間マップにより求めた予備トリガ時間だけの時間内で確実に管路内に油を充満させることができる。そして、空になっていた管路12に油が充満されて、エンジン始動後の一回目の変速時にも、2回目以降の変速時と同等のクラッチフィル時間及び変速時間が得られる。これにより、車両パーキング状態からエンジン始動した直後の変速時でも、変速時のクラッチ係合時間は通常の係合時間と略等しくなるので違和感のない変速操作感覚が得られる。 【0028】図7は第2実施形態の変速機のクラッチ制御装置1の回路図である。図1に示す第1実施形態のものと同一部分には同一符号を付して説明は省略する。図1と異なる部分は、コントローラ2にオペレータの操作する外部スイッチ70及びエンジンキースイッチオン後例えば3秒経過したときに点灯する指示灯71が接続されていることだけである。 【0029】第2実施形態の作動を説明する。第1実施形態では、エンジン始動時に、パーキングブレーキセンサ信号がON、かつ各クラッチのフィル信号がOFFのときに、エンジン回転数が所定の回転数に達して、所定の回転数以上の状態が所定時間以上継続したときに自動的にクラッチ油圧制御弁3に予備トリガ信号を出力して管路12に油を充満させる。本実施形態では、第1実施形態と同様に、自動的に予備トリガを出力して油を充満させるが、充満後、指示灯が点灯したことを確認して、さらにオペレータの意志で予備トリガ信号を出力させる外部スイッチ70を設けている。自動的に予備トリガを出力するときの判断に使用されるエンジン回転数検出センサ21又はパーキングブレーキセンサ23が故障して予備トリガが出力されないときに、オペレータは、強制的に外部スイッチ70を操作して予備トリガを出力する。そして、変速開始する前に管路12内に油を充満させる。外部スイッチ70を操作したときも、前記同様パーキングブレーキがONで、かつフィル用センサ50からの信号がOFFである場合のときだけクラッチ油圧制御弁3に予備トリガ信号を所定のトリガ時間マップに基いた時間だけ出力する。 【0030】また、本実施形態によると、エンジン始動時のみでなく、オペレータが必要と判断したときに管路内に油を充満でき、常に均一な係合時間となるので操作感覚のよい変速機のクラッチ制御装置が得られる。 【0031】なお、第1,2実施形態においては、油をクラッチ室11に供給するクラッチ油圧制御弁3から管路12に直接供給するようになっているが、クラッチ油圧制御弁3を迂回する別回路に油の充満専用の充満ソレノイド切換弁を設け、充満ソレノイド切換弁を介して油を管路12に供給するようにしてもよい。また、第1,2実施形態では、それぞれのクラッチ油圧制御弁3に順次予備トリガ信号を出力するようになっているが、同時に全クラッチ油圧制御弁3に予備トリガ信号を出力したり、あるいは、いくつかの管路12をグループ化し、グループ単位で予備トリガ信号を出力するようにしてもよい。さらに、第1,2実施形態においては、予備トリガ信号を出力開始する判断の元となるエンジンの所定の回転数を例えば500rpm、所定の継続時間を例えば3secとしているが、これに制限されることなく、車両の特性に合わせて設定される。また、メイン圧が確保される拘束条件を満足すれば、指令開始までの所定の時間をゼロ秒と設定してもよい。第1,2実施形態においては、油温検出センサ20を油圧ポンプ吐出回路6に設けるとしているが、クラッチ油圧制御弁3内の油通路に設けても何ら差し支えない。第2実施形態において指示灯を設けるとしているが、指示灯を設けず、全てオペレータの判断により外部スイッチを操作して管路12に油を充満させてもよい。 【0032】本発明は、上記のような構成としたため、クラッチ付変速機のそれぞれのクラッチ室に接続する管路を、エンジン始動時にそれぞれの容積に対応して所定の予備トリガ時間だけ油を供給し、充満させることができる。したがって、エンジン始動直後の1回目の変速時も、2回目以降の変速時も、変速タイムラグに差が生じないため、オペレータの変速操作フィーリングを損なうことがない。また、クラッチ室が油で充満されておらず、かつ、パーキングブレーキONのときにのみ予備トリガ信号が出力されるため、車両がオペレータの予期に反して発進することがないので操作感覚の優れた変速機のクラッチ油圧制御装置が得られる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001236 【氏名又は名称】株式会社小松製作所
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| 【出願日】 |
平成11年11月16日(1999.11.16) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2001−141045(P2001−141045A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−325780 |
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