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【発明の名称】 自動変速機の電子制御装置
【発明者】 【氏名】神▲崎▼ 靖宏

【要約】 【課題】オブジェクト指向の考え方に基づくプログラムに従って自動変速機を制御する電子制御装置において、適切な多重変速制御を実現可能とする。

【解決手段】各駆動部品(リニアソレノイドバルブSLN,SLU,SLT)毎に設けられたドメインコントローラには、変速制御部SQMから、どの変速段からどの変速段への切替であるかを示す変速パターンIDを駆動制御要求メッセージにて通知する。そして、多重変速の場合には、変速パターンIDと共に、現在実行中の変速制御の進行度合を示す多重変速パターンIDを、駆動制御要求メッセージにて通知し、この駆動制御要求メッセージに基づいて、駆動部品に対する適切な駆動制御処理を実行させるようにしている。そのため、プログラムの独立性・再利用性の向上を図りつつ、多重変速の場合であっても、当該変速制御に必要な複数の駆動部品を適切なタイミングで駆動させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 自動変速機の制御プログラムを所定の機能毎に分割したオブジェクトに従って、該各機能を実現するための処理を行う複数の単位処理手段を備え、該単位処理手段により自動変速機を制御する電子制御装置であって、前記自動変速機を構成する複数の駆動部品毎に前記単位処理手段として設けられ、該駆動部品に対する駆動制御処理の内容を所定の駆動制御要求メッセージに基づき決定し、該決定した内容の駆動制御処理を夫々行う複数の駆動制御手段と、前記自動変速機の変速段を切替える変速制御を行うべきかどうかの変速判断を行い、その結果変速制御を行うべきと判断すると、該行うべき変速制御の種別である変速種別を決定し、該変速種別を示す変速種別情報を含む駆動制御要求メッセージを、前記駆動制御手段の少なくとも1つに出力する変速制御手段と、を備え、前記変速制御手段は、前記変速判断の結果、変速制御を行うべきと判断すると、更に、現在変速制御が実行中かどうかを判断し、実行中であるときには、該実行中である変速制御の進行度合を検出し、該進行度合を示す進行度合情報を出力することにより、前記駆動制御手段に、該変速種別および該進行度合に応じた駆動制御処理を行わせることを特徴とする自動変速機の電子制御装置。
【請求項2】 前記変速制御手段は、前記変速種別情報に加えて、前記進行度合情報を前記駆動制御要求メッセージに含めて出力することを特徴とする請求項1に記載の自動変速機の電子制御装置。
【請求項3】 前記変速制御手段は、前記全ての駆動制御手段に対し前記駆動制御要求メッセージを並列に出力することにより、該駆動制御手段に、個々に駆動制御処理の内容を決定させることを特徴とする請求項2記載の自動変速機の電子制御装置。
【請求項4】 前記各駆動制御手段は、前記駆動制御要求メッセージを受けると、該駆動制御要求メッセージに対応して実行すべき駆動制御処理の有無を判断し、該判断の結果、該実行すべき駆動制御処理が無いと判断すると、その旨の応答メッセージを前記変速制御手段に対して出力するよう構成され、前記変速制御手段は、前記各駆動制御手段での処理動作を監視するための情報として、該出力した全駆動制御要求メッセージの内容を所定の駆動制御要求メッセージ記憶手段に格納するよう構成されると共に、該駆動制御要求メッセージの出力後、前記駆動制御手段から前記応答メッセージを受けると、該応答メッセージに対応する駆動制御要求メッセージの内容を該駆動制御要求メッセージ記憶手段から削除することを特徴とする請求項3に記載の自動変速機の電子制御装置。
【請求項5】 前記各駆動制御手段は、その駆動制御処理を終了すると、該駆動制御処理を終了した旨の制御終了応答メッセージを前記変速制御手段に対して出力し、前記変速制御手段は、前記駆動制御手段の何れかからその駆動制御処理を終了した旨の終了メッセージを受けると、該駆動制御手段に対して該駆動制御処理の実行依頼として出力した駆動制御要求メッセージの内容を、前記駆動制御要求メッセージ記憶手段から削除することを特徴とする請求項4に記載の自動変速機の電子制御装置。
【請求項6】 前記各駆動制御手段は、当該駆動制御手段にて実行すべき駆動制御処理の内容を記述したプログラムを該内容に応じて分割した複数の駆動オブジェクトに従って夫々処理を行う複数の駆動手段と、該各駆動手段の処理動作を管理するための管理オブジェクトに従って処理を行う管理手段と、からなり、前記管理手段は、当該駆動制御手段に前記駆動制御要求メッセージが入力されると、当該駆動制御手段にて実行すべき駆動制御処理の内容を該駆動制御要求メッセージに基づき決定し、前記駆動手段のうち該決定内容に対応するものに対して駆動制御処理依頼としての駆動開始要求メッセージを出力することにより、該出力先の駆動手段に、該決定した内容の駆動制御処理を実行させることを特徴とする請求項2〜請求項5の何れか一項に記載の自動変速機の電子制御装置。
【請求項7】 前記各駆動手段は、その駆動制御処理を終了すると、その旨の駆動停止応答メッセージを前記管理手段に対して出力するよう構成され、前記管理手段は、前記各駆動手段での処理動作を監視するための情報として、前記駆動開始要求メッセージの内容を所定の駆動開始要求メッセージ記憶手段に格納するよう構成されると共に、該駆動開始要求メッセージの出力後、前記駆動手段から前記駆動停止応答メッセージを受けると、該駆動停止応答メッセージに対応する駆動開始要求メッセージの内容を該駆動開始要求メッセージ記憶手段から削除することを特徴とする請求項6に記載の自動変速機の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、オブジェクト指向のプログラムに従って自動変速機を制御する電子制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば車両に搭載される電子制御式の自動変速機は、各変速段を構成する歯車変速機構と、その歯車変速機構におけるトルク伝達経路を切り換える複数の摩擦係合装置と、摩擦係合装置の動作を油圧により制御する油圧制御装置と、車両の走行状態に基づいて油圧制御装置の複数のソレノイドバルブを駆動制御する電子制御装置とを備えている。
【0003】この電子制御装置では、車両の走行状態(例えば車速やアクセル開度など)に基づいて、自動変速機の変速比を変化させる変速制御を行うか否かの判断を行い、変速を行うとの判断が為された場合(「変速判断の成立」という)には、更に、その行うべき変速の種別(本明細書では「変速種別」という。)、即ち、第何速段から第何速段への切替であるかを決定する。そして、その決定した変速種別に応じて、ソレノイドバルブを駆動させることにより、摩擦係合装置、歯車変速機構を動作させて変速を行う。そして、その際、変速ショックを抑制するような適切な変速を実現できるよう、変速比の切換途中である変速過渡時に複数の摩擦係合装置の係合圧の調節(解放を含む)を行う制御や、自動変速機に組み合わされるトルクコンバータのロックアップクラッチの係合圧の調整(解放を含む)を行う制御等も、ソレノイドバルブを駆動することにより行われる。
【0004】また、変速制御中にスロットル開度値などが変わることにより他の変速判断が成立するなど、過去に開始された変速制御が終了する前に、新たな変速判断が成立する(所謂、多重変速)ことがある。こうした多重変速を行うに当たっては、一回の変速判断のみで完結する通常の変速とは異なり、既に実行中の変速制御の進行度合に応じた動作を採ることにより、現在実行中の前段階の変速制御から、次に行うべき後段階の変速制御への適切な(例えば変速ショックを抑制可能な)移行が行われる(例えば、特許第261602号公報、特開平8−244499号公報など)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、こうした電子制御装置を用いて自動変速機を制御するには、変速制御用のプログラムを予め電子制御装置に組み込んでおく必要があるが、発明者らは、プログラムの再利用性を高めるため、オブジェクト指向の考え方に基づいてプログラムを構築しようと考えている。
【0006】オブジェクト指向とは、人間が行動するときの如く操作対象物(或いは制御対象物)に注目して仕事を進めるという考え方を、コンピュータシステムに適用するものであり、このオブジェクト指向では、プログラムをオブジェクトという単位で構成する。オブジェクトは、データとそのデータを処理するための手続き(メソッド)とを一まとめにしたプログラムモジュールであり、オブジェクト指向のプログラミングでは、基本的には、人・物などの物理的な「もの」毎や、計算方法・手順など概念的な「もの」毎に、制御プログラムの機能を細分化してオブジェクトを構成する。そして、オブジェクト同士のメッセージのやり取りによって、各オブジェクトを結合し、所望の制御処理を実現する。なお、本明細書中の説明において、オブジェクトを動作の主体とする表現は、実際には、CPUがオブジェクトに従って動作する(換言すれば、CPUがオブジェクトのメソッドに従う手続きを実行する)ことを意味する。
【0007】この様なオブジェクト指向の考え方を適用して、自動変速機を構成する駆動部品(例えばソレノイドバルブ)毎にオブジェクトを構成すれば、駆動部品の仕様が変更される場合であっても、変速制御用プログラムの内、変更される部品に対応するプログラム部分(即ち、その部品に対応するオブジェクト)のみを書換又は交換するだけで対応できる。即ち、プログラムを再利用しやすくなり、システム開発期間の短縮を図ることが可能となる。
【0008】しかし、単純に自動変速機の駆動部品毎にオブジェクトを設けるようにするというだけでは、従来の電子制御装置(即ち、オブジェクト指向でないプログラムに従って動作するもの)と同様な多重変速に対応した制御処理を実現することはできない。即ち、前段階の変速制御から後段階への変速制御の移行を適切に図る(例えば変速ショックを抑制したり、無駄な処理を省くこと)ことができない。
【0009】本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、オブジェクト指向の考え方に基づくプログラムに従って自動変速機を制御する電子制御装置において、適切な多重変速制御を実現可能とすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段及び発明の効果】上記課題を解決するためになされた本発明(請求項1記載)の自動変速機の電子制御装置は、自動変速機の制御プログラムを所定の機能毎に細分化したオブジェクトに従って各機能を実現するための処理を夫々行う複数の単位処理手段を備えたものである。
【0011】ここで、単位処理手段とは、マイクロコンピュータのCPUがオブジェクトに従って動作することで実現される機能手段である。つまり、マイクロコンピュータのCPUがオブジェクトのメソッドを実行することにより、そのオブジェクトに割り振られた機能を実現するための処理が行われる。
【0012】そして請求項1記載の自動変速機の電子制御装置では、単位処理手段として、自動変速機を構成する複数の駆動部品毎に設けられた複数の駆動制御手段を備えている。これら各駆動制御手段は夫々、駆動部品に対する駆動制御処理の内容を、駆動制御要求メッセージに基づいて自ら決定し、その決定した内容の駆動制御処理を個々に行う。この駆動制御要求メッセージは、変速制御手段にて作成されるものであり、変速制御手段は、変速判断(自動変速機の変速段を切替えるかどうかの判断)を行って、変速判断が成立する(変速制御を行うべきと判断する)と、当該実行すべき変速制御の種別である変速種別を決定し、その変速種別を示す変速種別情報を含む駆動制御要求メッセージを、駆動制御手段の少なくとも1つに出力することにより、駆動制御処理を行わせる。
【0013】そして、特に本発明の自動変速機の電子制御装置において、変速制御手段は、変速判断が成立すると、更に、現在変速制御が実行されているかどうかを判断し、実行中であるときには、実行中の変速制御の進行度合を検出し、その進行度合を示す進行度合情報を出力する。こうして変速制御手段は、駆動制御手段に、駆動制御手段自らが行うべき駆動制御処理の内容を、変速種別および進行度合に基づいて決定させ、その決定した内容の駆動制御処理を行わせるのである。
【0014】即ち、駆動制御処理の具体的な内容(例えば、駆動タイミングや、駆動部品がソレノイドバルブである場合には、ソレノイドに対する通電のデューティ比、通電周期など)を決定するには各駆動部品の定格や性能を考慮する必要があり、これを変速制御手段が決定して実行させるようにしたのでは、駆動部品の仕様が変更された場合に、変速制御手段についても大きな変更を強いられる可能性がある。そこで、請求項1記載の自動変速機の電子制御装置においては、駆動制御処理の内容を、駆動部品毎に設けられたオブジェクトに従って動作する個々の駆動制御手段が決定するよう構成している。このため、駆動部品の仕様が変更された場合であっても、それに対応するオブジェクトだけを修正或いは交換するだけで、容易に対応することができる。即ち、プログラムの独立性・再利用性が向上し、システム開発期間の短縮も可能となる。
【0015】また、オブジェクト指向の考え方に基づいてアクチュエータなどの駆動部品毎にオブジェクトを設けるといっても、様々な構成が考えられる。例えば、各駆動部品毎に設けられたオブジェクトが個々に変速判断を行い、多重変速が発生した場合でも、個々に現在実行中の変速の進行度合に基づいた対応をとるような構成とすることも考えられる。ところが、自動変速機の変速段の切替においては複数の駆動部品の並列的な動作が要求されることが多く、その場合、それらの動作タイミングを合わせる必要があるにもかかわらず、上の様な構成としたのでは、異なるオブジェクトが互いに駆動制御処理のタイミングを合わせることが困難となり、適切な変速制御を実現することができなくなってしまう。また各駆動制御手段が個々に、実行中の変速制御の進行度合を検出するのでは、同様な処理を繰り返し行うこととなり、時間的なロスが生じることとなる。
【0016】そこで、請求項1記載の自動変速機の電子制御装置においては、変速制御手段が、変速判断を行うようにしている。そして、変速判断が成立した場合、変速制御手段は、変速種別を決定すると共に、現在変速中かどうか(現在変速制御が実行されているかどうか)を判断し、現在変速中であれば、その実行中である変速制御の進行度合を検出する。変速種別は、少なくとも当該変速制御に必要な駆動制御手段に対して駆動制御要求メッセージにより伝達されることとなるが、現在変速中であるときには、更に、その進行度合も、所定の駆動制御手段に伝達され、駆動制御手段は、変速種別及び進行度合に応じた駆動制御処理の内容を決定するのである。
【0017】このため、本発明(請求項1記載)の自動変速機の電子制御装置によれば、オブジェクト指向のプログラムに従って動作するという利点(即ちプログラムの独立性・再利用性の向上)を得つつ、変速制御に必要な複数の駆動部品を適切なタイミングで駆動させることが可能となる。例えば駆動制御要求メッセージを受けたタイミングを基準として、その後に行うべき処理のタイミングを容易に定めることができるのである。
【0018】また、多重変速の場合には、現在実行中の変速制御の進行度合に応じた適切な動作(即ち、前段階の変速制御から後段階の変速制御への移行)が駆動部品毎に異なる可能性がある。例えば、ある駆動部品については現在実行中の駆動制御処理を中止して別内容の駆動制御処理を開始させる一方で、別の駆動部品については現在実行中の駆動制御処理を継続させ、その処理が終了した後に別内容の駆動制御処理を開始させるなど、様々な態様の動作が並列に行われることがあるのである。
【0019】この様に多重変速の場合には、駆動部品毎に異なる動作が要求されることがあるが、請求項1記載の自動変速機の電子制御装置によれば、各駆動制御手段に駆動制御処理の内容を決定させ、個々に行わせるようにしているので、こういった複雑な動作も容易に実現することが可能となる。
【0020】進行度合は、例えば、自動変速機の入力軸回転数と、出力軸回転数との対比によって検出されるものである。なお、この進行度合を示す進行度合情報は、駆動制御要求メッセージとは別に適当なタイミングで出力するようにしても良いが、変速種別情報と共に駆動制御要求メッセージに含めてもよい。即ち、請求項2に記載の様に、変速制御手段を、変速種別情報に加えて、進行度合情報を駆動制御要求メッセージに含めて出力するよう構成してもよい。
【0021】さて、変速制御手段から出力される駆動制御要求メッセージは、少なくとも当該変速制御(決定された変速種別によって示される変速制御)に必要な駆動制御手段に伝達されればよい。これを実現するには、例えば、変速制御手段が、その「当該変速制御に必要な駆動制御手段」がどれであるかを判断し、該当する駆動制御手段にのみ、駆動制御要求メッセージを送るようにすることも考えられる。しかし、その様なプログラム構成では、ある種別の変速制御に必要な駆動部品の組み合わせが変更された場合には、変速制御手段をも変更しなければならず面倒である。
【0022】そこで、請求項3記載の様に、変速制御手段を、全ての駆動制御手段に対して駆動制御要求メッセージを並列に出力し、各駆動制御手段に、駆動制御処理の内容を決定させるよう、変速制御手段を構成するのである。即ち、請求項3に記載の自動変速機の電子制御装置においては、変速制御手段は、変速制御に必要な駆動制御手段を選択する判断を行わず、全ての駆動制御手段に対して駆動制御要求メッセージを出力し、各駆動制御手段には、自己(駆動制御手段)が行うべき駆動制御処理の内容(実質的に処理を行わない場合、即ち処理内容がない場合を含む)を、駆動制御要求メッセージに基づいて決定させるのである。
【0023】従って、請求項3記載の自動変速機の電子制御装置によれば、変速制御に必要な駆動部品の組み合わせが変更された場合でも、その駆動部品に対応するオブジェクトのみを修正するだけで対応することができ、変速制御手段を変更する必要がほとんどなくなる。
【0024】さて、変速制御の開始後、変速種別などに応じた所定の変速終了条件(例えば、変速時間や自動変速機への入力軸回転数など)に基づいて変速制御動作の終了タイミングを決定して、その終了タイミングで各駆動制御処理を終了させる場合がある。こうしたことを行うためには、駆動制御手段にて行われている駆動制御処理を監視することが必要であり、変速制御手段からどの様な変速種別情報や、進行度合情報を含んだ駆動制御要求メッセージが出力されたかを把握する必要がある。
【0025】そこで、請求項4記載の自動変速機の電子制御装置では、各駆動制御手段での処理動作を監視するための情報として、変速制御手段から各駆動制御手段への全ての駆動制御要求メッセージの内容を、駆動制御要求メッセージ用の記憶手段(駆動制御要求メッセージ記憶手段)に格納しておく。
【0026】一方、駆動制御要求メッセージを受けても、全ての駆動制御手段がその駆動制御処理を行うとは限らず、変速種別によっては駆動制御処理を行わない駆動制御手段もある。各駆動制御手段は、駆動制御要求メッセージを受けると、そのメッセージに応じて行うべき駆動制御処理があるかどうかを判断し、実行すべき駆動制御処理がない場合には、その旨(即ち、受けた駆動制御要求メッセージに対応して実行すべき駆動制御処理がない旨)の応答メッセージを変速制御手段に対して出力する。
【0027】そして、変速制御手段は、各駆動制御手段に対して駆動制御要求メッセージを出力した後、何れかの駆動制御手段から応答メッセージを受けると、その応答メッセージに対応する駆動制御要求メッセージの内容を、駆動制御要求メッセージ記憶手段から削除する。
【0028】この様な請求項4記載の自動変速機の電子制御装置においては、駆動制御要求メッセージに応じて行うべき駆動制御処理がある駆動制御手段に対して出力された当該駆動制御要求メッセージだけについて、その内容(変速種別情報や進行度合情報など)が、駆動制御要求メッセージ記憶手段に格納された状態となる。そのため、決定された変速種別や検出された進行度合に対応して、どの駆動制御手段が駆動制御処理を行っているか(即ち、どの駆動部品に対する駆動制御処理が行われているか)、或いは、どの駆動制御手段が駆動制御処理を行う予定であるかを把握することができる。そして、その変速種別や進行度合に応じて行うべき駆動制御処理がない駆動制御手段に対して出力された駆動制御要求メッセージの内容は、駆動制御要求メッセージ記憶手段から削除されるので、駆動制御処理の監視に必要のない駆動制御要求メッセージがメモリ装置に残るのを防止でき、メモリ資源の有効な活用を図ることができる。
【0029】駆動制御要求メッセージ記憶手段に記憶されている情報の内、既に終了した駆動制御処理に対応するものと、現在実行中或いは実行予定の駆動制御処理に対応するものとの区別は、例えばフラグを使用(終了した処理に対応する情報についてはフラグを立てる、など)することにより可能であるが、請求項5記載の様にすると、より好ましい。
【0030】即ち請求項5記載の自動変速機の電子制御装置では、各駆動制御手段は、その駆動制御処理を終了すると、その旨(駆動制御処理を終了した旨)の制御終了応答メッセージを変速制御手段に対して出力する。そして、変速制御手段は、駆動制御手段の何れかから、その制御終了応答メッセージを受けると、それに対応する駆動制御要求メッセージの内容を、駆動制御要求メッセージ記憶手段から削除する。例えば駆動制御処理Aが終了した場合を考えると、その旨を示す制御終了応答メッセージに対応する駆動制御要求メッセージとは、「駆動制御処理Aを終了した」旨の終了メッセージの出力元である駆動制御手段に対して、その駆動制御処理Aの実行依頼として出力された駆動制御要求メッセージである。
【0031】この様な請求項5記載の自動変速機の電子制御装置によれば、終了した駆動制御処理に対応する駆動制御要求メッセージの内容は、駆動制御要求メッセージ記憶手段から削除されるので、駆動制御処理の監視に必要のない駆動制御要求メッセージがメモリ装置に残るのを防止でき、更にメモリ資源の有効な活用を図ることが可能となる。
【0032】次に請求項6に記載の自動変速機の電子制御装置においては、各駆動制御手段は、複数の駆動手段と、これら複数の駆動手段の処理動作を管理するための管理手段とから構成されている。この駆動手段は、当該駆動制御手段にて実行すべき駆動制御処理の内容を記述したプログラムを該内容に応じて分割した複数の駆動オブジェクトに従って、夫々処理を行うものである。そして、管理手段は、該各駆動手段の処理動作を管理するための管理オブジェクトに従って処理を行う。
【0033】管理手段は、具体的には、当該駆動制御手段に駆動制御要求メッセージが入力されると、当該駆動制御手段にて実行すべき駆動制御処理の内容を、その駆動制御要求メッセージに基づき決定する。そして管理手段は、複数の駆動手段のうち、決定内容に対応するもの(即ち、実行すべき駆動制御処理に必要な駆動手段)に対して駆動制御処理依頼としての駆動開始要求メッセージを出力することにより、出力先の駆動手段に決定した内容の駆動制御処理を実行させる。
【0034】即ち、請求項6に記載の自動変速機の電子制御装置においては、駆動制御処理機能をその制御内容に応じて区分し、その区分した機能毎に駆動オブジェクトを用意するのである。この様にすれば、ある区分の駆動制御処理のみに関する仕様を変更しようとする場合には、それに対応するオブジェクトを変更するだけで対応できる。つまり、駆動制御処理に関する設計変更が容易となり、好ましい。
【0035】ところで多重変速の場合には、上述の様に、駆動部品毎に動作態様が異なるような複雑な動作が要求されることがあるが、そういった動作を実現するには、例えば、請求項7に記載のように、駆動手段および管理手段を構成すると良い。即ち、請求項7に記載の自動変速機の電子制御装置においては、各駆動手段での処理動作を監視するための情報として、管理手段から駆動手段への駆動開始要求メッセージ(即ち、既に出力した、及び出力する予定の駆動開始要求メッセージ)の内容を、駆動開始要求メッセージ用の記憶手段(駆動開始要求メッセージ記憶手段)に格納しておく。一方各駆動手段は、駆動開始要求メッセージを受けた後、その駆動制御処理を終了すると、その旨を示す駆動停止応答メッセージを管理手段に対して出力する。そして管理手段は、駆動開始要求メッセージの出力後、出力先の駆動手段から駆動停止応答メッセージを受けると、その駆動停止応答メッセージに対応する駆動開始要求メッセージの内容を、駆動開始要求メッセージ記憶手段から削除する。
【0036】この様に構成された請求項7記載の自動変速機の電子制御装置によれば、管理手段から駆動手段への駆動開始要求メッセージの内容を記憶しておき、そのメッセージにより開始された駆動制御処理が終了すると削除することから、実行中若しくは実行予定の変速制御(駆動制御処理)の内容を容易に把握できる。その結果、いわゆる多重戻り変速が発生した場合には、変速制御を速やかに完了することが可能となる。
【0037】多重戻り変速とは、例えば、「1速から2速への変速(1→2変速)」(以下、A速段からB速段への変速を、「A→B変速」と記す)の実行中に「2→1変速」を行うべき旨の変速判断が成立した場合や、「1→2変速」の実行中に「2→3変速」を行うべき旨の変速判断が成立し、更に「3→2速変速」を行うべき旨の変速制御が成立した場合のように、元の変速段に戻すような変速判断が成立した場合の多重変速をいう。
【0038】前者の場合、現在実行中の「1→2変速」の変速制御の進行度合が小さければ、その「1→2変速」に対応する駆動制御処理を停止すると共に、「2→1変速」の変速制御も行わないようにすることにより、短時間で変速制御を完了できることとなる。また、後者の場合にも、「2→3変速」および「3→2変速」の変速制御とが打ち消し合うこととなり、必要なくなるので、これらを共に行わないようにすれば、変速制御に要する時間を短縮できることとなる。
【0039】この様に、駆動手段への駆動開始要求メッセージの内容を記憶しておき、実行中及び実行予定の駆動制御処理を把握できるようにしておけば、多重戻り変速の場合に、変速制御を速やかに完了させることが可能となる。なお、実行中或いは実行予定の駆動制御処理の把握は、例えば駆動開始要求メッセージ記憶手段に格納された順序や、実行中か実行待ちの状態かを示すフラグ等を、駆動開始要求メッセージの内容と共に記憶しておくことにより行うことができる。
【0040】また、請求項7記載の様に、駆動手段への駆動開始要求メッセージの内容を記憶しておき、実行中及び実行予定の駆動制御処理を把握できるようにしておけば、ある一の駆動部品に対応する管理手段が、他の駆動部品に対する駆動制御処理の実行状態及び実行予定を把握することも可能となるので、複数の駆動部品の対する駆動制御処理を同期或いは連動して行うなど、タイミングの合った駆動制御を行うことも容易となる。
【0041】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施例としての自動変速機の電子制御装置について、図面と共に説明する。尚、この発明の実施の形態では、自動変速機の変速過渡時における変速ショックを低減するための制御に上記発明を適用した実施例について説明する。
【0042】まず図1は、本発明の一実施例としての自動変速機の電子制御装置(以下、単に「T−ECU」という。)55が搭載される車両の全体的な制御系統を示すブロック図であり、駆動力源としてのエンジン1の出力側には自動変速機2が連結されている。エンジン1は、その出力を電気的に制御するように構成されており、エンジン1の吸気管3には、サーボモータ4によって駆動される電子スロットルバルブ5が設けられている。また、エンジン1は、燃焼室1Aの燃料噴射量を制御するインジェクタ6Aを含む燃料噴射制御装置6と、スパークプラグ7Aおよびディストリビュータ7Bおよびイグニッションコイル7Cを含む点火時期制御装置7とを備えている。
【0043】一方、エンジン1に対する出力要求を表すアクセルペダル8の踏み込み量、すなわちアクセル開度は、アクセルペダルスイッチ9によって検出され、その検出信号がエンジン用電子制御装置(E−ECU)10に入力されている。このエンジン用電子制御装置10は、中央演算処理装置(CPU)11、RAMやROM等からなる記憶装置12、入力インターフェース13、出力インターフェース14を主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0044】なお、E−ECU10においては、アクセルペダル8の踏み込み量から、エンジン1の状態がパワーONかパワーOFFかも判定される。アクセルペダル8の踏み込み量が、基準値(予め定められた値)以上であればパワーONと判定され、基準値より小さければパワーOFFと判定される。パワーONとは、エンジン出力が大きく発生しており、エンジン1が自動変速機2の駆動系機構を駆動している状態をいい、パワーOFFとは、エンジン出力が小さく、車両が動いている場合に駆動系機構から伝わる駆動力によってエンジン1が駆動されている、即ちエンジンブレーキがかかっている状態をいう。
【0045】このE−ECU10には、エンジン(E/G)回転数Neを検出するエンジン回転数センサ15の信号、吸入空気量Qを検出する吸入空気量センサ16の信号、吸入空気温度を検出する吸入空気温度センサ17の信号、電子スロットルバルブ5の開度を検出するスロットルセンサ18の信号などが入力されている。
【0046】さらにE−ECU10には、自動変速機2の出力軸46の回転数(出力軸回転数)を検出する出力軸回転数センサ19の信号、エンジン水温を検出するエンジン水温センサ20の信号、ブレーキペダル21の踏み込み量を検出するブレーキスイッチ22からの信号などが入力されている。この出力軸回転数センサ19の信号に基づいて、車速が演算される。
【0047】そしてE−ECU10においては、各種のセンサやスイッチにより検出されるデータを演算処理することで車両の走行状態が判断され、この判断結果に基づいて、電子スロットルバルブ5の開度、燃料噴射制御装置6の燃料噴射量、点火時期制御装置7の点火時期等が制御される。
【0048】図2は、上記の自動変速機2のギアトレーンの一例を示すスケルトン図であり、図2においては、前進5段・後進1段の変速段を設定する有段式の自動変速機2が示されている。自動変速機2は、トルクコンバータ23と、副変速部24と、主変速部25とを備えている。また、このトルクコンバータ23は、ポンプインペラ26に一体化させたフロントカバー27と、タービンランナ28を一体に取付けた部材、言い換えればハブ29と、ロックアップクラッチ30とを有している。
【0049】フロントカバー27はエンジン1のクランクシャフト31に連結され、またタービンランナ28に連結された入力軸32は、副変速部24を構成するオーバドライブ用の遊星歯車機構33のキャリヤ34に連結されている。この遊星歯車機構33を構成するキャリヤ34とサンギヤ35との間には、多板クラッチC0と一方向クラッチF0とが設けられている。この一方向クラッチF0は、サンギヤ35がキャリヤ34に対して相対的に正回転(即ち、入力軸32の回転方向と同方向に回転)した場合に係合するようになっている。そして、副変速部24の出力要素であるリングギヤ36が、主変速部25の入力要素である中間軸37に接続されている。また、サンギヤ35の回転を選択的に止める多板ブレーキB0が設けられている。
【0050】したがって副変速部24は、多板クラッチC0もしくは一方向クラッチF0が係合した状態では、遊星歯車機構33の全体が一体となって回転するため、中間軸37が入力軸32と同速度で回転し、低速段となる。またブレーキB0を係合させてサンギヤ35の回転を止めた状態では、リングギヤ36が入力軸32に対して増速されて正回転し、高速段となる。
【0051】他方、主変速部25は三組の遊星歯車機構38,39,40を備えており、それらの回転要素が以下のように連結されている。すなわち第1遊星歯車機構38のサンギヤ41と第2遊星歯車機構39のサンギヤ42とが互いに一体的に連結されている。また、第1遊星歯車機構38のリングギヤ43と、第2遊星歯車機構39のキャリヤ44と、第3遊星歯車機構40のキャリヤ45とが連結され、かつそのキャリヤ45に出力軸46が連結されている。さらに第2遊星歯車機構39のリングギヤ47が、第3遊星歯車機構40のサンギヤ48に連結されている。
【0052】この主変速部25の歯車列では後進段と前進側の5つの変速段とを設定することができ、そのためのクラッチおよびブレーキが以下のように設けられている。先ずクラッチについて述べると、互いに連結されているリングギヤ47およびサンギヤ48と、中間軸37との間に第1クラッチC1が設けられている。また、互いに連結された第1遊星歯車機構38のサンギヤ41および第2遊星歯車機構39のサンギヤ42と、中間軸37との間に第2クラッチC2が設けられている。
【0053】つぎにブレーキについて述べると、第1ブレーキB1はバンドブレーキであって、第1遊星歯車機構38および第2遊星歯車機構39のサンギヤ41,42の回転を止めるように配置されている。またこれらのサンギヤ41,42とケーシング50との間には、第1一方向クラッチF1と多板ブレーキである第2ブレーキB2とが直列に配列されている。第1一方向クラッチF1はサンギヤ41,42が逆回転、つまり入力軸32の回転方向とは反対方向に回転しようとする際に係合するように構成されている。
【0054】また多板ブレーキである第3ブレーキB3が、第1遊星歯車機構38のキャリヤ51とケーシング50との間に設けられている。そして第3遊星歯車機構40のリングギヤ52の回転を止めるブレーキとして、多板ブレーキである第4ブレーキB4と第2一方向クラッチF2とが設けられている。第4ブレーキB4および第2一方向クラッチF2は、ケーシング50とリングギヤ52との間に相互に並列に配列されている。なお、この第2一方向クラッチF2はリングギヤ52が逆回転しようとする際に係合するように構成されている。
【0055】上記のように構成された自動変速機2においては、各クラッチやブレーキを図3に示す動作図表に示すように係合・開放することにより、前進5段・後進1段の内の何れかの変速段に設定される。なお、この図3において○印は係合状態、●印はエンジンブレーキ時に係合状態、△印は係合・解放のいずれでもよいこと、空欄は解放状態をそれぞれ示す。また、この実施例では、シフトレバー53に対するマニュアル操作により、P(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ、4レンジ、3レンジ、2レンジ、Lレンジの各レンジに設定可能とされ、設定されたレンジに応じた作動範囲で、変速段の切り換えが行われる。
【0056】また、図1に示された油圧制御装置54により、自動変速機2における変速段の設定または切り換え制御、ロックアップクラッチ30の係合・解放やスリップ制御、油圧制御装置54の油圧回路のライン圧の制御、摩擦係合装置(クラッチC0〜C2、ブレーキB0〜B4等)の係合圧の制御などがおこなわれる。この油圧制御装置54は電気的に制御されるもので、自動変速機2の変速を実行するための第1〜第3のシフトソレノイドバルブS1〜S3と、エンジンブレーキ状態を制御するための第4ソレノイドバルブS4とを備えている。
【0057】さらに、油圧制御装置54は、油圧回路のライン圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLTと、自動変速機2の変速過渡時におけるアキュムレータ背圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLNと、ロックアップクラッチ30や所定の摩擦係合装置の係合圧を制御するためのリニアソレノイドバルブSLUとを備えており、T−ECU55に接続されている。このT−ECU55は、中央演算処理装置(CPU)56、RAMやROMなどからなる記憶装置57、入力インターフェース58、出力インターフェース59を主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0058】このT−ECU55には、自動変速機2を制御するためのデータとしてスロットルセンサ18の信号、出力軸回転数センサ19の信号、エンジン水温センサ20の信号、ブレーキスイッチ22の信号、シフトレバー53のマニュアル操作を検出するシフトポジションセンサ60の信号、自動変速機2の制御に適用される変速線図を変更または補正するパターンセレクトスイッチ61の信号、オーバードライブスイッチ62の信号、多板クラッチC0の回転速度(入力軸回転数)を検出する入力軸回転数センサ63の信号、自動変速機2の作動油温を検出する油温センサ64の信号などが入力されている。
【0059】T−ECU55とE−ECU10とは相互にデータ通信可能に接続されており、E−ECU10からT−ECU55に対しては、1回転当たりの吸入空気量(Q/Ne)や、パワーON/OFF状態などの各種データ(即ちE−ECU10によって検出されたり、演算にて得られた情報)が送信され、またT−ECU55からE−ECU10に対しては、各ソレノイドバルブに対する指示信号と同等の信号および変速段を指示する信号などが送信されている。
【0060】また、T−ECU55の記憶装置57には、自動変速機2の変速を制御する変速線図(変速マップ)が記憶されている。この変速線図には、車両の走行状態、例えばアクセル開度と車速とをパラメータとして、一の変速段から他の変速段に変速するための変速点が設定されている。そして、アクセル開度および車速に基づいて変速線図を参照することにより、変速を行うかどうかの判断がなされ、変速すると判断された場合は、T−ECU55から、油圧制御装置54のソレノイドバルブに対して制御信号が入力されることにより、所定の摩擦係合装置の係合・解放がおこなわれる。
【0061】さらに、T−ECU55には、ロックアップクラッチ30の動作を制御するロックアップクラッチ制御マップが記憶されている。このロックアップクラッチ制御マップには、アクセル開度および車速をパラメータとして、ロックアップクラッチ30を係合または解放する領域、もしくはスリップ制御する領域が設定されている。さらにまた、T−ECU55は、各種のソレノイドバルブのフェールを判断し、この判断結果に基づいて車両の走行に支障が生じないように構成要素の状態を制御するフェールセーフ機能を備えている。
【0062】一方、自動変速機2の変速過渡時においては、摩擦係合装置の係合圧、つまりトルク容量の変化や、回転部材の慣性力の変化により、自動変速機2の出力トルクが急激に変化し、このトルクの変動が変速ショックとして体感される可能性がある。そこで、自動変速機2の変速過渡時における変速ショックを抑制するために、エンジン1のトルクを低下させる制御、油圧制御装置54の油圧回路のライン圧の制御、摩擦係合装置の係合圧の制御、ロックアップクラッチ30の制御などの複数種類の制御がおこなわれる。以下、これらの制御について簡単に説明する。
【0063】E−ECU10は、入力された信号およびデータに基づいて、燃料噴射量および点火時期ならびに電子スロットルバルブ5の開度などを制御している。そして、自動変速機2の変速過渡時には、点火時期制御装置7の点火時期を遅角させる制御、または燃料噴射制御装置6により燃料噴射量を削減する制御、もしくは電子スロットルバルブ5の開度を絞る制御のうち、少なくとも一つをおこなうことにより、エンジン1の出力トルクを一時的に低減させる制御がおこなわれる。
【0064】また、図3に示す様に、変速段を「第2速段(2nd)」に設定するには、第3ブレーキB3を係合状態とすることが必要となるが、この第3ブレーキB3の係合圧は、リニアソレノイドバルブSLUで制御される。このリニアソレノイドバルブSLUは通常電流に比例した油圧を発生する機能を備えており、変速過渡時には、リニアソレノイドバルブSLUのデューティー比を制御することにより、第3ブレーキB3の係合圧を調整する。
【0065】また、油圧制御装置54の油圧回路のライン圧は、リニアソレノイドバルブSLTにより制御されている。このリニアソレノイドバルブSLTは通電電流に比例した油圧を発生する機能を備えている。そして、変速過渡時には、リニアソレノイドバルブSLTのデューティ比を制御することにより、ライン圧が調節される。
【0066】さらに、自動変速機2の変速段を形成する摩擦係合装置の係合圧は、アキュムレータ背圧により制御されており、このアキュムレータ背圧は、リニアソレノイドバルブSLNにより調圧されている。このリニアソレノイドバルブSLNは通電電流に比例した油圧を発生する機能を備えており、変速過渡時には、リニアソレノイドバルブSLNのデューティ比を制御することにより、摩擦係合装置の係合圧を調節する。
【0067】また、ロックアップクラッチ30の係合中に変速をおこなうと、トルクコンバータ23によるトルク変動の吸収作用が得られないため、変速ショックが増大する可能性がある。そこで、自動変速機2の変速時にロックアップクラッチ30を一時的に解放することにより、フロントカバー27から入力軸32に伝達されるトルクの変動を軽減する制御がおこなわれる。
【0068】自動変速機2の変速ショックを抑制するための各種の制御は、自動変速機2の変速進行過程(変速段の切換過程)において実行される。このため、T−ECU55は、自動変速機2の入力軸回転数および出力軸回転数ならびに変速比(「ギア比」ともいう)などに基づいて、変速の進行度合(進行状況)をリアルタイムで判断する機能を備えている。
【0069】変速ショックを抑制するための制御は、変速種別によって、また多重変速かどうかによって、その内容(例えば油圧や摩擦係合装置の係合圧の高低、ロックアップクラッチ30の係合圧の高低など)が同一の場合と異なる場合とがある。また、制御の開始時期や終了時期は、変速種別によって、また多重変速かどうかによって、様々である。また、変速ショックの抑制のためにどの制御(例えばエンジントルク、油圧や摩擦係合装置の係合圧、ロックアップクラッチ30の係合圧の制御など)が行われるかについても、変速種別によって、また多重変速かどうかによって、様々である。
【0070】こうした動作を実現するため、自動変速機2の変速過渡時において、本実施例のT−ECU55は、図4に示す様な関連を有する複数のオブジェクトに従う制御を行う。そのオブジェクトとして、まず図4に示すように、変速要求出力部SOUT、変速制御部SQMを備えている。変速要求出力部SOUTは、車両の走行状態に基づき変速判断を行い、変速判断が成立した場合には、その変速種別を決定する。そして、変速判断が成立した場合には、更に、変速中かどうかを判断して(即ち、多重変速かどうかを判断して)、変速中である場合には、その実行中の変速制御の進行度合を検出する。そして変速制御部SQMは、変速種別情報や進行度合情報を、駆動制御要求メッセージに含めて出力する。つまり、変速要求出力部SOUTおよび変速制御部SQMに従ってCPU56が動作することにより、請求項の「変速制御手段」としての機能が実現される。
【0071】そして、更にリニアソレノイドバルブSLN,SLU,SLT毎に設けられ、変速種別に応じて駆動制御処理の内容を決定する複数のドメインコントローラ(本実施例では、アキュムレータ背圧制御部OBsln、B3油圧制御部OBslu 、ライン圧制御部OBslt)と、ドメインコントローラにより決定された内容の駆動制御処理を行うことにより、各リニアソレノイドバルブSLN,SLU,SLTを夫々駆動する複数の個別制御部品(例えば、単一アップ変速時制御部OBsln1,OBslt1,OBslu1や、多重アップ変速時制御部OBsln2,OBslt2や、2−1ダウン変速時制御部OBsln3,OBslu2、…等)が備えられている。
【0072】この各ドメインコントローラ(アキュムレータ背圧制御部OBsln、B3油圧制御部OBslu 、ライン圧制御部OBslt)は、請求項の「管理オブジェクト」に相当し、これに従ってCPU56が動作することにより、「管理手段」としての機能が実現される。
【0073】また、各リニアソレノイドバルブSLN,SLU,SLTに対する駆動制御処理は、その制御内容に応じて、単一アップシフト(例えば「1→2変速」,「2→3変速」など)や、多重アップシフト(例えば、「1→3変速」など)や、2−1ダウンシフト(例えば、「1速→2速→1速の場合における「2→1変速」,3速→2速→1速の場合における「2→1変速」)等に分類される。各個別制御部品は、この様に制御内容に応じて区分された個々の駆動制御処理を実行するためのオブジェクトであり、夫々、その個々の駆動制御処理の内容を記述したメソッドを有している。
【0074】即ち、各個別制御部品は、請求項の「駆動オブジェクト」に相当し、駆動制御処理を実行するためのプログラムを制御内容に応じて複数に分割して構成されたオブジェクトである。これに従ってCPU56が動作することにより、「駆動手段」としての機能が実現される。
【0075】具体的には、まずアキュムレータ背圧制御部OBslnは、上記リニアソレノイドバルブSLNに対応して設けられたオブジェクトであり、リニアソレノイドバルブSLNを駆動するための駆動制御処理を、駆動制御要求メッセージに基づいて選択・決定する。このリニアソレノイドバルブSLNを駆動するための駆動制御処理の内容は、リニアソレノイドバルブSLNに対応する個別制御部品(単一アップ変速時制御部OBsln1、多重アップ変速時制御部OBsln2、2−1ダウン変速時制御部OBsln3、…等)のメソッドとして記述されている。
【0076】また、B3油圧制御部OBslu は、上記リニアソレノイドバルブSLUに対応して設けられたオブジェクトであり、リニアソレノイドバルブSLUを駆動するための駆動制御処理を、駆動制御要求メッセージに基づいて選択・決定する。このリニアソレノイドバルブSLUを駆動するための駆動制御処理の内容は、リニアソレノイドバルブSLUに対応する個別制御部品(単一アップ変速時制御部OBslu1、2−1ダウン変速時制御部OBslu2、…等)のメソッドとして記述されている。
【0077】また、ライン圧制御部OBsltは、上記リニアソレノイドバルブSLTに対応して設けられたオブジェクトであり、リニアソレノイドバルブSLTを駆動するための駆動制御処理を、駆動制御要求メッセージに基づいて選択・決定する。このリニアソレノイドバルブSLTを駆動するための駆動制御処理の内容は、リニアソレノイドバルブSLTに対応する個別制御部品(単一アップ変速時制御部OBslt1、多重アップ変速時制御部OBslt2、…等)のメソッドとして記述されている。
【0078】次に、これらのオブジェクトによって実現される動作について、メッセージ・シーケンス・チャートやフローチャート等に沿って説明する。図5のメッセージ・シーケンス・チャートに示す様に、本実施例のT−ECU55の記憶装置57には、上記以外のオブジェクトとして、所定時間毎(本実施例では16msec毎)に、変速要求出力部SOUTに対してトリガメッセージを出力するトリガジェネレータTGNが格納されている。そして、トリガジェネレータTGNから、変速要求出力部SOUTに対してトリガメッセージが出力される(図5の■)と、変速要求出力部SOUTにより、図6に示す変速要求出力処理が行われる。
【0079】この変速要求出力処理では、まず、S10にて、記憶装置57に予め格納されている変速マップを、スロットル開度および車速に基づき参照して、変速を行うか否かの判断を行う。変速を行わないと判断した場合(S10:NO)には、速やかに当該変速要求出力処理を一旦終了するが、変速判断が成立した場合(即ち変速を行うと判断した場合)には(S10:YES)、S12に移行する。なお、S10では、変速マップを参照することによって、変速判断を行うと共に、変速種別(第何速段から第何速段への変速であるか)も決定される。
【0080】さて、S12では、図7に示す変速パターンID等決定処理が行われる。この変速パターンID等決定処理が起動されると、まずS20にて、現在変速中であるかどうかを判断する。変速中でなければ(S20:NO)、多重変速ではない通常の変速であると判断され、S32にて、変速種別を示す変速パターンID(即ち変速パターンIDとは変速種別を示す識別コードである)を決定し、その後、後述のS34に移行する。
【0081】一方、S20における判断の結果、変速中である場合には(S20:YES)、S22に移行して、現在実行中である変速制御の進行度合を検出するための基準値λを求める。具体的には、基準値λは、現在実行中の変速制御の種別やパワーON・OFF状態(即ちパワーON状態かパワーOFF状態か)などに基づいて基準値λが予め設定されているテーブルを参照して求められる。
【0082】そしてS22に続くS24では、現在実行中の変速制御がどの程度完了しているかを示す進行度合パラメータαを算出する。即ち、変速制御が完了すると、入力軸回転数は、出力軸回転数と変速比(切替先の変速段の変速比)との積に一致することとなるので、両者の差である{(入力回転数)−(出力軸回転数)×(変速比)}を進行度合パラメータαとして算出するのである。
【0083】そしてS26では、基準値λと進行度合パラメータαとの大小関係を判断する。例えば、ダウンシフトの場合には、(入力軸回転数)は、変速制御が進行するに従い大きくなることにより(出力軸回転数)×(変速比)に近づく。即ち、進行度合パラメータαは、負側から「0」に近づいていくことになり、基準値λよりも大きくなれば、変速制御がある程度進行したものと判断できる。
【0084】反対にアップシフトの場合には、(入力軸回転数)は、変速制御が進行するに従い小さくなることにより(出力軸回転数)×(変速比)に近づく。即ち、進行度合パラメータαは、正側から「0」に近づいていくことになり、基準値λよりも小さくなれば、変速制御がある程度進行したものと判断できる。
【0085】この様に、S26では、基準値λと進行度合パラメータαとの大小関係を判断し、その結果に応じて、多重変速パターンIDを決定するために参照するテーブルを選択する。即ち、「基準値λ」≧「進行度合パラメータα」の場合には(S26:YES)、S28に移行して、変速種別に基づいて変速パターンIDを決定すると共に、変速種別、スロットル開度や自動変速機の係合装置の係合状態等に基づいてテーブルAを参照し、多重変速パターンIDを決定する。一方、「基準値λ」<「進行度合パラメータα」の場合には(S26:NO)、S30に移行し、変速種別に基づいて変速パターンIDを決定すると共に、変速種別、スロットル開度や自動変速機の係合装置の係合状態等に基づいて、上記テーブルAとは別のテーブルBを参照し、多重変速パターンIDを決定する。即ち、多重変速パターンIDは、現在実行中の変速制御の進行度合、その他の多重変速時に考慮すべき様々な情報(例えば、スロットル開度や、自動変速機の係合装置の係合状態など)を一括して示す識別コードである。つまり、多重変速パターンIDは、請求項の「進行度合情報」として機能するものである。なお、多重変速パターンIDの決定には、上記情報(変速種別、スロットル開度や自動変速機の係合装置の係合状態)の他にも、車両状態を示す様々な情報が使用される場合がある。
【0086】こうして、S28、S30およびS32の何れかの処理により決定された変速パターンIDおよび必要な多重変速パターンIDは、後述のように変速要求メッセージとして出力されることとなるが、この変速要求メッセージの出力タイミングはS34の処理にて決定される。即ち、S34の処理は、S28、S30およびS32の処理の後に行われ、記憶装置57に予め格納されている別のテーブルを、変速パターンID、多重変速パターンIDや、スロットル開度や、アクセルペダルスイッチ9の状態(パワーON状態或いはパワーOFF状態)や、およびロックアップクラッチ30の状態(係合状態或いは解放状態)等の情報に基づいて参照することにより、変速要求メッセージの出力タイミングを求める。出力タイミングは、上記各種情報に応じて、様々なタイミング(変速判断が成立したタイミングやロックアップクラッチ30の解放タイミング等)を基準として設定される(以下同様)。
【0087】こうして、変速パターンID等決定処理が終了すると、図6に示す様に、S14にて、現在が出力タイミングかどうかの判断し、出力タイミングとならない間(S14:NO)は、一旦当該変速要求出力処理を終了する。そして、再び当該変速要求出力処理が起動された際に、出力タイミングであると判断した場合には(S14:YES)、S16に移行して、変速制御部SQMに対してメッセージ(変速要求メッセージ)を出力する。この変速要求メッセージには、変速パターンIDや多重変速パターンIDが含まれている。
【0088】以上の様な変速要求出力処理を行う変速要求出力部SOUTの機能を図示すると、図8の様になる。即ち、変速要求出力部SOUTは、変速判断部SOUTaと、出力タイミング判断部SOUTbを備えており、変速判断部SOUTaが「変速を行うかどうかの判断」を行い、上述の様にして、変速パターンIDおよび必要な多重変速パターンID(以下、これら両IDを指すときは、単に「変速パターンID等」という。)を決定する。そして、出力タイミング判断部SOUTbが、変速パターンID等に基づいて、変速要求メッセージの出力タイミングを決定する。また、多重変速要求タイミング調停部SOUTcは、多重変速パターンIDなどに基づいて、変速要求メッセージの出力タイミングの補正情報を出力することにより、多重変速の場合を考慮した出力タイミングを、出力タイミング判断部SOUTbに決定させる。
【0089】こうして変速要求出力部SOUTから変速制御部SQMに対して変速要求メッセージが送られる(図5の■)と、変速制御部SQMは、図9に示す様に、変速モニタ開始処理を行う。この変速モニタ開始処理では、まず各ドメインコントローラに配送するためのメッセージ(駆動制御要求メッセージ)が夫々作成され、記憶装置57のRAM内に予め定義された記憶領域(図10)に格納される(S40)。
【0090】S40の処理を実現するため、変速制御部SQMは、図8に示す様な複数の機能、即ち、ステートマシンSQMa、制御開始処理部SQMb、変速パターンバッファSQMcといった機能部を備えている。即ち、変速要求出力部SOUTから出力された変速要求メッセージは、まずステートマシンSQMaにより受信される。そして、制御開始処理部SQMbは、変速要求メッセージにて送られてきた変速パターンID等に基づき、駆動制御要求メッセージを各ドメインコントローラ毎に作成する。そして、その作成された複数の駆動制御要求メッセージは、変速パターンバッファSQMcにより、図10に示す如くRAM内に確保された所定の記憶領域(駆動制御要求メッセージ記憶領域)に書き込まれる。
【0091】この記憶領域は、書き込むべき駆動制御要求メッセージのデータのサイズに合わせた所定容量の領域を一単位(図10(a))とする多数のメモリブロックが、RAM内に確保されたものである。メモリブロックは、図10(a)に示すように、メモリブロックの順序を示すためのポインタ(即ち、次の順のメモリブロックのアドレスが格納されるポインタ)と、メッセージの出力先のオブジェクトを示すオブジェクトID(OID)を格納するためのOID部と、変速パターンIDを格納するための変速パターンID部と、多重変速パターンIDを格納するための多重変速パターンID部と、その出力先のオブジェクトの処理(即ちメソッド)にて使用させる引数(制御データ)のアドレスを格納する為のアドレス部と、変速パターンバッファSQMcにより駆動制御要求メッセージが、上記記憶領域に書き込まれる毎に採番される実行IDを格納する実行ID部とを備えている。なお、図10に示す駆動制御要求メッセージ記憶領域が、請求項の「駆動制御要求メッセージ記憶手段」として機能する。
【0092】この実行IDは、変速制御部SQMから各ドメインコントローラに対して出される駆動制御要求メッセージを夫々区別するための識別コードである。具体的には、メッセージ記憶領域にメッセージの内容が何も格納されていない状態において、変速パターンバッファSQMcにより、駆動制御要求メッセージがメッセージ格納用の記憶領域に書き込まれると、実行IDとして「1」が採番され、上記実行ID部に格納される。そして、実行IDが「1」である駆動制御要求メッセージが既にメッセージ記憶領域に格納されている場合には、実行IDとして「2」が採番され、上記実行ID部に格納される。
【0093】なお、制御開始処理部SQMbにより、駆動制御要求メッセージが3つのドメインコントローラ毎に作成されるので、記憶領域には3個のメッセージの内容が格納されることとなる。そして例えば、メッセージ記憶領域にメッセージの内容が何も格納されていない状態においては、この3個のメッセージに対し、実行IDとして「1」、「2」、「3」が夫々採番され、そのメッセージ内容と共に格納される。
【0094】次にS42では、変速時間データおよび入力軸回転数データの初期化が行われ、変速制御の監視(モニタリング)が新たに開始される(S42)。変速制御のモニタリングは、後述する変速モニタ処理(図17)により、変速時間データおよび入力軸回転数データを参照して行われ、変速時間データおよび入力軸回転数データの値が所定の条件を満たした時に変速制御を終了させるために行われる。なお、変速制御のモニタリングは変速要求メッセージ毎に行われるものであり、前回の変速要求メッセージにより開始された変速制御が継続している場合には、その継続中の変速制御のモニタリングにおける変速時間データおよび入力軸回転数データとは別の新たな変数が用意され、変速時間データおよび入力軸回転数データの初期化が行われる。
【0095】そして、S42の処理の後、上記S40にて格納した駆動制御要求メッセージを、各ドメインコントローラに対して同時に配送する(S44)。なお、「配送」とは、駆動制御要求メッセージに含まれる「オブジェクトID」に従い、そのオブジェクトIDを有する各オブジェクトの処理を起動させることをいう。
【0096】こうして変速制御部SQMから、各ドメインコントローラに駆動制御要求メッセージが送られる(図5の■)と、各ドメインコントローラでは、図11に示す制御判断処理が個々に開始される。なお、本実施例のT−ECU55は、1つのCPU57にて動作するものであり、各ドメインコントローラにより行われる制御判断処理は時分割で実行される。
【0097】この制御判断処理は、変速制御部SQMから、今回受けた(即ち、今回の制御判断処理を起動させる契機となった)駆動制御要求メッセージに基づいて、当該ドメインコントローラに対応するソレノイドバルブの駆動制御をどの様に行うかを決定するための処理である。
【0098】この制御判断処理が起動されると、まずS50にて、現在実行中の駆動制御処理を停止させることが必要かどうかを判断する。この判断は、今回受けた駆動制御要求メッセージに含まれる変速パターンID等に基づいて行われる。具体的な方法としては様々考えられるが、例えば、変速パターンIDおよび多重変速パターンIDの組み合わせ毎に、停止させるかどうかの結論を予め定めたテーブルを用意しておき、これを参照することによって判断することができる。
【0099】S50における判断の結果、現在実行中の駆動制御処理を停止させることが必要である場合(YES)には、S52にて、駆動停止要求メッセージを、その駆動制御処理を実行中の個別制御部品に対して出力する。これにより、その実行中である駆動制御処理を停止させ、その後、S54に移行する。
【0100】このS52の処理は、例えば、多重戻り変速の場合などに行われる。具体的には、例えば「1→2変速」の実行中に「2→1変速」を行うべき旨の変速判断が成立した場合、実行中の「1→2変速」の変速制御の進行度合が小さいとき、変速制御を短時間で完了させるために、実行中の駆動制御処理を停止させるのである。
【0101】なお、駆動停止要求メッセージの配送先の個別制御部品にて起動される駆動停止処理および、その後の動作については、後述する。一方、現在実行中の駆動制御処理を停止させることが必要でない場合(NO)には、S52を経由せずにS54に移行する。S54では、出力待ちの駆動開始要求メッセージを、今回受けた駆動制御要求メッセージにより相殺できるかどうかを判断する。
【0102】駆動開始要求メッセージは、個別制御部品に対する駆動制御処理の実行依頼であり、出力される前には、まず駆動開始要求メッセージ記憶領域(図10)に格納され、その後の所定の出力タイミングにて、依頼対象の個別制御部品に対して出力される。即ち、出力待ちの駆動開始要求メッセージとは、駆動開始要求メッセージ記憶領域に格納されているが、現時点では未だ出力されていないものである。
【0103】そして、出力待ちの駆動開始要求メッセージを相殺できる場合とは、例えば、次の様な場合が考えられる。即ち、「1→2変速」の実行中に「2→3変速」を行うべき旨の変速判断が成立し、更に「3→2速変速」を行うべき旨の変速制御が成立した場合に、「2→3変速」および「3→2変速」の変速制御とが打ち消し合い、結局、元の変速段(この例では第2速)に戻ってしまうような場合である。この場合において、「3→2変速」の変速判断が成立した際、「2→3変速」に対応する駆動開始要求メッセージが出力待ちの状態であれば、このメッセージは相殺可能である。なお、ソレノイドバルブによっては、こういった多重戻り変速の場合であっても、元の状態に戻らないものもあり、必ずしも相殺できるとは限らない。
【0104】なお、ドメインコントローラに入力された駆動制御要求メッセージによって、出力待ちの駆動開始要求メッセージを相殺可能かどうかは、所定のテーブルに予め定められている。S54の判断は、具体的には、このテーブルを、上記両メッセージに含まれる変速パターンID等に基づき参照することにより行われる。
【0105】S54の判断の結果、出力待ちの駆動開始要求メッセージを相殺できない場合には(NO)、S56に移行する。一方、出力待ちの駆動開始要求メッセージを相殺できる場合には(YES)、S66にて、当該相殺可能な(即ち出力を中止すべき)駆動開始要求メッセージを削除し、更にS68にて制御終了応答メッセージを出力する。なお、この制御終了応答メッセージは、請求項の「制御終了応答メッセージ」に相当するものであり、その削除した駆動開始要求メッセージの実行IDを含んでいる。また、この制御終了応答メッセージにより、変速制御部SQMにおいて、図18に示す制御終了応答処理が起動されるが、詳しくは後述する。
【0106】S56では、記憶装置57内の所定のメソッド情報テーブル(後述する)を、駆動制御要求メッセージに含まれる変速パターンID等に基づき参照し、これらIDに対応する駆動制御処理(個別制御部品のメソッド)を検索する。そして検索の結果、該当するメソッドがない場合には(S56:NO)、S70にて、変速制御部SQMに対し、その旨の応答メッセージ(制御終了応答メッセージと同等のものとして出力される)を出力した後、当該制御判断処理を終了する。
【0107】なお、このS70にて出力される応答メッセージ(制御終了応答メッセージ)が、請求項における「実行すべき駆動制御処理が無い旨の応答メッセージ」に相当するものである。この応答メッセージには、今回受けた駆動制御要求メッセージにて通知された実行IDが含まれている。また、S70の処理の結果、変速制御部SQMにおいて、図18に示す制御終了応答処理が起動されるが、詳しくは後述する。
【0108】一方、該当するメソッドがある場合には(S56:YES)、S58に移行し、個別制御部品に送るべき駆動開始要求メッセージの内容を所定の記憶領域に格納する。即ち、S58では、実行すべきメソッドを有する個別制御部品のオブジェクトID(OID)を、変速パターンID等に基づき求める。そして、駆動制御要求メッセージに含まれている変速パターンID、多重変速パターンID、使用すべき制御データの格納アドレスおよび実行IDと共に、その求めたOIDを駆動開始要求メッセージの内容として、駆動開始要求メッセージ記憶領域に格納する。
【0109】この駆動開始要求メッセージ記憶領域は、記憶装置57のRAM内に確保されたメッセージ格納用の記憶領域である。この記憶領域は、上述の駆動制御要求メッセージを格納するため記憶領域とは別個のものとして、記憶装置57のRAM内に確保されているものであるが、その構成は、図10に示す如く、駆動制御要求メッセージと同様である。なお、駆動開始要求メッセージ記憶領域が、請求項の「駆動開始要求メッセージ記憶手段」として機能する。
【0110】S58に続くS60では、更に変速パターンID等に応じて、個別制御部品に対する駆動開始要求メッセージの出力タイミングを決定する。なお、出力タイミングの決定に当たっては、当該ドメインコントローラを含む複数のドメインコントローラに対応する駆動開始要求メッセージ記憶領域の記憶内容を参照し、実行中或いは実行予定の駆動制御処理の内容が考慮される。これにより複数の駆動部品の対する駆動制御処理を同期或いは連動して行うなど、タイミングの合った駆動制御を実現している。
【0111】そしてS60にて出力タイミングを決定した後は、出力タイミングとなるまで待機する(S62:NO)。そして、出力タイミングになると(S62:YES)、S64にて、変速パターンID等に基づき、個別制御部品に駆動開始要求メッセージを配送(即ち、変速パターンID等に基づき個別制御部品のメソッドを起動)した後(図5の■)、当該制御判断処理を終了する。
【0112】S64における、変速パターンID等に基づく個別制御部品のメソッドの起動は次のように行われる。即ち、変速パターンID等と、その変速パターンID等に該当するメソッドが格納された記憶装置57における格納位置とを対応付けて記憶したメソッド情報テーブルが、予め記憶装置57に備えられている。そして、変速パターンIDに基づき、このメソッド情報テーブルを参照してメソッドのアドレスを求め、そのメソッドを起動させるのである。なお、このメソッド情報テーブルは、ドメインコントローラ毎に異なるものである。
【0113】そしてS64にて、駆動開始要求メッセージが個別制御部品に対して出力されると、この駆動開始要求メッセージを受けた個別制御部品によって、該当する駆動制御処理が開始される。即ち制御判断処理のS64が、アキュムレータ背圧制御部OBslnで行われると、アキュムレータ背圧を調整するリニアソレノイドバルブSLNを駆動するためのメソッドに従う処理が起動される。即ち、単一アップ変速時制御部OBsln1、多重アップ変速時制御部OBsln2、2−1ダウン変速時制御部OBsln3等の複数の個別制御部品が有するメソッドの内の何れか1つに従う駆動制御処理(以下、単にアキュムレータ背圧制御処理という)が行われることとなる(図12(a))。
【0114】アキュムレータ背圧制御処理は、変速パターンID等に応じて異なる内容の制御を行うが、基本的には図12(a)に示す様なものである。即ち、S80にて、入力軸回転数等のパラメータに基づいて目標アキュムレータ背圧を算出し、S82にて、その目標アキュムレータ背圧として算出した値を所定の駆動回路に設定する。この結果、アキュムレータ背圧が目標アキュムレータ背圧となるような制御信号が、油圧制御装置54に入力されて、リニアソレノイドバルブSLNが駆動される。なお、アキュムレータ背圧制御処理は、トリガジェネレータTGNから所定タイミング毎(本実施例では16ms毎)に出力されるトリガメッセージに同期して起動され、後述する駆動停止要求メッセージが、当該駆動制御処理を行っている個別制御部品に送られるまで、繰り返し行われる。
【0115】同様に、制御判断処理のS64が、B3油圧制御部OBsluで行われると、第3ブレーキB3の係合圧を調整するリニアソレノイドバルブSLUを駆動するためのメソッドに従う処理が起動される。即ち、単一アップ変速時制御部OBslu1、2−1ダウン変速時制御部OBslu2等の複数の個別制御部品が有するメソッドの内の何れか1つに従う駆動制御処理(以下、単にB3油圧制御処理という)が行われることとなる(図12(b))。
【0116】B3油圧制御処理は、変速パターンID等に応じて異なる内容の制御を行う処理であるが、基本的には図12(b)に示す様なものである。即ち、S90にて、入力軸回転数等のパラメータに基づいて、第3ブレーキB3の係合圧を適正値とするための目標油圧(目標B3油圧)を算出し、S92にて、その目標B3油圧として算出した値を所定の駆動回路に設定する。この結果、第3ブレーキB3の係合圧を決める油圧が目標B3油圧となるような制御信号が、油圧制御装置54に入力されて、リニアソレノイドバルブSLUが駆動される。なお、B3油圧制御処理は、トリガジェネレータTGNから16ms毎に出力されるトリガメッセージに同期して起動され、後述する駆動停止要求メッセージが、当該駆動制御処理を行っている個別制御部品に送られるまで、繰り返し行われる。
【0117】また、制御判断処理のS64が、ライン圧制御部OBsltで行われると、ライン圧を調整するリニアソレノイドバルブSLTを駆動するための処理が起動される。即ち、単一アップ変速時制御部OBslt1、多重アップ変速時制御部OBslt2等の複数の個別制御部品が有するメソッドの内の何れか1つに従う駆動制御処理(以下、単にライン圧制御処理という)が行われることとなる(図12(c))。
【0118】ライン圧制御処理は、変速パターンID等に応じて異なる内容の制御を行う処理であるが、基本的には図12(c)に示す様なものである。即ち、S100にて、入力軸回転数等のパラメータに基づいて目標ライン圧を算出し、S102にて、その目標ライン圧として算出した値を所定の駆動回路に設定する。この結果、ライン圧が目標ライン圧となるような制御信号が油圧制御装置54に入力されて、リニアソレノイドバルブSLTが駆動される。なお、ライン圧制御処理は、トリガジェネレータTGNから16ms毎に出力されるトリガメッセージに同期して起動され、後述する駆動停止要求メッセージが、当該駆動制御処理を行っている個別制御部品に送られるまで、繰り返し行われることになる。
【0119】結局、多重変速でない通常の変速の場合には、変速判断が成立した時点では、実行中或いは実行予定の変速制御は無いので、制御判断処理においては、S50で「NO」、S54で「NO」、S56で「YES」という判断がなされ、その結果、オブジェクト間のメッセージ授受は、図5に示す様なものとなる。
【0120】こうして開始された駆動制御処理は、どのようにして終了することとなるかについて説明する。上述した様に、変速モニタ開始処理(図9)のS42により変速時間データおよび入力軸回転数データの初期化が行われると、変速制御のモニタリングが新たに開始される。そして、変速時間データや入力軸回転数データが所定の変速終了条件を満たすと、変速制御部SQMから制御終了要求メッセージが出力され、各個別制御部品によるリニアソレノイドバルブの駆動が停止される。こうした様子を示しているのが、図13のメッセージ・シーケンス・チャートである。
【0121】変速制御のモニタリングは、変速制御部SQMにおける変速モニタ処理(図14)によって行われる。変速モニタ処理は、図13に示す様に、変速制御部SQMにおいて、トリガジェネレータTGNからの所定時間毎(本実施例では16msec毎)のトリガメッセージ(図14の■)に同期して行われる処理である。
【0122】また、変速制御のモニタリング(即ち変速モニタ処理)は、その継続中に、新たな変速要求メッセージが、変速要求出力部SOUTから変速制御部SQMに出力されても停止しない。即ち、新たな変速要求メッセージが入力された場合には、現在継続中の変速モニタ処理を停止させるのではなく、新たな変速要求メッセージに対応する別個の変速モニタ処理を開始するのである。従って、その場合、変速モニタ処理は、変速要求メッセージが変速制御部SQMに送られる毎に、夫々別処理として並列に実行されることとなる。そして、それぞれの変速モニタ処理において、個別に変速制御を終了すべき終了タイミングかどうかを判断し、制御終了要求メッセージ(図13の■)を出力する。
【0123】こうした変速制御のモニタリングに関する動作について、以下に説明する。図14に示す様に、変速モニタ処理が起動されると、まずT−ECU55内に設けられた変速時間カウンタを参照して、変速時間データを初期化してからの経過時間(変速時間)を算出する(S170)。そして、その算出した変速時間が、変速パターンID等に応じて設定される所定時間を経過しているか否かを判断する(S172)。そして、変速時間が所定時間を超えていない場合には(S172:NO)、S174にて、入力軸回転数を求める。
【0124】S174に続くS176では、上記S174にて求めた入力軸回転数が、車速や変速パターンIDに応じて設定される所定の回転数に達したか否かを判断する。そして、回転数が所定回転数に到達していない場合には(S176:NO)、一旦当該変速モニタ処理を終了する。変速モニタ処理は、トリガジェネレータTGNからの次回のトリガメッセージにより再びS170の処理から始まる。
【0125】一方、S172にて、変速時間が所定時間を経過したと判断された場合(YES)や、S176にて入力軸回転数が所定回転数に達したと判断された場合には(YES)、ステートマシンSQMaの機能により、変速制御部SQMからドメインコントローラに対して、制御終了要求メッセージ(図13の■)が出力される(S178)。この場合、必ずしも全てのドメインコントローラに対して制御終了要求メッセージが出力されるのではなく、RAMのメッセージ領域に格納されている駆動制御要求メッセージの内容を、当該実行中の変速モニタ処理に対応する実行IDに基づいて参照し、その実行IDに対応する変速制御を行っているドメインコントローラのOIDを求める。そして、その求めたOIDを持つドメインコントローラにのみ、制御終了要求メッセージを出力するのである。尚、この制御終了要求メッセージには、実行IDが含まれている。
【0126】この様にして変速制御部SQMから出力された制御終了要求メッセージを受けたドメインコントローラは、図15に示す制御終了要求処理を行う。この制御終了要求処理では、まずS180にて、RAMのメッセージ記憶領域に格納されている駆動開始要求メッセージの内容を、制御終了要求メッセージ(図13の■)に含まれている実行IDに基づき参照して、その実行IDに対応してリニアソレノイドバルブの駆動制御を行っている個別制御部品のOIDを求める。そして、S182では、その求めたOIDを有する個別制御部品に対して、実行IDを含む駆動停止要求メッセージを送る(図13の■)。
【0127】この駆動停止要求メッセージを受けた個別制御部品は、図16に示す駆動停止処理を行う。この駆動停止処理では、まずS190にて、各リニアソレノイドバルブを駆動するための駆動制御処理(図12(a)〜(c))を停止して、各リニアソレノイドバルブへの制御信号の出力値を、夫々所定のデフォルト値(即ち、変速制御を行わない状態における値)とする。そして、S192にて、駆動制御動作を停止(終了)した旨の駆動停止応答メッセージ(図13の■)を、上記駆動停止要求メッセージの出力元であるドメインコントローラに対して送る(S192)。なお、駆動停止応答メッセージには、駆動停止要求メッセージにて通知された実行IDが含まれている。
【0128】例えば、当該個別制御部品が、単一アップ変速時制御部OBsln1、多重アップ変速時制御部OBsln2、2−1ダウン変速時制御部OBsln3等のリニアソレノイドバルブSLNを駆動するオブジェクトである場合には、図12(a)のアキュムレータ背圧制御処理を停止させ(S190)、アキュムレータ背圧制御部OBslnに対して駆動停止応答メッセージを出力する(S192)こととなる。
【0129】また、当該個別制御部品が、単一アップ変速時制御部OBslu1、2−1ダウン変速時制御部OBslu2等のリニアソレノイドバルブSLUを駆動するオブジェクトである場合には、図12(b)のB3油圧制御処理を停止させ(S190)、B3油圧制御部OBsluに対して駆動停止応答メッセージを出力する(S192)。
【0130】また、当該個別制御部品が、単一アップ変速時制御部OBslt1、多重アップ変速時制御部OBslt2等のリニアソレノイドバルブSLTを駆動するオブジェクトである場合には、図12(c)のライン圧制御処理を停止させ(S190)、ライン圧制御部OBsltに対して駆動停止応答メッセージを出力する(S192)。
【0131】さてドメインコントローラは、個別制御部品から駆動停止応答メッセージを受けると、図17に示す駆動停止応答処理を行う。この駆動停止応答処理では、駆動開始要求メッセージ記憶領域に記憶されている駆動開始要求メッセージの中から、上記駆動停止応答メッセージに含まれている実行IDを有するものを特定し(S200)、その特定した駆動開始要求メッセージの内容をメッセージ記憶領域から削除する(S202)。そして、変速制御部SQMに対して、上述と同様の制御終了応答メッセージ(図13の■)を送る(S204)。なお、この制御終了応答メッセージ(図13の■)は、請求項の「制御終了応答メッセージ」に相当する。そして、制御終了応答メッセージには、制御停止応答メッセージにて通知された実行IDが含まれている。
【0132】ドメインコントローラから変速制御部SQMに対して制御終了応答メッセージが出力されると、これを受けた変速制御部SQMでは、図18に示す制御終了応答処理が起動される。この制御終了応答処理では、駆動制御要求メッセージ記憶領域に記憶されている駆動制御要求メッセージの中から、上記制御終了応答メッセージに含まれている実行IDを有するものを特定する(S210)。この特定は、変速終了処理部SQMdの機能により行われる。
【0133】そして、変速パターンバッファSQMcの機能により、その特定した駆動制御要求メッセージをメッセージ記憶領域から削除する(S212)。こうして、駆動制御要求メッセージが削除されると、以降、この駆動制御要求メッセージに対応する変速モニタ処理が起動されなくなる。
【0134】さて、駆動制御処理は、この様に変速モニタ処理による変速制御のモニタリングによって終了されるのが、原則であるが、多重変速が発生した場合には、ドメインコントローラが最適な変速制御を実現すべく、変速モニタ処理によらず、駆動制御処理を終了させることもある。こうしたことも含めて、多重変速が発生した場合(即ち、駆動制御処理が終了する前に、変速要求出力部SOUTが変速要求メッセージを新たに出力した場合)に実現される動作処理の一形態について、以下に説明する。
【0135】即ち、多重変速の場合においても、変速制御部SQMでは、上述の変速モニタ開始処理(図9)が行われ、駆動制御要求メッセージが、各ドメインコントローラに配送される。そして、各ドメインコントローラは、上記の制御判断処理によって、実行中の或いは実行予定の駆動制御処理(これは、記憶領域に格納されている駆動開始要求メッセージにより分かる)や、今回受け取った駆動制御要求メッセージに含まれている変速パターンID等に応じて、変速制御をどのように実行するかを決めるのである。その動作態様はドメインコントローラ毎に異なるが、例えば、次の<1>〜<5>の態様が考えられる。
【0136】<1> 現在実行中の駆動制御処理(即ち、個別制御部品のメソッド)があるが、今回受けた駆動制御要求メッセージに応じた駆動制御処理を並列に起動する。
<2> 現在実行中の駆動制御処理を停止して、今回受けた駆動制御要求メッセージに応じた駆動制御処理を起動する。
【0137】<3> 現在実行中や実行予定の駆動制御処理などが予定通り終了するのを待ち、その後、今回受けた駆動制御要求メッセージに応じた駆動制御処理を起動する。
<4> 現在実行中の駆動制御処理を停止させるが、今回受けた駆動制御要求メッセージに応じた駆動制御処理も起動しない。
【0138】<5> 現在実行中の駆動制御処理はそのまま継続させ、今回受けた駆動制御要求メッセージに応じた駆動制御処理は起動しない。まず<1>の場合、制御判断処理(図11)においては、S50で「NO」、S54で「NO」、S56で「YES」という判断がなされ、オブジェクト間のメッセージ授受は、例えば図5に示す様なものとなる。
【0139】また<2>の場合、制御判断処理においては、S50で「YES」、S54で「NO」、S56で「YES」という判断がなされ、オブジェクト間のメッセージ授受は、図19(a)に示すメッセージ・シーケンス・チャートの様なものとなる。なお、図19(a)において、Aで示す部分は、図5の破線の囲んだ部分(A)と同様なメッセージ授受および処理が行われることを示している(図19(b)、図20(a),(b)においても同じ)。
【0140】即ち、図19(a)に示す様に、変速制御部SQMから駆動制御要求メッセージ(■)を受けると、ドメインコントローラは、制御判断処理を開始する。そしてS52にて、処理を停止すべき個別制御部品aに対して駆動停止要求メッセージ(■)がドメインコントローラから出力されると、この駆動停止要求メッセージを受けた個別制御部品aは駆動停止処理を行い、駆動停止応答メッセージ(■)を出力してドメインコントローラに返答する。ドメインコントローラは、駆動停止応答メッセージ(■)が返ってくると、S62にて「YES」と判断し、駆動開始要求メッセージ(■)を個別制御部品b(必ずしも、個別制御部品aと異なるものとは限らない)に対して出力することにより、今回受けた駆動制御要求メッセージ(■)に応じた駆動制御処理を起動させる。なお、駆動停止応答メッセージ(■)が返ってくると、これに応じて、図13の一点鎖線で囲んだ部分(C)と同様なメッセージ授受および処理が行われることとなるが、この図19(a)では省略している(図19(b)、図20(a)において同じ)。
【0141】次に<3>の場合、制御判断処理においては、S50で「NO」、S54で「NO」、S56で「YES」という判断がなされ、オブジェクト間のメッセージ授受は、図19(b)に示す様なものとなる。この場合、<1>との違いは、S60で決定される出力タイミングである。なお、図19(b)において、Bで示す部分は、図13の破線の囲んだ部分(B)と同様なメッセージ授受および処理が行われることを示している。
【0142】即ち、図19(b)に示す様に、駆動制御要求メッセージ(■)を受けると、ドメインコントローラは、制御判断処理(図11)を開始する。そして、出力タイミングが来るのを待つ(S62:NO)。そして、現在実行中や実行予定の駆動制御処理などが予定通り終了したことを示す駆動停止応答メッセージ(■)を受けると、S62にて「YES」と判断し、駆動開始要求メッセージ(■)を個別制御部品b(必ずしも、個別制御部品aと異なるものとは限らない)に対して出力することにより、今回受けた駆動制御要求メッセージ(■)に応じた駆動制御処理を起動させる。
【0143】また<4>については、制御判断処理において、S50で「YES」と判断した後にS54で「YES」という判断がなされる場合や、S50で「YES」と判断した後にS54で「NO」という判断がなされ、更にS56で「NO」という判断がなされる場合が考えられるが、オブジェクト間のメッセージ授受は、図20(a)に示す様なものとなる。
【0144】即ち、図20(a)に示す様に、変速制御部SQMから駆動制御要求メッセージ(■)を受けると、ドメインコントローラは、制御判断処理を開始する。そしてS52にて、処理を停止すべき個別制御部品aに対して駆動停止要求メッセージ(■)がドメインコントローラから出力されると、この駆動停止要求メッセージを受けた個別制御部品aは駆動停止処理を行い、その後駆動停止応答メッセージ(■)を出力してドメインコントローラに返答する。
【0145】ドメインコントローラは、駆動停止要求メッセージ(■)を出力する一方、今回受けた駆動制御要求メッセージ(■)に対応して実行すべき駆動制御処理が無い旨の応答メッセージ(■)を出力する(S70)。特に、S54で「YES」と判断した場合には、駆動開始要求メッセージをS66で削除したことを示す制御終了応答メッセージ(■)も出力する(S68)。この結果、変速制御部SQMでは制御終了応答処理が行われることとなる。
【0146】また<5>については、制御判断処理において、S50で「NO」と判断した後にS54で「YES」という判断がなされる場合と、S50で「NO」と判断した後にS54で「NO」という判断がなされ、更にS56で「NO」という判断がなされる場合とが考えられるが、オブジェクト間のメッセージ授受は、図20(b)に示す様なものとなる。
【0147】即ち、図20(b)に示す様に、変速制御部SQMから駆動制御要求メッセージ(■)を受けると、ドメインコントローラは、制御判断処理を開始する。ドメインコントローラは、今回受けた駆動制御要求メッセージ(■)に対応して実行すべき駆動制御処理が無い旨の応答メッセージ(■)を出力する(S70)。特に、S54で「YES」と判断した場合には、駆動開始要求メッセージをS66で削除したことを示す制御終了応答メッセージ(■)も出力する(S68)。この結果、変速制御部SQMでは制御終了応答処理が行われることとなる。
【0148】なお、多重変速ではない通常の変速の場合であっても、「受けた駆動制御要求メッセージに対応して実行すべき駆動制御処理」がない場合には、図20(b)に示す様なメッセージ授受および処理が行われる。以上の様に構成され、そして動作する本実施例のT−ECU55によれば、以下の効果を奏する。
【0149】まず、各リニアソレノイドバルブSLN,SLU、SLT(以下、「駆動部品」という)に対する駆動制御処理の内容を、それら駆動部品毎に設けられたドメインコントローラにより決定するよう構成していることから、駆動部品の仕様が変更された場合であっても、それに対応するオブジェクトだけを修正或いは交換するだけで、容易に対応することができる。即ち、プログラムの独立性・再利用性が向上し、システム開発期間の短縮も可能となる。
【0150】また、変速判断や、多重変速の場合における実行中の変速制御の進行度合の検出は、複数の駆動部品に共通の変速要求出力部SOUTが行い、これらの結果を示す変速パターンID等を駆動制御要求メッセージにより各ドメインコントローラに伝達することにより、駆動制御処理の内容を決定させるようにしている。このため、オブジェクト指向のプログラムに従って動作するという利点(即ちプログラムの独立性・再利用性の向上)を得つつ、多重変速の場合であっても、変速制御に必要な複数の駆動部品を適切なタイミングで駆動させることができる。
【0151】また、多重変速の場合には、現在実行中の変速制御の進行度合に応じた適切な動作(即ち、前段階の変速制御から後段階の変速制御への移行)が駆動部品毎に異なる可能性があるが、各ドメインコントローラに駆動制御処理の内容を決定させ、個々に行わせるようにしているので、複雑な動作も容易に実現することが可能となる。
【0152】また変速要求出力部SOUTにて得られた変速パターンIDや多重変速パターンIDは、当該変速制御の実現に必要なドメインコントローラにのみ送られるのではなく(つまり、必要なドメインコントローラをわざわざ選択するのではなく)、全てのドメインコントローラに対して、変速制御部SQMからの駆動制御要求メッセージにより伝達される。そして、各ドメインコントローラに、実行すべき駆動制御処理の内容(実質的に処理を行わない場合、即ち処理内容がない場合を含む)を、駆動制御要求メッセージに基づいて決定させる。このため、ある変速制御に必要な駆動部品の組み合わせが変更された場合でも、変速要求出力部SOUTや変速制御部SQMの変更は殆ど必要なく、変更に関係する駆動部品に対応するオブジェクトのみを修正するだけで対応できる。
【0153】また、各ドメインコントローラへの駆動制御要求メッセージは全て、一旦、駆動制御要求メッセージ記憶領域に格納し、その内、その変速パターンID等に対応して行うべき駆動制御処理が無いもの、および、駆動制御処理が終了したものについては、駆動制御要求メッセージ記憶領域から削除するようにしている。これにより、駆動制御要求メッセージに応じて行うべき駆動制御処理があるドメインコントローラに対して出力された当該駆動制御要求メッセージだけについて、その内容(変速パターンID等)が、駆動制御要求メッセージ記憶領域に格納した状態とすることができる。そして、変速パターンID等に対応して、どの駆動部品に関係する個別制御部品が駆動制御処理を行っているか、或いは、実行するであるかを把握することができる。例えば、変速モニタ処理にて行っているように、現在実行中である駆動制御処理を終了すべき適切なタイミング(終了タイミング)で的確に駆動制御処理を終了させることができるのである。
【0154】そして、その変速パターンID等に応じて行うべき駆動制御処理がないドメインコントローラに対して出力された駆動制御要求メッセージや、駆動制御処理が終了した駆動制御要求メッセージの内容は、駆動制御要求メッセージ記憶領域から削除されるので、駆動制御処理の監視に必要のない駆動制御要求メッセージが記憶装置57に残るのを防止でき、メモリ資源の有効な活用を図ることができる。
【0155】また、一の駆動部品を駆動するためのオブジェクトとして、駆動制御処理の内容に応じて分割した複数の個別制御部品を用意していることから、ある区分の駆動制御処理のみに関する仕様を変更しようとする場合には、それに対応する個別制御部品を変更するだけで対応できる。つまり、駆動部品に対する駆動制御処理の設計変更が容易となり、好ましい。
【0156】また、ドメインコントローラから個別制御部品への駆動開始要求メッセージの内容を、駆動開始要求メッセージ記憶領域にて記憶しておき、そのメッセージにより開始された駆動制御処理が終了すると削除することから、実行中若しくは実行予定の変速制御(駆動制御処理)の内容を容易に把握できる。その結果、いわゆる多重戻り変速が発生した場合には、変速制御を速やかに完了することが可能となる。
【0157】また、個別制御部品への駆動開始要求メッセージの内容を記憶しておき、実行中及び実行予定の駆動制御処理を把握できるようにしているので、ある一の駆動部品に対応するドメインコントローラが、他のドメインコントローラが制御する駆動部品に対する駆動制御処理の実行状態及び実行予定を把握することができる。そして、複数の駆動部品の対する駆動制御処理を同期或いは連動して行うなど、タイミングの合った駆動制御を行うことが可能となっている。
【0158】以上、本発明の一実施例について説明したが、必ずしも上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様を採り得ることはいうまでもない。例えば上記実施例では、リニアソレノイドバルブSLN,SLU,SLT毎にドメインコントローラおよび個別制御部品を設けるものとして説明したが、これに限られるものではなく、その他の駆動部品(例えば、ソレノイドバルブS1〜S4)毎にもドメインコントローラや個別制御部品を設けて、その駆動制御処理を行うようにしても良い。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【出願日】 平成11年11月11日(1999.11.11)
【代理人】 【識別番号】100082500
【弁理士】
【氏名又は名称】足立 勉
【公開番号】 特開2001−141043(P2001−141043A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−321033