トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 差動歯車装置の潤滑構造
【発明者】 【氏名】浅野 雅樹

【氏名】高橋 篤司

【要約】 【課題】この発明は、デファレンシャルケースと同軸に配置されたギヤトレインの出力ギヤの回転に伴う潤滑オイルの昇圧送込み作用によって、デファレンシャルケース内の差動機構を潤滑する差動歯車装置の潤滑構造を提供する。

【解決手段】最終減速機1を構成するギヤトレイン9のヘリカル出力ギヤ8は、差動歯車装置10のケース7aと共に、内部に差動機構を収容するデファレンシャルケース7を構成している。ヘリカル出力ギヤ8とデファレンシャルキャリヤ14との間には、狭い径方向隙間C1 が設定されており、デファレンシャルキャリヤ14に貯留されており、ヘリカル出力ギヤ8の回転に伴い昇圧された潤滑オイルは、ヘリカル出力ギヤ8の側部に形成された凹部50から、油路51を通じて差動歯車装置10の噛合い部70に向かって噴出される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンに接続されたドライブピニオンから出力ギヤに至るギヤトレインで構成される最終減速機と車輪に連結される一対の駆動アクスルとの間に配設され、前記最終減速機の出力ギヤと同軸状に配置され且つ前記出力ギヤに連結されているデファレンシャルケースと前記デファレンシャルケースに連結されて前記両駆動アクスルに差動的に動力を伝達する差動機構とを有し、潤滑オイルを貯留可能なデファレンシャルキャリヤによって前記最終減速機と共に覆われている差動歯車装置において、前記出力ギヤと前記デファレンシャルキャリヤの内壁面との間の隙間は少なくとも前記デファレンシャルケースに形成された油孔を通じて前記デファレンシャルケースの内部に接続されており、前記出力ギヤの回転に伴って前記出力ギヤの歯が前記デファレンシャルキャリヤに対して前記内壁面との間に前記隙間を置いて入り込むことによって昇圧された潤滑オイルの圧力作用により、潤滑オイルは前記油孔を通じて前記デファレンシャルケースの内部に送り込まれることを特徴とする差動歯車装置の潤滑構造。
【請求項2】 前記出力ギヤの側部と前記デファレンシャルキャリヤの前記内壁面の一部を構成する内壁側面との間には、前記隙間の一部を構成する軸方向隙間が形成されており、前記軸方向隙間が前記デファレンシャルケースに形成された前記油孔に接続していることを特徴とする請求項1に記載の差動歯車装置の潤滑構造。
【請求項3】 前記出力ギヤは前記差動歯車装置の前記差動機構を収容する前記デファレンシャルケースの一部を構成しており、前記軸方向隙間は前記差動機構を収容する側とは反対側の前記出力ギヤの前記側部において前記デファレンシャルキャリヤの前記内壁側面との間に形成されており、前記出力ギヤのボス部には前記油孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の差動歯車装置の潤滑構造。
【請求項4】 前記出力ギヤは前記デファレンシャルキャリヤに回転支持されているフォローシャフトを介して前記デファレンシャルケースに連結されており、前記軸方向隙間は前記差動機構が配置される側の前記出力ギヤの前記側部において前記デファレンシャルキャリヤの前記内壁側面との間に形成されており、前記フォローシャフトのボス部には、前記デファレンシャルケースに形成されている前記油孔と整列し且つ前記軸方向隙間に連通されるシャフト油孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の差動歯車装置の潤滑構造。
【請求項5】 前記フォローシャフトに形成されている前記シャフト油孔は、前記フォローシャフトを回転支持する軸受のインナレースとアウタレースとの間に形成され且つ転動体が転走する軌道路の側方に臨んで開口しており、前記シャフト油孔は、前記軸受の転動体間の隙間を通じて前記軸方向隙間に連通されていることを特徴とする請求項4に記載の差動歯車装置の潤滑構造。
【請求項6】 前記エンジンが回転状態にあるときの前記デファレンシャルキャリヤに貯留される潤滑オイルの油面は、前記出力ギヤの回転に伴って最下位置に到達したときの前記油孔の高さ位置よりやや高い位置に設定されていることを特徴とする2〜5のいずれか1項に記載の差動歯車装置の潤滑構造。
【請求項7】 前記最終減速機は、前記ドライブピニオンに交差し且つ前記デファレンシャルケースの回転中心軸線と並列に配置された中間シャフト、前記中間シャフトの一端側に配設され且つ前記ドライブピニオンの先端に形成されているドライブピニオンギヤに噛み合うクラウンギヤ、及び前記中間シャフトの他端側に配設され且つ前記出力ギヤに噛み合う入力ギヤから成り、前記ドライブピニオンギヤ、前記クラウンギヤ、前記入力ギヤ及び前記出力ギヤが前記ギヤトレインを構成していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の差動歯車装置の潤滑構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、トラック等の車両の動力伝達系に用いられる差動歯車装置の潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、車両の最終減速機付きの差動歯車装置は、車体フレームに懸下支持され且つ後車軸(駆動アクスル)を回転自在に収容するリジッドアクスルケースに固定されて支持されている。最終減速機のギヤトレインは、ドライブピニオンと、ドライブピニオンの噛み合うクラウンギヤ(リングギヤ)とから成る。ドライブピニオンは2個のテーパローラ軸受によって回転自在に支持されている。クラウンギヤはディファレンシャルケースにボルト締めされており、ディファレンシャルケースは2個のテーパローラ軸受によってディファレンシャルキャリヤに支持されている。
【0003】ところで、近年のトラック車両においては、荷役性及び架装性の向上の観点から、荷台の低床化が強く要求されている。荷台の低床化を果たす一つの方法として、小型タイヤの採用が考えられるが、小型タイヤを採用した場合、ディファレンシャルケースの最低地上高を実用レベルの値(例えば、140mm程度)に確保することが困難であり、また、タイヤを小型化せず荷台のみを下げる構造を採用すると、タイヤが路面から強い衝撃を受けたときにタイヤと荷台との干渉を回避するために、ホイールアーチが必要となる。ホイールアーチを設けると、荷台の平面化が確保できないばかりか、荷役作業性が低下するという問題点を生じる。また、ファイナルドライブのクラウンギヤを小型化し、タイヤホイル内にハブリダクション装置を組み込むことも考えられるが、例えば、タイヤ空気圧のチェックが困難になる等の日常のメンテナンス性の悪化を招くという問題点がある。
【0004】そこで、荷台の低床化を果たす別の方策として、最終減速機にリアアクスルシャフトと平行にピニオンシャフトを設けて、クラウンギヤをピニオンシャフトの一端に設け、ドライブピニオンからの動力を、クラウンギヤ、ピニオンシャフト、ピニオンシャフトとデファレンシャルケースとの間に設けられた歯車機構を介してデファレンシャルケースに伝達することにより、最終減速機と差動歯車装置の高さ寸法を抑えることが考えられる。
【0005】差動歯車装置には潤滑が不可欠であり、差動歯車装置の潤滑については、デファレンシャルギヤケースを回転自在に支持しているハウジングの車両上方に油溜まりを設け、油溜まりとドライブシャフトに設けられた油路とを連通し、デファレンシャルギヤケースの回転によってポンプアップされた油溜まり内の潤滑油をデファレンシャルギヤケース内に強制的に送り込んで、遠心力により内側が潤滑するのが困難なデファレンシャルギヤケース内を潤滑可能とした動力伝達装置の潤滑構造が提案されている(特開昭59−69568号公報)。
【0006】また、リングギヤの上方位置にリングギヤによって飛散された潤滑油を当接させる突起部をハウジングと一体に形成すると共に、リングギヤに対して軸線方向に外れた位置で且つデファレンシャルギヤケースの上方位置に、突起部に当接して飛散した潤滑油を導き入れる油溜め部を形成し、油溜め部のうち窓孔の上方位置に相当する部分に形成した開口部を通じて油溜め部から潤滑油を滴下させて作動機構の内部を潤滑する作動機構の潤滑構造が提案されている(特開平8−54052号公報)。
【0007】差動歯車装置は、デファレンシャルケース内に装着されているため、飛沫で差動歯車装置を潤滑する場合は、オイルキャッチャ(樋)を用いる方式とオイルポンプによる強制潤滑方式の二種類の方式に大別できる。オイルキャッチャを用いる方式においては、デファレンシャルケースに直接、もしくはデファレンシャルケース付近にオイルキャッチャを設ける必要がある。例えば、デファレンシャルケースをボルトによって組み上げるときに、オイルキャッチャをボルト取付け位置に近接した位置に横方向に貫通形成された油孔に臨むように一緒に共締めして取付け、オイルキャッチャによって捕らえた潤滑油を油孔を通してデファレンシャルケース内部に導くことが行われている。
【0008】オイルポンプによって差動歯車装置を強制潤滑する場合は、後軸が多軸駆動する大型車両において、センタドロップギヤの軸間が上下にオフセットされているため、オイルポンプによる強制潤滑を行っているが、オイルポンプの構造が複雑で高コストとなる。センタデフ構造を有するデファレンシャル装置においては、同軸に配置されている差動歯車装置は、オイルバスに漬けられているため、潤滑条件が良い。しかしながら、オイルバスに漬けられていない差動歯車装置を飛沫で潤滑するにはキャッチャ等の導入具を配設すればよいが、クラウンギヤ(リングギヤ)による飛沫潤滑を行い難いレイアウトを有する差動歯車装置の場合には、歯面の焼付け、歯面スポーリング等の潤滑不良による不具合を生じるという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】そこで、差動歯車装置のデファレンシャルケースと同軸に配設されたギヤに連結して動力伝達を行い、ギヤが回転するときにギヤポンプに近い作用によってギヤによって送られる潤滑オイルの昇圧を利用して、デファレンシャルキャリヤ内に貯留されているオイルを差動歯車装置の潤滑に供すれば、簡単な構造で且つ低コストでデファレンシャルケース内の差動機構の潤滑が可能になる。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の目的は、上記の課題を解決することであり、オイルキャッチャを設けることなく、また専用の強制的なオイルの供給を行うオイルポンプを使用することもなく、差動歯車装置のデファレンシャルケースとの間で動力の伝達を行うギヤを利用してデファレンシャルケース内の差動機構を簡単な構造で且つ低コストで潤滑することを可能にする差動歯車装置の潤滑構造を提供することである。
【0011】この発明は、エンジンに接続されたドライブピニオンから出力ギヤに至るギヤトレインで構成される最終減速機と車輪に連結される一対の駆動アクスルとの間に配設され、前記最終減速機の出力ギヤと同軸状に配置され且つ前記出力ギヤに連結されているデファレンシャルケースと前記デファレンシャルケースに連結されて前記両駆動アクスルに差動的に動力を伝達する差動機構とを有し、潤滑オイルを貯留可能なデファレンシャルキャリヤによって前記最終減速機と共に覆われている差動歯車装置において、前記出力ギヤと前記デファレンシャルキャリヤの内壁面との間の隙間は少なくとも前記デファレンシャルケースに形成された油孔を通じて前記デファレンシャルケースの内部に接続されており、前記出力ギヤの回転に伴って前記出力ギヤの歯が前記デファレンシャルキャリヤに対して前記内壁面との間に前記隙間を置いて入り込むことによって昇圧された潤滑オイルの圧力作用により、潤滑オイルは前記油孔を通じて前記デファレンシャルケースの内部に送り込まれることを特徴とする差動歯車装置の潤滑構造に関する。
【0012】この発明は、上記のように出力ギヤとデファレンシャルキャリヤの内壁面との隙間は、出力ギヤの回転に伴って出力ギヤの歯がデファレンシャルキャリヤに対して内壁面との間に入り込むときに潤滑オイルを昇圧されるように設定されているので、出力ギヤの回転に伴って出力ギヤは、ギヤポンプに近い作用を奏する。エンジンからの動力でドライブ状態にあるとき、又は車輪からの力で回転するコースト走行状態にあるときには、出力ギヤの回転によって昇圧された潤滑オイルの圧力作用により、出力ギヤの周囲に存在しているオイルは、デファレンシャルケースに形成された油孔を通じて差動歯車装置のデファレンシャルケースの内部に送り込まれる。従って、デファレンシャルケースが存在しているために、差動歯車装置内部の差動機構の潤滑が困難な場合であっても、差動機構の潤滑を専用の強制オイルポンプやオイルキャッチャを必要とすることなく、簡単な構造で確実に行うことが可能になる。
【0013】前記出力ギヤの側部と前記デファレンシャルキャリヤの前記内壁面の一部を構成する内壁側面との間には、前記隙間の一部を構成する軸方向隙間が形成されており、前記軸方向隙間が前記デファレンシャルケースに形成された前記油孔に接続している。出力ギヤの回転に伴って出力ギヤの歯がデファレンシャルキャリヤに対して内壁面との間に入り込むときに昇圧された潤滑オイルは、出力ギヤの側部とデファレンシャルキャリヤの内壁側面との間に形成されている軸方向隙間に及び、軸方向隙間からデファレンシャルケースに形成された油孔を通じてデファレンシャルケース内の差動機構を潤滑する。
【0014】前記出力ギヤは前記差動歯車装置の前記差動機構を収容する前記デファレンシャルケースの一部を構成しており、前記軸方向隙間は前記差動機構を収容する側とは反対側の前記出力ギヤの前記側部において前記デファレンシャルキャリヤの前記内壁側面との間に形成されており、前記出力ギヤのボス部には前記油孔が形成されている。出力ギヤは、差動歯車装置の差動機構を収容するデファレンシャルケースの一部として構成される。従って、ギヤポンプに近い作用を奏する出力ギヤによって昇圧された潤滑オイルの圧力は、出力ギヤの差動機構を収容する側とは反対側の側部においてデファレンシャルキャリヤの内壁側面との間に形成されている軸方向隙間の内の潤滑オイルに及び、出力ギヤに形成されている油孔を通じて差動歯車装置の差動機構を潤滑する。
【0015】前記出力ギヤは前記デファレンシャルキャリヤに回転支持されているフォローシャフトを介して前記デファレンシャルケースに連結されており、前記軸方向隙間は前記差動機構が配置される側の前記出力ギヤの前記側部において前記デファレンシャルキャリヤの前記内壁側面との間に形成されており、前記フォローシャフトのボス部には、前記デファレンシャルケースに形成されている前記油孔と整列し且つ前記軸方向隙間に連通されるシャフト油孔が形成されている。出力ギヤをフォローシャフトを介してデファレンシャルケースに連結するときには、差動歯車装置の差動機構は、デファレンシャルケースによって囲まれる空間に収容される。潤滑オイルの供給距離を短くし効率良く潤滑するため、昇圧された潤滑オイルが溜まる軸方向隙間は、出力ギヤの差動機構が配置される側の側部においてデファレンシャルキャリヤの内壁側面との間に形成される。フォローシャフトのボス部には、デファレンシャルケースに形成されている油孔と整列したシャフト油孔が形成されているので、軸方向隙間内の潤滑オイルは、シャフト油孔及び油孔を通じてデファレンシャルケースの内部に送り込まれる。
【0016】前記フォローシャフトに形成されている前記シャフト油孔は、前記フォローシャフトを回転支持する軸受のインナレースとアウタレースとの間に形成され且つ転動体が転走する軌道路の側方に臨んで開口しており、前記シャフト油孔は、前記軸受の転動体間の隙間を通じて前記軸方向隙間に連通されている。
【0017】前記エンジンが回転状態にあるときの前記デファレンシャルキャリヤに貯留される潤滑オイルの油面は、前記出力ギヤの回転に伴って最下位置に到達したときの前記油孔の高さ位置よりやや高い位置に設定されている。前記エンジンが回転状態にあるとき、出力ギヤの回転に伴ってギヤポンプ作用に近い作用で昇圧された潤滑オイルの圧力によって、最下位置に到達したときのギヤ油孔の開口近傍に滞留する潤滑オイルはギヤ油孔及びケース油孔を通じてデファレンシャルケースの内部に送り込まれる。
【0018】前記最終減速機は、前記ドライブピニオンに交差し且つ前記デファレンシャルケースの回転中心軸線と並列に配置された中間シャフト、前記中間シャフトの一端側に配設され且つ前記ドライブピニオンの先端に形成されているドライブピニオンギヤに噛み合うクラウンギヤ、及び前記中間シャフトの他端側に配設され且つ前記出力ギヤに噛み合う入力ギヤから成り、前記ドライブピニオンギヤ、前記クラウンギヤ、前記入力ギヤ及び前記出力ギヤが前記ギヤトレインを構成している。最終減速機を中間シャフトに介在した入力ギヤ及びデファレンシャルケースの回転中心軸線と同軸に配設された出力ギヤから成るギヤトレインによって構成することにより、タイヤを小型化して、荷台の平坦性を維持しつつ車両の低床化に対応することが可能になる。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明による差動歯車装置の潤滑構造の実施例を説明する。図1はこの発明による差動歯車装置の潤滑構造が適用された車両の動力伝達装置の一例を示す断面図であり且つ図2の線G−Gで切断した横断面図、図2は図1に示す動力伝達装置の線F−Fで切断した縦断面図、図3は図1及び図2に示す差動歯車装置の潤滑構造の潤滑オイルの供給を説明するデファレンシャルキャリヤの一部を破断して示す斜視図である。
【0020】図1及び図2を参照すると、図1には、ドライブピニオン2の回転を減速する最終減速機1と最終減速機1で減速された回転が伝達される差動歯車装置10とから成る動力伝達装置が断面として示されている。最終減速機1は、エンジンからトランスミッションに連結され且つ先端にドライブピニオンギヤ3が形成されているドライブピニオン2と、ドライブピニオン2と交差状態に配設された中間シャフト4と、中間シャフト4の一側に配設され且つドライブピニオンギヤ3に噛み合うクラウンギヤ(リングギヤ)5と、中間シャフト4の他側に配設され且つエンジン側から見たときの入力ギヤであるヘリカル入力ギヤ6とを備えている。最終減速機1の後段に差動歯車装置10が配設されており、ヘリカル入力ギヤ6は、差動歯車装置10のケース体7aに一体的に結合されている出力ギヤであるヘリカル出力ギヤ8に噛み合っている。図示の例では、ヘリカル出力ギヤ8はデファレンシャルケース7の一部を構成しており、ヘリカル出力ギヤ8とケース体7aとでデファレンシャルケース7が構成されている。中間シャフト4の回転軸線b−bは、デファレンシャルケース7の回転軸線a−aと並列に配置されている。ドライブピニオンギヤ3からクラウンギヤ5及びヘリカル入力ギヤ6を経てヘリカル出力ギヤ8へ至る歯車伝達系列は、ギヤトレイン9を構成している。
【0021】差動歯車装置10は、デファレンシャルケース7内に回転自在に支持されると共にそれぞれ左右の後車軸(リアの駆動アクスル、図示せず)に固定された一対のサイドギヤ11,11と、デファレンシャルケース7に回転自在に支持されたピニオンシャフト12と、ピニオンシャフト12に取り付けられると共に両サイドギヤ11,11に噛み合うピニオンギヤ13とから成る差動機構を有する一般に知られた構造のものである。
【0022】デファレンシャルキャリヤ14は、ドライブピニオン2をころ軸受である第1軸受2aによって回転自在に支持するメインキャリヤ15、メインキャリヤ15から隔置した位置に設けられているキャップキャリヤ16、及びメインキャリヤ15とキャップキャリヤ16との間において、両キャリヤを連結するU字形のベアリングキャリヤ17の3つの分割キャリヤから構成されている。ベアリングキャリヤ17は、デファレンシャルケース7を回転自在に支持し、メインキャリヤ15に締結ボルト36によって一体的に締結されている。キャップキャリヤ16は、締結ボルト46によってベアリングキャリヤ17に締結されている。左右の駆動アクスルを収容するアクスルケース20は取付けボルト19a等の固着手段によって中間ケース18に取り付けられ、中間ケース18はメインキャリヤ15に取付けボルト19b等の固着手段によって取り付けられている。中間シャフト4を用いた最終減速機1により、タイヤ39の接地状態での中間ケース18の底部の地上高さhは、例えば中型のトラックの場合、140mm程度まで可及的に低くなり、車両の荷台の低床化が図られている。
【0023】中間シャフト4は、メインキャリヤ15及びベアリングキャリヤ17に対して半周ずつ第2軸受21,21によって回転自在に軸支されている。各第2軸受21は、インナレース22、アウタレース23及びテーパ付きころのような転動体24から成る。転動体24は保持器21aによって、軸受21から脱落しないように保持されている。ヘリカル出力ギヤ8及びデファレンシャルケース7は、第3軸受25,25によってキャップキャリヤ16及びベアリングキャリヤ17に半周ずつ回転自在に支持されている。各第3軸受25は、インナレース26、アウタレース27及び各レース26,27の転動面を転走すると共に保持器(図示せず)によって保持されているテーパ付きころのような転動体28から成る。
【0024】図1において、ヘリカル出力ギヤ8の歯先端8aとデファレンシャルキャリヤ14、特にキャップキャリヤ16(又はキャップキャリヤ16に取り付けられると共に中間ケース18に連なるキャップケース29)の内壁周面29aとの径方向隙間C1 を小さくすると、ヘリカル出力ギヤ8はギヤポンプと同様のポンプ作用を奏する。ヘリカル出力ギヤ8の側部8bとキャップキャリヤ16(又はキャップケース29)の内壁側面29bとの間に形成される軸方向隙間C2 は、ギヤポンプと同様の作用で昇圧した潤滑オイルの圧力が急激に低下しないように、径方向隙間C1 よりやや幅広である程度の幅に設定されている。径方向隙間C1 と軸方向隙間C2 とは、この発明において、ヘリカル出力ギヤ8とデファレンシャルキャリヤ14との内壁面との間に形成される隙間を構成している。
【0025】径方向隙間C1 は、例えば、呼び径190mmのヘリカル出力ギヤ8に対して20mmを僅かに超える程度に設定される。20mmを下回ると、潤滑オイルによるヘリカル出力ギヤ8の回転抵抗が急増し、損失トルクが大きくなる。また、20mmを相当量上回ると、得られる潤滑オイルの昇圧作用が急減する。デファレンシャルケース7の一部であるヘリカル出力ギヤ8には、ケース体7に連結される側とは反対側の側部において回転軸線a−aと同心状の環状の凹部50が、またボス部において回転軸線a−aと平行に延びる複数(図2に示すように4個)の油孔51が周方向に隔置して貫通形成されている。凹部50は、ギヤの軽量化及び低コスト化のために肉の盗み部として形成されるものであり、補強用にリブを形成してもよい。各油孔51は一端52側で環状の凹部50に開口し、他端53側で差動歯車装置10の差動機構を構成するサイドギヤ11とピニオンギヤ13との噛合い部70に臨む位置に開口している。
【0026】ヘリカル出力ギヤ8が回転するときには、径方向隙間C1 が充分狭いために、デファレンシャルキャリヤ14内の潤滑オイルは図3のE1 で示す領域ではギヤポンプ作用に近い送込み作用によって昇圧される。昇圧された領域E1 内の潤滑オイルは、一部がヘリカル出力ギヤ8とキャップキャリヤ16(又はキャップケース29)との間に形成される軸方向隙間C2 にも逃げ、軸方向隙間C2 内の領域E2 (図2及び図3)内の潤滑オイルの圧力を昇圧させる。ヘリカル出力ギヤ8の一方の側部に形成されている凹部50内の潤滑オイルも昇圧されて、ヘリカル出力ギヤ8に形成されている油孔51を通じて差動歯車装置10のサイドギヤ11とピニオンギヤ13との噛合い部70にE3 (図2)で示すように噴出され、差動歯車装置10の歯車の噛合い部70を潤滑する。差動歯車装置10内に送り込まれたオイルは、ピニオンシャフト12とデファレンシャルケース7との隙間から遠心力の作用によってデファレンシャルキャリヤ14内に戻る。ヘリカル出力ギヤ8のポンプ作用に近い作用によって送り出されたオイルは、一部が第3軸受25に向かうが、第3軸受25から漏れたオイルはベアリングキャップ30を通じてケースの下部に集められて回収される。
【0027】図2に示すように、従来のデファレンシャルキャリヤ14内のオイルの油面は、最も低い位置でレベルDであるが、この発明による潤滑構造においては、差歯車装置が非差動状態にあるときにBに示すレベルにあり、従来と比して潤滑用オイルの使用量は少なくされている。オイルの使用量が少ないと、ヘリカル出力ギヤ8の回転に対するオイル抵抗が少なくなると共にオイルを掻き混ぜることに起因する油温上昇が抑えられる。ヘリカル出力ギヤ8の回転時には、デファレンシャルキャリヤ14内のオイルは、ヘリカル出力ギヤ8の回転によって送られてレベルAにまで低下する。レベルAの水準は、ヘリカル出力ギヤ8の回転に伴い油孔51が最も低い位置に来たときの高さ位置よりやや高い位置に相当する。このとき、ヘリカル入力ギヤ6は、レベルAにまで低下したオイルに実質上、接触しない。中間軸4に設けられているクラウンギヤ5は、下方部分がデファレンシャルキャリヤ14内のオイルに接触しているので、回転に伴ってオイルを掻き上げるが、そのオイル飛沫はクラウンギヤ5の径方向に飛んで、デファレンシャルキャリヤ14に衝突するか、飛びきらなかったオイルはアクスルケース20内のアクスルシャフトへ流れるので、差動歯車装置内部を潤滑することが困難になっている。
【0028】この発明による差動歯車装置の潤滑構造の別の実施例が、図4において断面図として示されている。図4に示す差動歯車装置の潤滑構造は、図1に示す実施例のヘリカル出力ギヤから差動歯車装置に至る構造に対応した断面図であり、図1に示す実施例に用いられている構成要素及び部位と同じ機能を奏するものには同じ符号を付すことにより、重複する説明を省略する。図1及び図2に示す差動歯車装置の潤滑構造がデファレンシャルケース7の一部を構成するヘリカル出力ギヤ8のボス部に直接形成した油孔51を通じて差動歯車装置10の内部にオイルを供給していたが、図3に示す差動歯車装置の潤滑構造は、ヘリカル出力ギヤ58に取り付けたフォローシャフト60、フォローシャフト60を回転自在に軸支する第3軸受25及びデファレンシャルケース57を通じて差動歯車装置10の内部にオイルを供給している。
【0029】ヘリカル出力ギヤ58は、デファレンシャルケース57とは別に製作されたフォローシャフト60にスプライン係合によって取り付けられている。フォローシャフト60は、キャップキャリヤ16及びベアリングキャリヤ17に対して半周ずつ、ヘリカル出力ギヤ58の両側に配設されている第3軸受25,25によってデファレンシャルケース57と同軸状に回転自在に支持されている。各第3軸受25のインナレース26がフォローシャフト60に取り付けられ、転動体であるテーパ付きころ28が、保持器25aで保持された状態でインナレース26とアウタレース27との間の軌道路を転走している。デファレンシャルケース57側の第3軸受25のアウタレース27は、ベアリングリテーナ62によって、キャップキャリヤ16及びベアリングキャリヤ17に抜止めされている。ベアリングリテーナ62は、アウタレース27にのみ当接しており、インナレース26や転動体28が転走する軌道路の側方を開放している。ヘリカル出力ギヤ58には、両方に側部においてオイルが入り込む環状凹部50,50が形成されている。
【0030】フォローシャフト60の差動歯車装置10側の端部にはフランジ部61が形成されており、デファレンシャルケース57は複数の締結ボルト69(図3では1個のみ図示する)によってフランジ部61においてフォローシャフト60に固定されている。デファレンシャルケース57は、キャップキャリヤ16に対して軸受38によって回転自在に支持されている。従って、ドライブピニオンギヤ3から中間シャフト4、ヘリカル入力ギヤ6及びヘリカル出力ギヤ58から成るギヤトレイン9を経て出力されたエンジンからの駆動力は、フォローシャフト60を経てデファレンシャルケース57に伝達される。
【0031】ヘリカル出力ギヤ58とキャップキャリヤ16との間の狭い径方向隙間C1 を小さくすることにより、ヘリカル出力ギヤ8はギヤポンプ作用と同様の作用を奏する。ヘリカル出力ギヤ58がデファレンシャルキャリヤ14内の潤滑オイルに漬かって走行するとき、ヘリカル出力ギヤ58の歯溝内及びその周囲に存在する潤滑オイルは、ヘリカル出力ギヤ58の回転に伴って昇圧されて送り出され、ヘリカル出力ギヤ58とキャップキャリヤ16との間の狭い区間である軸方向隙間C2 を経てヘリカル出力ギヤ58の各側の側部に回転軸線と同心状に形成された環状の凹部50に送り込まれる。凹部50に送り込まれた潤滑オイルは、凹部50から対向した位置に配設されている第3軸受25,25を通過して、一部はアクスルケース20内に、残る一部は、後述するように差動歯車装置10の潤滑に用いられる。
【0032】差動歯車装置10のデファレンシャルケース57には、一対のサイドギヤ11,11のうちフォローシャフト60側に配置されているサイドギヤ11とピニオンギヤ13との噛合い部70に対応した位置に油孔66が形成されており、フォローシャフト60のフランジ部61のボス部には油孔66と整列したシャフト油孔63が形成されている。サイドギヤ11とピニオンギヤ13との噛合い部70は、サイドギヤ11とピニオンギヤ13とがどの自転位置にあってもピニオンシャフト12の回転軸線c−cとアクスルシャフトの回転軸線a−aとを含む面内に存在している。従って、シャフト油孔63及び油孔66は、デファレンシャルケース57のピニオンシャフト12に対応した位置に回転軸線a−aと平行な方向に延びるように周方向に隔置して貫通形成されており、図3に示す実施例では、先の実施例の場合と同様、90度毎の4つの位置に設けられている。
【0033】シャフト油孔63は、一側の開口64において軸受25に向かって開口し、他側の開口65においてデファレンシャルケース57に形成されている油孔66に向かって開口している。一側の開口64は、第3軸受25のインナレース26とアウタレース27の間に形成される軌道路が開口している環状開口部に側方に臨んで開口している。デファレンシャルケース57の油孔66は、差動歯車装置10の噛合い部70に向かって直接開口している。また、フォローシャフト60のフランジ部61とベアリングリテーナ62との間に形成される隙間C3 、及びフォローシャフト60とデファレンシャルケース57との間に形成され且つ接続チャンバ67からアクスルケース20の内側に続く隙間C4 は、差動歯車装置10側に送られる潤滑オイルが漏れないように、極力、小さくされる。
【0034】ヘリカル出力ギヤ58によって掻き上げられた潤滑オイルは、第3軸受25において、軌道路を転走するころ28の間に存在する隙間を通じて、最下位置を通過中のフォローシャフト60に形成されているシャフト油孔63に向かって送り出される。シャフト油孔63に送り込まれた潤滑オイルは、フォローシャフト60とデファレンシャルケース57との間に形成されている小さな接続チャンバ68、及びデファレンシャルケース57に形成されている油孔66を通じて、差動歯車装置10のサイドギヤ11とピニオンギヤ13との噛合い部70に噴き出され、差動歯車装置10の歯車の噛合い部70を潤滑する。差動歯車装置10は、サイドギヤ11、ピニオンシャフト12及びピニオンギヤ13を有するものとして説明したが、デファレンシャルケース内に遊星歯車を内蔵する構造のものについては、遊星歯車のキャリヤにも油孔を形成することで、噛合い部70にオイルが供給される。
【0035】
【発明の効果】この発明による差動歯車装置の潤滑構造は、最終減速機のギヤトレインの出力ギヤとデファレンシャルキャリヤとの隙間は出力ギヤの回転に伴ってオイルをギヤポンプに近い作用を奏するように狭く構成されているので、クラウンギヤ(リングギヤ)による飛沫潤滑を行い難いレイアウトを有する差動歯車装置であっても、デファレンシャルキャリヤ内に貯留されており出力ギヤのギヤポンプと同様の送り作用で昇圧されて送り出された潤滑オイルは、ギヤトレインの出力ギヤと同軸上に配置したデファレンシャルケースの内部に送り込まれて、歯車噛合い部への潤滑を行う。従って、差動歯車装置の噛合い部における歯面の焼付け、歯面スポーリング等の潤滑不良を防止することができる。また、歯車噛合い部を潤滑するために、オイルキャッチャや、オイルポンプ及びポンプ回りの配管等の強制潤滑装置が必要でなく、差動歯車装置を低コストで製造することが可能になり、軽量、省スペースの構造とすることができる。また、オイルポンプを駆動するための損失トルクを低減することができ、車両の燃費を向上することにも寄与することができる。
【出願人】 【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
【出願日】 平成11年11月12日(1999.11.12)
【代理人】 【識別番号】100108567
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅夫
【公開番号】 特開2001−141040(P2001−141040A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−322668