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【発明の名称】 デファレンシャル装置
【発明者】 【氏名】石川 泰彦

【要約】 【課題】入力シャフトの芯ズレと撓み及び伝達ギヤ組の噛み合い状態低下を防止すると共に、潤滑性と耐久性とを大きく向上させる。

【解決手段】エンジンの駆動力をデフケ−ス13に伝達するドライブピニオンシャフト3及び伝達ギヤ組11と、デフケ−ス13の回転を車輪側に配分する差動機構15と、シャフト3を収容するフロントハウジング19と、伝達ギヤ組11とデフケ−ス13を収容するファイナルドライブハウジング21を有するデフキャリヤ17とを備え、シャフト3が、ハウジング19,21の両方にユニットベアリング5を介して支承されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの駆動力によって回転するプロペラシャフト側に連結されたドライブピニオンシャフトと、このドライブピニオンシャフトの駆動力をデフケ−スに伝達する伝達ギヤ組と、デフケ−スの回転を車輪側に配分する差動機構と、オイルが封入されたデフキャリヤとを備え、このデフキャリヤが、ドライブピニオンシャフトを収容するフロントハウジングと、伝達ギヤ組とデフケ−スを収容するファイナルドライブハウジングとを有し、ドライブピニオンシャフトが、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングにそれぞれベアリングを介して支承されていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項2】 請求項1に記載の発明であって、ドライブピニオンシャフトをフロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに支承するベアリングが、一体のアウタ−レ−スと一対のインナ−レ−スとの間にそれぞれ転動体を配置したユニットベアリングであり、このアウタ−レ−スが、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングとの両方に支持されており、各インナ−レ−スが、それぞれドライブピニオンシャフトを支承していることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項3】 請求項1,2の何れかに記載の発明であって、フロントハウジング、または、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに、部材の回転によって掻き上げられたオイルを一時的に保持しベアリングに供給するオイル保持部が設けられていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【請求項4】 請求項2,3の何れかに記載の発明であって、ユニットベアリングを構成するベアリングの間にオイルを導くオイル流路が、アウタ−レ−スに設けられていることを特徴とするデファレンシャル装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両の、例えば後輪側に配置されるデファレンシャル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、デファレンシャル装置としては、例えば図5に示すようなものが知られている。
【0003】このデファレンシャル装置201は車両の後輪側に配置されており、デフキャリヤ203に収容されている。
【0004】デファレンシャル装置201のデフケ−ス205は伝達ギヤ組207を介してドライブピニオンシャフト209に連結されている。ドライブピニオンシャフト209は、継ぎ手を介して後輪側のプロペラシャフトに連結されており、エンジンの駆動力はこれらの動力系を介してデフケ−ス205を回転駆動し、デファレンシャル装置201によって左右の後輪に配分される。
【0005】デフキャリヤ203は、ドライブピニオンシャフト209を収容するフロントハウジング211と、デフケ−ス205と伝達ギヤ組207とを収容するファイナルドライブハウジング213などから構成されている。
【0006】伝達ギヤ組207は、ドライブピニオンシャフト209に形成されたドライブピニオンギヤ215と、デフケ−ス205に固定されたリングギヤ217からなるハイポイドギヤ組である。
【0007】ドライブピニオンシャフト209の前部(図中上部)はボ−ルベアリング219によってフロントハウジング211に支承され、後部(図中下部)はユニットベアリング221によってファイナルドライブハウジング213に支承されている。
【0008】ユニットベアリング221は、一体のアウタ−レ−ス223、一対のインナ−レ−ス225,227、これらの間に配置された円錐台形の転動体229,231からなるテ−パ−ロ−ラ−ベアリングである。アウタ−レ−ス223はボルト233によってフランジ部235をファイナルドライブハウジング213に固定されており、各インナ−レ−ス225,227はドライブピニオンシャフト209に嵌合している。
【0009】ドライブピニオンシャフト209は大きな駆動力を伝達し、ユニットベアリング221は、このときドライブピニオンギヤ215とリングギヤ217の噛み合いによって生じるスラスト力237をドライブピニオンシャフト209を介して受けている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記従来の構造によれば、矢印239が示すように、ユニットベアリング221のアウタ−レ−ス223は前端部がどこにも支持されていない片持ち状態であるから、それだけ支持剛性が不足するおそれがある。
【0011】ユニットベアリング221の支持剛性が不充分であると、大きな駆動力を伝達する際にドライブピニオンシャフト209が撓むおそれがある。
【0012】また、ユニットベアリング221は、ファイナルドライブハウジング213に対してはアウタ−レ−ス223を介して位置決めされているが、フロントハウジング211に対しては特に位置決めされていないので、ドライブピニオンシャフト209は大きな駆動力を伝達する際に芯ズレが発生するおそれがある。
【0013】このように、ドライブピニオンシャフト209に撓み、あるいは、芯ズレが生じると、伝達ギヤ組207を構成するドライブピニオンギヤ215とリングギヤ217の噛み合い状態を良好に保つために、ドライブピニオンシャフト209に撓みが生じないように径を増したり、ハウジングの剛性を上げたりすることが必要になり、その結果、装置が大型化し、重量化してしまう。
【0014】また、デフケ−ス205の内部やドライブピニオンギヤ215とリングギヤ217は、ファイナルドライブハウジング213に封入されたオイルによって潤滑されるが、このオイルは途中に配置されたユニットベアリング221で遮断され、フロントハウジング211の先端部分には届きにくいので、ドライブピニオンシャフトの車両前方側を支持するボ−ルベアリング219をこのオイルによって潤滑することが困難であり、オイル注入式のボールベアリング等を用いる必要があった。
【0015】さらに、インナ−レ−ス225,227の各テ−パ−面はそれぞれ軸方向外側に向かって開いているから、インナ−レ−ス225,227と転動体229,231が回転すると、その遠心力を受けて、矢印241,241のように、ユニットベアリング221の内部からオイルが吐き出され、潤滑不足になるおそれがある。
【0016】そこで、この発明は、入力側ドライブピニオンシャフトの芯ズレを防止し、伝達ギヤ組の噛み合い状態を良好に保つと共に、ベアリングの潤滑効果及びその負荷容量と耐久性を大きく向上させたデファレンシャル装置の提供を目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】請求項1のデファレンシャル装置は、エンジンの駆動力によって回転するプロペラシャフト側に連結されたドライブピニオンシャフトと、このドライブピニオンシャフトの駆動力をデフケ−スに伝達する伝達ギヤ組と、デフケ−スの回転を車輪側に配分する差動機構と、オイルが封入されたデフキャリヤとを備え、このデフキャリヤが、ドライブピニオンシャフトを収容するフロントハウジングと、伝達ギヤ組とデフケ−スを収容するファイナルドライブハウジングとを有し、ドライブピニオンシャフトが、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングにそれぞれベアリングを介して支承されていることを特徴としている。
【0018】エンジンの駆動力はプロペラシャフトからドライブピニオンシャフトに伝達され、伝達ギヤ組を介してデフケ−スを回転させ、デフケ−スの回転は差動機構を介して車輪側に配分される。
【0019】また、本発明のデファレンシャル装置では、ドライブピニオンシャフトをフロントハウジングとファイナルドライブハウジングとの両方にそれぞれベアリングを介して支承させたから、ドライブピニオンシャフト209を支承するユニットベアリング221がファイナルドライブハウジング213にだけ支持された従来例と異なって、ドライブピニオンシャフトが強固に支持され、撓みと芯ズレが防止される。
【0020】従って、伝達ギヤ組(例えば、ドライブピニオンシャフトに形成されたドライブピニオンギヤとデフケ−スに連結されたリングギヤ)の噛み合い状態を良好に保つことができると共に、騒音や磨耗が防止され、耐久性を大きく向上させることができる。
【0021】請求項2の発明は、請求項1に記載のデファレンシャル装置であって、ドライブピニオンシャフトをフロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに支承するベアリングが、一体のアウタ−レ−スと一対のインナ−レ−スとの間にそれぞれ転動体を配置したユニットベアリングであり、このアウタ−レ−スが、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングとの両方に支持されており、各インナ−レ−スが、それぞれドライブピニオンシャフトを支承していることを特徴とし、請求項1の構成と同等の効果を得ることができる。
【0022】これに加えて、ドライブピニオンシャフトをフロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに支承するベアリングを、ユニットベアリングにしたから、部品点数が大幅に低減されて、低コストになると共に、組み付け性を向上することができる。
【0023】請求項3の発明は、請求項1,2に記載のデファレンシャル装置であって、フロントハウジング、または、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに、部材の回転によって掻き上げられたオイルを一時的に保持しベアリングに供給するオイル保持部が設けられていることを特徴とし、請求項1,2の構成と同等の効果を得ることができる。
【0024】これに加えて、フロントハウジング、または、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに、オイルを一時的に保持し、ベアリングなどの周辺部材に供給するオイル保持部(例えば、オイル溝)を設けたことにより、ベアリングなどに常時オイルを供給することができ、潤滑性を向上させることができる。
【0025】従って、ドライブピニオンシャフトをフロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに支承するベアリングだけでなく、フロントハウジングの先端部でドライブピニオンシャフトを支承するベアリングにもオイルが供給され、負荷容量と耐久性が大きく向上する。
【0026】請求項4の発明は、請求項2,3に記載のデファレンシャル装置であって、ユニットベアリングを構成するベアリングの間にオイルを導くオイル流路が、アウタ−レ−スに設けられていることを特徴とし、請求項2,3の構成と同等の効果を得ることができる。
【0027】これに加えて、アウタ−レ−スに設けられたオイル流路を通り各構成ベアリングの間にオイルが導かれることによって、アウタ−レ−スが一体になったユニットベアリングでも、内部が充分に潤滑され、負荷容量と耐久性をさらに向上させることができる。
【0028】また、一対のインナ−レ−スのテ−パ−面がそれぞれ軸方向外側に向かって開いているユニットベアリングでは、各インナ−レ−スと転動体の遠心力によってオイルが軸方向外側に吐き出され、生じた負圧によってアウタ−レ−スのオイル流路から内部にオイルが吸入され、内部と外部でオイルが循環し、オイルポンプが構成される。
【0029】このオイルポンプ機能によって内部に新しいオイルが常時多量に供給されるから、ユニットベアリングの潤滑効果と、その負荷容量、耐久性が大きく向上する。
【0030】さらに、このオイルポンプ機能によって、離れた個所に配置されている周辺部材に吐き出しオイルを直接供給し、潤滑することが可能になる。
【0031】従って、ユニットベアリングが一側の端部を支承するドライブピニオンシャフトの他側の端部を支承するベアリングを、この吐き出しオイルによって直接潤滑することが可能になり、このベアリングの負荷容量と耐久性を大きく向上させることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】図1〜図3によって本発明の第1実施形態を説明する。
【0033】各図はこの実施形態のリヤデフ1(デファレンシャル装置)を示しており、このリヤデフ1は請求項1〜4の特徴を備えている。また、左右の方向はリヤデフ1を用いた車両及び図1と図3での左右の方向であり、図1の上方と図2の左方はこの車両の前方に相当する。なお、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0034】リヤデフ1は車体の前部にエンジンを配置した後輪駆動車(FR車)に用いられている。
【0035】リヤデフ1は、ドライブピニオンシャフト3、ユニットベアリング5、ドライブピニオンギヤ7とリングギヤ9からなる伝達ギヤ組11(伝達ギヤ組)、デフケ−ス13、ベベルギヤ式の差動機構15などから構成されている。
【0036】リヤデフ1はデフキャリヤ17の内部に収容されており、このデフキャリヤ17は、フロントハウジング19、ファイナルドライブハウジング21、左右のサイドカバ−23,25などから構成されている。
【0037】フロントハウジング19とファイナルドライブハウジング21はボルト27で固定されており、各サイドカバ−23,25はファイナルドライブハウジング21にボルト29で固定されている。ファイナルドライブハウジング21と各サイドカバ−23,25とによって形成されるオイル室30には所定量のオイルが封入されている。
【0038】ドライブピニオンシャフト3は、車両前方からフロントハウジング19に貫入しており、前部をボ−ルベアリング31によってフロントハウジング19に支承されており、後部をユニットベアリング5によってフロントハウジング19とファイナルドライブハウジング21とに支承されている。
【0039】ドライブピニオンシャフト3の先端部にはフランジ33がスプライン連結され、ナット35で固定されている。このフランジ33は継ぎ手側のフランジを介して図外のプロペラシャフトに連結され、プロペラシャフトはトランスミッションからエンジン側に連結されており、ドライブピニオンシャフト3はエンジンによって回転駆動される。
【0040】前記ナット35はフランジ33を介してボ−ルベアリング31のインナ−レ−ス37を押圧し、位置決めしている。
【0041】フロントハウジング19とフランジ33との間にはシ−ル39が配置されており、オイル漏れ及び外部から異物が侵入することを防止している。また、フランジ33にはカバ−41が固定されており、走行中に飛来する障害物からシ−ル39を保護している。
【0042】ユニットベアリング5は、軸方向に対向して配置され、一体のアウタ−レ−ス43を共用し、一対のインナ−レ−ス49,53が近接配置され、ドライブピニオンシャフト3を軸方向に位置決めする一対のテ−パ−ロ−ラ−ベアリング45,47によって構成されている。
【0043】前側のベアリング45は、アウタ−レ−ス43とインナ−レ−ス49との間に円錐台形の小型の転動体51を配置して構成されており、後側のベアリング47は、アウタ−レ−ス43とインナ−レ−ス53との間に円錐台形の大型の転動体55を配置して構成されている。これらの転動体51,55はリテ−ナ57,59によってそれぞれ位置を保持されている。
【0044】図1のように、アウタ−レ−ス43の外周にはフランジ状の突部61が形成されている。このフランジ状突部61は周方向不等間隔に4個形成されており、各突部61はボルト63によってファイナルドライブハウジング21に固定されている。
【0045】さらに、アウタ−レ−ス43の後端部はファイナルドライブハウジング21に形成された支承部65に嵌合して保持されており、アウタ−レ−ス43の前端部はフロントハウジング19に形成された支承部67に嵌合して保持されている。
【0046】このように、ユニットベアリング5のアウタ−レ−ス43は、ユニットベアリング221のアウタ−レ−ス223が片持ち状態である従来例と異なって、フロントハウジング19とファイナルドライブハウジング21とにそれぞれ前端部と後端部とを支持されている。
【0047】インナ−レ−ス49,53はいずれもドライブピニオンシャフト3に圧入されている。
【0048】また、ドライブピニオンシャフト3にはロックナット69が螺着され、ワッシャ71を介してインナ−レ−ス49を押圧し、前側テ−パ−ロ−ラ−ベアリング45のガタをなくし、センタ−リングしている。
【0049】車両の走行中にドライブピニオンギヤ3が駆動力を伝達すると、ベベルギヤであるドライブピニオンギヤ7とリングギヤ9との噛み合いによって、ドライブピニオンシャフト3には、図1の矢印が示すように、噛み合いスラスト力73が掛かる。
【0050】この噛み合いスラスト力73は後側テ−パ−ロ−ラ−ベアリング47のインナ−レ−ス53を押圧して、センタ−リングする。
【0051】また、この噛み合いスラスト力73は、ユニットベアリング5の後側テ−パ−ロ−ラ−ベアリング47が受けるから、その転動体55には噛み合いスラスト力73に応じた大型のものが用いられており、このように、大きな噛み合いスラスト力73を受ける転動体55を大型にしたことによって、ユニットベアリング5には充分な耐久性が与えられている。
【0052】さらに、噛み合いスラスト力73が掛からない前側のテ−パ−ロ−ラ−ベアリング45にはそれに応じた小型の転動体51を用いたことにより、ユニットベアリング5は、充分な耐久性をを持ちながら、小型、軽量に構成されている。
【0053】図2と図3に示すように、フロントハウジング19の内周には、重力方向の下側にオイル溝75(オイル保持部)が形成されている。
【0054】図2のH−Hは水平面を示しており、この水平面と比較して分かるように、オイル溝75は車両前方(図中左方)に向かって下り勾配になっている。
【0055】オイル室30のオイルはリングギヤ9の回転によって掻き上げられる。車両が前進走行するとき、リングギヤ9は図2の矢印77の方向に回転する。フロントハウジング19とファイナルドライブハウジング21の重力方向上側には、これらを通してオイル流路79が形成されており、リングギヤ9によって掻き上げられたオイルは、矢印81のように、オイル室30からフロントハウジング19側に流入し、オイル溝75に集められ、一時的に保持される。
【0056】また、重力方向の上側にはフロントハウジング19とアウタ−レ−ス43との間に隙間82が設けられており、こ隙間82はオイル流路79の一部をなしている。
【0057】上記のように、アウタ−レ−ス43の4個のフランジ状突部61が周方向不等間隔に形成されているから、ボルト63で各突部61をファイナルドライブハウジング21に固定するだけで、隙間82の位置合わせは終了する。
【0058】オイル溝75に一時的に保持されたオイルは、車両前方に向かって流れ下りボ−ルベアリング31の下部を浸し、浸したオイルはインナ−レ−ス37の回転によってボ−ルベアリング31全体に送られ、これを充分に潤滑する。
【0059】また、車両が前進走行するとき、ドライブピニオンシャフト3は図3の矢印83の方向に回転する。フロントハウジング19の内周には突き出し部85が形成されており、ドライブピニオンシャフト3によって掻き上げられたオイルはこの突き出し部85に当たって下側に落ち、オイル溝75に戻る。こうして、オイル溝75には常時充分な量のオイルが保持され、その潤滑効果を高く保つことができる。
【0060】また、図2のように、ユニットベアリング5のアウタ−レ−ス43には、上記のオイル流路79と連通して、テ−パ−ロ−ラ−ベアリング45,47の間にオイルを導くオイル流路87が形成されており、リングギヤ9に掻き上げられたオイルは、矢印89のように、オイル流路87を通ってユニットベアリング5の内部に入り、テ−パ−ロ−ラ−ベアリング45,47を充分に潤滑する。
【0061】さらに、インナ−レ−ス49,53のテ−パ−面はそれぞれ軸方向外側に向かって開いているから、各インナ−レ−ス49,53と転動体51,55の遠心力によって、図2の矢印90,90が示すように、軸方向外側(前方と後方)にオイルが吐き出され、内部に生じた負圧によってオイル流路87からオイルが吸入される。
【0062】また、円錐台形である転動体51,55がそれぞれ軸方向外側に向かって大径になるから、転動体51,55の遠心力は大径側程大きくなり、これによって軸方向外側に吐き出されるオイル量と吐出圧がさらに増加する。
【0063】このように、ユニットベアリング5にはオイルポンプ機能があり、このオイルポンプ機能によってユニットベアリング5の内部と外部でオイルが循環するから、潤滑効果及びその負荷容量と耐久性がさらに向上する。
【0064】また、前側テ−パ−ロ−ラ−ベアリング45のオイルポンプ機能によって吐き出されるオイルにより、オイル溝75に保持されるオイル量が増加するから、ベアリング31の潤滑効果及びその負荷容量と耐久性がさらに向上する。
【0065】また、後側テ−パ−ロ−ラ−ベアリング47から吐き出されるオイルによって、ドライブピニオンギヤ7とリングギヤ9の噛み合い部に供給されるオイル量が増加するから、ベアリング31の潤滑効果及びその負荷容量と耐久性がさらに向上する。
【0066】図1のように、リヤデフ1のデフケ−ス13はベアリング91によって両端をデフキャリヤ17に支承されている。
【0067】伝達ギヤ組11のドライブピニオンギヤ7とリングギヤ9は方向変換ギヤ組を構成しており、ドライブピニオンシャフト3を回転させるエンジンの駆動力は伝達ギヤ組11で方向を変換され、デフケ−ス13を回転させる。
【0068】ベベルギヤ式の差動機構15は、デフケ−ス13に固定されたピニオンシャフト93と、ピニオンシャフト93上に支承されたピニオンギヤ95と、ピニオンギヤ95と噛み合う左右のサイドギヤ97,99などから構成されている。左のサイドギヤ97は左のドライブシャフトと継ぎ手などを介して左の後輪に連結されており、右のサイドギヤ99は右のドライブシャフト101と継ぎ手などを介して右の後輪に連結されている。
【0069】デフケ−ス13を回転させるエンジンの駆動力は、ピニオンシャフト93からピニオンギヤ95を介してサイドギヤ97,99に分配され、それぞれのドライブシャフトなどを介して左右の後輪に伝達される。また、悪路などで後輪間に駆動抵抗差が生じると、エンジンの駆動力はピニオンギヤ95の自転によって左右の後輪側に差動分配される。
【0070】こうして、リヤデフ1が構成されている。
【0071】上記のように、リヤデフ1は、ドライブピニオンシャフト3を支承するユニットベアリング5を、フロントハウジング19とファイナルドライブハウジング21の両方で支持したから、ドライブピニオンシャフト209を支承するユニットベアリング221がファイナルドライブハウジング213だけに支持された従来例と異なって、ユニットベアリング5及びドライブピニオンシャフト3の撓みと芯ズレが防止される。
【0072】従って、伝達ギヤ組11のドライブピニオンギヤ7とリングギヤ9の噛み合い状態が良好に保たれて、騒音や磨耗が防止され、耐久性が大きく向上する。
【0073】しかも、ドライブピニオンシャフト3をフロントハウジング19とファイナルドライブハウジング21とに支承するベアリングに、ユニットベアリング5を用いたことによって、部品点数が大幅に低減され、低コストになると共に、組み付け性が大きく向上する。
【0074】また、フロントハウジング19にオイル溝75を設けたことにより、ユニットベアリング5だけでなく、オイルが前方のボ−ルベアリング31に供給されて潤滑性が向上し、負荷容量と耐久性が大きく向上する。
【0075】また、テ−パ−ロ−ラ−ベアリング45,47の間にオイルを導くオイル流路87をアウタ−レ−ス43に形成したことにより、ユニットベアリング5の内部が充分に潤滑され、負荷容量と耐久性がさらに向上する。
【0076】これに加えて、自らのオイルポンプ機能によってユニットベアリング5の潤滑効果が大きく向上すると共に、オイルポンプ機能によってオイル溝75の保持オイル量が増加するから、ユニットベアリング5とベアリング31の潤滑効果及び負荷容量と耐久性などが大きく向上する。
【0077】次に、図4によって第2実施形態の説明をする。
【0078】図4はこの実施形態のリヤデフ151(デファレンシャル装置)を示しており、このリヤデフ151は請求項1〜4の特徴を備えている。また、左右の方向はリヤデフ151を用いたFR車及び図4での左右の方向であり、図4の左方はこの車両の前方に相当する。なお、符号を与えていない部材等は図示されていない。
【0079】以下、第1実施形態のリヤデフ1と同機能の部材には同一の符号を与えて引用しながら、相違点を説明する。
【0080】リヤデフ151は、ドライブピニオンシャフト3、ユニットベアリング153、ドライブピニオンギヤ7とリングギヤ9からなる伝達ギヤ組11、デフケ−ス13、ベベルギヤ式の差動機構15、コントロ−ラなどから構成されている。
【0081】ユニットベアリング153は、軸方向の前後に対向して近接配置された一対のテ−パ−ロ−ラ−ベアリング155,157によって構成されている。ユニットベアリング153はドライブピニオンシャフト3を軸方向に位置決めしており、一体のアウタ−レ−ス159を共用している。
【0082】前側のベアリング155は、アウタ−レ−ス159とインナ−レ−ス161との間に円錐台形の転動体163を配置して構成されており、後側のベアリング157は、アウタ−レ−ス159とインナ−レ−ス165との間に転動体163を配置して構成されている。
【0083】このように、各ベアリング155,157の転動体163は同一寸法であり、各転動体163はそれぞれリテ−ナ57,59によって周方向に位置を保持されている。
【0084】また、インナ−レ−ス161,165はいずれもドライブピニオンシャフト3に圧入されている。
【0085】アウタ−レ−ス159の外周には4個のフランジ状突部167が周方向不等間隔に形成されており、各フランジ状突部167はボルト63によってファイナルドライブハウジング21に固定されている。
【0086】さらに、アウタ−レ−ス159は、後端部をファイナルドライブハウジング21の支承部65に嵌合して保持されており、前端部はフロントハウジング19の支承部67に嵌合して保持されている。
【0087】このように、アウタ−レ−ス159は前端部と後端部の両方をデフキャリヤ17によって支持されている。
【0088】ドライブピニオンシャフト3に螺着されたロックナット69は、ワッシャ71を介してインナ−レ−ス161を押圧し、前側テ−パ−ロ−ラ−ベアリング155のガタをなくし、センタ−リングしている。
【0089】リングギヤ9によって掻き上げられたオイルは、オイル流路79を通ってフロントハウジング19側に流入し、オイル溝75で一時的に保持される。
【0090】オイル流路79の一部をなす隙間82の位置合わせは、リヤデフ1と同様に、周方向不等間隔の各フランジ状突部167をボルト63でファイナルドライブハウジング21に固定するだけで終了する。
【0091】アウタ−レ−ス159には、オイル流路79と連通してベアリング155,157の間にオイルを導くオイル流路169が形成されており、リングギヤ9に掻き上げられたオイルは、矢印89のように、オイル流路169を通ってユニットベアリング153の内部に入り、ベアリング155,157を充分に潤滑する。
【0092】さらに、各インナ−レ−ス161,165のテ−パ−面はそれぞれ軸方向外側に向かって開いており、各インナ−レ−ス161,165と各転動体163の遠心力によって、矢印171,171が示すように、前方と後方にオイルが吐き出され、内部に生じた負圧によってオイル流路169からユニットベアリング153にオイルが吸入される。
【0093】また、円錐台形である転動体163はそれぞれ軸方向外側に向かって大径になっており、転動体163の遠心力が大径側程大きくなるから、軸方向外側に向かうオイルの吐出量と吐出圧が増加する。
【0094】このようなオイルポンプ機能によってユニットベアリング153の内部と外部でオイルが循環するから、潤滑効果及びその負荷容量と耐久性がさらに向上する。
【0095】また、前側ベアリング155の転動体163は、リヤデフ1に用いられているユニットベアリング5の前側ベアリング45の転動体51より大径で長くされており、それだけ遠心力が大きくなり、前方に吐き出されるオイル量(矢印171)が増加し、吐出圧も大きくなる。
【0096】従って、ベアリング31を前側ベアリング155から吐き出される多量の吐き出しオイルによって直接潤滑することが可能になり、その上、多量の吐き出しオイルによってオイル溝75の保持オイル量が増加する。
【0097】こうして、ベアリング31の潤滑効果、負荷容量、耐久性などがさらに大きく向上する。
【0098】また、ドライブピニオンギヤ7とリングギヤ9の噛み合い部は、後側のベアリング157から吐き出されるオイル(矢印171)によって潤滑され、負荷容量、耐久性が向上する。
【0099】また、前後のベアリング155,157に同一寸法の転動体163を用いたことによってそれぞれの遠心力が等しくなり、オイルポンプ機能によるオイルの吐出量は前後でほぼ同量になる。
【0100】なお、オイル溝75を後方に延長し、前側ベアリング155の吐き出しオイルを直接受けるようにすれば、オイル溝75の保持オイル量がさらに増加する。
【0101】また、アウタ−レ−ス159のオイル流路169を下側にも設けて、延長したオイル溝75と連通させれば、ユニットベアリング153へのオイル供給量(オイル吸入量)が増加するから、ユニットベアリング153の潤滑効果、負荷容量、耐久性がさらに向上する。
【0102】こうして、リヤデフ151が構成されている。
【0103】リヤデフ151では、上記のように、前側ベアリング155の転動体163を大径で長くしたことにより、その大きな遠心力によって多量のオイルが前方に吐き出され、ベアリング31を直接潤滑することが可能になり、その潤滑効果、負荷容量、耐久性などが大きく向上する。
【0104】これに加えて、リヤデフ151は、リヤデフ1と同等の効果が得られる。
【0105】なお、本発明のデファレンシャル装置は、リヤデフに最適であり、上記実施形態ではリヤデフとして用いたものを示したが、ドライブピニオンシャフトと伝達ギヤ組が用いられる構成であれば、フロントデフ(エンジンの駆動力を左右の前輪に配分するデファレンシャル装置)や、エンジンからの出力をギヤ組を介してドライブピニオンシャフトからプロペラシャフト側に出力する機構(一般的に4WD車用のトランスファと称する)に適用することも可能である。
【0106】オイルの保持部は、フロントハウジングだけでなく、フロントハウジングとファイナルドライブハウジングとに通して形成してもよい。
【0107】このオイルの保持部をファイナルドライブハウジングまで延ばして形成した場合は、上記のように、ユニットベアリングのアウタ−レ−スにこのオイル保持部と連通するオイル流路を設ければ、このオイル流路からもユニットベアリングの内部にオイルが供給され、負荷容量と耐久性がさらに向上する。
【0108】ユニットベアリングの転動体は、円錐状のものに限定されず、例えば、円筒形でも、あるいは、円筒の中央部が大径になった糸巻き状のものでもよい。
【0109】転動体が円筒形や糸巻き状であっても、充分なオイルポンプ機能が得られる。
【0110】また、差動機構は、ベベルギヤ式の差動機構に限らない。
【0111】例えば、プラネタリ−ギヤを介してインタ−ナルギヤとサンギヤとを連結したプラネタリ−ギヤ式の差動機構、あるいは、デフケ−スの収容孔に収容されたピニオンギヤを介してサイドギヤを連結した差動機構などでもよい。
【0112】
【発明の効果】本発明のデファレンシャル装置は、ドライブピニオンシャフトをフロントハウジングとファイナルドライブハウジングとの両方にベアリングを介して支承したことにより、ドライブピニオンシャフトの支持強度を大きく向上させ、撓みと芯ズレを防止し、伝達ギヤ組を構成するギヤの噛み合いが良好に保たれて、騒音と磨耗が防止され、耐久性が大きく向上する。
【0113】請求項2の発明は、請求項1の構成と同等の効果を得ることができると共に、ドライブピニオンシャフトをユニットベアリングを用いてフロントハウジングとファイナルドライブハウジングに支承することにより、部品点数が大幅に低減されて低コストになり、組み付け性が大きく向上する。
【0114】請求項3の発明は、請求項1,2の構成と同等の効果を得ることができると共に、オイル保持部から供給されるオイルによって周辺部材の潤滑性が向上し、フロントハウジングの前部と後部の両方でベアリングに充分なオイルが供給され、負荷容量と耐久性が大きく向上する。
【0115】請求項4の発明は、請求項2,3の構成と同等の効果を得ることができると共に、アウタ−レ−スのオイル流路から各構成ベアリングの間にオイルが供給され、ユニットベアリングの内部が充分に潤滑されて負荷容量と耐久性がさらに向上する。
【0116】また、オイルポンプ機能によってユニットベアリングの潤滑効果、負荷容量、耐久性が大きく向上する。
【0117】さらに、このオイルポンプ機能により、ドライブピニオンシャフトの先端側を支承するベアリングのように、離れた個所にある周辺部材に吐き出しオイルを直接供給して潤滑することが可能になり、潤滑効果と耐久性とが大きく向上する。
【出願人】 【識別番号】000225050
【氏名又は名称】栃木富士産業株式会社
【出願日】 平成11年11月10日(1999.11.10)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
【公開番号】 特開2001−141039(P2001−141039A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−319823