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【発明の名称】 FF車両用変速機の差動装置
【発明者】 【氏名】新倉 靖博

【要約】 【課題】ドライブシャフトが取り付けられていない状態でも潤滑油の洩れを防げると共に、加工の容易化,重量の低減,及びコストダウンを図ることができるFF車両用変速機の差動装置を提供する。

【解決手段】デフケース6の窓6dからデフケース6内へ挿入されたギヤ部材12dと、デフケース6にギヤ部材12dが挿入された後、デフケース6の貫通孔6a,6bから挿入される円筒部材12eを圧接嵌合によって連結してサイドギヤ12A,12Bを形成し、円筒部材12eのデフケース6より外部へ伸びた部分の外周面とケース3の貫通孔3a,3bの内周面の間に油シール機構14A,14Bを配置して構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の位置に窓、及び第1及び第2のドライブシャフトが貫通する第1及び第2の貫通孔を有するように構成され、前記第1及び第2のドライブシャフトが貫通する第1及び第2の貫通孔を有した変速機のケースの内部に収容されて、前記変速機のトルク出力部からトルクを受けて回転するデフケースと、前記デフケースを貫通して前記デフケースの内部へ挿入され、前記デフケースと一体になって回転するピニオンシャフトに回転自在に支持されたピニオンギヤと、前記ピニオンギヤと噛み合うと共に、前記第1及び第2のドライブシャフトとスプライン嵌合する嵌合孔を有した第1及び第2のギヤ部材、及び前記デフケースの前記第1及び第2の貫通孔を貫通することにより、一端が前記第1及び第2のギヤ部材の端部に圧接嵌合すると共に、他端が前記デフケースより外部へ伸び、前記第1及び第2のドライブシャフトを挿通する挿通孔を有した第1及び第2の円筒部材よりなる第1及び第2のサイドギヤと、前記変速機のケースの前記第1及び第2の貫通孔の内周面と前記第1及び第2の円筒部材の前記デフケースより外部へ伸びた部分の外周面の間に挿入された第1及び第2の油シール機構と、前記第1及び第2のギヤ部材の前記嵌合孔の前記ピニオンギヤ側の開口を閉塞する第1及び第2キャップを備え、前記ピニオンギヤ、及び前記第1及び第2のギヤ部材は前記窓から挿入されて前記デフケースの内部の所定の位置に配置され、前記第1及び第2の円筒部材は、前記デフケースの内部に前記ピニオンギヤ、及び前記第1及び第2のギヤ部材が挿入された後、前記デフケースの前記第1及び第2の貫通孔から挿入されて前記第1及び第2のギヤ部材の端部に圧接嵌合される構成を有することを特徴とするFF車両用変速機の差動装置。
【請求項2】 前記第1及び第2のギヤ部材は、前記第1及び第2の円筒部材と階段状の圧接嵌合面の嵌合によって一体にされている構成の請求項1記載のFF車両用変速機の差動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両用変速機の差動装置に関し、特に、ドライブシャフトが取り付けられていない状態でも潤滑油の洩れを防げると共に、加工の容易化,重量の低減,及びコストダウンを図ることができるFF車両用変速機の差動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】FF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両に搭載される変速機は、一般に、差動装置と共に同一のケース内に収容されており、ケース内に封入された同一の潤滑油で変速機構の潤滑と差動装置の潤滑を行うようになっている。
【0003】従来、このFF車両用変速機は、車両に搭載され、差動装置にドライブシャフトが取り付けられた状態においては、ドライブシャフトの外周面とケースとの間に設けられたシール部材によってケース内が密閉され、ケース内の潤滑油が洩れないようになっていた。
【0004】しかし、従来のFF車両用変速機によると、ドライブシャフトが取り外された、変速機単体としての完成時には、ケース内に潤滑油を密封することができないため、車両メーカーでの潤滑油の注入が必要となり、このため、注油設備がない車両メーカー(変速機を自社で生産していないメーカーなど)の需要に応えることができなかった。
【0005】そこで、上記問題を解決する、従来のFF車両用変速機として、例えば、特開平10−213209号公報に開示されるものがある。
【0006】図4は、上記公報に開示されるものと同種の構造のFF車両用変速機の差動装置1の断面を示す。差動装置1は、後述するドライブシャフトが貫通する貫通孔3a,3bを有し、内部に潤滑油を収容した変速機のケース3内に変速機構(一部のみ図示)2と共に収容されており、変速機構2の出力部材となる減速ギヤ4に噛合したリングギヤ5と、貫通孔6aを有する蓋部材6Aと貫通孔6bを有する収容部材6Bをリングギヤ5と共にボルト7により一体化することによって形成され、つば部6cから駆動力を入力して回転するデフケース6と、ケース3内においてデフケース6を回転自在に支持するベアリング8,9と、デフケース6の収容部材6B内においてデフケース6の回転軸と直交する方向に伸びると共に、端部が収容部材6Bに係合し、デフケース6と一体になって回転するピニオンシャフト10と、ピニオンシャフト10に回転自在に支持されたピニオンギヤ11と、ピニオンギヤ11と噛み合うギヤ部12aとギヤ部12aから貫通孔6a,6bを貫通してデフケースの外部へ伸びた円筒部12bよりなり、ドライブシャフト15A,15Bとスプライン嵌合するスプラインが内周面に形成された中空部12cを有したサイドギヤ12A,12Bと、サイドギヤ12A,12Bの中空部12cのギヤ部12a側の開口を閉塞するキャップ13A,13Bと、ケース3の貫通孔3a,3b内においてサイドギヤ12A,12Bの円筒部12bの外周面とケース3との間に設けられた油シール機構14A,14Bより構成されている。尚、6dはデフケース6に形成された窓である。
【0007】以上の構成を有するFF車両用変速機によると、サイドギヤ12A,12Bの円筒部12bが貫通孔6a,6bを貫通してデフケースの外部へ伸びてケース3の貫通孔3a,3bまで到達するようにし、貫通孔3a,3b内において円筒部12bとケース3の間に油シール機構14A,14Bを設けたため、潤滑油がサイドギヤ12A,12Bの円筒部12bの外周面に沿ってケース3の貫通孔3a,3bから流れ出ようとするのを油シール機構14A,14Bによって防ぐことができる。また、サイドギヤ12A,12Bの中空部12cのギヤ部12a側の開口をキャップ13A,13Bで閉塞したため、潤滑油がサイドギヤ12A,12Bの中空部12cに沿ってケース3の貫通孔3a,3bから流れ出ようとするのをキャップ13A,13Bによって防ぐことができる。従って、ドライブシャフト15A,15Bが取り付けられていない状態でも潤滑油の洩れを防ぐことができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のFF車両用変速機によると、サイドギヤの円筒部を変速機のケースの貫通孔まで到達する長さにする必要があるため、円筒部の長さが通常の長さに比べ何倍にもなり、加工時(特に、鍛造による加工の時)に型の問題で加工が困難になるという不都合がある。また、デフケースはサイドギヤ等を収容できるように蓋部材と収容部材に2分割されているため、各部品の剛性を高めるために肉厚が増加し、これによって重量が増加するという不都合がある。また、部品点数の増加や、合わせ面の加工の必要性によりコストアップを招く。
【0009】従って、本発明の目的はドライブシャフトが取り付けられていない状態でも潤滑油の洩れを防げると共に、加工の容易化,重量の低減,及びコストダウンを図ることができるFF車両用変速機の差動装置を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、所定の位置に窓、及び第1及び第2のドライブシャフトが貫通する第1及び第2の貫通孔を有するように構成され、前記第1及び第2のドライブシャフトが貫通する第1及び第2の貫通孔を有した変速機のケースの内部に収容されて、前記変速機のトルク出力部からトルクを受けて回転するデフケースと、前記デフケースを貫通して前記デフケースの内部へ挿入され、前記デフケースと一体になって回転するピニオンシャフトに回転自在に支持されたピニオンギヤと、前記ピニオンギヤと噛み合うと共に、前記第1及び第2のドライブシャフトとスプライン嵌合する嵌合孔を有した第1及び第2のギヤ部材、及び前記デフケースの前記第1及び第2の貫通孔を貫通することにより、一端が前記第1及び第2のギヤ部材の端部に圧接嵌合すると共に、他端が前記デフケースより外部へ伸び、前記第1及び第2のドライブシャフトが挿通する挿通孔を有した第1及び第2の円筒部材よりなる第1及び第2のサイドギヤと、前記変速機のケースの前記第1及び第2の貫通孔の内周面と前記第1及び第2の円筒部材の前記デフケースより外部へ伸びた部分の外周面の間に挿入された第1及び第2の油シール機構と、前記第1及び第2のギヤ部材の前記嵌合孔の前記ピニオンギヤ側の開口を閉塞する第1及び第2キャップを備え、前記ピニオンギヤ、及び前記第1及び第2のギヤ部材は前記窓から挿入されて前記デフケースの内部の所定の位置に配置され、前記第1及び第2の円筒部材は、前記デフケースの内部に前記ピニオンギヤ、及び前記第1及び第2のギヤ部材が挿入された後、前記デフケースの前記第1及び第2の貫通孔から挿入されて前記第1及び第2のギヤ部材の端部に圧接嵌合される構成を有したFF車両用変速機の差動装置を提供するものである。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のFF車両用変速機の差動装置を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】図1は本発明の第1の実施の形態に係るFF車両用変速機の差動装置を示す。この図において、図4と同一の部分には同一の引用数字,符号を付したので重複する説明は省略する。
【0013】このFF車両用変速機の差動装置は、デフケース6内に収容されたギヤ部材12dとデフケース6の貫通孔6a,6bを貫通する円筒部材12eを圧接嵌合によって連結してサイドギヤ12A,12Bを形成し、円筒部材12eのデフケース6より外部へ突出した部分の外周面とケース3の貫通孔3a,3bの内周面の間に油シール機構14A,14Bを配置して構成されている。
【0014】ギヤ部材12dは、ドライブシャフト15A,15Bとスプライン嵌合する嵌合孔12fを有し、ピニオンギヤ11と共にデフケース6の窓6dからデフケース6内へ挿入されることにより、ピニオンギヤ11と共に所定の位置関係でデフケース6内に収容された構成を有している。
【0015】円筒部材12eは、ドライブシャフト15A,15Bを挿通する挿通孔12gを有し、デフケース6の内部にピニオンギヤ11、及びギヤ部材12dが挿入された後、デフケース6の貫通孔6a,6bから挿入されることにより、デフケース6の貫通孔6a,6bを貫通し、一端がデフケース6内のギヤ部材12dの端部に圧接嵌合により連結されると共に、他端がデフケース6より外部へ伸びた構成を有している。
【0016】図2はサイドギヤ12Aの拡大図を示し、ギヤ部材12dと円筒部材12eはそれぞれ階段状の圧接嵌合面12h,12iを有し、両者の圧接嵌合面12h,12iの嵌合によって連結されることによりサイドギヤ12Aが形成されている。ギヤ部材12dと円筒部材12eの連結は、車両走行時に円筒部材12eに大きな力が作用しないので適度な結合力で充分であり、圧接嵌合面12h,12iの圧接嵌合による連結でも何ら問題はない。なお、サイドギヤ12Bもサイドギヤ12Aと同一の構成になっているため、サイドギヤ12Bの説明は省略する。
【0017】このような構成を有する本実施の形態のFF車両用変速機の差動装置によると、デフケース6内に収容されたギヤ部材12dとデフケース6の貫通孔6a,6bを貫通する円筒部材12eを圧接嵌合によって連結してサイドギヤ12A,12Bを形成しているため、サイドギヤ12A,12Bを構成するギヤ部材12dが小型化し、これの加工を容易にすることができる。また、ギヤ部材12dの小型化によりギヤ部材12dがデフケース6の窓6dからデフケース6内へ挿入できるようになるため、デフケース6を単一の部材で構成でき、重量の低減,及びコストダウンを図ることができる。また、サイドギヤ12A,12Bを構成する円筒部材12eが貫通孔6a,6bを貫通してケース3の貫通孔3a,3bまで伸び、貫通孔3a,3bの内周面と円筒部材12eの外周面の間に油シール機構14A,14Bが設けられているため、潤滑油が円筒部材12eの外周面に沿ってケース3の貫通孔3a,3bから流れ出ようとするのを油シール機構14A,14Bによって防ぐことができる。更に、サイドギヤ12A,12Bを構成するギヤ部材12dの嵌合孔12fのピニオンギヤ11側の開口をキャップ13A,13Bで閉塞したため、潤滑油がギヤ部材12dの嵌合孔12fに沿ってケース3の貫通孔3a,3bから流れ出ようとするのをキャップ13A,13Bによって防ぐことができる。従って、ドライブシャフト15A,15Bが取り付けられていない状態でも潤滑油の洩れを防ぐことができる。
【0018】図3は本発明の第2の実施の形態に係るFF車両用変速機の差動装置のサイドギヤ12Aを示し、ギヤ部材12dと円筒部材12eを連結する各々の圧接嵌合面12h,12iの階段状の方向が第1の実施の形態と反対になっている。このような構成でも第1の実施の形態と同様な効果を得ることができる。
【0019】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明のFF車両用変速機の差動装置によると、デフケースの窓からデフケース内へ挿入されたギヤ部材と、デフケースにギヤ部材が挿入された後、デフケースの貫通孔から挿入される円筒部材を圧接嵌合によって連結してサイドギヤを形成し、円筒部材のデフケースより外部へ伸びた部分の外周面とケースの貫通孔の内周面の間に油シール機構を配置して構成したため、ドライブシャフトが取り付けられていない状態でも潤滑油の洩れを防げると共に、加工の容易化,重量の低減,及びコストダウンを図ることができる。
【出願人】 【識別番号】000154347
【氏名又は名称】株式会社フジユニバンス
【出願日】 平成11年11月17日(1999.11.17)
【代理人】 【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄
【公開番号】 特開2001−141038(P2001−141038A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−326924