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【発明の名称】 オルタネータ用駆動装置
【発明者】 【氏名】大熊 健夫

【要約】 【課題】回転軸3とスリーブ8aとの嵌合部にフレッチング摩耗が発生するのを防止し、優れた耐久性を有する構造を実現する。

【解決手段】上記スリーブ8aの中心孔9aのうち、円孔部19aと上記回転軸3の先端部とを嵌合させる。この回転軸3の先端面に形成したねじ孔21に抑えボルト22を螺合し、緊締する。この抑えボルト22の頭部23の基端部に一体に設けた鍔部24を、上記中心孔9aの先端部を構成する係止孔部11aに、軸方向の移動のみ自在に係合させて、上記回転軸3とスリーブ8aとの相対回転を防止する。上記中心孔9aに雌ねじ部を形成する必要がなくなる分、上記回転軸3とスリーブ8aとの嵌合部の軸方向長さを大きくして、上記課題を解決できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 オルタネータの回転軸と、その中心孔にこの回転軸を内嵌する事により、この回転軸の先端部に外嵌支持したスリーブと、外周面にベルトを掛け渡す為のベルト溝を有し、このスリーブの周囲にこのスリーブと同心に配置された従動プーリと、これらスリーブの外周面の軸方向中間部と従動プーリの内周面の軸方向中間部との間に設けられ、この従動プーリが上記スリーブに対し所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみこれら従動プーリとスリーブとの間での回転力の伝達を自在とする一方向クラッチと、この一方向クラッチを軸方向両側から挟む位置で上記スリーブの外周面と上記従動プーリの内周面との間に設けられ、この従動プーリに加わるラジアル荷重を支承しつつこれらスリーブと従動プーリとの相対回転を自在とする1対のサポート軸受とを備えたオルタネータ用駆動装置に於いて、上記スリーブの中心孔のうち、上記オルタネータと反対側端部である先端部を除く部分は、上記回転軸ががたつきなく且つ回転自在に嵌合する円孔部であり、残り部分である上記先端部は、断面形状が非円形で最大内接円の直径が上記円孔部の内径よりも大きな係合孔部であり、これら円孔部と係合孔部との境界部分には段差部が存在しており、上記回転軸の先端面にはねじ部が、この回転軸と同軸に設けられており、このねじ部に螺合したねじ部材には、上記段差部に突き当て自在の鍔部が固設されており、この鍔部の外周縁は上記係合孔部の内周面に、上記回転軸の軸方向の変位自在に且つ上記スリーブに対する相対回転不能に係合しており、上記ねじ部に上記ねじ部材を螺合し更に緊締する事により、上記スリーブを上記回転軸の先端部に固定している事を特徴とするオルタネータ用駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明のオルタネータ用駆動装置は、自動車用の発電機であるオルタネータの回転軸の端部に設け、エンジンのクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリとの間に無端ベルトを掛け渡す事により、上記オルタネータを駆動する為に利用する。
【0002】
【従来の技術】自動車の走行用エンジンを駆動源として、自動車に必要な発電を行なうオルタネータの構造が、例えば特開平7−139550号公報に記載されている。図3は、この公報に記載されたオルタネータ1を示している。ハウジング2の内側に回転軸3を、1対の転がり軸受4、4により、回転自在に支持している。この回転軸3の中間部には、ロータ5と整流子6とを設けている。又、この回転軸3の先端部(図3の右端部)で上記ハウジング2外に突出した部分には、従動プーリ7を固定している。エンジンへの組み付け状態では、この従動プーリ7に無端ベルトを掛け渡し、エンジンのクランクシャフトにより、上記回転軸3を回転駆動自在とする。
【0003】上記従動プーリ7として従来一般的には、単に上記回転軸3の先端部に固定しただけのものを使用していた。これに対して近年、無端ベルトの走行速度が一定若しくは上昇傾向にある場合には、無端ベルトから回転軸への動力の伝達を自在とし、無端ベルトの走行速度が低下傾向にある場合には、従動プーリと回転軸との相対回転を自在とする、オルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置が各種提案され、一部で使用されている。例えば、特開昭56−101353号公報、特開平7−317807号公報、同8−61443号公報、同10−213207号公報、同10−285873号公報、特公平7−72585号公報、フランス特許公報FR2726059A1等に、上述の様な機能を有するオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置が記載されている。又、一部ではこの様なオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置が、実際に使用されている。
【0004】図4は、このうちの特開平10−285873号公報に記載されているオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を示している。このオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置は、オルタネータ1の回転軸3(図3)の先端部に外嵌固定自在なスリーブ8を有する。このスリーブ8の中心孔9の中間部にはねじ孔部10を、オルタネータ1と反対側端部である先端部(図4の右端部)には、断面形状が六角形である係合孔部11を、それぞれ形成している。上記スリーブ8を上記回転軸3の先端部に固定するには、この回転軸3の先端部に設けた雄ねじ部に上記ねじ孔部10を螺合させ、更に上記係合孔部11に係止した六角レンチ等の工具により緊締する。又、上記回転軸3の先端部で上記雄ねじ部よりも中央寄り部分は、上記中心孔9の基端側(図4の左端側)部分で上記ねじ孔部10から外れた部分に設けた円孔部19に内嵌する。
【0005】この様にして上記回転軸3の先端部に固定するスリーブ8の周囲には従動プーリ7aを、このスリーブ8と同心に配置している。そして、これらスリーブ8の外周面と従動プーリ7aの内周面との間に、1対のサポート軸受12、12と一方向クラッチ13とを設けている。このうちのサポート軸受12、12は、上記従動プーリ7aに加わるラジアル荷重を支承しつつ、上記スリーブ8と従動プーリ7aとの相対回転を自在とする。
【0006】又、上記一方向クラッチ13は、上記従動プーリ7aが上記スリーブ8に対して所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみ、この従動プーリ7aからスリーブ8への回転力の伝達を自在とする。この為、上記一方向クラッチ13を構成し、上記スリーブ8に外嵌固定したクラッチ用内輪14の中間部外周面には、カム面15を形成している。又、このカム面15と上記従動プーリ7aの内周面との間には、複数のローラ16、16を配置している。そして、これら各ローラ16、16と、これら各ローラ16、16を保持する為のクラッチ用保持器17との間に、図示しない複数のばねを設けている。これら各ばねは、上記カム面15と上記従動プーリ7aの内周面との間に形成される円筒状隙間の寸法のうち、直径方向に関する断面高さ寸法が小さくなった部分に、上記各ローラ16、16をくさび状に食い込ませる方向に、これら各ローラ16、16を弾性的に押圧している。又、この弾力に基づく上記各ローラ16、16を押圧する為のトルクは、4N・m以下としている。
【0007】上述の様に構成する特開平10−285873号公報に記載されたオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置によれば、オルタネータの発電効率を或る程度確保する事ができる。即ち、エンジンを構成するクランクシャフトの回転速度が上昇し、このクランクシャフトの端部に固定した駆動プーリと上記従動プーリ7aとの間に掛け渡した無端ベルト18の走行速度が上昇傾向にある場合には、上記従動プーリ7aがスリーブ8に対し、所定方向に相対回転する傾向になる。この結果、上記各ローラ16、16が、上記クラッチ用内輪14の外周面と上記従動プーリ7aの内周面との間に形成される円筒状隙間の寸法のうち、直径方向に関する断面高さ寸法が小さくなった部分にくさび状に食い込んで(ロック状態となって)、上記従動プーリ7aから回転軸3への回転力の伝達を自在とする。これに対して、上記クランクシャフトの回転速度が低下し、上記無端ベルト18の走行速度が低下傾向にある場合には、上記従動プーリ7aが上記スリーブ8に対して、上記所定方向と反対方向に相対回転する。この為、上記各ローラ16、16が上記円筒状隙間のうちの幅が広くなった部分に移動し、これら各ローラ16、16が当該部分で転動自在となって(オーバラン状態となって)、上記従動プーリ7aと回転軸3との相対回転を自在とする。この様にオーバラン状態への移行が行なわれる為、クランクシャフトの回転速度の変動に拘らず、上記オルタネータの回転軸3を、自身の回転慣性力に基づき或る程度高域で回転させ続ける事ができる。この為、上記オルタネータの発電効率を或る程度確保する事ができる。
【0008】同時に、上述の様なオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を使用する事により、無端ベルト18の寿命を延長する事もできる。例えば、上記駆動用エンジンがディーゼルエンジンであった場合、アイドリング時等の低回転時には、クランクシャフトの回転角速度の変動が大きくなる。この結果、上記クランクシャフトの端部に固定した駆動プーリに掛け渡した無端ベルト18の走行速度も細かく変動する事になる。一方、この無端ベルト18により従動プーリを介して回転駆動されるオルタネータ1の回転軸3は、この回転軸3並びにこの回転軸3に固定したロータ5等の慣性質量に基づき、それ程急激には変動しない。従って、上記従動プーリを回転軸に対し単に固定しただけ場合には、クランクシャフトの回転角速度の変動に伴い、上記無端ベルト18と従動プーリとが両方向に擦れ合う傾向となる。この結果、この従動プーリと擦れ合う無端ベルト18に、繰り返し異なる方向の応力が作用して、この無端ベルト18と従動プーリとの間に滑りが発生し易くなったり、或はこの無端ベルト18の寿命が短くなったりする原因となる。
【0009】これに対して、上記オルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を使用すれば、従動プーリ7aと無端ベルト18との擦れ合い部に作用する応力の方向を一定にできる。即ち、この無端ベルト18の走行速度が低下傾向にある場合には、上記従動プーリ7aの回転角速度を上記回転軸3の回転角速度よりも遅くして、上記無端ベルト18と従動プーリ7aとの当接部が強く擦れ合う事を防止する。この様にして、この無端ベルト18と従動プーリ7aとの間に滑りが発生したり、或はこの無端ベルト18の寿命が低下する事を防止できる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】上述の様に構成し作用する特開平10−285873号公報に記載されたオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置の場合、スリーブ8の中心孔9の一部にねじ孔部10を形成している為、この中心孔9の内周面とオルタネータ1の回転軸3の外周面との当接部にフレッチング摩耗が発生し易い。この理由は、次の通りである。上記中心孔9の一部にねじ孔部10を形成した事に伴い、この中心孔9のうちで円孔部19の軸方向長さが短くなる。一方、上記回転軸3の外周面に上記スリーブ8を固定した状態で、上記中心孔9のうちの円孔部19は上記回転軸3の外周面に対し締り嵌め状態でラジアル方向の変位をゼロにした状態で係合するが、上記ねじ孔部10と上記雄ねじ部との係合部は、ラジアル方向に関して僅かとは言え変位自在となる。
【0011】この為、無端ベルト18を掛け渡す為に従動プーリ7aの外周面に形成したベルト溝がオフセットしている(上記円孔部19から軸方向にずれている)等により、上記無端ベルト18から上記従動プーリ7aを介して上記スリーブ8にモーメントが加わると、上記円筒部19の内周面と上記回転軸3の外周面との当接部の一部に、大きな面圧が加わる。しかも、この様にして高面圧が加わる部分は、上記従動プーリ7a及びスリーブ8の回転に伴って絶えず変化する(円周方向に移動する)。この為、上記円筒部19の内周面と上記回転軸3の外周面との当接部にフレッチング摩耗が発生し易い。本発明は、この様な事情に鑑みて、回転軸とスリーブとの円筒面部同士の嵌合部の軸方向長さを大きくし、この嵌合部に加わる面圧を低く抑える事ができて、この嵌合部にフレッチング摩耗が発生するのを防止できる、オルタネータ用駆動装置を実現すべく発明したものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明のオルタネータ用駆動装置は、前述した様な従来から知られているオルタネータ用一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を組み込んで構成する、オルタネータ用駆動装置と同様に、オルタネータの回転軸と、その中心孔にこの回転軸を内嵌する事により、この回転軸の先端部に外嵌支持したスリーブと、外周面にベルトを掛け渡す為のベルト溝を有し、このスリーブの周囲にこのスリーブと同心に配置された従動プーリと、これらスリーブの外周面の軸方向中間部と従動プーリの内周面の軸方向中間部との間に設けられ、この従動プーリが上記スリーブに対し所定方向に相対回転する傾向となる場合にのみこれら従動プーリとスリーブとの間での回転力の伝達を自在とする一方向クラッチと、この一方向クラッチを軸方向両側から挟む位置で上記スリーブの外周面と上記従動プーリの内周面との間に設けられ、この従動プーリに加わるラジアル荷重を支承しつつこれらスリーブと従動プーリとの相対回転を自在とする1対のサポート軸受とを備える。
【0013】特に、本発明のオルタネータ用駆動装置に於いては、上記スリーブの中心孔のうち、上記オルタネータと反対側端部である先端部を除く部分は、上記回転軸ががたつきなく且つ回転自在に嵌合する円孔部である。又、上記中心孔の残り部分である上記先端部は、断面形状が非円形で最大内接円の直径が上記円孔部の内径よりも大きな係合孔部である。又、これら円孔部と係合孔部との境界部分には段差部が存在している。又、上記回転軸の先端面にはねじ部が、この回転軸と同軸に設けられている。又、このねじ部に螺合したねじ部材には、上記段差部に突き当て自在の鍔部が固設されている。更に、この鍔部の外周縁は上記係合孔部の内周面に、上記回転軸の軸方向の変位自在に且つ上記スリーブに対する相対回転不能に係合している。そして、上記ねじ部に上記ねじ部材を螺合し更に緊締する事により、上記スリーブを上記回転軸の先端部に固定している。
【0014】
【作用】上述の様に構成する本発明のオルタネータ用駆動装置の場合には、回転軸とスリーブとの相対回転の防止は、この回転軸の先端面のねじ部に螺合し更に緊締したねじ部材に固設した鍔部の外周縁と、スリーブの中心孔の先端部に設けた係合孔部の内周面との係合により図る。この為、この中心孔の一部にねじ孔部を形成する必要がなくなり、その分、円孔部の軸方向長さを大きくできる。従って、無端ベルトを掛け渡した従動プーリから加わるモーメント荷重に拘らず、上記回転軸とスリーブとの嵌合部に加わる面圧を低く抑えて、この嵌合部にフレッチング摩耗が発生する事を有効に防止できる。
【0015】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のオルタネータ用駆動装置は、オルタネータの回転軸3と、全体を円筒状に形成して、この回転軸3の端部に外嵌固定するスリーブ8aと、このスリーブ8aの周囲にこのスリーブ8aと同心に配置した従動プーリ7bとを備える。このうちのスリーブ8aは、炭素鋼等の焼き入れ硬化可能な硬質金属製で、上記回転軸3と共に回転自在である。この為に、上記スリーブ8aの中心孔9aのうち、オルタネータと反対側端部である先端部(図1の左端部)を除く部分は、上記回転軸3ががたつきなく且つ回転自在に嵌合する円孔部19aとしている。
【0016】又、上記中心孔9aの残り部分である上記先端部は、断面形状が正六角形である、係合孔部11aとしている。この係合孔部11aの最大内接円の直径(=互いに平行な対向平面同士の間隔)は、上記円孔部19aの内径よりも大きい。そして、これら円孔部19aと係合孔部11aとの境界部分には、段差部20を設けている。この段差部20は、上記スリーブ8aの中心軸に対し直交する仮想平面上に存在する。本発明の場合には、上記円孔部19aと係合孔部11aとのうち、円孔部19aの軸方向長さを確保すべく、係合孔部11aの軸方向長さを短くしている。
【0017】又、上記回転軸3の先端面には、請求項に記載したねじ部に相当するねじ孔21を、この回転軸3と同軸に設けている。そして、このねじ孔21に、請求項に記載したねじ部材である、抑えボルト22を螺合し更に緊締している。この抑えボルト22の頭部23の基端部(図1の右端部)には、上記段差部20に突き当て自在な鍔部24を、この頭部23と一体に設けている。この鍔部24の外周縁の断面形状は、上記係合孔部11aの内周面の断面形状と相似形(正六角形)である。又、上記鍔部24の外周縁の大きさは、上記係合孔部11aの内周面の大きさよりも僅かに小さい。従って上記鍔部24は上記係合孔部11aの内側に、上記回転軸3の軸方向の変位自在に且つ上記スリーブ8aに対する相対回転不能に係合している。
【0018】上記回転軸3の先端部に上記スリーブ8aを固定する場合には、この回転軸3の先端部に、このスリーブ8aの中心孔9aのうちの円孔部19aを、軽い締り嵌めで嵌合させる。そして、この中心孔9aの係止孔部11a内に上記抑えボルト22を、ねじ部25を先にして挿入し、このねじ部25の先端部を上記回転軸3の先端面に設けたねじ孔21に螺合させる。尚、この螺合作業は、上記回転軸3の先端部を上記スリーブ8aに対し、図1に示した状態よりも少し左方に迄変位させておく事により、容易に行なえる。上記ねじ部25の先端部を上記ねじ孔21に少し螺合させたならば、上記係止孔部11aと上記鍔部24との位相を一致させた状態で、上記回転軸3を上記スリーブ8aに対し、図1の右方に変位させ、上記鍔部24を上記係止孔部11a内に引き込む。そして、この状態から、上記抑えボルト22の頭部23にボックスレンチ等の工具を係合させて、この抑えボルト22を上記回転軸3に対し回転させ、上記抑えボルト22を緊締する。この緊締作業に伴い、上記スリーブ8aも、上記係止孔部11aの内周面と上記鍔部24の外周縁との係合に基づいて、上記回転軸3に対し回転する。そして、上記ねじ孔21に上記抑えボルト22のねじ部25を螺合し更に緊締する事により、上記スリーブ8aを上記回転軸3の先端部に固定する。
【0019】尚、この様な固定作業の際、上記頭部23にボックスレンチの如き工具を係止するのに代えて、上記係止孔部11aに六角レンチ等の工具を係止し、上記スリーブ8aを回転させる事により、上記抑えボルト22を回転させる事もできる。従って、修理・交換等の為、上記回転軸3に対し一方向クラッチ内蔵型プーリ装置を着脱するには、ボックスレンチと六角レンチとの一方を用意しておけば良い。又、図示の例では、上記回転軸3の先端部に上記スリーブ8aを固定するのと同時に、このスリーブ8aの基端面(図1の右端面)と上記回転軸3の中間部先端寄り部分に形成した段部35との間で、転がり軸受36の内輪37を挟持している。この転がり軸受36は、上記回転軸3を、前記オルタネータを構成するハウジング2(図3)に支持する為のものである。
【0020】上述した様に上記回転軸3の先端部に固定したスリーブ8aの外周面と、このスリーブ8aの周囲に設けた、前記従動プーリ7bの内周面との間には、次述するサポート軸受26、26及び後述する一方向クラッチ27を設けている。上記従動プーリ7bは、上記スリーブ8aと同様に、焼き入れ硬化可能な硬質金属製であり、この従動プーリ7bの外周面には、それぞれが断面V字形である複数本(本例の場合には4本)の凹溝28、28を、互いに平行に且つそれぞれ全周に亙って形成している。この様な従動プーリ7bと図示しない駆動プーリとの間には、内周面に断面V字形で全周に亙って連続するリブを複数本(本例の場合には4本)形成した無端ベルト18(図4参照)を掛け渡す。
【0021】上記スリーブ8aの外周面と上記従動プーリ7bの内周面との間には、それぞれが深溝型の玉軸受である1対のサポート軸受26、26と、カムクラッチである1個の一方向クラッチ27とを設けている。このうちの1対のサポート軸受26、26は、それぞれ内周面に深溝型の外輪軌道29を有する軸受用外輪30と、外周面に深溝型の内輪軌道31を有する軸受用内輪32と、上記外輪軌道29と内輪軌道31との間にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けた玉33と、これら各玉33を転動自在に保持する軸受用保持器34とから成る。この様な各サポート軸受26、26は、それぞれの軸受用外輪30を上記従動プーリ7bの内周面両端寄り部分に締り嵌めにより内嵌固定し、それぞれの軸受用内輪32を上記スリーブ8aの外周面両端寄り部分に締り嵌めにより外嵌固定する事により、上記スリーブ8aの外周面両端寄り部分と従動プーリ7bの内周面両端寄り部分との間に設けている。又、上記各サポート軸受26、26を構成する軸受用外輪30の外周面で上記一方向クラッチ27と反対側端部には、それぞれシールリング38の外周縁部を係止すると共に、このシールリング38の内周縁部を、上記各軸受用内輪32の端部外周面に摺接させている。
【0022】又、上記一方向クラッチ27は、上記スリーブ8aの外周面中間部と従動プーリ7bの内周面中間部との間に設けている。この一方向クラッチ27は、クラッチ用保持器39に複数個のカム40を揺動変位自在に保持すると共に、ガータスプリング41によりこれら各カム40に、起立方向(上記スリーブ8aの外周面と従動プーリ7bの内周面との間で突っ張る方向)の弾力を付与したものである。本例の場合には、上記スリーブ8aの外周面中間部と上記従動プーリ7bの内周面中間部とを、上記各カム40と係合する円筒状の軌道面としている。この為、これら各周面を、それぞれ焼き入れ硬化している。
【0023】上述の様に構成する本発明のオルタネータ用駆動装置の場合、前述の図4に示した従来のオルタネータ用一方向内蔵型プーリ装置を組み込んだオルタネータ用駆動装置と同様に、上記従動プーリ7bに掛け渡した無端ベルト18の走行速度が一定若しくは上昇傾向にある場合には、上記一方向クラッチ27を接続する。そして、上記従動プーリ7bの回転を上記スリーブ8aに伝え、前記回転軸3を回転駆動する。これに対して、上記無端ベルト18の走行速度が低下傾向にある場合には、上記一方向クラッチ27の接続を断ち、上記スリーブ8a及び回転軸3を、上記従動プーリ7bよりも高速で回転させる。この為、オルタネータの発電効率の確保と上記無端ベルト18の寿命延長とを図れる。
【0024】特に、本発明のオルタネータ用駆動装置の場合には、上記回転軸3と上記スリーブ8aとの嵌合部に加わる面圧を低く抑えて、この嵌合部にフレッチング摩耗が発生する事を有効に防止できる。この理由に就いて、以下に説明する。本発明のオルタネータ用駆動装置の場合には、上記回転軸3と上記スリーブ8aとの相対回転の防止は、この回転軸3の先端面のねじ孔21に螺合し更に緊締した抑えボルト22の頭部23の基端部に固設した前記鍔部24の外周縁と、上記スリーブ8aの中心孔9aの先端部に設けた係合孔部11aの内周面との係合により図っている。この為、上記中心孔9aの一部に、前述の図4に示した従来構造の場合に必要であった、ねじ孔部10を形成する必要がなくなり、その分、上記回転軸3とがたつきなく嵌合する円孔部19aの軸方向長さを大きくできる。
【0025】従って、上記無端ベルト18を掛け渡した従動プーリ7bから加わるモーメント荷重に拘らず、上記回転軸3と上記スリーブ8aとの嵌合部に加わる面圧を低く抑える事ができる。即ち、上記従動プーリ7bに加わるモーメント荷重を一定とすれば、上記嵌合部に加わる面圧の最大値は、この嵌合部の軸方向長さL0 (支持スパン)が短い程大きくなる。そして、この面圧の最大値が大きくなる程、著しいフレッチング摩耗が発生し易くなる。本発明の場合には、上記嵌合部L0の長さを長くできる為、上記嵌合部に加わる面圧の最大値を小さくできる。又、嵌合部の長さが長くなる事に伴い、この嵌合部の端部αと、上記無端ベルト18から上記従動プーリ7bに加わるラジアル荷重の作用中心βとの軸方向距離L1を短くできる。上記嵌合部に加わるモーメント荷重の大きさは、この軸方向距離L1 に略比例するので、本発明は、このモーメント荷重自体を小さくできて、上記嵌合部に加わる面圧の最大値を、より小さくできる。この結果、本発明によれば、上記フレッチング摩耗の発生を、有効に防止できる。
【0026】次に、図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、回転軸3の先端面に、請求項に記載したねじ部に相当する雄ねじ部42を、この回転軸3と同軸に設けている。この雄ねじ部42の外径は、この回転軸3の外径よりも十分に小さい。そして、この雄ねじ部42に、請求項に記載したねじ部材である、抑えナット43を螺合し更に緊締している。この抑えナット43の基端部(図2の右端部)には、スリーブ8bの中心孔9aの中間部先端寄り部分に形成した段差部20に突き当て自在な鍔部24を、一体に設けている。
【0027】上記回転軸3の先端部に上記スリーブ8bを固定する場合には、この回転軸3の先端部に、上記中心孔9aのうちの円孔部19aを嵌合させる。そして、この中心孔9aの係止孔部11a内に上記抑えナット43を、上記鍔部24を先にして挿入し、この抑えナット43を上記回転軸3の先端面に設けた雄ねじ部42に螺合させる。この状態から、上記抑えナット43にボックスレンチ等の工具を係合させて、この抑えナット43を上記回転軸3に対し回転させ、上記抑えナット43を緊締する事により、上記スリーブ8bを上記回転軸3の先端部に固定する。この様な固定作業は、ねじ孔21及び抑えボルト22(図1)が雄ねじ部42及び抑えナット43に変わった以外、前述した第1例の場合と同様にして行なえる。
【0028】又、本例の場合には、一方向クラッチ44として、ローラクラッチを使用している。この一方向クラッチ44は、従動プーリ7bの中間部内周面に締り嵌めにより内嵌固定したクラッチ用外輪45の内周面と、上記スリーブ8bの中間部外周面に締り嵌めで外嵌固定したクラッチ用内輪46の外周面との間に複数のローラ47を、クラッチ用保持器48により、転動並びに円周方向に亙る若干の変位自在に保持した状態で配置して成る。上記クラッチ用外輪45及びクラッチ用内輪46は、軸受鋼等の硬質金属製の板材又はSCM415等の浸炭鋼の板材により全体を円筒状に形成している。この様なクラッチ用外輪45及びクラッチ用内輪46を、上記従動プーリ7b及びスリーブ8bに嵌合固定する為、これら従動プーリ7bの内周面及びスリーブ8bの外周面には、特に焼き入れ等の表面硬化処理を施してはいない。
【0029】又、上記クラッチ用内輪46の外周面は、カム面49としている。即ち、このクラッチ用内輪46の外周面の複数個所に、ランプ部と呼ばれ、深さが円周方向一端側に向かう程大きくなる凹部50を、それぞれこのクラッチ用内輪46の軸方向に亙って、円周方向に亙り互いに等間隔で形成して、このクラッチ用内輪46の外周面を上記カム面49としている。このクラッチ用内輪46の外周面と上記クラッチ用外輪45の内周面との間には、円筒状隙間51が形成されるが、この円筒状隙間51の寸法のうち、上記クラッチ用外輪45の直径方向に関する断面高さ寸法は、上記各凹部50に対応する部分ではこの円筒状隙間51内に配置する複数個のローラ47の外径よりも大きく、これら各凹部50から外れた部分では上記各ローラ47の外径よりも小さい。そして、上記クラッチ用内輪46に、このクラッチ用内輪46に対する回転を不能に外嵌した、前記クラッチ用保持器48と上記各ローラ47との間にばねを設けて、これら各ローラ47を上記各凹部50の浅い側に向け、円周方向に関して同方向に押圧している。
【0030】この様なローラクラッチ型の一方向クラッチ44も、前述した第1例のカムクラッチ型の一方向クラッチ27と同様に、上記従動プーリ7bに掛け渡した無端ベルト18(図4)の走行速度が一定若しくは上昇傾向にある場合には接続される。そして、上記従動プーリ7bの回転を上記スリーブ8bに伝え、前記回転軸3を回転駆動する。これに対して、上記無端ベルト18の走行速度が低下傾向にある場合には、上記一方向クラッチ44の接続が断たれ、上記スリーブ8a及び回転軸3を、上記従動プーリ7bよりも高速で回転させる。
【0031】更に、本例の場合には、スリーブ8bの両端部外周面に、それぞれ小径部52、52を形成している。そして、各サポート軸受26、26を構成する各軸受用内輪32を上記スリーブ8bの外周面にそれぞれ締り嵌めにより外嵌固定する際に、これら各軸受用内輪32の片端面を、上記各小径部52、52と中央の大径部53との連続部分である段部54、54に、それぞれ突き当てる事で、上記各サポート軸受26、26の上記スリーブ8bに対する軸方向に亙るずれ止めを図っている。その他の構成及び作用に就いては、上述した第1例の場合と同様である為、同等部分には同一符号を付して重複する説明は省略する。
【0032】
【発明の効果】本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、オルタネータの発電効率を良好にでき、しかも無端ベルトの耐久性向上を図れる構造で、回転軸及びスリーブにフレッチング摩耗が発生するのを抑え、優れた耐久性を有するオルタネータ用駆動装置を実現できる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成11年11月18日(1999.11.18)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
【公開番号】 特開2001−141036(P2001−141036A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−327822