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【発明の名称】 ディファレンシャル装置
【発明者】 【氏名】島貫 武志

【要約】 【課題】予圧力調整作業を容易に実施可能なディファレンシャル装置の提供を目的とする。

【解決手段】エンジンの駆動力が入力されるデフケース3と、デフケース3内に収容され入力された駆動力を対向配置された一対の出力側サイドギヤ17,19に差動配分する差動機構5と、デフケース3と各サイドギヤ17,19との間に配置され差動機構5の差動作用を制限する多板クラッチ25と、多板クラッチ25に与える予圧力を調整可能な調整式予圧機構27とを備えるディファレンシャル装置1であって、調整式予圧機構27が、ディファレンシャル装置1の回転軸心上に配置されたスラストブロック43を備え、スラストブロック43はスプリングピン41により一体化されたブロックハーフ35,37からなると共に、両端部に六角形の回動操作用頭部35b,37bを有し、いずれのサイドギヤ17,19側からも調整操作可能であることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの駆動力が入力されるデフケースと、前記デフケース内に収容され入力された駆動力を対向配置された一対の出力側サイドギヤに差動配分する差動機構と、前記差動機構の差動作用を制限する差動制限機構と、前記差動制限機構に与える予圧力を調整可能な調整式予圧機構とを備えるディファレンシャル装置であって、前記調整式予圧機構が、前記いずれのサイドギヤ側からも調整操作可能に構成されてなることを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項2】 請求項1に記載のディファレンシャル装置であって、前記調整式予圧機構が、前記両サイドギヤ間に配置され該サイドギヤの中空穴から調整操作可能に構成されてなることを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項3】 請求項2に記載のディファレンシャル装置であって、前記調整式予圧機構は、前記両サイドギヤの回転軸心上に配置されたスラストブロックを備え、前記スラストブロックは一体化手段により一体化された複数部材からなると共に回動操作用形状部を両端部に有することを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項4】 請求項3に記載のディファレンシャル装置であって、前記スラストブロックの一体化手段が前記複数部材に亘って回転軸方向に装着された軸状部材であることを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項5】 請求項4に記載のディファレンシャル装置であって、前記スラストブロックは、予圧力を変更設定するカム機構の一側のカム部材と係合し該一側カム部材を一体的に回動させる連結部を有することを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項6】 請求項5に記載のディファレンシャル装置であって、前記カム機構の他側のカム部材が、回り止め部材によりデフケースに相対回転不能にされると共に回転軸方向に移動可能にされていることを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項7】 請求項5または請求項6に記載のディファレンシャル装置であって、前記カム機構は、前記スラストブロックの回動に伴い弾性部材を押圧して前記差動制限機構に予圧力を与えることを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項8】 請求項5〜請求項7のいずれかに記載のディファレンシャル装置であって、前記カム機構の両カム部材が前記回転軸心に対して対称の部位で互いにカム係合することを特徴とするディファレンシャル装置。
【請求項9】 請求項1〜請求項8のいずれかに記載のディファレンシャル装置であって、前記デフケースにその回転軸に直交する方向に支持され該デフケースと一体に回転するピニオンシャフトを備え、前記調整式予圧機構が、前記ピニオンシャフトの前記回転軸側端部に該回転軸の方向に延びて設けられた中空のボス部内に配置されていることを特徴とするディファレンシャル装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両などに用いられるディファレンシャル装置の差動制限機構に関し、特にその調整式予圧機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の差動制限機構および調整式予圧機構としては、例えば、本出願人が特願平10−272057号に図7、図8に示すようなものを提案している。
【0003】図示のように、調整式予圧機構203は、ベベルギヤ式ディファレンシャル装置201のピニオンシャフト205の中空ボス部205a内に設けられている。
【0004】差動機構207は、デフケース209の内周に設けられた軸方向溝209aに係合し、デフケース209と一体に回転するピニオンシャフト205と、ピニオンシャフト205上に回転自在に支持されたピニオンギヤ211と、ピニオンギヤ211と噛み合う互いに対向配置された左右一対のサイドギヤ213,215などからなる。
【0005】差動制限機構は、デフケース209と左右の各サイドギヤ213,215との間に配置された多板式クラッチ217と、このクラッチ217に予圧力を与える調整式予圧機構203とからなる。クラッチ217は、車両の走行時にピニオンギヤ211との噛み合いによりサイドギヤ213,215が受けるスラスト力をプレッシャリング221を介して受けて締結される。
【0006】一方、調整式予圧機構203は、二つのリテーナ223,225に挟まれて配置された皿ばね227と、プレッシャプレート229、カム231などから構成されている。そして、皿ばね227の付勢力が各サイドギヤ213,215および各プレッシャリング221,221を介して各クラッチ217,217を常時押圧し、締結させている。こうして、クラッチ217は差動機構207の差動を制限する。
【0007】図8は、図7のB矢視図である。図8示のように、プレッシャプレート229の軸部229aは六角柱状に形成され、その外端面に合いマーク穴233が形成されている。一方、デフケース209のボス部209bの左端面には3個の合いマーク穴235,237,239が形成されている。
【0008】予圧力を調整するには、左のサイドギヤ213の中空穴にスプライン連結されている図外の出力軸を引き抜いて、六角形のソケットレンチをプレッシャプレート229に係合してプレッシャプレート229を回し、プレッシャプレート229の合いマーク穴233とデフケースの合いマーク穴235,237,239のいずれかとを位置合わせする。プレッシャプレート229を回すと、カム231を介して左のリテーナ223が右方向に移動させられて、皿ばね227の撓み量(予圧力)を変える。
【0009】デフケース209の合いマーク穴235,237,239は、図8示のように、皿ばね227の撓みにより予圧力を強、中、弱の3段階に設定可能にされている。こうして、予圧力が希望に応じて調整、設定される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところが、調整式予圧機構203が上記の構造では、六角形のソケットレンチを挿入する側が出力軸(車軸)の左右いずれか一方に限られるので、車両によっては適用が不能となり、調整式予圧機構203の適用の自由度、すなわち、ディファレンシャル装置201の適用の自由度が小さいという問題がある。
【0011】また、皿ばね227の配置スペースが小さいので、予圧力を増大しにくいという問題がある。
【0012】そこで、本発明は、予圧力調整作業を容易に実施可能なディファレンシャル装置の提供を目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、エンジンの駆動力が入力されるデフケースと、前記デフケース内に収容され入力された駆動力を対向配置された一対の出力側サイドギヤに差動配分する差動機構と、前記差動機構の差動作用を制限する差動制限機構と、前記差動制限機構に与える予圧力を調整可能な調整式予圧機構とを備えるディファレンシャル装置であって、前記調整式予圧機構が、前記いずれのサイドギヤ側からも調整操作可能に構成されてなることを特徴とする。
【0014】したがって、予圧力の調整操作に当たっては、一対の出力側サイドギヤのいずれの側からも調整操作が可能であるので、前記従来例と異なり、引き抜き可能の出力軸がいずれかのサイドギヤ側に限定される車両であっても、それにより制約されることなく、このディファレンシャル装置を搭載可能で、適用の自由度が拡大される。
【0015】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のディファレンシャル装置であって、前記調整式予圧機構が、前記両サイドギヤ間に配置され該サイドギヤの中空穴から調整操作可能に構成されてなることを特徴とする。
【0016】したがって、請求項1の発明と同等の作用・効果が得られると共に、引き抜き可能な出力軸側のサイドギヤの中空穴から調整操作ができるので、調整操作が容易である。
【0017】請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のディファレンシャル装置であって、前記調整式予圧機構は前記両サイドギヤの回転軸心上に配置されたスラストブロックを備え、前記スラストブロックは一体化手段により一体化された複数部材からなると共に回動操作用形状部を両端部に有することを特徴とする。
【0018】したがって、請求項2の発明と同等の作用・効果が得られると共に、スラストブロックの端部に、例えば回動操作用工具を係合させて調整操作を行えるので、調整操作が一層容易になる。
【0019】また、スラストブロックが、両出力軸の内方への移動を止めるストッパの機能を兼ねるので、その分、コストが低減される。
【0020】請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のディファレンシャル装置であって、前記スラストブロックの一体化手段が前記複数部材に亘って回転軸方向に装着された軸状部材であることを特徴とする。
【0021】したがって、請求項3の発明と同等の作用・効果が得られると共に、例えばスラストブロックを組立の都合から2分割する構成を採っても、ピンなどの軸状部材によって連結されるので、構成が簡素化され、コストが低減される。
【0022】請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のディファレンシャル装置であって、前記スラストブロックは、予圧力を変更設定するカム機構の一側のカム部材と係合し該一側カム部材を一体的に回動させる連結部を有することを特徴とする。
【0023】したがって、請求項4の発明と同等の作用・効果が得られると共に、2分割式のスラストブロックであるので、例えば連結部の形状設定や配置部位の選定などが容易になり、設計上の自由度が向上する。
【0024】請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のディファレンシャル装置であって、前記カム機構の他側のカム部材が、回り止め部材によりデフケースに相対回転不能にされると共に回転軸方向に移動可能にされていることを特徴とする。
【0025】したがって、請求項5の発明と同等の作用・効果が得られると共に、回り止め部材を用いることにより、省スペースの構成が可能となる。
【0026】請求項7に記載の発明は、請求項5または請求項6に記載のディファレンシャル装置であって、前記カム機構は、前記スラストブロックの回動に伴い弾性部材を押圧して前記差動制限機構に予圧力を与えることを特徴とする。
【0027】したがって、請求項5または請求項6の発明と同等の作用・効果が得られると共に、例えば皿ばねなどの使用により省スペースの構成が可能となる。
【0028】請求項8に記載の発明は、請求項5〜請求項7のいずれかに記載のディファレンシャル装置であって、前記カム機構の両カム部材が前記回転軸心に対して対称の部位で互いにカム係合することを特徴とする。
【0029】したがって、請求項5〜請求項7のいずれかの発明と同等の作用・効果が得られると共に、カム機構は均等に弾性部材を押圧するので、安定した予圧作用が得られる。
【0030】請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8のいずれかに記載のディファレンシャル装置であって、前記デフケースにその回転軸に直交する方向に支持され該デフケースと一体に回転するピニオンシャフトを備え、前記調整式予圧機構が、前記ピニオンシャフトの前記回転軸側端部に該回転軸の方向に延びて設けられた中空のボス部内に配置されていることを特徴とする。
【0031】したがって、請求項1〜請求項8のいずれかの発明と同等の作用・効果が得られると共に、調整式予圧機構がピニオンシャフトのボス部内に配置されているので、調整式予圧機構およびディファレンシャル装置がコンパクト化される。
【0032】
【発明の実施の形態】[第1実施形態]本発明の第1実施形態を図1〜図4により説明する。図1は本実施形態の断面図である。図2および図3は共に要部の斜視図である。図4は図3のA−A矢視図である。
【0033】図1に示すように、このディファレンシャル装置1はベベルギヤ式ディファレンシャル装置である。デフケース3は、その左右端の中空ボス部3a,3bにて図外のデフキャリア内に回転可能に支持されている。デフキャリア内には所定量のオイルが充填されている。
【0034】デフケース3のボス部3a,3b内周には螺旋状のオイル溝3cが形成され、オイルはこのオイル溝3c、さらにオイル溝3cに連通している油路3d,3fを通り、およびデフケース3の各開口3g,3h,3jを通ってデフケース3内に流出入して、差動機構5の各部を潤滑する。
【0035】図示のように、デフケース3はケース本体7とカバー9とがボルト11により結合されてなる。デフケース3には図示省略のリンクギヤが固定され、エンジンからの駆動力はこのリンクギヤを介してデフケース3に入力される。デフケース3のケース本体7の内周に軸方向に延びて形成された溝7aにはピニオンシャフト13の外端部が係合され、この係合によりピニオンシャフト13はデフケース3と一体に回転する。
【0036】ピニオンシャフト13上にはピニオンギヤ15が回転可能に支持されている。ピニオンギヤ15は、ピニオンシャフト13を挟んで軸方向に対向配置された左右の出力側サイドギヤ17,19と噛み合っている。
【0037】ピニオンギヤ15の背面にはリング状の左右一対のプレッシャリング21,23が配置され、サイドギヤ17,19との噛み合いによりピニオンギヤ15が受けるスラスト力を受けると共に、互いの対向部にそれぞれ形成されたカム21a,23aがピニオンシャフト13外端部のカム13a,13aとカム係合している。なお、プレッシャリング21,23の外周部も、ピニオンシャフト13と同じくデフケース3の軸方向の溝7aに係合され、デフケース3と一体に回転する。
【0038】各サイドギヤ17,19の中空穴には図示しない左右の車軸がスプライン連結される。そして、デフケース3と各サイドギヤ17,19の中空軸部17a,19aとの間に差動制限機構としての多板クラッチ25,25がそれぞれ配置されている。各多板クラッチ25は、後述する調整式予圧機構27から常時予圧力を受けている。予圧力は弱、中、強の3段階に調整可能である。
【0039】上記の調整式予圧機構27は、カム機構28を備え、つぎのように構成されている。
【0040】ピニオンシャフト13の、デフケース3の回転軸心側端には回転軸に沿って延びる中空のボス部13bが形成されている。このボス部13b内に予圧機構27が配置されている。また、予圧機構27の回転軸方向の両端は、左右のサイドギヤ17,19の対向面に当接している。
【0041】ボス部13bの各端部と各サイドギヤ17,19とに挟まれて、それぞれリング状のプレッシャプレート31,31が配置されている。各プレッシャプレート31は、後述する皿ばね33(弾性部材)の付勢力に押圧されて、その外周フランジの外側面が、上述のように各サイドギヤ17,19の対向面に当接して回転する。
【0042】一方、外周フランジの内側面はピニオンシャフト13のボス部13bの端面とはすきまを有している。また、各プレッシャプレート31はピニオンシャフト13のボス部13bの内周とも緩く嵌合している。こうして、各プレッシャプレート31はピニオンシャフト13に対して無理なく相対回転可能である。
【0043】図2、図3は、予圧機構27の一部の構成部材の詳細形状を示す分解斜視図である。図2は一部の構成部材のうち、予圧力調整時に回動する部材を示し、図2の左右関係は図1と同じである。一方、図3は調整時に回動しない部材を追加して図示し、詳細形状の説明上、左右関係は図1とは逆に示す。
【0044】図1、図2に示すように予圧機構27の軸心部には、軸方向に2分割されたブロックハーフ35,37(複数部材)が、その軸部を対向して配置されている。両軸部は端部に設けられた凹溝35a,37aに係合した矩形板状のキープレート39(連結部。図2、図3参照)を挟んで突き合わされ、軸心穴に装着されたスプリングピン41(一体化手段、軸状部材)により一体化され、スラストブロック43を構成している。スラストブロック43は、両外側端部に六角形の頭部35b,37b(回動操作用形状部)を有している。
【0045】この六角形の各頭部35b,37bは、各サイドギヤ17,19の中空穴部に臨んでいるので、例えば、頭部35b,37bに係合するソケットレンチを中空穴部から差し込んで回動操作することが可能である。
【0046】キープレート39には、セッティングプレート45(一側のカム部材)内周のキー溝45aが嵌合され、さらに、セッティングプレート45の外円周は、ピニオンシャフト13の中空ボス部13bの内周に緩く嵌合されている。こうして、セッティングプレート45はキープレート39を介してスラストブロック43と一体的に回動可能である。
【0047】スラストブロック43両端の各頭部35b,37bの首下には、上述のプレッシャプレート31の軸心部が軸方向のガタを有して配置されている。このガタ量は、図1に示すように、両端のプレッシャプレート31,31がサイドギヤ17,19の対向面に当接した状態下で維持されている。
【0048】図1、図2に示すように、セッティングプレート45の右側面(図3では左側面)には、円周を2分する直径上に凸カム45bが2個設けられている。そして、この右側面に対向してカムプレート49(他側のカム部材)のカム面が配置されている。カムプレート49の円形外周には周方向等分2カ所に断面半円形の軸方向の溝49aが設けられている。
【0049】そして、この溝49aと、この溝49aに対応するピニオンシャフト13の中空ボス部13bに設けられた軸方向溝とにまたがって回り止めピン51(回り止め部材。図1参照)が係合している。これによりカムプレート49は中空ボス部13bに回り止めされると共に、軸方向には移動可能にされている。
【0050】なお、カムプレート49の回り止め部材としては、上記のピン51の代わりにキーまたはスプラインを用いる構成にしてもよい。
【0051】図3に示すように、カムプレート49のカム面には放射状に3個一組のカム溝53が周方向等分に二組形成されている。そして、図4に示すように、各組のカム溝53は溝深さの浅い溝53a、中の溝53b、深い溝53cの順に配置されている。上記セッティングプレート45の回動に伴い、その凸カム45bはカム溝53のそれぞれの溝53a,53b,53cに順に係合する。
【0052】これに伴い、セッティングプレート45の凸カム45bがカムプレート49を図1の右方へ移動させる量が変化する。このとき、軸心に対して対称に配置された2個の凸カム45bがカムプレート49を平均的に押圧するので、皿ばねは周方向に均等に押圧される。
【0053】カムプレート49の背面(図1における右側面)と右のプレッシャプレート31との間に複数の皿ばね33が配置されている。セッティングプレート45の凸カム45bがカムプレート49の浅いカム溝53aに係合しているときに皿ばね33の撓み量は最大となり、クラッチ25の予圧力が最大となる。予圧力は左右のプレッシャリング21,23を介して左右のクラッチを押圧し、締結させる。
【0054】左のプレッシャプレート31とこれに隣接するセッティングプレート45との間にシム47が配置されている。セッティングプレート45の凸カム45bが、カムプレート49のカム溝53の浅い溝53aに係合したときに、両端のプレッシャプレート31,31に所定の予圧力が設定されるように、このシム47の厚さが選定される。
【0055】なお、予圧力を与える上記皿ばね33は、皿ばねに限定されずにコイルばねなどを用いてもよい。
【0056】つぎに、このディファレンシャル装置1の作用と予圧力の調整方法について説明する。
【0057】左右の出力軸間に駆動抵抗差がないときには差動機構5はデフケース3と共に一体的に回転する。このとき、差動制限用の各クラッチ25は、予圧機構27により押圧力(予圧力)を常時受けて締結されている。これに加えて、クラッチ25は、ピニオンシャフト13とプレッシャリング21,23とのカム係合による押圧力をプレッシャリング21,23から受けると共に、ピニオンギヤ15との噛み合いによりサイドギヤ17,19が受けるスラスト力をもプレッシャリング21,23を介して受けている。
【0058】左右の出力軸間に駆動抵抗差が生じると、差動機構5により左右の出力軸は差動回転を許容されるが、同時にクラッチ25の上記締結力がその差動を制限するように作用する。
【0059】車載状態にあるディファレンシャル装置1のクラッチ25の予圧力を調整するに当たっては、サイドギヤ17,19に連結されている左右いずれか一側(どちら側でもよい)の車軸を引き抜いて行う。車軸を引き抜くと、軸心部に配置されているスラストブロック43の六角形の頭部35b,37bを視認することができる。そこで、サイドギヤ17,19の中空穴から六角形のソケットレンチを挿入して、スラストブロック43を回す。
【0060】このとき、キープレート39を介してセッティングプレート45がスラストブロック43と一体に回って、その凸カム45bをカムプレート49の浅い溝53a、中の溝53b、深い溝53cのうちのいずれか所望の溝に係合させることにより、予圧力が変更設定される。
【0061】例えば、差動制限力の効きを強くしたい場合には,凸カム45bをカムプレート49の浅い溝53aに係合させることにより、予め定められた大きな予圧力に設定でき、所望の操縦性・安定性が得られる。
【0062】そして、予圧力の変更設定後のデフケース3の回転時には、カムプレート49はデフケース3と一体に回転し、セッティングプレート45はピニオンシャフト13の中空ボス部13bと緩く嵌合しているので、カム係合が外れることはない。
【0063】こうして、本実施形態によれば、スラストブロック43の六角形の頭部35b,37bが左右それぞれのサイドギヤ17,19側に設けられているので、予圧力の調整作業が左右いずれの側からも実施可能となり、調整式予圧機構27を備えるディファレンシャル装置1の適用の自由度が向上する。
【0064】また、前記従来例と異なり、皿ばね33の配置スペースが拡大されるので、予圧力を大きく設定することが可能となる。
【0065】さらに、皿ばねが、セッティングプレート45の2個の凸カム45bにより偏りなく押圧されるので、安定した予圧作用が得られる。
【0066】なお、この第1実施形態ではベベルギヤ式ディファレンシャル装置に適用した構造を示したが、平行軸式のディファレンシャル装置にこの機構を用いてもよい。
【0067】[第2実施形態]本発明の第2実施形態を図5、図6により説明する。図5は本実施形態の断面図である。図6は要部の説明図である。
【0068】図5に示すように、このディファレンシャル装置101は平行軸式のディファレンシャル装置である。デフケース103は、その左右端の中空ボス部103a,103bにて図外のデフキャリア内に回転可能に支持されている。デフキャリア内には所定量のオイルが充填されている。
【0069】デフケース103のボス部103a,103b内周には、螺旋状のオイル溝103cが形成され(ボス部103b側のオイル溝103cは図示省略)、オイルはこのオイル溝103c、さらにオイル溝103cに連通している油路103dを通り、およびデフケース103の各開口103e,103fを通ってデフケース103内に流出入して、差動機構105の各部を潤滑する。
【0070】図示のように、デフケース103はケース本体107とカバー109とがボルト111により結合されてなる。デフケース103には図示省略のリンクギヤが固定され、エンジンからの駆動力はこのリンクギヤを介してデフケース103に入力される。
【0071】差動機構105および差動制限機構113はつぎのように構成されている。
【0072】すなわち、デフケース103の内部に同軸に左右一対のサイドギヤ115,117が対向して配置されている。各サイドギヤ115,117の外側端とデフケース103との間にスラストワッシャ119が配置されている。各サイドギヤ115,117の中空穴121,123に図示しない各出力軸がスプライン連結される。
【0073】また、サイドギヤ115,117の周囲のデフケース103には回転軸に平行に長短一対のピニオンギヤ収納穴125,127が周方向に複数対設けられ、長短のピニオンギヤ131,133がそれぞれ収納されている。こうして、長短のピニオンギヤ131,133はデフケース103と一体に公転する。
【0074】長いピニオンギヤ131は、小径の軸部131cを挟んで端部に第1と第2のギヤ部131a,131bを有し、第1のギヤ部131aは右のサイドギヤ117と噛み合い、第2のギヤ部131bは短いピニオンギヤ133と噛み合っている。
【0075】一方、短いピニオンギヤ133は、右端部133aが左のサイドギヤ115と噛み合い、左端部133bが長いピニオンギヤ131の第2のギヤ部131bと噛み合っている。こうして、左右のサイドギヤ115,117はピニオンギヤ131,133を介して連結されている。各ギヤはスパーギヤである。
【0076】調整式予圧機構135は、カム機構136を備え、つぎのように構成されている。
【0077】図5に示すように、左右のサイドギヤ115,117の対向端の凹部115a,117aにスラストブロック137がゆるく嵌合し、配置されている。スラストブロック137は軸方向に移動可能で、かつ回転可能である。そして、スラストブロック137の外周にフランジ部137aが一体に設けられ、フランジ部137aの左側面には円周を2等分して回転軸に対称に2カ所に凸カム137bが設けられている。フランジ部137aの右側面は右のサイドギヤ117の対向端面に摺接可能に当接している。
【0078】また、図6はカム機構136部の説明図である。図6に示すように、スラストブロック137の軸心に六角穴(回動操作用形状部)137cが貫通して設けられている。なお、六角穴137cの代わりにレンチに適合する形状の突起であってもよい。
【0079】図5、図6示のように、スラストブロック137のフランジ部137aの凸カム137bに対向して円板状のカムプレート141が配置されている。カムプレート141の対向面には、放射状に3個一組のカム溝143が周方向等分に二組形成されている。そして、上記図4と同様に、各組のカム溝143は溝深さの浅い溝143a、中の溝143b、深い溝143cの順に配置されている。フランジ部137aの凸カム137bの回動に伴い、凸カム137bはカム溝143のそれぞれの深さの溝143a,143b,143cに順に係合する。
【0080】カムプレート141の外周には円周を2等分して回転軸に対称に2カ所に半円形の凹溝141aが軸方向に形成され、この凹溝141aに径方向外方から対応する半円形の凹溝103gがデフケース103に形成され、両凹溝141a,103gに跨って回り止めピン145が嵌合配置されている。これによりカムプレート141は軸方向に移動可能で、回転方向にはデフケース103と一体に回転する。
【0081】カムプレート141の左方に隣接して皿ばね147(弾性部材)とワッシャ151がこの順に配置されている。ワッシャ151は左のサイドギヤ115の対向端面に摺接可能に当接している。フランジ部137aの凸カム137bが係合するカム溝143が変わると皿ばね147の撓み量が変わるので、両サイドギヤ115,117を軸方向外方へ押圧する予圧力が変わる。
【0082】つぎに、このディファレンシャル装置101の作用と予圧力の調整方法について説明する。
【0083】左右の出力軸間に駆動抵抗差がないときには、差動機構105はデフケース103と共に一体的に回転する。このとき、左右のサイドギヤ115,117は予圧機構135により軸方向の押圧力(予圧力)を常時受けて、デフケース103と一体的に回転する。
【0084】左右の出力軸間(サイドギヤ115,117間)に駆動抵抗差が生じると、差動機構105により左右のサイドギヤ115,117は差動回転を許容されて相互に相対回転すると共に、デフケース103との間にも相対回転が生じる。
【0085】同時に右のサイドギヤ117は、デフケース103と一体に回転するカムプレート141およびこれとカム係合して一体に回転するスラストブロック137のフランジ部137aから摺動摩擦抵抗を受けると共に、スラストワッシャ119から摩擦抵抗を受けて回転する。
【0086】また、左のサイドギヤ115は、皿ばね147により押圧されるワッシャ151から摺動摩擦抵抗を受けると共に、スラストワッシャ119を介しての摩擦抵抗を受けて回転する。
【0087】一方、サイドギヤ115,117と噛み合いつつ収納穴125,127内で自転する各ピニオンギヤ131,133は上記摩擦抵抗分が付加された各サイドギヤ115,117の噛み合い反力を受けて収納穴125,127に押しつけられて自転し、収納穴125,127との摩擦抵抗が差動(自転)を制限するように作用する。
【0088】車載状態にあるディファレンシャル装置101の予圧力を調整するに当たっては、サイドギヤ115,117に連結されている左右いずれか一側(どちら側でもよい)の車軸を引き抜いて行う。車軸を引き抜くと、軸心部に配置されているスラストブロック137の六角穴137cを視認することができる。そこで、サイドギヤ115,117の中空穴121,123から六角形のソケットレンチを挿入して、スラストブロック137を回す。
【0089】このとき、スラストブロック137の凸カム137bをカムプレート141の浅い溝143a、中の溝143b、深い溝143cのうちのいずれか所望の溝に係合させることにより、予圧力が変更設定される。カムプレート141の浅い溝143aに係合させると、皿ばね147の撓みが最大となり、予圧力が最大に設定される。
【0090】例えば、差動制限力の効きを強くしたい場合には,凸カム137bをカムプレート141の浅い溝143aに係合させることにより、予め定められた大きな予圧力に設定でき、所望の操縦性・安定性が得られる。
【0091】こうして、本実施形態によれば、スラストブロック137の六角穴137cが貫通して設けられているので、予圧力の調整作業が左右いずれのサイドギヤ側からも実施可能となり、調整式予圧機構135を備えるディファレンシャル装置101の各車種への適用の自由度が向上する。
【0092】また、スラストブロック137が予圧力を変更設定するカム機構の一側である凸カム137bを一体に備えているので、部品点数が削減されてコストが低減されると共に、レンチの回動操作により凸カム137bの回動を確実に行うことができる。
【0093】また、図5示のように、調整式予圧機構135の構成を大幅に簡素化することが可能となる。
【0094】さらに、皿ばね147が、スラストブロック137の2個の凸カム137bにより偏りなく押圧されるので、安定した予圧作用が得られる。
【0095】また、スラストブロック137が両出力軸の内方への移動を止めるストッパの機能を兼ねるので、その分コストが低減される。
【0096】なお、この第2実施形態では、平行軸式のディファレンシャル装置に予圧力を変更設定するカム機構の一側のカム部材を一体に備えたスラストブロックを用いた例を示したが、前述の第1実施形態同様、ベベルギヤ式ディファレンシャル装置に用いても良いことはもちろんである。
【0097】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、請求項1に記載の発明によれば、予圧力の調整操作に当たっては、一対の出力側サイドギヤのいずれの側からも調整操作が可能であるので、前記従来例と異なり、引き抜き可能の出力軸がいずれかのサイドギヤ側に限定される車両であっても、それにより制約されることなく、このディファレンシャル装置を搭載可能で、適用の自由度が拡大される。
【0098】請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明と同等の効果が得られると共に、引き抜き可能な出力軸側のサイドギヤの中空穴から調整操作ができるので、調整操作が容易である。
【0099】請求項3に記載の発明によれば、請求項2の発明と同等の効果が得られると共に、スラストブロックの端部に、例えば回動操作用工具を係合させて調整操作を行えるので、調整操作が一層容易になる。
【0100】また、スラストブロックが両出力軸の内方への移動を止めるストッパの機能を兼ねるので、その分コストが低減される。
【0101】請求項4に記載の発明によれば、請求項3の発明と同等の効果が得られると共に、例えばスラストブロックを組立の都合から2分割する構成を採っても、ピンなどの軸状部材によって連結されるので、構成が簡素化され、コストが低減される。
【0102】請求項5に記載の発明によれば、請求項4の発明と同等の効果が得られると共に、2分割式のスラストブロックであるので、例えば連結部の形状設定や配置部位の選定などが容易になり、設計上の自由度が向上する。
【0103】請求項6に記載の発明によれば、請求項5の発明と同等の効果が得られると共に、回り止め部材を用いることにより、省スペースの構成が可能となる。
【0104】請求項7に記載の発明によれば、請求項5または請求項6の発明と同等の効果が得られると共に、例えば皿ばねなどの使用により省スペースの構成が可能となる。
【0105】請求項8に記載の発明によれば、請求項5〜請求項7のいずれかの発明と同等の効果が得られると共に、カム機構は均等に弾性部材を押圧するので、安定した予圧作用が得られる。
【0106】請求項9に記載の発明によれば、請求項1〜請求項8のいずれかの発明と同等の効果が得られると共に、調整式予圧機構がピニオンシャフトのボス部内に配置されているので、調整式予圧機構およびディファレンシャル装置がコンパクト化される。
【出願人】 【識別番号】000225050
【氏名又は名称】栃木富士産業株式会社
【出願日】 平成11年11月10日(1999.11.10)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和 (外8名)
【公開番号】 特開2001−141031(P2001−141031A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−319671