| 【発明の名称】 |
トルクコンバータのロックアップクラッチ |
| 【発明者】 |
【氏名】吉本 篤司
【氏名】井上 公司
|
| 【要約】 |
【課題】特別な制御を要しない上,構成が簡単な,トルクコンバータのロックアップクラッチを提供する。
【解決手段】ポンプ延長部50bと,それに結合されてポンプ延長部50b内に,ポンプ及びタービン羽根車50,51間に連通する油圧室76を画成する受圧板70と,この受圧板70に進退可能に対置される加圧板71と,受圧板70及び加圧板71間に介裝されると共にタービン羽根車51に連結される摩擦クラッチ板72と,加圧板71を後退方向に付勢する戻しばね73と,摩擦クラッチ板72の内周側で受圧板70の内外を連通する逃がし孔77とよりなり,ポンプ羽根車50の回転数が所定値以上になると,油圧室76内の遠心油圧により加圧板71が受圧板70と協働して摩擦クラッチ板72を挟圧するようにした。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トルクコンバータ(T)のポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)を相互に直結する,トルクコンバータのロックアップクラッチにおいて,ポンプ羽根車(50)に連設されてタービン羽根車(51)を囲繞するポンプ延長部(50b)と,このポンプ延長部(50b)に連設されて,ポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)間の油室に連通する油圧室(76)を該ポンプ延長部(50b)内に画成する受圧板(70)と,この受圧板(70)に進退可能に対置される加圧板(71)と,受圧板(70)及び加圧板(71)間に介裝されると共にタービン羽根車(51)に連結される環状の摩擦クラッチ板(72)と,加圧板(71)を受圧板(70)に対して後退させる方向に付勢する戻しばね(73)と,摩擦クラッチ板(72)の内周側で受圧板(70)の内外を連通する逃がし孔(77)とよりなり,ポンプ羽根車(50)の回転数が所定値以上になると,それに応じて上昇する油圧室(76)内の遠心油圧により加圧板(71)が受圧板(70)と協働して摩擦クラッチ板(72)を挟圧するようにしたことを特徴とする,トルクコンバータのロックアップクラッチ。 【請求項2】 トルクコンバータ(T)のポンプ羽根車(50)及びタービン羽根車(51)を相互に直結する,トルクコンバータのロックアップクラッチにおいて,タービン羽根車(51)に連結したクラッチシリンダ(81)と,このクラッチシリンダ(81)のシリンダ孔(81a)に摺動可能に嵌装されて油圧室(83)を画成する加圧ピストン(82)と,この加圧ピストン(82)を油圧室(83)側へ付勢するピストン戻しばね(89)と,トルクコンバータ(T)から流出したオイルを油圧室(83)に導入する手段(92)と,クラッチシリンダ(81)及びポンプ羽根車(50)間に設けられる摩擦係合手段(85,86)とよりなり,タービン羽根車(51)の回転数が所定値以上になると,それに応じて上昇する油圧室(83)内の遠心油圧により加圧ピストン(82)が摩擦係合手段(85,86)を作動してクラッチシリンダ(81)及びポンプ羽根車(50)間を連結するようにしたことを特徴とする,トルクコンバータのロックアップクラッチ。 【請求項3】 請求項2記載のトルクコンバータのロックアップクラッチにおいて,クラッチシリンダ(81)に,油圧室(83)の外周側を外部に開放する逃がし孔(93)と,クラッチシリンダ(81)の回転数が所定値未満のときこの逃がし孔(93)を開き,所定値以上のときこの逃がし孔(93)を閉じる遠心弁(95)とを設けたことを特徴とする,トルクコンバータのロックアップクラッチ。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は,トルクコンバータのポンプ羽根車及びタービン羽根車を相互に直結する,トルクコンバータのロックアップクラッチに関する。 【0002】 【従来の技術】従来,トルクコンバータにおいて,増幅機能が殆ど無くなる運転状態となったとき,自動的にロックアップクラッチをオン状態にしてポンプ羽根車及びタービン羽根車間を機械的に直結させ,その両羽根車間の滑り損失をなくすることが広く行われている。またロックアップクラッチを自動的にオン状態にするものとして,ポンプ羽根車に連なる駆動板に遠心重錘を取付け,ポンプ羽根車の回転数が所定値以上になったとき,遠心重錘の遠心力をもってロックアップクラッチの摩擦係合部を係合させるようにした遠心重錘式が知られている(例えば特開昭60−18659号公報参照)。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで,遠心重錘式のロックアップクラッチは,これを作動させるための特別な制御を要しない反面,機械的な構成が複雑となり,コスト高となる欠点がある。 【0004】本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,特別な制御を要しない上,構成が簡単な,前記トルクコンバータのロックアップクラッチを提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために,本発明は,トルクコンバータのポンプ羽根車及びタービン羽根車を相互に直結する,トルクコンバータのロックアップクラッチにおいて,ポンプ羽根車に連設されてタービン羽根車を囲繞するポンプ延長部と,このポンプ延長部に連設されて,ポンプ羽根車及びタービン羽根車間の油室に連通する油圧室を該ポンプ延長部内に画成する受圧板と,この受圧板に進退可能に対置される加圧板と,受圧板及び加圧板間に介裝されると共にタービン羽根車に連結される環状の摩擦クラッチ板と,加圧板を受圧板に対して後退させる方向に付勢する戻しばねと,摩擦クラッチ板の内周側で受圧板の内外を連通する逃がし孔とよりなり,ポンプ羽根車の回転数が所定値以上になると,それに応じて上昇する油圧室内の遠心油圧により加圧板が受圧板と協働して摩擦クラッチ板を挟圧するようにしたことを第1の特徴とする。 【0006】この第1の特徴によれば,ロックアップクラッチの油圧室にトルクコンバータのオイルが満たされ,ポンプ羽根車の回転数が所定値以上になると,そのオイルの遠心油圧により加圧ピストンが加圧板が受圧板と協働して摩擦クラッチ板を挟圧して,クラッチシリンダ及びポンプ羽根車間を連結するので,ポンプ回転数依存型のロックアップクラッチを得ることができ,それは遠心重錘を使用したものに比して構成が簡単であり,また特別な制御手段も不要であり,しかも使用するオイルはトルクコンバータの作動オイルであるから,専用のオイルポンプも不要であり,安価に提供することができる。 【0007】また本発明は,トルクコンバータのポンプ羽根車及びタービン羽根車を相互に直結する,トルクコンバータのロックアップクラッチにおいて,タービン羽根車に連結したクラッチシリンダと,このクラッチシリンダのシリンダ孔に摺動可能に嵌装されて油圧室を画成する加圧ピストンと,この加圧ピストンを油圧室側へ付勢するピストン戻しばねと,トルクコンバータから流出したオイルを油圧室に導入する手段と,クラッチシリンダ及びポンプ羽根車間に設けられる摩擦係合手段とよりなり,タービン羽根車の回転数が所定値以上になると,それに応じて上昇する油圧室内の遠心油圧により加圧ピストンが摩擦係合手段を作動してクラッチシリンダ及びポンプ羽根車間を連結するようにしたことを第2の特徴とする。 【0008】前記オイル油圧室に導入する手段は,後述する本発明の実施例中の入口孔92に対応し,前記摩擦係合手段は,後述する本発明の実施例中の駆動及び被動摩擦クラッチ板85,86に対応する。 【0009】この第2の特徴によれば,ロックアップクラッチの油圧室にトルクコンバータからの流出オイルが満たされ,タービン羽根車の回転数が所定値以上になると,そのオイルの遠心油圧により加圧ピストンが加圧板が摩擦係合手段を作動して,クラッチシリンダ及びポンプ羽根車間を連結するので,タービン回転数依存型のロックアップクラッチを得ることができ,それも遠心重錘を使用したものに比して構成が簡単であり,また特別な制御手段も不要であり,しかも使用するオイルはトルクコンバータの作動オイルであるから,専用のオイルポンプも不要であり,安価に提供することができる。 【0010】さらに本発明は,第2の特徴に加えて,クラッチシリンダに,油圧室の外周側を外部に開放する逃がし孔と,クラッチシリンダの回転数が所定値未満のときこの逃がし孔を開き,所定値以上のときこの逃がし孔を閉じる遠心弁とを設けたことを第3の特徴とする。 【0011】この第3の特徴によれば,クラッチシリンダの所定回転数未満では,遠心弁の開弁により油圧室の残圧を逃がし孔から速やかに解放してロックアップクラッチのオフ性能を高めると共に,油圧室内の切粉等の異物をもオイルと共に逃がし孔から排出することができ,また所定回転数以上では,遠心弁の閉弁により油圧室の昇圧を可能にし,ロックアップクラッチの作動に支障を来すことがない。 【0012】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。 【0013】図1は本発明の第1実施例を示す自動二輪車用パワーユニットの縦断平面図,図2は上記パワーユニットの伝動装置の拡大縦断面図,図3は本発明の第2実施例を示す,図2に対応した断面図である。 【0014】先ず,図1及び図2に示す本発明の第1実施例の説明から始める。図1において,自動二輪車用パワーユニットPは,エンジンE及び多段変速機Mを一体化して構成される。そのエンジンEは,従来普通のように,クランクケース1に左右一対のボールベアリング3,3′を介して支承されるクランク軸2と,シリンダブロック5のシリンダボア5aに摺動自在に嵌装されてコンロッド6を介してクランク軸2に連接されるピストン7とを備えると共に,クランク軸2を自動二輪車の左右方向へ向けて配置される。 【0015】クランクケース1にはミッションケース8が一体に連設されており,このミッションケース8の左右両側壁により多段変速機Mの,クランク軸2と平行に配置された入力軸10及び出力軸11がそれぞれボールベアリング12,12′;13,13′を介して支承され,これら入力軸10及び出力軸11にわたり,図1で左側から第1速ギヤ列G1,第2速ギヤ列G2,第3速ギヤ列G3及び第4速ギヤ列G4が順次配設される。そして第2速ギヤ列G2の被動ギヤG2b,及び第3速ギヤ列G3の駆動ギヤG3aがシフトギヤを兼ねており,両シフトギヤG2b,G3aが共に中立位置にあるときは,変速機Mはニュートラル状態にあり,シフトギヤG2bが図1で左動又は右動すると第1速ギヤ列G1又は第3速ギヤ列G3が確立し,シフトギヤG3aが左動又は右動すると,第2速ギヤ列G2又は第4速ギヤ列G4が確立するようになっている。上記シフトギヤG2b,G3aは,図示しない公知のペダル式その他のマニュアル式チェンジ装置により作動される。 【0016】前記クランク軸2の右端と変速機Mの入力軸10の右端とは,クランクケース1及びミッションケース8外で互いに直列関係に接続される変速クラッチCc,トルクコンバータT及び1次減速装置14を介して相互に連結される。その際,特に,変速クラッチCc,トルクコンバータT及び1次減速装置14の駆動ギヤ14aはクランク軸2上に,クランクケース1の右側壁側から外方に向かって駆動ギヤ14a,トルクコンバータT及び変速クラッチCcの順で取付けられる。そしてこれらを覆う右サイドカバー15aがクランクケース1及びミッションケース8の右端面に接合される。 【0017】またクランク軸2の左端には,発電機16のロータ17が固着され,それのステータ18は,発電機16を覆ってクランクケース1の左端面に接合される左サイドカバー15bに取付けられる。 【0018】変速機Mの出力軸11の左端には,ミッションケース8外で,自動二輪車の後輪(図示せず)を駆動するチェーン式の最終減速装置19が連結される。 【0019】図2において,変速クラッチCcは,一端に端壁20aを,また中心部にクランク軸2にスプライン結合されるボス20bを有する円筒状のクラッチケーシング20と,このクラッチケーシング20内にあって上記ボス20bの外周に摺動自在にスプライン嵌合される加圧板21と,クラッチケーシング20の開放端部に油密に固着される受圧板22と,上記加圧板21及び受圧板22の間に介裝される環状の摩擦クラッチ板23とを備え,その摩擦クラッチ板23の内周に後述するポンプ羽根車50の伝動板24がスプライン係合される。 【0020】加圧板21は,クラッチケーシング20の端壁20a及び周壁との間に油圧室25を画成する。この油圧室25は,クラッチケーシング20のボス20bに設けられる入口弁26を介してクランク軸2の前記第1流入孔43aに接続されると共に,端壁20aの外周部に設けられる出口弁28を介してクラッチケーシング20外に開放されるようになっている。 【0021】ボス20bには,クランク軸2と平行に延びる複数個の弁孔29と,各弁孔29を経て前記第1流入孔43aから油圧室25に至る複数本の通孔30とが穿設されており,各弁孔29に,スプール弁からなる入口弁26が摺動可能に嵌合される。そして,これら入口弁26が図2で右動位置(同図上側の入口弁26参照)を占めると通孔30を開通し,左動位置(同図下側の入口弁26参照)を占めると通孔30を閉鎖するようになっている。尚,ボス20bの通孔30とクランク軸2の第1流入孔43aとの連通を確実にするために,クランク軸2及びボス20bの互いに嵌合するスプライン部の一部の歯を切除することが効果的である。 【0022】またクラッチケーシング20の端壁20aの外周部には,その周方向等間隔置きに複数個の出口孔32が穿設され,これら出口孔32を油圧室25側で開閉し得る,リード弁からなる出口弁28の一端が端壁20aにかしめ結合される。 【0023】端壁20aには,さらに,各出口孔32に連通するガイドカラー33が固着されており,各ガイドカラー33に開弁棒31が摺動可能に嵌合される。この開弁棒31は,ガイドカラー33内でのオイルの流れを可能にする軸方向溝を外周面に有しており,図2で右動位置(同図上側の開弁棒31参照)を占めると出口弁28の自己の弾性力による出口孔32に対する閉鎖を許容し,左動位置(同図下側の開弁棒31参照)を占めると出口弁28を油圧室25内方へ撓ませて出口孔32を開放するようになっている。 【0024】上記入口弁26及開弁棒31の外端には,共通の弁作動板34が連結される。この弁作動板34は,クラッチケーシング20のボス20bに図2で左右方向摺動可能に支承されるもので,その右動位置を規定するストッパ環35がボス20bに係止され,このストッパ環35に向けて弁作動板34を付勢する戻しばね36がクラッチケーシング20及び弁作動板34間に縮設される。 【0025】弁作動板34には,ボス20bを同心上で囲繞するレリーズベアリング37を介して押圧環38が装着され,この押圧環38の外端面に変速クラッチ操作カム軸39に固設されたアーム39aが係合し,変速クラッチ操作カム軸39を往復回動することにより,戻しばね36と協働して,弁作動板34を入口弁26及び開弁棒31と共に左右動させ得るようになっている。 【0026】変速クラッチ操作カム軸39には,これをエンジンEのアイドリング時や変速機Mの変速操作時に回動させる電動式又は電磁式のクラッチアクチュエータ(図示せず)が連結される。 【0027】而して,エンジンEの通常運転状態では,弁作動板34が戻しばね36の付勢力により後退位置,即ち図2で右動位置(同図上側の弁作動板34参照)に保持されて,入口弁26を開弁すると共に,出口弁28の閉弁を許容する。したがって,オイルポンプ44から圧送されたオイルが上流供給油路27aから第1流入孔43a及び通孔30を経てクラッチケーシング20内の油圧室25に供給されて該室25を満たすことになる。 【0028】クラッチケーシング20はクランク軸2と共に回転しているから,クラッチケーシング20の油圧室25のオイルは遠心力を受けて油圧を発生し,その油圧をもって加圧板21が摩擦クラッチ板23を受圧板22に対して押圧することにより,加圧板21,受圧板22及び摩擦クラッチ板23の三者は摩擦係合される。即ち変速クラッチCcはオン状態となって,クランク軸2の出力トルクを摩擦クラッチ板23からトルクコンバータTに伝達する。 【0029】一方,エンジンEのアイドリング時又は変速機Mの変速操作時には,クラッチアクチュエータにより変速クラッチ操作カム軸39を回動し,弁作動板34を図2で左動位置(同図下側の弁作動板34参照)へ移動し,これにより入口弁26を閉弁すると共に出口弁28を開弁する。その結果,上流供給油路27aから油圧室25へのオイル供給が遮断されると共に,油圧室25のオイルが出口孔32からクラッチケーシング20外に排出されて油圧室25の油圧を低下させ,加圧板21の摩擦クラッチ板23に対する押圧力が激減するため,加圧板21,受圧板22及び摩擦クラッチ板23の三者の摩擦係合は解かれる。即ち変速クラッチCcはオフ状態となり,クランク軸2からトルクコンバータTへのトルク伝達を遮断する。クラッチケーシング20外に排出されたオイルは油溜め46に還流する。 【0030】その状態から,発進のためにエンジンEの回転が加速され,又は変速操作が完了すると,クラッチアクチュエータは直ちに非作動状態に戻り,弁作動板34を戻しばね36の付勢力で右動位置まで一気に後退させ,再び入口弁26を開弁すると共に,出口弁28を閉弁させるので,前述の作用から明らかなように変速クラッチCcは,半クラッチ状態を経ずにオフ状態からオン状態に復帰することになる。即ち,変速クラッチCcは半クラッチ領域を持たないオン・オフ型であり,そのトルク容量は,トルクコンバータTのそれより大きく設定される。 【0031】同じく図2において,トルクコンバータTは,ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52から構成される。そのポンプ羽根車50は,前記受圧板22に隣接して配置されると共に,そのボス50aがニードルベアリング53を介してクランク軸2に支承される。このポンプ羽根車50の外側面に,前記摩擦クラッチ板23の内周にスプライン係合する伝動板24が固着されている。したがって,摩擦クラッチ板23の伝動トルクは,この伝動板24を介してポンプ羽根車50に伝達される。 【0032】またクランク軸2には,ポンプ羽根車50のボス50aと,クランク軸2を支持する前記ボールベアリング3′との間に配置されるステータ軸60の右端部がニードルベアリング54を介して支承され,このステータ軸60にステータ羽根車52のボス52aが凹凸係合により連結される。ステータ軸60の左端部にはステータアーム板56が固着されており,このステータアーム板56が中間部に有する円筒部56aの外周面がボールベアリング57を介してクランクケース1に支承される。またステータアーム板56の外周部はフリーホイール58を介してクランクケース1に支持される。 【0033】ポンプ羽根車50に対向するタービン羽根車51は中心部にタービン軸59を一体に有し,その右端部はニードルベアリング61を介してステータ軸60に支承され,その左端部はステータアーム板56の円筒部56a内周面にボールベアリング62を介して支承される。このタービン軸59とクランク軸2間には,ステータ軸60の横孔63を貫通して一方向クラッチ64が設けられる。この一方向クラッチ64は,タービン軸59に逆負荷が加えられたときオン状態となって,タービン軸59及びクランク軸2間を直結するようになっている。 【0034】ポンプ羽根車50のボス50a,タービン軸59及びステータ羽根車52のボス52aの各間の間隙がトルクコンバータTの流体入口47iとされ,またタービン軸59のタービン羽根車51外側へ延びる部分にトルクコンバータTの流体出口47oが設けられ,その流体入口47iはクランク軸2の前記第2流入孔43bと連通し,流体出口47oは,ステータ軸60の横孔63を介してクランク軸2の前記流出孔45に連通する。したがって,オイルポンプ44からクランク軸2の上流供給油路27aに供給されたオイルが第2流入孔43bに入ると,流体入口47iからポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に入り,その油室及び後述するロックアップクラッチLcの油圧室76を満たした後,流体出口47oから流出孔45を経てクランク軸2の下流供給油路27bへと流れるようになっている。 【0035】タービン軸59には,1次減速装置14の駆動ギヤ14aが一体に形成され,これに噛合する被動ギヤ14bが変速機Mの入力軸10にスプライン結合される。こうして構成される1次減速装置14は,クランクケース1とトルクコンバータTとの間に配置される。 【0036】而して,クランク軸2の出力トルクがオン状態の変速クラッチCcを介してポンプ羽根車50に伝達されると,そのトルクは,トルクコンバータT内を満たしたオイルの作用によりタービン羽根車51に流体的に伝達される。このとき,両羽根車50,51間でトルクの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力はステータ羽根車52に負担され,ステータ羽根車52は,フリーホイール58のロック作用によりクランクケース1に固定的に支持される。またトルクの増幅作用が生じていなければ,ステータ羽根車52は,フリーホイール58の空転作用により空転が可能となるから,ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52の三者は,共に同方向へ回転する。 【0037】ポンプ羽根車50からタービン羽根車51に伝達されたトルクは1次減速装置14を介して変速機Mの入力軸10に伝達され,そして確立を選択された変速ギヤ列G1〜G4,出力軸11及び最終減速装置19を順次経て図示しない後輪へと伝達され,それを駆動する。 【0038】走行中のエンジンブレーキ時には,タービン軸59に逆負荷トルクが加わることにより,一方向クラッチ64がオン状態となるから,タービン軸59及びクランク軸2相互が直結され,逆負荷トルクがトルクコンバータTを経由することなくクランク軸2に伝達されることになり,良好なエンジンブレーキ効果を得ることができる。 【0039】ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間には,それらを直結状態にし得るロックアップクラッチLcが設けられる。このロックアップクラッチLcは,ポンプ羽根車50の外周部に連設されてタービン羽根車51を囲繞する円筒状のポンプ延長部50bと,タービン軸59に回転自在に支承されると共に,ポンプ延長部50bの開放端に油密に結合される受圧板70と,タービン軸59に摺動可能に支承されて,受圧板70の内面に対向配置される加圧板71と,これら加圧板71及び受圧板70間に介裝される環状の摩擦クラッチ板72と,ポンプ延長部50b及び加圧板71間に介裝されて加圧板71を受圧板70と反対方向へ付勢する皿型の戻しばね73とを備え,その摩擦クラッチ板72は,タービン羽根車51の外側面に固着された伝動板79に外周部がスプライン係合される。また受圧板70及び加圧板71は,両者一体になって回転しながら軸方向に相対摺動し得るように,相対向面に互いに係合するドグ74及び凹部75が形成される。 【0040】ポンプ延長部50bの内部は受圧板70により油圧室76に画成され,この油圧室76は,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51の対向間隙を通してそれらの内部と連通していて,オイルが満たされる。 【0041】受圧板70には,摩擦クラッチ板72の内周側を受圧板70外へ開放する逃がし孔77と,受圧板70の内周面を軸方向に延びる空気抜き溝78とが設けられる。 【0042】而して,ポンプ羽根車50の回転数が所定値未満のときは,ポンプ延長部50b内の油圧室76を満たすオイルの遠心力が小さいことから,油圧室76の油圧は上がらず,加圧板71は戻しばね73の付勢力により後退位置に戻っていて,摩擦クラッチ板72を解放しているので,ロックアップクラッチLcはオフ状態となっている。 【0043】この間,油圧室76のオイルは,受圧板70の逃がし孔77から外部に流出するが,その量は極めて少なくから,その後の油圧室76の昇圧に支障を来すものではない。 【0044】ポンプ羽根車50の回転数が所定値以上になると,それに応じて油圧室76のオイルの遠心力が増大して油圧室76を昇圧させるので,その高油圧をもって加圧板71は受圧板70に向かって前進して,受圧板70との間で摩擦クラッチ板72を挟圧し,ロックアップクラッチLcはオン状態となる。オン状態となったロックアップクラッチLcは,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間を直結状態にするので,両羽根車50,51間の滑り損失を無くし,伝動効率を高めることができる。 【0045】その際,摩擦クラッチ板72の内周側では,オイルが逃がし孔77から流出することにより昇圧が起こらないので,加圧板71の両面間に大なる圧力差が生じ,摩擦クラッチ板72に対する挟圧が効果的に行われる。 【0046】かくして,ポンプ羽根車50に連なるポンプ延長部50b内の油圧室76の遠心油圧の利用により,遠心重錘を用いることなく,ロックアップクラッチLcをポンプ回転数依存型とすることができる。したがって,特別な制御手段も不要であり,しかも使用するオイルはトルクコンバータの作動オイルであるから,専用のオイルポンプも不要であり,構成簡素なロックアップクラッチLcを安価に提供することができる。 【0047】ところで,エンジンEの運転中,オイルポンプ44から吐出されたオイルは,先ず上流供給油路27aに入り,第1流入孔43aを経て変速クラッチCcの油圧室25に入り,その作動と冷却に寄与し,また第2流入孔43bを経てポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室及びロックアップクラッチLcの油圧室76に流入して,トルクコンバータT及びロックアップクラッチLcの作動と冷却に寄与する。そして,油圧室76から流出孔45を経て下流供給油路27bへと移ったオイルは,クランクピン外周のニードルベアリング49に供給され,その潤滑に寄与し,その潤滑を終えたオイルは,クランク軸2の回転に伴い周囲に飛散してピストン7等の潤滑に供される。上記オイルポンプ44は,元来,エンジンEに潤滑用オイルを供給するものであるが,そのオイルを変速クラッチCcやトルクコンバータT,ロックアップクラッチLcのための作動オイルに利用するようにしたので,作動オイル供給のための専用オイルポンプを設ける必要がなく,構成の簡素化を図ることができる。 【0048】またクランク軸2に設けられた上流供給油路27a及び下流供給油路27bは,オリフィス48を介して直接的にも連通しているから,オイルポンプ44から上流供給油路27aに送られたオイルの一部は,トルクコンバータT等を経由せず,オリフィス48を通して下流供給油路27bへ直接移るので,オリフィス48の選定によりトルクコンバータT及びエンジンEへのオイルの分配割合を自由に設定することができる。 【0049】次に,図3に示す本発明の第2実施例について説明する。 【0050】この第2実施例は,ロックアップクラッチLc′を,タービン羽根車51の回転数依存の自動制御型に構成した点で前実施例とは異なる。即ち,このロックアップクラッチLc′は,ポンプ羽根車50のポンプ延長部50bに油密に結合されてタービン羽根車51を覆うトルクコンバータサイドカバー80の外側に配設される。トルクコンバータサイドカバー80は,タービン軸59の外周に回転自在に支承され,その内側は,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室と連通していて,その油室と同様に作動油で満たされるようになっている。 【0051】ロックアップクラッチLc′は,タービン軸59の左端部にスプライン結合されて,開放端をトルクコンバータサイドカバー80側に向けた偏平のクラッチシリンダ81と,このクラッチシリンダ81のシリンダ孔81aにシール部材88を介して摺動可能に嵌装されて,クラッチシリンダ81の端壁との間に油圧室83を画成する加圧ピストン82と,クラッチシリンダ81の内周面の開放端寄りに係止される受圧環84と,この受圧環84及び加圧ピストン82間においてクラッチシリンダ81の内周面に摺動可能にスプライン係合する複数枚(図示例では2枚)の環状の被動摩擦クラッチ板86,86と,これら被動摩擦クラッチ板86,86間に介裝されると共に,トルクコンバータサイドカバー80の外側に突設された複数の伝動爪87に内周面を軸方向摺動可能に係合する環状の駆動摩擦クラッチ板85と,これら駆動及び被動摩擦クラッチ板85,86の内周側で加圧ピストン82及びトルクコンバータサイドカバー80間に配設されて,加圧ピストン82を油圧室83側に付勢するピストン戻しばね89とから構成され,上記クラッチシリンダ81及び加圧ピストン82は,両者一体になって回転しながら軸方向に相対摺動し得るように,相対向面に互いに係合するドグ90及び凹部91が形成される。 【0052】タービン軸59には,トルクコンバータサイドカバー80の内部及びクラッチシリンダ81の油圧室83をそれぞれタービン軸59の内周側に連通する流体出口47o及び入口孔92が穿設され,これら流体出口47o及び入口孔92とタービン軸59内とを通してトルクコンバータサイドカバー80の内部及びクラッチシリンダ81の油圧室83間が連通される。 【0053】クラッチシリンダ81の周壁には,その周方向に等間隔置きに並んで油圧室83をクラッチシリンダ81外に開放する複数の逃がし孔93が穿設され,またクラッチシリンダ81の内周面には,これら逃がし孔93間を連通する環状溝94が設けられ,この環状溝94に,クラッチシリンダ81の所定回転数以上で逃がし孔93を遠心力をもって閉鎖する遠心弁95が配設される。遠心弁95は,1本の弾性線材からなる遊端リングで構成されたもので,少なくとも一端95aを加圧ピストン82の前記凹部91の一個に係合させていて,加圧ピストン82,したがってクラッチシリンダ81と共に回転するようになっている。またこの遠心弁95は,その自由状態では逃がし孔93を開放するように半径方向に収縮するが,クラッチシリンダ81の回転数が所定値以上になると,遠心力により半径方向に拡張して環状溝94の底面に密着し,全ての逃がし孔93を閉鎖するようになっている。 【0054】その他の構成は,前実施例の構成と同一であるので,図中,第1実施例との対応部分には同一の参照符号を付して,その説明を省略する。 【0055】而して,オイルポンプ44からクランク軸2の上流供給油路27aに供給されたオイルが第2流入孔43bに入ると,流体入口47iからポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に入り,その油室と,トルクコンバータサイドカバー80内側とを満たした後,流体出口47oからタービン軸59内へ移る。タービン軸59内へ移ったオイルは,入口孔92と流出孔45とに分流し,入口孔92に向かったオイルはロックアップクラッチLc′の油圧室83に流入し,流出孔45に向かったオイルは,前実施例の場合と同様にクランク軸2の下流供給油路27bへと流れていく。 【0056】一方,ロックアップクラッチLc′においては,クラッチシリンダ81がタービン軸59を介してタービン羽根車51と共に回転するので,タービン羽根車51の回転数が所定値未満であれば,遠心弁95は遠心力に抗して収縮状態を維持し,逃がし孔93を開放しており,したがって,入口孔92から油圧室83に流入したオイルは逃がし孔93からクラッチシリンダ81外に流出するので,油圧室83の油圧は上がらず,加圧ピストン82は,ピストン戻しばね89の付勢力により後退位置に保持され,駆動及び被動摩擦クラッチ板85,86は非係合状態に置かれる。即ち,ロックアップクラッチLc′はオフ状態となっている。 【0057】その際,油圧室83に切粉や摩耗粉等の異物が存在すれば,その異物を上記オイルと共に逃がし孔93からクラッチシリンダ81外へ排出することができる。 【0058】タービン軸59の回転数が所定値以上になると,それと共に回転する遠心弁95は,増大する自己の遠心力により拡張して全部の逃がし孔93を閉鎖する。その結果,油圧室83は,入口孔92から供給されるオイルによって満たされると共に,そのオイルの遠心力により油圧室83に油圧が発生し,その油圧をもって加圧ピストン82は受圧環84に向かって前進して,駆動及び被動摩擦クラッチ板85,86を摩擦係合状態にし,ロックアップクラッチLc′はオン状態となる。オン状態となったロックアップクラッチLc′は,ポンプ羽根車50及びタービン軸59間を直結状態にするので,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互の滑りを無くし,伝動効率を高めることができる。 【0059】タービン軸59の回転数が所定値未満に低下すると,遠心弁95は再び開弁するので,油圧室83の残圧を逃がし孔93から速やかに解放することができ,したがってロックアップクラッチLc′のオフ性能を高めることができる。 【0060】かくして,タービン軸59に連結したクラッチシリンダ81内の油圧室83の遠心油圧の利用により,遠心重錘を用いることなく,ロックアップクラッチLc′をタービン回転数依存型とすることができる。したがって,この場合も特別な制御手段は不要であり,しかも使用するオイルはトルクコンバータから流出したオイルであるから,専用のオイルポンプも不要であり,構成簡素なロックアップクラッチLc′を安価に提供することができる。 【0061】本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,ポンプ延長部50bは,これをポンプ羽根車50とは別体に構成して,ポンプ羽根車50に溶接することもでき,この場合,受圧板31をポンプ延長部50bに一体成形することもできる。また第1及び第2ベアリング53,58としてはニードルベアリングを使用することもできる。またクランク軸2に上流供給油路65a及び下流供給油路65b間を連通するオリフィスを設けて,上流供給油路65a内のオイルの一部がオリフィスから下流供給油路65bへ直接移るようにしてもよい。 【0062】 【発明の効果】以上のように本発明の第1の特徴によれば,トルクコンバータのポンプ羽根車及びタービン羽根車を相互に直結する,トルクコンバータのロックアップクラッチにおいて,ポンプ羽根車に連設されてタービン羽根車を囲繞するポンプ延長部と,このポンプ延長部に連設されて,ポンプ羽根車及びタービン羽根車間の油室に連通する油圧室を該ポンプ延長部内に画成する受圧板と,この受圧板に進退可能に対置される加圧板と,受圧板及び加圧板間に介裝されると共にタービン羽根車に連結される環状の摩擦クラッチ板と,加圧板を受圧板に対して後退させる方向に付勢する戻しばねと,摩擦クラッチ板の内周側で受圧板の内外を連通する逃がし孔とよりなり,ポンプ羽根車の回転数が所定値以上になると,それに応じて上昇する油圧室内の遠心油圧により加圧板が受圧板と協働して摩擦クラッチ板を挟圧するようにしたので,ポンプ回転数依存型のロックアップクラッチを,遠心重錘や特別な制御手段を用いずに提供することができる。しかも使用するオイルはトルクコンバータの作動オイルであるから,専用のオイルポンプも不要である。 【0063】また本発明の第2の特徴によれば,トルクコンバータのポンプ羽根車及びタービン羽根車を相互に直結する,トルクコンバータのロックアップクラッチにおいて,タービン羽根車に連結したクラッチシリンダと,このクラッチシリンダのシリンダ孔に摺動可能に嵌装されて油圧室を画成する加圧ピストンと,この加圧ピストンを油圧室側へ付勢するピストン戻しばねと,トルクコンバータから流出したオイルを油圧室に導入する手段と,クラッチシリンダ及びポンプ羽根車間に設けられる摩擦係合手段とよりなり,タービン羽根車の回転数が所定値以上になると,それに応じて上昇する油圧室内の遠心油圧により加圧ピストンが摩擦係合手段を作動してクラッチシリンダ及びポンプ羽根車間を連結するようにしたので,タービン回転数依存型のロックアップクラッチを,遠心重錘や特別な制御手段を用いずに提供することができる。しかも,この場合も使用するオイルはトルクコンバータの作動オイルであるから,専用のオイルポンプは不要である。 【0064】さらに本発明の第3の特徴によれば,クラッチシリンダに,油圧室の外周側を外部に開放する逃がし孔と,クラッチシリンダの回転数が所定値未満のときこの逃がし孔を開き,所定値以上のときこの逃がし孔を閉じる遠心弁とを設けたので,クラッチシリンダの所定回転数未満では,遠心弁の開弁により油圧室の残圧を逃がし孔から速やかに解放してロックアップクラッチのオフ性能を高めると共に,油圧室内の切粉等の異物をもオイルと共に逃がし孔から排出することができ,また所定回転数以上では,遠心弁の閉弁により油圧室の昇圧を可能にし,ロックアップクラッチの作動に支障を来すことがない。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000138521 【氏名又は名称】株式会社ユタカ技研
|
| 【出願日】 |
平成11年11月11日(1999.11.11) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100071870 【弁理士】 【氏名又は名称】落合 健 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−141029(P2001−141029A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−320907 |
|