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【発明の名称】 給油機構付き直線作動機
【発明者】 【氏名】佐枝 孝一

【氏名】宇瀧 昭彦

【要約】 【課題】ねじ軸とナットの螺合面に自動的に潤滑油の供給を行うことができ、作動が安定し、コストダウンが可能な給油機構付き直線作動機を提供する。

【解決手段】回転駆動されるねじ軸4と、ねじ軸4に螺合してねじ軸4が回転駆動されたとき軸方向に直線移動するボールねじナット6と、ボールねじナット6に取り付けられてボールねじナット6とともに軸方向に直線移動するロッド8とを有する直線作動機に給油機構20を取り付けたものにおいて、給油機構20は、内周面22Bにねじ溝が形成されていない2個のセグメント22Aで構成される含油リング22と、この2個のセグメント22Aを内側に支持する円筒状のホルダー24と、この2個のセグメント22Aの内周面22Bをねじ軸4の外周面4Aに押圧する輪ばね26と、この2個のセグメント22Aを円筒状のホルダー24の内側に保持するなべ小ねじ28とから構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転駆動されるねじ軸と、該ねじ軸に螺合して該ねじ軸が回転駆動されたとき軸方向に直線移動するナットと、該ナットに取り付けられて該ナットとともに軸方向に直線移動する作動部材とを有する直線作動機に給油機構を備えた給油機構付き直線作動機において、前記給油機構は、内周面にねじ溝が形成されていない複数のセグメントで構成される含油リングと、前記含油リングを構成する前記複数のセグメントを内側に支持する円筒状のホルダーと、前記含油リングを構成する前記複数のセグメントの内周面を前記ねじ軸の外周面に押圧する輪ばねと、前記含油リングを構成する前記複数のセグメントを前記円筒状のホルダーの内側に保持するなべ小ねじとから構成され、前記給油機構は、前記ナットの少なくともいずれか一方の端部に前記円筒状のホルダーによって取り付けられていることを特徴とする給油機構付き直線作動機。
【請求項2】前記含油リングを構成する複数のセグメントに合成樹脂の多孔質体を使用し、その両端面に金属板の補強体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の給油機構付き直線作動機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボールねじ等を用いた直線作動機において、ねじ軸に自動給油ができる給油機構付き直線作動機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】図7は、直線作動機の1例を1部破断して示す図である。図7に示す直線作動機は、概略、ブレーキ付きモータ2と、ブレーキ付きモータ2のモータ軸に連結されたねじ軸4と、ねじ軸4に図示しないボールを介して螺合したボールねじナット6と、ボールねじナット6に取り付けられた作動部材としての2本のロッド8,8と、ねじ軸4とボールねじナット6と2本のロッド8,8を内包する外筒10とを有しており、2本のロッド8,8の先端には、先端金具12が取り付けられており、連結ピン14を介して図示しない被作動体が先端金具12に取り付けられるように構成されている。そして、この直線作動機は、ブレーキ付きモータ2が正逆転することにより、ねじ軸4が正逆転し、正逆転するねじ軸4に図示しないボールを介して螺合したボールねじナット6とボールねじナット6に取り付けられた2本のロッド8,8は軸線方向に前進・後退し、先端金具12に取り付けられた図示しない被作動体を前進・後退させる。なお、図7は、直線作動機を横置きした状態を示しているが、直線作動機を直立方向に取り付けた場合には2本のロッド8,8は上下方向に上昇・下降し、被作動体を上昇・下降させる。
【0003】また、従来、ボールねじの潤滑に関して、実開平1−152144号公報に記載のものが提案されている。この実開平1−152144号公報には、外周面に螺旋状のボール転動溝を有するねじ軸と、前記ねじ軸のボール転動溝と対応する螺旋状のボール転動溝を内周面に有するボールナットと、両方のボール転動溝に転動自在に嵌合し前記ねじ軸とボールナットの相対螺旋運動時に転動移動する多数のボールとを備えたボールねじにおいて、前記ボールナットの少なくとも一方の端部側の内周面に、ねじ軸の外周に当接され漸次に生じる潤滑剤摩耗粉を被潤滑部に供給する固体潤滑部材と、この固体潤滑部材をねじ軸の外周に押圧する弾性部材とを備えた固体潤滑ボールねじ、が記載されている。
【0004】さらにまた、従来、ボールねじの潤滑に関して、実開平7−4952号公報に記載のものが提案されている。この実開平7−4952号公報には、外周面に螺旋状のねじ溝を有するねじ軸と、該ねじ軸に遊嵌される内周面に前記ねじ軸のねじ溝に対応するねじ溝を有するボールねじナットと、前記両ねじ溝間の螺旋状空間内を転動する多数のボールとを具えたボールねじにおいて、前記ボールねじナットの内部に前記ねじ軸のねじ溝面と摺接する潤滑油含有ポリマ部材を取り付けた含油ポリマ潤滑ボールねじ、が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図7に示す従来の直線作動機は、ねじ軸4とねじ軸4に図示しないボールを介して螺合したボールねじナット6との間に初期給油(グリース)が施されているが、定格寿命の維持あるいは円滑な作動のためには定期的にグリースの補給が必要である。定期的なグリースの補給を怠ると定格寿命に達せず早期に破損するという問題点があった。グリースの補給をするためには、外筒10に取り付けられた給脂栓16を取り外し、グリースガンにて補給するが、場合によっては外筒10、ロッド8,8等をも取り外して行う必要がある。しかし、直線作動機が高所に設置されている場合、あるいは直線作動機が組み込まれている場所によっては、これらの作業はかなり面倒であり、グリースの補給が困難である。
【0006】また、上記実開平1−152144号公報に記載の固体潤滑ボールねじは、グリース、油などの一般的な潤滑剤を使用することが不可能な極低温、極高温、高真空などの苛酷な条件下で使用する場合に適したものである。また上記の固体潤滑ボールねじは、固体潤滑部材の摩耗粉を被潤滑部に逐次供給して潤滑するため、固体潤滑部材をねじ軸の外周に当接する力が大きく変化し安定した潤滑ができないおそれがある。さらに固体潤滑部材が軸方向に抜けないように止め輪により軸方向の移動が規制されてはいるが、固体潤滑部材の廻り止め機構がないから固体潤滑部材がねじ軸と共に回転する場合があり、安定した作動が得られないおそれがある。
【0007】また、上記実開平7−4952号公報に記載の含油ポリマ潤滑ボールねじは、潤滑油含有ポリマ部材がねじ軸のねじ溝面と摺接するため摩擦が大きくなるという欠点がある。また、潤滑油含有ポリマ部材の内径側がねじ軸のねじ溝に対応する形状に加工する必要があり、潤滑油含有ポリマ部材の加工コストがアップし、さらに潤滑油含有ポリマ部材の組み付けも容易でないため、総合的にコストアップとなる。
【0008】そこで、本発明は、前述したような従来の問題点を解消し、ねじ軸とナットの螺合面に自動的に潤滑油の供給を行うことができ、作動が安定し、コストダウンが可能な給油機構付き直線作動機を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記の目的のため、本発明は、回転駆動されるねじ軸と、該ねじ軸に螺合して該ねじ軸が回転駆動されたとき軸方向に直線移動するナットと、該ナットに取り付けられて該ナットとともに軸方向に直線移動する作動部材とを有する直線作動機に給油機構を備えた給油機構付き直線作動機において、前記給油機構は、内周面にねじ溝が形成されていない複数のセグメントで構成される含油リングと、前記含油リングを構成する前記複数のセグメントを内側に支持する円筒状のホルダーと、前記含油リングを構成する前記複数のセグメントの内周面を前記ねじ軸の外周面に押圧する輪ばねと、前記含油リングを構成する前記複数のセグメントを前記円筒状のホルダーの内側に保持するなべ小ねじとから構成され、前記給油機構は、前記ナットの少なくともいずれか一方の端部に前記円筒状のホルダーによって取り付けられているものである。
【0010】
【作用】直線作動機は、ブレーキ付きモータが正逆転することにより、ねじ軸が正逆転し、正逆転するねじ軸に螺合したナットとナットに取り付けられた作動部材は軸線方向に前進・後退し、先端金具に取り付けられた被作動体を前進・後退させる。ねじ軸が正逆転して、ナットが軸線方向に前進・後退するとき、含油リングもナットとともに軸線方向に前進・後退する。そして含油リングを構成する各セグメントの内周面は、輪ばねの弾性収縮力によってねじ軸の外周面に当接しているので、各セグメントから浸みだした潤滑油がねじ軸の外周面に供給される。ねじ軸の外周面に供給された潤滑油は、ねじ軸の正逆転によってねじ軸のねじ溝を通じてナットに供給される。このように、ねじ軸が回転駆動される度に、各セグメントに含浸した潤滑油がねじ軸とナットに油膜として供給されるので、長期間外部から潤滑油を供給することなく、直線作動機を使用することができる。
【0011】また、各セグメントは、なべ小ねじによって円筒状のホルダーの内側に保持されているので、各セグメントは、軸方向の移動が拘束され、回転方向の移動も拘束される。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下に説明する。図1は、本発明の給油機構付き直線作動機の実施例を1部破断して示す図である。図1に示す本発明の給油機構付き直線作動機は、給油機構以外は図7に示す従来の直線作動機と同様の構成をしているので、同一部材には同一の符号を付して、直線作動機の基本的な構成についての説明は省略する。
【0013】図1に示す本発明の給油機構付き直線作動機は、図1に示すように、図7に示す従来の直線作動機のボールねじナット6の両端部に給油機構20をそれぞれ取り付けている。図2は、本発明の給油機構20の拡大断面図である。ただし図2にはボールねじナット6の一端部のみを示している。図2に示すように、給油機構20は、含油リング22と、含油リング22を内側に支持する円筒状のホルダー24と、含油リング22の内周面をねじ軸4の外周面4Aに押圧する輪ばね26と、含油リング22を円筒状のホルダー24の内側に保持するなべ小ねじ28とから構成されている。
【0014】図3は、含油リングの一実施例を示し、(A)はその正面図、(B)はその断面図である。図3に示すように、含油リング22は円筒体をその軸芯を含む平面で切断して2分割した2個のセグメント22A,22Aから構成されている。各セグメント22Aの内周面22Bにはねじ溝が形成されてなく、外周には輪ばね26を収容する溝22Cと、なべ小ねじ28の先端部を受け入れる孔22Dとが形成されている。図3に示す含油リング22を構成する各セグメント22Aは、合成樹脂の多孔質体を使用し、この合成樹脂の多孔質体に潤滑油を含浸させたものであるが、好ましくは潤滑グリースとウレタン樹脂を常温にて混合し、固形化したものである。また各セグメント22Aは、鉄系の多孔質体を利用した含油焼結体を使用することもできる。
【0015】図4は、含油リングの他の実施例を示し、(A)はその正面図、(B)はその断面図である。図4に示すように、含油リング32は円筒体をその軸芯を含む平面で切断して2分割した2個のセグメント32A,32Aから構成されている。各セグメント32Aの内周面32Bにはねじ溝が形成されてなく、外周には輪ばね26を収容する溝32Cと、なべ小ねじ28の先端部を受け入れる孔32Dとが形成されている。図4に示す含油リング32を構成する各セグメント32Aは、合成樹脂の多孔質体を使用し、この合成樹脂の多孔質体に潤滑油を含浸させたものである。さらに各セグメント32Aの両端面には金属板の補強体が設けられている。このように各セグメント32Aの両端面には金属板の補強体が設けられているため、含油リング32は剛性がアップし、ねじ軸4の外周面4A上を含油リング32が摺動する時、含油リング32が変形せず安定した作動を得ることができる。
【0016】図5は、円筒状のホルダー24の一実施例を示し、(A)はその正面図、(B)はその断面図である。円筒状のホルダー24は、前記含油リング22(または含油リング32)を内側に支持するものである。図5に示すように、円筒状のホルダー24は、一端部にインローを構成する段部24Aが形成されており、また直径方向に貫通する複数(図5に示すものは2個)のねじ孔24Bが形成されている。ねじ孔24Bは、前記各セグメント22A(または各セグメント32A)に形成した孔22D(または孔32D)に対応した位置に形成されている。インローを構成する段部24Aは、円筒状のホルダー24をボールねじナット6の外周面に嵌合するためのものであり、ねじ孔24Bは、なべ小ねじ28を螺合するためのものである。
【0017】図6は、輪ばね26の一実施例を示し、(A)はその正面図、(B)はその断面図である。輪ばね26は、前記含油リング22(または含油リング32)を構成する2個のセグメント22A(または2個のセグメント32A)の内周面22B(または内周面32B)を前記ねじ軸4の外周面4Aに押圧するものである。図6に示すように、輪ばね26はその一部が切断されている。
【0018】給油機構20は、ボールねじナット6の両端部に円筒状のホルダー24によって取り付けられる。給油機構20のボールねじナット6の端部への取り付け方について以下に説明する。
【0019】まず、ねじ軸4の外周面4Aに、含油リング22(または含油リング32)を構成する2個のセグメント22A(または2個のセグメント32A)をかぶせ、続いて、各セグメント22A(または各セグメント32A)に形成した溝22C(溝32C)内に輪ばね26を嵌合する。次に、各セグメント22A(または各セグメント32A)の外周面に円筒状のホルダー24を嵌合し、続いて、円筒状のホルダー24に形成したねじ孔24Bになべ小ねじ28を螺合し、なべ小ねじ28の先端部を各セグメント22A(または各セグメント32A)に形成した孔22D(または孔32D)内に挿入して係合する。次に、円筒状のホルダー24に形成した段部24Aに接着剤を塗布してボールねじナット6の端部にインロー嵌合して固定する。このように、給油機構20をボールねじナット6の端部へ取り付けると、含油リング22(または含油リング32)を構成する各セグメント22A(または各セグメント32A)の内周面22B(内周面32B)は、輪ばね26の弾性収縮力によってねじ軸4の外周面4Aに当接される。
【0020】図1に示す給油機構付き直線作動機は、上記のように構成されているから、次のように作動する。
【0021】直線作動機は、ブレーキ付きモータ2が正逆転することにより、ねじ軸4が正逆転し、正逆転するねじ軸4に螺合したボールねじナット6とボールねじナット6に取り付けられた2本のロッド8,8は軸線方向に前進・後退し、先端金具12に取り付けられた図示しない被作動体を前進・後退させる。ねじ軸4が正逆転して、ボールねじナット6が軸線方向に前進・後退するとき、含油リング22(または含油リング32)もボールねじナット6とともに軸線方向に前進・後退する。そして含油リング22(または含油リング32)を構成する各セグメント22A(または各セグメント32A)の内周面22B(内周面32B)は、輪ばね26の弾性収縮力によってねじ軸4の外周面4Aに当接しているので、各セグメント22A(または各セグメント32A)から浸みだした潤滑油がねじ軸4の外周面4Aに供給される。ねじ軸4の外周面4Aに供給された潤滑油は、ねじ軸4の正逆転によってねじ軸4のねじ溝を通じて図示しないボールとボールねじナット6に供給される。このように、ねじ軸4が回転駆動される度に、各セグメント22A(または各セグメント32A)に含浸した潤滑油がねじ軸4、図示しないボールおよびボールねじナット6に油膜として供給されるので、長期間外部から潤滑油を供給することなく、直線作動機を使用することができる。
【0022】また、なべ小ねじ28の先端部を、各セグメント22A(または各セグメント32A)に形成した孔22D(または孔32D)内に挿入して係合しているので、各セグメント22A(または各セグメント32A)は、軸方向の移動が拘束されており、回転方向も拘束されている。
【0023】なお、上記の実施例は、含油リングが2個のセグメントから構成されるものであるが、本発明は、含油リングが2個のセグメントから構成されるものに限定されるものではなく、含油リングは複数のセグメントから構成されるものであればよい。
【0024】また、上記の実施例は、ボールねじ等を用いた直線作動機についてものであるが、本発明はねじ軸に台形ねじを用いた直線作動機にも適用することができる。
【0025】また、上記の実施例は、給油機構をボールねじナットの両端部に取り付けたものであるが、本発明は給油機構をナットの少なくともいずれか一方の端部に取り付けるものでもよい。
【0026】
【発明の効果】本発明の請求項1に記載の給油機構付き直線作動機によれば、次のような効果を有する。
(1)ねじ軸に含油リングを構成する各セグメントからねじ軸に自動給油されるため、定期的なグリースの補給が不要でありメンテナンスフリーで長寿命な直線作動機が得られる。
(2)給油を必要としたいので、直線作動機が高所に設置されていて給油が困難な場合でも使用することができる。
(3)従来の直線作動機のナットの両端に給油機構を設置するだけで、ストロークの寸法変更もなく簡単に給油機構付き直線作動機が得られる。
(4)給油機構の構造が簡単で部品点数が少なくコストダウンが図れる。
(5)含油リングが、内周面にねじ溝を形成していない複数のセグメントて構成されているので、ねじ軸の外径に対応した複数のセグメントを用意するだけでよく、コストダウンが図れる。
(6)含油リングが、内周面にねじ溝を形成していない複数のセグメントて構成されているので、ねじ軸の外周面との摺動による摩擦抵抗がほとんどなく、安定した作動が得られる。
【0027】本発明の請求項2に記載の給油機構付き直線作動機によれば、各セグメントの両端面に金属板の補強体が設けられているため、含油リングは剛性がアップし、ねじ軸の外周面上を含油リングが摺動する時、含油リングが変形せず安定した作動を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
【出願日】 平成11年11月17日(1999.11.17)
【代理人】 【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝 (外2名)
【公開番号】 特開2001−141021(P2001−141021A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−327499