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【発明の名称】 ボールねじ装置
【発明者】 【氏名】関矢 礼明

【氏名】丸山 大介

【氏名】家久 俊之

【氏名】宮口 和男

【要約】 【課題】ボールをよりスムーズに循環運動させることができ、かつ、耐久性が高いボールねじ装置を提供する。

【解決手段】ボールねじ装置1Aは、ねじ軸1と、ナット2と、複数のボール8を含んでいる。互いに対向するねじ軸1のボールねじ溝1aと、ナット2のボールねじ溝2aとによって、ボール転動路3が構成されている。ナット2に、ボール転動路3の一部と他の一部とを連通させる接続路6が設けられている。接続路6とボール転動路3とによって、無端状に連通するボール循環路7が構成されている。各ボール8は、ボール循環路7内において無端状に配列されている。ボール転動路3を構成するナット2のねじ溝2aと接続路6との接続部分の角部が削り取られることにより、ねじ溝2aの一部に、滑らかに連続する加工処理部11が形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】外周面にボールねじ溝を有するねじ軸と、このねじ軸の外周に嵌合され、内周面にねじ軸のボールねじ溝に対向するボールねじ溝を有するナットと、互いに対向するねじ軸のボールねじ溝とナットのボールねじ溝とで構成されたボール転動路と、ナットに設けられ、前記ボール転動路の一部と他の一部とを連通させた接続路と、この接続路と前記ボール転動路とで構成された無端状に連通するボール循環路と、このボール循環路内に無端状に配列するように収容された複数のボールとを備えるボールねじ装置において、前記ボール転動路と接続路との接続部分の角部を削り取ることによって滑らかな形状に加工してなる加工処理部を有することを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】前記加工処理部は、前記接続路から前記各ねじ溝間に入るボールの進入方向に関して、前記ねじ溝間の距離が次第に小さくなる形状をなし、この加工処理部は前記接続路の端から前記ナットの周方向に延びかつ前記角部からナットの周方向に90°を越えない範囲に形成されていることを特徴とする請求項1記載のボールねじ装置。
【請求項3】前記加工処理部は、前記接続路から前記各ねじ溝間に入るボールの進入方向に関して、前記ねじ溝間の距離が次第に小さくなる形状をなし、この加工処理部の切込み量を、前記ナットの径方向に関して前記ボールの直径の400分の1から10分の1の範囲としたことを特徴とする請求項1または2記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、各種の機器の送り機構等に用いられるボールねじ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ボールねじ装置は回転運動を直線運動に変換する機械要素で、外周面にボールねじ溝が形成されたねじ軸と、このねじ軸の外周に嵌合し、内周面にねじ軸のボールねじ溝に対向するボールねじ溝が形成されたナットとを備えている。
【0003】互いに対向するねじ軸のボールねじ溝とナットのボールねじ溝とで螺旋状のボール転動路が構成され、このボール転動路の互いに離間した一部と他の一部とがナットに設けられた接続路により接続されて互いに連通し、これらボール転動路と接続路とで無端状のボール循環路が構成され、このボール循環路内に鋼、セラミック、プラスチック、樹脂等の材料で形成された多数のボールが無端状に連続して配列するように収容されている。
【0004】そしてねじ軸の回転動作時にその動力がねじ軸とナットとの間のボールを介してナットに伝達されてナットがねじ軸の軸方向に移動し、この移動に応じて各ボールがボール循環路内を無限循環し、このようなボールの無限循環によりねじ軸の回転に応じるナットの軸方向の移動が円滑に精度よく行なわれるようになっている。
【0005】さらに図面を挙げて具体的に説明すると、図6に従来のチューブ方式のボールねじ装置100の断面が模式的に示されており、ねじ軸1の外周にナット2が装着されている。ねじ軸1の外周面にはボールねじ溝1aが形成され、ナット2の内周面にはねじ軸1のボールねじ溝1aに対向する螺旋状のボールねじ溝2aが形成されている。そして互いに対向するねじ軸1のボールねじ溝1aとナット2のボールねじ溝2aとで螺旋状のボール転動路3が構成されている。
【0006】ナット2の周壁には透孔4a,4bが形成され、これら透孔4a,4bがチューブ5で接続されている。このチューブ5はナット2の外周部に配置され、その両端部が透孔4a,4b内に挿入されている。そしてこれら透孔4a,4bとチューブ5とでボール転動路3の互いに離れた一部と他の一部とを接続して連通させる接続路6が構成されている。
【0007】これによりボール転動路3が接続路6を介して無端状に連通し、この無端状に連通する通路がボール循環路7であり、このボール循環路7内に無端状に連続して配列するように鋼、セラミック、プラスチック、樹脂等の材料で形成された多数のボール8が収容され、これらボール8がねじ軸1の回転時にボール循環路7内を転動して無限循環するようになっている。
【0008】このボールねじ装置100において、ねじ軸1に対してナット2が例えば矢印Rで示す方向に回転すると、各ボール8は、ねじ溝1aに沿って矢印R方向に転動する。ここでボール8の移動速度がナット2の回転速度よりも遅いため、ナット2に対して各ボール8は、チューブ5から一方の透孔4aを通ってナット2のねじ溝2aに向かって移動する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところが、従来のボールねじ装置100においては、ボール転動路3と接続路6との接続部分、すなわちナット2のボールねじ溝2aと接続路6との境界の部分が図6に示すように角部10となっており、このためボール循環路7を循環するボール8のスムーズな循環運動がその角部10により妨げられ、作動性や耐久性が低下するという問題がある。
【0010】一方、ボールねじ装置100に外部荷重が作用したとき、ねじ軸1のボールねじ溝1aとボール8との間、およびナット2のボールねじ溝2aとボール8との間のHertz接触と、ボール8自体の弾性変形により、ねじ溝1a,2a間の距離が狭まった状態となる。この状態を、この明細書では弾性接近と称することにする。
【0011】弾性接近が生じている状態で、無負荷圏であるチューブ5内から、負荷圏であるねじ溝1a,2a間にボール8が入ることになる。ここでねじ溝1a,2a間の距離が狭まっていると、そのままではボール8がねじ溝1a,2a間に入ることができない。このため先行するボール8は、後続のボール8によって押されることにより、ねじ溝1a,2a間に入ることになる。
【0012】従来、ボールねじ溝2aは、ナット2の内周全体にわたって、ボール8の中心径に基いて連続加工されている。このため、前述の外部荷重が作用したとき、ボールねじ溝1a,2aどうしがナット2の内周全体にわたって同等に接近することになる。その結果、ボール8がチューブ5からボールねじ溝1a,2aに入った瞬間にボール8が急激に圧縮される。
【0013】例えば直径100mm,リード25mm,ボール直径19.05mmのボールねじ装置において、荷重で負荷されたときに、ねじ溝間の弾性接近量が50μmにも達することがある。つまり、ボールが無負荷圏から負荷圏に入る際に、50μm圧縮される。このため、特に荷重が大きい場合に、以下に述べるような問題を生じる懸念があった。
【0014】(1)ボールねじ溝2aとチューブ5の端との間の角部10に応力が集中し、そこを起点にして剥離(flaking)が発生する。
(2)角部10付近でボール8が詰まりやすくなり、ボール8が円滑に循環することができなくなる。
(3)ボール8がチューブ5からボールねじ溝2aに入る際に、先行するボール8が後続のボール8によって押されることで、ボールが損傷したり、摩耗する。その際に生じる摩耗粉は、ボールねじ装置の耐久性を低下させる原因となる。
【0015】この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところはボールをよりスムーズに循環運動させて作動性を良好に保ち、耐久性を高めることができるボールねじ装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】この発明はこのような目的を達成するために、外周面にボールねじ溝を有するねじ軸と、このねじ軸の外周に嵌合され、内周面にねじ軸のボールねじ溝に対向するボールねじ溝を有するナットと、互いに対向するねじ軸のボールねじ溝とナットのボールねじ溝とで構成されたボール転動路と、ナットに設けられ、前記ボール転動路の一部と他の一部とを連通させた接続路と、この接続路と前記ボール転動路とで構成された無端状に連通するボール循環路と、このボール循環路内に無端状に配列するように収容された複数のボールとを備えるボールねじ装置において、前記ボール転動路と接続路との接続部分の角部を削り取ることによって滑らかな形状に加工してなる加工処理部を有している。
【0017】クラウニング加工などによって形成される前記加工処理部は、前記接続路から前記各ねじ溝間に入るボールの進入方向に関して、前記ねじ溝間の距離が次第に小さくなるテーパ状をなし、この加工処理部は前記接続路の端から前記ナットの周方向に延びかつ前記角部からナットの周方向に90°を越えない範囲に形成されているとよい。こうすることにより、ボールが接続路からボール転動路に入る際に、ボールが徐々に圧縮され、ボールねじ溝に応力集中が生じることが回避される。加工処理部が前記角部からナットの周方向に90°の範囲を越えると、ボールねじ装置の負荷容量が減少するため、最大でも前記角部から90°の範囲とする。
【0018】加工処理部の切り込み量は、ボールねじ溝の前記弾性接近量よりも多くすることが望ましい。具体的にはナットの径方向に関してボールの直径の400分の1から10分の1までの範囲にするとよい。削り量がボール直径の400分の1以下では、ボールの移動が円滑でなくなり、前記課題を解決することができない。切り込み量がボール直径の10分の1を越えると、ボールねじ装置の作動性が悪化する。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、この発明の第1の実施形態について、図1(A)と図3を参照して説明する。図1(A)は、この発明の第1の実施形態に係るチューブ方式のボールねじ装置1Aの要部を示している。図1(B)には比較のために従来のチューブ方式のボールねじ装置100のその対応部分の構造を示してある。
【0020】図1(A)と図3に示されるように、ねじ軸1の外周にナット2が装着されている。ねじ軸1の外周面にボールねじ溝1aが形成されている。ナット2の内周面には、ねじ軸1のボールねじ溝1aに対向する螺旋状のボールねじ溝2aが形成されている。そして互いに対向するねじ軸1のボールねじ溝1aとナット2のボールねじ溝2aとで、螺旋状のボール転動路3が構成されている。
【0021】ナット2の周壁には透孔4a,4bが形成され、これら透孔4a,4bがチューブ5で接続されている。このチューブ5はナット2の外周部に配置され、その両端部が透孔4a,4b内に挿入されている。そしてこれら透孔4a,4bとチューブ5とでボール転動路3の互いに離れた一部と他の一部とを接続して連通させる接続路6が構成されている。
【0022】これによりボール転動路3が接続路6を介して無端状に連通し、この無端状に連通する通路がボール循環路7である。このボール循環路7内に、無端状に連続して配列するように鋼、セラミック、プラスチック、樹脂等の材料で形成された多数のボール8が収容され、これらボール8がねじ軸1の回転時にボール循環路7内を転動して無限循環するようになっている。
【0023】このボールねじ装置1Aにおいて、ねじ軸1に対してナット2が例えば矢印Rで示す方向に回転すると、各ボール8は、ねじ溝1aに沿って矢印R方向に転動する。ここでボール8の移動速度がナット2の回転速度よりも遅いため、ナット2に対して各ボール8は、チューブ5から一方の透孔4aを通ってナット2のねじ溝2aに向かって移動する。
【0024】図1(B)に示された従来のボールねじ装置100は、ボール転動路3と接続路6との接続部分に角部10が生じている。これに対し、図1(A)に示す本発明のボールねじ装置1Aは、その製作段階において前記角部10を削り取ることにより、平坦でかつ滑らかな形状の加工処理部11を形成している。この加工処理部11は、ナット2のボールねじ溝2aと接続路6との境界の部分に、ナット2の周方向に長さLにわたり、砥石等を用いた面取り加工によって形成されている。
【0025】このような構成においては、ボール転動路3と接続路6とが滑らかに連続し、したがって製作されたボールねじ装置1Aの作動初期段階からボール8がボール循環路7をスムーズに循環する。このため、ボールねじ装置1Aの作動初期段階からボール8やボール循環路7の摩耗がほとんど生じることがなく、作動性が良好に保たれ、耐久性も高めることができる。
【0026】図2(A)はこの発明の第2の実施形態に係るチューブ方式のボールねじ装置1Bの要部の構造を示している。図2(B)には比較のために従来のチューブ方式のボールねじ装置100のその対応部分の構造を示してある。図2(A)に示された第2の実施形態のボールねじ装置1Bの構成は、ナット2の内面に形成される加工処理12以外は第1の実施形態のボールねじ装置1Aと同様である。このため第2の実施形態のボールねじ装置1Bに関し、第1の実施形態のボールねじ装置1Aと共通する箇所には、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】第2の実施形態のボールねじ装置1Bは、従来のボールねじ装置100におけるボール転動路3と接続路6との接続部分の角部10に対応する部分を含む比較的長い領域の部分を、例えば砥石等の研磨手段を用いるクラウニング加工によって緩やかな円弧状に削り取ることにより、滑らかな加工処理部12を形成している。
【0028】図4に示すように、加工処理部12は接続路6の端Cからナット2の周方向に延びている。この加工処理部12は、接続路6から各ねじ溝1a,2a間に入るボール8の進入方向に関して、ねじ溝1a,2a間の距離が次第に小さくなるようなテーパ状をなしている。この加工処理部12は、接続路6の端Cからナット2の周方向に延び、かつ、角部12から周方向に90°を越えない範囲に形成されている。
【0029】このような加工処理部12を設けたことにより、ボール8がねじ溝1a,2a間に入りやすくなり、しかもボール8の進行にしたがってボール8が徐々に圧縮されるため、ねじ溝2aに応力集中が生じることが回避される。加工処理部12の長さがナット2の周方向に90°を越えると、ボールねじ装置1Bの負荷容量が減少するため、最大でも角部10から90°の範囲とする。
【0030】加工処理部12の削り量(図5に示す切り込み量H)は、前述した理由によりボールねじ溝1a,2aの前記弾性接近量よりも多くしている。すなわち、切り込み量Hは、ナット2の径方向に関してボール8の直径の400分の1から10分の1までの範囲とする。
【0031】このような構成においても、ボール転動路3と接続路6とが滑らかにつながるため、製作直後におけるボールねじ装置1Bの作動初期段階からボール8がボール循環路7内をスムーズに循環する。このためボールねじ装置1Bの作動初期段階からボール8やボール循環路7の摩耗が抑制され、良好な作動性が得られるとともに、耐久性を高めることができる。
【0032】なお、この発明は、チューブ5によって接続路6を構成するチューブ方式のボールねじ装置以外に、接続路用のこまを用いる内部循環式のボールねじ装置や、エンドキャップに接続路を形成したボールねじ装置にも同様に適用することが可能である。要するに本発明のボールねじ装置は、ナットに設ける接続路とボールねじ溝との間の角部を削り取ることによって、滑らかに連続する加工処理部を形成すればよい。
【0033】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、ボール転動路と接続路との接続部分に前記加工処理部を形成したことによって、ボールねじ装置の製作初期段階からボールがスムーズに循環する。この発明のボールねじ装置は作動性が良好であり、耐久性を高めることができる。また、接続路内部の無負荷圏からねじ溝間の負荷圏にボールが入りやすくなるため、ボールどうしの接触による損傷や摩耗を抑制することができる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成12年8月23日(2000.8.23)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
【公開番号】 特開2001−141019(P2001−141019A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願2000−252602(P2000−252602)