| 【発明の名称】 |
トルク伝達用転動体 |
| 【発明者】 |
【氏名】窪野 一茂
【氏名】鈴木 厚
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| 【要約】 |
【課題】トラクション係数に優れ、かつ耐久性に優れたトルク伝達用転動体を提供することにある。
【解決手段】金属製の本体と該本体の転動面に予め形成された伸びが30%以上である高延性の金属材料からなる被膜とを有するトルク伝達用転動体である。伸びが30%以上である高延性の金属材料からなる被膜を転動面に形成することによって、金属材料の被膜どうしの凝着面積を大きくして摩擦力を大きくすると共に高延性の金属材料を用いるので凝着摩耗による転動面からの脱落がされにくく耐久性が向上する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 潤滑油中で作動し、金属製の本体と該本体の転動面に予め形成された伸びが30%以上である高延性の金属材料からなる被膜とを有することを特徴とするトルク伝達用転動体。 【請求項2】 前記金属材料は金又は銅の少なくとも1種からなる請求項1記載のトルク伝達用転動体。 【請求項3】 前記銅は純度が99%以上である請求項2記載のトルク伝達用転動体。 【請求項4】 前記被膜の厚さは0.03μm以上である請求項1記載のトルク伝達用転動体。 【請求項5】 前記被膜の厚さは0.06〜0.3μmである請求項4記載のトルク伝達用転動体。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はトルク伝達用転動体に関する。詳しくはトラクションドライブ方式、特にトロイダル式無段変速機に用いられるトルク伝達用転動体に関する。 【0002】 【従来の技術】トルク伝達用転動体(以下適宜「転動体」という)はトラクションドライブ方式を利用したトロイダル式無段変速機の構成要素であるパワーローラ、入力ディスク、出力ディスク等に用いられている。 【0003】トラクションドライブ方式とは転動体間の圧力によって転動体間に潤滑油のいわば固化した薄膜が存在し、この固化した薄膜の剪断力によって転動体間にトルクが伝達される方式である。 【0004】トロイダル式無段変速機においては、入力ディスクとパワーローラとの間、パワーローラと出力ディスクとの間にはトラクションフルードと呼ばれる潤滑油の薄膜が存在している。この場合、入力ディスクとパワーローラとの間、パワーローラと出力ディスクとの間には一般に1GPa以上の高圧力が加えられ、トラクションフルードの薄膜はいわば固化している。この固化した状態のトラクションフルードの薄膜の剪断力によって一般の転動体から他方の転動体にトルクを伝達すると考えられる。例えば入力ディスクを回転させることによってパワーローラを回転させて入力ディスクからパワーローラにトルクが伝達される。従ってトロイダル式無段変速機においては効率よくトルクを伝達する転動体が求められていた。 【0005】トルクを効率よく伝達するには転動体の摩擦力を増大させる必要がある。転動体の摩擦力(F)は一般に転動体の有するトラクション係数(μ)と転動体に負荷される荷重(N)の積によって規定される。即ちF=μNという式で表現される。即ち同一の荷重が転動体に負荷された場合にトラクション係数が高ければ、それだけ摩擦力が増大することになる。摩擦力が増大すればそれだけ相手方である転動体にトルクをより多く伝達することが可能となる。 【0006】そこで従来より転動体のトラクション係数を向上することが求められてきた。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】転動体のトラクション係数を向上するために、転動体の転動面を粗くするという手法が一般的に採用されている。 【0008】しかし上述したようにトロイダル式無段変速機においては入力ディスクとパワーローラ間及びパワーローラと出力ディスク間等において、トラクションフルードの薄膜が固化するような高面圧例えば1GPa以上という条件の下でトラクションフルードの薄膜の剪断力によりトルクを伝達している。このようなトラクションドライブ機構においてパワーローラ等の転動体の転動面を粗くすると高面圧下での剪断力により、却って転動体の転動面が摩耗してしまうという問題が生じた。転動体の転動面が摩耗してしまうとトラクション係数が低下することになり、転動体の寿命は尽きたことになる。従って耐久性という観点からは転動面の表面疲労強度に優れた転動体が求められることになる。 【0009】そこで本発明の課題は、トラクション係数に優れ、かつ耐久性に優れた転動体を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明者はトラクションドライブ方式においても、一般に考えられているように潤滑油の薄膜が存在することによって転動体の転動面どうしが完全に非接触の状態にあるのではなく、転動体の転動面の表面に存在する凹凸の突起部分が実際には互いに接触していることに着目した。 【0011】そして本発明者はトラクションドライブ方式において凹凸の突起部分が互いに接触しているのであれば、トラクションドライブ方式においても固体間の通常のすべり摩擦の場合と同様のことが言えるのではないかと考えた。即ち2つの固体の表面が接触する通常のすべり摩擦においては、固体の接触表面に凹凸があるために接触表面のうち実際に接触している部分はその一部であり、この実際に接触している部分は固体間に働いている圧力によって塑性変形して凝着している。摩擦力はこの凝着した部分を剪断にするのに必要な力である。本発明者はトラクションドライブ方式においても同様であり、接触した転動面の表面の凹凸の突起部分は転動面に負荷されている面圧によって凝着しており、この凝着した部分を剪断するのに必要な力が摩擦力であると考えた。 【0012】そして本発明者は、トラクションドライブ方式においても転動面の表面における凝着した部分の面積を広くすればそれだけ摩擦力が増大し、トラクション係数が向上すると考えた。また摩擦は凝着した部分を剪断するときに生じるので凝着した部分が剪断されても転動面が破壊されないようにすれば、疲労強度に優れ、転動体の耐久性が向上すると考えた。 【0013】そこで本発明の発明者は潤滑油中で作動し、金属製の本体と該本体の転動面に予め形成された伸びが30%以上である高延性の金属材料からなる被膜とを有することを特徴とするトルク伝達用転動体を発明した。 【0014】なおここで伸びとはJISZ2241で規定されている引張り試験における破断伸びをいう。即ち試験片の引張り前の標点距離と破断後の標点距離との差(増加分)の引張り前の標点距離に対する百分率である。 【0015】即ち本発明者は研究を重ねた結果転動体の転動面に高延性の金属材料の被膜を形成することによって上記課題を解決した。伸びを30%以上としたのは研究の結果30%以上の伸びがあるような金属材料であれば凝着摩耗によって被膜が脱落しにくいと認識したからである。 【0016】上述したようにトラクションドライブ方式においては、転動体の転動面どうしは完全に非接触の状態にあるのではなく、転動面の表面の突起部分は接触し、凝着している。そこで転動体の転動面に伸びが30%以上である高延性の金属材料からなる被膜を形成すれば、被膜からなる転動面どうしが広い範囲で接触することになる。広い範囲での被膜同士の接触によって、被膜どうしに凝着が発生し、接触部分の摩擦係数即ちトラクション係数を向上させることができる。 【0017】また被膜に用いられる金属材料は伸びが30%以上であるような高延性の金属材料であるので、凝着した部分が剪断される際に金属材料が伸ばされてもこの金属材料は破壊されたり、転動体から脱落したりすることが少ない。従って伸びが30%以上である金属材料からなる被膜は摩耗されにくく、疲労強度に優れ、転動体の耐久性は向上することになる。 【0018】更に伸びが30%以上である金属材料からなる被膜が転動面に形成されるので転動面を保護することができる。その結果としても耐久性が向上することになる。 【0019】なおトラクションドライブ方式においては転動体の転動面には高圧力が負荷されるが、この転動体の転動面に対する圧力は転動体の金属製本体が支えることができる。 【0020】 【発明の実施の形態】以下本発明のトルク伝達用転動体の実施の形態について説明する。 【0021】本発明のトルク伝達用転動体は、潤滑油中で作動し、金属製の本体とこの本体の転動面に予め形成された伸びが30%以上である高延性の金属材料からなる被膜とを有している。 【0022】本発明の転動体は潤滑油中で作動し、潤滑油を用いるトラクションドライブ方式に採用しているトルク伝達装置等に用いることができる。 【0023】例えばトラクションドライブ方式が車両の無段変速機に採用されている場合には、上述したようにこの転動体は入力ディスク、パワーローラ、出力ディスク等として用いられる。この場合潤滑油は一般にトラクションフルードと呼ばれる潤滑油を用いることができ、トラクションフルードは市販されているものを用いることができる。 【0024】本発明の転動体の金属製本体は、転動体の転動面に負荷される高圧力及び転動体の耐久性を考慮して、強度が高く、また疲労強度に優れている金属を用いることができる。一般には鉄系金属を用いることができ、好ましくは高炭素クロム軸受鋼鋼材、浸単軸受鋼鋼材等、例えばSUJ4(JISG4805)、SUJ2(JISG4805)等を用いればよい。 【0025】金属製本体の転動面の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)で概ね0.01〜0.2μmであればよく、好ましくは0.01〜0.05μmであればよい。0.05μmを越えると転動面に被膜が存在しても金属製本体どうしの金属接触が生じやすく、金属製本体の表面が摩耗してしまうからである。また0.01μm未満であると転動面に被膜を形成すると転動面の表面の凹凸が少なくなりすぎて、高延性の金属からなる被膜を形成した場合に凝着が生じにくくなるからである。 【0026】伸びが30%以上である高延性の金属材料としては、例えば金(45%)、銀(48%)、銅(50%)、鉛(40%)、スズ(96%)等を用いることができる。また伸びが30%以上である合金を用いることもできる。伸びが30%以上である高延性の金属材料を用いれば凝着摩耗による脱落を少なくすることができる。 【0027】なおこの場合金又は銅を用いるのが好ましい。摩耗されにくく、またトラクション係数を向上することができる。特に銅が好ましい。後述する実施例にあるようにトラクション係数が銅の被膜が形成されていない転動体と比較して明らかに向上するからである。またこの場合銅の純度は99%以上が好ましい。純度が高ければそれだけ凝着摩耗による脱落が減少し、トラクション係数が向上することできる。 【0028】なお転動面に形成される被膜の厚さは、転動体の転動体に負荷される圧力、被膜に用いられる高延性の金属材料等を考慮して適切な厚さにすることができる。一般的には0.03μm以上が好ましく、更に好ましくは0.06〜0.3μmである。被膜の厚さが薄すぎると高延性の金属材料を摩擦する割合が減少し、トラクション係数を向上させることができない。反対に被膜の厚さが厚すぎると転動面に高圧力が負荷された場合に凝着摩耗によって被膜を形成する金属材料が大きく塑性流動してしまって、金属材料の摩耗による脱落が多くなる。 【0029】転動面に高延性の金属材料の被膜を形成するには公知の方法で行うことができる。例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等で高延性の金属材料の被膜を形成することができる。 【0030】 【実施例】以下実施例に基づいて本発明の転動体を説明する。本発明の転動体のトラクション係数を確認するために外側に位置する3つの外側円筒と中心に位置する1つの中心円筒とを有する4円筒試験機を用いて本発明の転動体を試験した。4円筒試験機は神鋼造機(株)社製ころがり−すべり摩擦摩耗試験機を用いた。その結果を図1に示す。 【0031】本試験においては、3つの外側円筒のうち上方の1つの外側円筒に荷重を負荷し、3つの外側円筒と1つの中心円筒との間にすべり速度を与えてトラクション係数を測定した。即ち3つの外側円筒は同一速度で回転するようにし、1つの中心円筒にはすべり速度が与えた。以下試験の概略を述べる。 【0032】実施例の転動体は金属製の本体とその転動面に形成された銅の被膜とからなる転動体を4円筒試験機の4つの円筒として用いた。また比較例として同一の金属製の本体のみからなり、被膜を有していない転動体を4つの円筒として用いた。 【0033】4円筒試験機の3つの外側円筒としてそれぞれ直径40mm、幅12mmの円筒形の転動体を用いた。また中心円筒として直径40mm、幅6mmの円筒形の転動体を用いた。 【0034】これら転動体の金属製本体は高炭素クロム軸受鋼鋼材であるSUJ4(JISG4805)で形成した。金属製本体の外周面即ち転動面の表面粗さは中心線平均粗さ(Ra)で0.03μmであった。 【0035】実施例に用いた転動体には、上記金属製本体の転動面に純度が99%以上の銅(Cu)からなる被膜を形成した。この被膜の厚さは0.2μmであった。本実施例では銅の被膜の形成法として真空蒸着法を用いた。 【0036】比較例の転動体には、被膜が形成されていない上記金属製本体を転動体としてそのまま用いた。 【0037】本試験においては0.79GPa、1.11GPa、1.37GPaというように負荷する荷重を変化させて、それぞれのトラクション係数を測定した。3つの外側円筒の速度は6.28m/sで、すべり率が2.2%となるように中心円筒の速度を設定した。トラクションフルードはサントトラック(Santotrac)社製Santotrac50を用い、トラクションフルードの温度を110℃に設定した。 【0038】試験の結果は次のようであった。 【0039】0.79GPaの圧力下においては、比較例のトラクション係数が0.0644に対して実施例のトラクション係数が0.0656であった。1.11GPaの圧力下においては比較例のトラクション係数が0.0775に対して実施例のトラクション係数は0.0802であった。1.37GPaの圧力下においては比較例のトラクション係数が0.0810に対して実施例のトラクション係数が0.0826であった。 【0040】いずれの圧力下においてはトラクション係数が実施例の転動体の方が比較例の転動体よりも向上していることが分かる。 【0041】更に図では示さないが試験後の転動体表面を電子顕微鏡で観察した結果、転動体の転動面に銅が残っていることを確認できた。このことから転動体の耐久性も向上することが分かる。 【0042】 【発明の効果】本発明のトルク伝達用転動体はトラクション係数に優れまた耐久性に優れている。更に金属製の本体の転動面に伸びが30%以上の高延性の金属材料からなる被膜が形成されているので金属製の本体の転動面を保護するという効果もある。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年11月18日(1999.11.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081776 【弁理士】 【氏名又は名称】大川 宏
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| 【公開番号】 |
特開2001−141011(P2001−141011A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月25日(2001.5.25) |
| 【出願番号】 |
特願平11−328389 |
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