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【発明の名称】 テンショナ装置用及びチェーンガイド用シュー
【発明者】 【氏名】藤原 透

【氏名】小川 岳志

【要約】 【課題】耐摩耗性、摺動性、耐衝撃性、耐熱性、耐油性に優れ、形状の自由度が高く、加工性がよいシューを提供する。

【解決手段】テンショナ装置用及びチェーンガイド用シューにおいて、相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分(a)が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品を使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 テンショナ装置用及びチェーンガイド用シューにおいて、相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品を使用することを特徴とするテンショナ装置用及びチェーンガイド用シュー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用エンジンのタイミングドライブ(カムシャフトドライブ、バランサードライブ、インジェクションドライブ等)に用いられるタイミングチェーン(ローラーチェーン、サイレントチェーン等)の振動を防止するために装着されるテンショナ装置用及びチェーンガイド用シューに関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車用エンジンのタイミングドライブに用いられるタイミングチェーンには、チェーンの弛み側となる部分の外側にチェーンの弛みを除去するためのテンショナ装置が配置され、またチェーンの張り側となる部分にチェーン走行時の振れを防止するためのチェーンガイドが配置されている。
【0003】図2、図3は、いずれもこのようなテンショナ装置及びチェーンガイドが配置された自動車用エンジンのタイミングドライブを示す正面図であって、図2はその1例を示す正面図であり、図3は他の例を示す正面図である。
【0004】図2に示す自動車用エンジンのタイミングドライブについて以下説明する。エンジンのクランクシャフトに固定されている駆動側スプロケット1と中間スプロケット2との間に第1チェーン3が掛け渡されており、また各カムシャフトにそれぞれ固定されている被駆動側スプロケット4,5と中間スプロケット2との間に第2チェーン6が掛け渡されており、クランクシャフトの回転が駆動側スプロケット1から第1チェーン3を介して中間スプロケット2に伝達され、さらに中間スプロケット2の回転が第2チェーン6を介して被駆動側スプロケット4,5に伝達されて、各カムシャフトが回転駆動されるようになっている。
【0005】第1チェーン3の弛み側となる部分の外側に第1チェーン3の弛みを除去するための第1テンショナ装置7が配置されている。第1テンショナ装置7は、テンショナ8とレバー9とで構成されている。レバー9は、ベース9Aとこのベース9Aに取り付けられたシュー9Bとから構成されている。レバー9の基端部は図示しないエンジンブロックに揺動自在に取り付けられ、レバー9の先端部近傍の背面側がテンショナ8のプランジャ8Aの先端によって押圧されている。これによって、レバー9のシュー9Bが第1チェーン3の走行面に摺接し、第1チェーン3に張力を付与し、その結果第1チェーン3の弛みを除去している。
【0006】また、第1チェーン3の張り側となる部分に第1チェーン3の走行時の振れを防止するためのチェーンガイド10が配置されている。チェーンガイド10は、チェーンガイド10の本体部分10Aと第1チェーン3の走行面に摺接する図示しないシューとから構成されている。チェーンガイド10も図示しないエンジンブロックに取り付けられている。これによって、チェーンガイド10のシューが第1チェーン3の走行面に摺接し、第1チェーン3の走行時の振れを防止している。
【0007】さらに、第2チェーン6の弛み側となる部分の外側に第2チェーン6の弛みを除去するための第2テンショナ装置11が配置されている。第2テンショナ装置11は、プランジャ11Aの先端にベース11Bを介してシュー11Cが取り付けられ、シュー11Cはプランジャ11Aによって突出方向に付勢されている。これによって、シュー11Cが第2チェーン6の走行面に摺接し、第2チェーン6に張力を付与し、その結果第2チェーン6の弛みを除去している。
【0008】次に、図3に示す自動車用エンジンのタイミングドライブについて以下説明する。エンジンのクランクシャフトに固定されている駆動側スプロケット1と各カムシャフトにそれぞれ固定されている被駆動側スプロケット4,5との間にチェーン7が掛け渡されており、クランクシャフトの回転が駆動側スプロケット1からチェーン7を介して被駆動側スプロケット4,5に伝達されて、各カムシャフトが回転駆動されるようになっている。
【0009】チェーン7の弛み側となる部分の外側にチェーン7の弛みを除去するためのテンショナ装置12が配置されている。テンショナ装置12は、テンショナ13とレバー14とで構成されている。レバー14は、ベース14Aとこのベース14Aに取り付けられたシュー14Bとから構成されている。レバー14の基端部は図示しないエンジンブロックに揺動自在に取り付けられ、レバー14の先端部近傍の背面側がテンショナ13のプランジャ13Aの先端によって押圧されている。これによって、レバー14のシュー14Bがチェーン7の走行面に摺接し、チェーン7に張力を付与し、その結果チェーン7の弛みを除去している。
【0010】また、チェーン7の張り側となる部分にチェーン7の走行時の振れを防止するためのチェーンガイド15が配置されている。チェーンガイド15は、チェーンガイド15の本体部分15Aとチェーン7の走行面に摺接する図示しないシューとから構成されている。チェーンガイド15も図示しないエンジンブロックに取り付けられている。これによって、チェーンガイド15のシューがチェーン7の走行面に摺接し、チェーン7の走行時の振れを防止している。
【0011】ところで、上記テンショナ装置及びチェーンガイドのシューには、従来、耐熱性合成ゴムが使用されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、自動車用エンジン内の状態は、一般的な使用状態と異なる条件下であり、相手材であるチェーンのスピードは速く、面圧も高い。また雰囲気も油中であり、油温は最大で140度近くまで上昇する。したがって、自動車用エンジン内のテンショナ装置及びチェーンガイドのシューとして耐熱性合成ゴムを使用すると、次のような問題点があった。
【0013】耐熱性合成ゴムは、摩擦係数が高いため摩擦抵抗が大きい。したがって、運転時のロスが大きくなり燃費を低くする。
【0014】耐熱性合成ゴムは、熱変化により、硬度が上昇する。特に高温時は耐熱性合成ゴム表面の加硫が進み、硬度が上昇する。硬化による破損やベース材からの剥離が起こる。また硬化により相手材であるチェーンが摩耗しやすくなる。その結果、チェーンの寿命、エンジンの寿命を縮めることになる。
【0015】耐熱性合成ゴムは、形状の自由度があまりなく、干渉物を逃げる等の設計が不自由になる。つまり、エンジンレイアウトの設計の自由度が低くなる。
【0016】耐熱性合成ゴムは、加工性が悪く、トータルコストも高い。耐熱性合成ゴムを貼り付けるベース(アルミニウム合金、鉄など)の前処理が必要であり、更に接着・加硫工程が必要である。アルミニウム合金と耐熱性合成ゴムとの接着は容易でなく、加工性が悪い。加工コスト、ベース材の加工コスト、またシューとベースが別工程のためストックが多くなり、納期も長くなる。さらに、総重量も増し、結果としてエンジン全体の重量増加となり、燃費を低くする。
【0017】そこで、本発明は、前述したような従来の問題点を解消し、耐摩耗性、摺動性、耐衝撃性、耐熱性、耐油性に優れ、形状の自由度が高く、加工性がよいシューを提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】前記の目的のため、本発明は、テンショナ装置用またはチェーンガイド用シューにおいて、相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品を使用するものである。
【0019】
【作用】テンショナ装置用またはチェーンガイド用シューにおいて、相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品を使用することにより、耐摩耗性、摺動性、耐衝撃性、耐熱性、耐油性に優れ、形状の自由度が高く、加工性がよいシューを得ることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を以下に説明する。図1は、本発明のテンショナ装置用及びチェーンガイド用シューとして使用する、相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品の偏光顕微鏡(倍率:400倍)による組織を示す模式図で、(A)は1例を示し、(B)は他の例を示す。図1(A)、(B)において、(a)は非球晶化部分を示し、(b)は球晶化部分を示し、(c)は前記樹脂成形品の表面を示す。
【0021】本発明のテンショナ装置用及びチェーンガイド用シューとして使用する樹脂成形品は、相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のポリアミド66樹脂またはポリアミド46樹脂である。
【0022】本発明のテンショナ装置用及びチェーンガイド用シューは、このポリアミド66樹脂またはポリアミド46樹脂を通常の射出成形によって製作される。射出成形時の金型温度・樹脂温度・圧力・時間等は、材料メーカの推奨条件とする。
【0023】このポリアミド66樹脂またはポリアミド46樹脂への添加剤は、各々異なるエンジンの要求特性に応じて、(1)粘度調整用のエラストマー成分、(2)色付けのためのカラーマスターバッチ、(3)二硫化モリブデン、グラファイト、テトラクロロエチレン等の潤滑物資、(4)ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維などの補強用短繊維、(5)炭酸カルシウム、ガラス等の粉末、球状の寸法安定剤、などをその目的に応じて、50重量%以下の範囲で添加してもよい。
【0024】テンショナ装置用及びチェーンガイド用シューに必要な性能を、ポリアミド66樹脂及びポリアミド46樹脂と、ゴム、フェノール樹脂、ポリプロピレン樹脂について検討した結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

なお、表1において、◎は最適、○は適、△はやや不適、×は不適を表す。
【0026】より好ましくは、樹脂成形品のスキン層(図1(A),(B)の(a)に示す非球晶化部分)が薄いものであり、さらにより好ましくは、スキン層すなわち非球晶化部分(a)が100μm以下のものである。
【0027】また、図4は、耐摩耗性試験機の概略図である。図4に示す耐摩耗性試験機を使用して、耐熱性合成ゴム製シューの試験片20と、ポリアミド66または46樹脂製シューの試験片21と、スキン層が100μmのポリアミド66または46樹脂製シューの試験片22を走行するチェーン23に荷重Pにて押付けて、耐摩耗性試験を行った。
【0028】試験条件は、下記のとおりである。
周速:40m/s荷重:50N油種:エンジンオイル油温:140度油量:1L/min【0029】図5は、図4の耐摩耗性試験機によって得られたシューの摩耗量と運転時間の関係を示すグラフである。図5に示すように、耐熱性合成ゴムよりもポリアミド66または46樹脂の方が摩耗量が少なく、またポリアミド66または46樹脂でも、スキン層が100μmのものが最も摩耗量が少ないことが確認できた。
【0030】なお、本発明のテンショナ装置用及びチェーンガイド用シューとして使用する相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分(a)が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品は、レバーのベースまたはチェーンガイドの本体部分に取り付けて使用することができるだけでなく、この樹脂成形品単独でレバーまたはチェーンガイドを構成することも可能である。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のテンショナ装置用及びチェーンガイド用シューによれば、テンショナ装置用またはチェーンガイド用シューにおいて、相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品を使用することにより、耐摩耗性、摺動性、耐衝撃性、耐熱性、耐油性に優れ、形状の自由度が高く、加工性がよいシューを得ることができる。
【0032】相対粘度(90%蟻酸法)が100以上のものであって、そのスキン層の非球晶化部分が100μm以下のポリアミド66または46樹脂成形品単独で、レバーまたはチェーンガイドを構成する場合には、レバーのベースまたはチェーンガイドの本体部分に取り付けるものではないから、レバーのベースまたはチェーンガイドの本体部分から剥離することがなく、レバーのベースまたはチェーンガイドの本体部分に取り付けることによるコストアップも回避できる。
【出願人】 【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
【出願日】 平成11年11月10日(1999.11.10)
【代理人】 【識別番号】100111372
【弁理士】
【氏名又は名称】津野 孝 (外2名)
【公開番号】 特開2001−141005(P2001−141005A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−320253