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【発明の名称】 農用トラクタの走行変速装置
【発明者】 【氏名】浜 昌明

【氏名】加藤 賢治

【氏名】高木 政夫

【要約】 【課題】オーバードライブ域から超減速域に切り換えると、主変速レバーでの変速段数を異なる段数のものにして、変速段数の選択操作を容易に行うことができる操作構造を構築することを目的とする。

【解決手段】オーバードライブ状態にあっては、主変速レバー30の変速域での変速段数を6段に設定するとともに、切換伝動操作具によって超減速状態と切り換えると、超減速状態においては、主変速レバー30の変速域において変速段数を12段に設定して、圃場を移動する際の高速走行時における変速位置に選択操作を行いやすくしてある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数段に変速可能な変速機構とその変速機構からの動力を異なる走行状態に切り換える切換伝動機構とを設けるとともに、前記変速機構に対する変速操作具と前記切換伝動機構に対する切換伝動操作具とを設け、前記切換伝動操作具で選択された走行状態毎に、前記変速操作具によって選択できる変速段数を異なる段数に変更する変速段数変更手段を備えている農用トラクタの走行変速装置。
【請求項2】 前記変速機構が油圧式アクチュエータによって変速駆動されるものである請求項1記載の農用トラクタの走行変速装置。
【請求項3】 前記切換伝動機構が前段からの動力を大きく減速する超減速機構と前段からの動力を増速するオーバードライブ機構とでなるものであり、前記切換伝動操作具によって、超減速機構による超減速状態と前記オーバードライブ機構によるオーバードライブ状態に切り換えることができる請求項1又は2記載の農用トラクタの走行変速装置。
【請求項4】 主変速機構、高低変速機構、及び、前段の変速機構からの動力を増速して出力するオーバードライブ機構を設け、前記オーバードライブ機構による変速状態を選択した状態において、オーバードライブ低速域では、前記高低変速機構を高速状態に維持した状態で前記主変速機構によって変速を行い、オーバードライブ低速域より高速の変速域においては、前記高低変速機構を高低に変速して前記主変速機構によって変速を行うように構成してある農用トラクタの走行変速装置。
【請求項5】 主変速機構、前後進状態を切り換える前後進切換機構、前段からの動力を増速するオーバードライブ機構とを設け、オーバードライブ入りの状態で主変速機構によって複数段に変速可能に構成するとともに、前記複数段の内の一変速状態において前後進状態を切り換えると、主変速機構を変速して前進オーバードライブ速度と後進オーバードライブ速度を異なる速度に切り換えるように構成してある農用トラクタの走行変速装置。
【請求項6】 主変速機構、前後進状態を切り換える前後進切換機構、前段からの動力を増速するオーバードライブ機構とを設け、オーバードライブ入りの状態で主変速機構によって複数段に変速可能に構成するとともに、前進オーバードライブ状態と後進オーバードライブ状態とで前記主変速機構の変速段数を異ならせている農用トラクタの走行変速装置。
【請求項7】 変速機構と、その変速機構からの動力を増速して出力するオーバードライブ機構と、前後進状態を切り換える前後進切換機構とを備え、オーバードライブ機構を入り状態にした高速走行状態において、前進状態に対して後進状態の前記変速機構の変速位置を低速側に変速するように構成してある農用トラクタの走行変速装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複数段に変速可能な変速機構とその変速機構からの動力を異なる走行状態に切り換える切換伝動機構とを設ける農用トラクタの走行変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】異なる走行状態として考えられるものとしては、走行速度を大きく減速した状態にする超減速状態、又は、前段からの動力を増速するオーバードライブ状態とが考えられ、切換伝動機構によって両者を切り換えることになるが、切り換えた後においては、変速機構によって変速することになるので、切換後の変速段数も変速機構の変速段数によることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】異なる走行状態に切り換える必要があるのは、農用トラクタでの作業状態が異なる場合であるので、必要な変速段数も異なる場合があることが十分考えられる。というよりは、寧ろ積極的に変更する方が作業性の向上を促し好ましい場合もある。
【0004】本発明の目的は、作業状態に適応した変速段数を採れるようにして、作業性の効率を高めることのできる農用トラクタの走行変速装置を提供する点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】(構成)請求項1に係る発明は、複数段に変速可能な変速機構とその変速機構からの動力を異なる走行状態に切り換える切換伝動機構とを設けるとともに、前記変速機構に対する変速操作具と前記切換伝動機構に対する切換伝動操作具とを設け、前記切換伝動操作具で選択された走行状態毎に、前記変速操作具によって選択できる変速段数を異なる段数に変更する変速段数変更手段を備えている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0006】(作用効果) 切換伝動操作具によって走行状態を変更した場合に、変速段数変更手段を働かせると、変速機構での変速段数を変更することができる。したがって、圃場での作業時においては各種の作業に対応できるように、細かく変速段数を設定して段数を多くし、圃場を移動する場合のように高速で移動する場合には、余り変速段数を必要とせず、大まかな段数でよい。
【0007】(構成) 請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記変速機構が油圧式アクチュエータによって変速駆動されるものである点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0008】(作用効果) 前記変速機構が油圧式アクチュエータで変速駆動するので、変速するか否かの制御が容易に行え、変速段数変更手段によって簡単に段数変更が可能になる。
【0009】(構成) 請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の発明において、前記切換伝動機構が前段からの動力を大きく減速する超減速機構と前段からの動力を増速するオーバードライブ機構とでなるものであり、前記切換伝動操作具によって、超減速機構による超減速状態と前記オーバードライブ機構によるオーバードライブ状態に切り換えることができる点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】(作用・効果) 超減速機構は、圃場での作業や足踏み板を利用して運搬車に搭載する場合等に極低速で移動する際に利用されるものであり、これに対してオーバードライブ機構は、圃場を移動する際に高速走行する際に利用されるものであり、利用される走行形態や走行速度に違いがあるので、これに応じて変速段数を切り換えることが作業形態にあった速度を選択することができる。
【0011】(構成) 請求項4に係る発明は、主変速機構、高低変速機構、及び、前段の変速機構からの動力を増速して出力するオーバードライブ機構を設け、前記オーバードライブ機構による変速状態を選択した状態において、オーバードライブ低速域では、前記高低変速機構を高速状態に維持した状態で前記主変速機構によって変速を行い、オーバードライブ低速域より高速の変速域においては、前記高低変速機構を高低に変速して前記主変速機構によって変速を行うように構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】(作用・効果) オーバードライブ高速域においては、高低変速を変速段数に組み込むことができるので、変速段数を多くかつ細かい速度設定が可能になる。これに対して、オーバードライブ低速域においては、主変速機構だけで変速を行うので、大きな速度差での速度設定が可能になる。つまり、オーバードライブ域を設けたのは高速走行の為であり、そこで、高速走行での速度設定を細かくできるようにした。したがって、補助的に使用される低速域においては、速度差を大きく採っても実用上での支障は少ないからである。
【0013】(構成) 請求項5に係る発明は、主変速機構、前後進状態を切り換える前後進切換機構、前段からの動力を増速するオーバードライブ機構とを設け、オーバードライブ入りの状態で主変速機構によって複数段に変速可能に構成するとともに、前記複数段の内の一変速状態において前後進状態を切り換えると、主変速機構を変速して前進オーバードライブ速度と後進オーバードライブ速度を異なる速度に切り換えるように構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】(作用・効果) これによって、オーバードライブ速度を前後進によって切り換えることができ、前後進を頻繁に行う作業時において前進運搬時と空にして戻る後退時とで速度を変更できるという使用上のメリットがある。したがって、複数段のうちの一変速状態が、高速域にある時と低速域にある時とで、前進速度を大きくしたり、後進速度を大きくしたりすることも可能であり、前進高速走行での移動性と後進時の安定走行を確保できるものである。
【0015】(構成) 請求項6に係る発明は、主変速機構、前後進状態を切り換える前後進切換機構、前段からの動力を増速するオーバードライブ機構とを設け、オーバードライブ入りの状態で主変速機構によって複数段に変速可能に構成するとともに、前進オーバードライブ状態と後進オーバードライブ状態とで前記主変速機構の変速段数を異ならせている点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】(作用・効果) オーバードライブ速度は、元々高速走行を目的とするために設定されたものであるから、前進走行時においては高速走行であっても、きめ細かい変速を行って軽快な走りを得るようにするとともに、後進時にあっては、細かい変速を行うことはせず安定走行を維持することに重点を置く走りを行う為に、変速段数は少なくしてある。
【0017】(構成) 請求項7に係る発明は、変速機構と、その変速機構からの動力を増速して出力するオーバードライブ機構と、前後進状態を切り換える前後進切換機構とを備え、オーバードライブ機構を入り状態にした高速走行状態において、前進状態に対して後進状態の前記変速機構の変速位置を低速側に変速するように構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0018】(作用・効果) オーバードライブ速度は、元々高速走行を目的とするものであるから、前進走行時においては高速移動性を確保することが必要であるが、他方後進時においては、高速走行であっても走行安定性の確保も欠かせない面があるところから、後進時には前進時よりも低速走行が行えるようになっている。
【0019】
【発明の実施の形態】図1に、農用トラクタの全体側面が示されている。この例の農用トラクタは、トラクタ本機1の後部に外装式のリフトシリンダ3によって駆動昇降可能にロータリ耕耘装置Kを連結して、乗用耕耘作業を行う形態に構成されており、機体前部に搭載したエンジン4の出力が主クラッチ5を介してミッションケース6に伝達され、ここで走行系とPTO系に分岐され、分岐された走行系の動力は適宜変速された後、主推進車輪である後輪7および操向車輪である前輪8が駆動されるようになっている。また、分岐されたPTO系の動力も適宜変速された後、機体後部のPTO軸9を介してロータリ耕耘装置Kに伝達されるようになっている。
【0020】図2に伝動系の概略を示すブロック図が、また、図3にミッションケース6に内蔵された変速装置の概略が示されている。主クラッチ5を介してミッションケース6に伝達されたエンジン出力は、カウンター軸10を介して走行系とPTO系に分岐される。走行系には、4段の変速を行う主変速機構11、多板式の変速用油圧クラッチ12、前後進切換え機構13、小さい伝動比で高低2段の変速を行う高低変速機構14、大きい伝動比で高低2段の変速を行う副変速機構15、および、超減速機構16が直列に配備されており、この副変速機構15と超減速機構16とに対して並列状態でオーバードライブ機構45が配備されている。ここに、主変速機構11、前後進切換機構13、高低変速機構14、副変速側機構15を、走行速度を複数段に変速可能な変速機構と称する。また、超減速機構16とオーバードライブ機構45とを、異なる走行状態に切り換える切換伝動機構と称する。各変速機構で変速された動力が後部デフ機構17を介して後輪7に伝達されるとともに、伝動軸18および前部デフ機構19を介して前輪8に伝達されるようになっている。また、PTO系には、カウンター軸10で分岐された動力を、正転3段、逆転1段に変速してPTO軸9に伝達するPTO変速機構20が配備されている。
【0021】図3に示すように、主変速機構11は、2つのシフトスリーブS1 ,S2 を択一的にシフト操作して4段の変速を行うように構成されている。シフトスリーブS2 を中立に維持した状態でシフトスリーブS1 を後方にシフトすることで1速が、シフトスリーブS1 を前方にシフトすることで2速が得られ、シフトスリーブS1 を中立に維持した状態でシフトスリーブS2 を後方にシフトすることで3速が、シフトスリーブS2 を前方にシフトすることで4速が得られる。各シフトスリーブS1 ,S2 がそれぞれシーケンス弁を兼用した油圧式アクチュエータとしての油圧シリンダC1 ,C2 によってシフト操作されるようになっている。
【0022】前後進切換え機構13は、シフトスリーブS3 を前方にシフトすることで前進が、後方にシフトすることで後進が得られるものであり、ステアリングハンドル21の左横側に設けた前後進切換えレバー22にシフトスリーブS3 が連係されている。そして、前後進切換え機構13が前進に切り換えられると、変速用油圧クラッチ12の出力側伝動軸23の動力が中間遊転軸24を介して高低変速機構14に伝達される。高低変速機構14で変速された動力は変速軸25を介して副変速機構15に伝達される。また、前後進切換え機構13が後進に切り換えられると、出力側伝動軸23の動力が高低変速機構14を介することなく直接に変速軸25に伝達される。
【0023】高低変速機構14は、シフトスリーブS4 を前方にシフトすることで低速「Lo」が得られ、後方にシフトすることで高速「Hi」が得られるものであり、その高低変速による伝動比は、主変速機構11における各変速段の間での伝動比より小さく設定されている。また、シフトスリーブS4 は、シーケンス弁を兼用した油圧シリンダC4 によってシフト操作されるようになっている。
【0024】副変速機構15は、シフトスリーブS5 を前方にシフトすることで低速「L」が得られ、後方にシフトすることで高速「H」が得られるものであり、その高低変速による伝動比は、主変速機構11における各変速段の間での伝動比より大きく設定されている。また、シフトスリーブS5 は、シーケンス弁を兼用した油圧シリンダC5 によってシフト操作されるようになっている。
【0025】超減速機構16は、シフトスリーブS6 を前方にシフトすることで「超減速切り状態」がもたらされて、副変速機構15で変速された出力が直接に最終変速軸26に伝達され、また、シフトスリーブS6 を後方にシフトすることで「超減速入り状態」がもたらされて、副変速機構15で変速された出力が減速軸27を迂回する間に大きく減速されて最終変速軸26に伝達されるようになっている。超減速切り状態 超減速入り状態 との中間位置に 中立位置 が設けてある。そして、シフトスリーブS6 は、運転席28の左側後方に配備された切換伝動操作具29によって操作されるようになっている。
【0026】オーバードライブ機構45は、シフトスリーブS7 を前方にシフトすることで「オーバードライブ切り状態」がもたらされ、副変速機構15で変速された動力はオーバードライブ機構45を迂回して最終変速軸26に伝達される。シフトスリーブS7を後方にシフトすると「オーバードライブ入り状態」がもたらされ、オーバードライブ機構45で増速された動力は最終変速軸26に伝達される。そして、シフトスリーブS7は、運転席28の左側後方に配備された切換伝動操作具29によって操作されるようになっている。つまり、切換伝動操作具29は超減速とオーバードライブ変速を切り換える操作具に兼用されている。この切換伝動操作具29の構成については後記する。
【0027】主変速機構11を操作する油圧シリンダC1,C2 、副変速機構15を操作する油圧シリンダC5、高低変速機構14を操作する油圧シリンダC4、および、変速用油圧クラッチ12に対する油圧制御回路の構成が図3に示されている。図4において、V1 〜V7は電磁式アンロード弁、V8は電磁比例制御弁、V9はパイロット式アンロード弁であり、30は運転席28の左横側に前後揺動可能に配備された変速レバー、31はこの変速レバー30の操作位置を検出するポテンショメータであり、電磁式アンロード弁V1 〜V6 、電磁比例制御弁V7 、とともに制御装置32に接続されている。
【0028】変速レバー30は、図5、図6、および、図7に示すように、左側後輪フェンダ33の内側に固定されたレバーガイド34のガイド溝35から突設されており、その操作ストロークの最後端が中立Nに設定されるとともに、これより前方に前進12段、後進8段の変速位置が設定されている。
【0029】後輪フェンダ33の内側には板金製の支持ブラケット36が固着されるとともに、この支持ブラケット36に回転自在に横架した支軸37にレバー支点部材38が固着され、レバー支点部材38に変速レバー30の基端が支軸37と直交する前後向き支点xを介して左右揺動可能に枢支連結されている。また、図8に示すように、支持ブラケット36に連設した支持辺36aにはポテンショメータ31が取付けられ、その操作軸31aと支軸37とが同芯状に連結され、変速レバー30の前後揺動位置がポテンショメータ31によって検出可能となっている。変速レバー30は、その左右揺動支点xに装備されたねじりバネ39によって常に左側に揺動付勢されており、段差状に形成されたガイド溝35の左側縁に沿って案内移動されるようになっている。
【0030】また、支持ブラケット36には側方から見て扇形の位置決めプレート部36bが起立連設されている。この位置決めプレート部36bの外周縁には、中立および12段の変速位置に相当する位置決め凹部41が形成されるとともに、レバー支点部材38には、支点y回りに上下揺動可能かつバネ42によって下向きに揺動付勢されたデテントアーム43が装着され、このデテントアーム43に備えたローラ44が位置決めプレート部36bの外周縁の位置決め凹部41に弾性係入されることで、変速レバー30を中立および12段の変速位置に安定保持することができるように構成されている。
【0031】変速レバー30による前進12段の変速と、主変速機構11、副変速機構15、および、高低変速機構14の切り換え状態との関係は図15に示す図表のようになる。すなわち、前進第1速では、主変速機構11が1速、副変速機構15が低速「L」、高低変速機構14が低速「Lo」にそれぞれ切り換えられ、前進第2速では、主変速機構11が1速、副変速機構15が低速「L」のままで高低変速機構14が高速「Hi」に切り換えられ、前進第3速では、主変速機構11が2速、副変速機構15が低速「L」、高低変速機構14が低速「Lo」にそれぞれ切り換えられ、前進第4速では、主変速機構11が2速、副変速機構15が低速「L」のままで高低変速機構14が高速「Hi」に切り換えられ、前進第5速では、主変速機構11が3速、副変速機構15が低速「L」、高低変速機構14が低速「Lo」にそれぞれ切り換えられ、前進第6速では、主変速機構11が3速、副変速機構15が低速「L」のままで高低変速機構14が高速「Hi」に切り換えられ、前進第7速では、主変速機構11が4速、副変速機構15が低速「L」、高低変速機構14が低速「Lo」にそれぞれ切り換えられ、前進第8速では、主変速機構11が4速、副変速機構15が低速「L」のままで高低変速機構14が高速「Hi」に切り換えられる。また、前進第9速から前進第12速までは、副変速機構15が高速「H」、高低変速機構14が高速「Hi」にそれぞれ維持されたまま、主変速機構11が1速から4速に切り換えられるようになっている。上記した前進第1速から前進代12速までの変速形態は、超減速機構16を入りにした状態、及び、切りにした状態においても、採用されるものであり、例えば、超減速を入りにした場合も、又反対に超減速を切りにした場合も、前進第1速においては、主変速機構11が第1速、副変速機構15が低速 、高低変速機構14が Lo」である。
【0032】図14に、前進での変速分布特性の一例が示されている。ここで、図中の(A)は、超減速機構16を「切り」にして通常走行を行う場合の特性、(B)は、超減速機構16を「入り」にして極低速作業を行う場合の特性であり、通常の耕耘作業では、特性(A)において低速域の前進第1速から前進第8速までが選択され、移動走行時には、特性(A)において高速域の前進第9速から前進第12速までが選択される。又、(C)は、オーバードライブ機構45を「入り」にして高速走行を行う場合の特性であり、前進第1速から前進第6速までが選択される。オーバードライブ機構45の構成及び操作構造については後記する。従って、作業走行時には低速域で細かく速度設定できるとともに、移動走行時には不必要に細かくない適度の粗さで走行速度を選択することができる。
【0033】なお、前後進変速レバー22が「後進」に切り換えられると、主変速機構11からの変速動力は高低変速機構14を介することなく副変速機構15に伝達されることになり、主・副両変速機構11,15の組み合わせ選択によって8段の変速が実行される。つまり、この「後進」状態では、図8中に示されるように、前進第1速位置と前進第2速位置とが後進第1速位置に、前進第3速位置と前進第4速位置とが後進第2速位置に、前進第5速位置と前進第6速位置とが後進第3速位置に、前進第7速位置と前進第8速位置とが後進第4速位置になり、前進第9速位置から前進第12速位置までが後進第5速位置から後進第8速位置になるのである。
【0034】変速レバー30の変速操作位置が検出されると、電磁アンロード弁V1 〜V6を作動制御することで、変速に必要なシフトスリーブS1 〜S5 を油圧シリンダC1 〜 C5 によってシフト操作するとともに、電磁制御弁V7 を作動制御することになり、以下にその変速制御動作の一例を説明する。
【0035】図4は、主変速機構11が1速、副変速機構15が低速「L」、高低変速機構14が高速「Hi」の状態、つまり、前進第2速の状態が示されており、ポンプPからの圧油によって変速用クラッチ12はクラッチ入り状態にある。ここで変速レバー30を前進第2速位置から前進第3速位置に移動させると、主変速機構11を1速から2速に切り換えるとともに、高低変速機構14を高速「Hi」から低速「Lo」に切り換えるために、電磁アンロード弁V1 ,V2 ,V5 が逆状態に駆動され、油圧シリンダC1 およびC4 が短縮作動を開始する。
【0036】油圧シリンダC1 ,C4 がシフト操作を開始すると、これによってチェック弁46が機械的に開放されて油路47の圧力が低下し、この油路の圧力をパイロット圧としているパイロット式アンロード弁V9が復帰バネによって切り換え操作されて、走行用油圧クラッチ12からの圧油排出が行われ、自動的にクラッチ切り状態となりシフトスリーブS1,S4 のシフト作動が円滑に行われる。
【0037】シフトスリーブS1,S4 が所定の変速位置にまでシフトされると、油圧シリンダC1 ,C4 によるチェック弁46の強制開放作用がなくなって、チェック弁46が再び閉じ、油路47の圧力が上昇開始してアンロード弁V9が走行用油圧クラッチ12への圧油供給位置に切り換えられる。この場合、油路47の圧力上昇が圧力センサPSで検知されることで、電磁比例制御弁V8の開度制御が開始され、走行用油圧クラッチ12に供給される圧油の昇圧が所定の特性で除々に行われ、ショックのないクラッチ入り制御が実行される。
【0038】次に、オーバードライブ機構45を入り切り操作して、変速レバー30による前進6段 後進4段のオーバードライブ変速について説明する。主変速機構11、副変速機構15、および、高低変速機構14の切り換え状態は、図15に示す図表のようになる。但し、副変速機構15は常に中立位置である。
【0039】すなわち、前進オーバードライブ第1速では、主変速機構11が1速、高低変速機構14が高速「Hi」にそれぞれ切り換えられる。前進オーバードライブ第2速では、主変速機構11が2速、高低変速機構14が高速「Hi」に維持される。前進オーバードライブ第3速では、主変速機構11が3速、高低変速機構14が低速「Lo」にそれぞれ切り換えられる。前進オーバードライブ第4速では、主変速機構11が3速に維持され、高低変速機構14が高速「Hi」に切り換えられる。前進オーバードライブ第5速では、主変速機構11が4速に切り換えられ、高低変速機構14が低速「Lo」にそれぞれ切り換えられる。前進オーバードライブ第6速では、主変速機構11が4速に維持され、高低変速機構14が高速「Hi」に切り換えられる( この部分が請求項4に対応する部分である) 。
【0040】次にオーバードライブでの後進操作については図16に示す図表のようになる。すなわち、副変速機構15は中立位置に維持され、高低変速機構14は変速に無関係となり、オバードライブ機構45を入り状態にして、後進オーバードライブ変速操作は主変速機構11を4段に変速して行われる( この部分が請求項6に対応する部分である) 。説明は省略するが、他の変速段での作動についても基本的には上記と同様であり、シフトスリーブの作動の間は走行変速用クラッチを切り、シフト完了後に所定の昇圧特性で走行変速用クラッチを入り制御することになる。
【0041】次に,オーバードライブ(OD)状態での具体的速度構成について表記する。
OD前進 前進速度 主変速機構 OD後進 後進速度 1速 13km/h 第1速 1速 12km/h 2速 18 第2速 3速 19 第3速 2速 16 4速 23 第3速 5速 25 第4速 3速 20 6速 30 第4速 4速 27以上のように、主変速機構11の変速位置を設定した状態において、前進状態から後進状態に切り換えた場合には、後進速度の方を低速になるように設定してある( この部分は請求項5,7に対応するものである) 。ただし、上記した場合は前進速度を後進速度に比較して高速になるように設定してあるが、反対に後進速度を前進速度より高速になるように設定してもよく、又、オーバードライブ低速域では後進速度の方が高速であるが、オーバードライブ高速域においては前進速度が後進速度より高速であるように設定してもよい。このように設定することによって、操向操作を行うことが容易になる。以上の記載より、超減速状態での変速段数は12段であるが、オーバードライブ状態での変速段数は6段であるので、走行形態に対応した変速段数となっていることが分かる( ここまでの記載が請求項1から3までの記載に対応する部分である。)以上のように、超減速状態での変速段数とオーバードライブ状態での変速段数は異なっている。この切換を行うのは、変速段数変更手段であるが、変速段数変更手段は制御装置32を含む各種センサ67と油圧シリンダC1等によって構成される。
【0042】切換伝動操作具29の取付構造について説明する。図8、10、11に示すように、ミッションケース6の側面にブラケット51を立設するとともに、ブラケット51より横向き支軸52を突設し、横向き支軸52に揺動ブロック53とこの揺動ブロック53を挟み込むように二つの連動フレーム54A,54Bを遊転支持させてある。二つの連動フレーム54A,54Bのうちミッションケース6側に位置するものをオーバードライブ用のもの54Aとして、横向き支軸52の先端側のもの54Bを超減速用として使用する。横向き支軸52の下方に、ミッションケース6の側面に平行に枢支軸55を配置し、揺動ブロック53に枢支軸55を差し込み支持させている。枢支軸55に枢支軸55の軸心周りで左右揺動自在に基端フレーム56を取付け、基端フレーム56の上面に操作フレーム57を取り付けて、切換伝動操作具29を構成してある。上記構成になる切換伝動操作具29は、横向き支軸52の軸心周りに前後揺動可能であり、かつ、枢支軸55周りで左右揺動可能に構成してある。
【0043】オーバードライブ用及び超減速用の操作連係構造について説明する。図6、10に示すように、オーバードライブ用の連動フレーム54Aより下向きに連係ロッド58を延出し、連係ロッド58の延出端をシフトスリーブS7駆動用のアーム59に連動連結してある。アーム59は、軸59A周りで揺動可能に支持されている。超減速用の連動フレーム54Bと超減速用のシフトスリーブS6駆動用のアーム60とを、連係ロッド61で連係してある。
【0044】次に、オーバードライブ用及び超減速用の操作連係構造としての、切換伝動操作具29と二つの連動フレーム54A,54Bとの連係構造について説明する。図11に示すように、切換伝動操作具29より二つの連動フレーム54A,54Bに向けて連係ピン62を突設する。一方、二つの連動フレーム54A,54Bの上端には係合用の凹入部54a,54bが連係ピン62と係合可能に形成されている。連係ピン62の長さは、両連動フレーム54Aと連動フレーム54Bとの間隔よりも短い長さではあるが、切換伝動操作具29を連動フレーム側に傾動させた状態で連係ピン62が凹入部54a又は54bに係合する長さに設定してある。
【0045】ここに、切換伝動操作具29は巻きバネ63によって、超減速用の連動フレーム54B側に傾くように付勢されており、連動フレーム54B側に付勢されている状態で切換伝動操作具29を横向き支軸52周りで前後方向に操作すると、超減速操作が行えるようになっている。巻きバネ63の付勢力に抗して切換伝動操作具29を反対側に揺動操作すると、連係ピン62が凹入部54aに係合視、オーバードライブ用の連動フレーム54Aと連係させることができ、オーバードライブ操作が可能になる。切換伝動操作具29は変速レバー30の後方に配置されており、レバーガイド34に操作ガイド溝34Bを形成するに、図13に示すように、超減速用の直線溝34aの中間点つまり中立位置よりオーバードライブ用のガイド溝34bを分岐している。したがって、超減速状態が中立状態に設定されなければ、オーバードライブ用の操作に移行できない構成となっている。
【0046】上記したように、オーバードライブと超減速の操作とが同時に行えない構成を採用しているが、このような同時操作を牽制する機構としては操作レバー側においても設けてある。つまり、図10に示すように、横向き支軸52に対して切換伝動操作具29の横向き支軸52周りで前後揺動自在な牽制アーム65を設けるとともに、超減速用の駆動アーム60の回転軸60Aに被牽制アーム66を設ける。牽制アーム65は連係フレーム54Aと一体形成されている。牽制アーム65には先端部に係合ピン65Aを設けてあり、被牽制アーム66には十字状の係合溝66Aが設けてあり、図示するように係合ピン65Aが十字状の係合溝66Aの中心位置にあると、超減速が中立位置にある状態を示しており、係合ピン65Aが矢印方向に移動できるようになっている。つまり、切換伝動操作具29のオーバードライブ操作が可能になっている。係合ピン65Aが中心位置以外の位置にあると、牽制アーム66の回動が規制される。
【0047】図11に示すように、連動フレーム54Aには接触式センサ67が設けてあり、切換伝動操作具29をオーバードライブ操作側に傾動させると、操作アーム57が接触式センサ67に作用し、オーバードライブ操作における中立位置に操作されたことがわかる。そして、切換伝動操作具29は連動アーム54Aと連係ピン62を介して係合されており、切換伝動操作具29をオーバードライブ用の係合溝34bに沿って操作すると、切換伝動操作具29と連動アーム54Aとが一体で揺動する。連動アーム54Aに取付けられている接触式センサ67も一体で揺動し、操作アーム57との接触状態が維持されている。この接触式センサ67は切換伝動操作具29がオーバードライブ機構45に対する操作開始点に至ったことを検出するもので操作開始検出手段を構成するが、切換伝動操作具29がオーバードライブの中立位置に操作された状態から検出するように連動アーム54Aに取り付けてある。これは、オーバードライブ機構45の入力軸48と副変速機構15の変速軸25が共用化されており、副変速機構15を中立位置に操作する為である。又、図11及び図12に示すように、オーバードライブ操作時に副変速機構15の操作を行えない牽制機構49を設ける必要があるが、牽制機構49はつぎのようなものである。図6及び図11に示すように、オーバードライブ用駆動アーム59と同一回転軸59Aに取付けられたミッションケース内の変速シフトアーム68と、副変速機構15のシフトスリーブS5を操作する副変速シフトアーム69とを近接して配置し、変速シフトアーム68に係合ピン68Aを、副変速シフトアーム69に係合ピン68Aを係入する十字状の係合溝69Aを形成してある。図12に示すように、副変速機構15が中立位置にあると、係合ピン68Aが十字状の係合溝69Aの中心位置にあり、オーバードライブ機構45に対する操作が可能になる。係合ピン68Aが係合溝69Aの中心位置よりはずれると牽制アーム68が揺動できず、オーバードライブ機構15に対する操作は行えない。この機構は、接触式センサ67が故障した場合においてその機能を発揮する。つまり、接触式センサ67が故障した場合は、副変速機構15を中立位置に戻す制御が働かない。従って、副変速機構15が中立位置以外の操作位置にある場合には、係合ピン68Aが係合溝69Aに接当して、切換設定操作具29のオーバードライブ操作域への操作移動を阻止する構成となっている。したがって、牽制機構49が故障対策にもなっている。
【0048】切換伝動操作具29によってオーバードライブ状態が選択されると、選択された後は、変速レバー30によって複数段に変速される。変速レバー30によってオーバードライブ状態での変速操作を行うので、オーバードライブ状態での変速段数の表示は変速レバー30のレバーガイド34における操作ガイド面の案内溝34Aに沿って施してある。つまり、図9に示すように、主変速の変速段数表示aとオーバードライブ状態での変速段数表示bとをガイド溝の一側方に並べて設けてある。変速レバ- 30の左側が後進状態での変速表示であり、右側が前進状態での変速表示である。上記構成においては、主変速等の変速段数表示aとオーバードライブ状態での変速段数表示bとを左右方向に並設したが、主変速等の変速段数表示aを前方に、オーバードライブ状態での変速段数表示bを後方に位置させる等、前後に配置して構成してもよい。又、図17に示すように、変速レバー30に対する案内溝35をJ型状に形成し、主変速等の変速段数表示aを長い溝部分に沿って施すとともに、J型状溝の先端部にオーバードライブ状態での変速段数表示bを表示することにして、主変速等の変速段数表示aとオーバードライブ状態での変速段数表示bとを並設する際に、読み取りにくさを解消する構成としてもよい。
【0049】運転席28の前方には運転表示部として液晶表示部を設け、変速段数を表示するようにしてある。通常の走行時における段数表示からオーバードライブ時の段数表示に切り換える場合には、変速段数を表示する数字が白抜きの数字に切り替わるようにして、運転者に注意を促すような表示形式とする。
【0050】〔別実施形態〕本発明は以下のような形態で実施することもできる。
・ 上記実施形態では、主変速機構11、副変速機構15、および、高低変速機構14を単一の変速レバー30で操作するようにしているが、主変速機構11と副変速機構15を単一の変速レバーで操作し、高低変速機構14をこの変速レバーのグリップに備えたスイッチで操作する形態にすることもできる。
・ 変速機構自体の形態も上記のように油圧シリンダで駆動シフトする形式のものの他に、各変速段ごとに油圧クラッチを備えて、そのクラッチ群の選択によって所望の変速段での伝動を行う形式のものに適用することも容易である。
・ 高低変速機構14としては、シフト形式のものの他に遊星ギヤ式のものであってもよい。
・ 操作開始検出手段67としては、リミットスイッチのように接触子を揺動指せてスイッチ動作を行わせるものや、圧電素子等の圧接式等のものが使用できる。
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【出願日】 平成11年11月4日(1999.11.4)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
【公開番号】 特開2001−132839(P2001−132839A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−313817