| 【発明の名称】 |
車両用無段変速機の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】浅山 弘樹
【氏名】近藤 薫
【氏名】橋本 徹
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| 【要約】 |
【課題】車両用無段変速機の制御装置に関し、駆動輪がスリップ状態からグリップ状態に復帰した際に、車両のショックを招かないようにするとともに、無段変速機における動力伝達系のスリップを防止できるようにする。
【解決手段】係合力が調整可能な動力伝達装置を介してエンジンに連結された車両用無段変速機を制御するにあたって、無段変速機からの駆動力を受けて回転する駆動輪がスリップしていることをスリップ検出手段51が導出すると、このとき、スリップ対応制御手段52により、駆動輪のスリップ直前の変速比を保持するように無段変速機の変速を制御し、無段変速機のライン圧を増加補正し、エンジンと無段変速機との間の係合力調整可能な動力伝達装置の係合力を低下させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 係合力が調整可能な動力伝達装置を介してエンジンに連結された車両用無段変速機の制御装置において、該無段変速機からの駆動力を受けて回転する駆動輪がスリップしているか否かを導出するスリップ導出手段と、該スリップ導出手段により該駆動輪のスリップ状態が導出されたときに、スリップ直前の変速比を保持するように該無段変速機の変速を制御するとともに該無段変速機のライン圧を増加補正し、且つ、該動力伝達装置の係合力を低下させるスリップ対応制御手段とがそなえられていることを特徴とする、車両用無段変速機の制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、駆動輪のスリップ時を考慮して制御を行なう、車両用無段変速機の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、無段変速機が、変速比を連続的に制御することで変速ショックを回避できる点や燃料消費効率の優れた点に着目され、特に車両用の開発が盛んに行なわれている。このような無段変速機では、一般に油圧制御により変速比の制御を行なうようになっている。 【0003】例えばベルト式無段変速機の場合、機関(エンジン)で発生した動力がベルトを介してプライマリプーリからセカンダリプーリへ伝達される。この際、通常はセカンダリプーリの油圧ピストンには伝達トルクなどの基本特性に合わせて設定された油圧(ライン圧)を作用させてベルトへのクランプ力を与えておき、プライマリプーリの油圧ピストンに作用させる油圧を調整することで変速〔変速比(プライマリプーリとセカンダリプーリとの各有効半径比)の制御〕を行なう。 【0004】車両用無段変速機の場合、このような無段変速機の変速制御は、一般に、プライマリプーリの回転数(回転速度)フィードバック制御により行なう。つまり、変速制御は、プライマリプーリの目標回転数を車速やスロットル開度に基づいて設定し、プライマリプーリの実回転数がこの目標回転数になるように、プライマリプーリ側に作用させる油圧を制御することで行なうようにしている。 【0005】ところで、上述のようなプライマリプーリの回転数フィードバック制御による無段変速機の変速制御は、駆動輪にスリップ(タイヤスリップ)が生じていないことが前提となり、タイヤスリップ時には制御ロジックが成立しない。そこで、車両における最大加速度を基準値として、駆動輪の回転加速度がこの基準値を越えた場合にはタイヤスリップと判定し、このタイヤスリップ時には、タイヤスリップ開始直前の変速比を保持するように制御を行なう技術が提案されている。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のようにタイヤスリップ時に変速比を保持すると、タイヤスリップ時には駆動輪が路面から回転反力を受けなくなるので、駆動輪の回転数が急上昇し、変速比が一定とされるためエンジン回転数も上昇する。しかし、タイヤグリップが回復したら、駆動輪が路面から回転反力を受けるようになるので、駆動輪の回転数が急低下すると同時に変速比が一定とされていたエンジン回転数も急低下する。この回転の急低下により、エンジン内の回転部の慣性トルクが急増するため、この慣性トルクの急変分だけ、エンジンから出力される駆動力が急変するため、車両にショックが発生するおそれがある。 【0007】また、油圧制御によるベルト式無段変速機では、ライン圧を適切に制御することで過不足ないベルトクランプ力を与えるようにしているが、駆動輪がスリップ状態からグリップ状態に復帰した際には、ライン圧を制御する油圧の応答性よりも無段変速機への入力トルク(エンジン出力トルク)の変化の方が速くなることがあり、この場合には、油圧不足によりベルトスリップに至るおそれもある。 【0008】なお、車両用無段変速機には、車両を滑らかに発進させ且つ通常走行時の燃費を向上させるために、エンジンと無段変速機との間にロックアップクラッチ付きのトルクコンバータを介装したものがあるが、走行中は通常ロックアップクラッチを作動させエンジンと無段変速機とを直結状態にするので、上記のエンジン出力の急変は吸収されず、車両にショックを招くおそれや油圧不足によりベルトスリップを招くおそれは回避できない。 【0009】本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、駆動輪がスリップ状態からグリップ状態に復帰した際に、車両のショックを招かないようにするとともに、過渡的な油圧不足からベルト式無段変速機におけるベルトスリップのような無段変速機における動力伝達系のスリップを防止することができるようにした、車両用無段変速機の制御装置を提供することを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】このため、本発明の車両用無段変速機の制御装置では、係合力が調整可能な動力伝達装置を介してエンジンに連結された車両用無段変速機を制御するにあたって、スリップ導出手段が、該無段変速機からの駆動力を受けて回転する駆動輪がスリップしていることを導出すると、このときに、スリップ対応制御手段が、スリップ直前の変速比を保持するように該無段変速機の変速を制御するとともに該無段変速機のライン圧を増加補正し、且つ、該動力伝達装置の係合力を低下させる。これにより、駆動輪のスリップ時に無段変速機の変速を確実に制御できるとともに、スリップ状態では、ライン圧を増加補正し動力伝達装置の係合力を低下させているので、スリップ状態からグリップ状態への復帰時に、ライン圧の不足を回避して動力伝達系のスリップを防止することができ、係合力調整可能な動力伝達装置によりエンジン出力の急変を吸収して車両におけるショックの発生を防止することができる。 【0011】 【発明の実施の形態】以下、図面により、本発明の実施の形態について説明すると、図1〜図5は本発明の一実施形態としての車両用無段変速機の制御装置を示すもので、これらの図に基づいて説明する。まず、本実施形態にかかる車両の動力伝達機構について説明すると、図2(a),(b)に示すように、本動力伝達機構では、エンジン(内燃機関)1から出力された回転は、トルクコンバータ(トルコン)2を介してベルト式無段変速機(CVT)20に伝達され、さらにフロントデフ31へ伝達されるようになっている。 【0012】トルコン2には、係合力が調整可能な動力伝達機構として、ロックアップクラッチ2Aが併設されており、発進時にはトルコン2による差回転吸収機能を利用して滑らかな発進性能を確保し、その後の通常走行時には、ロックアップクラッチ2Aを結合してエンジン1と無段変速機20とを直結状態として動力伝達ロスを低減できるようになっている。なお、ロックアップクラッチ2Aはデューティソレノイド2Bによりその断接を制御される。 【0013】そして、トルコン2の出力軸7とベルト式無段変速機20の入力軸24との間には、正転反転切換機構4が配設されており、エンジン1からトルコン2を介して入力される回転は、この正転反転切換機構4を介して無段変速機構20に入力されるようになっている。無段変速機20は、変速制御等を後述の油圧制御により行なう油圧式無段変速機となっている。 【0014】この無段変速機構20についてさらに詳述すると、無段変速機構20は、プライマリプーリ21とセカンダリプーリ22とベルト23とから構成されており、正転反転切換機構4からプライマリシャフト24に入力された回転は、プライマリシャフト24と同軸一体のプライマリプーリ21からベルト23を介してセカンダリプーリ22へ入力されるようになっている。 【0015】プライマリプーリ21,セカンダリプーリ22はそれぞれ一体に回転する2つのシーブ21a,21b,22a,22bから構成されている。それぞれ一方のシーブ21a,22aは軸方向に固定された固定シーブであり、他方のシーブ21b,22bは油圧アクチュエータ(油圧ピストン)21c,22cによって軸方向に可動する可動シーブになっている。 【0016】油圧ピストン21c,22cには、オイルタンク61内の作動油をオイルポンプ62で加圧して得られる制御油圧が供給され、これに応じて可動シーブ21b,22bの固定シーブ21a,22a側への押圧力が調整されるようになっている。セカンダリプーリ22の油圧ピストン22cには、調圧弁(ライン圧調整弁)63により調圧されたでライン圧が加えられ、プライマリプーリ21の油圧ピストン21cには、調圧弁63により調圧された上で流量制御弁(変速比調整弁)64により流量調整された作動油が供給され、この作動油が変速比調整用油圧(プライマリ圧)PR として作用するようになっている。なお、調圧弁63,流量制御弁64は、それぞれデューティソレノイド63a,64aにより出力圧を制御される。 【0017】なお、ライン圧は、ベルト23の滑りを回避して動力伝達性を確保できる範囲で可能な限り低い圧力にすることが、オイルポンプ62によるエネルギ損失の低減や変速機自体の耐久性を高める上で重要であり、伝達トルク,セカンダリプーリ22のベルトの掛かり半径と対応する値に基づいてベルト張力制御圧(ライン圧に対応する圧力)Pout を設定し、このベルト張力制御圧Pout に基づいて、調圧弁63を制御してオイルポンプ62の吐出圧を調圧することにより、ライン圧制御を行なうようになっている。 【0018】また、セカンダリプーリ22の油圧ピストン22cに与えられるライン圧PL及びプライマリプーリ21の油圧ピストン21cに与えられるプライマリ圧PRは、コントローラ(電子制御コントロールユニット=ECU)50の指令信号により作動するデューティソレノイド63a,64aによって、それぞれ制御されるようになっている。 【0019】つまり、ECU50には、エンジン回転数センサ(クランク角センサ又はカム角センサ)41,スロットル開度センサ46,プライマリプーリ21の回転速度を検出する第1回転速度センサ43,セカンダリプーリ22の回転速度を検出する第2回転速度センサ44,ライン圧を検出するライン圧センサ45,変速比調整用油圧(プライマリ圧)PR を検出するプライマリ圧センサ47等の各検出信号が入力されるようになっており、ECU50では、これらの検出信号に基づいて各ソレノイド63a,64aを駆動し調圧弁63や流量制御弁64を制御するようになっている。 【0020】ところで、回転数フィードバック制御によるプライマリプーリ21への油圧制御を通じた無段変速機の変速制御ロジックは、駆動輪がグリップ状態であることが前提のものであり、駆動輪にスリップが生じた時(タイヤスリップ時)には成立し得ないので、本制御装置では、タイヤスリップ時には、タイヤスリップ開始直前の変速比を保持するように変速比調整用油圧PR の制御を行なうようになっている。 【0021】このため、図1に示すように、ECU50には、上述の調圧弁63の制御(ライン圧制御)や流量制御弁64の制御(変速比制御)を行なう機能の他に、タイヤスリップが生じているか否かを導出(又は判定)する機能(スリップ導出手段又はスリップ判定手段)51と、このタイヤスリップ時に、無段変速機における変速比,ライン圧,及びロックアップクラッチ(動力伝達装置)2Aの係合状態に関して制御の補正等を行なう機能(スリップ対応制御手段)52とが設けられている。 【0022】図1に示すように、スリップ導出手段51は、車両の駆動系に出力される駆動力FEを算出する駆動力算出部51Aと、算出された駆動力FEに基づいてスリップ判定用加速度GSを算出するスリップ判定用加速度算出部51Bと、セカンダリプーリ22の回転速度(回転数)NSの偏差に基づいて車両加速度GXを算出する車両加速度算出部51Cと、スリップ判定用加速度GSと車両加速度GXとを比較してタイヤスリップを判定するタイヤスリップ判定部51Dとから構成されている。 【0023】駆動力算出部51Aでは、次式(1)のように、トランスミッション入力トルクTINからトランスミッション損失トルクTL を減算して得られる駆動トルク(駆動輪から路面に加えられる車体駆動トルク)に、無段変速機20による変速比ratio と終減速比iF とを乗算し、さらに駆動輪のタイヤ半径rで除算して駆動力(駆動輪から路面に加えられる車体駆動力)FEを算出する。 【0024】 FE=(TIN−TL )・ratio ・iF /r ・・・(1) スリップ判定用加速度算出部51Bでは、次式(2)のように、駆動力算出部51Aで算出された駆動力FEを車体重量Wで除算して、これにマージン(算出値の誤差分を考慮してスリップを誤判定しないようにするための補正値)GS0を加算してスリップ判定用加速度GSを算出する。 【0025】 GS=FE/W+GS0 ・・・(2) 車両加速度算出部51Cでは、次式(3)のように、セカンダリプーリ22の回転数NSの所定の周期による偏差(=NSn −NSn-1 )を終減速比iF 及び単位換算のための定数0.6で除算して駆動輪の回転数を算出し、この算出結果に駆動輪の外周長2πrを乗算することにより、車両加速度GX0を算出し、さらに、算車両加速度GX0を弱めの1次フィルタに2回かけて算出値を安定化(検出誤差等による演算誤差の抑制)を行なって、判定に用いる車両加速度GXを求める。 【0026】 GX0={2π・(NSn −NSn-1 )・r}/(0.6・iF ) ・・・(3) タイヤスリップ判定部51Dでは、スリップ判定用加速度算出部51Bで算出されたスリップ判定用加速度GSと、車両加速度算出部51Cで算出された車両加速度GXとを比較して、車両加速度GXがスリップ判定用加速度GS以上であれば、タイヤスリップが生じていると判定する。つまり、スリップ判定用加速度GSは、駆動系に出力されている駆動力から求められる車両の推定加速度であり、駆動輪がスリップすると、駆動輪から求められる車両の推定加速度GXは、このスリップ判定用加速度GS以上になるはずである。そこで、このように車両加速度GXとスリップ判定用加速度GSとからタイヤスリップを判定している。 【0027】一方、スリップ対応制御手段52は、タイヤスリップ判定手段51によりタイヤスリップが判定されると、無段変速機における変速比がタイヤスリップ直前の状態を保持するように変速を制御するとともに、ライン圧については増加補正し、ロックアップクラッチ(動力伝達装置)2Aについては係合力を弱めるように制御する。 【0028】これらのスリップ対応制御手段52による制御について更に説明する。変速制御については、図3(a)に示すように、通常時(タイヤグリップ時)は、プライマリプーリ21の目標回転数NPtをエンジン回転数Neとスロットル開度Thから設定し、この目標回転数NPtと第1回転速度センサ43により検出されるプライマリプーリ21の実回転数NPrとの偏差(=NPt−NPr)をPID補正し、この補正値に保持デューティ分を加算して、これを変速制御デューティとする。したがって、プライマリプーリ21の回転数による回転数フィードバックによりソレノイド64aを駆動し流量制御弁64を制御する。 【0029】一方、タイヤスリップ時の変速制御では、実ライン圧PLRに、タイヤスリップ直前の変速比ratio に応じたゲインGr を乗算して目標プライマリ圧(目標プーリ押付圧)PPaを算出し、この目標プーリ押付圧PPaと圧力センサで検出された実プライマリ圧(実プーリ押付圧)PPrとの偏差(=PPa−PPr)をPID補正し、この補正値に保持デューティ分を加算して、これを変速制御デューティとする。したがって、流量制御弁64からの吐出圧による圧力フィードバックによりソレノイド64aを駆動し流量制御弁64を制御する。 【0030】また、ライン圧については、図3(b)に示すように、入力トルク(伝達トルク)TINと変速比(即ち、ベルトの掛かり半径と対応する値)ratio とから目標ライン圧PLAを設定し、この目標ライン圧PLAにマージン(算出値の誤差分を考慮してベルトスリップを確実に回避できるようにする増加補正値)を加算して、この補正した目標ライン圧PLAC に基づいてフィードフォワード量FFを求めるとともに、補正した目標ライン圧PLAC と実ライン圧PLRとの偏差(=PLAC −PLR)をもとめ、これをPID補正して、ライン圧制御デューティとする。したがって、実ライン圧(調圧弁63からの吐出圧)PLRによる圧力フィードバックにより調圧弁63を制御する。目標ライン圧PLAを増加補正するマージンは、通常時用のものと、通常時よりも大きな値とされたタイヤスリップ時用とが用意され、タイヤスリップ時には通常時よりも補正された目標ライン圧PLAC を高く設定するように構成されている。 【0031】そして、ロックアップクラッチ2Aについては、図4(a)に示すように、トランスミッション入力トルクTINとSLIP量に基づいて、通常時には完全に直結状態となるようにロックアップクラッチ2Aの押付力を高く設定するが、ダンパクラッチであるロックアップクラッチ2Aの押付力を通常時よりも所定量αだけ減少させるようになっている。この押付力の減少補正により、ロックアップクラッチ2Aに大きな駆動力が加わるとロックアップクラッチ2Aが滑って、トルクショックを吸収しうるようになっている。 【0032】本発明の一実施形態としての車両用無段変速機の制御装置は、上述のように構成されているので、例えば、図5に示すようなフローでタイヤスリップ判定を行ない、この判定結果に基づいて図6に示すようなフローで各制御が行なわれる。まず、図5に示すように、駆動力算出部51Aで、前記の式(1)により、トランスミッション入力トルクTIN,トランスミッション損失トルクTL ,及び変速比ratio から駆動力(駆動輪から路面に加えられる車体駆動力)FEを算出する(ステップA10)。次に、スリップ判定用加速度算出部51Bで、前記の式(2)により、ステップA10で算出された駆動力FEからスリップ判定用加速度GSを算出する(ステップA20)。 【0033】一方、車両加速度算出部51Cで、前記の式(3)により、セカンダリプーリ22の回転数NSの所定の周期による偏差(=NSn −NSn-1 )から車両加速度GX0を算出する(ステップA30)。そして、タイヤスリップ判定部51Dで、ステップA20で算出されたスリップ判定用加速度GSと、ステップA30で算出された車両加速度GXとを比較して(ステップA40)、車両加速度GXがスリップ判定用加速度GS以上であれば、タイヤスリップが生じていると判定し(ステップA50)、車両加速度GXがスリップ判定用加速度GS未満であれば、タイヤスリップが生じていない(タイヤグリップ)と判定する(ステップA60)。 【0034】このような判定は所定周期で行なわれ、この判定を受けるように所定周期で図5の処理が行なわれる。つまり、図6に示すように、まず、タイヤスリップが生じている旨の判定が成されたか否かが判定され(ステップB10)、タイヤスリップが判定されなければ(即ち、タイヤグリップ時)、図3(a)の通常時制御が選択され、無段変速機20の変速比を通常制御する(ステップB50)。即ち、プライマリプーリ21の回転数による回転数フィードバックによりソレノイド64aをデューティ駆動し流量制御弁64を制御する。そして、図3(b)の通常時制御が選択され、無段変速機20のライン圧を通常制御する(ステップB60)。即ち、目標ライン圧PLAを増加補正するマージンとして通常時用のものを用いて制御する。さらに、図4(a)の通常時制御が選択され、ロックアップクラッチ2Aを通常の押付力により直結制御する(ステップB70)。即ち、完全に直結状態となるようにロックアップクラッチ2Aの押付力が高くなるように制御する。 【0035】一方、ステップB10でタイヤスリップと判定されると、図3(a)のタイヤスリップ時制御が選択され、無段変速機20の変速比をタイヤスリップ直前の値に保持するように制御する(ステップB20)。そして、図3(b)のタイヤスリップ時制御が選択され、無段変速機20のライン圧を増大補正する(ステップB30)。即ち、目標ライン圧PLAを増加補正するマージンとしてタイヤスリップ時用の大きなものを用いて制御する。さらに、図4(a)のタイヤスリップ時制御が選択され、ロックアップクラッチ(ダンパクラッチ)2Aの押付力を減少するように補正して制御する(ステップB40)。即ち、ダンパクラッチであるロックアップクラッチ2Aの押付力を通常時よりも所定量αだけ減少させる。 【0036】また、タイヤスリップからタイヤグリップに復帰したら、上述のステップB50に進み、ステップB50,B60,B70の処理が行なわれる。このように、本駆動系制御装置では、タイヤスリップ時に、無段変速機20の変速比をタイヤスリップ直前の値に保持し、且つ、無段変速機20のライン圧を増大補正し、且つ、ロックアップクラッチ(ダンパクラッチ)2Aの押付力を減少補正するので、駆動輪のスリップ時に無段変速機20の変速を確実に制御できるようにしながら、スリップ状態からグリップ状態への復帰時に、エンジン内の回転部の慣性トルクが急増してエンジンから出力される駆動力が急変した場合にも、タイヤスリップ時に増加補正されていた高めのライン圧により、ライン圧の不足を回避してベルト23のスリップを防止することができ、ベルト23の磨耗や損傷を防止することができる。また、タイヤスリップ時にロックアップクラッチ(ダンパクラッチ)2Aの押付力が減少補正されているので、スリップ状態からグリップ状態への復帰時に、エンジンから出力される駆動力が急変しても、ロックアップクラッチ(ダンパクラッチ)2Aの滑りによりこの駆動力の急変が吸収されて、車両におけるショックの発生を防止することができる。 【0037】なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施しうるものである。例えば、トルコンの代わりに電磁クラッチを用いたときは電磁クラッチへの電流値を変更制御することで同様の作用・効果を得ることができる。また、本実施形態では、図4(a)に示すように、タイヤスリップ時にはロックアップクラッチ(ダンパクラッチ)2Aの押付力を減少するように補正しているが、図4(b)に示すように、タイヤスリップ時にはロックアップクラッチ(ダンパクラッチ)2Aの押付力を完全解除(押付力=0)に制御することも考えられる。このように構成でも、エンジン駆動力の急変を吸収し車両ショックの発生を防止することができる。 【0038】また、例えば上記の実施形態では、図5に示すように、車両加速度GXがスリップ判定用加速度GS以上であれば、タイヤスリップが生じていると判定して、タイヤスリップ時制御を行なっているが、タイヤスリップが生じてもあまり悪影響はない状況もあるので、このような状況下ではタイヤスリップ時制御を行なわないようにしたり、タイヤスリップ判定も行なわないようにすれば、不必要なタイヤスリップ時制御等を回避して、制御頻度を低減させることができる。 【0039】タイヤスリップが生じてもあまり悪影響はない状況とは、車両加速度GS自体が小さい場合〔即ち、車両加速度GSが所定値GS1(例えば0.3G)以下(GS≦GS1)〕や、スロットル開度Thが微小でありタイヤスリップし得ない場合(即ち、Th≦ThSLIP,ThSLIP:タイヤスリップし得ないスロットル開度)や、ブレーキ操作中(ブレーキスイッチがオン)や、通常走行レンジ(Dレンジ)以外の場合や、レンジ切り換え中や、所謂スポーツモード等の変速比を一定保持するモードが選択された場合等がある。 【0040】また、本発明は、ベルト式のものに限定されず油圧式無段変速機には広く適用でき、例えばトロイダル式等のものにも適用しうる。 【0041】 【発明の効果】以上詳述したように、本発明の車両用無段変速機の制御装置によれば、駆動輪のスリップ時に無段変速機の変速を確実に制御でき、しかも、スリップ状態からグリップ状態への復帰時には、係合力調整可能な動力伝達装置によりエンジン出力の急変を吸収して車両におけるショックの発生を防止することができる。また、ライン圧の不足を回避して例えばベルト式無段変速機におけるベルト等の動力伝達系のスリップを防止することができ、ベルト等の動力伝達系の磨耗や損傷を防止することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006286 【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年11月4日(1999.11.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100092978 【弁理士】 【氏名又は名称】真田 有
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| 【公開番号】 |
特開2001−132828(P2001−132828A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月18日(2001.5.18) |
| 【出願番号】 |
特願平11−314109 |
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