| 【発明の名称】 |
ロックアップクラッチ機構 |
| 【発明者】 |
【氏名】渡辺 久志
【氏名】入谷 昌徳
【氏名】黒石 真且
【氏名】大森 俊英
【氏名】大澤 正敬
【氏名】小嶋 昌洋
【氏名】武内 博明
|
| 【要約】 |
【課題】ピストンを効果的に冷却することにより、スリップ制御作動領域(伝達トルクやスリップ回転数の範囲)を拡大する。
【解決手段】トルクコンバータ10におけるフロントカバー26には摩擦材34が設けられている。ロックアップピストン30には、摩擦材34の対向面よりも内周側(回転中心側)の位置に、冷却通路36が形成されており、ケース14内のオイルは外周側からロックアップピストン30を冷却しながら内周側の冷却通路36に流れ込む。また、冷却通路36は、ロックアップピストン30の回転中心線Cに対して、所定の傾斜角で傾斜しており、冷却通路36を通るオイルはロックアップ解放側油室33のフロントカバー26側において、内周側から外周側へと向かう速度成分を持つように流動方向が変換されロックアップ解放側油室の循環流が促進される。その結果、上記流れによりロックアップピストン30は両側より効果的に冷却される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ロックアップ係合側油室からの油圧力によってピストンとフロントカバーを摩擦材を介して接触させるロックアップクラッチ機構において、前記フロントカバー側に前記摩擦材を貼り付けると共に、前記ピストンにおける前記摩擦材の対向面の内周側となる部位に前記ピストンを効果的に冷却するための冷却通路を設けたことを特徴とするロックアップクラッチ機構。 【請求項2】前記冷却通路を通った前記オイルが内周側から外周側または回転方向へと向かう速度成分を持つように流動方向を変換する変換手段を有することを特徴とする請求項1に記載のロックアップクラッチ機構。 【請求項3】 前記変換手段が、前記冷却通路を傾斜させることにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載のロックアップクラッチ機構。 【請求項4】 前記変換手段が、前記フロントカバーと前記ピストンとの間に設けられた傾斜面であることを特徴とする請求項2に記載のロックアップクラッチ機構。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、入力側部材の回転でオイルに運動エネルギーを与えこの運動エネルギーによって出力側部材を回転させるトルクコンバータにおいて、ロックアップ係合側油室とロックアップ解放側油室との圧力差によって作動するロックアップクラッチ機構に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、ロックアップクラッチ機構においては、スリップ制御作動領域(伝達トルクやスリップ回転数の範囲)を拡大しようとすると、スリップ時の摩擦仕事の増大により摩擦面の温度上昇が大きくなる。そして、摩擦面の温度が上昇するほど、摩擦材の熱劣化は速まり、寿命が短くなるので、摩擦面の温度上昇を抑制するため、種々の工夫が施されている。 【0003】例えば、特開平5−306742号公報に示されるロックアップクラッチでは、図15に示される如く、フロントカバー100に摩擦材102を貼付け、対向するピストン104側に孔106が形成されている。このため、摩擦材102が係合させられている間、ロックアップ係合側油室108側(背面側)からロックアップ解放側油室110側(正面側)へオイル(図15の矢印W)が孔106を通って摩擦材102の摩擦面に供給され、摩擦材102全体が冷却される。即ち、スリップ時における発熱をオイルによる熱吸収分を多くして防いでいる。 【0004】また、特開平2−80857号公報に示されるロックアップクラッチでは、図16に示される如く、ピストン120の一方の側にロックアップ解放側油室122を、他方の側にロックアップ係合側油室124を形成すると共にピストン120には、ロックアップ係合側油室124とロックアップ解放側油室122とを互いに連通するオリフィス126が形成されている。なお、上記実施例では摩擦材130はピストン120に貼付けられている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ロックアップクラッチの作動のためにはロックアップ係合側油室側とロックアップ解放側油室側で圧力差が必要なため、摩擦材はオイルシールとしての機能も兼ねている。しかしながら、図15に示した特開平5−306742号公報におけるロックアップクラッチでは、摩擦材102の摩擦面にオイルが流れるため冷却には効果的であるが、オイルが流れることでシール性が犠牲になり、伝達トルクの低下が発生する。また、摩擦材102の相手材104に孔106があるので、摩擦材102に対して損傷を与えることになる。 【0006】また、図16に示した特開平2−80857号公報におけるロックアップクラッチでは、ピストン120に摩擦材130を貼り付け、フロントカバー132側が摩擦面となる構成となっている。この結果、スリップ時にフロントカバー132が発熱する。この時、外部空気流れによる熱伝達率は、オイル流れによる熱伝達率より小さいため、外部空気によって冷却されるフロントカバー132の片側面132Aは、十分な冷却効果が得られない。 【0007】本発明は、上記事実を考慮し、ピストンを効果的に冷却することができ、その結果としてスリップ制御作動領域(伝達トルクやスリップ回転数の範囲)を拡大できるロックアップクラッチを得ることを課題とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明では、ロックアップ係合側油室からの油圧力によってピストンとフロントカバーを摩擦材を介して接触させるロックアップクラッチ機構において、前記フロントカバー側に前記摩擦材を貼り付けると共に、前記ピストンにおける前記摩擦材の対向面の内周側となる部位に前記ピストンを効果的に冷却するための冷却通路を設けたことを特徴とする。 【0009】従って、摩擦材をフロントカバー側に貼り付けることで、オイルとの接触が両側接触であるピストンが発熱体となるので、片側接触(他方は空気)のフロントカバーよりオイルとの接触面積が大きく、その結果として、ピストンを効果的に冷却できる。また、ロックアップ係合側油室からの油圧力によって、ピストンとフロントカバーとが摩擦材を介して接触する時、冷却通路により、ロックアップ係合側油室のオイルがピストン外周側から内周側に回り込み、このオイル流れによって、摩擦材との接触により発熱体となっているピストンを効果的に冷却することができる。この結果、許容摩擦仕事を増やせるので伝達トルクやスリップ回転数などを増大できる。 【0010】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のロックアップクラッチ機構において、前記冷却通路を通った前記オイルが内周側から外周側または回転方向へと向かう速度成分を持つように流動方向を変換する変換手段を有することを特徴とする。 【0011】従って、請求項1に記載の内容に加えて、オイルは変換手段によって、内周側から外周側または回転方向へと向かう速度成分を持つように流動方向を変換される。これにより、冷却通路を通ったオイルは、摩擦材に向かって積極的に流動され、フロントカバーとピストンとの間のオイルの流れが促進されるので、ピストンを更に効果的に冷却することができる。また、変換手段を設けるだけで摩擦材をより効果的に冷却できるので、製造コストを増大させることもない。 【0012】請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のロックアップクラッチ機構において、前記変換手段が、前記冷却通路を傾斜させることにより構成されていることを特徴とする。 【0013】従って、請求項3に記載の内容に加えて、部品点数を増大させることなく変換手段を構成できる。 【0014】請求項4に記載の発明では、請求項2に記載のロックアップクラッチ機構において、前記変換手段が、前記フロントカバーと前記ピストンとの間に設けられた傾斜面であることを特徴とする。 【0015】従って、請求項2に記載の内容に加えて、傾斜面を設けるだけの簡単な構成で、変換手段を構成できる。 【0016】 【発明の実施の形態】図1には、本発明の第1実施形態のロックアップクラッチ機構として、自動車のオートマチックトランスミッションと組み合わせて使用されるトルクコンバータ10が示されている。 【0017】このトルクコンバータ10では、入力側部材である駆動軸(図示省略)と一体で回転するケーシング14を有している。駆動軸は、同じく図示しないエンジンの回転軸と結合されており、エンジンの回転力を受けて回転する。 【0018】ケーシング14内にはオイルが充填されると共に、互いに対向するように、ポンプインペラー16及びタービンランナー18が配置されている。ポンプインペラー16は図示しない駆動軸に、タービンランナー18は被動軸20にそれぞれ結合されており、駆動軸と共にポンプインペラー16が回転すると、オイルに運動エネルギーが与えられてオイル流が生じ、このオイル流がさらにタービンランナー18に回転トルクを与えて、被動軸20が回転するようになっている。 【0019】ポンプインペラー16とタービンランナー18との間には、ワンウェイクラッチ22を介して、ステータ24が一方向に回転可能に設けられている。タービンランナー18を出たオイルはステータ24に沿って流れ、再度ポンプインペラー16に戻る。 【0020】ケーシング14は、図示しないエンジン側(図1では左側)に配置されたフロントカバー26と、同じく図示しないオートマチックトランスミッション側(図1では右側)に配置されたケーシングシェル28と、で構成されており、これらが一体的に結合されている。 【0021】タービンランナー18とフロントカバー26との間には、被動軸20及びタービンランナー18と一体で回転するロックアップピストン30が設けられている。図2(C)にも示すように、フロントカバー26の外周に形成されたフランジ部26Aと、ロックアップピストン30の外周に形成されたフランジ部30Aとの間には所定の間隙32が構成されており、ロックアップ係合側油室31とロックアップ解放側油室33との圧力差によって生じるオイル流の一部が、この間隙32を通ってフロントカバー26とロックアップピストン30との間に流れこむことができるようになっている。 【0022】フロントカバー26の外周近傍には、ロックアップピストン30との対向面に、摩擦材34が取り付けられており、この摩擦材34と対向するロックアップピストン30の面が摩擦材対向面35となっている。図2(A)及び(B)から分かるように、摩擦材34は、一定の厚みを有するリング状に形成されている。ロックアップを作動させるための一定条件が満たされていない状態では、摩擦材34とロックアップピストン30との間に所定の間隙が構成されているが、一定条件が満たされると、オイルからの荷重がロックアップピストン30に作用してロックアップピストン30がフロントカバー26に接近する方向へとストロークし、図2(C)に示すように、ロックアップピストン30が摩擦材34に押し付けられる。そして、摩擦材34とロックアップピストン30との摩擦係合により、ロックアップピストン30がフロントカバー26と一体で回転する(ロックアップの作動)。 【0023】また、このようにロックアップピストン30が摩擦材34に接触して押し付けられることで、摩擦材34がシールとして働くことによってロックアップ係合側油室31とロックアップ解放側油室33とが隔離され、各油室内のオイルに圧力差が生じる。この圧力差がロックアップピストン30をフロントカバー26に向かって押し付ける荷重(押し付け荷重)として作用するので、ロックアップピストン30はフロントカバー26に向かってより強く押し付けられ、摩擦材34とロックアップピストン30との摩擦力が大きくなる。 【0024】さらに、本実施形態のトルクコンバータ10では、油圧制御回路(図示省略)が設けられており、一定条件下では、摩擦材34のロックアップ係合側油室31とロックアップ解放側油室33との圧力差を調整できるようになっている。そして、このように圧力差を調整することで、フロントカバー26とロックアップピストン30とに相対回転を生じさせて、いわゆるスリップ制御を作動させることができるようになっている。 【0025】ロックアップピストン30には、摩擦材34よりも内周側(回転中心側)の位置に、ロックアップピストン30を板厚方向に貫通する1又は複数(本実施形態では1つ)の冷却通路36が形成されている。ロックアップ状態及びスリップ状態では、この冷却通路36を通ってオイルがロックアップ係合側油室31からロックアップ解放側油室33に流れる。 【0026】図3(A)に詳細に示すように、この冷却通路36は、ロックアップピストン30の回転中心線Cに対して、所定の傾斜角αで傾斜している。このため、冷却通路36を通るオイルは、ロックアップ解放側油室33のフロントカバー26側において、内周側から外周側へと向かう速度成分を持つように、その流動方向が変換される。 【0027】次に、本実施形態のトルクコンバータ10の作用を説明する。 【0028】ロックアップ状態とするための一定条件が満たされていない場合には、ロックアップピストン30はフロントカバー26に向かってストロークしておらず、摩擦材34はロックアップピストン30に接触していない。このため、フロントカバー26はロックアップピストン30とは別体で回転し、図示しない駆動軸とポンプインペラー16の回転によって運動エネルギーが与えられたオイルが、さらにタービンランナー18に回転トルクを与えて、被動軸20が回転する。 【0029】なお、上記した一定条件は、トルクコンバータ10自体や、このトルクコンバータ10が設けられた自動車の走行状態との関係によって、所望の条件に設定される。例えば、自動車の車速によってこの条件を決めても良いし、さらに他の条件も勘案し、制御装置等を介してオイルの流れを制御することで、ロックアップピストン30のストロークを制御するようにしても良い。 【0030】この一定条件が満たされると、ケーシング14内を流れるオイルからの荷重を受けてロックアップピストン30がフロントカバー26に向かってストロークし、ロックアップピストン30は摩擦材34に接触する。この過程における摩擦材34周辺のオイル流れの状況は、従来品では、図14(B)に示す様に、摩擦材130がロックアップピストン120側に配設されているため、摩擦材130とフロントカバー132との間を流れるオイル流(矢印E)が、ロックアップ解放側油室122内の循環流れ(矢印F)を減衰させるが、本実施形態では、図14(A)に示す様に、摩擦材34がフロントカバー26側に配設されているため、摩擦材34とロックアップピストン30との間を流れるオイル流(矢印E)が、ロックアップ解放側油室33の循環流れ(矢印F)を促進させるので、冷却効果が増加する働きを有する。 【0031】ロックアップピストン30が摩擦材34に摩擦係合すると、ロックアップピストン30とフロントカバー26とが摩擦材34を介して一体で回転するようになる。 【0032】さらに、スリップ状態とするための一定条件が満たされると、図示しない油圧制御回路が作動して摩擦材34のロックアップ係合側油室31とロックアップ解放側油室33との圧力差が調整され、フロントカバー26とロックアップピストン30とに相対回転が生じる(スリップ制御の作動)。 【0033】このスリップ制御時には、摩擦材34とロックアップピストン30とのすべりにより発熱する。 【0034】また、ロックアップ時及びスリップ制御時には、ケーシング14内のオイルは、図3(B)、図2(B)に矢印Gで示す様に、ロックアップ係合側油室31内において、ロックアップピストン30に沿って外周側から内周側(回転中心側)に流れることによってロックアップピストン30を冷却してから、ロックアップピストン30に形成された冷却通路36を通って、図3(A)に矢印Gで示すように、フロントカバー26とロックアップピストン30との間に流れ込み、図3(A)、図2(A)、(C)に矢印Fで示す様に、ロックアップ解放側油室33内において、再度ロックアップピストン30に沿って流れることによってロックアップピストン30を冷却する。このため、発熱体であるロックアップピストン30のオイルとの接触が両側接触状態となる。 【0035】この時の流れを従来品と比較すると以下のようになる。 【0036】まず、ロックアップ係合側油室内の流れは、本発明、従来品とも図2(B)のようになり、流れとしての差異はない。しかし、本発明のときは、ロックアップピストン30が発熱体であるので、有効に冷却される。次に、冷却通路36を出たロックアップ解放側油室流れの従来品は図2(D)のように、径方向の循環流れの形成が弱いために、冷却が十分に行われない。 【0037】即ち、本実施形態では、オイルの片側接触状態(他方は空気)のフロントカバー26よりオイルとの接触面積の大きいロックアップピストン30に摩擦材34の相手面である摩擦面を設け、オイルへの放熱面積を大きくとれるロックアップピストン30を放熱体とすることで、発熱体であるロックアップピストン30を効果的に冷却することができる。この結果、許容摩擦仕事を増やせるので伝達トルクやスリップ回転数などを増大できる。 【0038】特に、スリップ制御時には、図4に示すように、一般にフロントカバー26とロックアップピストン30との相対回転による遠心力の大きさの違いのため(図4には、フロントカバー26近傍の遠心力を矢印F1で、ロックアップピストン30近傍の遠心力を矢印F2でそれぞれ示す)、フロントカバー26の近傍のオイルの流速V1と、ロックアップピストン30の近傍のオイルの流速V2との間に速度差が生じる。そして、この速度差による遠心力の違いにより、摩擦材34の近傍の高温オイルは内周側へ、回転中心線Cの近傍の低温オイルは外周側へと流動し、図2(A)、図2(C)、図3(A)、図3(B)及び図4に矢印Fで示すように、径方向に沿って循環するオイルの流動が生じる。 【0039】また、本実施形態では、冷却通路36を所定の傾斜角αで傾斜させ、ロックアップ解放側油室33のフロントカバー26側で、内周側から外周側へと向かう速度成分を持つように、オイルの流動方向が変換されるようになっている。従って、このように冷却通路36が傾斜していない場合と比較して、図2(A)及び(B)、図3(A)及び(B)に矢印Fで示すオイルの流れが促進され、より多くのオイルが摩擦材34の内周側を流れ、より効果的に摩擦材34、フロントカバー26及びロックアップピストン30を冷却することができる。なお、フロントカバー26及びロックアップピストン30から熱を吸収して高温となったオイルは、被動軸20の中心に形成された孔部44を通り、冷却装置等を備えた専用の油圧回路(図示省略)を経て、ケーシング14内を循環する。 【0040】さらに、本発明は、運転状況の中で、スリップ作動状態が変化したとき、熱負荷変動が生じるが、これに対し冷却能力が自己制御的に対応できるという優れた特徴を有する。 【0041】第1、に伝達トルクが増大した場合、ロックアップ係合側油室とロックアップ解放側油室の圧力差が大きくなることにより、ロックアップ係合側油室内とロックアップ解放側油室内のオイルの流量が大きくなり、ピストンの冷却効果が大きくなる。 【0042】第2に、スリップ回転数が増大した場合、ロックアップ解放側油室のフロントカバー側オイルとピストン側オイルの遠心力の差が大きくなるので径方向の循環流れが促進され、ロックアップ解放側油室内の冷却効果が大きくなる。 【0043】しかも、このようにオイルの流動方向を変換するために別部材を設ける必要がないので、部品点数が増大せず、トルクコンバータ10の製造コストの上昇を招くことがない。 【0044】従って、本第1実施形態(摩擦材34をフロントカバー26に配設し、冷却通路36を傾斜させた構成)における装置の寿命と、比較例2(摩擦材34をロックアップピストン30に配設し、冷却通路36を傾斜させた構成)における寿命と、比較例1(摩擦材34をロックアップピストン30に配設し、冷却通路36を傾斜させない構成)における寿命とを同一条件でテストし、その結果を比較すると、図5(A)に示される如く、比較例1に対して比較例2の寿命が約1.1倍となり、比較例2に対して本第1実施形態の寿命が約2倍以上となる。また、本第1実施形態における装置の伝達トルクと、比較例1における伝達トルクと、比較例2における伝達トルクとを同一条件でテストし、その結果を比較すると、図5(B)に示される如く、比較例1に対して比較例2の伝達トルクが約1.05倍となり、比較例2に対して本第1実施形態の伝達トルクが約1.5倍以上となる。 【0045】なお、本実施形態では、図3に示すように、冷却通路36を通るオイルが、ロックアップ解放側油室33のフロントカバー26側で、内周側から外周側へと向かう速度成分を持つように、冷却通路36を、ロックアップピストン30の回転中心線Cに対して、外周側へ所定の傾斜角αで傾斜させたが、これに代えて、図6に示される如く、冷却通路36をロックアップピストン30の回転方向へ所定の傾斜角βで傾斜させ、スリップ時におけるフロントカバー26の回転速度(Np)及びロックアップピストン30の回転速度(Nt:Np>Nt)の差で発生する周方向(回転方向)の流れを増大する構成としても良い。 【0046】図7には、本発明の第2実施形態におけるトルクコンバータの冷却通路58の近傍が拡大して示されている。第2実施形態では、この冷却通路58の近傍の構成が第1実施形態と異なるが、他は同一とされているので、異なっている部分のみ説明し、同一部分は説明を省略する。なお、図7(A)は非ロックアップ時、図7(B)はロックアップ時及びスリップ制御時をそれぞれ示す。 【0047】第2実施形態の冷却通路58は、第1実施形態と異なり、ロックアップピストン30の回転中心線C(図1参照)に対して傾斜することなく、平行に形成されている。 【0048】ロックアップピストン30のロックアップ解放側油室33側には、冷却通路58に隣接する内周側の位置に、フロントカバー26に向かって突出するガイド壁60が形成されている。ガイド壁60は、回転中心線Cに対して、所定の傾斜角γで傾斜するガイド面62を有している。 【0049】このような構成とされた第2実施形態のトルクコンバータでは、ロックアップ状態及びスリップ制御状態で、冷却通路58を通ってフロントカバー26とロックアップピストン30との間に流れこんだオイルの流動方向が、ガイド面62によって、内周側から外周側へと向かう速度成分を持つように変換される。このため、第1実施形態と同様に、フロントカバー26とロックアップピストン30との間の径方向のオイル流れが促進され、より多くのオイルが摩擦材34の内周側を流れるので、より効果的に摩擦材34、フロントカバー26及びロックアップピストン30を冷却することができる。 【0050】なお、ガイド壁60の突出長(ロックアップピストン30のロックアップ解放側油室33側面からの長さ)は特に限定されないが、オイルの内周側から外周側へと向かう速度成分を大きくするためには、突出長は、図7(B)に示すように、ロックアップ状態で突出端がフロントカバー26に接触しない範囲で長い方が好ましい。 【0051】また、ガイド壁60は冷却通路58に対応した位置にのみ形成すれば、冷却通路58を通ったオイルの流動方向を確実に変換することができるため、高温となったオイルが、被動軸20の中心に形成された孔部44を通って、ケーシング14内に戻るときに、この流れが妨げられることはない。 【0052】ガイド壁60を形成する方法としては特に限定されず、例えば、ロックアップピストン30を成形した後、別途成形したガイド壁60を取り付けても良いが、冷却通路58を形成した際に生じる加工ダレを利用し、この加工ダレを加工することで、部品点数を増大させることなく容易にガイド壁60を形成することができ、トルクコンバータの製造コストの上昇を招くことがない。 【0053】なお、本実施形態では、ガイド壁60は、回転中心線Cに対して、所定の傾斜角γで傾斜するガイド面62を有しているが、これに代えて、図8に示される如く、ガイド壁60のガイド面62をロックアップピストン30の回転方向へ所定の傾斜角εで傾斜させ、スリップ時におけるフロントカバー26の回転速度(Np)及びロックアップピストン30の回転速度(Nt:Np>Nt)の差で発生する周方向(回転方向)の流れを増大する構成としても良い。 【0054】図9には、本発明の第3実施形態におけるトルクコンバータの冷却通路68の近傍が拡大して示されている。第3実施形態でも、この冷却通路68の近傍の構成が第1実施形態と異なるが、他は同一とされているので、異なっている部分のみ説明し、同一部分は説明を省略する。なお、図9(A)は非ロックアップ時、図9(B)はロックアップ時及びスリップ制御時をそれぞれ示す。 【0055】第3実施形態の冷却通路68も、第1実施形態と異なり、ロックアップピストン30の回転中心線C(図1参照)に対して傾斜することなく、平行に形成されている。 【0056】フロントカバー26のロックアップピストン30と対向する面には、ロックアップ状態で冷却通路68よりも内周側で冷却通路68に隣接するように、ロックアップピストン30に向かって突出するガイド壁70が、フロントカバー26の全周にわたって形成されている。ガイド壁70は、回転中心線Cに対して、所定の傾斜角δで傾斜するガイド面72を有している。 【0057】このような構成とされた第3実施形態のトルクコンバータでは、ロックアップ状態及びスリップ制御状態で、冷却通路68を通ってフロントカバー26とロックアップピストン30との間に流れこんだオイルの流動方向が、ガイド面72によって、内周側から外周側へと向かう速度成分を持つように変換される。このため、第1実施形態と同様に、フロントカバー26とロックアップピストン30との間の径方向のオイル流れが促進され、より多くのオイルが摩擦材34の内周側を流れ、より効果的に摩擦材34、フロントカバー26及びロックアップピストン30を冷却することができる。 【0058】なお、非ロックアップ時及びスリップ制御時にはフロントカバー26とロックアップピストン30とが相対回転しているため、非ロックアップ時及びスリップ制御時からロックアップ状態に移行すると、冷却通路68がフロントカバー26に対してその都度、周方向に異なった位置となる。この点を考慮すると、ガイド壁70はフロントカバー26の全周にわたって形成されていることが好ましい。 【0059】ガイド壁70の突出長(フロントカバー26のロックアップ解放側油室33側面からの長さ)は特に限定されないが、オイルの内周側から外周側へと向かう速度成分を大きくするためには、突出長は、ロックアップ状態で突出端がフロントカバー26に接触しない範囲で長い方が、摩擦材34をフロントカバー26に確実に接触させる観点からは好ましい。しかし、前述のように、ガイド壁70をフロントカバー26の全周にわたって形成した場合には、高温となったオイルの被動軸20の中心に向かう流れを確保するために、ロックアップ状態でガイド壁70の突出端とロックアップピストン30との間に所定の間隙74が構成されるような突出長とされる。 【0060】ガイド壁70を形成する方法としては特に限定されず、例えば、フロントカバー26を成形した後、別途成形したガイド壁60を取り付けても良いが、例えば、プレス加工等によってフロントカバー26とガイド壁70とを一体的に成形することで、部品点数を増大させることなく容易にガイド壁60を形成することができ、トルクコンバータの製造コストの上昇を招くことがない。 【0061】なお、上記各実施形態において、冷却通路36、ガイド面62及びガイド面72の傾斜角α、β、γ、δ、εは、それぞれ冷却通路36、58、68を通ったオイルに外周側へ向かう速度成分を与えることができれば特に限定されないが、例えば、30°以上60°以下とすることができる。すなわち、30°以上とすることで、外周側へ向かうオイルの速度成分を十分大きくすることができる。また、60°以下とすることで、冷却通路36、ガイド壁60、70の成形が容易になる。 【0062】また、上記各実施形態においては、冷却通路58、68の断面形状を一定にしたが、これに代えて、図10に示される如く、冷却通路58、68の入口角部に面取部58A、68Aを設け、冷却通路58、68の入口でのオイル流れの剥離を抑制し、管路損失を低減し、冷却オイル流量を増大させる構成としても良い。 【0063】また、図11に示される如く、冷却通路58、68の入口角部にR部58B、68Bを設け、冷却通路58、68の入口でのオイル流れの剥離を抑制し、管路損失を低減し、冷却オイル流量を増大させる構成としても良い。 【0064】また、図12に示される如く、冷却通路58、68を入口側58C、68Cから出口側58D、68Dへ向かって縮径する細まり管とすることで、冷却通路58、68の入口でのオイル流れの剥離を抑制し、管路損失を低減し、冷却オイル流量を増大させる構成としても良い。 【0065】また、上記各実施形態においては、冷却通路36、58、68の数や大きさ(開口断面積)も特に限定されず、摩擦材34、フロントカバー26及びロックアップピストン30を冷却するために必要なオイルがフロントカバー26とロックアップピストン30との間に流れこむだけの数や大きさであれば良い。なお、一般的に使用されているトルクコンバータの場合には、冷却通路総体での開口断面積が略一定の値をとるように、冷却通路の数及び開口断面積を決定することが好ましい。従って、冷却通路の数をn倍に増やした場合には、それぞれの冷却通路の径(多角形状の孔の場合には辺の長さ)を概ね(1/n1/2)倍とすれば良い。例えば、図13に示すように、冷却通路36の数を4つとした場合には、それぞれの冷却通路36の径は、冷却通路36を1つのみ形成した場合の1/2とすれば良い。但し、冷却通路の開口断面積があまりに小さくなると、オイルはそれ自身の粘性等によって流動が妨げられるおそれがあるので、このような流動抵抗が生じない範囲で冷却通路を大きくすることが好ましい。また、冷却通路を複数形成する場合には、摩擦材34、フロントカバー26及びロックアップピストン30を偏りなく均一に冷却するという観点から、図13にも示すように、ロックアップピストン30の周方向に等しい間隔をあけて配置することが好ましい。 【0066】摩擦材の例としても、上記に説明した摩擦材34に限られず、ロックアップ時にフロントカバー26とロックアップピストン30とに接触して、摩擦抵抗によってこれらを一体的に回転させることが可能な構成とされていれば良い。例えば、摩擦材の数は1枚に限られず、複数枚の摩擦材が厚み方向に並べて設けられて、全体として本発明の摩擦材34が構成されていても良い。 【0067】また、上記説明では、本発明のロックアップクラッチ機構の例として、自動車のオートマチックトランスミッションと組み合わせて使用されるトルクコンバータを挙げたが、本発明がこれに限定されないのはもちろんである。要するに、入力側部材と出力側部材とを摩擦材を介して回転するように連結するロックアップクラッチ機構であって、摩擦材のロックアップ係合側油室側とロックアップ解放側油室側とで一定の圧力差が必要とされるようなロックアップクラッチ機構であれば良い。従って、一般的な流体クラッチであっても良い。特に、摩擦材の摩擦熱による温度上昇が問題となるロックアップクラッチ機構や、すべり状態が継続するいわゆるスリップ制御付きロックアップクラッチ機構等を冷却する場合に、特に有効である。 【0068】 【発明の効果】請求項1に記載の発明では、ロックアップ係合側油室からの油圧力によってピストンとフロントカバーを摩擦材を介して接触させるロックアップクラッチ機構において、フロントカバー側に摩擦材を貼り付けると共に、ピストンにおける摩擦材の対向面の内周側となる部位にピストンを効果的に冷却するための冷却通路を設けたため、ピストンを効果的に冷却することができ、その結果としてスリップ制御作動領域(伝達トルクやスリップ回転数の範囲)を拡大できるという優れた効果を有する。 【0069】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のロックアップクラッチ機構において、冷却通路を通ったオイルが内周側から外周側または回転方向へと向かう速度成分を持つように流動方向を変換する変換手段を有するため、請求項1に記載の効果に加えて、更に効果的に冷却することができると共に、製造コストを増大させることもないという優れた効果を有する。 【0070】請求項3に記載の発明では、請求項2に記載のロックアップクラッチ機構において、変換手段が、冷却通路を傾斜させることにより構成されているため、請求項2に記載の効果に加えて、部品点数を増大させることなく変換手段を構成できるという優れた効果を有する。 【0071】請求項4に記載の発明では、請求項2に記載のロックアップクラッチ機構において、変換手段が、フロントカバーとピストンとの間に設けられた傾斜面であるため、請求項2に記載の効果に加えて、傾斜面を設けるだけの簡単な構成で変換手段を構成できるという優れた効果を有する。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000003609 【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所 【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
|
| 【出願日】 |
平成12年6月12日(2000.6.12) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100079049 【弁理士】 【氏名又は名称】中島 淳 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2001−132819(P2001−132819A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月18日(2001.5.18) |
| 【出願番号】 |
特願2000−174702(P2000−174702) |
|