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【発明の名称】 伝動用ナット
【発明者】 【氏名】和田 芳典

【要約】 【課題】油膜切れを生じる恐れが少なく、ナットとネジ軸間の螺合部分を良好な潤滑状態に維持することのできる伝動用ナットを提供する。

【解決手段】ネジ軸6外周の雄ネジ部6Aに螺合するナット7の雌ネジ部7Aに、ネジ溝と交差する方向に延びる少なくとも1つの油溝7Eが形成されており、油溝7E内に貯留された潤滑油がネジ軸とナットとの相対的な回転によってここから引き出され、雄ネジ部6Aと雌ネジ部7Aとの螺合部分全体に供給される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ネジ軸外周の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部に、ネジ溝と交差する方向に延びる少なくとも1つの油溝が形成されていることを特徴とする伝動用ナット。
【請求項2】 複数の油溝がナットの中心軸線に対して回転対称となる位置に形成されていることを特徴とする請求項1記載の伝動用ナット。
【請求項3】 複数の油溝がナットの軸方向に配列されていることを特徴とする請求項1または2記載の伝動用ナット。
【請求項4】 油溝が雌ネジ部の両端近傍を除いた内側部分に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の伝動用ナット。
【請求項5】 油溝に潤滑油を供給するための供給用油路がナット内部に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の伝動用ナット。
【請求項6】 雌ネジ部から潤滑油を回収するための回収用油路がナット内部に形成されていることを特徴とする請求項5記載の伝動用ナット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネジ駆動式のプレス機やジャッキ、リニアアクチュエータ等において、ネジ軸と螺合して電動モータや流体モータ等の回転駆動源の回転運動を直線運動に変換するために用いられる伝動用ナットに関し、特に、ネジ軸との螺合部分の潤滑状態を良好に維持するための構造を有する伝動用ナットに関する。
【0002】
【従来の技術】ネジ駆動式のプレス機やジャッキ、リニアアクチュエータ等においては、ネジ軸とこれに螺合されたナットからなるネジ伝動機構が用いられており、電動モータ等の回転駆動源によってネジ軸とナットの何れか一方を回転させることによって、両者の間に相対的な軸方向の直線運動を生じさせ、可動部を動かすようにしている。
【0003】従来、このようなネジ伝動機構の潤滑手段としては、例えば、特開平7−285790号公報に記載されているものがあり、これは、ナットに半径方向の給脂口を形成して、ネジ軸のネジ山にグリースを供給するようにしている。
【0004】また、特開平5−42396号公報に記載されているプレス及び類似装置においては、主軸に形成された雄ネジに、主軸台に形成された螺合作用に支障をきたさない程度に前記雄ネジとネジピッチが相違する雌ネジを螺合させ、主軸台内部にそれぞれ形成されている給油管から雌雄のネジの螺合部に給油し、排出管から排出するようにしている。
【0005】前記特開平5−42396号公報に記載されているものにおいては、潤滑油を雄ネジと雌ネジのクリアランスが大きい部分から供給すると、主軸の回転とともに潤滑油は雌雄ネジの螺合部分のクリアランスが大きい部分から小さい部分に巻き込まれるように送り込まれ、クリアランスが最小となった部分で生じる最大油圧の油膜で雄ネジと雌ネジの螺合作用を保持し、油膜切れを防ぐようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述した、特開平7−285790号公報に記載されているような、ナットに半径方向の給脂口を形成して、ネジ軸のネジ山にグリースを供給するものでは、給脂口から離れた部分を良好な潤滑状態に維持することが困難であり、大きな負荷が作用した状態で使用すると、ネジ軸とナットの螺合部分に油膜切れを生じて両者の螺合部分が早期に摩耗したり、焼付きを起こす恐れがある。
【0007】また、特開平5−42396号公報に記載されているものでは、雌雄ネジのクリアランスを軸方向に変化させているため、両者の螺合部分を長く取ることが困難であり、大きな負荷のもとでは雌雄ネジ間の面圧が上昇して、油膜切れ等の潤滑不良を生じる恐れがあった。
【0008】そこで、本発明は、前述したような従来技術における問題を解決し、油膜切れを生じる恐れが少なく、ナットとネジ軸間の螺合部分を良好な潤滑状態に維持することのできる伝動用ナットを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】前記目的のため、本発明の伝動用ナットにおいては、ネジ軸外周の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部に、ネジ溝と交差する方向に延びる少なくとも1つの油溝が形成されている。
【0010】前記ナットにおいては、複数の油溝がナットの中心軸線に対して回転対称となる位置に形成されていることが望ましい。また、複数の油溝がナットの軸方向に配列されていることも望ましい。さらに、油溝が雌ネジ部の両端近傍を除いた内側部分に形成されていることも望ましい。
【0011】また、油溝に潤滑油を供給するための供給用油路がナット内部に形成されていることも望ましく、この場合には、雌ネジ部から潤滑油を回収するための回収用油路もナット内部に形成されていることがより望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の伝動用ナット(以下、単にナットという。)は、ネジ軸に螺合して用いられ、これらの一方の回転を規制した状態で他方を電動モータや流体モータのような回転駆動源で回転させることで、前記回転駆動源の回転がネジ軸とナットの間の相対的な直線運動に変換される。
【0013】本発明においては、ネジ軸外周の雄ネジ部に螺合するナットの雌ネジ部に、ネジ溝と交差する方向に延びる油溝が形成されており、この油溝に潤滑油が貯留できるようになっている。
【0014】そして、ネジ軸とナットの何れか一方が他方に対して相対的に回転駆動されると、油溝内の潤滑油は雄ネジ部に引きずられて互いに螺合しているネジ軸の雄ネジ部とナットの雌ネジ部間の隙間に送り込まれ、両者の螺合部分全体に油膜が形成される。
【0015】油溝は、ナットの中心軸線に平行に延びるように形成するか、あるいは、前記中心軸線まわりに緩やかな螺旋を描いて延びるように形成することが望ましく、ナットの端面まで達するように形成しても良いし、雌ネジ部の両端近傍を除いた内側部分のみに形成しても良い。また、油溝は、雌ネジ部のネジ溝より深く形成し、その断面形状は半円状、V字状、矩形状等、種々の形状とすることができる。
【0016】ナットの油溝は複数のネジ溝を横断して延びているので、ネジ溝の一カ所に開口する給油孔を形成し、ここからネジ軸との螺合部分にナット外部から給油する場合と比較して、螺合部分全体に潤滑油を速やかに浸透させることができ、良好な潤滑状態を維持できる。
【0017】特に、ネジ軸を縦に向けて使用する場合には、油溝はナットの上端面側を開放し、また下端面までは達しない形状とすることにより、ナット上端部から油溝内に潤滑油を供給してここに貯留しておくことができる。
【0018】この場合、ナット上面に座ぐり加工等により形成した雌ネジ部の孔径より大径の油溜凹部を設け、その底部に油溝上端を開口させておけば、前記油貯凹部に油溝より多量の潤滑油を貯留しておくことができ、ここから潤滑部を重力によって油溝へ徐々に補充することができるので、給油間隔を延ばすことができる。また、ナット自体を潤滑油中に浸して使用する場合には、油溝の両端をナットの両端面に開放してここから潤滑油が出入りできるようにしても良い。
【0019】さらに、油溝はナット中心軸線に対して回転対称となるように複数配置することができ、この場合には、雄ネジ部と雌ネジ部間の螺合部分に形成される油膜の雌ネジ部周方向の厚みがより均一化し、ネジ軸周りの潤滑油の圧力がバランスしてナットとネジ軸間の同軸度を高められる。
【0020】また、油溝はナットの軸方向に複数配列しても良く、この場合には、雄ネジ部と雌ネジ部間の螺合部分に形成される油膜の厚みが軸方向でより均一化され、ナットとネジ軸間の中心軸線の角度誤差が減少する。
【0021】また、ナットには複数の油溝を、雌ネジ部の周方向と軸方向の両方に配列したり、雌ネジ部全体にランダムに分散して形成しても良い。なお、何れの場合にもそれぞれの油溝の長手方向がネジ溝と交差する方向に向いていればよい。
【0022】また、油溝がナットの雌ネジ部の両端近傍を除いた内側部分のみに形成され、ナットの端面に開放されていない場合には、油溝へ潤滑油を供給するためにナット内部に供給用油路を形成しておくことが望ましく、この場合、外部に設けたオイルポンプ等で、潤滑油を前記供給用油路を通じて強制的にナット内部の油溝へ供給することができる。
【0023】また、供給用油路を通じて油溝に潤滑油を供給する場合には、前記油路から離れた位置に潤滑油を回収する回収用油路を設けても良く、ネジ軸とナット間の螺合部分を潤滑した油は、回収用油路と通ってナット外部に回収される。
【0024】この場合、回収用油路からナット外部へ回収された潤滑油は、オイルフィルタで濾過し、冷却器で油温を下げてから再び供給用の油路に環流させることによりネジ軸とナットの螺合部分の潤滑と冷却を同時に行うことができる。特に高速な動作が要求されるネジ駆動式タップ機のマスターネジに螺合するナット等に好適である。
【0025】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明の実施例を説明する。図1は、本発明の第1実施例における伝動用ナットを用いたネジ駆動式のプレス機の概略構造を示すものであって、プレス機1は床面Fに固定された機枠2内にワーク(図示せず)を載置するボルスタ3を有している。
【0026】ボルスタ3の上方には、これに対向するようにスライド4が軸受け部5を介してネジ軸6下端に連結されている。前記軸受け部5にはネジ軸6のスラスト荷重を受けるスラスト軸受が組み込まれている。また、ネジ軸6は、その中間部に形成されている雄ネジ部6Aが機枠2側に固定されているナット7の内周面に形成されている雌ネジ部7Aに螺合して支持されている。
【0027】また、ネジ軸6の上方部分にはスプライン6Bが形成されていて、この部分が、フレーム2に対して定位置で回転自在に軸受け支持されているウォームホイール8のスプライン孔8Aにスライド自在に嵌挿されている。また、ウォームホイール8は、図示していない回転駆動源で回転駆動されるウォーム9に噛み合っている。
【0028】したがって、前記プレス機1においては、回転駆動源によってウォーム9が正方向又は逆方向に回転すると、これに伴ってウォームホイール8が正方向又は逆方向に回転し、この回転がウォームホイール8とスプライン係合しているネジ軸6に伝達される。
【0029】ネジ軸6が回転すると、その雄ネジ部6Aがナット7の雌ネジ部7Aに螺合しているため、ネジ軸6は回転と同時にスライド4を伴って上下方向に変位し、スライド4下面とボルスタ3上面との間でワークのプレス動作が行われる。
【0030】図2は、このプレス機1において、ネジ軸6組み合わされて用いられるナット7の構造を示すものであり、同図の(a)はその平面図、(b)は(a)のA−A断面図である。
【0031】図2に示すように、ナット7は筒部7Bの下端部に取付フランジ部7Cが同心に設けられており、筒部7Bと取付フランジ部7Cの中心部を軸方向に貫通して雌ネジ部7Aが形成されている。また、取付フランジ部7Cにはボルト孔hが貫通して形成されており、ここに図示しないボルトが挿通されて、図1に示す機枠2側へ締結固定されるようになっている。
【0032】この実施例においては、雌ネジ部7Aの上方に潤滑油を貯留するための座ぐり加工により形成した油溜凹部7Dが設けられており、また、雌ネジ部7Aには、ネジ溝と交差してナット7の軸方向に延びる油溝7Eが形成されている。前記油溝7Eは、横断面半円状に形成されており、上端は油溜凹部7D底部に開口し、また、下端は、雌ネジ部7Aの下端近傍位置まで形成されている。
【0033】油溜凹部7Dに外部から給油された潤滑油は、上端が前記油溜凹部7Dと連通する油溝7E内に流れ込んでここに一部貯留される。油溝7Eは、雌ネジ部7Aの複数のネジ溝と交差するようにナット7の軸方向に延びているので、油溝7E内の潤滑油は、ここから互いに螺合している雄ネジ部6Aと雌ネジ部7Aの複数のネジ溝とネジ山の隙間に浸透する。
【0034】図3は、図1に示すようにナット7にネジ軸6が螺合され、雄ネジ部6Aと雌ネジ部7A間が潤滑油で満たされてネジ軸6が回転している状態を示す模式図である。なお、図3においては、ネジ軸6の雄ネジ部6Aとナット7の雌ネジ部7Aとの隙間は実際より誇張して広く描いてある。
【0035】図3に示すように、ナット7に対してネジ軸6が回転することにより、油溝7E内に満たされている潤滑油Lは雄ネジ部6Aに引きずられて互いに螺合している雄ネジ部6Aと雌ネジ部7A間の隙間Sに送り込まれ、両者の螺合部分全体に潤滑油Lの油膜が形成される。なお、油溝7E内には、隙間Sへ流出して減少した分だけ、油溜凹部7D内に貯留された潤滑油Lが流入して補充される。
【0036】図1に示すように、ナット7の取付フランジ部7C下面には、カバー10が取り付けられており、ネジ軸6は、前記カバー10の中央部に形成された孔の内周に設けられたオイルシール11を貫通して下方へ延びている。したがって、雄ネジ部6Aと雌ネジ部7Aの隙間からナット7の下方へ漏出した潤滑油はカバー10内に受け止められ、これより下部に漏れ出すことはない。
【0037】図4は、ナット7Aに形成される油溝の変形例を示すものであって、同図(a)に示す油溝7E’は、横断面V字状に、また、図4(b)に示す油溝7E”は、横断面を矩形状に形成したものである。
【0038】同図(a)、(b)に示すそれぞれの油溝7E’、7E”は、何れも角張った隅部Cがあるため、これらの隅部に応力集中を生じてナット7の強度を低下させる原因となる。そこで、これらの隅部Cは応力が分散するように、角のない滑らかな円弧面で形成することが望ましい。また、特にネジ軸6に加わるスラスト負荷が大きい場合には、図3に示す半円状横断面を有する油溝7Eを採用することが望ましい。
【0039】次に、図5は、本発明の伝動用ナットの第2実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。同図に示すナット17は、前述したナット7とほぼ同様な構造であり、筒部17Bとボルト孔hを有する取付フランジ部17Cからなり、これらの中心部を軸方向に雌ネジ部17Aが貫通して形成されている。
【0040】また、筒部17Bの上端近傍には、潤滑油を貯留しておくための油溜凹部17Dが形成されていて、前記油溜凹部17Dの底部から取付フランジ部17C下面に至る雌ネジ部全長に亘って、ネジ溝と交差する軸方向に横断面略半円状の油溝17Eが形成されている。
【0041】ナット17に形成されている油溝17Eは、雌ネジ部17Aの全長に亘って形成されているため、前述したナット7に形成されている油溝7Eよりさらに良好な潤滑効果を期待できるが、取付フランジ部17Cの下面で開放されているので、この開放端から油溝17E内の潤滑油が流出してしまう。
【0042】そこで、本実施例のナット17を用いるときには、図1に示すカバー10のような密閉手段で潤滑油の油溝17E下方への流出を阻止するか、あるいは、ナット17全体を潤滑油中に浸して使用する必要がある。
【0043】次に、図6は、本発明の伝動用ナットの第3実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。同図に示すナット27は、前述したナット17に形成されている油溝17Eと同形状の油溝27Eを雌ネジ部27Aの径方向に対向する2カ所に形成したものである。なお、その他の部分は図5に記載されたナット17と同様である。
【0044】さらに、図7(a)は、本発明の伝動用ナットの第4実施例、(b)は、第5実施例をそれぞれ示す平面図であって、同図(a)に示すナット37は、雌ネジ部37Aの周方向に3カ所、等間隔に油溝17Eと同形状の油溝37Eを形成したもので、その他の部分については図5に記載されたナット17と同様に構成されている。
【0045】また、図7(b)に示すナット47は、雌ネジ部47Aの周方向に4カ所、等間隔に油溝17Eと同形状の油溝47Eを形成したもので、これもその他の部分については、図5に示すナット17と同様に構成されている。
【0046】前述した、図6及び図7に示すナット27、37、47においては、図1のようにネジ軸6に螺合させて前記ネジ軸6を回転させた場合、油溝27E、37E、47Eがナット27、37、47の中心軸線に対してそれぞれ回転対称な位置に形成されているので、これらのナットの雌ネジ部27A、37A、47Aとネジ軸6の雄ネジ部6A間に形成される油膜の圧力がネジ軸6周りでバランスする。
【0047】そのため、前述したナット7あるいはナット17のように、油溝が雌ネジ部の周囲1カ所に形成されているものよりも、ナットとネジ軸間の同軸度を高めることができ、また、より良好な潤滑状態を得ることができる。
【0048】なお、図5、図6及び図7に記載したものは、油溝17E、27E、37E、47Eが雌ネジ部17A、27A、37A、47Aの軸方向全長に亘って貫通して形成されているが、図2に示す(a)、(b)ナット7の油溝7Eのように、油溝の下方部分が雌ネジ部の下端まで達していない構造としてもよい。
【0049】次に、図8は、本発明の第6実施例における伝動用ナットを用いたジャッキの概略構造図であって、同図に示すジャッキ1’は、図示していない固定部材に連結される固定側連結部材3’に、スラスト軸受を有する軸受け部5’を介して一方の端部が回転自在に支持されたネジ軸6’を有している。
【0050】前記ネジ軸6’の外周には、その中間位置から他方の端部に亘って雄ネジ部6’Aが形成されており、前記雄ネジ部6’Aにはナット57に形成された雌ネジ部57Aが螺合している。
【0051】前記ナット57は、筒部57Bとその一方の端部に設けられた取付フランジ部57Cからなり、この取付フランジ部57Cには移動側連結部材4’がこれと一体の連結筒4’Aを介して固定されている。
【0052】また、ナット57の筒部57B側の端面には、ネジ軸6’を包囲するカバー10’が取り付けられており、前記ネジ軸6’の固定側連結部材3’寄りの、雄ネジ部6’Aが形成されていない平滑な円筒状表面を有する部分が、オイルシール11’を貫通してカバー10’の外部に突出している。
【0053】カバー10’外部に突出している部分のネジ軸6’の外周には、ウォームホイール8’が固定されており、前記ウォームホイール8’が固定側連結部材3’側に設けられた、図示しない回転駆動源で回転されるウォーム9’に噛み合っている。
【0054】したがって、前述した構成のジャッキ1’においては、回転駆動源によってウォーム9’が回転すると、その回転がウォームホイール8’を介してネジ軸6’に伝達される。
【0055】この際、移動側連結部材4’が図示していない被移動体に連結され、固定側連結部材3’に対するネジ軸6’の中心軸線回りの回転が阻止されていると、ネジ軸6’の回転により、これに螺合しているナット57は、移動側連結部材4’を伴ってネジ軸6’の軸方向に変位し、被移動体を移動させることができる。
【0056】ナット57には、筒部57B内を半径方向に貫通してその外周面から油溝57Eに潤滑油Lを供給するための油供給孔57Fが形成されている。前記油溝Eは、本実施例においては、雌ネジ部57Aの両端までは達しておらず、ネジ軸6’の雄ネジ部6’Aとの間でほぼ閉鎖された潤滑油Lを貯留する空間を形成している。
【0057】ジャッキ1’においては、ネジ軸6’のナット57の取付フランジ部57C側から突出した部分が、移動側連結部材4’の連結筒4’Aの中に侵入し、また、ナット57の筒部57Bの取付フランジ部57Cと反対側の端面にシール部材11’を有するカバー10’が設けられているため、油供給孔57Fからナット57内へ供給された潤滑油Lがジャッキ1’外部へ漏れ出すことはない。
【0058】次に図9は、本発明の伝動用ナットの第7実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。同図に示すナット67は、前述した図2に示すナット7と同じ形状の雌ネジ部67A、筒部67B、取付フランジ部67C及び、油溜凹部67Dを有しているが、軸方向に延びた油溝67Eが油溜凹部67Dまで達していないことと、筒部67Bの外周面と油溝67Eとの間を半径方向に貫通する油供給孔67Fが形成されているところが異なっている。
【0059】本実施例のナット67は、図8に示したナット57と同様に筒部67Bの外側から油溝67E内に、油供給孔67Fを通して潤滑油Lを供給して使用される。なお、この実施例においては、油溜凹部67Dには外部から潤滑油を供給する必要はないが、これは、図1に示すナット7のように使用する場合には、ナット67の雌ネジ部67Aの上端から溢れた潤滑油を、油溜凹部67Dで受けることができる。
【0060】また、油供給孔67Fへの潤滑油の供給が中断された場合に、油溜凹部67Dに貯留された潤滑油を、雌ネジ部67Aと、これに螺合する図示しないネジ軸の雄ネジ部との螺合部分に供給できる利点もある。
【0061】次に図10は、本発明の伝動用ナットの第8実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。同図に示すナット77は、前述したナット67と同様、雌ネジ部77A、筒部77B、取付フランジ部77C及び、油溜凹部77D、油溝77E、及び、油供給孔77Fを備えているが、本実施例のものにおいてはさらに、、筒部77Bの外周面と油溝77Eとの間に油回収孔77Gが油供給孔77Fと並行して半径方向に形成されている。
【0062】油回収孔77Gは、油供給孔77Fから油溝77E内に供給され、図示していないネジ軸との螺合部分を潤滑した潤滑油をここから回収するためのものであり、回収した潤滑油は、オイルフィルタや冷却器を通してから再びオイルポンプで油供給孔77Fから油溝77Eへ戻して利用することができる。
【0063】また、図11は、本発明の伝動用ナットの第9実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。同図に示すナット87は、図9のナット67や図10のナット77と同様な雌ネジ部87A、筒部87B、取付フランジ部87C及び、油溜凹部87Dを有しているが、本実施例のものは、油溝87E、87E’が雌ネジ部87Aの径方向に対向する2カ所に形成されている。
【0064】一方の油溝87Eと筒部87Bの外周面との間には油供給孔87Fが形成され、また、他方の油溝87E’と筒部87Bの外周面との間には油回収孔87Gが形成されている。
【0065】油供給孔87Fを通じて一方の油溝87Eに供給された潤滑油Lは、雌ネジ部87とこれに螺合する図示しないネジ軸の雄ネジ部との間を通過して他方の油溝87E’へ入り、ここからさらに油回収孔87Gを通ってナット87の外部へ回収される。
【0066】この実施例においては、油供給孔87Fを有する油溝87Eと油回収孔87Gを有する油溝87E’が雌ネジ部の径方向に対向する位置に形成されているため、油供給孔87Fから供給された潤滑油Lがネジ軸の雄ネジ部との螺合部分の隙間に長く滞留することなく油回収孔87Gへ回収されるので、冷却効果を高められる利点がある。
【0067】また、図12(a)は、本発明の伝動用ナットの第10実施例、(b)は、第11実施例をそれぞれ示す平面図であって、同図(a)に示すナット97は、雌ネジ部97Aの周方向に等間隔な3カ所に油溝97Eを形成し、それぞれの油溝97Eに対して、筒部97Bの外周面との間に油供給孔97Fを形成したものである。
【0068】なお、ナット97のそれぞれの油溝97Eの形状や、筒部97B、取付フランジ部97C、油溜凹部97D等は、前述した図9〜図11に記載されているナット67、77、87と同様である。
【0069】この実施例においては、各油溝97Eが雌ネジ部97Aの周方向に等間隔な3カ所に形成されているため、これらの油溝97E内に各油供給孔97Fから高圧の潤滑油Lを流入させることにより、ナット97とこれに螺合されるネジ軸との間に高い同軸度を維持することができる。
【0070】また、図12(b)に示すナット107は、雌ネジ部107Aの周方向に等間隔な4カ所に油溝107E、107’Eを形成し、このうち対向する2つの油溝107Eと筒部107B外周面との間にそれぞれ油供給孔107Fを貫通させて、潤滑油Lをナット107外部からこれらの油溝107に供給するようにしている。
【0071】また、残る2つの油溝107E’と筒部107B外周面との間に油回収孔107Gを貫通させて、潤滑油Lをナット107外部に回収するようにしている。なお、取付フランジ部107Cやそれぞれの油溜凹部107D等の形状は、図12(a)に示すものと同様である。
【0072】次に、図13は、本発明の伝動用ナットの第12実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。同図に示すナット117は、2つの油溝117Eを雌ネジ部117Aの軸方向に沿って、2カ所に配置したものである。
【0073】これらの油溝117Eと筒部117Bの外周面との間にはそれぞれ油供給孔117Fが貫通形成されており、これらの油供給孔117Fを通じて油溝117Eに均等な圧力で潤滑油Lが供給されると、雌ネジ部117Aとこれに螺合する図示していないネジ軸の雄ネジ部との間に作用する潤滑油Lの圧力が軸方向でバランスし、ナット117の中心軸線とネジ軸の中心軸線間の平行度を高めることができる。なお、本実施例のナット117は、前述した各実施例のものと同様な取付フランジ部117Cを有しているが、油溜凹部は設けられていない。
【0074】図14は、本発明の伝動用ナットの第13実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。同図に示すナット127は、前述した図13に示すナット117と同様に、雌ネジ部127Aが中心部に貫通形成された筒部127Bと取付フランジ部127Cを有し、雌ネジ部127Aの軸方向に沿って2つの油溝127Eが配置されているが、これらの2つの油溝127Eの組は、雌ネジ部127Aの周方向に等間隔に3組配置されている。
【0075】これらの油溝127Eと筒部127Bの外周との間には油供給孔127Fが貫通形成されており、これらの油供給孔127Fを通じて各油溝127Eに均等な圧力で潤滑油が供給されると、雌ネジ部127Aとこれに螺合する図示していないネジ軸の雄ネジ部との間に作用する潤滑油Lの圧力が軸方向と周方向の両方でバランスし、ナット127の中心軸線とネジ軸の中心軸線間の同軸度と平行度を共に高めることができる。
【0076】さらに、図15は、本発明の伝動用ナットの第14実施例を示す図であり、(a)はその平面図、(b)は、(a)のA−A断面図である。本実施例のナット137は、前述した図14に示すナット127と同様に、筒部137Bと取付フランジ137Cを軸方向に貫通している雌ネジ部137Aの周囲3カ所で、それぞれ軸方向に2つずつ配置された合計6つの油溝137Eと、これらに筒部137Bの外周から連通する油供給孔137Fを有している。そして、この実施例のものでは、さらに雌ネジ部137Aの周方向3カ所でそれぞれ軸方向に配列された2つの油溝137Eの間の部分に、筒部137Bの外周に連通する油回収孔137Gが開口している。
【0077】したがって、ナット137を図示していないネジ軸に螺合して使用する場合、ナット137外部から各油供給孔137Fを通じて雌ネジ部137Aに給油された潤滑油Lは、雌ネジ部137Aと前記ネジ軸の雄ネジ部との螺合部分を潤滑した後、油回収孔137Gを通ってナット137外部へ回収される。
【0078】油回収孔137Gから回収された潤滑油Lは、フィルタで清浄化されるとともに、冷却器で冷却して油温が下げられ、再び油供給孔137Fからナット内に供給されてネジ軸とナット137の螺合部分の潤滑と冷却が同時に行なわれる。
【0079】なお、本発明は前述した各実施例のみに実施例に限定されるものではなく、油溝の数や、これらの油溝に連通する油供給孔や油回収孔の数と配置は、必要に応じて様々に組み合わせることが可能である。
【0080】また、これらの実施例においては、機枠等に取り付けるためにナットに取付フランジ部を設けているが、ナット外部の形状は、必要に応じて様々な形状に変更可能である。
【0081】
【発明の効果】請求項1に記載された発明によれば、ネジ軸とこれに螺合するナットの相対回転に伴い、ナットの雌ネジ部とネジ軸の雄ネジ部の隙間に油溝内の潤滑油が供給され、しかも、油溝が雌ネジ部のネジ溝と交差する方向に延びているため、ネジ軸とナットの螺合部分の複数のネジ溝とネジ山間に十分な潤滑油を供給することができ、両者の間に常に安定した油膜を維持することができる。
【0082】したがって、ネジ軸とナット間の摩擦抵抗が減少し、動力ロスを低減することができるとともに、両者の摩耗を抑制できるので、これらの部材の寿命を延ばすことができる。
【0083】請求項2に記載された発明によれば、複数の油溝をナットの中心軸線に対して回転対称となる位置に形成したことにより、雄ネジ部と雌ネジ部間の螺合部分に形成される油膜の雌ネジ部の周方向の厚みをより均一化することができ、ネジ軸周りの潤滑油の圧力がバランスしてナットとネジ軸間の同軸度を高めることができる。
【0084】請求項3に記載された発明によれば、複数の油溝がナットの軸方向に配列されているため、雄ネジ部と雌ネジ部間の螺合部分に形成される油膜の厚みを軸方向に対して均一化することができ、ナットに対するネジ軸の中心軸線の平行度を高めることができる。
【0085】請求項4に記載された発明によれば、油溝内からナット外部に漏れ出して失われる潤滑油の量を少なくすることができる。
【0086】請求項5に記載された発明によれば、ナット内部に形成された油路を通して、ナット外部から油溝内に潤滑油を常時あるいは定期的に供給することができるので、油溝内の潤滑油が枯渇して雄ネジ部と雌ネジ部間で油膜切れを起こすことがない。
【0087】請求項6に記載された発明によれば、潤滑油を油溝内に供給する油路に加えて、前記油溝から雌ネジ部に供給された潤滑油を回収するための油路がナット内部に形成されているので、ナット外部から油溝へ供給された潤滑油が雄ネジ部と雌ネジ部の間を通過した後、潤滑油回収用の油路を通ってナット外部へ回収されるため、潤滑油の損失を少なくできるとともに、雄ネジ部と雌ネジ部の螺合部分を潤滑油の流れで冷却し、連続使用時の温度上昇を抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】598164038
【氏名又は名称】和田 芳典
【出願日】 平成11年11月4日(1999.11.4)
【代理人】 【識別番号】100103757
【弁理士】
【氏名又は名称】秋田 修
【公開番号】 特開2001−132813(P2001−132813A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−313726