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【発明の名称】 トロイダル型無段変速機
【発明者】 【氏名】吉田 雅人

【氏名】石川 宏史

【氏名】今西 尚

【要約】 【課題】耐久性、信頼性を確保しつつ、過剰なトラクションオイルの供給をなくし、伝達効率を向上させる。

【解決手段】伝達する動力が大きくなる程流量調整弁40の開度を大きくし、トラクションオイルの供給量を増加させる。或はトラクションオイルのノズルを、変速比の変動に対応して動かし、トラクションオイルを必要個所に集中して吹き付ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングと、このハウジングの内側に互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側、出力側両ディスクと、これら入力側、出力側両ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある、互いに同心の1対ずつの枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、これら各トラニオン毎に支持された変位軸と、これら各変位軸に回転自在に支持され、上記入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間に挟持された複数個のパワーローラとを備え、上記入力側、出力側両ディスクの互いに対向する内側面を、それぞれ断面が円弧形の凹面とし、上記各パワーローラの周面を球面状の凸面として、これら各周面と上記各内側面とを当接させると共に、上記両ディスクの内側面と上記各パワーローラの周面との当接部にトラクションオイルを供給自在としたトロイダル型無段変速機に於いて、このトラクションオイルの供給量を、上記入力側ディスクから上記出力側ディスクに伝達する動力が大きくなる程多くする事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】 ハウジングと、このハウジングの内側に互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側、出力側両ディスクと、これら入力側、出力側両ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある、互いに同心の1対ずつの枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、これら各トラニオン毎に支持された変位軸と、これら各変位軸に回転自在に支持され、上記入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間に挟持された複数個のパワーローラとを備え、上記入力側、出力側両ディスクの互いに対向する内側面を、それぞれ断面が円弧形の凹面とし、上記各パワーローラの周面を球面状の凸面として、これら各周面と上記各内側面とを当接させると共に、上記両ディスクの内側面と上記各パワーローラの周面との当接部にトラクションオイルを供給自在としたトロイダル型無段変速機に於いて、このトラクションオイルを供給する為のノズルを上記各枢軸を中心とする上記各トラニオンの揺動変位に伴って揺動変位自在とし、上記ノズルから吐出されるトラクションオイルを、上記両ディスクの内側面のうちで上記各パワーローラの周面と当接する部分と同一円周位置に吹き付け自在とした事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば自動車用の変速機として利用するトロイダル型無段変速機の改良に関し、動力伝達部への給油を必要且つ十分に行なう事により、大きな動力を伝達自在で、しかも十分な耐久性を有する構造を実現するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車用変速機として、図5〜6に略示する様なトロイダル型無段変速機を使用する事が研究されている。このトロイダル型無段変速機は、例えば実開昭62−71465号公報に開示されている様に、入力軸1と同心に入力側ディスク2を支持し、この入力軸1と同心に配置した出力軸3の端部に出力側ディスク4を固定している。トロイダル型無段変速機を納めたケーシングの内側で上記入力側、出力側両ディスク2、4の軸方向中間位置には、上記入力軸1並びに出力軸3に対して捻れの位置にある枢軸5、5を中心に揺動するトラニオン6、6を設けている。
【0003】即ち、これら各トラニオン6、6は、それぞれの両端部外面に上記枢軸5、5を、互いに同心に設けている。又、これら各トラニオン6、6の中間部には変位軸7、7の基端部を支持し、上記枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を揺動させる事により、上記各変位軸7、7の傾斜角度の調節を自在としている。上記各トラニオン6、6に支持した変位軸7、7の周囲には、それぞれパワーローラ8、8を回転自在に支持している。そして、これら各パワーローラ8、8を、上記入力側、出力側両ディスク2、4の、互いに対向する内側面2a、4a同士の間に挟持している。これら各内側面2a、4aは、それぞれ断面が、上記枢軸5を中心とする円弧を回転させて得られる凹面をなしている。そして、球状凸面に形成した上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aを、上記内側面2a、4aに当接させている。
【0004】上記入力軸1と入力側ディスク2との間には、ローディングカム式の押圧装置9を設け、この押圧装置9によって、上記入力側ディスク2を出力側ディスク4に向け弾性的に押圧自在としている。この押圧装置9は、入力軸1と共に回転するカム板10と、保持器11により転動自在に保持した複数個(例えば4個)のローラ12、12とから構成している。上記カム板10の片側面(図5〜6の右側面)には、円周方向に亙る凹凸であるカム面13を形成し、上記入力側ディスク2の外側面(図5〜6の左側面)にも、同様の形状を有するカム面14を形成している。そして、上記複数個のローラ12、12を、上記入力軸1の中心に関し放射方向の軸を中心とする回転自在に支持している。
【0005】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の使用時、入力軸1の回転に伴ってカム板10が回転すると、カム面13が複数個のローラ12、12を、入力側ディスク2の外側面に形成したカム面14に押圧する。この結果、上記入力側ディスク2が、上記複数のパワーローラ8、8に押圧されると同時に、上記両カム面13、14と複数個のローラ12、12との押し付け合いに基づいて、上記入力側ディスク2が回転する。そして、この入力側ディスク2の回転が、上記複数のパワーローラ8、8を介して上記出力側ディスク4に伝達され、この出力側ディスク4に固定の出力軸3が回転する。
【0006】入力軸1と出力軸3との回転速度比(変速比)を変える場合で、先ず入力軸1と出力軸3との間で減速を行なう場合には、前記各枢軸5、5を中心として前記各トラニオン6、6を所定方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図5に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの中心寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの外周寄り部分とにそれぞれ当接する様に、前記各変位軸7、7を傾斜させる。反対に、増速を行なう場合には、上記各枢軸5、5を中心として上記各トラニオン6、6を反対方向に揺動させる。そして、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aが図6に示す様に、入力側ディスク2の内側面2aの外周寄り部分と出力側ディスク4の内側面4aの中心寄り部分とに、それぞれ当接する様に、上記各変位軸7、7を傾斜させる。各変位軸7、7の傾斜角度を図5と図6との中間にすれば、入力軸1と出力軸3との間で、中間の変速比を得られる。
【0007】又、図7〜8は、実願昭63−69293号(実開平1−173552号)のマイクロフィルムに記載された、より具体化されたトロイダル型無段変速機の1例を示している。入力側ディスク2と出力側ディスク4とは円管状の入力軸15の周囲に、それぞれニードル軸受16、16を介して、回転自在に支持している。又、カム板10は上記入力軸15の端部(図7の左端部)外周面にスプライン係合させ、鍔部17により上記入力側ディスク2から離れる方向への移動を阻止している。そして、このカム板10とローラ12、12とにより、上記入力軸15の回転に基づいて上記入力側ディスク2を、上記出力側ディスク4に向け押圧しつつ回転させる押圧装置9を構成している。上記出力側ディスク4には出力歯車18を、キー19、19により結合し、これら出力側ディスク4と出力歯車18とが同期して回転する様にしている。
【0008】1対のトラニオン6、6の両端部に設けた枢軸5、5はそれぞれ1対の支持板20、20に、揺動並びに軸方向(図7の表裏方向、図8の左右方向)の変位自在に支持している。そして、上記各トラニオン6、6の中間部に形成した円孔21、21部分に、変位軸7、7を支持している。これら各変位軸7、7は、互いに平行で且つ偏心した支持軸部22、22と枢支軸部23、23とを、それぞれ有する。このうちの各支持軸部22、22を上記各円孔21、21の内側に、ラジアルニードル軸受24、24を介して、回転自在に支持している。又、上記各枢支軸部23、23の周囲にパワーローラ8、8を、別のラジアルニードル軸受25、25を介して、回転自在に支持している。
【0009】尚、上記1対の変位軸7、7は、上記入力軸15に対して180度反対側位置に設けている。又、これら各変位軸7、7の各枢支軸部23、23が各支持軸部22、22に対し偏心している方向は、上記入力側、出力側両ディスク2、4の回転方向に関し同方向(図8で左右逆方向)としている。又、偏心方向は、上記入力軸15の配設方向に対しほぼ直交する方向としている。従って、上記各パワーローラ8、8は、上記入力軸15の軸方向(図7の左右方向、図8の表裏方向)に亙る若干の変位自在に支持される。この結果、回転力の伝達状態で構成各部材に加わる大きな荷重に基づく、これら構成各部材の弾性変形に起因して、上記各パワーローラ8、8が上記入力軸15の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各部に無理な力を加える事なく、この変位を吸収できる。
【0010】又、上記各パワーローラ8、8の外側面と上記各トラニオン6、6の中間部内側面との間には、パワーローラ8、8の外側面の側から順に、スラスト玉軸受26、26とスラストニードル軸受27、27とを設けている。このうちのスラスト玉軸受26、26は、上記各パワーローラ8、8に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ8、8の回転を許容するものである。又、上記各スラストニードル軸受27、27は、上記各パワーローラ8、8から上記各スラスト玉軸受26、26を構成する外輪28、28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、前記各枢支軸部23、23及び上記外輪28、28が、前記支持軸部22、22を中心に揺動する事を許容する。
【0011】更に、上記各トラニオン6、6の一端部(図8の左端部)にはそれぞれ駆動ロッド29、29を結合し、これら各駆動ロッド29、29の中間部外周面に駆動ピストン30、30を固設している。そして、これら各駆動ピストン30、30を、それぞれ駆動シリンダ31、31内に油密に嵌装している。
【0012】上述の様に構成するトロイダル型無段変速機の場合には、入力軸15の回転は、押圧装置9を介して入力側ディスク2に伝わる。そして、この入力側ディスク2の回転が、1対のパワーローラ8、8を介して出力側ディスク4に伝わり、更にこの出力側ディスク4の回転が、出力歯車18より取り出される。入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比を変える場合には、上記1対の駆動ピストン30、30を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン30、30の変位に伴って上記1対のトラニオン6、6が、それぞれ逆方向に変位し、例えば図8の下側のパワーローラ8が同図の右側に、同図の上側のパワーローラ8が同図の左側に、それぞれ変位する。この結果、これら各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部に作用する、接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って上記各トラニオン6、6が、支持板20、20に枢支された枢軸5、5を中心として、互いに逆方向に揺動する。この結果、前述の図5〜6に示した様に、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aと上記各内側面2a、4aとの当接位置が変化し、上記入力軸15と出力歯車18との間の回転速度比が変化する。
【0013】尚、この様に上記入力軸15と出力歯車18との間で回転力の伝達を行なう際には、構成各部材の弾性変形に基づいて上記各パワーローラ8、8が、上記入力軸15の軸方向に変位し、これら各パワーローラ8、8を枢支している前記各変位軸7、7が、前記各支持軸部22、22を中心として僅かに回動する。この回動の結果、前記各スラスト玉軸受26、26の外輪28、28の外側面と上記各トラニオン6、6の内側面とが相対変位する。これら外側面と内側面との間には、前記各スラストニードル軸受27、27が存在する為、この相対変位に要する力は小さい。従って、上述の様に各変位軸7、7の傾斜角度を変化させる為の力が小さくて済む。
【0014】又、図7〜8には示していないが、上記各パワーローラ8、8の周面8a、8aと前記入力側ディスク2及び出力側ディスク4の内側面2a、4aとの当接部(トラクション部)には、潤滑油(トラクションオイル)を連続的に供給して、この当接部に油膜を形成する様にしている。即ち、この当接部には、例えば4×10mm程度の接触楕円が存在する。そして、この接触楕円の中央部分には、例えば50kwを越える様な大きな動力を伝達する場合、3.5GPa以上の高面圧が加わる。この様な高面圧が加わるトラクション部では発熱量も相当になる為、このトラクション部を冷却すると共にこのトラクション部に存在する油膜を確保する為、上記トラクションオイルを供給する必要がある。
【0015】この為に従来から、例えば特開平4−29659号公報、実開平2−47458号公報に記載されている様な潤滑装置が知られている。このうちの実開平2−47458号公報に記載されている潤滑装置は、パワーローラに設けたノズル孔により、上記トラクション部にトラクションオイルを供給するものである。又、特開平4−29659号公報に記載されている潤滑装置は、上記パワーローラに設けたノズル孔に加え、ハウジング側にもトラクションオイルを供給する為のノズル孔を設けたものである。
【0016】更に、特開平11−210855号公報には、図9〜10に示す様な潤滑装置が記載されている。この従来装置の場合には、トラニオン6、6支持用の支持板20の中間部を、揺動並びに枢軸5、5の軸方向(図9〜10の上下方向)に亙る変位自在に支持する為の支持ポスト32の先端部に潤滑ポスト33を、結合ねじ34により結合固定している。この潤滑ポスト33の先端部に形成した抑え鍔部35の外周面の円周方向等間隔4個所位置にそれぞれの下流端を開口させた4個のノズル孔36a、36bのうち、図10に示した2個のノズル孔36a、36aの下流端は、入力側ディスク2の内側面2a、出力側ディスク4の内側面4aに向けて、それぞれ開口している。又、図9に示した2個のノズル孔36b、36bの下流端は、各パワーローラ8、8の周面8a、8aに向けて開口している。
【0017】トロイダル型無段変速機の運転時に上述の様な4個のノズル孔36a、36bには、図示しない送油ポンプの働きにより、ハウジング37の内面に形成した潤滑油供給溝53を通じて、トラクションオイルを送り込む。そしてこのトラクションオイルを、上記4個のノズル孔36a、36bの下流端開口から噴出させる。これら各ノズル孔36a、36bから噴出されたトラクションオイルのうち、図10に示した2個のノズル孔36a、36aから噴出したトラクションオイルは、上記入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aに付着してから、これら各内側面2a、4aと前記各パワーローラ8、8の周面8a、8aとの当接部であるトラクション部に送られる。更に、図9に示した2個のノズル孔36b、36bから噴出したトラクションオイルは、上記各周面8a、8aに付着してから、上記各トラクション部に送られる。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】トロイダル型無段変速機の場合、次の様な理由により、上記トラクション部への潤滑油供給を十分に行なう必要がある。即ち、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aと各パワーローラ8、8の周面8a、8aとの当接部であるトラクション部に存在する接触楕円では、トロイダル型無段変速機の運転時に回転滑り成分であるスピンが発生する。この様なスピンの発生は、幾何学上不可避であり、駆動方向に対し直角方向の回転滑り成分である為、そのまま動力損失になる。そして、この動力損失は、熱の形となって上記入力側、出力側両ディスク2、4や各パワーローラ8、8、更には上記トラクション部に存在するトラクションオイルの温度を上昇させる。これら各部材2、4、8やトラクションオイルの温度が上昇すると、このトラクションオイルの粘度低下に伴ってトラクション係数が低下し、スリップが発生してトロイダル型無段変速機の伝達効率が低下するだけでなく、著しい場合には焼き付き等の損傷が発生する可能性がある。
【0019】この様に、トラクション部に存在するトラクションオイルが動力を伝達するトロイダル型無段変速機の場合には、上記トラクション部での発熱量に留意して、このトラクション部の温度上昇を抑える為の考慮が重要である。但し、上記トラクション部での発熱量は、トロイダル型無段変速機を通過する動力の大きさ(負荷)により変動するのは勿論、変速比や回転数によっても変化する。即ち、これら変速比や回転数によって上記スピンの大きさが変化するので、上記発熱量もこれに合わせて変化する。従って、上述の様な原因による伝達効率の低下や損傷の発生を防止する為には、トロイダル型無段変速機の運転状況に応じて、上記トラクションオイルの供給状態を変える事が好ましい。
【0020】ところが、図9〜10に示した構造も含め、従来から知られているトロイダル型無段変速機の場合には、トロイダル型無段変速機の運転時にトラクションオイルを、運転状態に関係なく、一定の部分に一定量ずつ供給する様に構成している。一方、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aと各パワーローラ8、8の周面8a、8aとの当接部分であるトラクション部を潤滑する為に必要とするトラクションオイルの量は、上述した様に、運転状態により変化する。具体的には、上記入力側ディスク2から出力側ディスク4に伝達する動力(トルク及び回転速度)が大きくなる程、必要とするトラクションオイルの量が多くなる。又、前述の図5〜6から明らかな通り、上記入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aで各パワーローラ8、8の周面8a、8aと当接する部分は、上記両ディスク2、4同士の間での変速比によって変化する。
【0021】これに対して従来構造の場合には、入力側ディスク2から出力側ディスク4に伝達する動力が大きく、しかも上記入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aに供給するトラクションオイルが上記当接部分に対応する部分から外れた部分に吹き付けられた場合でも、この当接部分に十分なトラクションオイルが供給される様に、過剰のトラクションオイルをノズルから噴出させていた。言い換えれば、最も厳しい運転状態でもトラクション部に十分量のトラクションオイルが供給される様に、過剰のトラクションオイルを供給していた。この為、このトラクションオイルを加圧送給する為のポンプによる動力損失が大きくなるだけでなく、ノズルから送り出された過剰なトラクションオイルの攪拌抵抗による動力損失も大きくなる。この結果、トロイダル型無段変速機の伝達効率が悪化する為、好ましくない。本発明のトロイダル型無段変速機は、この様な事情に鑑みて発明したものである。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明のトロイダル型無段変速機は何れも、前述した従来のトロイダル型無段変速機と同様に、ハウジングと、このハウジングの内側に互いに同心に、且つ互いに独立した回転自在に支持された入力側、出力側両ディスクと、これら入力側、出力側両ディスクの中心軸に対し捻れの位置にある、互いに同心の1対ずつの枢軸を中心として揺動する複数個のトラニオンと、これら各トラニオン毎に支持された変位軸と、これら各変位軸に回転自在に支持され、上記入力側、出力側両ディスクの内側面同士の間に挟持された複数個のパワーローラとを備える。そして、上記入力側、出力側両ディスクの互いに対向する内側面を、それぞれ断面が円弧形の凹面とし、上記各パワーローラの周面を球面状の凸面として、これら各周面と上記各内側面とを当接させている。これと共に、上記両ディスクの内側面と上記各パワーローラの周面との当接部にトラクションオイルを供給自在としている。
【0023】特に、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、上記トラクションオイルの供給量を、上記入力側ディスクから上記出力側ディスクに伝達する動力が大きくなる程多くする。
【0024】更に、請求項2に記載したトロイダル型無段変速機に於いては、上記トラクションオイルを供給する為のノズルを上記各枢軸を中心とする上記各トラニオンの揺動変位に伴って揺動変位自在とし、上記ノズルから吐出されるトラクションオイルを、上記両ディスクの内側面のうちで上記各パワーローラの周面と当接する部分と同一円周位置に吹き付け自在としている。
【0025】
【作用】上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機は何れも、運転状況に応じてトラクションオイルの供給状態を変える為、トラクション部に十分量のトラクションオイルを供給して、スリップによる伝達効率の低下や焼き付き等の損傷を防止しつつ、過剰なトラクションオイル供給に伴う伝達効率の低下を防止できる。更に、請求項1に記載した発明と請求項2に記載した発明とを組み合わせれば、より優れた作用・効果を得られる。
【0026】
【発明の実施の形態】図1は、請求項1に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本発明の特徴は、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aと各パワーローラ8、8の周面8a、8a(図5〜9参照、図1には省略)との当接部であるトラクション部にトラクションオイルを効率良く供給する点にある。トロイダル型無段変速機全体の構成に就いては、前述した従来構造と同様であるから重複する図示並びに説明を省略若しくは簡略にし、以下、本発明の特徴部分を中心に説明する。
【0027】トラクションオイルを送り出す為の給油ポンプ38と、このトラクションオイルを噴出する為のノズル孔36a、36bを設けた潤滑ポスト33(図9〜10参照)とを結ぶ給油通路39の途中には、流量調整弁40を設けている。又、エンジン41とトロイダル型無段変速機42の入力軸15(図7〜8参照)とを結ぶ伝達軸43の途中には、この伝達軸43の回転速度とこの伝達軸43に加わるトルクとを検出する回転センサ44を設けている。そして、この回転センサ44の検出信号を、上記流量調整弁40の開度を制御する為の、マイクロコンピュータを内蔵した制御器45に入力している。図示の例の場合にこの制御器45には、上記回転センサ44の検出信号に加え、上記潤滑ポスト33に送り込むトラクションオイルの温度を検出する油温センサ46の検出信号を入力している。
【0028】上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機は、運転状況に応じてトラクションオイルの供給状態を変える。即ち、上記回転センサ44が検出する上記伝達軸43の回転速度が高くなる程、又、この伝達軸43に加わるトルクが大きくなる程、上記流量調整弁40の開度を大きくし、上記潤滑ポスト33のノズル孔36a、36bから吐出するトラクションオイルの量を多くする。この為、トラクション部に十分量のトラクションオイルを供給して、スリップによる伝達効率の低下や焼き付き等の損傷を防止しつつ、過剰なトラクションオイル供給に伴う伝達効率の低下を防止できる。又、上記制御器45は、上記油温センサ46が検出するトラクションオイルの温度が高い程、上記流量調整弁40の開度を大きくし、上記潤滑ポスト33のノズル孔36a、36bから吐出するトラクションオイルの量を多くする。この為、上記トラクションオイルの温度が高い場合でも、上記トラクション部の冷却を十分に行なって、焼き付きの発生防止を十分に図れる。
【0029】尚、上述の説明では、入力側ディスク2から出力側ディスク4に伝達する動力を検出する為に、上記伝達軸43の回転速度及び回転数を検出するとしたが、本発明を実施すべく上記動力を検出するのに、次の■の様な手段を採用する事もできる。
■ 何れかの部分の回転数と、アクセル開度とを検出する。
■ 何れかの部分の回転数と、トラニオン6、6を変位させる為の駆動シリンダ31、31内で、駆動ピストン30、30の両側にある室(図9参照)の差圧を検出する。上記■の場合には、回転数とアクセル開度とから、エンジン41が発生するトルクを求め、この様にして求めたトルクと回転数とに基づいて、上記流量調整弁40の開度を調節する。又、上記■の場合には、上記差圧に基づいてトロイダル型無段変速機42が伝達しているトルクを求め、この様にして求めたトルクと回転数とに基づいて、上記流量調整弁40の開度を調節する。
【0030】次に、図2〜4は、請求項2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、トラニオン6の長さ方向一端部でパワーローラ8の外周縁からはみ出した部分の幅方向2個所位置に、トラクションオイルを噴出する為のノズル孔47、47を形成している。これら各ノズル孔47、47は、入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aの一部で、上記パワーローラ8の周面8aと当接する部分と同一円周位置に向けて開口している。即ち、上記入力側ディスク2から出力側ディスク4への動力伝達時に上記各内側面2a、4aは、これら各ディスク2、4の中心をその中心とする、図3に斜格子で示した帯状部分で、上記パワーローラ8の周面8aと転がり接触する。本例の場合には、上記各ノズル孔47、47を、上記帯状部分に向けて開口させている。そして、上記トラニオン6の一端部(図3〜4の下端部)に設けた枢軸5の端面に開口した凹孔48を通じて、上記各ノズル孔47、47内に、トラクションオイルを送り込み自在としている。尚、上記凹孔48には、中空円管状の駆動ロッド29(図9参照)の端部を内嵌固定し、この駆動ロッド29を通じて、上記凹孔48内にトラクションオイルを供給自在とする。
【0031】上述の様に構成する本例のトロイダル型無段変速機の運転時には、上記各ノズル孔47、47から噴出するトラクションオイルを、上記入力側、出力側両ディスク2、4の内側面2a、4aのうちで上記パワーローラ8の周面8aと当接する、図3に斜格子で示した部分に吹き付ける。上記内側面2a、4aのうちで上記周面8aと当接する部分は、上記入力側ディスク2と出力側ディスク4との間の変速比を変えるべく上記トラニオン6の傾斜角度を、例えば図2の上部に示す状態或は下部に示す状態に変化させる事に伴って変位する。本例の場合には、この様に上記当接する部分が変位した場合でも、上記各ノズル孔47、47がこの部分に対応する部分(上記パワーローラ8の中心をその中心とする、上記帯状部分)に向き続ける。この為、これら各ノズル孔47、47から過剰のトラクションオイルを噴出しなくても、トラクション部に十分量のトラクションオイルを供給して、スリップによる伝達効率の低下や焼き付き等の損傷を防止できる。この為、損傷を防止しつつ、過剰なトラクションオイル供給に伴う伝達効率の低下を防止できる。尚、上記トラニオン6と、このトラニオン6に隣接する固定の部分との間には、このトラニオン6の傾斜角度が過剰になる事を防止する為のストッパ機構を設けているが、上記各ノズル孔47、47は、上記トラニオン6の長さ方向に関して、上記ストッパ機構とは逆側の端部に設ける。
【0032】
【発明の効果】本発明は、以上に述べた通り構成され作用するので、十分な耐久性及び信頼性を確保しつつ、過剰なトラクションオイルの供給を不要にして、優れた伝達効率を有するトロイダル型無段変速機を実現できる。尚、請求項1に記載した発明と請求項2に記載した発明とを組み合わせて実施すれば、トロイダル型無段変速機の効率をより向上させる事ができる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成11年11月1日(1999.11.1)
【代理人】 【識別番号】100087457
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 武男 (外1名)
【公開番号】 特開2001−132808(P2001−132808A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−310994