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【発明の名称】 車軸駆動装置
【発明者】 【氏名】高田 憲一

【氏名】大橋 良太

【要約】 【課題】HSTを備えた車軸駆動装置において、HST回路内で循環する作動油の油温上昇を防止する。

【解決手段】車軸駆動装置を、油溜めを形成するハウジングと、ハウジングの中に配置された車軸駆動用のHST8であって、油圧ポンプ11、油圧モータ21、並びに両者を流体的に接続する第一及び第二の回路(93・94)を備える構成であるものと、前記第一と第二の回路(93・94)のそれぞれに設けられる、前記油溜めから前記回路93・94の方向へ油を流すためのチャージ油路82と、オリフィス116を備えたドレーン油路101であって、前記回路93・94から前記油溜めの方向へ油を流すためのものであり、かつ、上記チャージ油路82から離れた位置にて前記第一と第二の回路93・94の少なくともどちらか一つに連通して設けられるものと、により構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油溜めを形成するハウジングと、ハウジングの中に配置された車軸駆動用のHSTであって、油圧ポンプ、油圧モータ、並びに両者を流体的に接続する第一及び第二の回路を備える構成であるものと、前記第一と第二の回路のそれぞれに設けられる、前記油溜めから前記回路の方向へ油を流すためのチャージ油路と、オリフィスを備えたドレーン油路であって、前記回路から前記油溜めの方向へ油を流すものであり、かつ、上記チャージ油路から離れた位置にて前記第一と第二の回路の少なくともどちらか一つに連通して設けられるものと、によりなる車軸駆動装置。
【請求項2】 油溜めを形成するハウジングと、ハウジングの中に配置された車軸駆動用のHSTであって、油圧ポンプ、油圧モータ、並びに両者を流体的に接続する第一及び第二の回路を備える構成であるものと、前記第一と第二の回路のそれぞれより分岐させて設けられる、前記油溜めから前記回路の方向へ油を流すためのチャージ油路であって、その端部をセンタセクションの第一位置に開口させた構成であるものと、オリフィスを備えたドレーン油路であって、少なくとも前記第一と第二の回路のうちどちらか一つに連通して該回路から前記油溜めの方向へ油を流すものであり、かつ、その端部をセンタセクションの上記第一位置から離れた第二位置に開口させた構成であるものと、によりなる車軸駆動装置。
【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、上記油路に作用する圧力が所定値よりも高くなると上記オリフィスを閉じるバルブ機構を備える、車軸駆動装置。
【請求項4】 請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、油溜めからドレーン油路方向への逆流を阻止するチェックバルブを上記ドレーン油路に備えさせた、車軸駆動装置。
【請求項5】 請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、上記ドレーン油路には油フィルタが備えられている、車軸駆動装置。
【請求項6】 請求項5記載の車軸駆動装置であって、上記油フィルタは油補給用のフィルタを兼ねるように構成されている、車軸駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、静油圧式無段変速装置(以下「HST」)を備える構成の車軸駆動装置の技術に関する。詳細には、そのようなHSTにおいて、回路内の油温上昇を抑制するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、HSTの中立範囲を拡大することとした車軸駆動装置の技術は公知となっている。この従来技術に係る車軸駆動装置の例としては図7の符号8に参照される如くのHSTを伝動系に配設して前後進可能な構成としたものがあり、このHST8は、可動斜板13式の可変容積型油圧ポンプ11、定容積型の油圧モータ21、両者を流体的に接続する第一・第二の回路93・94、油を補給するために両回路93・94に接続されるチャージ油路82、該チャージ油路82と第一・第二回路93・94を接続する部分にそれぞれ設けられる作動油補給用のチェックバルブ83・83により構成され、上記回路のうち後進時に高圧力となる側の回路(これを第二回路とする。)94に配設された上記チェックバルブ93にはオリフィス116を備えたドレーン油路が設けてあり、油圧ポンプ11の中立位置が正確に定まらず後進側にわずかに傾動して上記第二回路94の圧力が高くなっても、作動油を上記ドレーン油路を介してドレーンさせることにより、モータが駆動されて車両が微動する事態を防止できるようにしている。また、このように後進側に不感帯を設けておくことで、変速操作手段を中立位置としたときに可動斜板13の傾動角が当該不感帯の幅内となるよう調整すれば足りることとなるから、この車軸駆動装置は出荷前の調整作業が容易になる利点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記したような従来の車軸駆動装置は、上記ドレーン油路にてドレーンされた作動油は直接油溜め9へ戻される構成でなくチャージ油路82に戻るように構成されるのみであるから、当該作動油は第二回路94から一旦ドレーンされても、その後すぐにチャージ油路82から負圧側の第一回路93へ吸入されることとなる。このように、回路からドレーンされた高温の油が十分冷却されないまま第一回路93側へ供給されるために上記第一回路93・第二回路94内を循環する作動油の温度が上昇してしまい、この結果HST8の容積効率が低下する等の不都合があったのである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】即ち、請求項1においては、油溜めを形成するハウジングと、ハウジングの中に配置された車軸駆動用のHSTであって、油圧ポンプ、油圧モータ、並びに両者を流体的に接続する第一及び第二の回路を備える構成であるものと、前記第一と第二の回路のそれぞれに設けられる、前記油溜めから前記回路の方向へ油を流すためのチャージ油路と、オリフィスを備えたドレーン油路であって、前記回路から前記油溜めの方向へ油を流すものであり、かつ、上記チャージ油路から離れた位置にて前記第一と第二の回路の少なくともどちらか一つに連通して設けられるものと、によりなるものである。
【0006】請求項2においては、油溜めを形成するハウジングと、ハウジングの中に配置された車軸駆動用のHSTであって、油圧ポンプ、油圧モータ、並びに両者を流体的に接続する第一及び第二の回路を備える構成であるものと、前記第一と第二の回路のそれぞれより分岐させて設けられる、前記油溜めから前記回路の方向へ油を流すためのチャージ油路であって、その端部をセンタセクションの第一位置に開口させた構成であるものと、オリフィスを備えたドレーン油路であって、少なくとも前記第一と第二の回路のうちどちらか一つに連通して該回路から前記油溜めの方向へ油を流すものであり、かつ、その端部をセンタセクションの上記第一位置から離れた第二位置に開口させた構成であるものと、によりなるものである。
【0007】請求項3においては、請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、上記油路に作用する圧力が所定値よりも高くなると上記オリフィスを閉じるバルブ機構を備えるものである。
【0008】請求項4においては、請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、油溜めからドレーン油路方向への逆流を阻止するチェックバルブを上記ドレーン油路に備えさせたものである。
【0009】請求項5においては、請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、上記ドレーン油路には油フィルタが備えられているものである。
【0010】請求項6においては、請求項5記載の車軸駆動装置であって、上記油フィルタは油補給用のフィルタを兼ねるように構成されているものである。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、発明の実施の形態を説明する。まず、本発明の実施例に係る車軸駆動装置の全体構成を説明する。図1は本発明の一実施例に係る車軸駆動装置の全体的な構成を示したスケルトン図、図2は同じく平面断面図、図3は図2におけるA−A断面矢視図である。図4は図2におけるB−B断面矢視図である。
【0012】即ちこの車軸駆動装置1は、そのハウジング9を、上部ハウジング9tと下部ハウジング9bとを、互いにその周囲の水平で平坦な接合面で接合させて構成してある。このハウジングの接合面に後述のモータ軸22の軸受部が設けられており、車軸50L・50Rを回転自在に支持する軸受部は上記接合面より上方へ偏位して上部ハウジング9t内に配置させてある。両車軸50L・50Rの内端側はデフギア装置40にて差動的に結合される一方、外端側はハウジング9の左右外側壁からそれぞれ外方へ延出させている。ハウジング9の内部は、一体的に形設された内部壁9iによって第一の部屋R1と第二の部屋R2とに区画され、第一の部屋R1にはHST式変速装置8が収納され、第二の部屋R2には、モータ軸22からデフギア装置40へ動力を伝達する歯車列からなるドライブトレーン30、デフギア装置40、及び車軸50L・50Rを収納させている。該内部壁9iは、車軸50L・50Rに平行な長手部分と、該長手部に対して垂直に延伸する垂直部分とからなり、この両部分は連続的に設けられて、第一の部屋R1が第二の部屋R2に隣接する構成としている。また、内部壁9iは、上部ハウジング9tの上壁内面から上記接合面に向かって垂下した壁部と、下部ハウジング9bの内底面から上記接合面に向かって立ち上げた壁部とにより構成され、上下のハウジング9t・9bを接合させることにより両壁部の端面も接合されて、形成された内部壁9iによりハウジング9内に独立した二つの部屋R1・R2が区画形成されるようにしてある。前記第一の部屋R1及び第二の部屋R2には油溜まりを形成して、共通の潤滑油を充填している。図3に示すようにハウジング上壁には給油蓋95が設けられ、該給油蓋95を外せば作動油を注入できるようにしている。また、第一の部屋R1を構成する上部ハウジング9tの上壁面には油流通ポートを設け(図外)、ゴムホース等で構成される図略のパイピング等を介して(あるいは直接に)外部リザーバタンク(図外)を接続しており、HSTの駆動により油温が上昇して作動油の体積が増加しても、該増加分をリザーバタンクに流すことにより油量を調整できるようにしている。
【0013】また、第一の部屋R1と第二の部屋R2とを仕切る内部壁9iの任意位置には油フィルタ81が配置され、第一の部屋R1と第二の部屋R2とが該油フィルタ81を介して流通できるようにしている。この構成により、第二の部屋R2内の歯車の噛み合い部等から鉄粉等の異物が発生しても、油が第一の部屋R1内に入る際に該異物は油フィルタ81によって濾過されるので、異物が第一の部屋R1内のHSTに悪影響を及ぼすことが防止され、この結果、ハウジング内に充填した油に、上記HSTの作動油としての役割とともに、ギア・軸受部等の潤滑油としての役割をも果たさせることができる。
【0014】上記第一の部屋R1は、ハウジング9内にて、車軸50Rの前方で、かつ、モータ軸22からデフギア装置40へ動力を伝達するギア伝動装置の側方に配置される。該第一の部屋R1内には、HSTのセンタセクション10が分離自在に取り付けられている。該センタセクション10は、その長手方向が車軸50L・50Rに対して垂直な向きとなるよう配設され、その前部には鉛直面を形成し、この鉛直面をモータ付設面10mとしてここに油圧モータ21を配設している。一方、センタセクション10の後部には水平面を形成し、該水平面をポンプ付設面10pとしてここに油圧ポンプ11を配設している。上記ポンプ付設面10pの中央にはポンプ軸12が配置されて鉛直支持されている。
【0015】上記油圧ポンプ11について説明する。即ち、センタセクション10の前記ポンプ付設面10p上にはシリンダブロック14が回転摺動自在に配置され、該シリンダブロック14には複数のシリンダ孔が形設され、それぞれの該シリンダ孔には付勢バネを介してピストン15が往復動自在に嵌合されている。上記ポンプ付設面10pには弓形のポートを二つ穿設してある。該ピストン15・15・・・の頭部には可動斜板13が当接されている。上記ポンプ軸12は入力軸を兼ねたものであって上記シリンダブロック14の回転軸心に沿って配置され、該シリンダブロック14に係止されて相対回転不能とされている。ポンプ軸12の上端は上部ハウジング9tの上壁から上方へ突出して、該突出部分には冷却ファン7及び入力プーリ6を固定している。該入力プーリ6には図1に示すように、車両エンジン2の出力軸3の動力が、出力プーリ4・ベルト5を介して入力される。この構成により、前記可動斜板13のピストン接当面をシリンダブロック14の回転軸心に対して垂直である面(水平面)から任意角だけ傾動操作することで、油圧ポンプ11からの油の吐出量及び吐出方向を変更することができる。
【0016】上記可動斜板13を傾動操作するために、図1・図3に示すように、デフギア装置40へ動力を伝達するドライブトレーン30と反対側の側部にある上部ハウジング9tの側壁には、コントロール軸60が上記車軸50L・50Rと平行に回転自在に支持される。該コントロール軸60の上記側壁より突出した部分にはコントロールアーム61の基端部が固定される一方、該コントロール軸60のハウジング9内部の部分には揺動アーム62が取り付けられている。コントロールアーム61は車両の運転席に設けられる図外の変速操作具に連係される。上記揺動アーム62はコントロール軸60からそれぞれ放射方向に伸びる第一アーム62aと第二アーム62bとにより構成され、図3の如く該第一アーム62aの先端には突起63を形設して、該突起63は可動斜板13の側面に設けた溝部13dに係合させている。尚、コントロール軸60の軸心は上記可動斜板13の傾動中心に一致させるべく構成してあり、これにより、可動斜板13をいかなる角度に傾動させたときでも上記突起63と上記溝部13dとの係合状態が安定して維持される。このように構成することで、コントロールアーム61を機体前後方向に回動させると、コントロール軸60まわりに揺動アーム62が前後に回動し、第一アーム62aを介して可動斜板13が傾動して、油圧ポンプ11の出力を変更できるのである。
【0017】第二アーム39bの先端には係合ピン67が突設され、ハウジング9内のコントロール軸60上にはブッシュ64を外嵌し、該ブッシュ64にねじりコイルバネタイプの中立戻しバネ65を外嵌している。該中立戻しバネ65の両端は交差させながら上述の第二アーム62bの方向に延出しており、該延出部分の端部にて、上部ハウジング9tの内壁に装着してある偏心軸66と、上記係合ピン67とを挟み込んである。上記の構成により、車両速度を変更するためにコントロールアーム61を回動操作したときは、上記中立戻しバネ65はその一端側が係合ピン67によって広げられる一方、他端側は偏心軸66によって止められるので、コントロールアーム61に中立復帰の付勢力を付与することとなる。従って、コントロールアーム61への操作力が解除されると、この中立戻しバネ65の復元力により、係合ピン67はその位置を上記偏心軸66によって規定される中立位置に復帰され保持される。上記偏心軸66のハウジング外に延出した部分は調整ネジに構成され、このネジ部分を介して該偏心軸66を任意に回動変位することによって、可動斜板13の中立位置を正確に調整することができる。
【0018】前記油圧ポンプ11から吐出された圧油を、センタセクション10に穿設された油路を介して油圧モータ21に送油させることにより、HST8を構成する。該油路の具体的な構成については後述する。図5は第一実施例に係るドレーン回路を示した断面図要部拡大図、図6は第一実施例を適用した場合の油圧回路図、図7は従来の構成の油圧回路を示した比較参考図である。この油圧モータ21の構成は図2に示すように、センタセクション10の垂直面に形成した上記モータ付設面10mに、シリンダブロック24がその回転軸心を左右水平方向に向けて回転摺動自在に設置されている。該シリンダブロック24には複数のシリンダ孔が穿設され、それぞれの該シリンダ孔内には付勢バネを介して複数のピストン25が往復動自在に嵌合されている。上部ハウジング9tと下部ハウジング9bとの間には固定斜板23が挟入固定されており、上記ピストン25の頭部は該固定斜板23に接当している。そして、シリンダブロック24の回転軸心上にモータ軸22を相対回転不能に係止して、該モータ軸22は左右水平方向(車軸50L・50Rに平行な方向)に支持させている。
【0019】上記モータ軸22の一端はセンタセクション10のモータ付設面10m中央に設けた軸受孔にて支持させてあり、他側は前記内部壁9iの接合面にて軸受29を介して支持させながら、その先端を第二の部屋R2内に突入させている。上記軸受29はシール付きとして、二つの部屋R1・R2の油が該軸受29部分を介して相互流通するのを防止している。
【0020】次に、上記モータ軸22からデフギア装置40へ動力を伝達するドライブトレーン30について説明する。即ち、モータ軸22の上記第二の部屋R2に突入する部分には出力ギア31が固設され、該出力ギア31にはブレーキディスク32と一体的に形成している。そして、該ブレーキディスク32に制動力を付与することによりモータ軸22を制動するためのブレーキ装置33が、上記ブレーキディスク32の近傍位置に配設される。このブレーキ装置33は図2に示すように、ブレーキディスク32に近接させて配置されるブレーキパッド36及び受け側ブレーキパッド36' 、上記ブレーキパッド36をブレーキディスク32に押し付けるための断面略「D」字状のカムを形設しているブレーキコントロール軸34、並びに、該ブレーキコントロール軸34に固定されるブレーキアーム35とにより構成される。上記ブレーキコントロール軸34は上側ハウジング9tの上壁に鉛直支持され、その先端をハウジング9から上方に突出させ、該突出部分には上記ブレーキアーム35を固定している。上記により、ブレーキアーム35が回動されると、ブレーキコントロール軸34が回動されて上記カムを介してブレーキパッド36を押動するので、該ブレーキパッド36がブレーキディスク32に接触押圧されて摩擦制動作用を行わせる構成となっている。
【0021】上記モータ軸22の後方には、該モータ軸22と平行にカウンタ軸39が水平支持され、該カウンタ軸39上に小径ギア38が遊嵌され、該小径ギア38の歯形と合致する中心孔を有する大径ギア37が、小径ギア38に嵌着設置されて相対回転不能とされている。該大径ギア37は、上記モータ軸22上に固定された上述の出力ギア31と噛合している。
【0022】上記小径ギア38にはデフギア装置40のリングギア41が常時噛合されている。図2を参照してこのデフギア装置の構成を説明する。即ち、該リングギアにはピニオン軸42・42を車軸50L・50Rに対し直交配置させて該リングギア41と一体回転するように設け、該ピニオン軸42・42にはそれぞれベベルギアであるピニオン43・43を回転自在に配置し、車軸50L・50Rの内端側にはデフサイドギア44・44を固定して、該ピニオン43・43に噛合させている。従って、リングギアに入力された動力は、ピニオン43→デフサイドギア44と伝達されて、最終的に車軸50L・50Rを駆動するように構成してある。
【0023】次に、上述のセンタセクション10内に形設された回路の構成について説明する。即ち、上記センタセクション10のポンプ付設面10p及びモータ付設面10mそれぞれには第一・第二の弓形ポート(91・92)が一対で設けられ、該センタセクション10内にはその長手方向に沿うように上下二本平行して第一油路71・第二油路72が穿設される。そしてポンプ付設面10pの第一弓形ポート91とモータ付設面10mの第一弓形ポート91とが上記第一油路71を介して連通され、ポンプ付設面10pの第二弓形ポート92とモータ付設面10mの第二弓形ポート92とが、上記第二油路72、及びセンタセクション10に斜状に穿設されて該第二油路72に接続された連絡油路73を介して連通される。連絡油路73の開口端はプラグ74にて閉鎖される。
【0024】第一油路71及び第二油路72の開口端はプラグ部材75・76にてそれぞれ閉鎖され、該プラグ部材75・76及びセンタセクション10には上下方向にチャージ油路82が穿設される。そして該チャージ油路82が第一油路71及び第二油路72に接続される部分には、作動油の漏れを防止するためのチェックバルブ83・83がそれぞれ配設される。チェックバルブ83・83は上記プラグ部材75・76のそれぞれに内設される構成としている。チャージ油路82の開口端(下端)は補給口84とされて、油を濾過するための油フィルタ80が該補給口84を覆うように取り付けられる。上述の構成により、上記第一油路71をもって油圧ポンプ11及び油圧モータ21を流体的に接続するための第一回路93とし、上記第二油路72及び連絡油路73をもって油圧ポンプ11及び油圧モータ21を流体的に接続するための第二回路94としている。
【0025】従って、変速操作具を前進側に操作した場合は、油圧ポンプ11が作動して第一回路93側の圧力が高くなり、第二回路94側は負圧となる。従って、油圧モータ21が前進方向に駆動されるとともに、油フィルタ80を通過して濾過された作動油が補給口84・チャージ油路82・チェックバルブ83を介して第二油路72に補給される。一方、変速操作具を後進側に操作した場合は、油圧ポンプ11が作動して第二回路94側の圧力が高くなり、第一回路93側は負圧となる。従って、油圧モータ21が後進方向に駆動されるとともに、油フィルタ80を通過して濾過された作動油が補給口84・チャージ油路82・チェックバルブ83を介して第一油路71に補給される。このようにしてHST8の回路93・94内を循環する作動油を随時補給することにより、HST8の内部的な油の漏れを補償して、作動油の油量低下を防止しているのである。
【0026】そして、上記第二油路72の上記補給口84と離れた位置に、本発明の第一実施例に係るドレーン回路101が設けられているのである。この構成を要部拡大図である図5・図6により説明する。即ち、上記第二油路72のチャージ油路82に接続された補給口84側と反対側に、センタセクション10内部に上下方向に穿設されたドレーン連絡油路111が接続され、該ドレーン連絡油路111のセンタセクション10の下面に開口した開口端(下端)にはキャップ112が螺着される。該キャップ112は中空として内部の空間を上記ドレーン連絡油路111に連通させ、その内部には付勢バネ113を介して弁体114が上下摺動自在に設けられ、該弁体114の上限位置を規定するための止め輪115が上記キャップ112に内嵌される。該弁体114の側部には該弁体114の内外に通じる微小径のオリフィス油路116が径方向に一つ、若しくは複数形設され、該弁体114の外周面は環状溝117が該オリフィス油路116に接続されて形設される。そして、弁体114が上限位置にあるときの該環状溝117に高さを合わせて、キャップ112の外周面にドレーン孔118が径方向に形設されて、環状溝117に連通している。これらドレーン連絡油路111、オリフィス油路116、ドレーン孔118により、ドレーン油路を構成しているのである。
【0027】この構成により、例えば変速操作具を中立位置とするが上記可動斜板13の中立位置が厳密に出ておらず、油圧ポンプ11の作用により第二回路94の圧力が少し上昇した場合でも、この場合の圧力が上記付勢バネ113によって規定される圧力を上回ることがないように該付勢バネ113の付勢力を設定しているので、上記弁体114は付勢バネ113によりその上端を上記止め輪115に当接した状態を維持し、この状態では上記オリフィス油路116とドレーン孔118とが環状溝117を介して連通されているので、第二回路94内の油は該オリフィス油路116、環状溝117、ドレーン孔118を介してハウジング9内の油溜まりへドレーンされる。従って、変速操作具を中立位置としているにもかかわらず油圧モータ21がわずかに駆動されて車両が微速に後進する事態は回避される。
【0028】ここで、従来技術を示した比較参考例(図7)と本構成との相違について詳述する。即ち、この図7に示す従来技術においては、変速操作具を中立位置とするが可動斜板13の中立位置が厳密に出ておらず、油圧ポンプ11の作用により第二回路94の圧力が少し上昇した場合においては、チェックバルブ近傍に形設されたオリフィス116付きのドレーン油路を介して作動油がドレーンされることとなるが、そのドレーンされた(高温の)作動油はチャージ油路82に戻され、すぐにその大部分が他方のチェックバルブ83から第一回路93に吸い込まれることとなり、これでは第一・第二回路93・94の油温上昇を招くことになる。一方、本発明の図6に示す構成によれば、第二油路94の油は上記チャージ油路82の補給口84から離れた位置のドレーン孔118からドレーンされることから、該ドレーンされた油はハウジング9の油溜めの油と混合されて、その後油フィルタ80、補給口84、チャージ油路82を介して再度HST8内の回路に取り込まれる構成となるので、この結果HST8の回路93・94内の油温上昇が抑制されるのである。一方、変速操作具を後進側に傾動して油圧ポンプ11を作動させ、第二回路94の圧力が上昇して上記付勢バネ113によって規定される値を上回ると、弁体114はその圧力により下方へ摺動され、上記環状溝117とドレーン孔118との連絡が絶たれるので、第二回路94内の油がドレーンされることはない。即ち、HST8を稼動させるときに作動油がドレーンされてHST8の容積効率が低下されることが防止され、操作に対する応答追従性も良好に維持される。
【0029】次に、上記第一実施例を変形させた、第二から第六までの実施例を説明する。図8は第二実施例に係るドレーン回路を示した断面図要部拡大図、図9は第三実施例に係るドレーン回路を示した断面図要部拡大図、図10は第四実施例に係るドレーン回路を示した断面図要部拡大図、図11は第五実施例に係るドレーン回路を示した断面図要部拡大図、図12は第六実施例に係るドレーン回路を示した断面図要部拡大図である。
【0030】即ち、上述の第一実施例に係るドレーン回路101の代わりに、図8に示す第二実施例のドレーン回路102をセンタセクション10に設ける構成とすることもできる。この第二実施例102においては、上述の第一実施例101と同様の弁体114の内部に、更に逆流防止用のチェックバルブ120を設ける構成としている。具体的には上記弁体114内部にボール121を収納して、更にボール径より小さい内径を有する止め輪122を弁体114内壁に嵌着して、上記チェックバルブ120を構成しているのである。この構成により、例えば変速操作具を前進側に操作して油圧ポンプ11の作用により第二回路94側が負圧になった場合は、該ボール121が上昇して上記止め輪122の内部通路を閉止するので、ハウジング9内の油が上記ドレーン孔118からオリフィス油路116を介して第二回路94内に取り込まれることが防止される。従って、ハウジング9内の油が油フィルタ80を通過せず直接第二回路94内に流入する事態を防止できるので、センタセクション10の第一・第二回路(93・94)内の油に異物が混入する事態を防止でき、また、上記オリフィス油路116部分に異物が詰まる等の不都合も回避される。一方、変速操作具を中立位置や後進側に操作する場合は、上記ボール121は自重により下降して弁体114内部に立設されたストッパ123の上端に接触した状態となり、弁体114のオリフィス油路116と第二油路72とが連通される状態に戻る。従って上記第一実施例101とまったく同様に、変速操作具が中立位置の場合には第二回路94内の作動油がドレーンされて車両の微速発進を防止し、後進側へ操作した場合は第二回路94内の作動油はドレーンされることはないのでHST8稼動時の容積効率の低下が防止される。
【0031】また、次に示す第三実施例のような構成とすることも可能である。図9に示すこの第三実施例103においては、上記ドレーン連絡油路111の開口端を閉止するキャップ112を中実状に形成して、その肉厚部に直接オリフィス油路116' が穿設されてドレーン連絡油路111に連通させてあり、更にオリフィス油路116' の開口始端側において円錐状のシート面125を形成して該部分にボール121を配置して、チェックバルブ120' を構成してある。該シート面125の開口端側においては上記ボール121がキャップ112より抜け出ないようにするための支持板126が止め輪127を介して内嵌設置されている。またこの支持板126には、ボール121がシート面125より離間した際にオリフィス油路116' を油溜めに連通させるための開口を備えている。この構成により、例えば変速操作具を前進側に操作して油圧ポンプ11の作用により第二回路94側が負圧になった場合は、該ボール121が上昇してシート面125に接当し、上記オリフィス油路116' を閉止するので、ハウジング9内の油がオリフィス油路116' を介して第二回路94内に逆流することが防止される。従って、ハウジング9内の油が油フィルタ80を通過せず直接第二回路94内に供給される事態を防止できるので、センタセクション10の第一・第二回路(93・94)内の油に異物が混入する事態を防止でき、また、上記オリフィス油路116' 部分に異物が詰まる等の不都合も回避される。
【0032】また、図10に示される第四実施例のような構成とすることもできる。この第四実施例104においては、上記ドレーン連絡油路111の開口端を閉止するキャップ112に、上述の第三実施例と同様にオリフィス油路116' が穿設されており、更にオリフィス油路116' の開口始端側において油フィルタ130を配置する構成としている。従って、例えば変速操作具を前進側に操作して油圧ポンプ11の作用により第二回路94側が負圧になった場合は、ハウジング9からオリフィス油路116'を介して作動油が第二回路94側に取り込まれるが、その際の油中の異物は上記油フィルタ130によって除去されるから、第二回路94内に異物が混入されたり、オリフィス油路116' に異物が詰まる等の事態は防止できる。
【0033】図11に示す第五実施例105のような構成とすることもできる。これは、上記第一実施例101に示す構成のキャップ112、弁体114等を、センタセクション10のチャージ油路82の補給口84を覆う環状の油フィルタ80内に配設したものである。従って、変速操作具を前進側に操作して油圧ポンプ11の作用により第二回路94側が負圧になった場合は、ハウジング9内の油がオリフィス油路116を介して第二回路94側に取り込まれるが、その際に油中の異物は上記油フィルタ80によって既に除去されているから、第二回路94内に異物が混入されたり、オリフィス油路116に異物が詰まる等の事態は防止できる。本構成は、上記補給口84の油フィルタ80を共用していることから独自のフィルタを設ける必要がなく、組立工数や製造コストの低減を図れる。
【0034】また、次に示す第六実施例106の構成とすることもできる。これは図12に示すように、上記ドレーン連絡油路111の開口端を閉止するキャップ112"に直接オリフィス油路116' を穿設し、更にこのキャップ112" を、センタセクション10のチャージ油路82の補給口84を覆う環状の油フィルタ80内に配設したものである。従って、変速操作具を前進側に操作して油圧ポンプ11の作用により第二回路94側が負圧になった場合は、ハウジング9内の油がオリフィス油路116' を介して第二回路94側に取り込まれるが、その際は油中の異物は上記油フィルタ80によって既に除去されているから、第二回路94内に異物が混入されたり、オリフィス油路116' に異物が詰まる等の事態は防止できる。本構成は、上記補給口用の油フィルタ80を共用していることから濾過機構を独自に設ける必要がないので、簡素な構成となって組立工数や製造コストの低減を図れる。
【0035】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成したので、以下に示すような効果を奏する。
【0036】即ち、請求項1に示す如く、油溜めを形成するハウジングと、ハウジングの中に配置された車軸駆動用のHSTであって、油圧ポンプ、油圧モータ、並びに両者を流体的に接続する第一及び第二の回路を備える構成であるものと、前記第一と第二の回路のそれぞれに設けられる、前記油溜めから前記回路の方向へ油を流すためのチャージ油路と、オリフィスを備えたドレーン油路であって、前記回路から前記油溜めの方向へ油を流すものであり、かつ、上記チャージ油路から離れた位置にて前記第一と第二の回路の少なくともどちらか一つに連通して設けられるようにしたので、ドレーン油路はチャージ油路から離れた位置にあるから、ドレーンされた油は従来の如くチャージ油路に直接取り込まれず、確実にハウジング内の油と混合され、その状態でチャージ油路から上記回路へ供給されるので、HSTの回路内の油温上昇を抑制できる。
【0037】請求項2に示す如く、油溜めを形成するハウジングと、ハウジングの中に配置された車軸駆動用のHSTであって、油圧ポンプ、油圧モータ、並びに両者を流体的に接続する第一及び第二の回路を備える構成であるものと、前記第一と第二の回路のそれぞれより分岐させて設けられる、前記油溜めから前記回路の方向へ油を流すためのチャージ油路であって、その端部をセンタセクションの第一位置に開口させた構成であるものと、オリフィスを備えたドレーン油路であって、少なくとも前記第一と第二の回路のうちどちらか一つに連通して該回路から前記油溜めの方向へ油を流すものであり、かつ、その端部をセンタセクションの上記第一位置から離れた第二位置に開口させた構成であるので、チャージ油路の開口がある第一位置より離れた第二位置にドレーン油路の開口が設けられるので、ドレーンされた油は従来の如くチャージ油路に直接取り込まれず、確実にハウジング内の油と混合され、その状態でチャージ油路から上記回路へ供給されるので、HSTの回路内の油温上昇を抑制できる。
【0038】請求項3に示す如く、請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、上記油路に作用する圧力が所定値よりも高くなると上記オリフィスを閉じるバルブ機構を備えるので、変速操作具が中立近傍の一定範囲であるときはオリフィスが開かれるので中立範囲を拡大できる。一方、変速操作具が傾動操作された場合はオリフィスが閉じられるので、HST稼動時に作動油がドレーンされて容積効率が低下することがなく、操作に対する応答性を損なうこともない。
【0039】請求項4に示す如く、請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、油溜めからドレーン油路方向への逆流を阻止するチェックバルブを上記ドレーン油路に備えさせたので、油溜めからHST内の回路への油の逆流を防止できるので、該回路内の油に異物が混入することが防止されるので、結果的にHSTの耐久性・寿命を高めることができ、また、オリフィスに異物が詰まることも防止できる。
【0040】請求項5に示す如く、請求項1又は請求項2記載の車軸駆動装置において、上記ドレーン油路には油フィルタが備えられているので、油溜めからHST内の回路へ油が逆流しても、その際に油内の異物がフィルタによって除去できるので、回路内の油に異物が混入することが防止される。従って、HSTの耐久性・寿命を高めることができ、また、オリフィスに異物が詰まることも防止できる。
【0041】請求項6に示す如く、請求項5記載の車軸駆動装置であって、上記油フィルタは油補給用のフィルタを兼ねるように構成されているので、部品点数、組立工数、及び製造コストの削減に寄与できる。
【出願人】 【識別番号】000125853
【氏名又は名称】株式会社 神崎高級工機製作所
【出願日】 平成11年10月26日(1999.10.26)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎
【公開番号】 特開2001−124199(P2001−124199A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−304444