| 【発明の名称】 |
作業車の走行変速構造 |
| 【発明者】 |
【氏名】市川 信繁
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| 【要約】 |
【課題】シフト部材をスライド操作するギヤ変速型式の変速装置を備えた作業車の走行変速構造において、走行装置に伝達される動力を遮断せずに変速装置の変速操作を行う場合に、変速装置の変速操作が軽く行えるように構成する。
【解決手段】変速装置5の上手側の動力を変速装置5を介さずに変速装置5の下手側に伝達可能な摩擦クラッチ28を備えて、変速装置5の変速操作の開始により、摩擦クラッチ28を伝動遮断状態から滑りながら動力を伝達する半伝動状態に操作する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの下手側に、シフト部材をスライド操作するギヤ変速型式の変速装置を配置し、前記変速装置のシフト部材をスライド操作して前記変速装置を変速操作する変速手段と、前記変速装置の上手側の動力を前記変速装置を介さずに前記変速装置の下手側に伝達可能な摩擦クラッチとを備えると共に、前記変速手段による変速操作の開始により、前記摩擦クラッチを伝動遮断状態から滑りながら動力を伝達する半伝動状態に操作する制御手段を備えてある作業車の走行変速構造。 【請求項2】 エンジンの下手側に、シフト部材をスライド操作するギヤ変速型式の変速装置を配置し、前記変速装置のシフト部材をスライド操作して前記変速装置を変速操作する変速手段と、前記変速装置の上手側の動力を前記変速装置を介さずに前記変速装置の下手側に伝達可能な摩擦クラッチとを備えると共に、前記変速手段による変速操作の開始により、前記摩擦クラッチを伝動遮断状態から滑りながら動力を伝達する半伝動状態に操作し、前記変速手段による変速操作の終了により、前記摩擦クラッチを半伝動状態から伝動遮断状態に操作する制御手段を備えてある作業車の走行変速構造。 【請求項3】 前記摩擦クラッチが半伝動状態から伝動遮断状態に操作される際、前記摩擦クラッチを漸次的に伝動遮断状態に操作するように、前記制御手段を構成してある請求項2記載の作業車の走行変速構造。 【請求項4】 機体に掛かる走行負荷を検出する負荷検出手段を備え、前記負荷検出手段の検出に基づいて、走行負荷が大きいと前記摩擦クラッチが伝動遮断状態から半伝動状態に操作された際の前記摩擦クラッチが伝達する動力が大きなものとなるように、走行負荷が小さいと前記摩擦クラッチが伝動遮断状態から半伝動状態に操作された際の前記摩擦クラッチが伝達する動力が小さなものとなるように、前記制御手段を構成してある請求項1〜3のうちのいずれか一つに記載の作業車の走行変速構造。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、シフト部材をスライド操作するギヤ変速型式の変速装置を備えた作業車の走行変速構造において、変速装置の変速操作の構成に関する。 【0002】 【従来の技術】作業車の一例である農用トラクタでは、例えば特開平9−242871号公報に開示されているように、エンジン(前記公報の図1中の1)の下手側に、シフト部材をスライド操作するギヤ変速型式の変速装置(前記公報の図1中のA)、及び摩擦式の油圧クラッチ(前記公報の図1中の3)を配置し、シフト部材(前記公報の図1中の9,10)をスライド操作して変速装置を変速操作する油圧シリンダ(前記公報の図1中の11,12)を備えたものがある。これにより、操作指令に基づいて油圧シリンダが変速操作を開始すると、油圧クラッチが伝動状態から伝動遮断状態に自動的に操作され、油圧シリンダが変速操作を終了すると、油圧クラッチが伝動遮断状態から伝動状態に自動的に操作されるように構成されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】従来の技術に記載の作業車において、変速装置の下手側に配置されている油圧クラッチ(前記公報の図1中の3)を廃止することが考えられており、走行装置(例えば走行用の車輪やクローラ走行装置等)に伝達される動力を遮断せずに、変速装置を変速操作するように構成することが提案されている。 【0004】このようにエンジンの動力が変速装置を介して走行装置に伝達されている状態で、変速装置のシフト部材をスライド操作して変速操作しようとする場合、シフト部材が咬合する被咬合部とシフト部材との接触面圧が高いものになっているので、シフト部材をスライド操作して被咬合部から離間させることが、重い操作になることがある。本発明は、シフト部材をスライド操作するギヤ変速型式の変速装置を備えた作業車の走行変速構造において、走行装置に伝達される動力を遮断せずに変速装置の変速操作を行う場合に、変速装置の変速操作が軽く行えるように構成することを目的としている。 【0005】 【課題を解決するための手段】[I]請求項1の特徴によれば、変速装置の上手側の動力を変速装置を介さずに変速装置の下手側に伝達可能な摩擦クラッチを備えており、変速手段により変速操作を開始すると(変速装置のシフト部材を被咬合部から抜き始めようとすると)、摩擦クラッチが伝動遮断状態から半伝動状態に操作される。このように摩擦クラッチを半伝動状態に操作すると、変速装置の上手側の動力が変速装置を介して下手側に伝達されるのに加えて、変速装置の上手側の動力が摩擦クラッチにより変速装置を介さずに下手側に伝達されると言うように、変速装置の上手側の動力が、変速装置及び摩擦クラッチにより2系統に分かれて並列的に下手側に伝達される状態となる。これにより、変速装置のシフト部材及び被咬合部に掛かるトルクが減少するので、シフト部材をスライド操作して被咬合部から離間させる操作が、重いものにならない。 【0006】前述のように変速装置の上手側の動力が、変速装置及び摩擦クラッチにより2系統に分かれて並列的に下手側に伝達される状態になると、減速比の異なる2系統の二重伝動状態となって、伝動系の破損を招くことが考えられる。この場合に、請求項1の特徴によると、摩擦クラッチが滑りながら動力を伝達する半伝動状態に操作されるので、二重伝動状態による無理が発生しようとしても、これが摩擦クラッチに吸収されることになり、減速比の異なる2系統の二重伝動状態による伝動系の破損と言うような状態は生じない。 【0007】[II]請求項2の特徴によると、請求項1の場合と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。変速手段により変速操作を開始して(変速装置のシフト部材を被咬合部から抜き始めて)、変速手段により変速操作を終了するまで(変速装置のシフト部材を所定の被咬合部に咬合させるまで)の間において、下手側に動力を伝達しない中立状態が変速装置に生じる。これにより台車やプラウを引くような牽引時に、変速操作の途中に前述のような中立状態が変速装置に生じると、走行装置に動力が伝達されずに機体の走行速度が急速に低下するようなことがある。 【0008】請求項2の特徴によると、変速手段による変速操作の開始により、摩擦クラッチが伝動遮断状態から半伝動状態に操作され、変速手段による変速操作の終了により、摩擦クラッチが半伝動状態から伝動遮断状態に操作されるように構成されており、変速手段による変速操作の終了まで(変速装置のシフト部材を所定の被咬合部に咬合させるまで)、摩擦クラッチが半伝動状態に操作されている。これにより、変速操作の途中に中立状態が変速装置に生じて、変速装置の上手側の動力が変速装置を介して下手側に伝達されないと言う状態が生じても、変速装置の上手側の動力が摩擦クラッチにより変速装置を介さずに下手側に伝達されるので、変速操作の途中で走行装置に動力が伝達されず、機体の走行速度が急速に低下すると言うような状態は生じない。 【0009】[III]請求項3の特徴によると、請求項2の場合と同様に前項[I][II]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。前項[II]に記載のように、摩擦クラッチが半伝動状態に操作された状態で変速手段による変速操作が終了すると、変速装置の上手側の動力が摩擦クラッチにより変速装置を介さずに下手側に伝達される状態(変速装置は中立状態で変速装置から下手側に動力は伝達されない)から、変速装置の上手側の動力が変速装置及び摩擦クラッチにより2系統に分かれて並列的に下手側に伝達される状態となる。この状態で請求項3の特徴によると、摩擦クラッチが半伝動状態から伝動遮断状態に操作される際、摩擦クラッチが漸次的に伝動遮断状態に操作されるので、変速装置の上手側の動力が変速装置を介して下手側に伝達される状態に、ショック少なく滑らかに移行する。 【0010】[IV]請求項4の特徴によると、請求項1〜3のうちのいずれか一つの場合と同様に前項[I]〜[III]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。請求項4の特徴によると、変速手段による変速操作の開始により、摩擦クラッチが伝動遮断状態から半伝動状態に操作される際、機体に掛かる走行負荷が大きいと、摩擦クラッチが伝達する動力が大きなものとなる半伝動状態に、摩擦クラッチが操作される。これにより、走行負荷が大きくても、変速装置の上手側の多くの動力が摩擦クラッチにより変速装置を介さずに下手側に伝達されるので、走行負荷が大きくても、変速装置のシフト部材及び被咬合部に掛かるトルクを抑えることができ、シフト部材をスライド操作して被咬合部から離間させる操作が、重いものにならない。 【0011】逆に走行負荷が小さい場合、変速装置の上手側の多くの動力を摩擦クラッチにより変速装置を介さずに下手側に伝達しなくても、変速装置のシフト部材及び被咬合部に掛かるトルクは小さなものになるので、シフト部材をスライド操作して被咬合部から離間させる操作が、重いものにならない。これにより、請求項4の特徴によれば走行負荷が小さいと、摩擦クラッチが伝達する動力が小さなものとなる半伝動状態に摩擦クラッチが操作されて、摩擦クラッチが不必要に大きな動力を伝達しないようにしている。 【0012】 【発明の実施の形態】[1]図1に作業車の一例である農用トラクタの走行伝動系を示している。エンジン1の動力が主クラッチ2及び前後進切換装置3から第1伝動軸4を介して主変速装置5に伝達され、主変速装置5の動力が第2伝動軸7を介して副変速装置8に伝達されるように構成されており、副変速装置8の動力が第3伝動軸9及び後輪デフ装置10を介して、右及び左の後輪50に伝達される。第3伝動軸9から分岐した動力が、前輪伝動軸19及び前輪デフ装置20を介して、右及び左の前輪24に伝達される。 【0013】図1に示すように、前後進切換装置3はシフト部材3aを前後進レバー6によりスライド操作するコンスタントメッシュ型式に構成されており、主クラッチ2を伝動遮断側に操作しなくても、前後進レバー6によって前後進切換装置3を前進位置F及び後進位置Rに操作することができる。 【0014】図1に示すように、主変速装置5は上手側の第1伝動軸4と下手側の第2伝動軸7との間で構成されており、第1伝動軸4に1速ギヤ11、2速ギヤ12、3速ギヤ13及び4速ギヤ14が相対回転自在に外嵌されて、第2伝動軸7に固定された伝動ギヤ15,16,17,18が1〜4速ギヤ11〜14に咬合している。第1伝動軸4において1速及び2速ギヤ11,12の間の部分、3速及び4速ギヤ13,14の間の部分にシフト部材5a,5bが配置されており、主変速装置5がコンスタントメッシュ型式に構成され、4段に変速自在に構成されている。 【0015】図1に示すように、副変速装置8は第2伝動軸7と第3伝動軸9との間で構成されており、第2伝動軸7に低速ギヤ21、中速ギヤ22及び高速ギヤ23が相対回転自在に外嵌されて、第3伝動軸9に固定された伝動ギヤ25,26が中速及び高速ギヤ22,23に咬合しており、低速ギヤ21の動力が伝動軸27を介して減速されて中速ギヤ22に伝達されるように構成されている。第2伝動軸7において低速及び中速ギヤ11,12の間の部分、高速ギヤ23の部分にシフト部材8a,8bが配置されており、副変速装置8がシンクロメッシュ型式に構成され、3段に変速自在に構成されている。このように主及び副変速装置5,8により、12段に変速自在に構成されている。 【0016】図1に示すように第1伝動軸4と第3伝動軸9とが同芯状に配置されており、第1伝動軸4と第3伝動軸9との間に、湿式多板型式の摩擦クラッチ28が設けられている。摩擦クラッチ28はバネ(図示せず)により伝動遮断側に付勢されて、図2に示すように摩擦クラッチ28に作動油を供給及び排出する電磁比例減圧弁型式の制御弁29が備えられており、摩擦クラッチ28に作動油が供給されることによって、摩擦クラッチ28が伝動側(後述する半伝動状態)に操作されるように構成されている。 【0017】[2]図1及び図2に示すように、主変速装置5のシフト部材5a,5bをスライド操作する油圧シリンダ31,32が備えられ、副変速装置8のシフト部材8a,8bをスライド操作する油圧シリンダ33,34が備えられている。 【0018】油圧シリンダ31,32,33は図3(イ)に示すように、大径シリンダ部35と小径シリンダ部36とを備え、大径及び小径シリンダ部35,36の各々に大径ピストン37及び小径ピストン38をスライド自在に内装している。小径ピストン38における大径ピストン37とは反対側の端面に第1ピストンロッド38aを備え、第1ピストンロッド38aを大径ピストン37とは反対側に延出して小径シリンダ部36から突出させている。小径ピストン38における大径ピストン37側の端面に第2ピストンロッド38bを備え、第2ピストンロッド38bを大径シリンダ部35から突出させないで、大径ピストン37の開孔37aにスライド自在に貫通させている。 【0019】図3(イ)及び図2に示すように小径シリンダ部36において、小径ピストン38によって仕切られる第1ピストンロッド38a側の小径シリンダ室36aに対し、作動油を供給及び排出操作する電磁操作弁39が備えられている。大径シリンダ部35において、大径ピストン37によって仕切られる小径ピストン38とは反対側の大径シリンダ室35aに、作動油を供給及び排出操作する電磁操作弁40が備えられている。電磁操作弁39,40は作動油の入力ポート、作動油の出力ポート及び作動油のドレンポートを備えた3ポート式で、油圧シリンダ31,32,33に作動油を供給する供給位置、及び作動油を排出する排出位置の2位置に操作自在に構成されており、バネで供給位置側に付勢されている。 【0020】以上の構造により両方の電磁操作弁39,40を供給位置に操作しておくと、図3(イ)に示すように大径及び小径シリンダ室35a,36aに作動油が供給される。この場合、大径ピストン37の受圧面積の方が小径ピストン38の受圧面積よりも大きい点、並びに小径ピストン38の受圧面積よりも第2ピストンロッド38bの受圧面積の方が小さい点により、大径及び小径ピストン37,38が互いに押し合いながら、大径及び小径ピストン37,38が紙面左方に移動しようとするのであり、大径及び小径シリンダ部35,36の段部に大径ピストン37が当たり、この位置で大径及び小径ピストン37,38が保持される。この図3(イ)に示す状態が図1に示すシフト部材5a,5b,8aの中立状態である。 【0021】次に電磁操作弁40を供給位置に残した状態で、電磁操作弁39を排油位置に操作すると、図3(ロ)に示すように小径シリンダ室36aの作動油が排出されて、大径シリンダ室35aの作動油により第2ピストンロッド38bが紙面左方に押される。この図3(ロ)に示す状態が、図1に示すシフト部材5aが1速ギヤ11に咬合する1速状態、シフト部材5bが3速ギヤ13に咬合する3速状態及びシフト部材8aが中速ギヤ22に咬合する中速状態である。 【0022】次に電磁操作弁39を供給位置に残した状態で、電磁操作弁40を排油位置に操作すると、図3(ハ)に示すように大径シリンダ室35aの作動油が排出されて、小径シリンダ室36aの作動油により大径及び小径ピストン37,38が一体で紙面右方に押される。この図3(ハ)に示す状態が、図1に示すシフト部材5aが2速ギヤ12に咬合する2速状態、シフト部材5bが4速ギヤ14に咬合する4速状態及びシフト部材8aが低速ギヤ21に咬合する低速状態である。 【0023】[3]次に、油圧シリンダ34について説明する。図2に示すように、ピストン41をスライド自在に内装して、ピストン41の一方の端面に備えられたピストンロッド41aを延出し、シリンダから突出させている。ピストン41によって仕切られるピストンロッド41a側の第1室34a、及びピストンロッド41aとは反対側の第2室34bを形成しており、第1室34aに作動油が常時供給されるように構成されている。 【0024】第2室34bに作動油を供給及び排出操作する電磁操作弁42が備えられている。電磁操作弁42は作動油の入力ポート、作動油の出力ポート及び作動油のドレンポートを備えた3ポート式で、第2室34bに作動油を供給する供給位置及び作動油を排出する排出位置の2位置に操作自在に構成されており、バネで供給位置側に付勢されている。 【0025】以上の構造により、電磁操作弁42を排油位置に操作すると、第2室34bの作動油が排出されて、第1室34aに供給される作動油によりピストン41が紙面右方に押される。この状態が、図1に示すシフト部材5bが高速ギヤ23から離間した中立状態である。次に電磁操作弁42を供給位置に操作すると、第2室34bに作動油が供給される(第1室34aにも既に作動油が供給されている)。この場合、ピストン41における第1室34a側の受圧面積の方が第2室34b側の受圧面積よりも小さい点により、ピストン41が図2の紙面左方に移動する。この状態が、図1に示すシフト部材5bが高速ギヤ23に咬合する高速状態である。 【0026】図2に示すように、1速位置〜12速位置に操作自在な変速レバー43が機体の操縦部に備えられ、変速レバー43の操作位置が制御装置30に入力されている。これにより、変速レバー43を1速位置〜12速位置に操作することによって、制御装置30により電磁操作弁39,40,42が操作されて、油圧シリンダ31〜34により、主及び副変速装置5,8が変速操作される(1速〜4速位置は、副変速装置8の低速状態で主変速装置5の1速〜4速状態に対応、5速〜8速位置は、副変速装置8の中速状態で主変速装置5の1速〜4速状態に対応、9速〜12速位置は、副変速装置8の高速状態で主変速装置5の1速〜4速状態に対応)。 【0027】[4]変速レバー43を所望の操作位置に操作すると、前項[2][3]に記載のように制御装置30により電磁操作弁39,40,42が操作され、油圧シリンダ31〜34によりシフト部材5a,5b,8a,8bがスライド操作されて、主及び副変速装置5,8の変速操作が行われるのであり、この変速操作の間に制御装置30により制御弁29が操作されて、摩擦クラッチ29が伝動遮断状態から半伝動状態に操作され、再び伝動遮断状態に操作される。次に、前述のような変速レバー43による変速操作について説明する。 【0028】図4及び図1に示すように、例えば変速レバー43を1速位置に操作している状態(主変速装置5の1速状態及び副変速装置8の低速状態)から、3速位置(主変速装置5の3速状態及び副変速装置8の低速状態)に操作する場合、変速レバー43を1速位置から3速位置に操作すると(時点T1)、制御弁29により摩擦クラッチ28の圧力が急速に昇圧され始めて(時点T1)、油圧シリンダ31によりシフト部材5aが1速ギヤ11に咬合する1速状態から中立状態にスライド操作され始め(時点T2)、摩擦クラッチ28の圧力が圧力P1に達すると同時に、シフト部材5aが中立状態に達する(時点T3)。 【0029】前述のように、シフト部材5aがスライド操作され始める時点T2付近の摩擦クラッチ28の圧力から高圧側において、摩擦クラッチ28が滑りながら第1伝動軸4の動力を第3伝動軸9に伝達する半伝動状態となるのであり、シフト部材5aが1速ギヤ11に咬合する1速状態で、第1伝動軸4の動力が第2伝動軸7及び副変速装置8を介して第3伝動軸9に伝達される状態、第1伝動軸4の動力が摩擦クラッチ28を介して第3伝動軸9に伝達される状態が生じる。 【0030】この場合、第1伝動軸4の伝達トルクTR1、1速ギヤ11での減速比n1、副変速装置8の低速ギヤ21の減速比n2、摩擦クラッチ28の伝達トルクTR2、エンジン1の動力Eとすれば、第3伝動軸9の伝達トルクTR3、シフト部材5aの伝達トルクTR4及び摩擦クラッチ28の吸収エネルギーE1は、以下のような式で求められる。 TR3=n1・n2・TR1−TR2TR4=n1・TR1−n2・TR2E1=(1−1/(n1・n2))・Eこれにより、シフト部材5a及び1速ギヤ11の咬合部分の接触面圧が小さくなって、シフト部材5aが1速ギヤ11から抵抗少なく離間するのであり、第1伝動軸4の動力が摩擦クラッチ28及び第3伝動軸9を介して前輪1及び後輪2に伝達されて、機体の走行速度の急速な低下が抑えられる。さらに、第1伝動軸4の回転数と3速ギヤ13の回転数とが互いに接近する。 【0031】図4に示すように、時点T3から摩擦クラッチ28の圧力が圧力P1から漸次的に昇圧されて、第1伝動軸4の回転数(実線R0)、1速ギヤ11の回転数(一点鎖線R1)、及び3速ギヤ13の回転数(二点鎖線R3)が変化していくのであり、油圧シリンダ32によりシフト部材5bが中立位置Nから3速ギヤ13に咬合する3速状態にスライド操作され始め(時点T4)、第1伝動軸4の回転数と3速ギヤ13の回転数が略一致する時点T5において、シフト部材5bが3速ギヤ13に咬合する3速状態となる。前述のようにシフト部材5bが3速ギヤ13に咬合する3速状態になると(時点T5)、摩擦クラッチ28の圧力がP2から急速に圧力P3(圧力P1よりも低圧)に減圧され、圧力P3から漸次的に減圧されて伝動遮断状態となる(時点T6)。 【0032】[5]次に、例えば変速レバー43を3速位置に操作している状態(主変速装置5の3速状態及び副変速装置8の低速状態)から、5速位置(主変速装置5の1速状態及び副変速装置8の中速状態)に操作する場合について説明する。図5及び図1に示すように、変速レバー43を3速位置から5速位置に操作すると(時点T11)、制御弁29により摩擦クラッチ28の圧力が急速に昇圧され始めて(時点T11)、油圧シリンダ32によりシフト部材5bが3速ギヤ13に咬合する3速状態から中立状態にスライド操作され始め(時点T12)、摩擦クラッチ28の圧力が圧力P11に達すると同時に、シフト部材5bが中立状態に達する(時点T13)。 【0033】前述のように、シフト部材5bがスライド操作され始める時点T12付近の摩擦クラッチ28の圧力から高圧側において、摩擦クラッチ28が滑りながら第1伝動軸4の動力を第3伝動軸9に伝達する半伝動状態となるのであり、シフト部材5bが3速ギヤ13に咬合する3速状態で、前項[4]と同様に、第1伝動軸4の動力が第2伝動軸7及び副変速装置8を介して第3伝動軸9に伝達される状態、第1伝動軸4の動力が摩擦クラッチ28を介して第3伝動軸に伝達される状態が生じる。これにより、シフト部材5b及び3速ギヤ13の咬合部分の接触面圧が小さくなって、シフト部材5bが3速ギヤ13から抵抗少なく離間するのであり、第1伝動軸4の動力が摩擦クラッチ28及び第3伝動軸9を介して前輪1及び後輪2に伝達されて、機体の走行速度の急速な低下が抑えられる。さらに、第1伝動軸4の回転数と1速ギヤ11の回転数とが互いに接近する。 【0034】図5に示すように、時点T13から摩擦クラッチ28の圧力が圧力P1から漸次的に昇圧されるのと同時に、油圧シリンダ33によりシフト部材8aが低速ギヤ21に咬合する低速状態から、中速ギヤ22に咬合する中速状態にスライド操作される(時点T13から時点T14)。 【0035】図5に示すように、第1伝動軸4の回転数(実線R0)、1速ギヤ11の回転数(一点鎖線R1)、及び3速ギヤ13の回転数(二点鎖線R3)が変化していくのであり、油圧シリンダ31によりシフト部材5aが中立状態から1速ギヤ11に咬合する1速状態にスライド操作され始め(時点T15)、第1伝動軸4の回転数と1速ギヤ11の回転数が略一致する時点T16において、シフト部材5aが1速ギヤ11に咬合する1速状態となる。前述のようにシフト部材5aが1速ギヤ11に咬合する1速状態になると(時点T16)、摩擦クラッチ28の圧力がP12から急速に圧力P13(圧力P11よりも低圧)に減圧され、圧力P13から漸次的に減圧されて伝動遮断状態となる(時点T17)。 【0036】[6]図2に示すように、エンジン1のアクセル位置を検出するアクセルセンサー44、及びエンジン1の回転数を検出する回転数センサー45が備えられて、アクセルセンサー44及び回転数センサー45の検出値が制御装置30に入力されており、アクセルセンサー44の検出値に対応する無負荷状態でのエンジン1の回転数に対して、回転数センサー45の検出値がどれだけ低下するかに基づいて、低下が大きいほど機体に掛かる走行負荷が大きなものと判断される。前項[4][5]、図4及び図5に示す状態は、走行負荷が比較的大きな状態であり、図4及び図5に示す摩擦クラッチ28の圧力P1,P2,P11,P12が大きなものに設定されている。 【0037】例えば変速レバー43を3速位置に操作している状態(主変速装置5の3速状態及び副変速装置8の低速状態)から、5速位置(主変速装置5の1速状態及び副変速装置8の中速状態)に操作する際において、走行負荷が小さい場合には図6及び図1に示すように、変速レバー43を3速位置から5速位置に操作すると(時点T11)、制御弁29により摩擦クラッチ28の圧力が、圧力P14(図4及び図5に示す圧力P1,P11よりも低圧)まで漸次的に昇圧される(時点T13)。シフト部材5bがスライド操作され始める時点T12付近の摩擦クラッチ28の圧力において、摩擦クラッチ28が滑りながら第1伝動軸4の動力を第3伝動軸9に小さく伝達する半伝動状態となる。 【0038】次に時点T13から摩擦クラッチ28の圧力が、圧力P14から圧力P15(図4及び図5に示す圧力P2,P12よりも低圧)に漸次的に昇圧されるのであり、時点T16から摩擦クラッチ28の圧力が、圧力P15から漸次的に減圧されて伝動遮断状態となる(時点T17)。 【0039】[発明の実施の第1別形態]図4,5,6に示す状態は、台車を牽引している状態や上り坂を走行する状態のように、機体に走行負荷が掛かっている状態を示しているのであるが、機体が牽引されている状態や下り坂を走行する状態では、エンジン1の動力によってシフト部材5a,5b,8a,8bを中立状態にスライド操作し難くなるのではなく、前輪24及び後輪50からの逆動力によって、シフト部材5a,5b,8a,8bを中立状態にスライド操作し難くなる。 【0040】この場合、図1に示すように後輪50に制動を掛けるサイドブレーキ46において、サイドブレーキ46を制動側に操作する油圧シリンダ(図示せず)を備えて、制御装置30によって操作される制御弁(図示せず)により、油圧シリンダが後述するように自動的に制動側に操作されるように構成する。 【0041】これにより図7及び図1に示すように、例えば変速レバー43を1速位置に操作している状態(主変速装置5の1速状態及び副変速装置8の低速状態)から、3速位置(主変速装置5の3速状態及び副変速装置8の低速状態)に操作する場合、変速レバー43を1速位置から3速位置に操作すると(時点T21)、サイドブレーキ46の制動力が急速に上昇操作され始めて(時点T21)、油圧シリンダ31によりシフト部材5aが1速ギヤ11に咬合する1速状態から中立状態にスライド操作され始め(時点T22)、サイドブレーキ46の制動力が制動力F1に達すると同時に、シフト部材5aが中立状態に達する(時点T23)。このようにシフト部材5aがスライド操作され始める時点T22付近のサイドブレーキ46の制動力から後述する制動力F2において、機体が完全に停止するのではなく、機体の走行を許しながら軽く制動が掛かる状態となる。 【0042】図7に示すように、時点T23からサイドブレーキ46の制動力が制動力F1から漸次的に上昇操作されて、第1伝動軸4の回転数(実線R0)、1速ギヤ11の回転数(一点鎖線R1)、及び3速ギヤ13の回転数(二点鎖線R3)が変化していくのであり、油圧シリンダ32によりシフト部材5bが中立状態から3速ギヤ13に咬合する3速状態にスライド操作され始め(時点T24)、第1伝動軸4の回転数と3速ギヤ13の回転数が略一致する時点T25において、シフト部材5bが3速ギヤ13に咬合する3速状態となる。前述のようにシフト部材5bが3速ギヤ13に咬合する3速状態になると(時点T25)、サイドブレーキ46の制動力が制動力F2から急速に下降操作される(時点T26)。 【0043】[発明の実施の第2別形態]コンスタントメッシュ型式で4段に変速自在に構成される主変速装置5において、図8に示すように構成してもよい。シフト部材5a,5bにおいて、ギヤ歯47、スプライン状の咬合部48及びシフトフォーク(図示せず)が係合する溝状の係合部49を備えて、幅広(図8の紙面左右方向)にシフト部材5a,5bを構成する。図1における1速及び3速ギヤ11,13に雌型のスプライン状の咬合部11a,13aを備え、図1における2速及び4速ギヤ12,14を廃止する。 【0044】これにより、シフト部材5a,5bを図8の紙面左方にスライド操作して、シフト部材5a,5bの咬合部48を、1速ギヤ11(3速ギヤ13)の咬合部11a,13aに咬合させると、1速状態(3速状態)が得られるのであり、シフト部材5a,5bを図8の紙面右方にスライド操作して、シフト部材5a,5bのギヤ歯47を、伝動ギヤ16,18に咬合させると、2速状態(4速状態)が得られる。 【0045】[発明の実施の第3別形態]図1の構成において、主変速装置5をシンクロメッシュ型式に構成したり、副変速装置8をコンスタントメッシュ型式に構成してもよい。副変速装置8を、シフト部材8a,8bをスライド操作するシンクロメッシュ型式やコンスタントメッシュ型式ではなく、3組の油圧クラッチ(図示せず)を並列的に配置し、3組の油圧クラッチのうちの一つを伝動状態に操作することによって、3段に変速できる油圧クラッチ型式に構成してもよい。又、副変速装置8を高低2段に変速できるように構成してもよい。図1の構成において、油圧シリンダ31〜34を廃止し、変速レバー43と主及び副変速装置5,8のシフト部材5a,5b,8a,8bとを、連係機構により機械的に且つ直接的に連係する構造にも、本発明は適用できる。 【0046】 【発明の効果】請求項1の特徴によると、作業車の走行変速構造において、変速装置の上手側の動力を変速装置を介さずに変速装置の下手側に伝達可能な摩擦クラッチを備えて、変速操作時に変速装置の上手側の動力が変速装置及び摩擦クラッチにより2系統に分かれて並列的に下手側に伝達される状態を、現出させるように構成することにより、変速装置のシフト部材をスライド操作して被咬合部から離間させる操作を、重いものにならないようにすることができて、作業車の変速操作性を向上させることができた。請求項1の特徴によると、前述のように変速装置の上手側の動力が変速装置及び摩擦クラッチにより2系統に分かれて並列的に下手側に伝達されると言うような二重伝動状態が現出されても、摩擦クラッチが滑りながら動力を伝達する半伝動状態に操作されるので、二重伝動状態による無理が摩擦クラッチに吸収されることになり、減速比の異なる2系統の二重伝動状態による伝動系の破損と言うような状態が避けられて、耐久性のある構造となる。 【0047】請求項2の特徴によると、請求項1の場合と同様に前述の請求項1の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項2の特徴によると、変速操作の途中に中立状態が変速装置に生じて、変速装置の上手側の動力が変速装置を介して下手側に伝達されないと言う状態が生じても、変速装置の上手側の動力が摩擦クラッチにより変速装置を介さずに下手側に伝達されるので、変速操作の途中で走行装置に動力が伝達されず、機体の走行速度が急速に低下すると言うような状態を避けることができて、作業車の走行性能を向上させることができた。 【0048】請求項3の特徴によると、請求項2の場合と同様に前述の請求項1及び2の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項3の特徴によると、変速操作の終了により摩擦クラッチが半伝動状態から伝動遮断状態に漸次的に操作されるので、変速装置の上手側の動力が変速装置を介して下手側に伝達される状態に、ショック少なく滑らかに移行するようになって、作業車の走行性能を向上させることができた。 【0049】請求項4の特徴によると、請求項1〜3のうちのいずれか一つの場合と同様に請求項1〜3の「発明の効果」を備えており、この「発明の効果」に加えて以下のような「発明の効果」を備えている。請求項4の特徴によると、機体に掛かる走行負荷に応じて、摩擦クラッチが伝動遮断状態から半伝動状態に操作された際の摩擦クラッチが伝達する動力が、自動的に大小に変更されるので、走行負荷の大小に関係なく適切な変速操作が行えて、且つ摩擦クラッチの保護が行えるようになって、作業車の走行性能及び耐久性を向上させることができた。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001052 【氏名又は名称】株式会社クボタ
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| 【出願日】 |
平成11年10月21日(1999.10.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100107308 【弁理士】 【氏名又は名称】北村 修一郎
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| 【公開番号】 |
特開2001−124198(P2001−124198A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月8日(2001.5.8) |
| 【出願番号】 |
特願平11−299317 |
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