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【発明の名称】 自動車の変速制御装置
【発明者】 【氏名】久保 孝行

【氏名】仁木 裕

【氏名】小崎 茂康

【要約】 【課題】パワーオンダウンシフトにおいて、エンジントルクをリダクションしても、該リダクション量が一定であるため、エンジン吹き又はタイアップが生じて、シフトフィーリングが充分でない。

【解決手段】変速が所定量a1進行した時点の入力軸回転加速度dNTSによりエンジントルクTc のリダクション量Tcaが設定される。入力軸回転数Ntの目標値NTAとセンサによる実際値NU ,ND との差ΔNdに基づき、余分なエネルギ又は不足するエネルギを演算し、上記リダクション量に、上記余分又は不足するエネルギに相当するトルクを加減して補正する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンと、該エンジン出力からの入力回転を、複数の摩擦係合要素を断・接することにより伝達経路を切換えて変速し、該変速された回転を車軸に出力する自動変速機と、を備え、前記エンジンから車輪に動力を伝達するパワーオン状態において、前記自動変速機をダウンシフト変速してなる、自動車の変速制御装置において、前記エンジンの出力トルクを制御するエンジン制御手段と、目標値に対して、前記エンジンから前記自動変速機に供給されるトルクの余分量及び不足量を検出・演算するトルク差検出手段と、を備え、該トルク差検出手段に基づき演算されたトルクが余分な場合、エンジン出力トルクの基準値に対して該余分なトルクを減じるように、また前記演算されたトルクが不足する場合、前記基準値に対して該不足するトルクを加えるように、前記エンジン制御手段を制御してなる、自動車の変速制御装置。
【請求項2】 前記トルク差検出手段は、前記変速機の入力軸回転数を検出するセンサを備え、該センサにより検出した実際の入力軸回転数と変速走行状況により定まる目標入力軸回転数との差に基づき、前記トルクの余分量及び不足量を演算してなる、請求項1記載の自動車の変速制御装置。
【請求項3】 前記エンジン出力トルクの基準値は、前記ダウンシフト変速の所定進行時における前記センサに基づく入力軸回転数の加速度により算出されるリダクション量である、請求項2記載の自動車の変速制御装置。
【請求項4】 前記ダウンシフト変速が、前記摩擦係合要素の1個を解放すると共に他の1個を係合し、かつ該解放側の摩擦係合要素用油圧サーボの油圧を、前記センサによる入力軸回転数の変化に基づきフィードバック制御してなる、請求項2又は3記載の自動車の変速装置。
【請求項5】 前記エンジン制御手段は、前記トルク差検出手段に基づくエンジン出力トルクの補正を所定時間継続した後、スイープにより本来のエンジン出力トルクに復帰してなる、請求項1ないし4のいずれか記載の自動車の変速制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジン及び自動変速機を搭載した自動車の変速制御装置に係り、エンジンから車輪方向に動力が伝達されるパワーオン状態において、解放側摩擦係合要素及び係合側摩擦係合要素の掴み換え、いわゆるクラッチツークラッチによりダウンシフトする際に用いて好適であり、詳しくは変速制御におけるエンジン出力トルクの制御に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、パワーオン・ダウンシフト変速は、走行中にトルクが不足し、運転者がアクセルペダルを踏み込むこと、即ちもっとトルクを要求することにより行われる。
【0003】従来、該パワーオン・ダウンシフト変速において、エンジン出力トルクを調整する制御装置が、例えば特公平7−59904号公報にて提案されている。このものは、タービン(変速機入力軸)回転数が、予想収束回転数(変速後回転数)より所定量低く設定した基準回転数に達した時点でこれを検出し、該時点から、燃料噴射量を減少方向に補正することによりエンジン出力トルクを低下させる。そして、この場合の燃料補正量、即ちエンジン出力トルクの低下補正量をタービン回転数の上昇量(変化量)に応じて設定し、該エンジン出力トルクの低下は、上記タービン回転数の予想収束回転数まで一定に維持している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記エンジン出力トルク低下補正量は、所定時点でのタービン回転数上昇量に基づき設定される一定の値であるため、クラッチツークラッチによるダウンシフト変速にあっては、解放側及び係合側摩擦係合要素のタイミング不良がある場合、上記一定のエンジン出力トルク低下補正量では、タイアップ又はエンジン吹き等による出力トルクの不適正な変化を吸収しきれない。具体的には、解放側及び係合側摩擦係合要素のタイアップが生じた場合、又は解放側摩擦係合要素のフィードバック制御不良により同期が変速前ギヤ段側にずれた場合、変速終了時に出力トルクが落ち込むために、トルクの引き込み感を生じ、また係合側摩擦係合要素の油圧サーボがストローク不足等によりエンジン吹きを生じた場合、該エンジン吹き後の余分なエネルギが供給されるため、変速出力時に出力トルクが多めに出力され(即ちピークを生じ)、大きなシフトショックを生じ、いずれにしてもシフトフィーリングを悪くしている。
【0005】そこで、本発明は、自動変速機の出力トルクの変化に対応するように、エンジン出力トルクを補正することにより、上述した課題を解消した自動車の変速制御装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る本発明は、エンジンと、該エンジン出力からの入力回転を、複数の摩擦係合要素を断・接することにより伝達経路を切換えて変速し、該変速された回転を車軸に出力する自動変速機と、を備え、前記エンジンから車輪に動力を伝達するパワーオン状態において、前記自動変速機をダウンシフト変速してなる、自動車の変速制御装置において、前記エンジンの出力トルク(Tc )を制御するエンジン制御手段(1c)と、目標値(NTA)に対して、前記エンジンから前記自動変速機に供給されるトルクの余分量及び不足量を検出・演算するトルク差検出手段(1b)と、を備え、該トルク差検出手段に基づき演算されたトルクが余分な場合、エンジン出力トルクの基準値(TCA)に対して該余分なトルクを減じるように、また前記演算されたトルクが不足する場合、前記基準値に対して該不足するトルクを加えるように、前記エンジン制御手段(1c)を制御してなる、自動車の変速制御装置にある。
【0007】請求項2に係る本発明は(例えば図8、図9参照)、前記トルク差検出手段(1b)は、前記変速機の入力軸回転数(Nt)を検出するセンサ(5)を備え、該センサにより検出した実際の入力軸回転数(NU ,ND )と変速走行状況により定まる目標入力軸回転数(NTA)との差(ΔNd)に基づき、前記トルクの余分量及び不足量を演算してなる(S53)、請求項1記載の自動車の変速制御装置にある。
【0008】請求項3に係る本発明は(例えば図8、図9参照)、前記エンジン出力トルクの基準値は、前記ダウンシフト変速の所定進行時(a1)における前記センサ(5)に基づく入力軸回転数(Nt)の加速度により算出されるリダクション量(TCA)である、請求項2記載の自動車の変速制御装置にある。
【0009】請求項4に係る本発明は(例えば図3ないし図7参照)、前記ダウンシフト変速が、前記摩擦係合要素の1個を解放すると共に他の1個を係合し、かつ該解放側の摩擦係合要素用油圧サーボ(9又は10)の油圧(PA)を、前記センサによる入力軸回転数(Nt)の変化に基づきフィードバック制御(S20)してなる、請求項2又は3記載の自動車の変速装置にある。
【0010】請求項5に係る本発明は(例えば図8、図9参照)、前記エンジン制御手段(1c)は、前記トルク差検出手段(1b)に基づくエンジン出力トルクの補正を所定時間継続した後(S53,S54)、スイープにより本来のエンジン出力トルクに復帰してなる(S55)、請求項1ないし4のいずれか記載の自動車の変速制御装置にある。
【0011】[作用]以上構成に基づき、目標値に対するエンジンからの出力トルクの差、即ちエンジンから自動変速機へ供給されるエネルギの差は、例えば計算に基づく入力軸回転数(NTA)と、センサ5による実際の入力回転数(NU 又はND )の差(ΔNd)に加速度ゲイン及びエンジンイナーシャを乗じて求められる(S53)。パワーオンダウンシフト変速にあって、変速が所定量(a1[%])進行した時点でのエンジン出力トルク基準値、例えば上記所定量進行した時点での入力軸回転数加速度(dNT )に基づき設定されるリダクション量(Tca)に(S51)、上記エネルギの差に基づく補正値が加減されて、エンジン出力トルクが制御される(S53)。
【0012】例えば、エンジン吹きが発生する場合、エンジンからの出力トルクがその分余分であるので、基準値(Tca)から上記余分なエネルギに相当するトルクが減じられるように補正され、またタイアップが発生した場合、エンジンからの出力トルクが不足するので、基準値(Tca)に上記不足エネルギに相当するトルクが加えられるように補正される。
【0013】なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、理解の容易・迅速化を図る便宜的なものであり、これにより特許請求の範囲の構成に何等影響を与えるものではない。
【0014】
【発明の効果】請求項1に係る本発明によると、ダウンシフト変速に際して、目標値より余分なエネルギがエンジンから供給されてエンジン吹きが生じる状況では、該余分エネルギに相当するトルクをエンジン出力トルク基準値から減じるので、エンジン吹きに起因する出力トルクのピークを抑えて、シフトショックを低減することができ、またタイアップ等によりエンジンからのエネルギが不足する状況では、該不足エネルギに相当するトルクをエンジン出力トルク基準値に加えるので、タイアップ等による出力トルクの落ち込みを抑えて、引き込み感(ブレーキ作用感)を減少して、シフトフィーリングを向上することができる。
【0015】請求項2に係る本発明によると、入力軸の目標回転数と実際の回転数の差に基づきエンジン出力トルクの目標値との差を演算するので、遅れないエンジン出力トルクの補正制御を行うことができる。
【0016】請求項3に係る本発明によると、エンジントルク基準値は、入力軸回転数加速度により設定されるリダクション量であるので、予めエンジン吹きが抑えられた状態で、上記エネルギ差に基づく補正が行われるので、素早い応答による高い精度でのエンジントルク制御を行うことができる。
【0017】請求項4に係る本発明によると、クラッチツークラッチのシフトダウン変速にあって、解放側油圧はフィードバック制御を行われるので、通常では、精度の高い摩擦係合要素の掴み換えが行われるが、例えフィードバック制御にミスが生じても、上述したエンジントルク制御により、同期タイミングの不良、エンジン吹き又はタイアップによる出力トルクの変化を減少して、シフトフィーリングの悪化を減少することができる。
【0018】請求項5に係る本発明によると、上記エンジン出力トルクの補正が所定時間繰返して行われるので、出力トルクのエンジン吹き等によるピーク及びタイアップ等による落ち込みを漸減するように制御でき、また本来のエンジン出力トルクへの復帰をスイープにより行い、激変を緩和して、シフトフィーリングの向上を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】本自動変速機は、多数のクラッチ又はブレーキ等の摩擦係合要素を有し、これら摩擦係合要素を適宜断・接することによりプラネタリギヤの伝動経路が選択される自動変速機構(図示せず)を備えており、該自動変速機構の入力軸が、エンジン出力軸にトルクコンバータを介して連結しており、またその出力軸が駆動車輪に連結している。具体的には、本自動変速機は、特開平9−21448号公報に開示されている前進5速、後進1速のものに適用される。
【0020】図1は、電気制御系を示すブロック図であり、1は、マイクロコンピュータ(マイコン)からなる制御部(ECU)で、エンジン回転センサ2、ドライバのアクセルペダル踏み量を検出するアクセルペダル開度センサ3、実際のエンジンにおけるスロットル開度を検出するセンサ4、トランスミッション(自動変速機構)の入力軸回転数(=タービン回転数)を検出するセンサ5、車速(=自動変速機出力軸回転数)センサ6及び油温センサ7からの各信号が入力しており、またエンジンのスロットルを制御する電子スロットルシステム(エンジン操作手段)8及び油圧回路のリニアソレノイドバルブ(調圧手段)SLS及びSLUに出力している。前記制御部1は、前記リニアソレノイドバルブSLS又はSLUに調圧信号を発信する油圧制御手段1a及び前記電子スロットルシステム8にスロットル開度指令を発信するエンジン制御手段1cを備えており、更にエンジン制御手段に、自動変速機(走行系)に入力されるエネルギを検出・演算して、エンジン吹きが生じるようなエンジンから自動変速機に供給されるエネルギが目標値より大きい状況の場合、エンジン出力トルクが、上記演算されたエネルギに相当するトルクを減少する方向に補正し、またタイアップ等によりエンジンから自動変速機に供給されるエネルギが目標値より不足するような状況の場合、エンジン出力トルクが、上記演算したエネルギに相当するトルクを加える方向に補正する信号を出力するトルク差検出手段1bを有している。
【0021】図2は、油圧回路の概略を示す図であり、前記油圧制御手段1aを構成する2個のリニアソレノイドバルブSLS及びSLUを有すると共に、自動変速機構のプラネタリギヤユニットの伝達経路を切換えて、例えば前進4速又は5速、後進1速の変速段を達成する複数の摩擦係合要素(クラッチ及びブレーキ)を断接作動する複数の油圧サーボ9、10を有している。また、前記リニアソレノイドバルブSLS及びSLUの入力ポートa1 ,a2 にはソレノイドモジュレータ圧が供給されており、これらリニアソレノイドバルブの出力ポートb1 ,b2 からの制御油圧がそれぞれプレッシャコントロールバルブ11,12の制御油室11a,12aに供給されている。プレッシャコントロールバルブ11,12は、ライン圧がそれぞれ入力ポート11b,12bに供給されており、前記制御油圧にて調圧された出力ポート11c,12cからの調圧が、それぞれシフトバルブ13,15を介して適宜各油圧サーボ9,10に供給される。
【0022】なお、本油圧回路は、基本概念を示すためのものであって、各油圧サーボ9,10及びシフトバルブ13,15は、象徴的に示すものであり、実際には、自動変速機構に対応して油圧サーボは多数備えられており、これら油圧サーボへの油圧を切換えるシフトバルブも多数備えている。
【0023】ついで、図3に沿って、パワーオン・ダウンシフトについて説明するに、まず図4及び図5に基づき、解放側油圧PAの制御について説明する。なお、具体的には、運転者がアクセルペダルを踏込んでトルクを要求するダウンシフト(キックダウン)であって、4−2変速する状態を示し、従って解放側摩擦係合要素は、C3クラッチであって、その油圧サーボの油圧PAは、(調圧専用)リニアソレノイドバルブSLSにて調圧制御される。
【0024】スロットル開度センサ3及び車速センサ6からの信号に基づき、制御部1はマップによりダウンシフトを判断すると、該変速判断から所定遅れ時間後、計時が開始されて変速制御が開始される(S1)。該開始時点(t=0)にあっては、解放側油圧PAが係合圧となっており、解放側摩擦係合要素が係合した状態にある。そして、入力トルクTtの関数により解放側トルクTA が算出される(S2)。該入力トルクTtは、マップによりスロットル開度とエンジン回転数に基づきエンジントルクを求め、更にトルクコンバータの入出力回転数から速度比を計算し、該速度比によりマップにてトルク比を求め、エンジントルクに上記トルク比を乗じて求められる。更に、該入力トルクにトルク分担率等が関与して上記解放側トルクTA が求められる。
【0025】該解放側トルクTA から解放側の待機係合圧Pwが算出され(S3)、解放側油圧PAが該待機係合圧Pwになるようにリニアソレノイドバルブに制御信号を出力し(S4)、該入力トルク等に基づく解放側油圧の制御が所定時間tw経過するまで続行する(S5)。上記ステップS2からS4までが待機制御となるが、該待機制御時間twは、入力トルクTtにより変更される。
【0026】そして、所定解放側油圧PAS及び上述と同様に解放側トルクTA が算出され(S7,S8)、更に該解放トルクTA に基づき目標油圧PTAが算出される(S9)。更に、余裕率(タイアップ度合)S11,S21により、ドライブフィーリングを考慮して解放側目標油圧PTAが算出される(S10)。なお、上記余裕率は、油温の相違により選択される多数のスロットル開度・車速マップにて求められるものであり、一般にS11>1.0,S21>0.0からなる。
【0027】更に、予め設定された時間tTAにより、前記目標油圧PTAまでの勾配が、[(PAS−PTA)/tTA]により設定され、該勾配によりスイープダウンが行なわれる(S11)。即ち、パワーオン状態にあっては、比較的急な勾配からなるスイープダウンが行なわれ、解放側油圧PAが前記イナーシャ相開始時直前の目標油圧PTAになるまで続く(S12)。ついで、解放側油圧変化δPTAが、関数[δPTA=fδPTA (ωa)]に基づき算出される(S13)。なお、上記ωaは、出力軸回転数に対する入力軸回転数(ギヤ比)Nの回転変化開始時における目標とする目標入力軸回転変化率(目標回転加速度)である。そして、該油圧変化δPTAによる勾配で(第2の)スイープダウンが行なわれ(S14)、該スイープダウンは、パワーオン状態にあっては、変速開始前の入力軸回転数NTSから、所定精度で回転変化量ΔNが検出される変速開始判定回転数まで続行される(S15)。上記ステップS7〜S14が初期変速制御であり、解放側摩擦係合要素はそのトルク容量を減じるが、変速は進行していない。
【0028】ついで、予め設定された比較的低い勾配からなる所定油圧変化δPI による勾配にてスイープダウンする(S16)。該スイープダウンは、パワーオン状態にあって、解放側油圧PAが前記戻しスプリングの荷重圧より大きい場合、即ち解放側油圧サーボのトルク容量が0とならない場合、変速開始(回転変化開始)から変速完了するまでの全回転数変化量のaF[%]、即ち所定変速進行度まで行なわれる(S18)。なお、上記変速進行度は、回転変化開始時の入力軸回転数をNTS、該回転変化開始時から現在までのギヤ比に基づく入力軸回転数の変化量(一定回転による出力軸回転数に対する入力軸回転数の変化量)をΔN、変速前ギヤ比をgi 、変速後ギヤ比をgi+1 とすると、[(ΔN×100)/(NTS/gi )・(gi+1 −gi )]
にて求められる。上記勾配δP1 でのスイープダウンが、イナーシャ相制御となり、ギヤ比に基づく入力軸回転数NT の変化が開始される。
【0029】そして、入力軸回転数NT の変化が安定する所定変速進行度aF[%]、例えば20[%]が経過すると、ダウンシフトフィードバック制御(S20)が行なわれる。該フィードバック制御は、実際の入力軸(タービン)回転数変化率(加速度)と、目標とする入力軸回転数の変化率との差が最小となるようにそれぞれの変速進行段階にて制御される。この際、トルクコンバータの速度比に基づき、上記制御の各段階にて設定されるゲインを補正するようにしてもよい(特願平10−316621号参照)。該フィードバック制御は、変速進行度が上記ダウンシフト完了となるギヤ比の全回転変化回転数近傍のa2[%]、例えば90[%]まで続けられる(S21)。なお、後述する係合側油圧の制御との関係でサーボ起動制御時間tSEの終了まで(S23)、かつ係合側油圧PBが目標油圧PTBより大きくなるまで(S24)は、前記フィードバック制御(S20)は続行される。該ステップS20が、フィードバック制御となる。
【0030】そして、上記a2[%]までの変速が終了すると、比較的急勾配からなる所定油圧変化δPFAが設定され、該勾配にてスイープダウンを行い(S25)、解放側油圧PAが0になることによりダウンシフト時の解放側油圧制御が完了する(S26)。上記ステップS25が完了制御となる。
【0031】ついで、図6及び図7のフローチャート及び図3のタイムチャートに沿って、ダウンシフトにおける係合側油圧PBの制御について説明する。なお、具体的には、上述したように4−2ダウンシフトであり、従って係合側摩擦係合要素は、B5ブレーキであって、その油圧サーボの油圧PBは、(ロックアップ制御用)リニアソレノイドバルブSLUにて調圧制御される。
【0032】まず、制御部1からのダウンシフト指令に基づき計時が開始され(S30)、係合側油圧PBが所定圧PS1になるように所定信号をリニアソレノイドバルブSLUに出力する(S31)。該所定圧PS1は、油圧サーボの油圧室20を満たすために必要な油圧に設定されており、所定時間tSA保持される。該所定時間tSAが経過すると(S32)、係合側油圧PBは、所定勾配[(PS1−PS2)/tSB]でスイープダウンし(S33)、係合側油圧PBが所定低圧PS2になると(S34)、該スイープダウンが停止され、該所定低圧PS2に保持される(S35)。該所定低圧PS2は、ピストンストローク圧以上でかつ入力軸の回転変化を生じさせない圧に設定されており、該所定低圧PS2は、計時tが所定時間tSE経過するまで保持される(S36)。上記ステップS31からS36までがサーボ起動制御となる。
【0033】ついで、係合側トルクTB が解放側油圧PA及び入力トルクTtの関数[TB=fTB(PA,Tt)]により算定され(S37)、更に前記余裕率を勘案して、係合側トルクTB が、[TB =S1D×TB +S2D]にて算出される(S38)。そして、該係合側トルクTB から係合側油圧PBが算出される[PB=fPB(TB )](S39)。上記ステップS37〜S39が係合制御となる。そして、上記ステップS39による係合側入力トルクTB (解放側油圧PA及び入力トルクTtに依存する)に基づく係合側油圧PBによる制御が、ダウンシフトの全変速進行度のa1[%]、例えば70[%]まで続く(S40)。即ち、NTSを変速開始時の入力軸回転数、ΔNを回転変化量、gi を変速前ギヤ比、gi+1 を変速後ギヤ比とすると、[(ΔN×100)/(NTS/gi )・(gi+1 −gi )]がa1[%]になるまで続けられる。
【0034】ステップS40にて、上記全変速進行度のa1[%]を越えると、終期制御に入る。まず、係合側入力トルクTB から係合側目標圧PTBが算出され(S41)、また上記回転変化量a1[%]時点での係合側油圧PBがPLTB として記憶される(S42)。これにより、予め設定されている所定時間tLEにより、所定勾配[(PTB−PLSB )/tLE]が算出され、比較的緩い該勾配にてスイープアップされ(S43)、該スイープアップは、係合側油圧が上記目標油圧PTBに達するまで続けられる(S44)。更に、所定勾配δPLBが設定され、該勾配にてスイープアップする(S46)。該スイープアップは、変速進行度がa2[%]、例えば90[%]まで続行する(S47)。上記ステップS41からS46までが終期制御となる。
【0035】更に、終期制御の終了時間tF を設定し(S48)、比較的急な勾配δPFBを設定して該勾配にてスイープアップし(S49)、該スイープアップは、完了制御時間tFE続けられる(S50)。該勾配δPFBのスイープアップは、パワーオンの場合、ステップS25による解放側油圧δPFAに合せて急勾配にて設定される。上記ステップS48,S49が完了制御となる。
【0036】ついで、図8、図9に沿って、本発明の主要部であるエンジントルク制御について説明する。前述したように、解放側油圧PAのフィードバック制御(S20)により入力回転数NT が上昇し、該入力回転数の制御開始時(NTS)からの変化量ΔNが予め設定された前記所定値a1[%]、例えば70[%](S40参照)に達すると、即ち専ら解放側油圧PAによる変速の進行が終了に近づいて、係合側油圧PBが、係合制御から終期制御に移行する近傍状態になると、エンジンのトルクダウン制御が作動する(S50)。トルクダウンのタイミングを常に一定にすると、変速開始時の回転数が大きい場合、即ち変速中の回転変化量が大きい場合、解放側摩擦係合要素の発生する発熱量も大きくなるため、トルクダウンタイミングが遅れると、摩擦材の耐久性を損ねる虞れがあるが、本エンジントルク制御では、上述したようにトルクダウンの開始時点が、変速制御開始時の入力回転数NTS(ΔN=0)に基づき設定されるので(ΔN≧a1)、高車速から低車速まで解放側摩擦係合要素の耐久性の低下を防止できる。
【0037】そして、上記所定値a1[%]における入力回転数の変化率即ち加速度dN1を算出し、該変化率に基づき、例えば正比例関数等の所定関係によりトルクリダクション量Tcaを算出する(S51)。更に、該時点でのエンジントルクのコントロール量Tc を0に仮想・設定した後(S52)、該コントロール量が制御される。該エンジントルクのコントロール量Tc は、エンジン吹き等により余分に供給されたエネルギ又はタイアップ等による不足するエネルギ(出力トルク)を演算して補正量として、前記入力軸回転数の所定値a1にて設定されたトルクリダクション量Tcaから上記演算された補正量が減ぜられて算出される(S53)。即ち、入力軸回転数Ntの実際の回転数を入力軸回転数センサ5により検出し、該実際回転数(図9に、吹きによる上昇側をNU と表記し、タイアップによる下降側をND と表記する)と、車速センサ6、変速段ギヤ比(4−2速ギヤ比)及びスロットル開度センサ3等による入力トルク等に基づき算出された目標入力軸回転数(ギヤ段に基づく回転変化開始から完了までの直線的な線)NTAとの差ΔNdを演算する。なお、トルククリダクション量に対して上昇側NU との差ΔNd1 がプラス側として作用し、下降側ND との差ΔNd2 がマイナス側として作用する。そして、上記回転差ΔNd[=NTA−NU (又はND )]に、加速度ゲイン及びエンジンイナーシャ量を乗じて、エネルギ(即ち係数により出力トルク)に変換され、該時点でのエンジンから供給される目標エネルギと実際に供給されるエネルギとの差に相当するトルク差が算出され、該値を、前記設定されたトルクリダクション量Tcaから減ぜられてエンジンコントロール量Tc が算出される。
【0038】そして、上記ステップS53によるエンジンからのエネルギ差に基づくトルクリダクション量Tcaの補正は、前記変速進度がa1[%]になった時点からの経過時間tE が予め設定された所定時間t1 を経過するまで、繰返し行われる。該所定時間t1 は、解放側油圧PAのフィードバック制御(前記ステップS20)及び係合側油圧PAの終期制御(前記ステップS46)の終了時、即ち入力軸回転数の変速進行度ΔNが前記a2[%](前記ステップS21,S27、例えば90[%])に達して、ダウンシフト変速が略々達成されて入力軸回転数が低速側(2速)ギヤ段になった時点又は加速による入力軸回転数の上昇を考慮して安定した時点に略々対応するように設定されており、上記エンジンコントロール制御の開始からの時間tE が上記所定時間t1 を経過すると(TE >t1 )、上述したエンジンの供給エネルギに基づく補正制御が停止されると共に、前記解放側油圧PA(及び係合側油圧PAも)は、完了制御(前記ステップS24,S48)が開始される(S54)。
【0039】そして、エンジンコントロールTc は、上記ステップS53にて補正されたリダクション量が予め設定された時間t2 によりスイープアップされ(S55)、エンジン出力変化の激変を回避しつつ、エンジン出力は、運転者のアクセルペダル開度センサ3に基づく通常の値に復帰して(S56)、エンジントルク制御は終了する。
【0040】自動変速機の出力トルクTO は、解放側油圧PAのフィードバック制御により、ダウンシフト(例えば4−2変速)が完了に近づくまでは略々一定の値に保持されるが、入力軸回転数NT が上昇し、上記ダウンシフトによる低速側ギヤ段(例えば2速)への回転数に近づくと、比較的急激に上昇してダウンシフト後のトルク値に収束するまで過度上昇してピークトルクを生じ易い傾向にある。そこで、ダウンシフト終了前の所定変速進行時(ΔN=a1[%])において、エンジンからの出力をその時点での入力軸加速度dN1 により算出したリダクション量Tcaにて減少する。これにより、上記出力トルクによるピークトルクの発生が抑えられている。
【0041】しかしながら、係合側油圧PBの終期制御(S41〜S46)が遅れたり、又は解放側油圧PAのフィードバック制御(S20)のミスにより解放側及び係合側の同期タイミングが遅れる方向にずれたりして、エンジン吹きが生じる場合があるが、このような場合、上記一定値のトルクリダクション量Tcaでは間に合わず、出力(アウトプット)トルクTO は、細い一点鎖線で示すように、大きな吹きを生じて大きなシフトショックを発生する。そこで、本発明にあっては、入力軸の目標回転数NTAと実際の回転数NU との差ΔNd1 に基づき演算される余分なエネルギに相当するトルクが、上記リダクション量Tcaに対して加算され、エンジントルクTc は、一点鎖線で示すように、上記リダクション量Tcaが大きくなるように補正され、エンジン吹きの原因となるエンジンからのエネルギ供給を減少し、これにより出力(アウトプット)トルクTO は、太い一点鎖線で示すように、上昇側ピーク量が低くなる。
【0042】一方、解放側摩擦係合要素のトルク容量が下がり切らない内に係合側摩擦係合要素のトルク容量が増加してタイアップを生じたり、又は上記解放側油圧のフィードバック制御(S20)ミスにより解放側及び係合側の同期タイミングが変速前ギヤ段側(ギヤ比が成立しない側)にずれたりして、エンジンから供給されるエネルギが過度に消費されると、上記一定値のトルクリダクション量Tcaではエネルギの供給不足となり、出力(アウトプット)トルクTO は、細い点線で示すように、過度の落ち込みを生じて、運転者にブレーキがかかるような不快感を与える。そこで、本発明にあっては、入力軸の目標回転数NTAと実際の回転数NDとの差ΔNd2 に基づき演算される不足エネルギに相当するトルクが、上記リダクション量Tcaから減ぜられ、エンジントルクTc は、点線で示すように、リダクション量が小さくなるように補正され、上記不足エネルギを補って、これにより出力(アウトプット)トルクTO は、太い点線で示すように、トルクの落ち込みを減少する。
【0043】なお、解放側及び係合側油圧制御は、上述した実施例に限らず、他の制御でもよいことは勿論である。また、エンジントルク制御にあっては、入力軸加速度に基づくリダクション量を基準値として、これに対して補正したが、該リダクション量を設定せずに、通常の運転者アクセルペダル開度に基づくエンジントルクを基準値として、これに対して補正するようにしてもよい。また、吹き等の余分エネルギ及びタイアップ等による不足エネルギを、入力軸回転数の目標値と実際値との差に基づき演算したが、これに限らず、入力軸加速度の差、出力トルクの目標値と実際値との差等の他のものによって演算してもよい。
【出願人】 【識別番号】000100768
【氏名又は名称】アイシン・エィ・ダブリュ株式会社
【出願日】 平成11年10月25日(1999.10.25)
【代理人】 【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫 (外1名)
【公開番号】 特開2001−124196(P2001−124196A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−303125