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【発明の名称】 プラネタリ変速機構
【発明者】 【氏名】脇坂 直之

【氏名】大瀧 光郎

【要約】 【課題】リングギヤの組立が比較的簡単で、且つブレーキ径を小さくすることが可能な構成のプラネタリ変速機構を得る。

【解決手段】変速機入力シャフト11に結合されたサンギヤ31と、キャリア32と、プーリ駆動軸15に結合されたリングギヤ35と、サンギヤおよびリングギヤを係脱する前進クラッチ50と、キャリアを制動保持可能な後進ブレーキ60とを有してプラネタリ変速機構が構成される。前進クラッチは、プーリ駆動軸上に固設されたクラッチガイド51内にクラッチピストン52、クラッチプレート53およびクラッチディスク54を配設して構成され、クラッチガイドの外周端部51aがリングギヤとスプライン係合されて取り付けられ、リングギヤの右端が第1サークリップ56に当接し、リングギヤの左端がキャリアに当接して軸方向の位置決めがなされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1軸に結合されたサンギヤと、前記サンギヤと噛合するピニオンギヤを回転自在に支持するとともに前記第1軸と同軸上に回転自在に配設されたキャリアと、前記第1軸と同軸上に位置する第2軸に結合されるとともに前記キャリアに回転自在に保持されたピニオンギヤと噛合するリングギヤと、前記サンギヤおよび前記リングギヤを係脱するクラッチ手段と、前記キャリアを制動保持可能なブレーキ手段とを有して構成され、前記クラッチ手段は、前記第2軸上に固設されたクラッチガイド部材内にクラッチピストン、クラッチプレートおよびクラッチディスクを配設して構成され、前記クラッチガイド部材の外周端部が前記リングギヤと軸方向に移動可能に係合され、前記リングギヤの一方の側端が前記クラッチガイド部材に取り付けられたサークリップに当接し、前記リングギヤの他方の側端が前記キャリアに当接して軸方向の位置決めがなされることを特徴とするプラネタリ変速機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用変速機における前後進切換機構等として用いられるプラネタリ式の変速機構に関する。
【0002】
【従来の技術】プラネタリギヤは、サンギヤ、キャリアおよびリングギヤを基本構成要素とする差動歯車装置の一つであり、例えば、サンギヤとリングギヤとを係脱するクラッチと、キャリアを固定保持するブレーキを設けることにより、サンギヤに対するリングギヤの回転を正逆回転させる制御を行うことができ、変速機の前後進切換機構等に用いることが知られている。このようなプラネタリギヤを前後進切換機構として用いた変速機の一例として、特開平10−184820号公報に開示されたものがある。この機構においては、リングギヤ支持部材を入力軸上にボールベアリングを介して回転自在に支持し、さらに、リバースブレーキにより固定保持可能に構成されている。
【0003】さらに、プラネタリギヤを前後進切換機構として用いた変速機の異なる例として、日産自動車(株)新型車解説書(P11−2)NISSANプリメーラ・プリメーラカミノP11型系車(追補版II)、平成9年9月発行、のC−11頁に記載されたものがある。この前後進切換機構は、入力軸に連結されたリングギヤと、出力軸に連結されたサンギヤと、サンギヤおよびリングギヤと噛合するピニオンを回転自在に保持するキャリアとから構成される。そして、入力軸上に結合配設されたクラッチガイド部材の先端にリングギヤがスプライン結合して配設されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の前後進切換機構においては、リングギヤをクラッチガイド部材に独立して取り付けているため、例えば、図3に示すように、リングギヤ91をクラッチガイド部材92にスプライン結合した状態でリングギヤ91を両側から挟むようにして一対のサークリップ93,94を配設してリングギヤ91の軸方向位置決めを行うように構成されている。このとき、クラッチガイド部材内にはクラッチピストン、クラッチプレート、クラッチディスク等を配設して軸方向の位置決めを行うためのサークリップ93は必ず必要であり、NISSANプリメーラ・プリメーラカミノP11型系車の場合には、サークリップ93とは別にもう一つのサークリップを用いている。このため、従来の前後進切換機構は、全体構成が複雑化しやすく、また、リングギヤの組立部品および工数が多くなるという問題があった。
【0005】さらに、キャリアを制動保持するためのブレーキは、クラッチガイド部材の外周に設けられるため、ブレーキ径はクラッチガイド部材の外周より大きくせざるを得ず、ブレーキ径が大きくなるという問題がある。ここでブレーキを係合作動させない状態、すなわち、ブレーキを解放した状態においては、ブレーキプレートとブレーキディスクの相対回転により引きずり抵抗が生ずるが、上述の前後進切換機構構成のようにブレーキ径が大きいと引きずりトルクが大きくなり、燃費が低下するという問題がある。
【0006】本発明はこのような問題に鑑みたもので、リングギヤの組立が比較的簡単で、且つブレーキ径を小さくすることが可能な構成のプラネタリ変速機構を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような目的達成のため、本発明においては、第1軸(実施形態における変速機入力シャフト11)に結合されたサンギヤと、サンギヤと噛合するピニオンギヤを回転自在に支持するとともに第1軸と同軸上に回転自在に配設されたキャリアと、第1軸と同軸上に位置する第2軸(実施形態におけるプーリ駆動軸15)に結合されるとともにキャリアに回転自在に保持されたピニオンギヤと噛合するリングギヤと、サンギヤおよびリングギヤを係脱するクラッチ手段(実施形態における前進クラッチ50)と、キャリアを制動保持可能なブレーキ手段(実施形態における後進ブレーキ60)とを有してプラネタリ変速機構が構成される。そして、クラッチ手段は、第2軸上に固設されたクラッチガイド部材(実施形態におけるクラッチガイド51)内にクラッチピストン、クラッチプレートおよびクラッチディスクを配設して構成され、クラッチガイド部材の外周端部がリングギヤと軸方向に移動可能に係合(例えば、スプライン係合)されて取り付けられる。このとき、リングギヤの一方の側端がクラッチプレートおよびクラッチディスクをクラッチガイド部材内に保持するためのサークリップ(実施形態における第1サークリップ56)に当接し、リングギヤの他方の側端がキャリアに当接して軸方向の位置決めがなされる。
【0008】このような構成のプラネタリ変速機構の場合には、第2軸上に固設されたクラッチガイド部材内にクラッチピストン、クラッチプレートおよびクラッチディスクを挿入配設した上でサークリップにより保持してクラッチ手段を組み立て、次に、クラッチガイド部材の外周端部にスプライン係合等により軸方向に移動可能に係合させてリングギヤを取り付ける組み立て作業が行われる。このとき、リングギヤの一方の側端を上記サークリップに当接させ、さらに、リングギヤの他方の側端に当接させてキャリアを組み付けるだけで、リングギヤを所定位置に位置決めして取り付けることができるので、組み立てが非常に簡単となる。
【0009】なお、上記プラネタリ変速機構において、リングギヤの他方の側端とキャリアとの当接部にワッシャを挿入して両者が小さな抵抗でスムーズに相対回転できるようにするのが好ましい。また、リングギヤとクラッチガイド部材とのスプライン径に対して、キャリアと当接する側の外径を小さくするようなリングギヤ形状とするのが好ましい。これにより、リングギヤにおけるキャリアと当接する側の外周径を小さくでき、この外周部にブレーキを配設してブレーキ径を小さくすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下本発明の好ましい実施の形態について図面を参照して説明する。図2は本発明に係るプラネタリ変速機構を前後進切換装置として用いたベルト式無段変速機TMを示す。このベルト式無段変速機TMは変速機ハウジング2内に前後進切換装置3、ベルト式無段変速装置4、発進装置(スタートクラッチ)5、減速ギヤ列6、ディファレンシャル機構7、チェーン式動力伝達装置を介して入力軸11により駆動される油圧ポンプ9等を備えて構成され、この変速機ハウジングの右端面はエンジンと接合される。エンジンのクランクシャフトKsはダンパー機構1を介して変速機入力シャフト11に繋がる。
【0011】このため、変速機TMにおいて、エンジンの駆動動力は変速機入力シャフト11に伝達され、前後進切換装置3により回転方向制御がなされた後、ベルト式無段変速装置4により無段階の変速制御が行われて変速機カウンタシャフト12に伝達される。さらに、変速機カウンタシャフト12から発進装置5により動力伝達制御がなされた後、減速ギヤ列6を介してディファレンシャル機構7から左右のアクスルシャフト8a,8bを介して左右の車輪(図示せず)に伝達される。
【0012】この変速機TMを構成する前後進切換装置3の構成を図1に拡大して詳細に示しており、この装置3はサンギヤ31、キャリア32およびリングギヤ35からなるシングルピニオンタイプのプラネタリギヤ列を有して構成される。図に示すように、変速機入力シャフト11は無段変速装置4のプーリ駆動シャフト15の内部を貫通して配設され、プーリ駆動シャフト15はボールベアリング15aにより変速機ハウジング2に対して回転自在に支持され、変速機入力シャフト11はローラーベアリング11aによりプーリ駆動シャフト15に対して回転自在に支持される。
【0013】この変速機入力シャフト11の先端部にスプライン結合されてサンギヤ31が取り付けられている。また、キャリア32は、変速機入力シャフト11の先端部にボールベアリング11bにより回転自在に支持されている。このキャリア32には複数のピニオンシャフト33が固設され、各ピニオンシャフト33の上に回転自在に支持されたピニオンギヤ34がサンギヤ31と噛合している。また、リングギヤ35もピニオンギヤ34と噛合する。なお、キャリア32およびリングギヤ35はサンギヤ31および変速機入力軸と同一回転軸上で回転する。
【0014】この前後進切換装置3は、前進クラッチ50と後進ブレーキ60とを備え、前進クラッチ50によりサンギヤ31とクラッチガイド51との係脱制御が行われ、後進ブレーキ60によりキャリア32の制動保持制御が行われる。
【0015】前進クラッチ50は、プーリ駆動軸15に結合されて取り付けられたクラッチガイド51内に、クラッチピストン52、クラッチプレート53、クラッチディスク54、エンドプレート55を挿入するとともに、第1サークリップ56により保持して構成される。このとき、クラッチプレート53およびクラッチディスク54は交互に複数枚重ねて配設される。クラッチプレート53の外周部がクラッチガイド51の外周端部51aとスプライン結合されており、クラッチプレート53は軸方向に移動可能でクラッチガイド51と一体回転する。また、クラッチディスク54の内周部がサンギヤ31と一体に繋がるクラッチスプライン部31aとスプライン係合されており、クラッチディスク54は軸方向に移動可能でサンギヤ31と一体回転する。
【0016】クラッチピストン52はクラッチガイド51内に供給されるクラッチ圧を受けて図における左方向に押圧され、クラッチプレート53およびクラッチディスク54をエンドプレート55に押しつける。このため、前進クラッチ50を作動させるためクラッチ圧を供給すればクラッチプレート53とクラッチディスク54とが摩擦により一体回転してクラッチが係合状態となり、サンギヤ31とクラッチガイド51とが一体に回転する。
【0017】一方、後進ブレーキ60は、変速機ハウジング2に形成された空間内に、ブレーキピストン62、ブレーキプレート63、ブレーキディスク64、エンドプレート65を挿入するとともに、第2サークリップ66により保持して構成される。なお、ブレーキプレート63およびブレーキディスク64は交互に複数枚重ねて配設される。ブレーキプレート63の外周部が変速機ハウジング2に形成されたスプライン部2aとスプライン結合されており、ブレーキプレート63は軸方向に移動可能で回転は固定保持されている。また、ブレーキディスク64の内周部がキャリア32と一体に繋がるブレーキスプライン部32aとスプライン係合されており、軸方向に移動可能でキャリア32と一体回転する状態となっている。
【0018】ここで、リングギヤ35は図1における右側外周部にスプライン部35aを有し、このスプライン部35aが前進クラッチ50のクラッチガイド51の外周端部51aにスプライン係合してリングギヤ35が組み付けらている。このとき、リングギヤ35の右端側面が前進クラッチ50の第1サークリップ56と当接して右方向の位置決めがなされる。さらに、このようにクラッチガイド51とスプライン係合されて組み付けられたリングギヤ35を左から覆うようしてキャリア32が組み付けられ、リングギヤ35の左端側面がスラストワッシャ38を介してキャリア32の側面に当接して左方向の位置決めがなされる。すなわち、リングギヤ35はクラッチガイド51に取り付けられた第1サークリップ56とキャリア32とに挟持されて左右方向の位置決めがなされる。
【0019】以上の構成から分かるように、前後進切換装置3の組み立てにおいては、クラッチガイド51内にクラッチピストン52、クラッチプレート53およびクラッチディスク54を挿入配設した上で第1サークリップ56により保持して前進クラッチ50組み立て、次に、クラッチガイド51の外周端部51aにスプライン係合させてリングギヤ35を取り付ける。このとき、リングギヤ35の右端側面を第1サークリップ56に当接させ、さらに、リングギヤ35を左から覆うようにしてキャリア32を組み付けるだけで、リングギヤ35を所定位置に位置決めして取り付けることができるので、組み立てが非常に簡単である。
【0020】なお、リングギヤ35の左端側面とキャリア32との当接部にスラストワッシャ38を配設しており、リングギヤ35とキャリア32とが小さな抵抗でスムーズに相対回転できるようになっている。
【0021】また、リングギヤ35の右側に形成されたスプライン部35aの外径に対して、右側の部分の外径、すなわち、キャリア32と当接する側の外径を小さくしている。これにより、リングギヤ32の左側部の外周径が小さくなり、図示のように、キャリア32と一体に繋がるブレーキスプライン部32aをこのように径が小さくなったリングギヤ外周部上に被さるようにして配設することが可能であり、この結果、ブレーキスプライン部32aをより小径化して、後進ブレーキ60の外径を小さくすることができる。この結果、ブレーキプレート63およびブレーキディスク64を小径化して、ブレーキ解放時の引きずり抵抗による引きずりトルクを小さくすることができる。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、クラッチガイド部材の外周端部がリングギヤとスプライン係合されて取り付けられ、リングギヤの一方の側端がクラッチガイド部材内にクラッチプレートおよびクラッチディスクを保持するためのサークリップに当接して位置決めされ、リングギヤの他方の側端がキャリアに当接して位置決めされるように構成されている。このため、第2軸上に固設されたクラッチガイド部材内にクラッチピストン、クラッチプレートおよびクラッチディスクを挿入配設した上でサークリップにより保持してクラッチ手段を組み立て、次に、クラッチガイド部材の外周端部にスプライン係合させてリングギヤを取り付けてリングギヤを取り付けるときに、リングギヤの一方の側端を上記サークリップに当接させ、さらに、リングギヤの他方の側端に当接させてキャリアを組み付けるだけで、リングギヤを所定位置に位置決めして取り付けることができ、生産性において優れている。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年10月22日(1999.10.22)
【代理人】 【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
【公開番号】 特開2001−124191(P2001−124191A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−300943