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【発明の名称】 歯付プーリ
【発明者】 【氏名】橋本 康弘

【要約】 【課題】自動車エンジン等の回転数がアップダウンする歯付ベルト伝動装置に用いられる歯付プーリであって、歯付ベルトと歯付プーリの噛合による加振周波数を1/2に低下させることによって、歯付ベルトのスパン部の共振点を高速回転側にシフトし、発音を実質的に解消する歯付プーリを提供する。

【解決手段】歯付ベルト伝動装置1において、歯付プーリ2の歯溝幅が、一方は歯付ベルト3と噛合う噛合歯溝部2aであり、もう一方は他方より広い歯溝幅を有する拡張歯溝部2bからなり、この噛合歯溝部2aと拡張歯溝部2bをプーリ外周に交互に配してなる歯付プーリ2で構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 歯付ベルト伝動装置に用いられる歯付プーリにおいて、歯溝部の一方が噛合歯溝部であり、もう一方が他方より広い歯溝幅を有する拡張歯溝部からなり、該噛合歯溝部と拡張歯溝部がプーリ外周に交互に配されたことを特徴とする歯付プーリ。
【請求項2】 プーリの外周に形成される歯溝部の個数が、偶数である請求項1記載の歯付プーリ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯付ベルト伝動装置に用いられる歯付プーリに係り、詳しくは、歯付ベルトに共振を惹起する噛合周波数を、ローシフトする歯付プーリに関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば、図5で示す自動車エンジンに使用されるカムシャフト駆動用の歯付ベルト伝動装置1’において、クランクプーリに使用される歯付プーリ2’には、エンジン特有の加減速運転に付随する回転数のアップダウンがあり、このアップダウンに同期して歯付ベルト3はその周速度を変化させる。
【0003】一方、歯付ベルト3は、図5に示したように歯付プーリ2’とオイルポンププーリ6の2個のプーリに巻き掛けられて、スパン長さ(L)のスパン部を形成し、このスパン部において外力により弦振動を発生する。
【0004】この弦振動の振動数が、スパン長さ(L)と弦張力、および弦質量で特性付けられる系固有の振動数に一致すると共振状態となり、発音等の問題を惹起する。このときの固有振動数(F)Hzは、次式で算出される。
【0005】式(1)、F=n/(2×L)×(T/M)1/2、n=1,2,3〜ここで、nは、振動モードを表し、Lは、スパン長さ(m)、Tは、ベルト張力(Newton)、Mは、歯付ベルト3の質量(kg/m)を示す。
【0006】また、歯付プーリ2’と歯付ベルト3は、互いの歯部と歯部を噛合わせて動力を伝達する噛合伝動であることから、歯付プーリ2’の回転数(N)rpmに歯付プーリ2’の歯数(Z)を乗じた噛合衝撃回数に見合う加振周波数(N×Z/60)Hzで、歯付ベルト3を加振することになる。
【0007】この加振周波数は回転数の変化と共に変化し、この加振周波数が歯付ベルト3のスパン部の固有振動数に一致するようになると、歯付ベルト3はスパン部で激しく共振する。
【0008】歯付ベルト3が共振状態に入ると、歯付ベルト3自体による直接的な発音は勿論、歯付ベルト3の振動を間接的な加振源として、周辺部材に新たな共振現象を引き起こし、結果として想定外の騒音問題をもたらすことがあった。
【0009】これに対し、従来の方法は、この歯付ベルト3と歯付プーリ2’の噛合衝撃に起因する加振周波数を、歯付ベルト3の固有振動数との関係で論じたことはなく、専ら、現実的な方法として、スパン長さ又はベルト張力を再調整する、あるいは、ベルトの質量を再調整すると言った方法が採られてきた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明者は、この歯付ベルトと歯付プーリの噛合衝撃による加振周波数に注目し、この歯付プーリを従来の概念とは異なる新規な構成とすることにより、加振周波数を容易に変更できる歯付プーリを開発した。
【0011】すなわち、歯付ベルトのスパン部での共振音は、より高周波側で耳障りな発音として認識されることから、この共振を引き起こす加振周波数をより低周波側にシフトすることによってこの発音問題を実質的に解決する。
【0012】
【課題を解決するための手段】すなわち、請求項1の発明は、歯付ベルト伝動装置に用いられる歯付プーリにおいて、歯溝部の一方を噛合歯溝部とし、もう一方の歯溝部を噛合歯溝部より広い歯溝幅を有する拡張歯溝部とし、該噛合歯溝部と拡張歯溝部をプーリ外周に交互に配することによって、噛合に起因する加振周波数を1/2に低下させる歯付プーリで構成する。
【0013】請求項2の発明は、請求項1記載の歯付プーリの歯溝部個数を偶数とした歯付プーリで構成する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る歯付プーリと歯付ベルトの噛合を示す概略図であり、図2は、図(a)が従来例の歯付プーリを示し、図(b)が従来例の歯付プーリと本発明の歯付プーリの差異を示し、図(c)が本発明のプーリを示す図面である。
【0015】図3は、図(a)が従来例の歯付プーリを使用した時の騒音のトラッキング分析を示すデータ図であり、図(b)が本発明の歯付プーリを使用した時の騒音のトラッキング分析を示すデータ図である。
【0016】又、図4は、図(a)が歯付ベルトを示す長手方向断面図であり、図(b)はA−A断面矢視図である。図5は歯付ベルト伝動装置を示す概略図であり、図6は従来例に係る歯付プーリと歯付ベルトの噛合を示す概略図である。
【0017】始めに、本発明に係る歯付ベルト伝動装置に使用される歯付ベルトの構成を、図4を用いて説明する。図4の図(a)および図(b)において、歯付ベルト3は抗張体となる心線3bと、噛合伝動に与かる歯部3cと、歯部3cの背面に位置する背部3aで構成される。
【0018】次に、歯付ベルト3と噛合う本発明に係る歯付プーリ、および従来例に係る歯付プーリの構成の差異を、図2を用いて詳細に説明する。
【0019】図2の図(a)において、従来の歯付プーリ2’は、例として歯数24または歯溝部の個数24を有し、歯溝部2c’の歯溝幅は歯溝部個数24の全てが、噛合歯溝幅Wstdとなる噛合歯溝部2a’で構成されている。
【0020】しかし、本発明に係る歯付プーリ2は、図2の図(c)で示したように、例として歯数24または歯溝部の個数24を有する歯付プーリ2であり、この歯付プーリ2の歯溝部2cは、一方の歯溝部2cは噛合歯溝幅Wstdを有する噛合歯溝部2aであり、もう一方の歯溝部2cは他方より広い拡張歯溝幅Welgを有する拡張歯溝部2bであり、該噛合歯溝部2aと拡張歯溝部2bが交互にプーリ外周に配されている。
【0021】又、図2の図(b)において、矢視部Sは、図(a)で示した噛合歯溝幅Wstdのみを有する歯付プーリ2’の噛合歯溝部2a’と、その両側を均等に拡幅した拡張歯溝幅Welgを有する拡張歯溝部2b’との差異を模式的に示したものであり、具体的には歯付プーリ2’(図(a)で示す。)の噛合歯溝部2a’を1歯おきにその歯溝幅を拡張することによって、本発明に係る歯付プーリ2(図(b)で示す。)を構成する。
【0022】尚、噛合歯溝幅Wstdは、歯付ベルト3と噛合う歯溝幅であるのに対し、拡張歯溝幅Welgは、噛合入り口、出口の両方において歯付ベルト3と噛合うことのない歯溝幅である。
【0023】次に、本発明の歯付プーリ2を用いることによって、噛合衝撃による加振周波数を低周波側にシフトする方法を具体的に説明する。図6において従来の歯付プーリ2’は、回転軸からの駆動トルクを受けて、矢印方向反時計回りに回転する。この回転に伴ない歯付ベルト3は、噛合伝動により、同じく反時計回りに回転する。
【0024】ここで、歯付プーリ2’の歯溝部2c’は、全て歯付ベルト3と好適に噛合う噛合歯溝幅Wstdを有する噛合歯溝部2a’で構成されているから、歯付プーリ2’は、全ての歯溝部2c’で歯付ベルト3の歯部3cと噛合う。
【0025】すなわち、従来の歯付プーリ2’を使用した場合には、歯付プーリ2’の歯数全てにおいて噛合衝撃を発生させるから、このときの加振周波数は、前述したように、(N×Z/60)Hzとなる。
【0026】一方、図1において、本発明に係る歯付プーリ2は、同じく反時計回りに回転し、同じく歯付ベルト3を反時計回りに回転させる。歯付プーリ2は、1歯おきにその歯溝幅が拡張された拡張歯溝幅Welgを有する拡張歯溝部2bとなることから、その噛合の様子は以下の通りとなる。
【0027】すなわち、噛合歯溝幅Wstdを有する噛合歯溝部2aは、全て歯付ベルト3の歯部3cと噛合うが、残り1/2の拡張歯溝幅Welgを有する拡張歯溝部2bは、歯付ベルト3の歯部3cと噛合うことはない。
【0028】結果、本発明に係る歯付プーリ2を使用した場合には、歯付プーリ2は1歯おきに間引きされた1/2の噛合歯溝部2aによってのみ噛合衝撃を発生させるから、このときの加振周波数は、(N×(Z×1/2)/60)Hzとなり、従来の歯付プーリ2’の加振周波数を1/2に低減することができる。
【0029】以上のことから、噛合による加振周波数を1/2とすることが可能になり、従来、例えば、エンジン回転数が1250rpmのときに、この加振周波数がスパン部の歯付ベルト3の固有振動数に一致し、これによって共振していた歯付ベルト伝動装置1’にあっては、本発明に係る歯付プーリ2を用いることによって、この共振を発生させるエンジン回転数を2500rpmまでシフトすることが可能になる。
【0030】これによって、共振点と一致する加振周波数、すなわちエンジン回転数を高速回転側にシフトすることが可能になる。又、この時にはエンジンの回転数は2500rpmの高速回転となるため、エンジン音自体が大きくなり、噛合衝撃による共振音は無視できる程に小さいものとなる。
【0031】
【実施例】以下、実施例について詳細に説明する。試験用エンジンには直列4気筒SOHCエンジンを用い、カムシャフト駆動用歯付ベルト3には、147MY22の三ツ星ベルト製MY歯形の歯付ベルト3を用いた。
【0032】また、図5に示したように、従来例の歯付プーリ2’には歯数24歯のMY歯形のクランクプーリを用い、同じくカムプーリ5、オイルポンププーリ6には、夫々歯数48歯、26歯のMY歯形の歯付プーリを用い、歯付ベルト3の背面にはテンションプーリ4を配した。
【0033】同様に、本発明に係る歯付プーリ2には、歯数24歯のMY歯形クランクプーリの歯溝部2cを1歯おきに拡張加工したものを用い、噛合歯溝部2aと拡張歯溝部2bが交互に現われるようにした。このときの拡張代は左右両方向に、各0.25mm、トータル0.5mmであった。
【0034】上記の実機エンジンに、図示しないスロットル制御機、および騒音計とトラッキングアナライザーとを用いて、歯付ベルト3の実スパン張力が240Newtonとなるように設定し、所定のトラッキング分析を実施した。
【0035】このときの固有振動数は、振動モード、n=2、ベルト張力、240Newton、スパン長さ、0.096m、歯付ベルト3の質量、0.102kg/m、とおいて、約505Hz(=2/(2×0.096)×(240/0.102)1/2と算出される。
【0036】試験結果は、図3(a)の通り、従来の歯付プーリ2’を用いた場合には、共振点のエンジン回転数は、約1250rpmとなり、この時の噛合衝撃による加振周波数は、約500(=1250×24/60)であった。
【0037】又、本発明に係る歯付プーリ2を用いた場合には、図3(b)の通り、共振点のエンジン回転数は、約2500rpmとなり、この時の噛合衝撃による加振周波数は、約250(=1250×12/60)であった。
【0038】尚、本発明の実施例には、カムシャフト駆動用クランクプーリを用いたが、本発明に係る歯付プーリ2は、これに限られることはなく、歯付プーリ全般に適用することができる。とりわけ、アイドラー歯付プーリあるいは軽負荷の歯付プーリであって、共振点を高速側にシフトする必要がある歯付プーリには、耐久性を損なうことなく共振点をシフトする優れた効果がある。
【0039】
【発明の効果】請求項1の発明は、これによって、自動車エンジン等の回転数アップダウンに起因する歯付ベルトの噛合による共振点を、高速回転側にシフトすることができることから、実質的にこの歯付ベルトの噛合共振による発音問題を無くすことができる。
【0040】請求項2の発明は、偶数個の歯溝部を有する歯付プーリの使用によって、噛合による加振周波数を正確に1/2とすることができるため、その取扱および効果が明瞭となる利点がある。
【出願人】 【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
【出願日】 平成11年10月29日(1999.10.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−124185(P2001−124185A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−307857