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【発明の名称】 シザーズギヤ装置
【発明者】 【氏名】▲たか▼橋 直樹

【要約】 【課題】メインギヤ12に隣接して同一の歯数およびモジュールを有するサブギヤ13を相対回転可能に支持するとともに、これらメインギヤ12とサブギヤ13との間に回転方向への付勢力を付与するスプリング17を介装したシザーズギヤ機構において、サブギヤ13の面ブレに原因する偏摩耗や作動不良を防止する。

【解決手段】シザーズギヤの回転中心を点O、スプリング17からサブギヤ13に作用する力の作用中心を点Aとするとき、ギヤ回転方向に測った角度AOPが略90度となる点Pまたはその近傍にて、サブギヤ13とメインギヤ12との接触面に潤滑油を供給する潤滑油供給通路82,83を設け、サブギヤ13とメインギヤ12間で最も接触圧の高くなる部分の潤滑性を高める。
【特許請求の範囲】
【請求項1】回転軸に取り付けられるメインギヤに隣接して、このメインギヤと同一の歯数およびモジュールを有するサブギヤをメインギヤに対して相対回転可能に支持するとともに、これらメインギヤとサブギヤとの間に回転方向への付勢力を付与する弾性体を介装したシザーズギヤ機構において、シザーズギヤの回転中心を点O、弾性体からサブギヤに作用する力の作用中心を点Aとするとき、ギヤ回転方向に測った角度AOPが略90度となる点Pまたはその近傍にて、サブギヤとメインギヤとの接触面に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を設けたシザーズギヤ装置。
【請求項2】回転軸に取り付けられるメインギヤに隣接して、このメインギヤと同一の歯数およびモジュールを有するサブギヤをメインギヤに対して相対回転可能に支持するとともに、これらメインギヤとサブギヤとの間に回転方向への付勢力を付与する弾性体を介装したシザーズギヤ機構において、シザーズギヤの回転軸上にシザーズギヤ回転方向を左ネジ方向とする向きに座標軸を設定し、弾性体からサブギヤに作用する力の作用中心点Aの上記座標軸上での座標をa、サブギヤを回転可能に支持する軸からサブギヤに対して作用する力の作用中心点Bの上記座標軸上での座標をb、シザーズギヤの相手側ギヤから歯面での噛み合いを通じてサブギヤに入力される力の作用中心点Cの上記座標軸上での座標をc、シザーズギヤ回転中心Oから点Aまでの距離をrs、回転中心Oから作用中心点Cまでの距離をrg、サブギヤの圧力角をαとするとき、(-a+b)(rg/rs)cosα≧b-cなる関係を満たす場合において、シザーズギヤの回転方向に測った角度AOP(rad)が、【数1】

という条件を満たす点Pまたはその近傍にて、サブギヤとメインギヤとの接触面に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を設けたシザーズギヤ装置。
【請求項3】シザーズギヤ機構は、メインギヤまたはサブギヤの対向端面に回転軸と同軸的に円周溝を設け、この円周溝に臨むようにメインギヤとサブギヤの各々に係止部を突設し、これら係止部を作用点として回転方向への付勢力を付与する弾性体を該円周溝に収装した構成を有する請求項1または請求項2に記載のシザーズギヤ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンのカムシャフトや燃料噴射ポンプの駆動など、トルク変動や回転変動を伴う回転伝達部分に用いられるシザーズギヤ装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば自動車用エンジンの燃料噴射ポンプあるいはカムシャフトなどのトルク変動または回転変動を生じる装置の駆動に適した歯車機構としてシザーズギヤ装置というものが知られている。これは、駆動軸に設けたメインギヤに隣接して同一の歯数およびモジュールを有するサブギヤを相対回転可能に設け、これらメインギヤとサブギヤを弾性体で回転方向に付勢した構成を有している。このようなシザーズギヤ装置を用いると、弾性的に相対回転可能なメインギヤとサブギヤの各歯面間に相手側歯車の歯を挟み込む作用によりバックラッシュが解消されることから、トルク変動を生じるカムシャフト等を円滑かつ静粛に駆動することができる。(シザーズギヤ装置の公知文献としては、例えば特開平5-18456号公報、特開平6-288462号公報を参照。)
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このようなシザーズギヤ機構には、メインギヤとサブギヤとを互いに回転方向に付勢するように弾性体を設けた構成により、サブギヤが回転軸中心に対して傾斜する態様の変位、いわゆる面ブレを起こし、これに伴いメインギヤとの接触部分に異常摩耗を生じたり相手側ギヤとのかみ合い不良を生じたりする問題がある。
【0004】バックラッシュによる歯車騒音はトルク変動・回転変動が大きいほど顕著であるので、トルク変動・回転変動が大きい用途ほどシザーズギヤの弾性体による振り反力を大きい値に設定する必要がある。しかしながら、上述の異常摩耗等の問題は弾性体の張力を増大させるほど著しくなるので、本来その有効性がより期待される用途でのシザーズギヤの適用が困難なものとなっている。
【0005】本発明はこのような従来の問題点を解消することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明では、回転軸に取り付けられるメインギヤに隣接して、このメインギヤと同一の歯数およびモジュールを有するサブギヤをメインギヤに対して相対回転可能に支持するとともに、これらメインギヤとサブギヤとの間に回転方向への付勢力を付与する弾性体を介装したシザーズギヤ機構において、シザーズギヤの回転中心を点O、弾性体からサブギヤに作用する力の作用中心を点Aとするとき、ギヤ回転方向に測った角度AOPが略90度となる点Pまたはその近傍にて、サブギヤとメインギヤとの接触面に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を設けた(図1参照)。
【0007】第2の発明では、回転軸に取り付けられるメインギヤに隣接して、このメインギヤと同一の歯数およびモジュールを有するサブギヤをメインギヤに対して相対回転可能に支持するとともに、これらメインギヤとサブギヤとの間に回転方向への付勢力を付与する弾性体を介装したシザーズギヤ機構において、シザーズギヤの回転軸上にシザーズギヤ回転方向を左ネジ方向とする向きに座標軸を設定し、弾性体からサブギヤに作用する力の作用中心点Aの上記座標軸上での座標をa、サブギヤを回転可能に支持する軸からサブギヤに対して作用する力の作用中心点Bの上記座標軸上での座標をb、シザーズギヤの相手側ギヤから歯面での噛み合いを通じてサブギヤに入力される力の作用中心点Cの上記座標軸上での座標をc、シザーズギヤ回転中心Oから点Aまでの距離をrs、回転中心Oから作用中心点Cまでの距離をrg、サブギヤの圧力角をαとするとき、(-a+b)(rg/rs)cosα≧b-cなる関係を満たす場合において、シザーズギヤの回転方向に測った角度AOP(rad)が、【0008】
【数1】

という条件を満たす点Pまたはその近傍にて、サブギヤとメインギヤとの接触面に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を設けた(図3、図4参照)。
【0009】上記各発明のシザーズギヤ機構としては、メインギヤまたはサブギヤの対向端面に回転軸と同軸的に円周溝を設け、この円周溝に臨むようにメインギヤとサブギヤの各々に係止部を突設し、これら係止部を作用点として回転方向への付勢力を付与する弾性体を該円周溝に収装した構成のものを適用することができる。
【0010】
【作用・効果】上記本発明の作用および効果を説明するにあたり、まず従来のシザーズギヤ機構においてサブギヤが面ブレ作用を起こす理由について詳述する。図5および図6に、シザーズギヤ装置の一般的な構造例を示す。図において、回転軸11にメインギヤ12が嵌合固定されており、その一端面側に隣接するように、同一の歯数およびモジュールを有するサブギヤ13が回転可能に保持されている。メインギヤ12には、サブギヤ13との対向端面に回転軸11と同軸的に円周溝16が形成されており、その内部に弾性体としてC形の振りバネ17が収装してある。捩りバネ17は、一端が円周溝16に臨むようにサブギヤ13に圧入されたピン状の係止部14に、他端が同じくメインギヤ12に圧入された係止部15にそれぞれ当接しており、これら係止部14,15を作用点としてメインギヤ12とサブギヤ13との間に回転方向の付勢力を及ぼしている。
【0011】ここで、サブギヤ13に作用する力を図7により説明する。図7はサブギヤ13に固定した視点(サブギヤ13とともに回転する視点)で観察した図であり、この場合かみ合いの相手側ギヤ18がサブギヤの周囲を反時計廻りに回転する。サブギヤ13に圧入されたピン14にはスプリング17の復元力Fsが作用する一方で、相手側ギヤとのかみ合い点には、サブギヤ13が相手側ギヤ18の歯を挟む力の反力Fgが作用する。サブギヤ13の回転によりかみ合いの位置は図中反時計方向に回転するから、歯面に作用する力Fgは、Fg1,Fg2,Fg3…と、その作用点と方向が回転する。また、サブギヤ13は軸部11aに保持されているのでサブギヤ13から軸部11aに対してFsとFgの合力が作用し、その反力Nがサブギヤ13に対して作用する。反力Nの作用点は、サブギヤ13と軸部11aとの嵌合部になる。
【0012】サブギヤ13に作用する力を上方から見た(xy平面において観察した)図を図8に示す。一般的に、シザーズギヤの構造上、スプリングからサブギヤに作用する力の作用点と、相手側ギヤから歯面を通じてサブギヤに入力される力の作用点と、サブギヤを支持する軸部からサブギヤに作用する力の作用点は同一平面上にはない。特にトルク伝達に寄与しないサブギヤ13は歯幅が小さく設定される関係から、そのかみ合い中心点とスプリング17の作用点とは自ずと軸方向に離隔する。したがって、スプリング反力Fs、歯面のかみ合い力Fg、支持軸反力Nは、図8において図中上下方向の位置が異なる作用点に作用することになる。
【0013】図8において、Fs,Fg,Nの作用点がy軸に平行な一直線上にはないために、サブギヤ13にはz軸廻りのモーメントTzが作用することになる。モーメントTzはサブギヤ13を面ブレ方向に回転させようとする。上述したように、力Fgはサブギヤ13の回転につれてその向きを変えるから、図8においては左右にその大きさと向きを変える交番荷重になる。また、支持点反力NはFgとFsの合力によって発生するものであるから、Nもサブギヤ13の回転によってその大きさと向きが変化する。
【0014】ここで、Fs,Fg,Nのy方向成分をそれぞれFsy,Fgy,Nyとし、スプリング17からサブギヤ13に入力される力Fsの作用中心のx座標をa、軸部11aからサブギヤ13に対して入力される力Nの作用中心のx座標をb、相手側ギヤ18から歯面のかみ合いによってサブギヤ13に入力される力Fgの作用中心のx座標をcとすると、モーメントTzは、z=aFsy+bNy+cFgy … (1)
となる。
【0015】Fsの大きさを|Fs|,Fgの大きさを|Fg|、相手側ギヤ18とのかみ合い点とZ軸マイナス方向のなす角度をCA(図7上で反時計方向を正とする。)、ギヤの圧力角をαとすると、sy=-|Fs| … (2)
gy=-|Fg|cos(CA-α) … (3)
y=-Fsy-Fgy=|Fs|+|Fg|cos(CA-α) … (4)
となる。
【0016】式(2)〜(4)を式(1)に代入して整理すると、z=(-a+b)|Fs|+(b-c)|Fg|cos(CA-α) … (5)
となる。
【0017】上記の説明では、図8を用いてxy平面内の力の作用に注目して説明したが、図9に示すように、xz平面内の力の作用を考えると、サブギヤにはy軸廻りのモーメントTyも作用する。ここで、図9において反時計方向を正とすると、モーメントTyはTy=-bNz-cFgz … (6)
で表される。ただし、Nzは支持軸反力Nのz方向成分であり、Fgzは相手側ギヤから歯面を通じてサブギヤに入力される力Fgのz方向成分であり、それぞれ以下のように表される。
【0018】Fgz=-|Fg|sin(CA-α) … (7)
z=-Fgz=|Fg|sin(CA-α) … (8)
式(7)〜(8)を式(6)に代入して整理すると、Ty=(c-b)|Fg|sin(CA-α) … (9)
となる。
【0019】また、スプリング17からサブギヤ13に入力される力Fsの作用中心Aとサブギヤ13の回転中心Oとの距離をrs、相手側ギヤ18から歯面のかみ合いによってサブギヤ13に入力される力Fgの作用中心Cとサブギヤ13の回転中心Oとの距離をrgとすれば、|Fs|と|Fg|の間には、|Fs|rs=|Fg|cos(α)rg … (10)
なる関係がある。
【0020】したがって、実際にサブギヤ13を面ブレ方向に回転させようとするトルクは、上述のZ軸廻りのモーメントTzとy軸廻りのモーメントTyの合力Tになる。
【0021】ここで、歯車の諸元からモーメントTz,Tyの時間変化を計算すると、図10に示すようになる。ただし、モーメントの向きは図8および図9中で反時計方向を正とする。モーメントTz(符号51)とモーメントTy(符号52)の時間変化はほぼ正弦波状をなす三角関数に近似した関数になり、その周期はシザーズギヤの回転周期と一致する。
【0022】モーメントTzとTyとの合力であるモーメントTの方向と大きさの変化をyz平面状にプロットしたものを図11に示す。モーメントTは、図11上で原点61から伸びたベクトルで表現される。ベクトルの向きに対して右ネジ方向にモーメントTが作用し、その大きさがベクトルの長さで表される。モーメントTの大きさと方向はシザーズギヤの回転に応じて62,63…と変化するが、ベクトルの先端は円64上を動くことになる。
【0023】サブギヤ13にモーメントTが作用することにより、サブギヤは図11上におけるベクトルを回転軸として、ベクトルの右ネジ方向に微少回転する。この結果、サブギヤ13と相手側ギヤ18のかみ合いが悪化するという問題が生じる。さらに、サブギヤ13がベクトルを軸に右ネジ方向に微少回転することで、サブギヤ13とメインギヤ12とは、両ギヤが互いに接する円環状の面19全体で接触するのではなく、面19上の一部分19aで局所的に接触することになる。この接触点19aの角度上の位置は、図11上で各ベクトルをほぼ90度時計方向に回転させた位置になる。接触は点接触に近い状態であるので面圧が高くなり、またサブギヤ13とメインギヤ12は回転方向に微少変位で擦り合っているので、接触部近傍においてフレッティング等の異常摩耗現象が発生するおそれがある。
(第1の発明による効果)したがって、第1の発明のように、シザーズギヤの回転中心を点O、弾性体からサブギヤに作用する力の作用中心を点Aとするとき、ギヤ回転方向に測った角度AOPが略90度となる点Pまたはその近傍にて、サブギヤとメインギヤとの接触面に潤滑油を供給する潤滑油供給通路を設けた構成とすることにより、サブギヤに面ブレ方向に働くモーメントによってサブギヤが面ブレ方向に微小回転し、サブギヤとメインギヤが点19aにて点接触した際に、その接触力が最大になる点に対して潤滑油を供給することが可能になり、点接触によるシザーズギヤの不具合を効果的に予防することが可能になる。よって、シザーズギヤのスプリング反力をより大きくすることが可能になり、従来よりもトルク変動・回転変動の大きい用途にシザーズギヤを適用することが可能になる。
(第2の発明による効果)ところで、上述の接触点19aの方向と、接触点19aにおける接触力の大きさをyz平面にプロットしたものを図12に示す。図12において、原点71から伸びたベクトルの向きが原点から接触点19aへの方向を示し、ベクトルの長さが接触点19aでサブギヤ13とメインギヤ12との間に働く力の大きさを示す。サブギヤ13に作用するモーメントは図11に示されるベクトルの右ネジ方向に作用するから、接触点19aの位置は図11に示されるモーメントを表すベクトルを時計方向に略90度回転させた方向になり、接触点19aで伝達される力は図11に示されるベクトルの長さに比例するから、図12は図11を時計方向に略90度回転させたものと相似形になる。接触点19aの位置および接触力の大きさは、シザーズギヤの回転に応じて変化するが、図12上ではベクトルが72,73…と向きと大きさを変化することで表現される。接触による荷重が最大になる接触点19aの位置は、図11上でy軸正の方向になる。また、(-a+b)(rg/rs)cosα≧b-c … (11)
なる条件を満たす場合には、接触点19aの取りうる角度上の範囲は、原点71から円74に対してプロットされた接線75,76で囲まれる範囲77内になる。
【0024】この範囲77は、第2の発明における角度AOPの領域に相当する。したがって、この第2の発明によっても、上記第1の発明と同様の効果が得られる。さらにこの発明は、第1の発明に比較して点接触の起こりうる範囲内により広く潤滑油を供給するので、面ブレ方向のモーメントが最大になる場合以外にも点接触による不具合を予防することができ、その一方で潤滑油通路を形成しておくべき範囲が限定されるので、メインギヤ12とサブギヤ13との接する面の周方向全体に潤滑油を供給する必要がなくなるという特長がある。
【0025】
【発明の実施の形態】次に本発明の実施形態につき図面に基づいて説明する。図1および図2は、本発明の第1の実施形態であり、構成上は上記第1の発明に対応する。メインギヤ12およびサブギヤ13とで構成されるシザーズギヤは図1において時計周りに回転するものとする。基本的な構成は図5と同様であるが、シザーズギヤを支持する回転軸11の内部に中空部81が存在している点と、回転軸11の外周部と中空部81を連通するように潤滑油通路82と、メインギヤ12の内部に潤滑油通路83が形成されている点が異なる。
【0026】潤滑油通路82および83は、図1における水平線L上に形成されており、スプリング17からサブギヤ13に作用する力の作用点であるピン14とシザーズギヤ中心を結ぶ直線と潤滑油通路82,83のなす角度は、ピン14の位置を基準にシザーズギヤ回転方向に略90度となっている。軸11内部の中空部81には図示しないオイルポンプからの潤滑油が導入され、潤滑油通路82および83を通じて、サブギヤ13とメインギヤ12との接触面に潤滑油が供給される。
【0027】既述したように、サブギヤ12にはスプリング17からの反力と、サブギヤを回転自由に支持する軸部からサブギヤ12に作用する支持点反力と、相手側ギヤ18からかみ合いによって伝達される力とが作用する。これら3つの力の作用する位置が、サブギヤ13の厚さ方向(側面図において左右方向)において異なるために、サブギヤには面ブレ方向にモーメントが作用し、そのモーメントによってサブギヤが面ブレ方向に微小回転変位し、サブギヤ13とメインギヤ12は点接触する。点接触の位置はシザーズギヤの回転に応じて変化するが、面ぶれモーメントが最大になる時の接触点の位置は図1中で符号19bで示される部分になる。本実施形態では潤滑油通路82および83によってこの接触部(19b)付近に潤滑油が積極的に供給されるので、点接触による異常摩耗や、シザーズギヤの作動不良などの不具合を効果的に予防することができる。
【0028】図3および図4は、本発明の第2の実施形態であり、上記第2の発明に対応する。メインギヤ12およびサブギヤ13とで構成されるシザーズギヤが図3において時計方向に回転するものとする。基本的な構成は第1の実施形態と同様であるが、回転軸11の外周部と中空部81を連通する潤滑油通路の構成が異なる。すなわち、この場合中空部81から接触部(19c)に到る潤滑油通路が回転軸11、メインギヤ12のサブギヤ支持部分、サブギヤ13を通して、91a〜93aと91b〜93bの2系統となっている。図3においてこれら第1の潤滑油通路91a〜93aと第2の潤滑油通路91b〜93bが水平線Lとなす角度は、それぞれ±sin-1{(b-c)rs/(-a+b)rgcosα}
となっている。軸11内部の中空部81には潤滑油が圧送されており、潤滑油通路91a〜93aまたは91b〜93bを通じて、サブギヤ13とメインギヤ12との接触面に潤滑油が供給される。従来技術の説明に示したように、サブギヤ12にはスプリング17からの反力と、サブギヤを回転自由に支持する軸からサブギヤ12に作用する支持点反力と、相手側ギヤ18からかみ合いによって伝達される力とが作用する。これら3つの力の作用する位置が、サブギヤ13の厚さ方向(側面図において左右方向)において異なるために、サブギヤには面ブレ方向にモーメントが作用し、そのモーメントによってサブギヤが面ブレ方向に微小回転変位し、サブギヤ13とメインギヤ12は点接触する。点接触の位置はシザーズギヤの回転に応じて変化するが、その接触点の範囲は接触部(19c)付近に限定される。
【0029】本実施形態では2系統の潤滑油通路91a〜93a、91b〜93bによって接触部(19c)付近に潤滑油が積極的に供給されているので、点接触による異常摩耗や、サブギヤ13とメインギヤ12との固着などの不具合を効果的に予防することができる。第1実施形態と比較して、点接触の起こりうる範囲内に広く潤滑油を供給するので、面ブレ方向のモーメントが最大になる場合以外にも点接触による不具合を予防することができ、その一方で潤滑油通路を形成しておくべき範囲が限定されるので、メインギヤ12とサブギヤ13との接する面の周方向全体に潤滑油を供給する必要がなくなる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月22日(1999.10.22)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2001−124184(P2001−124184A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−301333