| 【発明の名称】 |
樹脂製歯車 |
| 【発明者】 |
【氏名】沢井 昭治
【氏名】田原 伸一
|
| 【要約】 |
【課題】リング状補強繊維基材を用い、そのリング状成形体で歯部を構成した樹脂製歯車において、リング状補強繊維基材のつなぎ目が極力目立たないようにして強度を均一にする。
【解決手段】帯状のフェルト1を重ね巻きして筒状にし、さらにその筒状体2を軸方向に蛇腹状に折り畳んだリング状の補強繊維基材3を用いる。帯状のフェルト1は、厚さ方向を向いた補強繊維が平面方向を向いた補強繊維同士間を結合した構成を有している。前記重ね巻きに先立ち、フェルトの巻き始め端縁と巻き終わり端縁には引っ掻き処理を施し、補強繊維を毛羽立たせておく。このような補強繊維基材3に樹脂を含浸したリング状成形体で歯車の歯部を構成する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】樹脂を含浸した補強繊維基材のリング状成形体により歯部を構成した樹脂製歯車において、前記補強繊維基材は、帯状の不織布を重ね巻きして筒状にし、さらにその筒状体を軸方向に蛇腹状に折り畳んだ構成を有し、前記筒状に重ね巻きした不織布の巻き始め端縁と巻き終わり端縁は不織布を構成する補強繊維を毛羽立たせたことを特徴とする樹脂製歯車。 【請求項2】樹脂を含浸した補強繊維基材のリング状成形体により歯部を構成した樹脂製歯車において、前記補強繊維基材は、帯状の不織布を重ね巻きして筒状にし、さらにその筒状体を軸方向に蛇腹状に折り畳んだ構成を有し、前記筒状に重ね巻きした不織布の巻き始め端縁と巻き終わり端縁はジグザグに形成したことを特徴とする樹脂製歯車。 【請求項3】ジグザグの端縁から補強繊維を毛羽立たせたことを特徴とする請求項2記載の樹脂製歯車。 【請求項4】帯状の不織布が、その厚さ方向を向いた補強繊維で平面方向を向いた補強繊維同士を結合した構成を有するフェルトであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂製歯車。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動車部品等として適した樹脂製歯車に関する。 【0002】 【従来の技術】上記樹脂製歯車は、歯の噛み合い時の騒音発生を抑えるために、金属製歯車と噛み合う相手歯車として用いられ、耐摩耗性に優れ、高い強度が要求される。従来、樹脂製歯車として、樹脂を含浸した補強繊維基材のリング状成形体に歯を加工したものが提案されている。例えば、次のような技術である。 (1)補強繊維をフェノール樹脂粉末と共に水中に分散して抄造したシート状繊維基材を重ね巻きし、中心には空間を残したリング状の補強繊維基材とする。このリング状の補強繊維基材を厚さ方向に加熱加圧成形してリング状成形体とし、このリング状成形体の周囲に切削加工により歯を形成する(特開平10−286888号公報)。 (2)補強繊維を束ねた糸を織って又は編んで筒状体を構成し、この筒状体を端部から軸方向に巻き上げてリング状の補強繊維基材とする。そして、リング状の補強繊維基材に樹脂を含浸して、厚さ方向に加熱加圧成形又は加圧成形してリング状成形体とし、このリング状成形体の周囲に切削加工により歯を形成する(特開平8−156124号公報)。 【0003】これらの技術においては、リング状の補強繊維基材の周方向のつなぎ目が目立たないか、つなぎ目が全くないので、特定の箇所で強度が低下するという問題が一応回避されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記(1)の技術では、補強繊維基材の周方向のつなぎ目が目立たないといっても、不織布の巻き始めと巻き終わりの端縁に軸方向のつなぎ目が線状に現れる。従って、このつなぎ目箇所での強度低下は多少であっても避けられない。 【0005】上記(2)の技術は、つなぎ目がないという点では申し分ない。しかし、補強繊維を束ねた糸を織ったり編んだりするため織目や編目ができ、(1)の技術に比べて補強繊維の粗密が大きくなる。また、補強繊維を束ねた糸の内部まで樹脂が浸透しにくい。補強繊維を束ねた糸を織ったり編んだりした基材を使用しているため、歯車の強度は十分に大きいわけであるが、さらに、補強繊維に粗密がなく樹脂が補強繊維間に十分に浸透したものであることが望まれる。また、補強繊維として芳香族ポリアミド繊維など高強度の繊維を採用した場合には、その繊維を収束した糸が歯の切削加工時に切断されずに切削面に残りやすい。 【0006】本発明が解決しようとする課題は、リング状補強繊維基材のつなぎ目を極力目立たないようにして強度を均一にし、また、補強繊維の粗密を作らず補強繊維間に樹脂が十分に浸透した樹製脂歯車とし、長寿命の樹脂製歯車とすることである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明に係る樹脂製歯車は、樹脂を含浸した補強繊維基材のリング状成形体により歯部を構成したものであって、上記課題を解決するために次のような構成を有する。まず、前記補強繊維基材は、帯状の不織布を重ね巻きして筒状にし、さらにその筒状体を軸方向に蛇腹状に折り畳んだ構成を有する。そして、前記筒状に重ね巻きした不織布の巻き始め端縁と巻き終わり端縁不織布を構成する補強繊維を毛羽立たせたことを特徴とする。 【0008】上記筒状体を軸方向に蛇腹状に折り畳んだ構成の補強繊維基材を成形し、そのリング状成形体で歯車の歯部を構成する場合、他の箇所との強度の差ができやすいのは巻き始め端縁と巻き終わり端縁である。そこで、上記のように補強繊維を毛羽立たせることにより、巻き始め端縁と巻き終わり端縁が線状にはっきりと現れないようにすることができる。また、端縁から毛羽立たせた補強繊維は重ね巻きした不織布の表面に絡み付きやすくなる。これらの作用により、巻き始め端縁と巻き終わり端縁箇所に他の箇所との強度の差ができにくくなる。 【0009】もう一つの発明では、前記筒状に重ね巻きした不織布の巻き始め端縁と巻き終わり端縁はジグザグに形成したことを特徴とする。この場合にも、巻き始め端縁と巻き終わり端縁が線状にはっきりと現れなくなり、強度の差ができにくくなる。さらに、ジグザグの端縁から補強繊維を毛羽立たせると、さらに端縁が目立たなくなる。 【0010】 【発明の実施の形態】不織布を構成する補強繊維には、綿や麻等の天然繊維、ポリエステル、フッ素樹脂、パラ系芳香族ポリアミド、メタ系芳香族ポリアミド等の有機繊維、ガラスやステンレス等の無機繊維を適宜採用することができる。これらの繊維は、歯車の特性を勘案して、単独で採用してもよいし複数種類を組合せて採用してもよい。これら補強繊維を集積して不織布を構成するが、補強繊維の集積には、水中で抄造する湿式と気中で散布して集積する乾式のいずれの手段も採用できる。乾式の方が廃液処理の工程を必要としないので都合がよい。不織布は、単に補強繊維を集積してシート状にしただけのものでもよいが、これは補強繊維同士の絡み合いが少なく引張り強度が小さい。そこで、厚さ方向に配向させた補強繊維で面方向に配向した補強繊維同士を結合して引張り強度を大きくするとよい。このような不織布は通常フェルトと呼ばれ好ましいものである。フェルトは、補強繊維の集積体にニードリングを施すことにより製造できる。 【0011】補強繊維の集積体に施すニードリングは、採用する補強繊維の種類に応じて植針密度を適宜設定する。切断を起こしやすいガラス繊維や金属繊維に対しては植針密度を小さくしなければならないが、切断を起こしにくい芳香族ポリアミド繊維等に対しては植針密度を高くすることができる。植針密度の大小で、フェルトの厚さ方向を向く補強繊維の量を変えることができ、フェルトの密度と引張り強度を適宜調整する。 【0012】適度に引張り強度を付与した帯状のフェルトを重ね巻きして筒状にし、さらにその筒状体を軸方向に蛇腹状に折り畳んだリング状の補強繊維基材を形成する。重ね巻きに際して、フェルトの巻き終わり端縁、必要に応じて巻き始め端縁を引っ掻くようにして或いは梳くようにして、補強繊維を端縁から毛羽立たせる。帯状のフェルトを重ね巻きした上記筒状体は、重ね巻きしたフェルト層間が一体になっていない。しかし、かえってこのことが、筒状体を軸方向に圧縮して蛇腹状にきれいに折り畳む上で好都合となっている。蛇腹状に折り畳む際にフェルト層間に滑りが生じて、きれいに蛇腹状に折り畳め、折り畳み後はフェルト層間を一体化したのと同じ状態にすることができる。帯状のフェルトを構成している補強繊維同士は強固に結合されているので、蛇腹状に折り畳むに際して補強繊維の配向が乱れることはない。また、筒状体を蛇腹状にきれいに折り畳むことができれば折り畳んだ後の補強繊維の配向は乱れない。 【0013】リング状成形体の成形は、上記補強繊維基材に適宜の樹脂を含浸して行なう。例えば、補強繊維基材にフェノール樹脂を予め含浸乾燥しておき、これを成形金型に投入し中心には金属製ブッシュを配置して加熱加圧成形をする。別の方法では、補強繊維基材を成形金型に投入し中心には金属製ブッシュを配置して成形金型を閉じ、液状樹脂(架橋ポリアミノアミド、エポキシ樹脂、ポリイミドなど)を注入して加熱成形する。さらに別の方法では、フェルトを製造するときに樹脂微粒子を混入しておく。、すなわち、湿式法による製造では水中で補強繊維を抄造する段階で、乾式法による製造では気中で補強繊維を散布・集積する段階で、フェノール樹脂等の微粒子を混入する。このような樹脂微粒子含有フェルトを用いて形成したリング状の補強繊維基材は、成形金型に投入してそのまま加熱加圧成形することができる。 【0014】リング状の補強繊維基材一つで一つの歯車を成形してもよいし、リング状の補強繊維基材を複数個重ねて一体に成形し、歯幅の大きい歯車の製造に対処することもできる。 【0015】 【実施例】実施例1パラ系アラミド繊維原綿(繊維径5〜20μm,繊維長50mm)とメタ系アラミド繊維原綿(繊維径5〜20μm,繊維長50mm)を重量比で50/50の割合で気中に散布して集積し、これにニードリングを施して、幅2000mm,厚さ3mm,単位重量150g/m2のフェルト1を準備した。図3に示すように、フェルト1は厚さ方向を向いた補強繊維11が平面方向を向いた補強繊維12同士を結合した構成を有している。このフェルト1を100mmの幅に裁断し次に説明するように重ね巻きするわけであるが、重ね巻きに先立ち、フェルトの巻き始め端縁と巻き終わり端縁には引っ掻き処理を施し、補強繊維を毛羽立たせる。針を植設したブラシ30でフェルト1の端縁に引っ掻き処理を施し、補強繊維を毛羽立たせる様子を示している。図1(a)に示すように、巻き始め端縁と巻き終わり端縁に毛羽立たせ処理をしたフェルト1を所定の軸に4回重ね巻きし、外径90mm,内径60mm,高さ100mmの筒状体2とする。そして、図1(b)に示すように、筒状体2を予備成形型内で軸方向に圧縮し、蛇腹状に折り畳んで外径90mm,内径60mm,厚さ20mmのリング状の補強繊維基材3とする。次に、図2に示すように、2個積み重ねたリング状の補強繊維基材3を、その中心に配置した金属製のブッシュ4とともに200℃の成形金型5に投入し、型締めしてから架橋ポリアミノアミドを注入して加熱成形した。歯車の歯は、補強繊維基材3で成形されたリング状成形体の周囲に機械切削により形成し、樹脂製歯車とした。その特性を表1に示す。 【0016】実施例2上記実施例1において、フェルトを重ね巻きしてリング状の補強繊維基材3を構成するに先立ち、フェルト1の巻き始め端縁と巻き終わり端縁を毛羽立たせる代わりにジグザグに裁断処理した。その他は実施例1と同様にして樹脂製歯車を製造した。その特性を表1に示す。図5(a)は、フェルト1の巻き始め端縁と巻き終わり端縁をジグザグに形成してから重ね巻きする様子を示している。図5(b)は、重ね巻きした筒状体2を示しており、両端縁は、筒状体2の軸方向に対して斜めになっている。 【0017】実施例3上記実施例2において、ジグザグ裁断処理したフェルトの巻き始め端縁と巻き終わり端縁にさらに引っ掻き処理を施し、補強繊維を毛羽立たせた。その他は実施例2と同様にして樹脂製歯車を製造した。その特性を表1に示す。 【0018】比較例1上記実施例1において、フェルトの巻き始め端縁と巻き終わり端縁に引っ掻き処理もジグザグ裁断処理も施さず、その他は実施例1と同様にして樹脂製歯車を製造した。その特性を表1に示す。 【0019】実施例4パラ系アラミド繊維チョップ(繊維径5〜20μm,繊維長3mm)及びメタ系アラミド繊維チョップ(繊維径5〜20μm,繊維長3mm)を、重量比で50/50の割合で水に分散し、これを連続抄造して幅960mm,厚さ3mm,単位重量150g/m2の不織布とした。この不織布を100mmの幅に裁断し所定の軸に4回重ね巻きして、外径90mm,内径60mmの筒状体とする。この筒状体を予備成形型内で軸方向に圧縮し、外径90m,内径60mm,厚さ20mmのリング状の補強繊維基材とする。前記重ね巻きに先立ち、フェルトの巻き始め端縁と巻き終わり端縁には引っ掻き処理を施し、補強繊維を毛羽立たせた。尚、この不織布は、補強繊維同士の結合が弱く、重ね巻きした筒状体を軸方向に圧縮したとききれいに蛇腹状に折り畳むことができず、繊維の配向が乱れた。上記リング状の補強繊維基材を用いて、以下実施例と同様に樹脂製歯車とした。その特性を表1に示す。 【0020】従来例1上記実施例4において、不織布の巻き始め端縁と巻き終わり端縁に引っ掻き処理を施さず、その他は実施例4と同様にして樹脂製歯車を製造した。その特性を表1に示す。 【0021】従来例2(図6参照) パラ系アラミド繊維及びメタ系アラミド繊維を、重量比で50/50の割合で混紡した糸をニット編みして筒状体6を構成した。この筒状体6を端部から軸方向に巻き上げて、外径90mm,内径60mm,厚さ20mmのリング状の補強繊維基材3とする。上記リング状の補強繊維基材を用いて、以下実施例1と同様に樹脂製歯車とした。その特性を表1に示す。 【0022】表1に示した各特性の測定は次のようにして行なった。尚、各例の樹脂製歯車の樹脂中に占める補強繊維の含有量はいずれも同じである。曲げ強度は、製造した樹脂製歯車の歯部から切り出した円弧状試料の曲げ強度(初期強度)を測定したものである。試料は、巻き終わり端縁相当箇所から切り出した試料1と他の箇所から切り出した試料2である。実装耐久時間は、自動車エンジンのギヤ加速テスト(回転数:6000rpm,油温130℃,歯元負荷応力255MPa)での耐久時間を測定した。 【0023】 【表1】
【0024】 【発明の効果】本発明に係る樹脂製歯車は、リング状補強繊維基材のつなぎ目が目立たなくなるので、つなぎ目に相当する箇所とそうでない箇所の強度に差がなくなる。特に、不織布としてフェルトを選択すると(実施例1〜3)、補強繊維の糸を織ったり編んだりしない点で実施例4と同様の補強繊維基材構成であるにもかかわらず、大きな機械強度を保持させることができる。補強繊維同士が強固に結合されたフェルトを重ね巻きした筒状体を蛇腹状に折り畳んだ構成が有効に作用しており、その強度は、補強繊維の糸を編んだ補強繊維基材構成である従来例2に比べると多少劣るものの、それに匹敵するものである。そして、補強繊維の糸を織ったり編んだ場合に見られた補強繊維の粗密がなく、水分や油分が歯車表面から内部に侵入しにくいので、耐久性がさらに向上している。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000001203 【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年10月29日(1999.10.29) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2001−124179(P2001−124179A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月8日(2001.5.8) |
| 【出願番号】 |
特願平11−308429 |
|