| 【発明の名称】 |
クラッチレス圧縮機 |
| 【発明者】 |
【氏名】清島 修二
|
| 【要約】 |
【課題】ハブ側を重く大きくすることなく、設定した過負荷時にプーリから圧縮機の回転軸への回転動力の伝達を確実に断つことができるクラッチレス圧縮機を提供する。
【解決手段】駆動シャフト2に一体に設けられたハブ20と、トルク伝達を行うための弾性体を保持するダンパ保持プレート50とを備えたクラッチレス圧縮機において、ダンパ保持プレート50に形成された孔56とハブ20に形成された突起部25とで構成される係合機構70に過負荷が加わったとき、突起部25と孔56との係合力に抗してダンパ保持プレート50が回転し、突起部25と孔56との係合が外れ、ダンパ保持プレート50が皿バネ60を押し上げながら突起部25に乗り上げる。ダンパ保持プレート50が所定量以上回転すると、孔56に形成された突部とピン41とが係合し、ピン41がナット40を緩める方向へ回転し、ダンパ保持プレート50を付勢している皿バネ60の押圧力を低下させ、プーリ10が空転する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 駆動シャフトに一体に設けられたハブと、トルク伝達を行うための弾性体を保持する保持プレートとを備えたクラッチレス圧縮機において、前記ハブに螺合し、前記保持プレートを皿バネを介して前記ハブに押しつけるナットと、前記ハブのフランジ部と前記保持プレートとを係合させる係合手段と、前記ナットに取り付けられるとともに、前記保持プレートと係合し、前記係合手段による係合状態が解除されたとき、前記ナットを緩めるピンとを備えていることを特徴とするクラッチレス圧縮機。 【請求項2】 前記係合手段は前記ハブのフランジ部に形成された突起部と前記保持プレートに形成された、前記突起部と対向する孔とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のクラッチレス圧縮機。 【請求項3】 前記突起部は前記ハブの前記フランジ部の周方向に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のクラッチレス圧縮機。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明はハウジングに収容された駆動軸にプーリを介して外部駆動源の駆動力が伝達されるクラッチレス圧縮機に関する。 【0002】 【従来の技術】クラッチ付圧縮機においては、エンジンの駆動力は電磁クラッチを介して圧縮機の駆動シャフトに伝達される。 【0003】このクラッチ付圧縮機は、圧縮機の内部に焼付等の異常が発生したとき、圧縮機内の温度や圧力に基づいて電磁クラッチを切り、エンジンへの過大な負荷によるエンジンストールを防止している。 【0004】一方、電磁クラッチを使用しないクラッチレス圧縮機においては、圧縮機の内部に焼付等の異常が発生したとき、エンジンへの過大な負荷によるエンジンストールを防止するため、プーリから圧縮機の駆動軸への動力伝達を断つ機構が必要になる。 【0005】この機構として、プーリに固定された内側保持部材のフランジ部とハブのフランジ部の円弧状突起とをワッシャを介して当接させるとともに、プーリに固定された内側保持部材のフランジ部をワッシャを介して皿バネのばね力により押圧し、圧縮機側の負荷トルクが設定値以内である場合には、プーリの回転力を内側保持部材のフランジ部、ワッシャ及びハブのフランジ部を介して駆動軸に伝達し、圧縮機側の負荷トルクが設定値より過大になった場合には、ワッシャとハブのフランジ部の円弧状突起との間で滑りを発生させ、ワッシャをハブの切欠き凹部へ落ち込ませることによって軸方向へ変位させて皿バネの押圧力を低減させ、プーリを空転させる構成が知られている(特開平10−311399号公報)。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかし、この機構は摩擦係数の小さいワッシャとハブのフランジ部の円弧状突起との間の摩擦力によってトルク伝達を行っているため、過大なトルク変動でない(許容値以内のトルク変動)ときであってもワッシャと円弧状突起との間の摩擦部分に滑りが生じるおそれがある。 【0007】また、摩擦部分に滑りを生じさせないためにはワッシャを押し付ける荷重を大きくする必要があるので、ばね力の大きな皿バネが必要になり、皿バネの荷重を受けるハブ側も強度を高めるため、重く大きなものとなる。 【0008】更に、摩擦力によってトルクを検出しているので、温度や湿度等の環境や異物の浸入によって摩擦係数が変化し、所期のトルクを検出出来なくなるおそれがある。 【0009】この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題はハブ側を重く大きくすることなく、設定した過負荷時にプーリから圧縮機の回転軸への回転動力の伝達を確実に断つことができるクラッチレス圧縮機を提供することである。 【0010】 【課題を解決するための手段】前述の課題を解決するため請求項1記載の発明のクラッチレス圧縮機は、駆動シャフトに一体に設けられたハブと、トルク伝達を行うための弾性体を保持する保持プレートとを備えたクラッチレス圧縮機において、前記ハブに螺合し、前記保持プレートを皿バネを介して前記ハブに押しつけるナットと、前記ハブのフランジ部と前記保持プレートとを係合させる係合手段と、前記ナットに取り付けられるとともに、前記保持プレートと係合し、前記係合手段による係合状態が解除されたとき、前記ナットを緩めるピンとを備えていることを特徴とする。 【0011】ナットによって保持プレートを皿バネを介してハブを所定の力で押し付けているので、圧縮機の負荷トルクが設定値以上、すなわち過負荷状態になって保持プレートが回転して係合手段による係合状態が解除されたとき、ナットに取り付けたピンをナットが緩む方向へ回転し、保持プレートをハブに押しつけている皿バネのばね力が弱くなり、保持プレートが空転する。また、係合手段によって過負荷状態を検出するので、バネ力の大きな皿バネを必要としない。 【0012】請求項2記載の発明のクラッチレス圧縮機は、請求項1に記載のクラッチレス圧縮機において、前記係合手段は前記ハブのフランジ部に形成された突起部と前記保持プレートに形成された、前記突起部と対向する孔とで構成されていることを特徴とする。 【0013】係合手段をハブのフランジ部に形成された突起部と保持プレートに形成された、突起部と対向する孔とで構成したので、突起部を孔に落ち込ませることによってハブのフランジ部と保持プレートとを係合させることができる。 【0014】請求項3記載の発明のクラッチレス圧縮機は、請求項1又は2に記載のクラッチレス圧縮機において、前記突起部は前記ハブの前記フランジ部の周方向に形成されていることを特徴とする。 【0015】突起部をハブのフランジ部の周方向に形成したので、突起部が孔に落ち込み易くなる。 【0016】 【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。 【0017】図1はこの発明の一実施形態に係るクラッチレス圧縮機の断面図、図2は図1のA矢視図、図3は図1のクラッチレス圧縮機の動力伝達装置の分解斜視図である。 【0018】このクラッチレス圧縮機は、ラジアル軸受5を介してハウジング1のボス部1aに回転可能に支持され、かつ駆動シャフト2を回転中心として図示しないエンジンからの回転力によって回転するプーリ10と、ハウジング1から突出する駆動シャフト2の端部にセンタボルト6及びワッシャを兼ねるストッパ30によって固定されたハブ20とを備える。 【0019】ハブ20はフランジ部21と円筒部22とで構成されている。 【0020】フランジ部21のフロント側端面の中央部には環状の凹部23が形成されている。 【0021】凹部23に連なる環状部24には周方向に120°間隔で、平面視矩形状であり、側面視台形状である突起部25が形成されている。 【0022】円筒部22の外周面にはナット40の雌ねじ40aと螺合可能な雄ねじ22aが形成されている。この雄ねじ22aは、プーリ10の回転方向と同じ方向へ回転したとき、ナット40は緩むように逆ねじとなっている。また、円筒部22の中心軸上にはセンタボルト6を貫通させる貫通孔26が形成されている。 【0023】ラジアル軸受5の外輪5aに固着されたプーリ10には環状のダンパ保持プレート(保持プレート)50の外周縁部がねじ51によって固着されている。なお、ラジアル軸受5の内輪5bはハウジング1のボス部1aに固着されている。 【0024】プーリ10は熱硬化性の樹脂で成型されている。このプーリ10にはねじ51が螺合するナット部15やラジアル軸受5がインサート成型されている。また、プーリ10の外周面にはベルト(図示せず)が巻き掛けられ、プーリ10はベルトを介してエンジン(図示せず)のクランクシャフトに連結されている。 【0025】ダンパ保持プレート50は外側保持プレート52とこの外側保持プレートの内周側に間隔をおいて配置された内側保持プレート53とを備えている。外側保持プレート52と内側保持プレート53とは弾性変形可能なダンパゴム55で連結され、このダンパゴムを介してトルク(駆動力)の伝達が行われる。このダンパゴム55は軸方向(ハブ20から離れる方向)へ付勢された状態で接着剤によって外側保持プレート52と内側保持プレート53とに固定されている。 【0026】また、ダンパ保持プレート50(内側保持プレート53)にはハブ20の突起部25と係合可能な矩形状の孔56が形成されている。突起部25と孔56とで係合機構(係合手段)70が構成される。 【0027】なお、ダンパ保持プレート50の中央にはハブ20の円筒部22を逃がすほぼ円形の開口57が形成されている。この開口57には半径方向内方へ突出する2つの突部58が互いに対向するように形成されている。 【0028】ナット40にはダンパ保持プレート50の突部58と一端が係合するピン41が取り付けられている。したがって、ピン41はプーリ10(ダンパ保持プレート50)が回転したとき、ナット40を円筒部22から外れる方向へ付勢する。なお、このピン41の他端はストッパ30によって抜け止めされている。 【0029】ナット40とダンパ保持プレート50との間にはナット40の締付力によってダンパ保持プレート50をハブ20に押し付けるための皿バネ60が設けられている。このとき、ナット40の円筒部22に対する締付量によってダンパ保持プレート50のハブ20に対する押圧力が決まる。 【0030】なお、プーリ10と、ハブ20と、ダンパ保持プレート50と、皿バネ60と、ナット40と、ピン41と、センタボルト6とで、クラッチレス圧縮機の動力伝達装置が構成される。 【0031】圧縮機側の負荷トルクが設定値以内である場合、突起部25と孔56とは係合状態にあり、プーリ10の駆動力はダンパ保持プレート50、孔56、突起部25及びハブ20を介して駆動シャフト2に伝達され、駆動シャフト2が回転する(図1参照)。 【0032】また、圧縮機側の負荷トルクが設定値以上に過大になった場合、この負荷トルクが孔56と突起部25とで構成される係合機構70に加わる。そのため、突起部25と孔56との係合力に抗してダンパ保持プレート50が回転し、突起部25と孔56との係合が外れる。このとき、ダンパ保持プレート50は皿バネ60を押し上げながら突起部25に乗り上げる。 【0033】ダンパ保持プレート50が所定量以上回転すると、突部58とピン41とが係合し、ピン41がナット40を緩める方向へ回転する。そのため、ダンパ保持プレート50を付勢している皿バネ60の押圧力が低下し、最終的には零になり、プーリ10は空転し、プーリ10から駆動シャフト2への回転力の伝達が断たれる。 【0034】この実施形態のクラッチレス圧縮機によれば、次の効果を奏する。 【0035】プーリ10の回転力はダンパ保持プレート50、孔56、突起部25及びハブ20を介して駆動シャフト2に伝達され、従来例のようにワッシャとハブとの摩擦力によって駆動力を伝達する構成でないので、許容範囲内の駆動力によってナット40が緩んでプーリ10から駆動シャフトへの回転力の伝達経路が断たれることがない。 【0036】また、従来例のようにワッシャとハブとの摩擦力によって駆動力を伝達する構成でないので、皿バネ60によってハブ20側へ大きな荷重を加える必要がなくなり、ハブ側の軽量・小型化を図ることができる。 【0037】更に、ハブ20に螺合するナット40によってダンパ保持プレート50を皿バネ60を介してハブ20に押し付けてプーリ10からの駆動力を伝達し、ナット40を緩めて駆動力の伝達経路を断つ構成を採用しているので、環境(温度や湿度)や異物の侵入による摩擦係数の変化によって生じる伝達経路遮断のタイミングがばらつかず、検出精度の変動が少なくなる。 【0038】また、ナット40が緩んだとき、ダンパゴム55の軸方向への付勢力によってダンパ保持プレート50が軸方向へ移動し、突起部25とダンパ保持プレート50とが離れるので、突起部25とダンパ保持プレート50との接触に起因する音の発生が防止される。 【0039】更に、プーリ10を熱硬化性の合成樹脂を用いて成型したので、プーリ10が軽量化され、慣性モーメントを小さくできる。 【0040】また、ナット部15等をインサート成型したので、製造工程を減らすことができ、クラッチレス圧縮機の製造コストを低減させることができる。 【0041】なお、この実施形態ではナット40を円筒部22から外れる方向へ付勢するためのピン41を4本としたが、4本に限るものではなく例えば2本であってもよい。 【0042】また、プーリ10は熱硬化性の合成樹脂を用いて成型したが、従来のように鉄を用いて鍛造や機械加工によって製造してもよい。 【0043】更に、この実施形態ではハブ20に突起部25を形成し、ダンパ保持プレート50に孔56を形成したが、ハブ20に孔を形成し、ダンパ保持プレート50に突起部を形成してもよい。 【0044】また、突起部25はフランジ部21に周方向に120°間隔で形成されているが、例えばハブ20のフランジ部21の周方向に突起部25を連続的に形成し、いずれかの突起部25でダンパ保持プレート50の孔56と係合できるようにしてもよい。 【0045】 【発明の効果】以上に説明したように請求項1記載の発明のクラッチレス圧縮機によれば、設定した過負荷でプーリから圧縮機の駆動シャフトへの回転動力の伝達を確実に断つことができる。また、バネ力による荷重を受けるハブ側を小さく、軽いものとすることができる。 【0046】請求項2に記載の発明のクラッチレス圧縮機によれば、簡単な構成で係合手段を構成することができる。 【0047】請求項3に記載の発明のクラッチレス圧縮機によれば、より確実に過負荷状態に対応することができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】500309126 【氏名又は名称】株式会社ゼクセルヴァレオクライメートコントロール
|
| 【出願日】 |
平成11年10月22日(1999.10.22) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2001−124177(P2001−124177A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月8日(2001.5.8) |
| 【出願番号】 |
特願平11−300595 |
|