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【発明の名称】 摩擦式変速機
【発明者】 【氏名】広瀬 良行

【要約】 【課題】より安定した回転出力を得ることができるようにする。

【解決手段】高速軸2と同心で共回りする太陽ローラ4と、遊星ローラ5と、遊星ローラ5の回転で高速軸2と同心回転する環状輪6と、環状輪6の外周面に当接して自転しながら公転する回転子7と、回転子7を支持する回転子支持部材と、回転子7の自転および公転を助ける援助輪と、内周面が回転子7の表面に当接した状態で高速軸2回りに回転する変速輪10と、変速輪10の回転を低速軸3に伝達する伝達手段と、変速輪10の回転子7に対する当接位置を変更する当接位置変更手段とが所定のケーシング13に設けられ、遊星ローラ5は、ケーシング13内で固定された圧入軸53回りに回転自在に軸支されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1軸の軸心回りの回転入力を変速して摩擦力により第1軸と同心の第2軸に伝達する摩擦式変速機であって、第1軸と同心で共回りする太陽ローラと、この太陽ローラの周りに配されて太陽ローラの回転によって中心回りに自転する遊星ローラと、内周面が遊星ローラの外周面に当接することにより遊星ローラの回転で上記第1軸と同心で回転する環状輪と、一部がこの環状輪の外周面に当接して中心回りに自転しながら公転する回転子と、上記第1軸回りに回転自在に軸支され、第1軸の軸心を中心とした円軌跡上に上記回転子の回転中心を位置させるように回転子を支持する回転子支持部材と、上記回転子の外周部に当接した状態で第1軸回りに共回りして上記回転子の自転および公転を助ける援助輪と、内周面が上記回転子の表面に当接した状態で第1軸回りに回転する変速輪と、この変速輪の回転を第2軸に伝達する伝達手段と、上記変速輪の回転子に対する当接位置を回転子の径方向に変更する当接位置変更手段とが所定のケーシングに設けられ、上記遊星ローラは、上記ケーシング内で固定されたローラ支持軸回りに回転自在に軸支されていることを特徴とする摩擦式変速機。
【請求項2】 上記遊星ローラの、上記太陽ローラおよび環状輪のいずれか一方または双方に対する径寸法比を変更することによって上記変速輪のケーシングに対する相対回転速度が0になる、回転子の変速輪に対する当接位置を変更し得るものであることを特徴とする請求項1記載の摩擦式変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、比較的低速度で進退が頻繁に繰り返される各種の作業車や運搬車あるいは昇降機、さらには車椅子等への適用が好適な摩擦式変速機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、特開昭61−218864号公報に記載されているような摩擦式の変速機が知られている。この変速機は、入力軸の軸心回りの回転入力を変速して摩擦力により入力軸と同心の出力軸に伝達するものであり、入力軸と同心で共回りする小径伝動車と、この小径伝動車の周りに斜めに配設された複数の円錐形転子と、この円錐形転子の裏面側に当接して摩擦伝動で入力軸回りに回転する大径伝動車と、内周面が上記円錐形転子の円錐面に当接して入力軸回りに回転する変速リングと、上記大径伝動車の回転で入力軸に固定された太陽ギヤ回りに自転しながら公転する複数の遊星ギヤと、この遊星ギヤを支持するキャリヤに一体化された、入力軸と同心の出力軸とからなっている。
【0003】上記変速リングは、操作レバーの操作で円錐形転子の円錐面に当接しながら入力軸と平行に正逆移動させ得るようになっており、この操作で円錐形転子の円錐面に対する変速リングの当接位置を変更することにより、当接位置が円錐面の中心から遠ざかったり中心に近づいたりすることで円錐形転子の自転速度および公転速度が増減し、これによる大径伝動車の回転数を変更することができるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の上記のような摩擦式変速機にあっては、遊星ギヤのキャリヤに出力軸を直結するとともに、変速リングを非回転とした状態で円錐形転子の円錐面に対する変速リングの当接位置を変更することにより、円錐形転子の自転速度および公転速度が共に変更されて、それに伴い出力軸の回転数が変化するようになっているため、変速リングが円錐形転子の大径側に当接位置を移すにつれて公転速度が増大することになる。通常円錐形転子には摩擦伝動に適した回転数比(入力回転数に対する出力回転数の比)が存在するにも拘らず、公転により生じる遠心力が公転速度の増大とともに加速度的に増加し、かつ、変速リングの当接位置が円錐形転子の重心から大きくづれることになり、円錐形転子のバランスを維持することが困難になることから、当接状態が不安定になり、その回転数比を確保することができないという問題点が存在した。すなわち、摩擦伝動に適した回転数を確保することができないと、回転力の伝達が不安定になり、常に安定した高い伝達効率の回転出力を得ることが困難になるのである。
【0005】また、入力軸の回転によって複数の遊星ギヤおよび円錐形転子が太陽ギヤおよび小径伝動車回りに公転するため、ケーシング内に装填されている潤滑オイルを攪拌することになり、このとき生じる攪拌抵抗によって遊星ギヤおよび円錐形転子の公転が不安定になることから、高い伝動効率を得ることが困難であるという問題点も存在した。
【0006】本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、より安定した回転出力を得るとともに、高速入力が可能で伝動効率の高い摩擦式変速機を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、第1軸の軸心回りの回転入力を変速して摩擦力により第1軸と同心の第2軸に伝達する摩擦式変速機であって、第1軸と同心で共回りする太陽ローラと、この太陽ローラの周りに配されて太陽ローラの回転によって中心回りに自転する遊星ローラと、内周面が遊星ローラの外周面に当接することにより遊星ローラの回転で上記第1軸と同心で回転する環状輪と、一部がこの環状輪の外周面に当接して中心回りに自転しながら公転する回転子と、上記第1軸回りに回転自在に軸支され、第1軸の軸心を中心とした円軌跡上に上記回転子の回転中心を位置させるように回転子を支持する回転子支持部材と、上記回転子の外周部に当接した状態で第1軸回りに共回りして上記回転子の自転および公転を助ける援助輪と、内周面が上記回転子の表面に当接した状態で第1軸回りに回転する変速輪と、この変速輪の回転を第2軸に伝達する伝達手段と、上記変速輪の回転子に対する当接位置を回転子の径方向に変更する当接位置変更手段とが所定のケーシングに設けられ、上記遊星ローラは、上記ケーシング内で固定されたローラ支持軸回りに回転自在に軸支されていることを特徴とするものである。
【0008】この発明によれば、第1軸に与えられた回転力は、第1軸と一体の太陽ローラ、この太陽ローラの周りに配された遊星ローラ、および内周面が遊星ローラに当接している環状輪を介して回転子に伝達される一方、第1軸と一体の援助輪の回転によっても伝達され、これによって回転子は回転中心回りに常に第1軸に対して同一回転数比で自転するとともに公転する。そして、回転子に対する変速輪の当接位置の変化によって回転子の有効径が変化することにより、変速輪は、設定された当接位置に見合った第1軸に対する所定の回転数比で回転することになる。
【0009】そして、遊星ローラは、ケーシング内で固定されたローラ支持軸に軸支されているため、太陽ローラの回転によって自転はするが公転することはなく、従って、ケーシング内に充填された潤滑オイルが遊星ローラの公転で攪拌され、遊星ローラに攪拌抵抗を付与することで第2軸の回転が不安定になるような不都合の発生を確実に抑止することが可能になる。
【0010】また、遊星ローラを公転させないことと、環状輪が回転子の公転に対して逆回転することにより回転子の公転をも考慮に入れた自転の回転数が常に一定の低速度になるため、この回転数を、摩擦力を利用した回転伝達のために安定した最適の値に予め設定しておくことが可能であり、こうすることで遠心力に起因する当接状態の不安定や攪拌抵抗などの問題が解消され、第1および2軸間で常に安定した高い伝達効率の回転力の伝達が達成される。
【0011】そして、回転子を、周縁部に形成された上記援助輪と当接する円弧縁部と、裏面側に形成された上記環状輪の周面と当接する平坦面と、表面側に形成された上記変速輪の内周面と当接する円錐面とを備えた円錐形に形状設定することにより、回転子は環状輪と援助輪と変速輪とによって三方から支持されるため、ケーシング内での被支持状態が安定したものになる。この状態で環状輪の第1軸周りの回転は、その周面が回転子の平坦面に当接していることにより、また援助輪の回転はその周面が回転子の円弧面に当接していることによりそれぞれ摩擦力で回転子に伝達され、これによって回転子が回転する。この回転子の回転は、その円錐面が変速輪の内周面に当接していることにより摩擦力で変速輪に伝達され、これによって変速輪は第1軸回りに回転する。
【0012】そして、回転子は、第1軸の軸心方向に向けて延びる回転軸を第1軸に対して軸心所定角度だけ傾けることにより、その円錐面の変速輪に当接する稜線部分を第1軸に平行になるように姿勢設定することが可能であり、こうすることで変速輪を円錐面に当接させながら第1軸と平行に正逆移動させることができ、この当接位置の変更によって変速輪の回転速度を変えることが可能になる。
【0013】また、援助輪の周縁部を断面視で回転子の円弧凸面あるいは円弧凹面に対応するように断面視で円弧凹面あるいは円弧凸面にしておくことにより、回転子の周縁と援助輪の周縁との当接長さを長くすることができるため、両者の摩擦による回転伝達効率が向上する。
【0014】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、上記遊星ローラの、上記太陽ローラおよび環状輪のいずれか一方または双方に対する径寸法比を変更することによって上記変速輪のケーシングに対する相対回転速度が0になる、回転子の変速輪に対する当接位置を変更し得るものであることを特徴とするものである。
【0015】この発明によれば、変速輪は、中立位置を挟んで一方の側にあるときと他方の側にあるときとで回転方向が逆になるため、変速輪の位置設定を、中立位置を越えて変更することにより回転方向を逆転させることができる。
【0016】そして、この中立位置は、遊星ローラの太陽ローラや環状輪に対する径寸法比を設計段階で種々変化させることにより予め任意に設定することが可能であり、用途に応じて変速機を最適のものにする上で極めて好都合である。
【0017】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る摩擦式変速機の一実施形態を示す一部切欠き分解斜視図であり、図2は、その組立て斜視図である。また、図3は、図2のA−A線断面図である。なお、本明細書においては、高速軸または低速軸回りの回転軸の回転を公転といい、その他の回転中心回りの回転を自転という。単に回転といったときは、公転および自転のいずれか一方または双方を指すものとする。
【0018】図1〜図3に示すように、本実施形態の摩擦式の変速機1は、減速機として用いられるときは入力軸として、増速機として用いられるときは出力軸としての役割を担う高速軸(第1軸)2と、高速軸2と逆の働きを担う低速軸(第2軸)3と、高速軸2と同心で共回りする太陽ローラ4と、太陽ローラ4周りに配されてその軸心回りの回転により自転する遊星ローラ5と、内周面が遊星ローラ5に当接して高速軸2回りに回転する環状輪6と、環状輪6の回転を摩擦力で伝達されて回転(自転および公転)する複数の回転子7と、各回転子7を支持する回転子支持部材8と、回転子7の回転を助ける援助輪9と、内周面が回転子7の表面に当接しながら高速軸2の軸線方向にスライド可能な変速輪10と、変速輪10の回転を低速軸3に伝達する伝達手段11と、上記変速輪10をスライドしてその内周面と回転子7の表面との当接位置を変更する当接位置変更手段12とがケーシング13に内装あるいは外装されることによって形成されている。
【0019】上記ケーシング13は、筒状を呈した有底の筒状ケーシング131と、この筒状ケーシング131の開口部を閉止する円形の蓋体135とからなっている。筒状ケーシング131は、環状壁132とこの環状壁132一方の側部を閉止した円形側板133とからなり、円形側板133の中心位置には、ベアリングBを介して高速軸2を支持する高速軸支持筒134が外方に向けて突設されている。この高速軸支持筒134の端面には、図2に示すように、ケーシング13に内装された高速軸2の先端部を外部に突出させるための挿通孔134aが穿設されている。
【0020】また、円形側板133には、高速軸支持筒134の孔心を中心とした円軌跡上に周方向等ピッチで上記遊星ローラ5を支持するギヤ支持孔133aが3つ穿設されているとともに、上部位置には後述する操作ロッド121を挿通するためのロッド挿通孔133bが穿設されている。また、高速軸支持筒134の上部外周面には、後述する操作レバー123を軸支するための互いに対向した一対のブラケット134bが設けられている。
【0021】上記蓋体135は、径寸法が筒状ケーシング131外周のそれと同一に寸法設定された円盤状の蓋本体136と、この蓋本体136の裏面側(図1〜図3の右面側)に同心で突設された環状突起137と、低速軸支持筒138とからなっている。蓋体135は、環状突起137の外周面が筒状ケーシング131の開口部内周面に摺接状態で嵌め込まれ、ねじ止めされることによって筒状ケーシング131に固定されるようになっている。
【0022】蓋本体136の中心位置には、低速軸3を嵌挿する嵌挿孔が穿設されているとともに、低速軸支持筒138は、この嵌挿孔を囲むように蓋本体136から外方に向かって突設され、その端面に低速軸3を挿通する挿通孔138aが穿設されている。低速軸3は、かかる低速軸支持筒138内に直列で内装された2個のベアリングBを介して挿通孔138aに挿通され、図2に示すように、その先端部が外部に突出されている。また蓋本体136には、筒状ケーシング131のロッド挿通孔133bに対応したロッド挿通孔135a(図3)が穿設されている。
【0023】上記高速軸2は、中央部の軸本体21と、この軸本体21の図における右端部から同心で右方に向けて延設された右小径部22と、同左端部から同心で左方に向けて突設された左小径部23と、軸本体21の左端部に形成された環状膨出部24とからなっている。かかる高速軸2には、環状膨出部24の右方位置の軸本体21および左小径部23にそれぞれ筒状の滑り軸受25が外嵌されている。また、高速軸2が高速軸支持筒134の挿通孔134aにベアリングBを介して嵌挿された状態で、図3に示すように、ベアリングBの右方位置にCリング26が装着されている。
【0024】上記低速軸3は、上記高速軸2の軸本体21と略同径の軸本体31と、この軸本体31の右端面に同心で形成されたフランジ部32と、軸本体31の左端面から同心で突設された小径部33とからなっている。フランジ部32の中心位置には、滑り軸受25を介して左小径部23を摺接状態で嵌入する高速軸嵌入孔34が穿設され、この高速軸嵌入孔34に高速軸2の左小径部23を嵌入することにより、高速軸2と低速軸3とは軸心回りに互いに相対回転し得るようになっている。
【0025】かかるフランジ部32の右面には、軸心を中心とした同一円軌跡上に周方向等ピッチで3本の連結ロッド35が突設され、これらの連結ロッド35が後述する伝達輪115に嵌入されることにより、上記変速輪10の高速軸2回りの回転が後述する中継輪101および伝達輪115を介して低速軸3に伝達されるようになっている。また、2個のベアリングBを介して低速軸3の軸本体31が低速軸支持筒138に装着された状態で、図3に示すように、軸本体31の左端部にCリング26が装着されている。
【0026】上記太陽ローラ4は、図1に示すように、先細りで周面が斜めに形成された円錐台体41を備えて形成されている。かかる太陽ローラ4には、高速軸2の軸本体21右端部に密着外嵌するための軸孔42が穿設されている一方、同軸本体21の右端部外周面の一部にはキー溝21aが凹設され、軸本体21に軸孔42を嵌め込んだ状態でキー結合され、太陽ローラ4が高速軸2と共回り可能に軸本体21に装着されるようにしている。
【0027】上記遊星ローラ5は、太陽ローラ4の円錐台体41に当接する大輪車51と、この大輪車51の左面に同心で突設された円錐台状の小輪車52とからなっている。かかる遊星ローラ5は、図3に示すように、円形側板133のギヤ支持孔133aに圧入固定された圧入軸(ローラ支持軸)53に滑り軸受54を介して嵌入され、これによって圧入軸53回りに回転自在に軸支されている。従って、高速軸2が回転すると、この回転は太陽ローラ4を介して大輪車51に伝達され、これによって遊星ローラ5は圧入軸53回りに逆方向に回転することになる。
【0028】上記環状輪6は、3つの遊星ローラ5の各小輪車52に当接して上記高速軸2回りに回転するものであり、内周面に小輪車52に当接する内接面61が形成されているとともに、外周面に左方に向かって径寸法が漸減するように傾斜した環状傾斜周面62が形成されている。上記内接面61は、遊星ローラ5の回転を環状輪6に伝達するためのものであり、上記環状傾斜周面62は、回転子7の裏面に当接して環状傾斜周面62の回転を摩擦力で回転子7に伝達するためのものである。かかる環状輪6は、高速軸2に対して減速状態で高速軸2と逆方向に回転する。
【0029】上記回転子7は、円錐形状を呈した円錐体71と、この円錐体71の底面に一体に形成された摩擦円盤72と、この摩擦円盤72の中心位置から垂直に突設された独楽軸73とからなっている。摩擦円盤72は、外周縁部が図3に示すように側面視で円弧状に形成された円弧縁部72aを有している。この円弧縁部72aは、摩擦円盤72の援助輪9に対する当接長を大きくして確実な摩擦力を得るために形成されている。本実施形態では、回転子7は4つ設けられている。
【0030】上記回転子支持部材8は、回転子7を独楽軸73回りに回転自在に支持するものであり、環状円盤81と、この環状円盤81の周縁部から右方に向けて径寸法が漸増するように延設された環状のラッパ筒82とからなっている。このラッパ筒82には、周方向に等ピッチで4つの装着孔83が穿設され、この装着孔83に摺接状態で独楽軸73が嵌挿され、これによって回転子7が独楽軸73回りに回転自在に回転子支持部材8に装着されるようになっている。また、環状円盤81の中心位置には援助輪9の一部を摺接状態で嵌挿する中心孔84が設けられている。
【0031】そして、図3に示すように、ラッパ筒82の高速軸2に対する傾斜角度αは、円錐体71の摩擦円盤72に対する傾斜角度βと同一に角度設定され、これによって回転子7が回転子支持部材8に装着された状態で、高速軸2の軸心を中心とした最大径寸法位置にある円錐体71の表面が高速軸2と平行になるようにしている。また、上記環状輪6の環状傾斜周面62の高速軸2に対する傾斜角度もβと等しく角度設定されている。
【0032】上記援助輪9は、その周面が摩擦円盤72の円弧縁部72aに当接して環状輪6による回転子7の回転支持を助けるとともに、高速軸2と軸心回りに共回りすることによる前記環状輪6との回転数差によって回転子7を独楽軸73回りに回転させる役割を果たす。従って、高速軸2の回転数に変化がない限り回転子7は常に同一の回転数で自転することになる。
【0033】かかる援助輪9は、高速軸2に外嵌される援助輪本体91と、この援助輪本体91の右側に形成された筒体92とからなっている。筒体92は、その外径寸法が上記回転子支持部材8の中心孔84の内径寸法より僅かに小さく設定され、こうすることで筒体92を摺接状態で中心孔84に嵌め込むようにしている。
【0034】また、援助輪本体91の周縁部には、回転子7の円弧縁部72aに対応した環状の円弧凹部91aが設けられ、円弧縁部72aが円弧凹部91aに嵌まり込むことによって回転子7と援助輪9とが確実に当接するようになされている。上記回転子7の円弧縁部72aと環状の円弧凹部91aの断面形状は逆の関係になっても本発明の機能を損なうものではない。
【0035】そして、変速輪10は、円錐体71に対する当接位置によって高速軸2回りの回転速度が変化するのである。すなわち、回転子7は、その表面が環状輪6および援助輪9に当接し、この当接によって独楽軸73回りの自転および高速軸2回りの公転の回転数が一定に設定されているのに対し、回転子7に当接している変速輪10は、その当接位置が変化すれば、変速輪10に対する回転子7の有効径が異なることになり、これによって回転数が変化するのである。
【0036】結局、変速輪10の横方向(高速軸2と平行な方向)の正逆移動によって回転数を任意に変化させることができる。図4は、変速輪10の設定位置と回転速度との関係を説明するための説明図であり、(イ)は平面図であって回転子7の中心点Oからの変速輪10の変位(L)と、回転子7を基準にした変速輪10の回転数(N)との関係を示すグラフも合わせて記載し、(ロ)は側面図であって各部品の回転方向を矢印で示している。
【0037】まず、図4の(ロ)に示すように、高速軸2が矢印で示すようにX線視で右方向(時計方向)に回転すると、この回転は太陽ローラ4および遊星ローラ5を介して減速状態で環状輪6に伝達され、環状輪6は高速軸2と逆方向の左回りをする。この環状輪6の左方向への回転は、Y線視で右方向に回転するように回転子7に伝達される。
【0038】一方、高速軸2と同一回転数で共回りする援助輪9も回転子7に当接して回転子7をY線視で右方向(時計方向)に回転させるが、この回転数の方が環状輪6の回転数より大きいため、この差によって回転子7は、高速軸2回りにX線視で右回りに公転することになる一方、回転子7はY線視で右回りに自転しているため、この自転で回転子7に当接している変速輪10は回転子7を基準とし、かつ、回転子7に対する当接位置によってX線視で左方向または右方向に回転する。
【0039】そして、変速輪10の回転子7を基準にした反時計方向の回転(図4の(イ)に一点鎖線の矢印で表示)の回転数は、図4の(イ)のグラフに示すように、回転子7への当接位置によって異なったものになり、中心点Oから遠ざかるに従って大きくなる。すなわち、「N=aL」の関係式が成立する。なお、Nは回転子7を基準にした変速輪10の回転数であり、Lは変速輪10の中心点Oからの変位量である、aは比例常数である。
【0040】これに対し、先に説明したように、環状輪6の回転数と援助輪9の回転数との差によって回転子7はX線視で高速軸2回りに時計方向に公転しているから(図4の(イ)に点線矢印で表示)、この公転による影響を図4のグラフに書き入れると、「N=N1」の直線になる。従って、この「N=N1」の直線と、「N=aL」の直線との交点位置である中立位置L1は、変速輪10の高速軸2回りの右回りと左回りとが互いに相殺された位置であり、従って変速輪10はこの位置でケーシング13に対して実質的に回転しないのである。
【0041】そして、変速輪10が中立位置L1から右側に移動すると、N=aLの直線のNの値がN1の値より大きくなり、これによって変速輪10の左回りの回転数が回転子7の公転による右回りの回転数に打ち勝つため、変速輪10はX線視で左方向に回転する。
【0042】これに対し、変速輪10が中立位置L1から左側に移動すると、Nの値がN1の値より小さくなるため、回転子7の公転による変速輪10の右回りの回転数が回転子7の自転による変速輪10の左回りの回転をしのいだ状態になり、これによって変速輪10は右回りすることになる。
【0043】以上要約すれば、変速輪10の位置を変更することによって、その回転数および回転方向を変更することが可能になるとともに、回転数の変化は「N=aL」の直線に沿って漸減的にあるいは漸増的に行われるため、中立位置L1での安定した停止状態をも実現させることが可能になる。
【0044】そして、中立位置L1については、設計段階で太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪6の有効径寸法を種々変化させることにより、予め任意に設定することが可能であり、変速機1の用途に応じて最適のものを得ることができる。
【0045】かかる変速輪10は、周方向等ピッチでその左面から左方に向かって突設された4本の連結ロッド101を有しており、これらの連結ロッド101が伝達手段11に連結されることによって変速輪10の回転が低速軸3に伝えられるようになっている。
【0046】上記伝達手段11は、外径寸法が上記変速輪10の外径寸法と等しい中継輪111と、この中継輪111と共回りする伝達輪115とからなっている。中継輪111は、中心位置に高速軸2より径寸法が大きい中心孔112が穿設されて援助輪9の左方位置で高速軸2に外嵌されるとともに、周縁部には上記変速輪10の連結ロッド101が摺接状態で嵌入される摺接孔113が穿設されている。また、中継輪111には、中心孔112の周縁部から径方向に向かって延びる所定長の放射溝114が周方向に等ピッチで3条凹設されている。
【0047】上記伝達輪115は、円盤状の伝達輪本体116と、この伝達輪本体116の中心位置に設けられた、内径寸法が上記滑り軸受25(図1および図3の右側の滑り軸受25)の外径寸法より僅かに大きい筒体117とからなっている。伝達輪本体116には、上記低速軸3のフランジ部32から突出した連結ロッド35に対応する3つの連結孔118が穿設され、これらの連結孔118が連結ロッド35に外嵌されることによって伝達輪115の高速軸2回りの回転がフランジ部32を介して低速軸3に伝達されるようになっている。
【0048】また、伝達輪本体116には、上記中継輪111の放射溝114に対応した位置に伝達輪115側の放射溝119が凹設され、これら放射溝114,119間にリテーナ110を介して鋼球Sがそれぞれ介設され、中継輪111の回転はこれらの鋼球Sを介して伝達輪115に伝達されるようになっている。そして、各放射溝114,119はいずれも断面形状が鋼球Sの球面に合致するように円弧状またはV字状に形成されている。
【0049】従って、中継輪111が回転すると、この回転力は、鋼球SをV溝の傾斜面に沿って乗り上げさせることになり、これによって軸方向に押圧する力(スラスト力)に分力され、中継輪111はこのスラスト力によって右方に向かって押圧されるため、援助輪9は回転子7に対してより確実に密着し、両者間の回転力に比例した摩擦力によって伝達効率が大幅に向上する。
【0050】また、伝達輪115の筒体117と援助輪9との間(中継輪111と援助輪9との間でもある)には環状のスラスト軸受14が介設されているとともに、伝達輪115の図3における左側にもスラスト軸受14が設けられている。左方のスラスト軸受14は、伝達輪本体116と皿ばね15とで挟持され、伝達輪本体116は、上記皿ばね15の弾性力によってスラスト軸受14を介して右方に向けて押圧された状態になっている。
【0051】上記当接位置変更手段12は、筒状ケーシング131および蓋体135のロッド挿通孔133b,135aに摺接状態で嵌入される操作ロッド121と、ケーシング13内でこの操作ロッド121にねじ止め等で固定される連結部材122と、ケーシング13のブラケット134bに支持された状態で操作ロッド121の一端部に連結された操作レバー123とからなっている。
【0052】上記連結部材122は、操作ロッド121に固定される筒体122aと、この筒体122aの外周面から突設されたコ字状部材122bとからなっている。このコ字状部材122bが、図3に示すように、変速輪10の外周縁部に摺接状態で嵌め込まれることにより、連結部材122が変速輪10に連結されるようにしている。
【0053】上記操作レバー123は、その下端部が連結軸124回りに回転自在にブラケット134bに取り付けられているとともに、操作ロッド121のケーシング13から外部に突出した端部が長孔を介してリンク軸125回りに回動自在に操作レバー123に連結されている。従って、操作レバー123を連結軸124回りに正逆回動操作することにより、リンク軸125を介して操作ロッド121が左右に動き、これによる連結部材122の左右動でコ字状部材122bに挟持された変速輪10が左右に移動することにより、その内周面の回転子7に対する当接位置が変更され、これによって高速軸2の回転が所定の減速比で減速されて低速軸3に伝達されることになる。
【0054】以下、本発明の作用について主に図3および図4を基に説明する。まず、図3に示す状態で高速軸2を回転すると、この回転は太陽ローラ4を介して遊星ローラ5に伝達され、この遊星ローラ5の回転は円錐台体41の内接面61への当接によって環状輪6に伝達される。そして、この環状輪6の回転は、その環状傾斜周面62に摩擦円盤72の裏面側が当接している回転子7に伝達されて回転子7が所定方向に所定の回転数の回転力を付与される一方、援助輪9が高速軸2と共回りすることによりその円弧凹部91aに周縁部が当接している回転子7は、この援助輪9からも同一方向により大きい回転数の回転力を付与され、これら援助輪9および環状輪6から付与される回転数の差によって回転子7は自転しながら高速軸2回りを公転することになる。
【0055】そして回転子7の自転は、内周面が円錐体71の表面に当接している変速輪10に伝達され、この変速輪10の回転が連結ロッド101、中継輪111、鋼球S、伝達輪115、連結ロッド35およびフランジ部32を介して低速軸3に伝えられ、低速軸3は高速軸2に対して減速回転を行うことになる。
【0056】そして、本発明においては、遊星ローラ5はケーシング13に固定された圧入軸53回りに回転するように構成されているため、遊星ローラ5は太陽ローラ4回りに公転することはなく、従って、遊星ローラ5が公転した場合には、ケーシング13内に充填された潤滑オイルが掻き回され、これによる抵抗変動で遊星ローラ5やその他の内装部品の回転運動が円滑に行われず、安定した回転出力を低速軸3に与えることが困難になるという従来の不都合が解消され、低速軸3から常に安定した回転出力を取り出すことが可能になる。
【0057】また、遊星ローラ5が公転しないことにより、変速輪10の回転子7に対する当接位置に拘らず、回転子7の公転速度を低下させるとともに自転の回転数を常に一定に設定することが可能であるため、この回転数を摩擦力による回転力伝達に最も適した値になるように予め設計することが可能であり、こうすることによって高速軸2の回転を操作範囲内の任意の変速比で常に高い伝達効率によりかつ安定して低速軸3に出力させることができる。
【0058】本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下の内容をも包含するものである。
【0059】(1)上記の実施形態においては、ケーシング13を円筒体によって形成しているが、本発明はケーシング13が円筒体であることに限定されるものではなく、角型であってもよいし、操作ロッド121を内装する部分のみを膨出させただるま型であってもよい。
【0060】(2)上記の実施形態においては、操作ロッド121のケーシング13に対する進退操作を操作レバー123の傾倒操作で行うようにしているが、こうする代わりに操作ロッド121としてその外周面に雄ねじの螺設されたいわゆるねじ軸を採用する一方、連結部材122を内周面に雌ねじの螺設されたナット部材で構成し、このナット部材にねじ軸を螺着して変速輪10を移動させる構造を構成してもよい。このような変速輪移動構造によれば、操作ロッド121を回転操作することにより変速輪10の位置を設定することができるとともに、操作レバー123によるものより変速輪10の設定位置を安定させることができる。
【0061】(3)上記の実施形態において、太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪6をそれぞれギヤ構造にし、それぞれのギヤを互いに噛合させることによって高速軸2の回転を太陽ローラ4および遊星ローラ5を介して環状輪6に伝達するようにしてもよい。
【0062】(4)上記の実施形態においては、中継輪111の高速軸2回りの回転が鋼球Sおよび伝達輪115を介して低速軸3に伝達されるようになされているが、こうする代わりに中継輪111の回転を鋼球Sおよび伝達輪115を介さずに直接低速軸3に伝えるようにしてもよい。但し、この場合は、スラスト力を発生させる鋼球Sおよび伝達輪115からなるスラスト力発生構造を太陽ローラ4の位置に設けることが好ましい。
【0063】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、第1軸に与えられた回転力は、第1軸と一体の太陽ローラ、この太陽ローラの周りに配された遊星ローラ、および内周面が遊星ローラに当接している環状輪を介して回転子に伝達される一方、第1軸と一体の援助輪の回転によっても伝達され、これによって回転子を回転中心回りに常に同一回転数で自転および公転させることができるとともに、回転子の表面に変速輪の内周面が当接していることにより、回転子に対する接触位置の変化で回転子の有効径が変化するため、第2軸を第1軸に対して所定の変速比で回転させることができる。
【0064】そして、遊星ローラは、ケーシング内で固定されたローラ支持軸に軸支されているため、太陽ローラの回転によって自転はするが公転することはなく、従って、ケーシング内に充填された潤滑オイルが遊星ローラの公転で攪拌され、遊星ギヤに攪拌抵抗を付与することで第1軸の回転が不安定になるような不都合の発生を確実に抑止することができる。
【0065】また、回転子の公転を低く抑えるとともに、自転速度および公転速度を常に一定にしたため、この回転数を、摩擦力を利用した回転力伝達が安定した最適の値に予め設定しておくことが可能であり、こうすることで第1および2軸間で常に安定した高い伝達効率と高速入力とを得ることができる。
【0066】請求項2記載の発明によれば、変速輪は、中立位置(変速輪のケーシングに対する相対回転速度が0になる回転子の変速輪に対する当接位置)を挟んで一方の側にあるときと他方の側にあるときとで回転方向が逆になるため、変速輪の位置設定を、中立位置を越えて変更することにより回転方向を逆転させることができる。
【0067】そして、この中立位置は、遊星ローラの、太陽ローラおよび環状輪のいずれか一方または双方に対する有効径の寸法比を設計段階で種々変化させることにより、予め任意に設定することが可能であり、用途に応じて変速機を最適のものにすることができる。
【出願人】 【識別番号】599148721
【氏名又は名称】株式会社モートロン
【出願日】 平成11年10月21日(1999.10.21)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外2名)
【公開番号】 特開2001−124166(P2001−124166A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−299288