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【発明の名称】 トロイダル型無段変速機及び変速比無限大無段変速機
【発明者】 【氏名】平野 弘之

【氏名】永原 幹雄

【氏名】川島 啓一

【要約】 【課題】皿バネの大型化を抑制して無段変速機の小型化を推進する。

【解決手段】CVTシャフト1bの両端部にそれぞれ配設された一対の入力ディスク20、21と、これら入力ディスク20、21の間に配設されて、パワーローラ50をそれぞれ挟持する出力ディスク22、22と、入力トルクに応じた軸方向推力を入力ディスク20へ付与するカムローラ24と、無負荷のときに軸方向推力を入力ディスク21へ付与する皿バネ33と、油圧に応じた軸方向推力を入力ディスク21へ付与するピストン31を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力軸の両端部にそれぞれ配設された一対の入力ディスクと、これら入力ディスクの間で同軸的かつ相対回転自在に配設されるとともに、パワーローラをそれぞれ挟持する出力ディスクと、入力トルクに応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する押圧力発生手段と、無負荷のときに軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与するプリロード発生手段と、油圧に応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する油圧力発生手段とを備えたトロイダル型無段変速機において、前記一対の入力ディスクは、一方の入力ディスクに前記押圧力発生手段を配設し、他方の入力ディスクにプリロード発生手段と油圧力発生手段を設けたことを特徴とするトロイダル型無段変速機。
【請求項2】 前記油圧力発生手段は、エンジンに駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプからの作動油を運転状態に応じて調圧した油圧に基づいて、前記入力ディスクへ軸方向推力を付与する駆動手段とを有することを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項3】 前記プリロード発生手段は、無負荷時にパワーローラと入出力ディスクとの間に滑りが生じないように軸方向推力を付与することを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項4】 前記プリロード発生手段は、前記入力ディスクの背面を軸方向へ押圧する皿バネで構成されるとともに、前記駆動手段は、この皿バネの外周で前記入力ディスクの背面を軸方向へ付勢する円環状のピストンを備えたことを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項5】 前記駆動手段は、前記入力ディスクの背面に形成された円環状の油室と、この油室に収装される円環状のピストンを備え、前記プリロード発生手段が、前記油室に収装された弾性部材で構成されたことを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項6】 前記プリロード発生手段は、前記円環状のピストンの端面を基準として、無負荷時の軸方向推力を設定することを特徴とする請求項5に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項7】 前記油圧力発生手段は、運転者のシフト操作が走行状態のときに駆動手段へ油圧を供給する一方、運転者のシフト操作が停車または駐車状態のときには、駆動手段から油圧を排出することを特徴とする請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
【請求項8】 ユニット入力軸にそれぞれ連結されたトロイダル型無段変速機及び一定変速機と、ユニット出力軸に配設されて、トロイダル型無段変速機の出力軸に連結したサンギアと、一定変速機の出力軸に連結したキャリアと、ユニット出力軸に連結したリングギアと、からなる遊星歯車機構と、前記ユニット入力軸からキャリアを介して無段変速機出力部に至る伝達経路の途中に介装された動力循環モードクラッチと、前記遊星歯車機構のうちの2つの回転要素の間に介装された直結モードクラッチと、前記トロイダル型無段変速機から前記サンギア側へ駆動力を伝達する手段とを備えた変速比無限大無段変速機において、前記トロイダル型無段変速機は、入力軸の両端部にそれぞれ配設された一対の入力ディスクと、これら入力ディスクの間で同軸的かつ相対回転自在に配設されるとともに、それぞれパワーローラを挟持する出力ディスクとを備えて、前記一方の入力ディスクには、入力トルクに応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する押圧力発生手段を配設し、他方の入力ディスクには、無負荷のときに軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与するプリロード発生手段に加えて、油圧に応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する油圧力発生手段を設けたことを特徴とする変速比無限大無段変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両などに採用されるトロイダル型無段変速機の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から車両の変速機として、トロイダル型の無段変速機が知られており、例えば、特開平6−174030号公報などが知られている。
【0003】これは、2組のトロイダル変速部を同軸上に配置したダブルキャビティ式で構成されており、入力軸の両端に入力ディスクを配設する一方、これら入力ディスクと対向する2つの出力ディスクを、入力軸の中央部で相対回転自在に支持している。
【0004】そして、これら入出力ディスクの間に配置されたパワーローラを挟持、押圧するために、一方の入力ディスクには、入力トルクに応じた軸方向推力を発生するローディングカム装置が配設され、他方の入力ディスクは皿バネによって軸方向へ付勢される。
【0005】無段変速機へトルクが入力されている間は、ローディングカム装置の推力によって入出力ディスクがパワーローラを挟持、押圧してトルクの伝達を行い、無負荷時には、皿バネからの推力によって入出力ディスクがパワーローラを挟持し、パワーローラの滑りを防いで、トルク伝達状態へ円滑に移行することができる。
【0006】さらに、上記従来例では、ローディングカム装置を覆う油室を形成し、入力ディスクの背面を油圧によっても押圧して、入力トルクに応じた軸方向推力に、入力トルク以外の運転状態に基づく軸方向推力を加えることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のトロイダル型無段変速機では、ローディングカム装置と油圧を備えた入力ディスクからの軸方向推力は、他方の入力ディスクに設けた皿バネを圧縮して一対の入力ディスク間のパワーローラを挟持、押圧するため、ローディングカム装置と油圧に対抗するために皿バネの付勢力を増大する必要があり、皿バネが大型化して無段変速機の小型化を阻害するという問題がある。
【0008】また、上記従来例のトロイダル型無段変速機を用いて、特開平10−205601号公報等に開示されるような変速比無限大無段変速機を構成すると、エンジンとトロイダル型無段変速機は常時結合されており、エンジン始動時では、皿バネの付勢力がスタータ等の負荷となるため、皿バネの大型化によってスタータも大型化する必要が生じたり、始動性が低下する場合があった。
【0009】そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、皿バネの大型化を抑制して無段変速機の小型化を推進するとともに、変速比無限大無段変速機へ採用した場合には、始動時の負荷を低減することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、入力軸の両端部にそれぞれ配設された一対の入力ディスクと、これら入力ディスクの間で同軸的かつ相対回転自在に配設されるとともに、パワーローラをそれぞれ挟持する出力ディスクと、入力トルクに応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する押圧力発生手段と、無負荷のときに軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与するプリロード発生手段と、油圧に応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する油圧力発生手段とを備えたトロイダル型無段変速機において、前記一対の入力ディスクは、一方の入力ディスクに前記押圧力発生手段を配設し、他方の入力ディスクにプリロード発生手段と油圧力発生手段を設ける。
【0011】また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記油圧力発生手段は、エンジンに駆動される油圧ポンプと、この油圧ポンプからの作動油を運転状態に応じて調圧した油圧に基づいて、前記入力ディスクへ軸方向推力を付与する駆動手段とを有する。
【0012】また、第3の発明は、前記第1の発明において、前記プリロード発生手段は、無負荷時にパワーローラと入出力ディスクとの間に滑りが生じないように軸方向推力を付与する。
【0013】また、第4の発明は、前記第2の発明において、前記プリロード発生手段は、前記入力ディスクの背面を軸方向へ押圧する皿バネで構成されるとともに、前記駆動手段は、この皿バネの外周で前記入力ディスクの背面を軸方向へ付勢する円環状のピストンを備える。
【0014】また、第5の発明は、前記第2の発明において、前記駆動手段は、前記入力ディスクの背面に形成された円環状の油室と、この油室に収装される円環状のピストンを備え、前記プリロード発生手段が、前記油室に収装された弾性部材で構成される。
【0015】また、第6の発明は、前記第5の発明において、前記プリロード発生手段は、前記円環状のピストンの端面を基準として、無負荷時の軸方向推力を設定する。
【0016】また、第7の発明は、前記第2の発明において、前記油圧力発生手段は、運転者のシフト操作が走行状態のときに駆動手段へ油圧を供給する一方、運転者のシフト操作が停車または駐車状態のときには、駆動手段から油圧を排出する。
【0017】また、第8の発明は、ユニット入力軸にそれぞれ連結されたトロイダル型無段変速機及び一定変速機と、ユニット出力軸に配設されて、トロイダル型無段変速機の出力軸に連結したサンギアと、一定変速機の出力軸に連結したキャリアと、ユニット出力軸に連結したリングギアと、からなる遊星歯車機構と、前記ユニット入力軸からキャリアを介して無段変速機出力部に至る伝達経路の途中に介装された動力循環モードクラッチと、前記遊星歯車機構のうちの2つの回転要素の間に介装された直結モードクラッチと、前記トロイダル型無段変速機から前記サンギア側へ駆動力を伝達する手段とを備えた変速比無限大無段変速機において、前記トロイダル型無段変速機は、入力軸の両端部にそれぞれ配設された一対の入力ディスクと、これら入力ディスクの間で同軸的かつ相対回転自在に配設されるとともに、それぞれパワーローラを挟持する出力ディスクとを備えて、前記一方の入力ディスクには、入力トルクに応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する押圧力発生手段を配設し、他方の入力ディスクには、無負荷のときに軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与するプリロード発生手段に加えて、油圧に応じた軸方向推力を前記入力ディスクへそれぞれ付与する油圧力発生手段を設ける。
【0018】
【発明の効果】第1の発明は、一対の入力ディスクと対向する一対の出力ディスクがそれぞれパワーローラを挟持してトルクの伝達を行うトロイダル型無段変速機において、入力トルクが加わっているときには、一方の入力ディスクに設けた押圧力発生手段からの軸方向推力と、他方の入力ディスクに設けた油圧力発生手段とプリロード発生手段の軸方向推力が対向してパワーローラの挟持、押圧が行われる。
【0019】無負荷時では、他方の入力ディスクに設けたプリロード発生手段からの軸方向推力のみでパワーローラの挟持、押圧が行われる。
【0020】プリロード発生手段を、例えば、バネなどで構成した場合には、入力トルクが加わっているときに、押圧力発生手段からの軸方向推力によって押圧されるが、油圧力発生手段が押圧力発生手段に対向して軸方向推力を発生するため、プリロード発生手段に過大な軸方向推力が加わるのを防いで耐久性を向上できるとともに、プリロード発生手段が付与する軸方向推力を小さく設定することで、プリロード発生手段の小型化を推進できる。
【0021】また、第2の発明は、油圧力発生手段が、エンジンに駆動される油圧ポンプからの作動油を運転状態に応じて調圧することで、入力トルク以外の運転状態に応じた軸方向推力を付与することができる。
【0022】また、第3の発明は、プリロード発生手段は、無負荷時にパワーローラと入出力ディスクとの間に滑りが生じないような軸方向推力を付与することで、プリロード発生手段の小型化を推進しながらも、円滑にトルクの伝達を行うことができる。
【0023】また、第4の発明は、プリロード発生手段は、入力ディスクの背面を軸方向へ押圧する皿バネで構成される一方、油圧力発生手段の駆動手段が、皿バネの外周で前記入力ディスクの背面を軸方向へ付勢する円環状のピストンを備えたため、円環状のピストンにより押圧力発生手段からの軸方向推力に抗して皿バネが潰れるのを防止し、さらに、パワーローラの挟持、押圧によって入力ディスクが変形するのを抑制することができる。
【0024】また、第5の発明は、入力ディスクの背面に形成された円環状の油室に円環状のピストンを収装し、さらに、弾性部材からなるプリロード発生手段を、油室内に収装したため、油圧力発生手段とプリロード発生手段を一体的に構成することで、外径の増大を防いでトロイダル型無段変速機の小型化を推進することができる。
【0025】また、第6の発明は、油室内に収装されたプリロード発生手段は、環状のピストンの端面を基準として、無負荷時の軸方向推力を設定することができ、無負荷時の軸方向推力を調整する部材を不要にして、部品点数を削減することができる。
【0026】また、第7の発明は、油圧力発生手段が付与する軸方向推力は、運転者のシフト操作が走行状態のときにのみ発生するため、車両の停車中には軸方向推力発生のためにエンジン出力を消費することがなくなって、燃費の向上を図ることができる。
【0027】また、第8の発明は、変速比無限大無段変速機では、ユニット入力軸と、トロイダル型無段変速機の入力軸が常時エンジンと結合しているため、エンジンの始動時には、スタータがトロイダル型無段変速機を回転させる必要があるが、プリロード発生手段を小型化して、無負荷時の軸方向推力を小さなものに設定しておけば、入出力ディスクが挟持するパワーローラの押圧力を小さくすることができるため、エンジン始動時の抵抗を抑制でき、始動性の向上を図ることができる。
【0028】
【実施の形態】以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0029】図1〜図3は、2組のトロイダル変速部2A、2Bを備えたダブルキャビティのトロイダル型無段変速機2を、変速比無限大無段変速機へ適用した一例を示す。
【0030】図1〜図3に示すように、エンジンのクランクシャフト13に連結される変速比無限大無段変速機のユニット入力軸1aに、変速比を連続的に変更可能なトロイダル型無段変速機2と、ギア3a及びギア3bから構成された一定変速機3(減速機)を並列的に配設するとともに、これらの出力軸4、3cをユニット出力軸6側に配設し、これら出力軸4、3cを遊星歯車機構5で連結したもので、トロイダル型無段変速機2の無段変速機出力軸4は、遊星歯車機構5のサンギア5aに、一定変速機3の出力軸3cは動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯車機構5のキャリア5bに連結される。
【0031】無段変速機出力軸4は、ユニット出力軸6と同軸的かつ、相対回転自在に支持され、スプロケット4aとチェーン40を介して無段変速機2の出力スプロケット25と連結されている。
【0032】そして、無段変速機出力軸4の一端は、遊星歯車機構5のサンギア5aに結合する一方、他端は直結モードクラッチ10に結合する。
【0033】ギア3bと結合した一定変速機3の出力軸3cは、ユニット出力軸6と同軸的かつ、相対回転自在に支持され、動力循環モードクラッチ9を介して遊星歯車機構5のキャリア5bに連結されており、遊星歯車機構5のリングギア5cは、変速比無限大無段変速機の出力軸であるユニット出力軸6に結合される。
【0034】ユニット出力軸6の図中左側の端部近傍には、変速機出力ギア7が設けられ、この変速機出力ギア7は、ディファレンシャルギア8のファイナルギア12と歯合し、ディファレンシャルギア8に結合した駆動軸が、所定の総減速比で駆動力が伝達される。
【0035】この変速比無限大無段変速機では、動力循環モードクラッチ9を解放する一方、直結モードクラッチ10を締結してトロイダル型無段変速機2の変速比に応じて駆動力を伝達する直結モードと、動力循環モードクラッチ9を締結する一方、直結モードクラッチ10を解放することにより、トロイダル型無段変速機2と一定変速機3の変速比の差に応じて、変速比無限大無段変速機全体のユニット変速比(ユニット入力軸1aとユニット出力軸6の変速比)を負の値(後進)から正の値(前進)まで無限大(停止状態)を含んでほぼ連続的に制御を行う動力循環モードとを選択的に使用することができる。
【0036】トロイダル型無段変速機2は、図1、図3に示すように、CVTシャフト1b(入力軸)上に同軸的に配置した2組の入力ディスク20、21と1つの出力ディスク22で、パワーローラ50をそれぞれ挟持、押圧するダブルキャビティのハーフトロイダル型で構成され、一定変速機3側に第1トロイダル変速部2Aが、この反対側に第2トロイダル変速部2Bが配置される。
【0037】第1トロイダル変速部2Aの出力ディスク22と、第2トロイダル変速部2Bの出力ディスク22の間には出力スプロケット25が介装され、この出力スプロケット25がチェーン40を介して、ユニット入力軸1a、CVTシャフト1bと平行して配置されたユニット出力軸6の無段変速機出力軸4に形成したスプロケット4aと連結する。
【0038】そして、第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bの入力ディスク20、21はCVTシャフト1bの両端部で対向して配置され、これら入力ディスク20、21の間には、出力ディスク22、22がCVTシャフト1bに対して相対回転自在に支持される。
【0039】出力ディスク22、22は、出力スプロケット25と一体的に結合されるとともに、軸受26、26を介してケーシング11の内周に結合された中間壁27に支持され、出力ディスク22、22は軸方向位置が固定される。
【0040】一方、入力ディスク20、21とCVTシャフト1bは、ボールスプライン28、28によって連結されて、相対的な軸方向変位を許容する一方、回転方向で結合している。
【0041】ユニット入力軸1aは、エンジンのクランクシャフト13に結合されるとともに、油圧ポンプ110と一定変速機3のギア3aを備えている。
【0042】そして、ユニット入力軸1aとCVTシャフト1bは、同軸的に配設されるとともに、入力トルクの大きさに応じて入力ディスクを軸方向へ押圧するローディングカム装置を介して回転方向で結合する。
【0043】ローディングカム装置は、図1において、第1トロイダル変速部2Aの入力ディスク20の背面側に配設されて、ユニット入力軸1aと回転方向で結合するとともに、軸受29を介してCVTシャフト1bで相対回転可能に軸支されたカムフランジ23と、このカムフランジ23と入力ディスク20との間に介装された複数のカムローラ24とから構成される。
【0044】なお、カムフランジ23は、ユニット入力軸1aに形成した一定変速機3のギア3aに設けた孔部と、回転方向で係合する爪部を備えて、回転方向で結合している。
【0045】カムフランジ23と入力ディスク20の対向面には、それぞれ円周方向に所定のカム面が形成されており、ユニット入力軸1aにトルクが加わってカムフランジ23と入力ディスク20が相対的に回転すると、間に介装されたカムローラ24が転動して、第1トロイダル変速部2Aの入力ディスク20を図1の右側へ向けて押圧し、このカムローラ24からの軸方向推力により出力ディスク22との間に介装したパワーローラ50を挟持、押圧して、カムフランジ23と入力ディスク20は入力トルクに応じた位置まで相対回転した後、回転方向で結合する。
【0046】一方、カムフランジ23とCVTシャフト1bとの間に介装された軸受29は、例えば、アンギュラボールベアリング等で構成されて、カムフランジ23がユニット入力軸1aに近接する方向の変位を規制する。
【0047】したがって、カムフランジ23と入力ディスク20の相対回転によってカムローラ24が入力ディスク20を軸方向へ押圧すると、その反力によってカムフランジ23はユニット入力軸1a側に押圧されるが、軸受29によってCVTシャフト1bに係止されるため、カムローラ24が発生した軸方向推力は、カムフランジ23、軸受29、CVTシャフト1bを介して第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21へ伝達される。
【0048】そして、CVTシャフト1bの右側端部に設けた締結部材30、皿バネ33、33を介して第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21を、対向する出力ディスク22へ向けて押圧し、一対の入力ディスク20、21を、CVTシャフト1bを介して軸方向へ変位可能に支持しておくことで、ローディングカム装置からの入力トルクに応じた軸方向推力を等しく分配することができる。
【0049】なお、皿バネ33、33は、無負荷時にパワーローラ50を挟持、押圧するためのプリロードを付与するもので、このプリロードは、無負荷時にパワーローラ50と入出力ディスクの間に滑りが生じない程度の軸方向推力に設定される。
【0050】次に、図3に示すように、CVTシャフト1bの端部に締結されるとともに、皿バネ33を介して第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21へ軸方向推力(プリロード)を付与する締結部材30には、皿バネ33を収装した外周に、油圧によって入力ディスク21を出力ディスク22へ向けて押圧する円環状のピストン31が形成される。
【0051】この締結部材30は、貫通孔30Dに挿通したCVTシャフト1bのネジ部1cと螺合するネジ部を備えて、ケーシング11の開口部を封止するカバー14側には、レンチなどと係合可能な頭部30Bを形成する。
【0052】そして、入力ディスク21の背面と対向する外周には、円環状のピストン31がCVTシャフト1bの軸と平行して突設され、このピストン31の内周には、同じく円環状の凹部30Aが形成される。
【0053】さらに、この凹部30Aと貫通孔30Dの間には、皿バネ33と当接する端面30Cが形成される。
【0054】一方、締結部材30に対向する入力ディスク21の背面には、ピストン31を収装する円環状の油室36を形成するために、円環状の壁部21A、21Bが締結部材30へ向けて突設される。なお、壁部21Aはピストン31の外周と摺接する一方、壁部21Bはピストン31の内周と摺接する。
【0055】油室36に面したピストン31の端面の一部には、圧油を供給する油路32が開口しており、この油路32の他端は、締結部材30の貫通孔30D内周に開口する。
【0056】貫通孔30Dの内周に開口した油路32は、CVTシャフト1bの図中右側の軸端から形成された油路17と連通しており、さらに、この油路17は軸端に設けたシール部材16の内周を介して、カバー14の内部に形成された油路15と連通して、後述する油圧回路から圧油の供給を受け、軸方向へ変位可能な第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21は、油室36に加わる油圧に応じてパワーローラ50を挟持、押圧する軸方向推力を可変制御することができる。
【0057】また、締結部材30の端面30Cと、壁部21Bよりも内周の入力ディスク21の背面との間には、皿バネ33、33が介装されており、皿バネ33の内周には、円筒状のスペーサ34とカラー35が収装される。
【0058】スペーサ34は入力ディスク21の背面と当接可能に形成されて、入力ディスク21の軸方向変位によって皿バネ33、33が押し潰されるのを防止するもので、また、カラー35は、CVTシャフト1bに形成されたボールスプライン28の溝部の端部28Aと端面30Cとの距離を所定値に設定して、皿バネ33、33が入力ディスク21へ付与するプリロード(軸方向推力)を所定の値に設定するものである。
【0059】これら皿バネ33、33の付勢力(すなわち、軸方向推力)によって、ユニット入力軸1aにトルクが加わっていない無負荷状態のときにも、2つの入力ディスク20、21へ軸方向推力を付与し、パワーローラ50を押圧しておき、トルクの伝達に備える。なお、皿バネ33、33から第1トロイダル変速部2Aの入力ディスク20への軸方向推力の伝達は、上記カムローラ24から第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21へ向けた軸方向推力の伝達と逆になり、皿バネ33から締結部材30、CVTシャフト1b、軸受29、カムフランジ23、カムローラ24、そして入力ディスク20へ伝達される。
【0060】なお、図3に示すように、CVTシャフト1bの軸端は、カバー14との間に介装された軸受18で支持されている。そして、油路17が開口した軸端から軸受18側へ作動油が漏れないように、内周に油路を備えたシール部材16が介装される。
【0061】次に、変速比無限大無段変速機の制御を行う油圧回路について、図4を参照しながら詳述する。
【0062】油圧ポンプ110から供給された油圧は、PLソレノイド90からの信号圧に基づいて、プレッシャレギュレータ100が所定の供給圧PLに調整してから、ライン圧回路101へ供給される。
【0063】なお、PLソレノイド90はパイロット圧回路102からのパイロット圧を元圧として信号圧を調圧し、プレッシャレギュレータ100が供給するライン圧PLを制御するもので、PLソレノイド90は、図示しないコントロールユニットからのデューティ比に応じて駆動される。
【0064】ライン圧回路101には、図示しないシフトレバーに応動するマニュアルバルブ60が配設されて、このマニュアルバルブ60の下流には、直結モードクラッチ10及び動力循環モードクラッチ9の締結状態を制御する制御弁93、94が接続される。
【0065】パイロット圧回路102には、直結モードクラッチ10を制御する第1ソレノイド91と、動力循環モードクラッチ9を制御する第2ソレノイド92が配設される。
【0066】第1ソレノイド91は、図示しないコントロールユニットによってデューティ制御され、このデューティ比に応じた信号圧を出力し、直結モードクラッチ10と連通した制御弁93は、この信号圧に応じてマニュアルバルブ60から供給されたライン圧PLを調圧して直結モードクラッチ10の締結、解放及び半クラッチ状態を制御する。
【0067】同様に、第2ソレノイド92は、図示しないコントロールユニットによってデューティ制御され、このデューティ比に応じた信号圧を出力し、動力循環モードクラッチ9と連通した制御弁94は、信号圧に応じてマニュアルバルブ60から供給されたライン圧PLを調圧して動力循環モードクラッチ9の締結、解放及び半クラッチ状態を制御する。
【0068】以上のように構成されて、次に作用について説明する。
【0069】ユニット入力軸1aにトルクが加わると、ローディングカム装置が作動して、カムローラ24からの軸方向推力と、皿バネ33及び油室36からの軸方向推力によって、CVTシャフト1bの両端部に設けた一対の入力ディスク20、21が中央の出力ディスク22へ向けて変位することで、各トロイダル変速部2A、2Bのパワーローラ50が挟持、押圧されてトルクの伝達が行われ、パワーローラ50の傾転角に応じた変速比で出力ディスク22、22が回転して、出力スプロケット25からギア4aを介してユニット出力軸6側へ動力が伝達される。
【0070】ここで、ライン圧PLは、例えば、図5に示すように、エンジン負荷(スロットル開度やアクセルペダル踏み込み量)の大きさに応じて変化するよう制御されるため、締結部材30に形成したピストン31と入力ディスク21との間に画成した油室36にも、このライン圧PLが供給されて、ピストン31及び油室36が、入力ディスク21を出力ディスク22へ向けて押圧する軸方向推力もエンジン負荷の増大に応じて増大することになる。
【0071】すなわち、エンジン負荷と第2トロイダル変速部2Bに生じる軸方向推力(パワーローラ50の押し付け力)の関係は、図6に示すようになり、エンジン負荷(図中スロットル開度)が大きくなると、油室36に供給されるライン圧PLが増大するため、第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21に加わる軸方向推力も増大し、入力ディスク21には、ライン圧PLによる軸方向推力と、皿バネ33による軸方向推力が加わって、パワーローラ50を挟持、押圧してトルクの伝達を行うことになる。
【0072】したがって、ローディングカム装置を備えていない第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21には、従来の皿バネ33に加えて、ピストン31及び油室36が軸方向推力を発生するため、皿バネ33に加わる荷重を低減しながらも、入力ディスク20、21に付与する軸方向推力を可変制御することが可能となって、皿バネ33の小型化を可能にして装置の大型化を防ぎながら、ローディングカム装置からの軸方向推力に対向するピストン31及び油室36を設けたため、皿バネ33がローディングカム装置からの軸方向推力によって押し潰されるのを防いで、耐久性を向上させることが可能となる。
【0073】なお、図6において、皿バネ33の軸方向推力(図中荷重)もスロットル開度の大きさに応じて増大しているが、これは、スロットル開度の増大によりユニット入力軸1aに加わる入力トルクも大きくなるため、ローディングカム装置からの軸方向推力によって皿バネ33、33が圧縮されるためである。
【0074】また、エンジンの停止時、換言すればユニット入力軸1aが停止しているときには、油圧ポンプ110から圧油が供給されていないため、第1及び第2トロイダル変速部2A、2Bに加わる軸方向推力は皿バネ33、33からの軸方向推力のみとなる。
【0075】第2トロイダル変速部2Bの入力ディスク21には、軸方向推力を発生する手段として、皿バネ33に加えてピストン31及び油室36が配設されるため、皿バネ33が発生するプリロード(軸方向推力)を十分小さくしても、ローディングカム装置からの軸方向推力に対向することができる。
【0076】さらに、入力ディスク21には、パワーローラ50を押圧する際に、特に外周部分で倒れ等の変形が発生するが、ピストン31及び油室36を皿バネ33の外周となるように配置したため、油室36からの軸方向推力によって、入力ディスク21の変形も抑制することができる。
【0077】ここで、変速比無限大無段変速機では、ユニット入力軸1a、CVTシャフト1bが常時エンジンと結合しているため、エンジンの始動時には、図示しないスタータがトロイダル型無段変速機2を回転させる必要があるが、皿バネ33を小型化して無負荷時の軸方向推力を小さなものに設定しておけば、入出力ディスクが挟持するパワーローラ50の押圧力を小さくすることができるため、エンジン始動時の抵抗を抑制できる。
【0078】すなわち、図7に示すように、時刻t0でエンジンを始動する際には、トロイダル型無段変速機2全体に加わる軸方向推力(図中押し付け力)は、皿バネ33の軸方向推力のみであり、エンジンの始動に要する負荷を抑制できる。
【0079】エンジンが始動した時刻t0以降は、エンジン回転数の上昇に応じてライン圧PLが増大することで、ピストン31及び油室36からの軸方向推力が加わって、トロイダル型無段変速機2全体に加わる軸方向推力は、図中Aのように立ち上がる。
【0080】そして、時刻t1で、図示しないシフトレバーをNレンジ(あるいはPレンジ)からDレンジへ切り換えると、トロイダル型無段変速機2には入力トルクが加わり、上記ローディングカム装置からの軸方向推力も加わって入出力ディスクがパワーローラ50を挟持する圧力が増大し、トルクの伝達が開始される。
【0081】さらに、時刻t2、t3でアクセルペダルを踏み込むと、入力トルクに応じたカムローラ24からの軸方向推力と、ライン圧PLに応じたピストン31及び油室36からの軸方向推力によって、増大するトルクを確実に伝達して車両を推進する。
【0082】したがって、本発明によるトロイダル型無段変速機を変速比無限大無段変速機へ適用すると、上記皿バネ33の耐久性の向上と小型化に加えて、スタータの大型化を防ぎながらもエンジンの始動性を向上させることが可能となるのである。
【0083】図8は第2の実施形態を示し、前記第1実施形態に示した油室36へのライン圧PLの供給を、マニュアルバルブ60の位置、換言すれば図示しないシフトレバーの位置に応じて行うようにしたもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0084】図8において、直結モードクラッチ10を制御する制御弁93は、マニュアルバルブ60がDレンジのときにのみライン圧回路101と連通する油路96からライン圧PLの供給を受け、動力循環モードクラッチ9を制御する制御弁94は、DレンジまたはRレンジのときにライン圧回路101と連通するシャトル弁95からライン圧PLの供給を受ける。
【0085】このシャトル弁95は、マニュアルバルブ60がRレンジのときにのみライン圧回路101と連通する油路97と、Dレンジのときにのみライン圧回路101と連通する油路96に接続され、油圧の高い方の油路からライン圧PLを制御弁94に供給する。
【0086】また、マニュアルバルブ60は、停止位置であるNレンジまたはPレンジのときには、油路96、97への圧油の供給を停止する。
【0087】そして、入力ディスク21に軸方向推力を付与する油室36とライン圧回路101の間には、上記マニュアルバルブ60下流の油路96、97の油圧に応じてライン圧PLの供給を選択的に行うインヒビタバルブ80が介装される。
【0088】インヒビタバルブ80には、スプール81を付勢するスプリング80Sに対向して、上記油路96、97からライン圧PLを導く油路82、83が接続され、マニュアルバルブ60がDレンジないしRレンジのときには、油路82、83へライン圧PLが供給され、スプール81はスプリング80Sに抗して変位し、油室36へライン圧PLを供給する。
【0089】一方、油路82または83にライン圧PLが供給されないときには、スプール81がスプリング80Sに付勢されて、油室36はドレーンされる。
【0090】したがって、入力ディスク21に軸方向推力を付与する油室36には、DレンジないしRレンジのときにライン圧PLが供給され、NレンジまたはPレンジのときには油室36がドレーンされることになり、エンジンが始動してもシフトレバーが走行位置であるDレンジないしRレンジとなるまでは、油室36にライン圧PLが供給されないため、車両の停止中には、油室36がドレーンされて軸方向推力を発生することがなくなって、燃費の向上を図ることができる。
【0091】この場合の油室36が発生する軸方向推力は、例えば、図7のBに示すように、エンジンが始動した時刻t0では、マニュアルバルブ60がNレンジ(またはPレンジ)にあるため油室36にライン圧PLが供給されず、時刻t1でDレンジに切り換えられてから、初めてライン圧PLが供給され、油室36は皿バネ33と共に軸方向推力を発生する。
【0092】図9は、第3の実施形態を示し、前記第1実施形態の油室36に皿バネ33、33を収装するとともに、ピストン31で皿バネ33を係止するもので、その他の構成は前記第1実施形態と同様である。
【0093】入力ディスク21の背面から突設された壁部21A、21Bと、締結部材30のピストン31で画成された油室36には、一対の皿バネ33、33が収装されており、皿バネ33、33の内周は、壁部21Bの外周に係合する。
【0094】そして、CVTシャフト1bのネジ部1cに螺合する締結部材30は、内周側に形成した端面30Cが、ボールスプライン28の端部28Aに係止するまで締結される。
【0095】そして、ピストン31の端面から油室36に面した入力ディスク21の背面の間隔に応じて、皿バネ33、33が発生するプリロードが設定される。
【0096】なお、突設された環状のピストン31と端面30Cの間には、壁部21Bとの干渉を回避する凹部30Aが、環状の溝として形成される。
【0097】軸方向推力に関しては、前記第1実施形態と同様に、皿バネ33が発生する軸方向推力に加えて、油室36に供給されるライン圧PLに応じた軸方向推力が入力ディスク21に加わり、カムローラ24と対向する皿バネ33に加わる軸方向推力を抑制して、皿バネ33の小型化を推進できるのに加え、皿バネ33のプリロードを設定するための部材、すなわち、図3に示した、スペーサ34、カラー35が不要となるため、部品点数を削減して製造コストを抑制できる。
【0098】また、ピストン31を皿バネ33と対向する位置で一体的に配設できるため、締結部材30の外径を縮小して、トロイダル型無段変速機2の小型化を推進することができるのである。
【0099】なお、上記実施形態では、変速比無限大無段変速機に採用したトロイダル型無段変速機の一例について述べたが、勿論、通常の自動変速機に採用されるトロイダル型無段変速機の場合でも、上記と同様の作用、効果を得ることができる。
【0100】また、無負荷時にプリロードを付与する手段として、皿バネ33を用いた例を示したが、皿バネ33に限定されることはなく、他のバネや弾性部材を用いても良い。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月26日(1999.10.26)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2001−124163(P2001−124163A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−303736