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【発明の名称】 摩擦式変速機
【発明者】 【氏名】広瀬 良行

【要約】 【課題】簡単な構造でありながら各ローラ間の確実な押圧当接状態を得ることができるようにする。

【解決手段】高速軸2と共回りする太陽ローラ4と、太陽ローラ4の回転で中心回りに自転する遊星ローラ5と、内周面が遊星ローラ5の外周面に当接することにより遊星ローラ5の回転で回転する第2軸と一体の環状輪とが設けられ、遊星ローラ5は、ケーシング内のローラ支持軸75回りに回転自在に軸支されているとともに、外周面が太陽ローラ4に当接する大輪ローラ51と外周面が環状輪の内周面に当接する小輪ローラ52とを有し、太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪は、大輪ローラ51と太陽ローラ4との当接位置の母線に対する法線と、小輪ローラ52と環状輪との当接位置の母線に対する法線とが同一直線上に位置するように相互に形状設定されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1軸の軸心回りの回転を変速して摩擦力により第1軸と同心の第2軸に伝達する摩擦式変速機であって、第1軸と同心で共回りする太陽ローラと、この太陽ローラの周りに配されて太陽ローラの回転によって中心回りに自転する遊星ローラと、内周面が遊星ローラの外周面に当接することにより遊星ローラの回転で回転する第2軸と一体の環状輪とが所定のケーシングに設けられ、上記遊星ローラは、上記ケーシング内で固定されたローラ支持軸回りに回転自在に軸支されているとともに、外周面が太陽ローラに当接する第1輪と外周面が環状輪の内周面に当接する第2輪とを有し、上記第1軸とローラ支持軸とは互いに平行に設けられ、上記太陽ローラ、遊星ローラおよび環状輪は、第1輪と太陽ローラとの当接位置の母線の法線と、第2輪と環状輪との当接位置の母線の法線との交点がローラ支持軸内に位置するように相互に形状設定されていることを特徴とする摩擦式変速機。
【請求項2】 第1軸の軸心回りの回転を変速して摩擦力により第1軸と同心の第2軸に伝達する摩擦式変速機であって、第1軸と同心で共回りする太陽ローラと、この太陽ローラの周りに配されて太陽ローラの回転によってローラ支持軸回りに自転するとともに第1軸回りに公転する遊星ローラと、内周面が遊星ローラの外周面に当接する環状輪と、遊星ローラの公転によって上記ローラ支持軸を介して第2軸と同心で共回りする中継円盤が所定のケーシングに設けられ、上記環状輪は第2軸に同心で上記ケーシングに固定され、上記環状輪は、外周面が太陽ローラに当接する第1輪と外周面が環状輪の内周面に当接する第2輪とを有し、上記第1軸とローラ支持軸とは互いに平行に設けられ、上記太陽ローラ、遊星ローラおよび環状輪は、第1輪と太陽ローラとの当接位置の母線の法線と、第2輪と環状輪との当接位置の母線の法線との交点がローラ支持軸内に位置するように相互に形状設定されていることを特徴とする摩擦式変速機。
【請求項3】 上記第1輪と第2輪とは、径寸法が異なっていることを特徴とする請求項1または2記載の摩擦式変速機。
【請求項4】 上記第1軸および第2軸のいずれか一方を入力軸とするとともに他方を出力軸として設定し、上記入力軸に出力軸の方向に向かうスラスト力を発生させる回転源が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の摩擦式変速機。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、入力軸の回転を摩擦力で出力軸に伝達する摩擦式変速機に関するものであり、特に風力発電のようにスラスト力が生じる風車の回転を高速回転に変換するのに適したものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ケーシングに同心で設けられた入力軸と出力軸との間に、入力軸に同心で固定された太陽ローラと、外周面が太陽ローラの外周面に当接した状態で太陽ローラの回りに配された複数の遊星ローラと、内周面が遊星ローラの外周面に当接する外装リングとが介設された摩擦式変速機が知られている。かかる摩擦式変速機にあっては、入力軸の回転が太陽ローラ、遊星ローラおよび外装リングを介して出力軸に伝達され、各ローラおよび外装リングの径比に応じた変速率で出力軸に伝達されることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の上記のような摩擦式変速機にあっては、太陽ローラと遊星ローラとの間および遊星ローラと外装リングとの間の当接による摩擦力で回転力が伝達されるようになっており、各当接部分が互いに押圧状態になっていないと摩擦力が発生しないため、別に押圧手段を設けるなどの各種の方策で押圧状態が維持されるように工夫されているが、いずれも構造的に複雑であり、部品点数の増加や組付け工数の増加が生じるという問題点を有していた。
【0004】本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、簡単な構造でありながら各ローラ間の確実な押圧当接状態を得ることができ、これによって製造コストの低減を図った上で回転力の高い伝達効率を確保することができる摩擦式変速機を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、第1軸の軸心回りの回転を変速して摩擦力により第1軸と同心の第2軸に伝達する摩擦式変速機であって、第1軸と同心で共回りする太陽ローラと、この太陽ローラの周りに配されて太陽ローラの回転によって中心回りに自転する遊星ローラと、内周面が遊星ローラの外周面に当接することにより遊星ローラの回転で回転する第2軸と一体の環状輪とが所定のケーシングに設けられ、上記遊星ローラは、上記ケーシング内で固定されたローラ支持軸回りに回転自在に軸支されているとともに、外周面が太陽ローラに当接する第1輪と外周面が環状輪の内周面に当接する第2輪とを有し、上記第1軸とローラ支持軸とは互いに平行に設けられ、上記太陽ローラ、遊星ローラおよび環状輪は、第1輪と太陽ローラとの当接位置の母線の法線と、第2輪と環状輪との当接位置の母線の法線との交点がローラ支持軸内に位置するように相互に形状設定されていることを特徴とするものである。
【0006】請求項2記載の発明は、第1軸の軸心回りの回転を変速して摩擦力により第1軸と同心の第2軸に伝達する摩擦式変速機であって、第1軸と同心で共回りする太陽ローラと、この太陽ローラの周りに配されて太陽ローラの回転によってローラ支持軸回りに自転するとともに第1軸回りに公転する遊星ローラと、内周面が遊星ローラの外周面に当接する環状輪と、遊星ローラの公転によって上記ローラ支持軸を介して第2軸と同心で共回りする中継円盤が所定のケーシングに設けられ、上記環状輪は第2軸に同心で上記ケーシングに固定され、上記環状輪は、外周面が太陽ローラに当接する第1輪と外周面が環状輪の内周面に当接する第2輪とを有し、上記第1軸とローラ支持軸とは互いに平行に設けられ、上記太陽ローラ、遊星ローラおよび環状輪は、第1輪と太陽ローラとの当接位置の母線の法線と、第2輪と環状輪との当接位置の母線の法線との交点がローラ支持軸内に位置するように相互に形状設定されていることを特徴とするものである。
【0007】請求項1記載の発明によれば、第1軸を回転させると、この回転は、太陽ローラを介して同ローラに当接している遊星ローラの自転に伝達され、この遊星ローラの自転が環状輪に伝達されることにより、環状輪と一体の第2軸に伝達され、第2軸は各ローラの径寸法比に応じた変速率で出力回転する。
【0008】また、請求項2記載の発明によれば、第1軸の回転が遊星ローラに伝達されるまでは請求項1の発明と同様であるが、環状輪がケーシングと一体であることおよびローラ支持軸がケーシングから独立していることにより、遊星ローラは、その自転により環状ローラに誘導されて公転し、この公転が第2軸に伝達されることにより、第2軸は各ローラの径寸法比に応じた変速率で出力回転する。
【0009】そして、請求項1および2記載の発明によれば、各ローラおよび環状輪は、第1輪と太陽ローラとの当接位置の母線の法線と、第2輪と環状輪との当接位置の母線の法線との交点がローラ支持軸内に位置するように形状設定されているため、第1軸から加えられた第2軸に向かうスラスト力は、遊星ローラにおいて太陽ローラからのものと環状輪からのものとがローラ支持軸内で互いに対向する分力として作用し合うことになる。従って、これらの分力は遊星ローラを圧縮させる力として作用し、第1軸のスラスト力は有効に遊星ローラを介した回転力伝達に消費され、高い伝達効率を確保することができる。
【0010】このように、上記各法線の交差位置をローラ支持軸内に位置するように各ローラおよび環状輪を形状設定するだけで、第1軸および第2軸間で回転力の高い伝達効率を得ることができるため、従来のようにローラ間の相互押圧力を高めるために特別の部材を用いるような面倒な対策を採用する必要がなくなり、その分、部品点数の低減化が実現するとともに、組み付け作業も容易になり、製造コストの低減化が実現する。
【0011】請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、上記第1輪と第2輪とは、径寸法が異なっていることを特徴とするものである。
【0012】この発明によれば、遊星ローラの第1輪と第2輪の径寸法比を種々変えることで変速比を所定の範囲内で任意に設定することが可能になる。
【0013】また、同一形状の遊星ローラであっても、第1輪と第2輪の当接側を変更することにより(すなわち遊星ローラをローラ支持軸に直交する方向に180°回して太陽ローラと環状輪との間に装着することにより)、各ローラおよび環状輪の仕様変更を行わなくても変速比を変更することが可能になる。
【0014】請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明において、上記第1軸および第2軸のいずれか一方を入力軸とするとともに他方を出力軸として設定し、上記入力軸に出力軸の方向に向かうスラスト力を発生させる回転源が取り付けられていることを特徴とするものである。
【0015】この発明によれば、入力軸が回転することにより回転源からの出力軸に向かうスラスト力が入力されるため、このスラスト力によって各ローラ間および遊星ローラと環状輪間の押圧当接が確実に行われ、高い回転力伝達効率が得られる。
【0016】
【発明の実施の形態】図1は、本発明に係る摩擦式変速機の第1実施形態を示す一部切欠き分解斜視図であり、図2は、その組立て斜視図である。また、図3は、図2のA−A線断面図であり、図4は、図2のB−B線断面図である。なお、本明細書においては、高速軸(第1軸)2または低速軸(第2軸)3回りの回転軸の回転を公転といい、その他の回転中心回りの回転を自転という。単に回転といったときは、公転および自転のいずれか一方または双方を指すものとする。
【0017】本実施形態の摩擦式の変速機1は、風車8(図2)のように、軸方向に向かうスラスト力を発生させる回転源を採用する場合に好適なものである。
【0018】かかる第1実施形態の変速機1は、図1〜図4に示すように、減速機として用いられるときは出力軸として、増速機として用いられるときは入力軸としての役割を担う高速軸2と、高速軸2と逆の働きを担う低速軸3と、高速軸2と同心で共回りする太陽ローラ4と、太陽ローラ4の周りに配されてその軸心回りの回転により自転する遊星ローラ5と、内周面が遊星ローラ5に当接して高速軸2と同心で回転する、低速軸3と一体の皿体6とがケーシング7に内装されることによって(高速軸2および低速軸3は一部が内装されている)形成されている。
【0019】因みに、図1〜図4に示す変速機1は、低速軸3が入力軸として用いられ、高速軸2が出力軸として用いられるものを示している。
【0020】上記ケーシング7は、平たい筒状を呈した有底の第1ケーシング71と、この第1ケーシング71と対向配置されて相互に固定される略同一形状の第2ケーシング72とからなっている。第1ケーシング71は、環状壁71aとこの環状壁71a一方の側部を閉止した底板71bとからなり、底板71bの中心位置には、スラストベアリング77を介して高速軸2を支持する有底の高速軸支持筒71cが外方に向けて突設されている。この高速軸支持筒71cの底部には、図1に示すように、ケーシング7に内装された高速軸2の先端部を外部に突出させるための挿通孔73が穿設されている。また、環状壁71aの底板71bと反対側の端縁にはフランジ71dが形成され、このフランジ71dにはボルト止め用の止め孔74が穿設されている。
【0021】そして、上記底板71bには、高速軸支持筒71cの孔心を中心とした円軌跡上に周方向等ピッチで上記遊星ローラ5を支持するローラ支持軸75が高速軸2と平行に3本突設されている。
【0022】上記第2ケーシング72は、第1ケーシング71のものに対応した環状壁72a、底板72b、低速軸支持筒72cおよびフランジ72dを備えて構成されている。低速軸支持筒72cの底板には低速軸3を通す挿通孔73が穿設されている。また、フランジ72dには上記第1ケーシング71の止め孔74に対応した止め孔74が穿設され、第1および第2ケーシング71,72のフランジ71d,72dが互いに積層された状態でこれらの止め孔74にボルトを挿通してナットで締結することにより、図2に示すように、第1ケーシング71と第2ケーシング72とが結合されてケーシング7が形成されるようになっている。
【0023】そして高速軸2は、図3に示すように、滑り軸受76およびスラストベアリング77を介して第1ケーシング71の高速軸支持筒71cに軸心回りに回転自在に内嵌されているとともに、低速軸3は、第2ケーシング72の低速軸支持筒72cに滑り軸受76を介して軸心回りに回転自在に内嵌されている。
【0024】上記高速軸2は、図1および図3の右方位置に環状溝21が凹設され、この環状溝21にCリング22が装着されることにより、高速軸2が第1ケーシング71の挿通孔73に挿通された状態でスラストベアリング77と干渉して抜け止めされるようになっている。また、高速軸2の環状溝21より右方位置にはキー溝23が凹設され、このキー溝23によって高速軸2に外嵌された太陽ローラ4が回り止めされるようにしている。
【0025】上記低速軸3は、上記高速軸2より若干径寸法が大きく設定されている。かかる低速軸3の図1〜図3における右方の端部の外周面にはキー溝31が凹設されているとともに、左端部には上記皿体6が低速軸3と同心で一体に固定されている。
【0026】上記太陽ローラ4は、高速軸2のキー溝23の位置に回り止め状態で外嵌されるものであり、図1〜図3に示すように、周面が斜めに先細りに形成された円錐傾斜面41を有している。かかる太陽ローラ4は、高速軸2に密着外嵌するための軸孔42を有し、この軸孔42を高速軸2に外嵌することによって上記キー溝23とキー結合され、太陽ローラ4が軸心回りに共回り可能に高速軸2に結合されるようになっている。
【0027】上記遊星ローラ5は、太陽ローラ4の円錐傾斜面41に当接する大輪ローラ51と、この大輪ローラ51の右面に同心で突設された円錐台状の小輪ローラ52とからなっている。かかる遊星ローラ5は、図3に示すように、底板71bのローラ支持軸75に滑り軸受54を介して摺接状態で嵌入され、これによってローラ支持軸75回りに回転自在に軸支されている。
【0028】かかる遊星ローラ5の大輪ローラ51周面には上記太陽ローラ4の円錐傾斜面41に対応した円錐傾斜面53が形成されているとともに、小輪ローラ52にも先細りに円錐傾斜面55が形成されている。従って、高速軸2が回転すると、この回転は太陽ローラ4の円錐傾斜面41を介して大輪ローラ51の円錐傾斜面53に伝達され、これによって遊星ローラ5はローラ支持軸75回りに逆方向に回転することになる。
【0029】上記皿体6は、図4に示すように、3つの遊星ローラ5の各小輪ローラ52に当接して低速軸3回りに共回りするものであり、中心位置が低速軸3の左端部に一体に固定された円盤61と、この円盤61の周縁部から遊星ローラ5に向かって突設された環状輪62とから構成されている。環状輪62の内周面には、小輪ローラ52の円錐傾斜面55に対応して当接する環状傾斜周面63が形成されている。この環状傾斜周面63は、遊星ローラ5の円錐傾斜面55の回転を摩擦力で受けて皿体6に伝達するためのものである。かかる皿体6は、高速軸2と逆方向に回転する。
【0030】図5は、太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪62間の相対位置関係を説明するための側面視の部分拡大断面図である。図5に示すように、太陽ローラ4の円錐傾斜面41の高速軸2に対する傾斜角度αは、遊星ローラ5における大輪ローラ51の円錐傾斜面53の高速軸2に対する傾斜角度βと等しく角度設定されている。また、同小輪ローラ52の円錐傾斜面55の高速軸2に対する傾斜角度γは、皿体6における環状輪62の低速軸3に対する傾斜角度δと同一に角度設定されているとともに、上記傾斜角度γは上記傾斜角度βと等しく角度設定されている。従って、上記各傾斜角度α、β、γおよびδは全て同一に角度設定されていることになる。但し、円錐母線の傾斜角度αとβおよびγとδの内、いずれか一方に対してクラウニングを施すことにより、形状を凸面とすることができる。
【0031】そして、本発明においては、太陽ローラ4および遊星ローラ5の円錐傾斜面41,53における当接位置の母線中、並びに遊星ローラ5の円錐傾斜面55および環状輪62の環状傾斜周面63の当接位置における母線中に、これら母線と直交する互いに共通の法線Lが存在するように、すなわち、太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪62は、高速軸2と太陽ローラ4との当接位置の母線の法線と、低速軸3と環状輪62との当接位置の母線の法線とが同一直線上に位置するように相互に寸法設定および形状設定されている。
【0032】従って、小輪ローラ52の円錐傾斜面55と環状輪62の環状傾斜周面63との当接位置の母線上には、上記法線Lと交差する点P1が存在するとともに、太陽ローラ4の円錐傾斜面41と大輪ローラ51の円錐傾斜面53との当接位置の母線上にも上記法線Lと交差する点P2が存在するのである。
【0033】3つの遊星ローラ5毎に存在する法線Lは、高速軸2および低速軸3の共通の軸心線L1上であって、太陽ローラ4が位置している高速軸2内の一点(中心点O)で互いに交差することになる。
【0034】このような第1実施形態の変速機1の構成によれば、例えば、回転源として風車8(図2および図3)を採用し、この風車8を低速軸3に装着して低速軸3を入力軸として用いると、風車8の回転は低速軸3および皿体6の環状輪62を介して遊星ローラ5の小輪ローラ52に増速状態で伝達され、この小輪ローラ52のローラ支持軸75回りの回転は大輪ローラ51を介してこれに当接している太陽ローラ4にさらに増速された状態で伝達され、これによって高速軸2は低速軸3に対する所定の増速比で出力回転することになる。
【0035】そして、本発明においては、図5に示すように、太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪62は、高速軸2と太陽ローラ4との当接位置の母線の法線と、低速軸3と環状輪62との当接位置の母線の法線とが同一直線(法線L)上に位置するように相互に寸法設定および形状設定されている。そのため、点P1におけるスラスト力F(風車8が風を受けて低速軸3が高速軸2の方向に向かうことにより生じる)は、点P1から垂下方向に向かう力F1と、上記法線Lの延びる方向に中心点Oに向かう法線方向の力F2とに分力される。
【0036】この点P1で生じた法線方向の力F2は、周方向で等ピッチの三方からそれぞれの法線Lに沿い、それぞれの点P2を通って中心点Oに集中するため、結局それぞれの遊星ローラ5が受けるスラスト力Fは、その分力である法線方向の力F2が高速軸2内の中心点Oで相互に相殺し合った状態になり、太陽ローラ4、遊星ローラ5および皿体6は、ケーシング7内で全体的に力のバランスが良好になることにより、これによって低速軸3から高速軸2への回転力の伝達効率を向上させることが可能になる。
【0037】図6および図7は、第1実施形態の変形形態を示す図であり、図6は、側面視の断面図、図7は、正面視の断面図である。この変形形態の変速機1aは、第1実施形態の遊星ローラ5を、高速軸2に直交する直線回りに180°回して(すなわち表裏逆転させて)太陽ローラ4と環状輪62との間に介設したものであり、そのためにローラ支持軸75の設置位置が先の実施形態の場合より高速軸2寄りの位置に設けられている点、および小輪ローラ52が太陽ローラ4に当接しているとともに大輪ローラ51が環状輪62に当接している点を除いて第1実施形態の変速機1と同一構成である。
【0038】かかる変形形態の変速機1aによれば、ローラ支持軸75の位置を変更してこのローラ支持軸75に表裏逆転させた遊星ローラ5を軸支させるという簡単な操作で、別途遊星ローラ5を形状変更することなく高速軸2と低速軸3との変速比を変更することが可能であり、変速比の異なる2種類の変速機1,1aを安価に製造することができる。
【0039】図8は、本発明に係る変速機の第2実施形態を示す側面視の断面図である。この実施形態の変速機1bは、スラスト力を発生させない回転源を採用する場合に好適なものである。第2実施形態の変速機1bは、図8に示すように、高速軸2にスラスト力発生手段24を介して太陽ローラ4が設けられているとともに、遊星ローラ5が太陽ローラ4回りに公転するよう構成され、この公転が低速軸3に伝達されるように構成されている点が第1実施形態の変速機1と相違している。
【0040】具体的には、上記スラスト力発生手段24は、高速軸2の太陽ローラ4とスラストベアリング77との間に介設された、高速軸2に対して軸方向に正逆移動可能な、太陽ローラ4と高速軸2に対して固定されたフランジ部材25と、このフランジ部材25および太陽ローラ4間に周方向等ピッチで介設された複数の鋼球26とで構成される。フランジ部材25の太陽ローラ4に対する対向面には断面視でV字形状のV字孔27が凹設されるとともに、太陽ローラ4のフランジ部材25に対する対向面にはV字孔27に対応した太陽ローラ4側のV字孔43が凹設されている。
【0041】そして、鋼球26は、これらの互いに対向した各V字孔27,43に嵌め込まれることによってフランジ部材25と太陽ローラ4との間に介設されるようになっている。V字孔27,43は、いずれも最大径寸法が鋼球26の径寸法より若干小さく寸法設定され、これによって鋼球26が各V字孔27,43に嵌め込まれた状態で、フランジ部材25と太陽ローラ4との間には僅かな隙間が形成されるようになっている。
【0042】かかるスラスト力発生手段24の構成によれば、高速軸2が自軸心回りに回転すると、この回転力が鋼球26に伝達されるに際し、鋼球26とV字孔27,43との間で生じる楔作用で高速軸2にスラスト力が発生するため、太陽ローラ4は低速軸3の方向に押圧されることになる。
【0043】また、第2実施形態においては、第1実施形態の皿体6に代えて円盤61のみが低速軸3の端部に同心で固定され、この円盤61に遊星ローラ5を軸心回りに回転自在に軸支するローラ支持軸64が高速軸2に平行に図8の左方に向けて突設されている。かかるローラ支持軸64は、軸支した小輪ローラ52の円錐傾斜面55が太陽ローラ4の円錐傾斜面41に当接するように設置位置が設定されている。
【0044】また、第2実施形態においては、環状輪62は、円盤61と分離された状態でケーシング7の内周面に固定されているとともに、その環状傾斜周面63が大輪ローラ51の円錐傾斜面55に当接するように内径寸法が設定されている。
【0045】また、低速軸3の円盤61側の端部には低速軸支持筒72cの内径寸法より径寸法が大きい環状段差部が設けられ、この環状段差部が低速軸支持筒72cと干渉することによって抜け止めされるとともに、同低速軸支持筒72cの直ぐ外側部分にはCリングが装着され、このCリングが低速軸支持筒72cと干渉することによって低速軸3のケーシング7内への移動が阻止され、これによって円盤61が大輪ローラ51と当接するのを防止するようにしている。
【0046】そして、第2実施形態においても、太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪62は、高速軸2と太陽ローラ4との当接位置の母線の法線と、低速軸3と環状輪62との当接位置の母線の法線とが同一直線上に位置するように相互に寸法設定および形状設定されている点については第1実施形態と同様である。
【0047】第2実施形態の変速機1bによれば、高速軸2の回転は、太陽ローラ4を介して小輪ローラ52に伝達され、この小輪ローラ52のローラ支持軸64回りの自転で大輪ローラ51が環状輪62の環状傾斜周面63を転動することにより遊星ローラ5は高速軸2回りに公転し、この公転がローラ支持軸64を介して円盤61に伝達されることにより、円盤61と一体の低速軸3が回転することになる。
【0048】そして、高速軸2には、フランジ部材25のV字孔27、太陽ローラ4のV字孔43およびこれらV字孔27,43に嵌め込まれる鋼球26からなるスラスト力発生手段24が設けられているため、高速軸2の回転によってスラスト力が発生し、上記法線の共有化とも相俟って太陽ローラ4、遊星ローラ5および環状輪62間の相互の押圧当接状態が確実なものになり、高速軸2の入力回転を高い伝達効率で低速軸3に伝えることが可能になる。
【0049】この実施形態においても、遊星ローラ5を高速軸2に対して垂直なる線回りに180°反転させて装着することにより、高速軸2と低速軸3との間の変速比を変更することができる。
【0050】図9は、本発明の適用例を示す側面視の断面図であり、(イ)は、第1実施形態の変速機1を風力発電機に一体的に適用した適用例、(ロ)は、第2実施形態の変速機1bを電動機に一体的に適用した適用例をそれぞれ示している。
【0051】まず、図9の(イ)に示す適用例では、変速機1の第1ケーシング71に発電機81のケーシング82がボルト止めで直付けされている。また、発電機81のロータ軸83として変速機1の高速軸2が共用されている。かかる構成の発電機81によれば、変速機1の低速軸3に取り付けられた風車8が向かい風を受けて回転すると、この回転は皿体6の環状輪62、小輪ローラ52、大輪ローラ51および太陽ローラ4を介してロータ軸83に所定の増速比で伝達され、ロータの回転で発電されることになる。
【0052】ついで、図9の(ロ)に示す適用例では、変速機1bの第1ケーシング71に電動機84のケーシング85がボルト止めで取り付けられている。また、電動機84の駆動軸86として変速機1bの高速軸2が共用されている。かかる構成の電動機84によれば、ロータの回転による駆動軸86(高速軸2)の回転は、スラスト力発生手段24および太陽ローラ4に伝達され、この太陽ローラ4の回転によって遊星ローラ5は自転しながら公転し、この公転がローラ支持軸64を介して円盤61に伝えられることにより、円盤61と一体の低速軸3が減速状態で出力回転することになる。
【0053】このように、本発明の変速機1,1a,1bを採用すると、変速機をも含めた発電機81や電動機84の全体構造を簡単なものにすることが可能であり、これによって回転力の伝達効率を高めた上で発電機81や電動機84の製造コストの低減化に寄与することができる。
【0054】また、図9の(イ)および(ロ)に示すように、発電機81あるいは電動機84のケーシング82を変速機1,1bのケーシング7に直付けすることにより、環状輪62と遊星ローラ5とで位置決めされた太陽ローラ4に、ロータ軸83または駆動軸86と共用される高速軸2を支持させることが可能になり、これによって変速機1,1bの太陽ローラ4側の高速軸2の軸受構造を簡単なものにすることができるため、変速機1,1bを含めた発電機81あるいは電動機84の構造が全体的に簡単なものになり、部品コストおよび組み付けコストの低減化に寄与することができる。
【0055】上記の実施形態においては、環状輪62の環状傾斜周面63、小輪ローラ52の円錐傾斜面55、大輪ローラ51の円錐傾斜面53および太陽ローラ4の円錐傾斜面41はいずれも高速軸2の軸心に対して同一傾斜角度に設定され、これによって遊星ローラ5の円錐傾斜面55と環状輪62の環状傾斜周面63との当接位置における母線の法線(第1の法線)と、太陽ローラ4の円錐傾斜面41と大輪ローラ51の円錐傾斜面53との当接位置における母線の法線(第2の法線)とが一直線上に位置するようにしているが、こうする代わりに環状輪62の環状傾斜周面63と小輪ローラ52の円錐傾斜面55とは高速軸2に対して同一傾斜角度に設定するとともに、大輪ローラ51の円錐傾斜面53と太陽ローラ4の円錐傾斜面41との同傾斜角度も同一に設定した上で、大輪ローラ51の傾斜角度と、小輪ローラ52の傾斜角度とを異ならせ、こうした上で第1の法線と第2の法線とが交差する点をローラ支持軸75内に位置設定してもよい。こうすることによって、高速軸2から加えられた低速軸3に向かうスラスト力は、遊星ローラ5において太陽ローラ4からのものと環状輪62からのものとがローラ支持軸75内で互いに対向する分力として作用し合うことになり、これらの分力は遊星ローラを圧縮させる力として作用し、高速軸2のスラスト力が有効に遊星ローラ5を介した回転力伝達に消費されることによって回転力の高い伝達効率を確実に得ることができる。
【0056】
【発明の効果】請求項1および2記載の発明によれば、太陽ローラ、遊星ローラおよび環状輪は、遊星ローラの第1輪と太陽ローラとの当接位置の母線に対する法線と、同第2輪と環状輪との当接位置の母線に対する法線とがローラ支持軸内で互いに交差するように寸法設定および形状設定されているため、第1軸から加えられた第2軸に向かうスラスト力は、遊星ローラにおいて太陽ローラからのものと環状輪からのものとがローラ支持軸内で互いに対向する分力として作用し合うことになり、これらの分力は遊星ローラを圧縮させる力として作用し、第1軸のスラスト力が有効に遊星ローラを介した回転力伝達に消費されることによって回転力の高い伝達効率を確実に得ることができる。
【0057】そして、上記各法線の交差位置をローラ支持軸内に位置するように各ローラおよび環状輪を形状設定するだけで、第1軸および第2軸間で回転力の高い伝達効率を得ることができるため、従来のようにローラ間の相互押圧力を高めるべく特別の部材を採用する必要がなくなり、その分、部品点数の低減化が実現するとともに、組み付け作業も容易になり、製造コストの低減化に貢献することが可能になる。
【0058】請求項3記載の発明によれば、第1輪と第2輪との径寸法を異ならせることにより、設計段階において変速比を所定の範囲内で任意に設定することができる。
【0059】また、同一形状の遊星ローラであっても、第1輪と第2輪の当接側を変更することにより(すなわち遊星ローラをローラ支持軸に直交する方向に180°回して装着太陽ローラと環状輪との間に装着することにより)、各ローラおよび環状輪の仕様変更を行わなくても変速比を変更することができる。
【0060】請求項4記載の発明によれば、第1軸および第2軸のいずれか一方を入力軸とするとともに他方を出力軸として設定し、入力軸に出力軸の方向に向かうスラスト力を発生させる回転源を取り付けることにより、入力軸が回転することで回転源からの出力軸に向かうスラスト力が入力されるため、このスラスト力によって各ローラ間および遊星ローラと環状輪間の押圧当接が確実に行われ、高い回転力伝達効率を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】599148721
【氏名又は名称】株式会社モートロン
【出願日】 平成11年10月25日(1999.10.25)
【代理人】 【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司 (外2名)
【公開番号】 特開2001−124161(P2001−124161A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−303182