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【発明の名称】 チェーンテンショナ
【発明者】 【氏名】佐藤 誠二

【氏名】加藤木 貞次

【要約】 【課題】チェーンの張力変化によって往復動するプランジャの追従性の向上を図り、作動性に優れたチェーンテンショナを提供することである。

【解決手段】ハウジング10に形成されたシリンダ室11内にプランジャ17をスライド自在に挿入し、そのプランジャ17に形成されたロッド挿入孔19の開口部内周に雌ねじ20を設ける。スクリューロッド21の外周に形成された雄ねじ22を雌ねじ20にねじ係合する。ロッド挿入孔19内にリターンスプリング28を組込み、そのリターンスプリング28の端部とロッド挿入孔19の閉塞端間にスプリングシート29を組込む。スプリングシート29を鋼球としてリターンスプリング28の線材の線径を太めに設定可能とすると共に、リターンスプリング28が組込まれた室内の油の流動性の向上を図り、チェーンテンショナの作動性の向上を図るようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングに、シリンダ室と、そのシリンダ室の閉塞端部において開口する給油通路とを設け、前記シリンダ室内にスライド自在に挿入されたプランジャに後端面で開口するロッド挿入孔を形成し、そのロッド挿入孔の開口部内周に設けられた雌ねじにスクリューロッドの外周に形成された雄ねじを係合し、前記ロッド挿入孔内にはプランジャとスクリューロッドとを相反する方向に押圧するリターンスプリングを組込み、そのリターンスプリングの端部とロッド挿入孔の閉塞端間にスプリングシートを組込んだチェーンテンショナにおいて、前記スプリングシートを鋼球としたことを特徴とするチェーンテンショナ。
【請求項2】 前記ロッド挿入孔の閉塞端にスプリングシートが嵌合する嵌合凹部を形成した請求項1に記載のチェーンテンショナ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、カム軸駆動用チェーン等のチェーンの張力を一定に保持するチェーンテンショナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図3に示すように、クランク軸1の端部に取付けたスプロケット2とカム軸3の端部に取付けたスプロケット4間にチェーン5をかけ渡して、クランク軸1の回転をカム軸3に伝えるようにしたカム軸駆動用のチェーン伝動機構においては、普通、軸6を中心として揺動自在に支持されたチェーンガイド7にチェーンテンショナAの調整力を付与してチェーン5の張力を一定に保持するようにしている。
【0003】上記チェーンテンショナAは、普通、ハウジング8に形成されたシリンダ室内にプランジャ9をスライド自在に組込み、そのプランジャ9をリターンスプリングにより外方向に押圧し、外方向への突出性が付与されたプランジャ9でチェーンガイド7を押圧してチェーン5に張力を付与し、チェーン5からプランジャ9に付与される押し込み力をプランジャ9の背部に形成された油圧ダンパにより緩衝するようにしている。
【0004】ところで、図3に示すチェーン伝動機構においては、エンジンの停止時に、カム軸3に設けられたカムの停止位置の関係からチェーン5が緊張状態とされる場合がある。このとき、チェーンテンショナAのプランジャ9には押し込み力が付与され、その押し込み力によってプランジャ9が大きく後退するようなチェーンテンショナAであると、エンジンの再始動によりチェーン5に弛みが生じた場合に、プランジャ9は外方向に急激に大きく移動することになり、油圧ダンパの油中に空気が侵入してダンピング特性が低下するおそれがある。
【0005】そのような不都合を解消するため、図4に示すチェーンテンショナAを本件出願人は既に提案している。このチェーンテンショナAは、ハウジング40にシリンダ室41と、そのシリンダ室41の閉塞端部において開口給油通路42とを形成し、上記シリンダ室41内にスライド自在に挿入されたプランジャ43に後端面で開口するロッド挿入孔44を設け、そのロッド挿入孔44の開口部内周に形成された雌ねじ45にスクリューロッド46の外周に設けられた雄ねじ47をねじ係合し、上記雌ねじ45および雄ねじ47をプランジャ43の押し込み力を受ける圧力側フランク48のフランク角が遊び側フランク49のフランク角より大きい鋸歯状としている。
【0006】また、プランジャ43に形成されたロッド挿入孔44とスクリューロッド46に設けられたスプリング収納孔50内にリターンスプリング51を組込んでプランジャ43とスクリューロッド46とを相反する方向に押圧し、上記リターンスプリング51とロッド挿入孔44の閉塞端間にスプリングシート52を組込んでいる。
【0007】上記チェーンテンショナにおいては、エンジンの停止により図3に示すチェーン5が緊張され、そのチェーン5によってプランジャ43が押圧された場合、鋸歯状の雌ねじ45と雄ねじ47の圧力側フランク48によりその押圧力を受けてプランジャ43が押し込まれるのを防止する。このため、エンジンが再始動されてチェーン5に弛みが生じても、その弛み量は小さく、プランジャ43は外方向に大きく移動することがないため、シリンダ室41内の油中に空気が侵入するのを防止することができるという特徴を有する。
【0008】また、プランジャ43が往復動するとき、そのプランジャ43は回転し、その回転はスプリングシート52とロッド挿入孔44の閉塞端との接触部の滑りにより吸収されてリターンスプリング51に伝達されるのが防止されるため、リターンスプリング51にねじれが生じるのを防止することができ、プランジャ43をリターンスプリング51のばね力に影響を受けることなく往復動させることができるという特徴を有する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、図4に示す既に提案したチェーンテンショナにおいては、リターンスプリング51の端部を受けるスプリングシート52が、そのリターンスプリング51の端部内に挿入される軸部53の端部に座板54を形成し、その座板54に球形表面55を設けた構成であり、前記軸部53がスクリューロッド46のスプリング収納孔50内に侵入しない短いものであると、プランジャ43の後退時に、軸部53の端面とスクリューロッド46の端面間にリターンスプリング51の一部が噛み込んでプランジャ43の後退動を阻止するおそれが生じたため、軸部53は、プランジャ43の雌ねじ45がスクリューロッド46の雄ねじ47の先端部にねじ係合する状態においてスプリング収納孔50内に端部が位置する長さとする必要がある。このため、リターンスプリング51を形成する線材の線径は軸部53によって制約を受けて線材径を太く設定することができず、チェーン5の張力変化によって往復動するプランジャ43の追従性を向上させるうえにおいて改善すべき点が残されている。
【0010】また、プランジャ43が押し込まれたとき、スプリング収納孔50内の油は、そのスプリング収納孔50の内周と軸部53の外周間に配置されたリターンスプリング51のコイル部間の狭い通路から雌ねじ45と雄ねじ47のねじ係合部に向けて流れるため、油の流動性が悪く、プランジャ43を円滑に往復動させるうえにおいても改善すべき点が残されている。
【0011】この発明の課題は、チェーンの張力変化によって往復動するプランジャの追従性の向上を図り、作動性に優れたチェーンテンショナを提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、この発明においては、ハウジングに、シリンダ室と、そのシリンダ室の閉塞端部において開口する給油通路とを設け、前記シリンダ室内にスライド自在に挿入されたプランジャに後端面で開口するロッド挿入孔を形成し、そのロッド挿入孔の開口部内周に設けられた雌ねじにスクリューロッドの外周に形成された雄ねじを係合し、前記ロッド挿入孔内にはプランジャとスクリューロッドとを相反する方向に押圧するリターンスプリングを組込み、そのリターンスプリングの端部とロッド挿入孔の閉塞端間にスプリングシートを設けたチェーンテンショナにおいて、前記スプリングシートを鋼球とした構成を採用したのである。
【0013】上記のように、スプリングシートを鋼球とすると、そのスプリングシートとプランジャに形成されたロッド挿入孔の閉塞端の接触部の滑りによってプランジャの回転がリターンスプリングに伝達されるのを防止することができ、リターンスプリングにねじれが生じるのを防止することができる。
【0014】また、スプリングシートを鋼球とすることにより、リターンスプリングを形成する線材の線径に制約を受けることが少ない。このため、その線径を太く設定することができると共に、リターンスプリングのコイル部間を半径方向に油が流動し得るため、油の流動性が良好であり、チェーンの張力変化によって往復動するプランジャの追従性の向上を図ることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図1および図2に基づいて説明する。図1に示すように、ハウジング10にはシリンダ室11と、そのシリンダ室11の閉塞端部において開口する給油通路12とが形成されている。給油通路12には油圧ポンプから吐出される油圧が供給される。
【0016】シリンダ室11内の閉塞端部にはロッドシート13が組込まれている。ロッドシート13は給油通路12とシリンダ室11を連通する通路14を有し、その通路14にチェックバルブ15と、そのチェックバルブ15の開閉量を制限するリテーナ16とが組込まれている。チェックバルブ15は、シリンダ室11内の圧力が給油通路12に供給される油の圧力より大きい場合に通路14を閉じ、逆に、シリンダ11内の圧力が給油通路12の油の圧力より低くなると通路14を開放するようになっている。
【0017】シリンダ室11内にプランジャ17と、そのプランジャ17を外方向に押圧するプランジャスプリング18とが組込まれている。プランジャ17は後端面において開口するロッド挿入孔19が形成されている。ロッド挿入孔19の開口部内周には雌ねじ20が設けられ、その雌ねじ20にスクリューロッド21の外周に形成された雄ねじ22がねじ係合されている。
【0018】雌ねじ20と雄ねじ22のねじ山はプランジャ17が押し込まれた際の押し込み力を受ける圧力側フランク23のフランク角が遊び側フランク24のフランク角より大きい鋸歯状とされ、その鋸歯状ねじ山にプランジャ17がプランジャスプリング18の押圧によって回転しつつ外方に移動するリード角が設けられている。また、圧力側フランク23のフランク角は、プランジャ17に付与される押し込み力が動的荷重の場合に、そのプランジャ17が回転しつつ後退し、静的荷重の場合に、その荷重を受けてプランジャ17の後退動を阻止する大きさに設定されている。
【0019】スクリューロッド21には、先端面で開口するスプリング収納孔25と、そのスプリング収納孔25の閉塞端からスクリューロッド21の後端に貫通する孔26とが設けられている。
【0020】スプリング収納孔25はロッド挿入孔19との間で圧力室27を形成する。その圧力室27には、プランジャ17とスクリューロッド21を相反する方向に押圧するリターンスプリング28が組込まれている。リターンスプリング28の端部とロッド挿入孔19の閉塞端間には、そのリターンスプリング28の端部を受けるスプリングシート29が組込まれている。スプリングシート29は鋼球から成り、そのスプリングシート29はロッド挿入孔19の閉塞端に形成された嵌合凹部30内に嵌合されている。
【0021】上記の構成から成るチェーンテンショナは、ハウジング10をエンジンブロックに取付け、プランジャスプリング18によって外方向への突出性が付与されたプランジャ17により、図3に示すチェーンガイド7を押圧してチェーン5に張力を付与する。
【0022】上記のようなチェーンテンショナの組付け状態において、チェーン5に弛みが生じると、プランジャ17はプランジャスプリング18およびリターンスプリング28の押圧力により回転しつつ外方向に移動してチェーン5の弛みを吸収する。
【0023】プランジャ17の外方向への移動により、シリンダ室11および圧力室27の圧力が低下し、その圧力が給油通路12に供給される油の圧力より低くなると、チェックバルブ15が開放し、給油通路12に供給される油が圧力室27に流れ、その圧力室27から雌ねじ20と雄ねじ22のねじ係合部に流れてシリンダ室11内に流入する。
【0024】一方、チェーン5の張力が増大してプランジャ17が押圧されると、その押圧力はシリンダ室11内および圧力室27内に封入された油によって受けられると共に、雌ねじ20と雄ねじ22の圧力側フランク23により受けられ、プランジャ17は後退しない。上記押圧力がプランジャスプリング18の弾力、リターンスプリング28の弾力および油圧力の合力より強い場合、プランジャ17は回転しつつ後退する。
【0025】このとき、チェックバルブ15は通路14を閉じる状態にあるため、圧力室27の油は雌ねじ20と雄ねじ22のねじ係合部からシリンダ室11内に流入すると共に、そのシリンダ室11内からシリンダ室11とプランジャ17の摺動面間に流れて外部にリークし、プランジャスプリング18の弾力、リターンスプリング28の弾力および油圧力と前記押圧力とが釣り合う位置までプランジャ17はゆっくりと後退し、チェーン5の張力を一定に保持する。
【0026】上記のように、プランジャ17はチェーン5の張力変化によって往復動し、その移動時、プランジャ17は回転するが、その回転は鋼球から成るスプリングシート29と嵌合凹部30の内周の接触部、あるいはスプリングシート29とリターンスプリング28の接触部の滑りにより吸収される。
【0027】このため、プランジャ17の回転はリターンスプリング28に伝達されず、リターンスプリング28にねじれが生じることはない。
【0028】また、スプリングシート29を鋼球によって形成したことにより、リターンスプリング28は線材の線径に制約を受けることが少なくなり、その線径を太く設定することができると共に、プランジャ17の後退時には圧力室27内の油はリターンスプリング28のコイル部間を半径方向に流動して雌ねじ20と雄ねじ22のねじ係合部に流れるため、油の流動性も良好であり、チェーン5の張力変化によって往復動するプランジャ17の追従性の向上を図ることができる。
【0029】なお、エンジンの停止時、カム軸3に設けられたカムの停止位置の関係によりチェーン5が緊張された場合、プランジャ17はチェーン5により押圧されるが、その押圧力は振動を伴わない静的な荷重であるため、上記押圧力は雌ねじ20と雄ねじ22のねじ係合部における圧力側フランク23により受けられ、プランジャ17は後退しない。
【0030】このため、エンジンが再始動されてチェーン5に弛みが生じても、その弛み量はきわめて小さく、プランジャ17は外方向に大きく移動することはない。したがって、シリンダ室11や圧力室27における圧力低下も少ないため、各室11、27に空気が侵入することがなく、ダンピング特性が低下するのを防止することができる。
【0031】図1に示すチェーンテンショナにおいて、プランジャ17に形成された雌ねじ20の面精度は、プランジャ17の作動性に大きな影響を与え、面精度が悪い場合、プランジャ17をスムーズに往復動させることができない。
【0032】雌ねじの形成は、普通、タップによってねじ立てされるが、プランジャ17が図1に示すように袋状であると、タップに充分な長さがとれず、加工抵抗が大きくなって面精度の高い雌ねじの形成がきわめて困難である。
【0033】図2(I)乃至(IV)はねじ部の加工が容易なプランジャ17を示している。図2(I)の(イ)で示すプランジャ17においては、雌ねじ20を有する筒体17aの端部にヘッドキャップ17bを圧入し、そのヘッドキャップ17bの外周に形成された肩部31と筒体17aの端面の衝合部でチェーン5からの荷重を受けるようにしている。この場合、図2(I)の(ロ)で示すように、筒体17aの内周に肩部32を形成してヘッドキャップ17bの端面をその肩部32に衝合してもよい。
【0034】図2(II)の(イ)で示すプランジャ17においては、閉塞端を有する筒状のプランジャ本体17cの開口部内側に雌ねじ20を内周に有するナット部材17dを圧入して、その端面をプランジャ本体17cの内周に形成された肩部33に当接させるようにしている。ナット部材17dの固着をより確実なものとするため、図2(II)の(ロ)では、プランジャ本体17cの開口端を内方に加締め、その加締め片34によってナット部材17dを抜け止めしている。
【0035】図2(III )の(イ)に示すプランジャ17においては、プランジャ17を前部プランジャ17eと雌ねじ20を内周に有する後部プランジャ17fとに分割し、その分割面の外周を溶接して結合一体化している。37は溶接部を示す。前部プランジャ17eと後部プランジャ17fの結合時における心出しを容易とするため、図2(III )の(ロ)では、前部プランジャ17eの端部に設けた小径部35を後部プランジャ17fの端部内周に形成した嵌合孔部36に挿入している。
【0036】さらに、図2(IV)の(イ)で示すプランジャ17においては、雌ねじ20を内周に有する筒体17aの端部にヘッドキャップ17bを挿入して、溶接によりヘッドキャップ17bを固着している。37は溶接部を示す。図2(IV)の(ロ)では、その溶接に代えて、筒体17aの端部を加締めるようにしている。38はその加締め片を示す。
【0037】上記のように、雌ねじ20が形成された部材を筒状とすることにより、ねじ立て用タップに充分に長さをとることができるため、面精度の高い雌ねじ20をきわめて容易に形成することができる。
【0038】
【発明の効果】以上のように、この発明においては、リターンスプリングの端部を受けるスプリングシートを鋼球としたことにより、リターンスプリングを形成する線材の線径を太めに設定することができると共に、そのリターンスプリングを収納する室内の油の流動性の向上を図ることができる。このため、チェーンの張力変化によって往復動するプランジャの追従性が向上し、作動性に優れたチェーンテンショナを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
【出願日】 平成11年10月27日(1999.10.27)
【代理人】 【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二 (外2名)
【公開番号】 特開2001−124159(P2001−124159A)
【公開日】 平成13年5月8日(2001.5.8)
【出願番号】 特願平11−305775