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【発明の名称】 トルクコンバータのロックアップ制御装置
【発明者】 【氏名】野武 久雄

【氏名】若原 龍雄

【要約】 【課題】3回路式トルクコンバータのロックアップ制御圧を、要求に対し正確に制御し得るようにしてショックやスリップを生ずることがないようにする。

【解決手段】ソレノイド23の通電で回路33に信号圧PS が発生し、弁スプール21b,22b が押下される。回路26の作動圧PT が回路27に導入され、オリフィス27a を経て回路7より室6に供給され、オリフィス28a を経て回路29よりクーラ24に向かい冷却された後に潤滑部25に供される。室6からの戻り油は回路30および潤滑部25より排除される。またDレンジ圧PD を元圧として回路12に、信号圧PS に応じたロックアップ制御圧PL が出力され、これがピストン10を右行させてロッアップクラッチ9を締結する。PL を作り出す弁22に対し、PS と同じ向きにコンバータ室入口圧Pinおよび出口圧Pout の双方を作用させ、逆向きにPLを作用させ、Pin,Pout の受圧面積和(A+B)をPL の受圧面積Cと同じにするため、Pin,Pout が室6内のコンバータ圧PC と違っても、また元圧PDが変化しても、クラッチ9の締結力を狙い通りにしてショックを防止し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 入出力要素間で流体伝動により動力伝達が行われるコンバータ室からロックアップクラッチピストンにより区画されたロックアップ制御室を具え、該ロックアップ制御室にロックアップ制御圧を供給することでロックアップクラッチピストンをストロークさせて前記入出力要素間をロックアップし得るようにしたトルクコンバータにおいて、前記ロックアップ制御圧を制御するためのロックアップ制御弁に対し、該ロックアップ制御圧を指令するための信号圧と、前記コンバータ室の入口圧および出口圧を作用させ、該入口圧および出口圧と逆の向きに前記ロックアップ制御圧をフィードバックして作用させ、前記コンバータ室の入口圧および出口圧が作用する受圧面積和を前記ロックアップ制御圧の受圧面積に同じにしたことを特徴とするトルクコンバータのロックアップ制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機の伝動系などに用いられるトルクコンバータのロックアップ制御装置、特にロックアップ制御圧を正確に生じさせるための技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】トルクコンバータは、入力要素(通常はポンプインペラ)によってかき回された作動油を介し出力要素(通常はタービンランナ)を駆動する流体伝動により(コンバータ状態で)動力伝達を行うことを主旨とするため、トルク増大機能およびトルク変動吸収機能を発揮する反面、入出力要素間における相対回転(トルクコンバータのスリップ)で伝動効率が悪くなる。
【0003】そこで今日では、上記のトルク増大機能およびトルク変動吸収機能が不要な運転域で入出力要素間をロックアップ(直結)して伝動効率を向上させ得るようにしたロックアップ式トルクコンバータが多用されている。この種トルクコンバータとしては種々の型式のものが提案されているが、本発明は特に、例えば特開平5−79560号公報に記載されているように、入出力要素間で流体伝動により動力伝達が行われるコンバータ室からロックアップクラッチピストンにより区画されたロックアップ制御室を具え、このロックアップ制御室にロックアップ制御圧を供給することでロックアップクラッチピストンをストロークさせて入出力要素間をロックアップし得るようにした、所謂トルクコンバータ入口回路と、トルクコンバータ出口回路と、ロックアップ制御回路とを有する3回路式ロックアップトルクコンバータを前提とする。
【0004】しかしてこの種トルクコンバータの場合、ロックアップクラッチピストンがロックアップ制御室内のロックアップ制御圧を受けて入出力要素間をロックアップする時、コンバータ室内のコンバータ圧に抗して当該ロックアップを行う必要がある。このためロックアップ制御圧を決定するに際しては、要求されるロックアップクラッチの締結容量に対応した圧力に、コンバータ圧による抗力に対応した圧力を加算した値をもってロックアップ制御圧としなければ要求されるロックアップクラッチの締結容量が得られない。
【0005】従って、ロックアップ制御圧は常にコンバータ圧との関連において制御する必要があるし、この制御が元圧の変化に関係なく正確に行われるようにする必要があり、当該制御に際しては例えば特許第2848393号公報に記載の技術を用いてこれを以下のごとくに行うことが考えられる。つまり、ロックアップ制御圧を制御するためのロックアップ制御弁に対し、目標とするロックアップ制御圧を指令するためのソレノイド圧と、ロックアップ制御圧をフィードバックして作用させると共に、このロックアップ制御圧と同じ向きにコンバータ室の入口圧(または出口圧)を作用させる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかして、コンバータ室には常に作動油が通流しておりその入口圧と出口圧との間には圧力損失が発生し、コンバータ室の入口圧も出口圧もコンバータ室内のコンバータ圧を正確に反映していない。従って、上記のようロックアップ制御弁に対しコンバータ室の入口圧(または出口圧)を作用させるロックアップ制御にあっては、ロックアップ制御圧との差圧でロックアップクラッチの締結力を決定するコンバータ圧が、ロックアップ制御弁に作用させるコンバータ室の入口圧(または出口圧)よりも高かったり低かったりすることに起因し、両者間における圧力差の分だけロックアップクラッチの締結力が要求に対して過不足を生じ、ロックアップクラッチの締結ショックやスリップが発生するという懸念を払拭しきれない。
【0007】請求項1に記載の発明は、同じようにコンバータ室の入口圧や出口圧をロックアップ制御弁に作用させるが、これらとコンバータ圧との間の圧力差によってもロックアップクラッチの締結力が過不足を生ずることのないようにして上記の問題解決を実現したトルクコンバータのロックアップ制御装置を提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この目的のため、請求項1に記載の発明によるトルクコンバータのロックアップ制御装置は、入出力要素間で流体伝動により動力伝達が行われるコンバータ室からロックアップクラッチピストンにより区画されたロックアップ制御室を具え、該ロックアップ制御室にロックアップ制御圧を供給することでロックアップクラッチピストンをストロークさせて前記入出力要素間をロックアップし得るようにしたトルクコンバータにおいて、前記ロックアップ制御圧を制御するためのロックアップ制御弁に対し、該ロックアップ制御圧を指令するための信号圧と、前記コンバータ室の入口圧および出口圧を作用させ、該入口圧および出口圧と逆の向きに前記ロックアップ制御圧をフィードバックして作用させ、前記コンバータ室の入口圧および出口圧が作用する受圧面積和を前記ロックアップ制御圧の受圧面積に同じにしたことを特徴とするものである。
【0009】
【発明の効果】第1発明におけるロックアップ制御装置は、トルクコンバータのロックアップ制御室にロックアップ制御圧を供給することでロックアップクラッチピストンをストロークさせてトルクコンバータ入出力要素間をロックアップする。そして、上記のロックアップ制御圧を制御するに際しロックアップ制御弁は、ロックアップ制御圧を指令するための信号圧と、コンバータ室入口圧および出口圧の双方を作用され、当該入口圧および出口圧と逆の向きにロックアップ制御圧をフィードバックして作用され、これらによる力が釣り合うようロックアップ制御圧の制御を行う。
【0010】ところで、ロックアップ制御弁にコンバータ室入口圧および出口圧の双方を作用させると共に、これら圧力が作用する受圧面積の和を逆向きのロックアップ制御圧の受圧面積と同じにしたため、ロックアップ制御圧の元圧が変化したり、コンバータ室入口圧および出口圧とコンバータ室内におけるコンバータ圧との間に圧力差があっても、ロックアップクラッチの締結力が要求に対して過不足を生ずるようなことがなく、ロックアップクラッチの締結ショックやスリップが発生するという懸念を払拭し得る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は、自動変速機の伝動系に挿置したトルクコンバータに用いるよう構成した本発明の一実施の形態になるロックアップ制御装置で、1は3回路式ロックアップトルクコンバータを示す。このトルクコンバータ1はポンプインペラ(入力要素)1aと、これに対向配置したタービンランナ1b(出力要素)と、ステータ(反力要素)1cとの3要素を有し、ポンプインペラ1aを図の左側におけるエンジン(図示せず)のクランクシャフト2に結合し、タービンランナ1bを図の右側における自動変速機(図示せず)の入力軸3に結合し、ステータ1cを一方向クラッチ4を介しエンジンと逆方向へ回転不能にして中空固定軸5上に置くことにより反力要素として機能可能とする。
【0012】トルクコンバータ1の内部コンバータ室6にトルクコンバータ入口回路7から矢の方向に作動油を供給し、この作動油をトルクコンバータ出口回路8から矢の方向へ排除する。かくて、エンジン駆動されるポンプインペラ1aは内部作動油をかき廻し、これをタービンランナ1bに衝突させた後ステータ1cによる案内下でポンプインペラ1aに戻す。この間ステータ1cによる反力下でタービンランナ1bをトルク増大させつつ回転させることができ、トルクコンバータ1は流体伝動によるコンバータ状態での動力伝達を行うことができる。
【0013】トルクコンバータ1は更に、ポンプインペラ1aおよびタービンランナ1b間を直結(ロックアップ)可能とするためにロックアップクラッチ9を具え、これをロックアップクラッチピストン10の右行により締結する時上記のロックアップを行い得るものとする。ここで、ロックアップクラッチピストン10はコンバータ室6から区画されたロックアップ制御室11を画成するよう摺動自在に嵌合し、ロックアップ制御回路12から室11内へ矢の方向に供給されるロックアップ制御圧PL と、室6内のコンバータ圧PC との差圧に応じた図中右向きの力によりロックアップクラッチ9を締結して、トルクコンバータ入出力要素1a,1b間をロックアップし得るものとする。
【0014】かかるロックアップの制御を行うための油圧回路を次に説明するに、21はトルクコンバータ制御弁、22はロックアップ制御弁、23はロックアップソレノイド、24はオイルクーラ、25は自動変速機の潤滑部をそれぞれ示す。トルクコンバータ制御弁21は、トルクコンバータ1のコンバータ室6に対する作動油通流制御と、オイルクーラ24および潤滑部25への作動油通流制御とを司るもので、ばね21aにより図示の常態位置に弾支されたスプール21bを具える。このスプール21bは、室21cに信号圧PS が供給される時、ばね21aに抗して図示位置から押し下げられた作動位置になる。
【0015】トルクコンバータ制御弁21は、スプール21bが図示の常態位置にある時、トルクコンバータ作動圧PT が供給されている入力回路26をトルクコンバータ入口回路7に通じさせ、並列回路27,28間を相互に連通させ、トルクコンバータ出口回路8をオイルクーラ24の入口部からのオイルクーラ回路29に通じさせるものとする。なお、並列回路27,28内にはそれぞれオリフィス27a,28aを挿置し、回路28は回路27に対して、オリフィス27aよりもトルクコンバータ制御弁21に近い箇所で接続し、回路27はトルクコンバータ入口回路7に接続する。
【0016】トルクコンバータ制御弁21は、スプール21bが図示位置から押し下げられた作動位置にある時、入力回路26を回路27に通じさせ、回路28をオイルクーラ回路29に通じさせ、トルクコンバータ出口回路8を潤滑部25からの潤滑回路30に通じさせるものとする。なお潤滑回路30にはオイルクーラ24の出口部を接続し、オイルクーラ回路29からオイルクーラ24に通流した後の作動油が潤滑部25に供給されるようになす。
【0017】ここで、オイルクーラ回路29および潤滑回路30間にはバイパス弁31を介挿し、これを前者の回路29から後者の回路30への油流を許可し、逆方向への油流を阻止する逆止弁とする。かかる逆止型式のバイパス弁31は、低温時に作動油が高粘度故にオイルクーラ24に通流し難くなってオイルクーラ24の入口側圧力が設定値(開弁圧)以上になった時に開かれ、オイルクーラ24内で行き止まりになっている作動油を潤滑部25に向かわせた後にオイルパンに戻し得るようにする。かくて、低温時に作動油がオイルクーラ24に通流し難くなって潤滑部25への通油量が減少することに伴う変速機の焼損を防止することができる。
【0018】ここでバイパス弁31の開弁圧は以下のごとくに決定する。作動油が高粘度故にオイルクーラ24に通流し難くなって上記の焼損に関する問題を生ずるのは低温時であり、従って、この問題を生じない常温時はバイパス弁31を常閉させておいても上記の作用効果は達成される。それにもかかわらず常温時もバイパス弁31を開き得るようにしておく場合、当該常温時において行われる前記のロックアップ作用中にバイパス弁31が開閉し得ることとなり、ロックアップ作用中にバイパス弁31が開閉すると、回路29を経てコンバータ室6 の内圧(コンバータ圧)PC が変化してロックアップクラッチ9の締結力変化によりショックが生ずる。
【0019】この問題解決のためにバイパス弁31はロックアップが行われる温度域で決して開かれることのないよう構成する。これがため、バイパス弁31の開弁圧を決定する内蔵ばねのセット荷重は、ロックアップが行われる温度域でオイルクーラ24の入口側に発生する圧力によっては決してバイパス弁31が開かれることのないような荷重とする。
【0020】ロックアップ制御弁22は、ロックアップ制御室11内にロックアップ制御圧PL を供給してトルクコンバータ1のロックアップを行うか否かのロックアップ制御と、ロックアップ制御中におけるロックアップ制御圧PL の制御とを司るもので、ばね22aによって図示の常態位置に弾支されたスプール22bを具える。このスプール22bは、室22c(受圧面積D)に信号圧PS を供給される時、ばね22aに抗して図示位置から押し下げられた作動位置になる。
【0021】ロックアップ制御弁22は、スプール22bが図示の常態位置にある時、ロックアップ制御回路12をドレンポート22dに通じさせてロックアップ制御圧PL を消失させ、ロックアップクラッチ9の解放によりトルクコンバータ1を非ロックアップ状態(コンバータ状態)にする。ロックアップ制御弁22は、スプール22bが図示位置から押し下げられた作動位置にある時ロックアップ制御回路12を、自動変速機が前進走行(D)レンジにされている時に発生するDレンジ圧PD を供給されるDレンジ圧回路32に通じさせ、このDレンジ圧PD を元圧としてロックアップ制御回路12にロックアップ制御圧PL を出力することでトルクコンバータ1をロックアップク状態にするものとする。
【0022】ロックアップ制御弁22のスプール22bには更に、段差部22e(受圧面積A),22f(受圧面積B)を設定し、これらにそれぞれ、トルクコンバータ入口回路7内のトルクコンバータ入口圧Pinおよびトルクコンバータ出口回路8内のトルクコンバータ出口圧Pout を図中下向きに(信号圧PS と同じ向きに)作用させると共に、プラグ22g(受圧面積C)を介し逆向きにロックアップ制御圧PL をフィードバックして作用させる。ここで、トルクコンバータ入口圧Pinおよびトルクコンバータ出口圧Pout が作用する段差部22e,22fの受圧面積A,Bは、これら受圧面積の和(A+B)とロックアップ制御圧PL が作用するプラグ22gの受圧面積Cとが同じになるよう決定する。
【0023】段差部22e,22fに作用するトルクコンバータ入口圧Pinおよびトルクコンバータ出口圧Pout だけでスプール22bがばね22aに抗しストロークされることはないが、これら圧力PinおよびPout はこれらと対向する向きにフィードバックされるロックアップ制御圧PL とにより、上記受圧面積の関係(A+B=C)と相まって、元圧であるDレンジ圧PD が変化しても、またトルクコンバータ入口圧Pinおよびトルクコンバータ出口圧Pout がコンバータ圧PC を正確に反映していなくても、ロックアップ制御圧PL とコンバータ圧PC との差圧(ロックアップクラッチ9の締結力)が過不足のない要求通りのものとなるようロックアップ制御圧PL を室22cへの信号圧PS に応じた値に正確に制御する作用をなす。
【0024】以下にその理由を説明するに、ロックアップ制御弁22のスプール22bには、室22c内の信号圧PS による図中下向きの力と、段差部22eに作用するトルクコンバータ入口圧Pinによる図中下向きの力Pin・Aと、段差部22fに作用するトルクコンバータ出口圧Pout による図中下向きの力Pout ・Bと、ロックアップ制御圧PL がプラグ22gを介して図中上向きに作用する力PL ・Cと、ばね22aによる図中上向きの力ばね力Fs とが作用し、ロックアップ制御弁22はこれら力がバランスするよう、つまり次式が成立するようロックアップ制御圧PL を制御する。
s D+Pin・A+Pout ・B=PL ・C+Ps ・・・(1)
【0025】ここで、ロックアップクラッチピストン10によるロックアップクラッチ9の締結力は、上記のようにロックアップ制御弁22により制御されたロックアップ制御圧PL と、コンバータ室6内におけるコンバータ圧PC との差圧ΔPL (=PL −PC )に比例し、当該差圧の関数として表される。ここでトルクコンバータ入口圧Pinおよびトルクコンバータ出口圧Pout がコンバータ圧PC に対してΔP1 ,ΔP2 の差を有し、Pin=PC +ΔP1 であり、Pout =PC −ΔP2 であるとすると、上記(1)式は、s ・D+(PC +ΔP1 )・A+(PC −ΔP2 )・B =PL ・C+Fs ・・・(2)
で表され、コンバータ圧PC で整理するとs ・D+PC ・(A+B)+(ΔP1 ・A−ΔP2 ・B)
=PL ・C+Fs ・・・(3)
と表せる。ここで、受圧面積BをB=A・ΔP1 /ΔP2 ・・・(4)
を満たすように設定しておけば、上記(3)式は、s ・D+PC ・(A+B)=PL ・C+Fs ・・・(5)
となり、ΔP1 ,ΔP2 が消失する。ここで、A+B=Cであるから、上記(5)式は、Ps ・D=(PL −PC )・C+Fs ・・・(6)
となるので、信号圧Ps はPs =(ΔPL ・C+Fs )/D・・・(7)
により決定される。
【0026】なお、上記(4)式については、コンバータ圧PC はコンバータ室を通流する圧力損失により油圧の低下の途中の圧であり、一般的にはトルクコンバータ入口圧Pinと出口圧Pout との平均値と見なし得るから、ΔP1 =ΔP2 であるとして、A=Bと設定して差し支えない。なお、より一層制御の精度を向上させる場合にはトルクコンバータ内部の圧力損失の分布を考慮してΔP1 ,ΔP2 を求めてこれに基いて受圧面積A,Bを設定してもかまわない。またロックアップ制御圧PL の元圧であるDレンジ圧PD が(1)式にはもとと存在しない。従って本実施の形態においては、元圧であるDレンジ圧PD が変化しても、またトルクコンバータ入口圧Pinおよびトルクコンバータ出口圧Pout がコンバータ圧PC を正確に反映しておらずコンバータ圧PC に対しΔP1 ,ΔP2 のような偏差を持っていても、ロックアップ制御圧PL とコンバータ圧PC との差圧(ロックアップクラッチ9の締結力)が過不足のない要求通りのものとなるようロックアップ制御圧PL を室22cへの信号圧PS に応じて正確に制御することができる。
【0027】信号圧PS はロックアップソレノイド23により制御することとする。このロックアップソレノイド23はリニヤソレノイドとし、一定のパイロット圧PP を元圧として供給電流に比例した信号圧PS を回路33に出力し、この信号圧回路33をトルクコンバータ制御弁21の室21cおよびロックアップ制御弁22の室22cに接続する。ここでロックアップソレノイド23への供給電流は、ロックアップクラッチ9の要求される締結容量から上記(7)式で求まる信号圧Ps に対応させて決定する。
【0028】上記実施の形態になるロックアップ制御装置の作用を次に説明する。トルクコンバータ1をロックアップすべきでない運転中は、ロックアップソレノイド23が電流を供給されず、信号圧PS を回路33に出力しない。よって、トルクコンバータ制御弁21のスプール21bが図示の常態位置にあって、入力回路26内のトルクコンバータ作動圧PT をトルクコンバータ入口回路7からトルクコンバータ1のコンバータ室6に供給し、トルクコンバータ出口回路8をオイルクーラ回路29に通じさせてコンバータ室6からの戻り油をオイルクーラ24により冷却した後、潤滑部25の潤滑に供してオイルパンに流下させる。
【0029】ロックアップすべきでない運転中のため信号圧PS が発生しない時は、ロックアップ制御弁22のスプール22bも図示の常態位置にあって、ロックアップ制御回路12がドレンポート22dに連通され、ロックアップ制御圧PL が消失されている。従って、ピストン10がロックアップクラッチ9を締結しないため、ロックアップクラッチ9の解放によりトルクコンバータ1はロックアップされないコンバータ状態で動力伝達を行う。
【0030】トルクコンバータ1をロックアップすべき運転中は、ロックアップソレノイド23が電流を供給されて回路33へ、電流値に比例した信号圧PS を出力するため、トルクコンバータ制御弁21のスプール21bが図示の常態位置から押し下げられた作動位置となり、ロックアップ制御弁22のスプール22bも図示の常態位置から押し下げられた作動位置となる。
【0031】トルクコンバータ制御弁21のスプール21bが上記のように作動位置になることで、入力回路26が回路27に通じ、回路28がオイルクーラ回路29に通じ、トルクコンバータ出口回路8が潤滑回路30に通じる。よって入力回路26のトルクコンバータ作動圧PT が回路27に導入され、回路27へのトルクコンバータ作動圧PT は一方でオリフィス27aを経てトルクコンバータ入口回路7よりトルクコンバータ1のコンバータ室6に供給され、他方でオリフィス28aを経て回路29よりオイルクーラ24に向かい、ここで冷却された後に、潤滑部25の潤滑に供されてオイルパンに流下される。そして、コンバータ室6からの戻り油は潤滑回路30を経て潤滑部25の潤滑に供された後オイルパンに流下される。
【0032】またロックアップ制御弁22は、スプール22bが上記の通り作動位置になることで、Dレンジ圧回路32からのDレンジ圧PD を元圧としてロックアップ制御回路12に、信号圧PS に応じた、つまりロックアップソレノイド23への通電量に対応した締結容量が得られるロックアップ制御圧PL を出力する。このロックアップ制御圧PL はロックアップクラッチピストン10を右行させてロックアップクラッチ9を、ロックアップ制御圧PL に応じた力で締結させ、トルクコンバータ1をロックアップ状態にすることができる。
【0033】このロックアップに際し信号圧Ps は、ロックアップクラッチ9の要求締結容量が得られるような力でロックアップクラッチピストン10をコンバータ圧PCに抗してロックアップクラッチ9に対し押圧するのに必要な圧力値に決定し、当該ロックアップ制御圧PL に対応させてロックアップソレノイド23への供給電流を決定する。ところで本実施の形態においては、ロックアップ制御圧PL を作り出すロックアップ制御弁22に対し上記のごとく、コンバータ室入口圧Pinおよび出口圧Pout の双方を作用させ、これと逆の向きにロックアップ制御圧PL をフィードバックして作用させ、これらによる力が釣り合うようロックアップ制御圧PL の制御を行うよう構成し、更にこれらコンバータ室入口圧Pinおよび出口圧Pout が作用する受圧面積の和(A+B)をロックアップ制御圧PL の受圧面積Cと同じにしたため、コンバータ室入口圧Pinおよび出口圧Pout がコンバータ室6内におけるコンバータ圧PC を正確に反映せず、これとの間に圧力差ΔP1 ,ΔP2 があっても、また元圧であるDレンジ圧PD が変化しても、前記したようにロックアップクラッチ9の締結力が要求に対して過不足を生ずるようなことがなく、ロックアップクラッチ9の締結ショックやスリップが発生するという懸念を払拭し得る。
【0034】加えて本実施の形態においては当該ロックアップ時に上記のごとく、コンバータ室6から回路8への戻り油を潤滑回路30および潤滑部25を順次経てオイルパンに排除するため、コンバータ室6内のコンバータ圧PC を低下させることができ、その分ロックアップ制御圧PL を低く決定してもロックアップクラッチ9の要求締結容量を達成し得る。かようにロックアップ制御圧PL を低くし得ることで、これに耐え得るよう設計する必要のあるトルクコンバータ1の強度を低く抑えることができるとともに、作動油を供給するオイルポンプもそれだけ小容量のものでよくなり、コスト的に有利であるし、オイルポンプの駆動負荷も小さくて燃費の点でも大いに有利である。
【0035】しかも、この目的のためにコンバータ室6から回路8への戻り油をオイルパンに排除するに際し、排除油を潤滑回路30を経て潤滑部25に導き、当該潤滑部25の潤滑に有効利用した後にオイルパンに排除するため、当該排除油が原因で作動油の油量収支が悪化するような事態を回避することができる。
【0036】またオイルクーラ回路29および潤滑回路30間に、前者の回路29から後者の回路30への油流を許可し、逆方向への油流を阻止するバイパス弁31を介挿したから、低温時に作動油が高粘度故にオイルクーラ24に通流し難くなってオイルクーラ24の入口側圧力が開弁圧以上になった時にバイパス弁31が開いて、オイルクーラ24内で行き止まりになっている作動油を潤滑部25に向かわせた後にオイルパンに戻すことができる。これがため、低温時に作動油がオイルクーラ24に通流し難くなってトルクコンバータ1への通油量が減少する傾向になっても、バイパス弁31が開いてトルクコンバータ通油量を所定通りに補償することができ、ロックアップクラッチ9が焼損するのを防止することができる。
【0037】更に、バイパス弁31の開弁圧を前記した通りに定め、バイパス弁31をロックアップが行われる温度域でのオイルクーラ入口側圧力(オイルクーラ回路29内の圧力)では開弁することのないよう構成したため、ロックアップ中にバイパス弁31を閉弁状態に保つことができる。従って、ロックアップ中にバイパス弁が開閉してコンバータ室6内の圧力変化によりロックアップクラッチ9の締結力を変化させるようなことがなく、これが原因でショックが発生するような事態を回避することができる。なお、バイパス弁31をかように閉弁状態に保つ温度域が上記の通り、ロックアップが行われる温度域であるから、そして当該温度域では作動油がオイルクーラ24に通流し得なくなるほど高粘度になることがないから、バイパス弁31を設けたことの前記作用効果が達成されなくなることはない。なお 上述した例では、信号圧と同じ向きにコンバータ室の入口圧および出口圧を作用させたが、これとは逆に、信号圧と同じ向きにロックアップ制御圧をフィードバックし、信号圧と逆向きにコンバータ室の入口圧および出口圧を作用させても構わない。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月18日(1999.10.18)
【代理人】 【識別番号】100059258
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外2名)
【公開番号】 特開2001−116138(P2001−116138A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−295592