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【発明の名称】 産業車両の荷役及び走行制御装置
【発明者】 【氏名】石川 和男

【氏名】谷口 浩之

【要約】 【課題】荷役走行中の加速時に進行側のクラッチ圧を適正な状態に制御し、加速へ転じる際に加速遅れを防止する。

【解決手段】エンジン1の出力は油圧式のクラッチ8,9を備えた変速機3を介して駆動輪5aに伝達される。通常走行時には進行側のクラッチが完全係合状態に保持され、エンジン1がアクセルペダル25の操作量に対応した回転数に制御される。荷役走行時にはエンジン1が荷役作業に対応した回転数に制御され、クラッチが半クラッチ状態に保持されるとともに、アクセルペダル25の操作量に対応した車速となるようにクラッチ圧が制御される。荷役走行時には進行側のクラッチの係合圧力がCPU42によってフィードバック制御される。クラッチの係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力より小さい状態での加速時には、フィードバック制御量に拘らず、クラッチの係合圧力が前記所定圧力以上となるように制御される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの出力をトルクコンバータを介して駆動輪に伝達する油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチを備えた変速機と、前記各クラッチの受圧室内の油圧を増減して係合状態を調整する制御弁と、アクセル操作手段の操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、前記アクセル操作量に対する目標車速設定手段と、前記アクセル操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、エンジンにより駆動される荷役用ポンプと、荷役作業を行うために操作される荷役操作手段の操作量を検出する荷役操作量検出手段と、荷役操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、前記アクセル操作量検出手段及び荷役操作量検出手段の検出信号に基づいて通常走行か荷役走行かを判断する判断手段と、前記判断手段が通常走行と判断した場合は進行側のクラッチを完全係合状態として前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標エンジン回転数に制御し、前記判断手段が荷役走行と判断した場合は荷役操作手段の操作量に基づいて設定した目標エンジン回転数に制御し、かつ進行側のクラッチを半クラッチ状態にするとともに前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標車速となるようにクラッチの係合圧力を制御する制御手段とを備えた産業車両の荷役及び走行制御装置において、前記制御手段は荷役走行時に進行側のクラッチの係合圧力をフィードバック制御するとともに、係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力より小さい状態での加速時には、フィードバック制御量に拘らず係合圧力を前記所定圧力以上となるように前記制御弁を制御する産業車両の荷役及び走行制御装置。
【請求項2】 エンジンの出力をトルクコンバータを介して駆動輪に伝達する油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチを備えた変速機と、前記各クラッチの受圧室内の油圧を増減して係合状態を調整する制御弁と、アクセル操作手段の操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、前記アクセル操作量に対する目標車速設定手段と、前記アクセル操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、エンジンにより駆動される荷役用ポンプと、荷役作業を行うために操作される荷役操作手段の操作量を検出する荷役操作量検出手段と、荷役操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、前記アクセル操作量検出手段及び荷役操作量検出手段の検出信号に基づいて通常走行か荷役走行かを判断する判断手段と、前記判断手段が通常走行と判断した場合は進行側のクラッチを完全係合状態として前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標エンジン回転数に制御し、前記判断手段が荷役走行と判断した場合は荷役操作手段の操作量に基づいて設定した目標エンジン回転数に制御し、かつ進行側のクラッチを半クラッチ状態にするとともに前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標車速となるようにクラッチの係合圧力を制御する制御手段とを備えた産業車両の荷役及び走行制御装置において、前記制御手段が荷役走行中に加速制御を行う際、前記クラッチの係合圧力に少なくとも上限値を設けた産業車両の荷役及び走行制御装置。
【請求項3】 前記制御手段が荷役走行中に加速制御を行う際、前記クラッチの係合圧力に上限値と下限値とを設けた請求項2に記載の産業車両の荷役及び走行制御装置。
【請求項4】 前記下限値は走行抵抗分で減速されて伝達トルクが0となる値に対応する圧力とした請求項3に記載の産業車両の荷役及び走行制御装置。
【請求項5】 前記上限値を、荷役走行中に走行すると考えられる程度の勾配を有する登り坂路での走行抵抗を上回るトルクを発生する圧力とした請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の産業車両の荷役及び走行制御装置。
【請求項6】 前記上限値を荷の重量に対応して変更可能とした請求項5に記載の産業車両の荷役及び走行制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走行用の駆動源と荷役用の駆動源とを一つのエンジンで兼用しているフォークリフト等の産業車両の荷役及び走行制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、フォークリフト等の産業車両では、走行用の駆動源と荷役用の駆動源とを一つのエンジンで兼用している。例えば、トルクコンバータを備えたフォークリフトではエンジンの出力をトルクコンバータ及びクラッチを介して駆動輪に伝達し、エンジンにより荷役用油圧ポンプを駆動するとともに油圧回路を介してリフトシリンダ等の荷役用シリンダを作動させるようになっている。
【0003】そして、フォークリフトを微速走行させるにはエンジンの回転数を下げ、フォークを上昇させる場合にはエンジンの回転数を上げていた。ところが、フォークを上昇させながら微速走行する場合はアクセルペダルを踏みながらクラッチ又はインチングペダルを操作して半クラッチ状態にする必要があり、運転操作が難しく熟練を要した。
【0004】前記の不都合を解消するため、特開平10−151974号公報には、トルクコンバータと油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチとを備えた変速機に、クラッチ用ポンプの吐出圧油を前進クラッチの受圧室へ供給、停止するとともに油圧力を増減する前進時増減速兼後進時制動用クラッチ制御弁と、クラッチ用ポンプの吐出油圧を後進クラッチの受圧室へ供給、停止するとともに油圧力を増減する後進時増減速兼前進時制動用クラッチ制御弁とを設けた装置が開示されている。そして、制御手段は単独荷役と判断すると荷役レバー操作量に基づいたエンジン回転数とし、単独走行(通常走行)と判断するとアクセルペダル操作量に基づいたエンジン回転数とする。また、制御手段は荷役兼走行(荷役走行)と判断すると荷役レバー操作量に基づいたエンジン回転数とし、前記クラッチ制御弁を用いて進行方向側のクラッチの受圧室の油圧力を増減してアクセルペダル操作量に対応した車速となるように増減速制御する。この装置では荷役走行の状態において、運転者はアクセルペダルの操作だけで所望の走行速度でフォークリフトを走行させることができる。
【0005】また、前進時増減速兼後進時制動用クラッチ制御弁及び後進時増減速兼前進時制動用クラッチ制御弁は、対応するクラッチの制御が行われていないときには、低圧力信号を常に入力してクラッチの受圧室内にクラッチが接続しない程度で戻し用ばねを若干圧縮する程度の油圧力を供給するようになっている。これにより前進クラッチと後進クラッチとの応答性を向上するようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】特開平10−151974号公報にはクラッチの係合圧力を伝達力を発生させずに戻しばねを若干圧縮する程度の圧力の最低圧にすることは開示されているが、上限圧やクラッチ圧力の具体的な制御方法については記載がない。
【0007】クラッチ圧をフィードバック制御する場合、目標車速と実車速(測定車速)との差で各制御周期の制御量を設定すると、条件によってはクラッチ圧の上がり過ぎが発生し、車速が急変して運転者に違和感を与えるという問題がある。
【0008】また、荷役作業を行いながら走行する荷役走行の際、進行側のクラッチ圧が走行抵抗と釣り合う駆動力を発生する所定圧力未満では減速、等しければ定速走行、所定圧力を超えると加速となる。そして、荷役走行中に減速から加速に転じる際、フィードバック制御のみで加圧すると、クラッチ圧が前記所定圧力未満では所定圧力に達するまでは減速が続き、加速が開始されるのが遅れるという問題がある。
【0009】本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は荷役走行中の加速時に進行側のクラッチ圧を適正な状態に制御することができる産業車両の荷役及び走行制御装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、エンジンの出力をトルクコンバータを介して駆動輪に伝達する油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチを備えた変速機と、前記各クラッチの受圧室内の油圧を増減して係合状態を調整する制御弁と、アクセル操作手段の操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、前記アクセル操作量に対する目標車速設定手段と、前記アクセル操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、エンジンにより駆動される荷役用ポンプと、荷役作業を行うために操作される荷役操作手段の操作量を検出する荷役操作量検出手段と、荷役操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、前記アクセル操作量検出手段及び荷役操作量検出手段の検出信号に基づいて通常走行か荷役走行かを判断する判断手段と、前記判断手段が通常走行と判断した場合は進行側のクラッチを完全係合状態として前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標エンジン回転数に制御し、前記判断手段が荷役走行と判断した場合は荷役操作手段の操作量に基づいて設定した目標エンジン回転数に制御し、かつ進行側のクラッチを半クラッチ状態にするとともに前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標車速となるようにクラッチの係合圧力を制御する制御手段とを備えた産業車両の荷役及び走行制御装置において、前記制御手段は荷役走行時に進行側のクラッチの係合圧力をフィードバック制御するとともに、係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力より小さい状態での加速時には、フィードバック制御量に拘らず係合圧力を前記所定圧力以上となるように前記制御弁を制御する。
【0011】請求項2に記載の発明では、エンジンの出力をトルクコンバータを介して駆動輪に伝達する油圧式の前進クラッチ及び後進クラッチを備えた変速機と、前記各クラッチの受圧室内の油圧を増減して係合状態を調整する制御弁と、アクセル操作手段の操作量を検出するアクセル操作量検出手段と、前記アクセル操作量に対する目標車速設定手段と、前記アクセル操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、車両の走行速度を検出する車速検出手段と、エンジンにより駆動される荷役用ポンプと、荷役作業を行うために操作される荷役操作手段の操作量を検出する荷役操作量検出手段と、荷役操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、前記アクセル操作量検出手段及び荷役操作量検出手段の検出信号に基づいて通常走行か荷役走行かを判断する判断手段と、前記判断手段が通常走行と判断した場合は進行側のクラッチを完全係合状態として前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標エンジン回転数に制御し、前記判断手段が荷役走行と判断した場合は荷役操作手段の操作量に基づいて設定した目標エンジン回転数に制御し、かつ進行側のクラッチを半クラッチ状態にするとともに前記アクセル操作手段の操作量に対応した目標車速となるようにクラッチの係合圧力を制御する制御手段とを備えた産業車両の荷役及び走行制御装置において、前記制御手段が荷役走行中に加速制御を行う際、前記クラッチの係合圧力に少なくとも上限値を設けた。
【0012】請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、前記制御手段が荷役走行中に加速制御を行う際、前記クラッチの係合圧力に上限値と下限値とを設けた。
【0013】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記下限値は走行抵抗分で減速されて伝達トルクが0となる値に対応する圧力とした。請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記上限値を、荷役走行中に走行すると考えられる程度の勾配を有する登り坂路での走行抵抗を上回るトルクを発生する圧力とした。
【0014】請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記上限値を荷の重量に対応して変更可能とした。請求項1に記載の発明では、アクセル操作量検出手段及び荷役操作量検出手段の検出信号に基づいて、判断手段によって通常走行か荷役走行かが判断される。通常走行時には進行側のクラッチが完全係合状態に保持される。そして、エンジンがアクセル操作手段の操作量に対応した目標エンジン回転数に制御され、産業車両はアクセル操作手段の操作量に対応した車速で走行する。荷役走行時にはエンジンが荷役操作手段の操作量に基づいて設定された目標エンジン回転数に制御され、荷役用の油圧回路に必要な油圧が供給される。また、進行側のクラッチが半クラッチ状態に保持されるとともに、アクセル操作手段の操作量に対応した車速となるように制御弁を介してクラッチの係合圧力が制御される。荷役走行時には進行側のクラッチの係合圧力が制御手段によってフィードバック制御される。そして、クラッチの係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力より小さい状態での加速時には、フィードバック制御量に拘らずクラッチの係合圧力が前記所定圧力以上となるように制御される。従って、加速時の応答遅れが抑制される。
【0015】請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明と同様に、荷役走行時に進行側のクラッチの係合圧力が制御手段によってフィードバック制御される。そして、加速制御時にはクラッチの係合圧力に少なくとも上限値が設けられ、クラッチの係合圧力が上限値を超えないように制御され、過大な加速度の発生が防止される。
【0016】請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の発明において、加速制御を行う際、前記クラッチの係合圧力が上限値と下限値との間に制御される。従って、クラッチ圧が下がり過ぎて加速が円滑に行われなくなるのが抑制される。
【0017】請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記下限値は走行抵抗分で減速されて伝達トルクが0となる値に対応する圧力に設定されるため、加速時に誤って減速となることが回避される。
【0018】請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記上限値が、荷役走行中に走行すると考えられる程度の勾配を有する登り坂路での走行抵抗を上回るトルクを発生する圧力に設定される。従って、登りの坂路においても加速が円滑に行われる。
【0019】請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の発明において、前記上限値が荷の重量に対応して変更される。従って、上限値を一定にした場合と異なり、上限値として常に適正な値を設定でき、走行路が平坦路であっても坂路であっても、クラッチ圧が適正な係合圧力に制御される。
【0020】
【発明の実施の形態】(第1の実施の形態)以下、本発明を産業車両としてのフォークリフトに具体化した第1の実施の形態を図面に従って説明する。
【0021】図1に示すように、エンジン1の出力軸1aはトルクコンバータ2を備えた変速機3に連結され、変速機3は差動装置4を介して駆動輪5aを有する車軸5に連結されている。エンジン1にはエンジンスロットルアクチュエータ(以下、単にスロットルアクチュエータと称す)7が設けられ、スロットルアクチュエータ7の作動によってスロットル開度が調節されてエンジン1の回転数、即ちエンジン1の出力軸1aの回転数が調節される。
【0022】変速機3は入力軸3a及び出力軸3bを備え、入力軸3aに前進クラッチ8及び後進クラッチ9が設けられている。前進クラッチ8及び後進クラッチ9と出力軸3bとの間には図示しないギヤ列がそれぞれ設けられ、各クラッチ8,9及び各ギヤ列を介して入力軸3aの回転が出力軸3bに伝達される。両クラッチ8,9には油圧式のクラッチ、この実施の形態では湿式多板クラッチが使用され、受圧室8a,9a内の油圧力によって係合力が調節可能に、かつ受圧室8a,9a内の油圧力を高めると係合力が大きくなるように構成されている。
【0023】前進クラッチ8及び後進クラッチ9は制御弁としての前進クラッチバルブ10及び後進クラッチバルブ11を介して供給される油圧により受圧室8a,9a内の油圧力が調整される。前進クラッチバルブ10及び後進クラッチバルブ11には圧力制御比例ソレノイド弁が使用され、この実施の形態ではソレノイドへの通電量が0の時に全開で、通電量に比例して開度が小さくなる比例ソレノイド弁が使用されている。即ち、各クラッチバルブ10,11のソレノイドへの通電量が0の時に受圧室8a,9a内の油圧力が最大となって各クラッチ8,9が完全係合の状態となる。また、通電量が大きくなるに従って受圧室8a,9a内の油圧力が低くなって各クラッチ8,9の係合圧力が小さくなり、通電量が所定値を超えると各クラッチ8,9が非係合状態となる。
【0024】変速機3の出力軸3bにはブレーキ12が設けられている。ブレーキ12は出力軸3bと一体回転するディスク12aと、出力軸3bに対して回転不能かつスラスト方向に移動可能に設けられた制動部材としてのブレーキパッド12bとを備えている。ブレーキパッド12bは図示しないばねによりディスク12aに圧接される方向に付勢されて制動のための係合圧を発生させ、ブレーキ用バルブ13を介して受圧室12cに供給される油圧により制動状態が解除されるように構成されている。ブレーキ用バルブ13には電磁弁が使用されている。
【0025】図1ではトルクコンバータ2、変速機3及び各バルブ10,11,13が独立して図示されているが、これら各装置は一つのハウジング内に組み込まれて、オートマチックトランスミッションを構成している。そして、変速機3には図示しない油圧ポンプが組み込まれ、その油圧ポンプの吐出油が図示しない流路及び各バルブ10,11,13を介して各受圧室8a,9a,12cに供給可能に構成されている。前記油圧ポンプはエンジン1の回転時に変速機3に伝達される回転力により駆動されるようになっている。
【0026】エンジン1の出力軸1aには歯車14が一体回転可能に設けられ、磁気ピックアップからなるエンジン回転数センサ15により出力軸1aの回転数が検出される。エンジン回転数センサ15は出力軸1aの回転数に比例したパルス信号を出力する。
【0027】変速機3の入力軸3aには歯車16が一体回転可能に設けられ、変速機3のハウジングにはタービン回転数検出手段としてのタービンセンサ17が設けられている。タービンセンサ17は磁気ピックアップからなり、各クラッチ8,9の入力側の回転数を検出する回転数検出手段を構成する。変速機3の出力軸3bには歯車18が一体回転可能に設けられ、変速機3のハウジングには車速検出手段としての車速センサ19が設けられている。車速センサ19は磁気ピックアップからなり、各クラッチ8,9の出力側の回転数を検出する回転数検出手段としても機能する。歯車16,18は入力軸3aの回転を出力軸3bに伝達する前記ギヤ列の一部を構成している。タービンセンサ17は入力軸3aの回転数に比例したパルス信号を、車速センサ19は出力軸3bの回転数に比例したパルス信号をそれぞれ出力する。
【0028】エンジン1により駆動される荷役用ポンプとしての油圧ポンプ20の吐出側に、フォーク21を昇降させるリフトシリンダ22と、マスト23を傾動させる図示しないティルトシリンダとが図示しない管路等を介して接続されている。リフトシリンダ22にはフォーク21の積載荷重を検出する積載荷重検出手段としての圧力センサ24が設けられている。圧力センサ24はリフトシリンダ22の内部の油圧を検出し、フォーク21の積載荷重に対応した検出信号を出力する。
【0029】運転室の床にはアクセル操作手段としてのアクセルペダル25と、インチングペダル26と、ブレーキペダル27とが設けられている。インチングペダル26は荷役作業を行いながらフォークリフトの微速走行をマニュアル操作で行う際に、クラッチを半クラッチ状態にするために使用するものである。ブレーキペダル27を操作するときは、ブレーキペダル27はインチングペダル26と独立して作動するが、インチングペダル26を操作するときは、途中からインチングペダル26とブレーキペダル27とが連動可能に構成されている。即ち、インチングペダル26はインチング位置に達するまで及びインチング位置においてはブレーキペダル27と独立して移動(操作)されるが、インチング位置を過ぎるとブレーキペダル27がインチングペダル26と一体に移動するようになっている。
【0030】アクセルペダル25の操作量を検出するアクセル操作量検出手段としてのアクセルセンサ28にはアイドルスイッチ付アクセルセンサが使用されている。アイドルスイッチ付アクセルセンサはアクセルペダル25が操作されていないときはオン信号を出力し、アクセルペダル25が操作されているときはその操作量に比例した検出信号を出力する。インチングペダル26の操作量を検出するインチングセンサ29にはアイドルスイッチ付インチングセンサが使用されている。アイドルスイッチ付インチングセンサはインチングペダル26が操作されていないときはオン信号を出力し、インチングペダル26が操作されているときはその操作量に比例した検出信号を出力する。ブレーキペダル27が操作されたか否かはブレーキセンサ30により検出され、ブレーキセンサ30はブレーキペダル27の操作量に対応した検出信号を出力する。
【0031】運転室の前部には前後進切換え操作手段としてのシフトレバー31が設けられている。シフトレバー31の位置を検知するシフトスイッチ32は、シフトレバー31が前進位置F、後進位置R及び中立位置(ニュートラル位置)Nのいずれにあるかを検知し、各位置に対応する信号を出力する。
【0032】運転席には荷役作業の際に操作する荷役操作手段としてのリフトレバー33及びティルトレバー34が設けられている。リフトレバー33は荷役操作量検出手段としてのリフトレバーセンサ35に連結されている。リフトレバーセンサ35はストロークセンサにより構成され、リフトレバー33の操作量に比例した検出信号を出力する。ティルトレバー34には荷役操作量検出手段としてのティルトスイッチ36が設けられている。ティルトスイッチ36はティルトレバー34が中立位置にあるときはオフ信号を、ティルトレバー34が前傾位置あるいは後傾位置に操作されるとオン信号を出力する。
【0033】次に前記スロットルアクチュエータ7、前進クラッチバルブ10、後進クラッチバルブ11及びブレーキ用バルブ13を駆動制御するための電気的構成を説明する。
【0034】制御装置41は、目標車速設定手段、目標エンジン回転数設定手段、判断手段及び制御手段としての中央処理装置(以下、CPUという)42を備えている。制御装置41は読出し専用メモリ(ROM)43、読出し及び書替え可能なメモリ(RAM)44、入力インタフェース45及び出力インタフェース46を備えている。ROM43には荷役作業をせずに走行する通常走行時の制御プログラム、荷役作業をしながら走行する荷役走行(以下、HATと称す)時の制御プログラム等の制御プログラムや、制御プログラムを実行する際に必要な各種データ等が記憶されている。RAM44にはCPU42の演算結果等が一時記憶される。CPU42はROM43に記憶された制御プログラムに基づいて作動する。
【0035】エンジン回転数センサ15、タービンセンサ17、車速センサ19、シフトスイッチ32及びティルトスイッチ36は、入力インタフェース45を介してCPU42に接続されている。圧力センサ24、アクセルセンサ28、インチングセンサ29、ブレーキセンサ30及びリフトレバーセンサ35は図示しないA/D変換器(アナログ・ディジタル変換器)及び入力インタフェース45を介してCPU42に接続されている。
【0036】CPU42は出力インタフェース46及び図示しない駆動回路を介してスロットルアクチュエータ7、前進クラッチバルブ10、後進クラッチバルブ11及びブレーキ用バルブ13にそれぞれ接続されている。
【0037】ROM43にはリフトレバー33の操作量と目標エンジン回転数に対応するスロットル開度、アクセルペダル25の操作量と目標エンジン回転数に対応するスロットル開度との関係を示すマップがそれぞれ記憶されている。両マップは、いずれも操作量がゼロの状態から操作量に比例してスロットル開度が増大し、最大操作量でスロットル開度が全開となる。ROM43にはティルトレバー34が前傾又は後傾位置に操作された際に対応する所定の目標エンジン回転数に対応するスロットル開度が記憶されている。
【0038】ROM43にはHAT時におけるアクセルペダル25の操作量に対する目標車速Vhat の関係を示すマップが記憶されている。目標車速Vhat はアクセルペダル25の操作量(アクセル操作量)が0のとき0で、アクセル操作量に対応して上昇するように設定されている。
【0039】ROM43にはクラッチの係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力Pclini が記憶されている。また、ROM43にはHATでの加速時におけるクラッチ圧の上限値PU及び下限値PLと、荷の重量との関係を示すマップが記憶されている。図6に示すように、マップMはクラッチ圧の下限値PLが荷の重量に関係なく一定で、上限値PUが荷の重量に比例して増加するように設定されている。クラッチ圧の下限値PLは、走行抵抗分で減速されて伝達トルクが0となる値に対応する圧力に設定されている。クラッチ圧の上限値PUは、HAT中に走行すると考えられる程度の勾配を有する登り坂路での走行抵抗を上回るトルクを発生する圧力に設定されている。
【0040】CPU42は前記各センサ15,17,19,24,28,29,30,35、シフトスイッチ32及びティルトスイッチ36の出力信号を入力するとともに、ROM43に記憶された各種制御プログラムに従って動作し、スロットルアクチュエータ7及び各バルブ10,11,13への制御指令信号を出力する。
【0041】CPU42はアクセルセンサ28、リフトレバーセンサ35及びティルトスイッチ36の検出信号に基づいて、通常走行かHATかを判断する。CPU42はリフトレバー33及びティルトレバー34の操作量に基づいて設定した目標エンジン回転数となる荷役対応のスロットル開度(THlift)が、アクセルペダル25の操作量に対応した目標エンジン回転数となるアクセル対応のスロットル開度(THrun )より大きい場合はHATと判断し、そうでなければ通常走行と判断する。
【0042】CPU42は通常走行モードでは進行側のクラッチを完全係合状態として、アクセル対応のスロットル開度THrun となるようにスロットルアクチュエータ7を制御する。進行側のクラッチとはシフトレバー31のシフト位置に対応するクラッチを意味し、シフト位置が前進位置Fであれば前進クラッチ8、シフト位置が後進位置Rであれば後進クラッチ9となる。
【0043】CPU42はHATモードでは荷役操作に必要な油圧を確保できる目標エンジン回転数に対応するスロットル開度となるように、スロットルアクチュエータ7を制御する。また、CPU42はシフトスイッチ32のシフト信号に基づいて、シフトレバー31が操作された進行方向に対応するクラッチを半クラッチ状態とするとともに、アクセルペダル25の操作量に対応した目標車速Vhat となるように、両クラッチバルブ10,11の一方を制御して進行側のクラッチの係合圧力を調整する。クラッチの係合圧力が駆動力となり、駆動力−走行抵抗で加速度が決まり、駆動力−走行抵抗が正の場合は加速、零の場合は定速、負の場合は減速となる。負の最大は走行抵抗での減速である。
【0044】CPU42はクラッチの係合圧力の調整をフィードバック制御により行う。この実施の形態ではCPU42は比例積分制御(PI制御)でフィードバック制御を行う。クラッチ圧力の増分ΔPは、積分ゲインKI 、比例ゲインKP 、車速偏差(目標車速と検出車速との差)e及びその差分Δeから次式によって決まる。
【0045】ΔP=KI ・e+KP ・Δe但し、シフトレバー31が中立位置にあるときは、CPU42は両クラッチ8,9とも非係合状態に保持する電流指令値を両クラッチバルブ10,11に出力し、荷役対応のスロットル開度THlift及びアクセル対応のスロットル開度THrun の大きい方のスロットル開度となるようにスロットルアクチュエータ7を制御する。
【0046】CPU42はHATから通常走行へ移行する際、エンジン回転数が低下して進行側のクラッチの入力側と出力側の回転数の差が所定の範囲になった時に、半クラッチ状態にあるクラッチの係合圧力を上げてクラッチを完全係合させるように制御する。タービンセンサ17はこのときにクラッチの入力側の回転数を検出するために使用される。
【0047】CPU42はHATの際、クラッチの係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力Pclini より小さい状態での加速時には、フィードバック制御量に拘らず係合圧力を前記所定圧力Pclini 以上となるようにクラッチバルブを制御する。CPU42はHATの際の加速時に、クラッチ圧が前記上限値PU及び下限値PLの間となるようにクラッチバルブを制御する。
【0048】次に前記のように構成された装置の作用を説明する。エンジン1はスロットル開度に対応したエンジン回転数で回転される。エンジン1の回転により油圧ポンプ20が駆動され、リフトシリンダ22及びティルトシリンダに作動油が供給可能な状態になる。また、エンジン1の回転は出力軸1a及びトルクコンバータ2を介して変速機3に伝達される。
【0049】シフトレバー31が中立位置に操作された状態では、両クラッチ8,9はそれぞれ非係合状態に保持され、エンジン1の回転は変速機3の出力軸3bに伝達されない。シフトレバー31が前進位置に操作された状態では、前進クラッチ8の受圧室8aの油圧が調整されて前進クラッチ8が係合状態となり、エンジン1の回転が前進クラッチ8を介して出力軸3bに伝達される状態となる。シフトレバー31が後進位置に操作された状態では、後進クラッチ9の受圧室9aの油圧が調整されて後進クラッチ9が係合状態となり、エンジン1の回転が後進クラッチ9を介して出力軸3bに伝達される。
【0050】走行中にブレーキペダル27が操作されたときには、進行側でないクラッチが係合されて、制動力が得られる。CPU42はブレーキペダル27が操作されると、進行側でないクラッチを係合状態とするように対応するクラッチバルブを制御する。当該クラッチの係合圧力はブレーキペダル27の操作量に対応した値となるように制御される。
【0051】ブレーキ12は駐車ブレーキとして使用される。CPU42は車速が停止車速以下の状態で、かつブレーキ操作信号を入力した状態が所定時間(例えば0.5秒程度)以上継続したと判断すると、ブレーキ用バルブ13に制動指令信号を出力する。停止車速とは車速センサ19で零と判断される程度の低速を意味し、例えば秒速数cm程度である。ブレーキ用バルブ13に制動指令信号が出力されると、受圧室12cに油圧が供給されない状態となり、ブレーキパッド12bがばね力によってディスク12aに圧接される制動位置に配置されてブレーキ12が制動状態となる。従って、フォークリフトが停止した状態で自動的にブレーキ12が制動解除状態から制動状態に切り換えられる。アクセルペダル25を踏むと制動状態が解除される。
【0052】インチングペダル26が踏まれてインチング位置に操作された状態ではHAT制御が行われず、進行側のクラッチが半クラッチ状態に保持され、マニュアル操作によるフォークリフトの微速走行が可能となる。
【0053】次に図2〜図4のフローチャートに従ってHAT時の変速制御についてより詳しく説明する。CPU42は図2〜図4のフローチャートの処理を所定周期、例えば10ミリsec 毎に繰り返す。
【0054】CPU42はステップS1でリフトレバー33及びティルトレバー34の操作量に基づいて荷役操作のための目標エンジン回転数に対応する荷役対応のスロットル開度THliftと、アクセルペダル25の操作量に対応した目標エンジン回転数に対応するアクセル対応のスロットル開度THrun とを演算する。即ち、CPU42はリフトレバーセンサ35の出力信号からリフトレバー33の操作量を演算し、マップから対応するスロットル開度を求める。そして、そのスロットル開度とティルトレバー34の位置に対応するスロットル開度とを比較し、大きい方のスロットル開度を荷役対応のスロットル開度THliftとする。また、アクセルセンサ28の出力信号からアクセル操作量を演算し、マップからアクセル対応のスロットル開度THrun を求める。CPU42はステップS1においてアクセル操作量に対する目標エンジン回転数設定手段と、荷役操作量に対する目標エンジン回転数設定手段とを構成する。
【0055】次にCPU42はステップS2でシフトレバー31が中立位置か否かを判断し、中立位置であればステップS3に進む。ステップS3でCPU42はステップS1で演算された両スロットル開度THlift,THrun のうちの大きい方のスロットル開度となるように、スロットルアクチュエータ7に対応する指令信号を出力する。
【0056】ステップS2でシフトレバー31が中立位置でなければ、CPU42はステップS4に進み、両スロットル開度THlift,THrun の大小を比較する。ステップS4で荷役対応のスロットル開度THliftがアクセル対応のスロットル開度THrun より大きければ、CPU42はHATと判断してステップS5に進み、HATカウンタに1加算、即ちHATカウンタをインクリメントする。次にCPU42はステップS6に進み、スロットルアクチュエータ7にスロットル開度THliftとなるように指令信号を出力する。その結果、エンジン回転数が荷役操作に必要な油圧を確保できる回転数となる。CPU42はステップS4において通常走行かHATかを判断する判断手段を構成する。
【0057】次にCPU42はステップS7に進みアクセルセンサ28の出力信号に基づき、アクセルペダル25の操作量に対応した目標車速Vhat を演算する。次いで、CPU42はステップS8で目標車速Vhat と車速センサ19の出力信号に基づく検出車速(実車速)Vsen とから、クラッチ圧力のPI制御を行う。HATでは一般に車速が遅いため、アクセルペダル25の操作量に対応するエンジン回転数に比較して、荷役操作に必要な油圧を確保できるエンジン回転数の方が大きくなる。そのため、進行側のクラッチを半クラッチ状態にするとともに、その係合圧力を調整することにより、所望の車速に制御される。CPU42はステップS7においてアクセル操作量に対する目標車速設定手段を構成する。
【0058】ステップS4でスロットル開度THliftがスロットル開度THrun より大きくなければ、CPU42は通常走行と判断してステップS9へ進み、ステップS9で通常走行モードの制御を行う。即ち、進行側のクラッチを完全係合するようにクラッチバルブへの供給電流指令値を出力し、スロットルアクチュエータ7にアクセル対応のスロットル開度THrun となるように指令信号を出力する。CPU42は通常走行モードの制御を行う場合、HATカウンタをリセット(クリア)する。
【0059】次にステップS8におけるクラッチ圧力のPI制御について図3及び図4に従って詳しく説明する。CPU42はステップS801で今回の制御サイクルでの車速偏差enow を目標車速Vhat と検出車速(実車速)Vsen との差(enow =Vhat −Vsen )で演算する。次にCPU42はステップS802でHATカウンタのカウント値HATcnt が1否かを判断する。カウント値HATcnt が1、即ちHATモードに入って1回目であればCPU42はステップS803に進み、前回の制御サイクルでの車速偏差e oldと今回の制御サイクルでの車速偏差enow との差である車速偏差の変化率Δeを演算するための初期値としてeold =enow を与える。次にCPU42はステップS804に進み、10ミリsec 間の車速偏差の変化率ΔeをΔe=enow −eold によって演算する。ステップS802においてカウント値HATcnt が1でなければ、CPU42は直接ステップS804に進んで車速偏差の変化率Δeを演算する。
【0060】次にCPU42はステップS805でPI制御を行う場合のクラッチ圧力の増分ΔPを、ΔP=KI ・e+KP ・Δeから演算する。積分ゲインKI 及び比例ゲインKP は予め所定の値に設定されている。次にCPU42はステップS806で制御周期(10ミリsec )間のクラッチ圧力増分dtem をステップS805で演算されたΔPに設定する。
【0061】次にCPU42はステップS807へ進み、クラッチ圧力Pclを前回の制御周期のクラッチ圧力Pcl oldと前記クラッチ圧力増分dtem との和として演算する。次にCPU42はステップS808へ進み、クラッチ圧力増分dtem が所定値αより大きく、目標車速Vhat と検出車速Vsen との差が所定速度(例えば1km/h)より大きく、かつクラッチ圧力Pclが所定圧力Pclini より小さいか否かを判断する。そして、三つの条件が満たされていれば、ステップS809に進み、次に出力すべきクラッチ圧力Pclrealを、所定圧力Pclini とクラッチ圧力増分dtem との和として求める。三つの条件が満たされていなければ、CPU42はステップS810に進み、次に出力すべきクラッチ圧力Pclrealを、クラッチ圧力Pclと所定圧力Pclini との和として求める。
【0062】次にCPU42はステップS811に進み、HAT時のクラッチ圧変化に1次のフィルタをかけた後、ステップS812に進み、ステップS812でフィルタ後のクラッチ圧力Pclfil の上限及び下限を設定する。即ち、図6のマップMを使用して、クラッチ圧力Pclfil が下限値PLと上限値PUの間にあればその値をクラッチ圧に設定し、クラッチ圧力Pclfil が下限値PLより小さければ下限値PLに設定し、クラッチ圧力Pclfil が上限値PUより大きければ上限値PUに設定する。
【0063】次にCPU42はステップS813へ進み、シフトレバー31が前進位置に操作されているか否かを判断し、シフトレバー31が前進位置に操作されていればステップS814へ進む。そして、前進クラッチバルブ10にステップS812で設定されたクラッチ圧に対応する指令電流値FIcon を出力する。CPU42はステップS813でシフトレバー31が前進位置に操作されていなければステップS815へ進み、シフトレバー31が後進位置に操作されているか否かを判断する。シフトレバー31が後進位置に操作されていればステップS816へ進み、後進クラッチバルブ11にステップS812で設定されたクラッチ圧に対応する指令電流値RIcon を出力する。ステップS815でシフトレバー31が後進位置に操作されていなければ処理を終了する。
【0064】CPU42はステップS814又はステップS816の処理を終了後、ステップS817へ進み、次回の演算に使用する各値の置き換えを行う。即ち、eoldをenow に、Δe oldをΔe nowに、Pcl oldをPclに置き換える。
【0065】HAT時にクラッチの係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力Pclini より小さい状態から加速に転じる場合、クラッチ圧をPI制御のみで加圧すると、図5(a)に示すように、クラッチ圧が所定圧力Pclini に達するまでは、即ち区間Tでは減速が続く。その結果、加速を開始するのが遅れる。
【0066】しかし、この実施の形態では加速時のクラッチ圧力を設定する際に、PI制御によるクラッチ圧力の増分では、今回の制御周期におけるクラッチ圧力が所定圧力Pclini に達しない場合、ステップS808,S809の存在により、クラッチ圧Pclが所定圧力Pclini より大きな値に設定される。従って、減速状態から加速に転じる際、図5(b)に示すように、クラッチ圧が一気に所定圧力Pclini まで高められ、加速遅れが防止される。所定圧力Pclini は比較的小さいため、クラッチの係合圧力を一気に所定圧力Pclini 以上に高めても、ショックは小さい。
【0067】この実施の形態では以下の効果を有する。
(1) CPU42は、HAT時に進行側のクラッチの係合圧力をフィードバック制御するとともに、係合圧力が走行抵抗と釣り合う所定圧力Pclini より小さい状態での加速時には、フィードバック制御量に拘らず係合圧力を所定圧力Pclini 以上となるようにクラッチバルブを制御する。従って、フィードバック制御のみでクラッチ圧を制御する場合と異なり、加速遅れを防止できる。
【0068】(2) 進行側のクラッチの係合圧力のフィードバック制御をPI制御で行うため、他のフィードバック制御より制御が簡単になる。
(3) CPU42がHAT中に加速制御を行う際、クラッチの係合圧力に上限値PUを設けた。従って、進行側のクラッチ圧が高くなり過ぎることによる過大な加速度の発生を防止できる。
【0069】(4) 上限値PUをHAT中に走行すると考えられる程度の勾配を有する登り坂路での走行抵抗を上回るトルクを発生する圧力とした。従って、登りの坂路であっても、加速が円滑に行われる。
【0070】(5) 上限値PUを荷の重量に対応して変更可能とした。従って、上限値PUを荷の荷重に合わせた適正値に設定することができ、クラッチの係合圧力をより適正な圧力に設定できる。
【0071】(6) CPU42がHAT中に加速制御を行う際、クラッチの係合圧力に下限値PLを設けた。従って、進行側のクラッチ圧が低くなり過ぎて、加速が円滑に行われなくなることが防止される。
【0072】(7) 下限値PLを走行抵抗分で減速されて伝達トルクが0となる値に対応する圧力とした。従って、加速時に減速作用が生じる虞がない。
(8) タービンセンサ17及び車速センサ19は、変速機3に内蔵されたギヤ列を構成する歯車16,18を被検出部として、それぞれクラッチの入力側あるいは出力側の回転数を検出する。従って、入力側あるいは出力側の回転数を検出するための被検出部を新たに設ける必要がない。
【0073】(9) 前進クラッチ8及び後進クラッチ9として湿式の油圧クラッチが使用されているため、半クラッチ状態の使用が頻繁に行われても耐久性が低下し難い。
【0074】なお、実施の形態は前記に限定されるものでなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ クラッチ圧の上限値を荷重と関連して設定する場合、荷の重量を連続的に検出する構成に代えて、荷有りと荷無し、あるいは荷の重量が所定値以上か否かの2段階で設定してもよい。この場合、CPU42にはオン、オフ信号が入力されるため、A/D変換器が不要になりCPU42の制御も簡単になる。
【0075】○ クラッチ圧の上限値を荷重と関係なく一定の値にしてもよい。この場合、荷の重量の検出手段(圧力センサ)が不要になるとともにCPU42の制御も簡単になる。
【0076】○ クラッチ圧の下限値も荷の重量に対応して変更してもよい。
○ ステップS808の判断条件から、クラッチ圧力増分dtem が所定値αより大きいという条件と、目標車速Vhat と検出車速Vsen との差が所定速度(例えば1km/h)より大きいという条件の少なくとも一方をなくしてもよい。
【0077】○ HAT中の加速開始時に、進行側のクラッチ圧が所定圧力Pcl iniより小さいとき、CPU42は1回目の制御周期で先ず進行側のクラッチ圧を所定圧力Pcl iniにする電流指令値を対応するクラッチバルブに出力し、次の制御周期から進行側のクラッチ圧をフィードバック制御するようにする。この場合、1回目の制御周期における電流指令値の演算が簡単になる。
【0078】○ HAT中に加速制御を行う際、クラッチの係合圧力に上限値だけを設けてもよい。また、下限値だけを設けたり、あるいは上限値及び下限値の両方を設けず、HAT中の加速時に、進行側のクラッチ圧が所定圧力Pcl iniより小さい場合に、進行側のクラッチ圧をフィードバック制御量に拘らず所定圧力Pcl ini以上に一気に上昇させるようにしてもよい。
【0079】○ HAT中の加速制御を行う際、進行側のクラッチ圧が所定圧力Pcl iniより小さい場合でも、クラッチ圧の制御をフィードバック制御のみで行い、クラッチ圧を一気に所定圧力Pcl ini以上に上げる制御を行わなくてもよい。
【0080】○ フォークリフトに傾斜角検出手段を設け、路面の傾斜角及び荷の荷重に対応して上限値PUを設定するように構成する。傾斜角検出手段としては例えば、ポテンショメータ式又はトルクバランス式の傾斜角センサが使用される。そして、傾斜角センサをA/D変換器及び入力インタフェース45を介してCPU42に接続し、傾斜角センサの出力信号から路面の傾斜角をCPU42で演算し、傾斜角及び荷の重量に対応した上限値PUを設定する。この場合、より適正なクラッチ圧に制御できる。
【0081】○ ステップS811でクラッチ圧にフィルタをかける場合、1次フィルタに限らず2次フィルタ等他のフィルタをかけてもよい。また、フィルタをかけずにステップS811を省略してもよい。
【0082】○ 圧力制御比例ソレノイド弁としてソレノイドへの通電量が0の時に全閉で、通電量に比例して開度が大きくなる比例ソレノイド弁を使用してもよい。この場合、クラッチバルブに励磁電流が供給されていない状態ではクラッチが非係合状態に保持される。そして、進行側のクラッチと対応するクラッチバルブに励磁電流が供給された状態で進行側のクラッチのみが係合状態となって出力軸に駆動力が伝達される。
【0083】○ ブレーキペダル27が操作されたときの制動力を前進クラッチ8及び後進クラッチ9の同時係合で与える代わりに、ブレーキ12に常用ブレーキの機能を持たせてもよい。例えば、ブレーキ用バルブ13としてクラッチバルブ10,11と同様に圧力制御比例ソレノイド弁を使用し、ブレーキペダル27の操作量に対応した制動力が得られるようにブレーキ用バルブ13を制御する構成とする。
【0084】○ ブレーキ12を省略して、通常の駐車ブレーキと常用ブレーキを設けてもよい。
○ 両クラッチ8,9及びブレーキ12の受圧室8a,9a,12cに油圧を供給する油圧ポンプを変速機3に内蔵する代わりに、リフトシリンダ22に作動油を供給する油圧ポンプ20を利用して、各受圧室8a,9a,12cに油圧を供給する構成としてもよい。
【0085】○ 前後進切換え操作手段はレバーに限らず、前進走行位置、後進走行位置及び中立位置のいずれかを選択できる押しボタンでもよい。シフトスイッチ32は押しボタンで操作される接点となる。
【0086】○ アクセル操作手段はアクセルペダル25に限らず手動で操作されるレバーとしてもよい。
○ 荷役操作手段はリフトレバー33及びティルトレバー34に限らず、フォークリフトの機種によっては他の荷役作業に必要なレバーであってもよい。
【0087】○ 両クラッチ8,9として湿式の油圧クラッチに代えて、乾式の油圧クラッチを使用してもよい。
○ ROM43にリフトレバー33の操作量と目標エンジン回転数に対応するスロットル開度を示すマップ等各種のマップを記憶する代わりに、各マップを作成するのに必要なデータを記憶しておく。そして、制御装置41に電源が供給された時点で、各種のマップを前記データに基づいて設定してRAM44に記憶し、そのマップを使用するようにしてもよい。この場合、各種マップを使用するために必要なROM43の容量が少なくてすむ。
【0088】○ インチングペダル26を省略して、マニュアル操作による微速走行が不能な構成としてもよい。
○ フォークリフトに限らず、荷役作業用の油圧機器を備えた他の産業車両、例えばショベルローダ等に適用してもよい。
【0089】前記実施の形態から把握できる請求項記載以外の発明(技術思想)について、以下にその効果とともに記載する。
(1) 請求項1に記載の発明において、前記フィードバック制御はPI制御である。この場合、他のフィードバック制御に比較して制御が簡単になる。
【0090】
【発明の効果】以上詳述したように請求項1〜請求項6に記載の発明によれば、荷役走行中の加速時に進行側のクラッチ圧を適正な状態に制御することができる。
【0091】請求項1に記載の発明によれば、フィードバック制御のみでクラッチ圧を制御する場合と異なり、減速状態から加速へ転じる際に加速遅れを防止できる。請求項2及び請求項3に記載の発明によれば、進行側のクラッチ圧が高くなり過ぎることによる過大な加速度の発生を防止できる。
【0092】請求項3に記載の発明によれば、進行側のクラッチ圧が低くなり過ぎて、加速が円滑に行われなくなることが防止される。請求項4に記載の発明によれば、加速時に減速作用が生じる虞がない。
【0093】請求項5に記載の発明によれば、登りの坂路であっても、加速が円滑に行われる。請求項6に記載の発明によれば、クラッチ圧の上限値を荷の荷重に合わせた適正値に設定することができ、クラッチの係合圧力をより適正な圧力に設定できる。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成11年10月18日(1999.10.18)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【公開番号】 特開2001−116128(P2001−116128A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−294791