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【発明の名称】 チェーン駆動装置
【発明者】 【氏名】関 竜達

【要約】 【課題】部品点数の増加や、取付作業工程の増加を招くことなく、互いに交差するチェーンにチェーンガイド機能を付与する。

【解決手段】スプロケット13Lとクランクスプロケット7との間のチェーン6Lの走行軌道と、右側インテークカムスプロケット10Rとスプロケット13Rとの間のチェーン6Rの走行軌道とは交差し、この交差する位置の上方で、中央部チェーンガイド24と右上部チェーンガイド27とは一体に形成され一体チェーンガイド30として配設されている。また、一体チェーンガイド30は、2つの取付孔31,32を有し、チェーン軌道から離れた方の取付孔32をチェーン6Rの走行軌道に沿った長孔形状に形成して、取付誤差の吸収を図り、チェーン軌道との平行度を確実かつ容易に確保できるようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 2次平面的に交差する少なくとも2つのチェーンを備えたチェーン駆動装置において、上記2つのチェーンが交差する位置の近傍に、該2つのチェーンに対するチェーンガイドを一体に形成し配設したことを特徴とするチェーン駆動装置。
【請求項2】 上記チェーンガイドは、上記2つのチェーンに対する接触力を、上記チェーンガイドでガイドする上記各チェーンの軌道長さに応じて調整自在であることを特徴とする請求項1記載のチェーン駆動装置。
【請求項3】 上記チェーンガイドは、2つの取付孔を有し、該2つの取付孔の一方を上記2つのチェーンのどちらか一方の走行軌道方向に沿った長孔形状に形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のチェーン駆動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に、車両エンジンのカムシャフトを所定のタイミングで回転させる動力伝達装置として用いられるチェーン駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、車両のエンジンにおいては、クランクシャフトからの動力で所定のタイミングでカムシャフトを回転駆動させるのに、信頼性が高く、構造も簡単なことからチェーン駆動が採用されることが多い。
【0003】通常、このようなチェーン駆動装置では、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきの防止、或いはチェーンへのテンション付加等を行うためにチェーンガイドがチェーン軌道に沿って配設されている。
【0004】例えば、特開平7−35204号公報では、V型DOHCエンジンのカムシャフトを駆動させるチェーン駆動装置に、交差して設けられる右バンク側のチェーンと左バンク側のチェーンの、それぞれのスプロケット間のチェーン軌道上に、それぞれチェーンガイドを配設したものが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述のチェーンガイドは、チェーンの駆動経路により、必要な個数が変化する。上記先行技術では、左右両バンクのチェーンは、それぞれ3つのスプロケットに巻回されるため、各スプロケット間のチェーン軌道にそれぞれ1つずつのチェーンガイドが配設されている。従って、チェーンが巻回されるスプロケットが多くなって、又、各スプロケット間距離が長ければ、チェーンガイドは、それだけ必要な個数が増加することになる。そして、チェーンガイドが増加すると、チェーンガイドの取付スペースも多く確保しなければならず、また、チェーンガイドの取付作業行程も増加することとなる。
【0006】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、部品点数の増加や、取付作業工程の増加を招くことなく、互いに交差するチェーンにチェーンガイド機能を付与することができるチェーン駆動装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため請求項1記載の発明によるチェーン駆動装置は、2次平面的に交差する少なくとも2つのチェーンを備えたチェーン駆動装置において、上記2つのチェーンが交差する位置の近傍に、該2つのチェーンに対するチェーンガイドを一体に形成し配設したことを特徴とする。このため、上記2つのチェーンは、互いに交差するチェーン軌道では、一体に形成されたチェーンガイドでそれぞれガイドされ、このチェーンガイドによりチェーン軌道の既定、チェーンのばたつきの防止、或いはチェーンへのテンション付加等の作用が得られる。そして、チェーンガイドは、一体に形成されているため、部品点数が増加することが無く、また、1つのチェーンガイドを取り付ければ、それぞれにチェーンガイドを取り付ける作業行程も必要ないため取付作業工程が増加することもない。
【0008】また、請求項2記載の発明によるチェーン駆動装置は、請求項1記載のチェーン駆動装置において、上記チェーンガイドは、上記2つのチェーンに対する接触力を、上記チェーンガイドでガイドする上記各チェーンの軌道長さに応じて調整自在であることを特徴とする。一般に、チェーンガイドによるチェーンに対する接触力は、ガイドするチェーン軌道の長さに応じて変わるため、適切なガイドが行えるようにチェーン軌道長さに応じて調整自在にする。
【0009】更に、請求項3記載の発明によるチェーン駆動装置は、請求項1又は請求項2記載のチェーン駆動装置において、上記チェーンガイドは、2つの取付孔を有し、該2つの取付孔の一方を上記2つのチェーンのどちらか一方の走行軌道方向に沿った長孔形状に形成したことを特徴とする。すなわち、チェーンの走行軌道方向に沿った長孔を利用して、このチェーンに沿った方向で正確な位置決めができるようにする。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1〜図3は本発明の実施の一形態に係わり、図1はエンジンチェーン室内の構成説明図、図2はエンジン上面からのチェーン室内の一体チェーンガイド説明図、図3は一体チェーンガイドの拡大説明図である。
【0011】これらの図において、符号1はエンジンを示し、本実施の形態では、このエンジン1を、車両エンジンの一形式である水平対向6気筒のDOHCエンジンとして、このエンジン1に備えられたチェーン駆動装置を例に説明する。また、符号2L,2Rは、それぞれ、エンジン1の左右のシリンダブロック、符号3L,3Rは、それぞれ、エンジン1の左右のシリンダヘッドを示している。
【0012】上記エンジン1は、前方にチェーン室4を備え、このチェーン室4内には、エンジン1内からクランクシャフト5の端部が延出されており、このクランクシャフト5の端部に、正面から観て2次平面的に交差する2つのチェーン6L,6Rを駆動するクランクスプロケット7がキーにより固定されている。
【0013】また、上記チェーン室4内は、左側シリンダヘッド3L側の上下に、左側インテークカムシャフト8Lの端部と左側エキゾーストカムシャフト9Lの端部とが延出されており、これらカムシャフト8L,9Lの端部には、それぞれ、左側インテークカムスプロケット10Lと左側エキゾーストカムスプロケット11Lとが固設されている。
【0014】また、上記チェーン室4内は、右側シリンダヘッド3R側の上下に、右側インテークカムシャフト8Rの端部と右側エキゾーストカムシャフト9Rの端部とが延出されており、これらカムシャフト8R,9Rの端部には、それぞれ、右側インテークカムスプロケット10Rと、右側エキゾーストカムスプロケット11Rとが固設されている。
【0015】上記クランクスプロケット7の下方には、共通アイドラ軸12が回転自在に配設されており、この共通アイドラ軸12には、エンジン1側にスプロケット13Lが固設され上記チェーン6Lが巻回される一方、スプロケット13Lの外側に平行にスプロケット13Rが固設され上記チェーン6Rが巻回されている。
【0016】また、上記共通アイドラ軸12の左横には、図示しないウォータポンプのポンプ駆動軸14が延出されており、このポンプ駆動軸14に固設されたポンプ軸スプロケット15に上記チェーン6Lが巻回されている。
【0017】さらに、上記クランクスプロケット7と左側インテークカムスプロケット10Lとの間には、回転自在なアイドラ軸16が突設されて、このアイドラ軸16に固設されたアイドラスプロケット17に上記チェーン6Lが巻回されている。
【0018】すなわち、上記チェーン6Lは、クランクスプロケット7、左側インテークカムスプロケット10L、左側エキゾーストカムスプロケット11L及びスプロケット13Lが、その内側に噛合されており、ポンプ軸スプロケット15とアイドラスプロケット17とが、その外側に噛合されている。
【0019】また、上記チェーン6Rは、スプロケット13R、右側エキゾーストカムスプロケット11R及び右側インテークカムスプロケット10Rが、その内側に噛合されている。
【0020】上記チェーン6Lは、各スプロケット間距離により、アイドラスプロケット17と左側インテークカムスプロケット10Lとの間、左側インテークカムスプロケット10Lと左側エキゾーストカムスプロケット11Lとの間、左側エキゾーストカムスプロケット11Lとポンプ軸スプロケット15との間、スプロケット13Lとクランクスプロケット7との間のそれぞれのチェーン軌道上に、各々左上部,左側部,左下部,中央部チェーンガイド21,22,23,24が配設されている。
【0021】これらチェーンガイド21,22,23,24のうち、特にアイドラスプロケット17と左側インテークカムスプロケット10Lとの間のチェーン軌道上に配設される左上部チェーンガイド21は、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきの防止の役割に加え、チェーンへのテンション付加を目的として配設されており、テンショナー18によりチェーン6L側に所定の押圧力で押圧されている。
【0022】また、その他のチェーンガイド22,23,24は、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきの防止を主な役割として配設され、各チェーン軌道に対する押圧力は略ゼロで接触している。
【0023】一方、上記チェーン6Rは、各スプロケット間距離により、スプロケット13Rと右側エキゾーストカムスプロケット11Rとの間、右側エキゾーストカムスプロケット11Rと右側インテークカムスプロケット10Rとの間、右側インテークカムスプロケット10Rとスプロケット13Rとの間のそれぞれのチェーン軌道上に、各々右下部,右側部,右上部チェーンガイド25,26,27が配設されている。
【0024】上記スプロケット13Rと右側エキゾーストカムスプロケット11Rとの間のチェーン軌道上に配設される右下部チェーンガイド25は、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきの防止の役割に加え、チェーンへのテンション付加を目的として配設されており、テンショナー19によりチェーン6R側に所定の押圧力で押圧されている。
【0025】また、上記右側エキゾーストカムスプロケット11Rと右側インテークカムスプロケット10Rとの間のチェーン軌道上に配設される右側部チェーンガイド26は、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきの防止を主な役割として配設され、チェーン軌道に対する押圧力は略ゼロで接触している。
【0026】更に、上記右側インテークカムスプロケット10Rとスプロケット13Rとの間のチェーン軌道上に配設される右上部チェーンガイド27、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきの防止を主な役割として配設され、また、このチェーン軌道が若干長いことから、チェーン軌道を押し込むように接している。
【0027】尚、上記各チェーンガイド21,22,23,24,25,26,27の、それぞれのチェーン6L,6Rとの接触面には、例えば、油中での耐摩耗性に優れた摩擦係数の小さなナイロン材が用いられている。
【0028】上記スプロケット13Lとクランクスプロケット7との間のチェーン軌道と、上記右側インテークカムスプロケット10Rとスプロケット13Rとの間のチェーン軌道とは交差しており、この交差する位置の上方で、上記中央部チェーンガイド24と右上部チェーンガイド27とは一体に形成され一体チェーンガイド30として配設されている。
【0029】上記一体チェーンガイド30は、図3に示すように、2つの取付孔31,32が穿設されている。そして、チェーン軌道が互いに交差する側に位置される取付孔31は、大きめの丸孔形状に形成されており、一体チェーンガイド30を取り付けるに際し、だいたいの位置決めの役割が果たせるようになっている。
【0030】また、もう一方の取付孔32は、チェーン6Rの走行軌道方向に沿った長孔形状に形成されており、取付ピッチの公差を吸収して、一体チェーンガイド30の取付誤差によるチェーン走行軌道と一体チェーンガイド30の平行度が、確実、且つ、容易に確保できるようになっている。このため、取り付けられた一体チェーンガイド30は、チェーン6L,6Rに対して確実に走行軌道と平行に取り付けられるため、チェーン6L,6Rに対して片当たりするようなことがなく、チェーン6L,6Rのばたつきが確実に防止できるようになっている。
【0031】このように構成されるエンジン1では、クランクシャフト5が回転してクランクスプロケット7が回転すると、チェーン6Lが走行されてアイドラスプロケット17、左側インテークカムスプロケット10L、左側エキゾーストカムスプロケット11L、ポンプ軸スプロケット15及びスプロケット13Lが回転される。
【0032】そして、スプロケット13Lが回転すると、共通アイドラ軸12が回転されてスプロケット13Rが回転し、チェーン6Rが走行される。チェーン6Rが走行されると、右側エキゾーストカムスプロケット11R及び右側インテークカムスプロケット10Rが回転される。
【0033】これら各スプロケットの回転により、各カムシャフト8L,9L,8R,9Rが回転されてエンジン1が運転され、また、ポンプ駆動軸14も回転されてウォータポンプが駆動される。
【0034】ここで、チェーン6Lは、左上部,左側部,左下部,中央部チェーンガイド21,22,23,24により各走行軌道がガイドされ、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきが防止されて走行される。特に、左上部チェーンガイド21は、チェーン6Lに対してテンションの付加を行いながら上述の役割を果たす。
【0035】また、チェーン6Rは、右下部,右側部,右上部チェーンガイド25,26,27により各走行軌道がガイドされ、チェーン軌道の既定、チェーンのばたつきが防止されて走行される。特に、右下部チェーンガイド25は、チェーン6Rに対してテンションの付加を行いながら上述の役割を果たす。
【0036】ここで、スプロケット13Lとクランクスプロケット7との間のチェーン軌道と、右側インテークカムスプロケット10Rとスプロケット13Rとの間のチェーン軌道とは交差し、この交差する位置の上方で、中央部チェーンガイド24と右上部チェーンガイド27とは一体に形成され一体チェーンガイド30として配設されている。このため、別々に中央部チェーンガイド24と右上部チェーンガイド27とを配設すると、それぞれのチェーンガイドの取付孔と取付スペースを確保しなければならないが、この必要がない。また、一体チェーンガイド30として形成することにより、それぞれのチェーンガイド24,27毎にチェーン走行軌道と平行を保って確実に取り付けるという複雑な作業行程が省略でき作業性に優れている。更に、中央部チェーンガイド24と右上部チェーンガイド27とは一体で、一体チェーンガイド30として一部品でよいため、部品点数の削減にも寄与する。また、一体チェーンガイド30は、2つの取付孔31,32を有し、一方の取付孔32をチェーン6Rの走行軌道に沿った長孔形状にしたので、一体チェーンガイド30は、チェーン6L,6Rに対して確実且つ容易にチェーン軌道と平行に取り付けられるため、チェーン6L,6Rに対して片当たりするようなことがなく、チェーン6L,6Rのばたつきが確実に防止できる。
【0037】尚、本実施の形態では、エンジン1を水平対向6気筒のDOHCエンジンとして説明しているが、これに限定するものではなく、V型、或いは、他の気筒数のエンジン等のチェーン駆動装置であっても、或いは、車両エンジン以外に適用されるチェーン駆動装置であっても良い。
【0038】また、本実施の形態では、一体チェーンガイド30を構成するチェーンガイド24,27は、そのガイドするチェーン軌道長さにより、チェーンガイド24はチェーン6Lに対して押圧力ゼロの接触、チェーンガイド27はチェーン6Rに対して押し込みの接触となっているが、これに限るものではなく、他の接触の例であっても本発明は適用できることは云うまでもない。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように請求項1記載の発明によれば、2次平面的に交差する少なくとも2つのチェーンを備えたチェーン駆動装置において、2つのチェーンが交差する位置の近傍に、2つのチェーンに対するチェーンガイドを一体に形成し配設したので、部品点数の増加や、取付作業工程の増加を招くことなく、互いに交差するチェーンにチェーンガイド機能を付与することが可能になる。
【0040】この際、請求項2の発明のように、チェーンガイドは、2つのチェーンに対する接触力を、チェーンガイドでガイドする各チェーンの軌道長さに応じて調整自在に形成すれば、チェーンガイドによるチェーンに対する接触力は、ガイドするチェーン軌道の長さに応じて変わるため、それぞれのチェーン軌道に対して最適なガイド機能を発揮でき、汎用性に優れるという効果がある。
【0041】また、請求項3の発明のように、チェーンガイドの、2つの取付孔の一方を2つのチェーンのどちらか一方の走行軌道方向に沿った長孔形状に形成することで、チェーンの走行軌道方向に沿った長孔を利用して、チェーンガイドの取付誤差を吸収しながら、このチェーン軌道と平行な位置決めが、正確且つ容易にできるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000005348
【氏名又は名称】富士重工業株式会社
【出願日】 平成11年10月18日(1999.10.18)
【代理人】 【識別番号】100076233
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 進
【公開番号】 特開2001−116094(P2001−116094A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−295863