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【発明の名称】 農作業機のベルト伝動装置
【発明者】 【氏名】布野 隆

【氏名】山根 陽一

【要約】 【課題】テンションクラッチの切動作と制動動作とを略々同時に行えるようにする。

【解決手段】ベルト伝動装置は、エンジン出力軸29に固定された駆動プーリ30と、ミッションケース16の入力軸31に固定された従動プーリ32と、の間に巻回された巻掛けベルト33を有し、かつこの巻掛けベルト33に転接して該巻掛けベルト33を緊張・弛緩するテンションクラッチCを備えている。そして、前記テンションクラッチCの切動作に略々連動して、前記従動プーリ32に近接配置されたブレーキ部材45を作動させることにより、テンションクラッチCの切動作と略々同時に従動プーリ32に制動作用を付与している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジン出力軸に固定された駆動プーリ及びミッションケースの入力軸に固定された従動プーリと、これら駆動プーリと従動プーリとの間に巻回された巻掛けベルトとを有し、前記巻掛けベルトに転接して該巻掛けベルトを緊張・弛緩するテンションクラッチを備えた農作業機のベルト伝動装置において、前記従動プーリに近接配置されたブレーキ部材を備え、該ブレーキ部材の作動により、前記テンションクラッチの切動作に略々連動して前記従動プーリに制動作用を付与するように構成した、ことを特徴とする農作業機のベルト伝動装置。
【請求項2】 前記テンションクラッチの切時に、前記巻掛けベルトを前記駆動プーリ側に付勢するベルトガイド部材を備え、該ベルトガイド部材と前記ブレーキ部材とを兼用化した、ことを特徴とする請求項1記載の農作業機のベルト伝動装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、田植機等の農作業機に係り、詳しくはプーリ間に巻回された巻掛けベルトに転接して動力を断接するテンションクラッチを備えた農作業機のベルト伝動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】田植機等の農作業機において、エンジンとミッションケース間の動力伝達に巻掛けベルトを使用し、この巻掛けベルトをテンションプーリにより緊張・弛緩して動力の断接を行うものが採用されており、このようなテンションクラッチの入切操作は、クラッチレバーの操作により前記テンションプーリを移動制御することで行われる。
【0003】このようなベルト伝動装置として、従来、例えば本件出願人の実用新案登録第2519227号公報に記載の技術が公知であり、この従来技術によれば、図7に示すように、エンジン出力軸に固定された駆動プーリ100と、トランスミッション入力軸に固定された従動プーリ101との間に、巻掛けベルト102,103,104が巻回されていて、この巻掛けベルト102,103,104を緊張・弛緩するテンションアーム105を有し、このテンションアーム105の一端は、ロッド106を介して操作レバー107に連繋され、他端にはタイトプーリ108が設けられている。
【0004】前記テンションアーム105及びロッド106は、駆動プーリ100の外周を迂回して設けられ、またテンションアーム105の中間部は支軸109により回動自在に枢支されていて、更に前記支軸109と前記ロッド106との略中間部にはベルトガイド110が設けられ、このベルトガイド110を前記タイトプーリ108の動きに伴い支軸109回りに回動するようにしている。これにより、ベルトガイド110は、動力遮断時には駆動プーリ100に接近して該駆動プーリ100から浮き上がった巻掛けベルト102,103,104を押えてプーリ回りに均等に膨らんだ状態に保って、良好なクラッチ切れ状態を得ることが可能であり、また、動力伝達時には、ベルトガイド110は駆動プーリ100から離反して巻掛けベルト102,103,104との接触が避けられるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来技術によると、テンションクラッチの切時に、動力の伝達を切断することはできても、従動プーリ101は慣性力により回転するので、クラッチの切動作と略々同時に従動プーリ101を停止させることはできなかった。一方、製造コストの低減の観点からは、構造の複雑化を回避して部品点数を削減する必要もある。
【0006】本発明は、斯かる課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、部品点数の削減を図りつつテンションクラッチの切動作と制動動作とを略々同時に行うことができる農作業機のベルト伝動装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、エンジン出力軸(29)に固定された駆動プーリ(30)及びミッションケース(16)の入力軸(31)に固定された従動プーリ(32)と、これら駆動プーリ(30)と従動プーリ(32)との間に巻回された巻掛けベルト(33)とを有し、前記巻掛けベルト(33)に転接して該巻掛けベルト(33)を緊張・弛緩するテンションクラッチ(C)を備えた農作業機(10)のベルト伝動装置において、前記従動プーリ(32)に近接配置されたブレーキ部材(45)を備え、該ブレーキ部材(45)の作動により、前記テンションクラッチ(C)の切動作に略々連動して前記従動プーリ(32)に制動作用を付与するように構成した、ことを特徴とする。
【0008】請求項2記載の発明は、前記テンションクラッチ(C)の切時に、前記巻掛けベルト(33)を前記駆動プーリ(30)側に付勢するベルトガイド部材を備え、該ベルトガイド部材と前記ブレーキ部材(45)とを兼用化した、ことを特徴とする。
【0009】[作用]以上の発明特定事項に基づき、本発明によれば、駆動プーリ(30)と従動プーリ(32)との間に巻回された巻掛けベルト(33)に転接して、該巻掛けベルト(33)を緊張・弛緩するテンションクラッチ(C)と、前記従動プーリ(32)に近接配置されたブレーキ部材(45)とを備えていて、このブレーキ部材(45)を前記テンションクラッチ(C)の切動作に略々連動して作動させるようにしたことで、前記テンションクラッチ(C)の切断と略々同時に前記従動プーリ(32)に制動作用が付与されて、いわゆる駐車ブレーキにより該従動プーリ(32)を確実に停止することが可能となる。
【0010】なお、上述したカッコ内の符号は図面を参照するために示すものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0012】図1及び図2に示すように、乗用田植機10は、前輪11及び後輪12により支持された走行機体13を有しており、該走行機体13にはその前輪前方のボンネット14内にエンジン15と燃料タンク19が搭載され、エンジン15の後方にはトランスミッションを収容するミッションケース16がエンジン15と一体的に固定されている。また、走行機体5の前後方向の中間部には、ステアリングホイール17と座席シート18を有する運転席49が配設されていて、ステアリングホイール17の側方及びその下方には、クラッチレバー20とクラッチペダル21が設けられている。このクラッチレバー20又はクラッチペダル21の操作により、前記エンジン15からトランスミッションへの動力の伝達が断接される。
【0013】前記走行機体13の後方には、昇降リンク機構22を介して植付部23が昇降自在に支持され、該植付部23には多数のプランタアーム24、フロー卜25及びマット苗を上下方向に載置し得る苗載せ台26が備えられている。そして、前記走行機体13には、昇降リンク機構22との間に油圧シリンダ27が配設されていて、座席シート18の側方に設けられた手動操作レバー(図示せず)の操作に基づき、座席シート18下部のリヤカバー28内に配置された油圧コントロールバルブ(図示せず)を介して前記油圧シリンダ27が伸縮制御されて、植付部23が昇降制御される。
【0014】次いで、図3に示すように、前記エンジン15の出力軸29には駆動プーリ30が固定され、またトランスミッションの入力軸31には従動プーリ32が固定されていて、これら駆動プーリ30と従動プーリ32との間には巻掛けベルト33が巻回されている。そして、エンジン15の動力は、前記駆動プーリ30から巻掛けベルト33を緊張・弛緩するテンションクラッチCを介して、従動プーリ32によりトランスミッションに入力され、更にこのトランスミッションから前述した前輪11,後輪12及び植付部23に夫々伝達される。前記テンションクラッチCは、揺動支点34を中心として揺動可能なテンションアーム35と、前記巻掛けベルト33に転接して該巻掛けベルト33を緊張・弛緩するテンションプーリ36とを有している。
【0015】本発明では、前記従動プーリ32に近接配置されたブレーキ部材を備え、該ブレーキ部材の作動により、前記テンションクラッチCの切動作に略々連動して前記従動プーリ32に制動作用を付与すべく構成したものである。
【0016】図3において、前記クラッチレバー20に一体的に固定されたレバーカム37は、回動支点38を中心として回動可能であると共に、このレバーカム37に隣接し、かつローラ39を介して該レバーカム37に摺接するクラッチカム40が、回動支点41を中心として回動可能に配設されている。また、このクラッチカム40には、一端をピン42にて該クラッチカム40に軸着され、他端をピン43にて前記テンションアーム35に連結されたクラッチアーム44が延設されている。これらクラッチカム40とクラッチアーム44とは、スプリング50により常時クラッチ入方向に付勢されている。なお、前述したように、前記テンションアーム35は、一端を揺動支点34を中心として揺動可能に軸着され、他端には前記巻掛けベルト33に転接する前記テンションプーリ36が設けられている。
【0017】更に、前記従動プーリ32の外周側には、該従動プーリ32の略々半円周部分を覆うように、帯状のブレーキ部材45が近接配置されている。このブレーキ部材45は、一端を機体フレーム側に係止され、他端をスプリング46を介して前記レバーカム37に係止されている。なお、駆動プーリ30側の近傍の巻掛けベルト33には、対面側(ベルトの張り側と緩み側)に夫々ベルト押え47,48が設けられている。
【0018】そして、テンションクラッチCを切断すべく、クラッチレバー20を図面A方向(時計方向)に操作することで、前記テンションアーム35がクラッチ切方向(矢印方向)に移動して該テンションクラッチCが切れ、かつブレーキ部材45が従動プーリ32側の巻掛けベルト33を駆動プーリ30側に付勢して該従動プーリ32を制動する。
【0019】すなわち、クラッチレバー20をA方向に操作すると、レバーカム37は回動支点38を中心として時計方向に回動すると共に、このレバーカム37にローラ39を介して摺接しているクラッチカム40が、回動支点41を中心としてB方向(反時計方向)に回動し、該クラッチカム40の一端に軸着42されているクラッチアーム44が長手方向(矢印方向)に移動する。このクラッチアーム44の移動により、テンションアーム35が揺動支点34を中心として時計方向(矢印方向)に揺動する。これにより、テンションアーム35の先端に取付けられ、かつ巻掛けベルト33に転接して該ベルト33を緊張していたテンションプーリ36がベルト33から離反し、巻掛けベルト33は弛緩してテンションクラッチCが切断される。
【0020】このクラッチ切操作と略々同時に、一端をレバーカム37に取付けられたブレーキ部材45が、クラッチレバー20の回動操作に伴い、図面矢印方向に引っ張られる。このため、ブレーキ部材45は、従動プーリ32の外周側に浮き上がった巻掛けベルト33を外側から押圧し、従動プーリ32側から駆動プーリ30側に向けてガイドしながら押圧付勢する。このとき、ブレーキ部材45は、従動プーリ32側の巻掛けベルト33を駆動プーリ30側に向けて案内するベルトガイドの役目をなす。そして、駆動プーリ30側に付勢された巻掛けベルト33は、該駆動プーリ30側においてベルト押え47,48の作用で外周側にのみ浮き上がり(図3の破線状態)、該駆動プーリ30と巻掛けベルト33との接触が確実に断たれる。
【0021】更に、前記ブレーキ部材45が、従動プーリ32の外周側の巻掛けベルト33を外側から中心側(入力軸31側)に押圧付勢することで、該巻掛けベルト33を介して従動プーリ32に制動作用が付与され、従動プーリ32は確実に停止される。この場合、クラッチ切断時に前記ブレーキ部材45が従動プーリ32を停止させて駐車ブレーキの役目をなすと共に、巻掛けベルト33は従動プーリ32に当接して該従動プーリ32の回転を止めるブレーキシューの役割を果たす。
【0022】次に、図4及び図5は、前述したテンションクラッチCを乗用田植機10に適用した実施の形態を示しており、図3と同一又は相当する部材には同一の符号を付している。
【0023】図4は、クラッチ切時の状態を示したもので、このとき、クラッチレバー20は機体後方に操作されている。このクラッチ切時には、テンションアーム35の先端に取付けられたテンションプーリ36が巻掛けベルト33から離反し、該ベルトを弛緩させてテンションクラッチCが切断される。
【0024】図5は、クラッチ入時の状態を示したもので、このとき、クラッチレバー20は機体前方に操作されている。このクラッチ入時には、テンションアーム35の先端のテンションプーリ36が巻掛けベルト33に転接し、該ベルトを緊張させてテンションクラッチCが接続される。
【0025】一方、図4〜図6に示すように、運転席49の下部には、踏込み式のクラッチペダル21が連結アーム51を介して回動軸52に連結されていて、この回動軸52に連結された連結ロッド53を介し、図示しないクラッチアームが作動してトランスミッション側のディスククラッチ(動力クラッチ)が入切される。これと同時に、前記連結ロッド53が前記クラッチカム40にも連繋されている(図4及び図5参照)。このため、クラッチペダル21を踏込むと、トランスミッション側のディスククラッチが切断されると共に、クラッチカム40が回動支点41を中心として図4の反時計方向に回動し、前述した経路でテンションクラッチCも切断される。
【0026】なお、図6において、前記回動軸52には、これと一体的に牽制部材54が固定され、この牽制部材54が、クラッチレバー20側の牽制部材55の移動路上に出退可能となっていて、クラッチペダル21によるディスククラッチの切操作で前記牽制部材54が退避して、クラッチレバー20による前後進の切換え操作が可能となっている。
【0027】次いで、本実施の形態の作用について説明する。
【0028】図4において、レバー操作により走行機体13を停止させるときは、クラッチレバー20を後方(矢印方向)に引き操作すると、該クラッチレバー20と一体のレバーカム37が回動支点38を中心として同方向に回動し、このレバーカム37に摺接しているクラッチカム40が、回動支点41を中心として反時計方向に回動し、該クラッチカム40の一端に軸着42されているクラッチアーム44が長手方向(図面左方向)に移動する。このクラッチアーム44の移動により、テンションアーム35が揺動支点を中心として時計方向に揺動する。このテンションアーム35の揺動に伴い、該テンションアーム35の先端に取付けられているテンションプーリ36が巻掛けベルト33から離反し、該巻掛けベルト33は弛緩してテンションクラッチCが切断される。そして、このクラッチ切断時には、駆動プーリ30側の巻掛けベルト33はベルト押え47,48によって浮き上がりが規制されているので、従動プーリ32側の巻掛けベルト33が外方に浮き上がる。
【0029】一方、このテンションクラッチCの切操作と略々同時に、一端を前記レバーカム37に取付けられた帯状のブレーキ部材45が、クラッチレバー20のクラッチ切操作に伴い、従動プーリ32を外側から押圧する方向に引っ張られる。これにより、ブレーキ部材45は、従動プーリ32の外周側に浮き上がった巻掛けベルト33を外側から押圧し、更に該浮き上がった巻掛けベルト33を従動プーリ32側から駆動プーリ30側に向けてガイドしながら押圧付勢する。このため、駆動プーリ30側において巻掛けベルト33が外周側に浮き上がり、該駆動プーリ30と巻掛けベルト33との接触が確実に断たれる。
【0030】更に、このクラッチ切断時に、前記ブレーキ部材45が、従動プーリ32の外周側の巻掛けベルト33を外側から中心側(入力軸31側)に向けて押圧付勢するため、この巻掛けベルト33を介して従動プーリ32に制動作用が付与され、該従動プーリ32は確実に停止される。この場合、ブレーキ部材45は駐車ブレーキの役目をなす。なお、クラッチ入時には、図5に示すように、クラッチレバー20を前方に向けて傾動操作する。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、駆動プーリと従動プーリとの間に巻回された巻掛けベルトに転接して、該巻掛けベルトを緊張・弛緩するテンションクラッチを備え、前記従動プーリに近接配置されたブレーキ部材の作動により、テンションクラッチの切動作に略々連動して従動プーリに制動作用を付与するように構成したことで、テンションクラッチ切時には動力の伝達を確実に切断することができると共に、これと同時に従動プーリに制動作用を付与することができる。
【0032】請求項2記載の発明によれば、テンションクラッチの切時に、巻掛けベルトを駆動プーリ側に付勢するベルトガイド部材を備え、該ベルトガイド部材とブレーキ部材とを兼用化したことにより、部品点数を削減しつつ、テンションクラッチの切動作と従動プーリの制動動作とを略々同時に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【出願日】 平成11年10月19日(1999.10.19)
【代理人】 【識別番号】100082337
【弁理士】
【氏名又は名称】近島 一夫 (外1名)
【公開番号】 特開2001−116093(P2001−116093A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−297408