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【発明の名称】 油圧式オートテンショナ
【発明者】 【氏名】市石 喜久也

【氏名】柵木 清史

【要約】 【課題】低圧油室におけるオイルの泡立ちを抑制することができるとともに、低圧油室でオイルに巻き込まれた気泡が高圧油室に混入するのを防止することができ、もって機能低下のおそれがない油圧式オートテンショナを提供する。

【解決手段】油圧式オートテンショナ10は、高圧油室23と低圧油室24とを備え、高圧油室23と低圧油室24とが低圧油室24から高圧油室23への一方向に連通可能となっている。低圧油室24には、低圧油室24に貯油されたオイル27に巻き込まれた気泡28が高圧油室23へ混入するのを防ぐバッフル1が設けられている。バッフル1は、ケーシング11との間にオイル27は通すが気泡28は通しにくい狭い隙間5を形成するように設けられ、隔壁部2と、フランジ部3と、スプリングシート部4とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高圧油室と低圧油室とを備え、前記高圧油室と前記低圧油室とが低圧油室から高圧油室への一方向に連通可能な油圧式オートテンショナにおいて、前記低圧油室に、該低圧油室に貯油されたオイルに巻き込まれた気泡が前記高圧油室へ混入するのを防ぐバッフルを設けたことを特徴とする油圧式オートテンショナ。
【請求項2】 有底筒状のケーシングと、該ケーシングの内周下部の被圧入部に圧入固定される内筒と、前記ケーシングの開口端部から前記内筒に進入するプランジャと、該プランジャを退出方向に付勢するリターンスプリングと、前記内筒の底壁と前記プランジャの下端面との間に形成される高圧油室と、前記内筒の外周面と前記ケーシングの内周面との間に形成される低圧油室とを備え、前記高圧油室と前記低圧油室とが前記内筒の底壁を介して低圧油室から高圧油室への一方向に連通可能な油圧式オートテンショナにおいて、前記低圧油室に、該低圧油室に貯油されたオイルに巻き込まれた気泡が前記高圧油室へ混入するのを防ぐバッフルを設けたことを特徴とする油圧式オートテンショナ。
【請求項3】 前記バッフルは、前記ケーシング又は前記内筒との間に前記オイルは通すが前記気泡は通しにくい狭い隙間を形成するように設けられた請求項2記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項4】 前記バッフルは、該バッフル自体に前記オイルは通すが前記気泡は通しにくい狭いスリット又は小穴を形成するように設けられた請求項2記載の油圧式オートテンショナ。
【請求項5】 前記バッフルは、前記被圧入部の上面に設置されて前記リターンスプリングを受けるスプリングシート部を備えた請求項2、3又は4記載の油圧式オートテンショナ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無端環状の平ベルト、Vベルト、歯付ベルト、チェーン等の伝動部材に適度な張力(テンション)を自動的に与えるための油圧式オートテンショナに関するものである。
【0002】
【従来の技術】本出願人は、先に、図5に示すような油圧式オートテンショナ50を提案した(特開平10−141453号公報、特開平10−325448号公報)。その有底筒状のケーシング51の内周下部には縮径した被圧入部52が設けられ、被圧入部52の内周面とケーシング51の内底面とには油溝53が凹設され、被圧入部52には有底の内筒54の下端部が圧入固定されている。ケーシング51の開口端部から内筒54の円筒状のシリンダ部54aには、プランジャ55の下部の棒状のピストン部55aがクリアランスをもって上下摺動可能に進入している。プランジャ55の上部の取付部55bには、環状のカラー56がドライベアリング57を介して回動可能に設けられている。
【0003】内筒54の底壁54bとピストン部55aの下端面との間には高圧油室58が形成され、内筒54の外周面とケーシング51の内周面との間には低圧油室59が形成されている。高圧油室58と低圧油室59とは、底壁54bの連通孔60に設けられた逆止弁61を介して、低圧油室59から高圧油室58への一方向に連通可能となっている。
【0004】プランジャ55の上部に取り付けられたスプリングカバー62と、被圧入部52の上面に設置されたスプリングシート63との間には、リターンスプリング64が圧縮状態で装着され、プランジャ55を上方へ付勢している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記油圧式オートテンショナ50にも次のような問題があった。つまり、ケーシング51が高周波を受けたり高振幅した場合、図5に誇張して示すように、低圧油室59に貯油されたオイル65が振動し、気泡66を巻き込んで泡立つことがある。オイル65に巻き込まれた気泡66は、オイル65の振動によって細かく分裂し、オイル65とともに逆止弁61を介して高圧油室58に入ってしまう。高圧油室58に混入した気泡66は、油圧式オートテンショナ50の機能を低下させるおそれがある。
【0006】本発明の目的は、上記課題を解決し、低圧油室におけるオイルの泡立ちを抑制することができるとともに、低圧油室でオイルに巻き込まれた気泡が高圧油室に混入するのを防止することができ、もって機能低下のおそれがない油圧式オートテンショナを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、第一の発明の油圧式オートテンショナは、高圧油室と低圧油室とを備え、高圧油室と低圧油室とが低圧油室から高圧油室への一方向に連通可能な油圧式オートテンショナにおいて、低圧油室に、低圧油室に貯油されたオイルに巻き込まれた気泡が高圧油室へ混入するのを防ぐバッフルを設けたことを特徴としている。
【0008】また、第二の発明の油圧式オートテンショナは、有底筒状のケーシングと、ケーシングの内周下部の被圧入部に圧入固定される内筒と、ケーシングの開口端部から内筒に進入するプランジャと、プランジャを退出方向に付勢するリターンスプリングと、内筒の底壁とプランジャの下端面との間に形成される高圧油室と、内筒の外周面とケーシングの内周面との間に形成される低圧油室とを備え、高圧油室と低圧油室とが内筒の底壁を介して低圧油室から高圧油室への一方向に連通可能な油圧式オートテンショナにおいて、低圧油室に、低圧油室に貯油されたオイルに巻き込まれた気泡が高圧油室へ混入するのを防ぐバッフルを設けたことを特徴としている。
【0009】ここで、バッフルは、特定の構造に限定されず、例えば、ケーシング又は内筒との間にオイルは通すが気泡は通しにくい狭い隙間を形成するように設けることができる。
【0010】また、バッフルは、バッフル自体にオイルは通すが気泡は通しにくい狭いスリット又は小穴を形成するように設けてもよい。
【0011】隙間又はスリットの幅が狭いほど、又は、小穴の径が小さいほど、気泡は通しにくくなるので好ましい。但し、幅が狭すぎたり径が小さすぎたりすると、オイルも通しにくくなるので、オイルを十分に通せるだけの流通総面積を確保することが好ましい。
【0012】さらに、バッフルは、被圧入部の上面に設置されてリターンスプリングを受けるスプリングシート部を備えていてもよい。
【0013】バッフルは、特定の材料に限定されず、例えば鋼材で形成したものを例示できる。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の油圧式オートテンショナを具体化した二つの実施形態例について、図1〜図4を参照して説明する。これらの油圧式オートテンショナは、無端環状の平ベルト、Vベルト、歯付ベルト、チェーン等の伝動部材に適度な張力を自動的に与えるための汎用品である。油圧式オートテンショナと伝動部材との間の構造は、特に限定されない。
【0015】図1〜図3に示す第一実施形態の油圧式オートテンショナ10は、有底筒状のケーシング11を備え、ケーシング11の下面に一体形成された取付部12には、環状のカラー13がドライベアリング14を介して回動可能に設けられている。ケーシング11の内周下部には縮径した被圧入部15が設けられ、被圧入部15の内周面とケーシング11の内底面とには油溝16が凹設されている。
【0016】ケーシング11内には、ケーシング11の内径より一回り小さい外径をもつ有底の内筒17の下端部が被圧入部15に圧入固定されている。ケーシング11の開口端部から内筒17の円筒状のシリンダ部17aには、プランジャ8の下部に設けられた丸棒状のピストン部18が摺動のために必要最小限のクリアランス30をもって上下摺動可能に進入している。プランジャ8の上端部の取付部19には、環状のカラー13がドライベアリング14を介して回動可能に設けられている。
【0017】内筒17の内周面とピストン部18の下端面との間には高圧油室23が形成され、内筒17の外周面とケーシング11の内周面との間には低圧油室24が形成されている。高圧油室23と低圧油室24には適量のオイル27が入れられている。高圧油室23と低圧油室24とは、内筒17の底壁17bに設けられた連通孔26とその高圧油室23側に設けられた逆止弁25と前記油溝16とを介して、低圧油室24から高圧油室23への一方向に連通可能となっている。また、高圧油室23と低圧油室24とは、シリンダ部17a・ピストン部18間のクリアランス30を介して、高圧油室23から低圧油室24へオイルがリークし得るようになっている。
【0018】低圧油室24内には、ケーシング11との間にオイル27は通すが気泡28は通しにくい狭い隙間5を形成するように設けられたカップ状のバッフル1が配設されている。バッフル1は、内筒17のシリンダ部17a周りに配される円筒状の隔壁部2と、隔壁部2の上縁から外周へ伸びてその外周面がケーシング11の内周面との間に前記隙間5を形成するフランジ部3と、隔壁部2の下縁から内周へ伸びてその内周面が内筒17の外周面に当接するスプリングシート部4とを備える。スプリングシート部4はケーシング11の被圧入部15の上面に設置されて後述するリターンスプリング31を受け、その下縁から下方に向かってはケーシング11の被圧入部15に圧入固定される取付部6が突設されている。
【0019】プランジャ8の上部であって取付部19より下部には、ケーシング11の開口に進入した長めの外側筒29aと、プランジャ8の外周に圧入された短めの内側筒29bと、両筒の上端部を塞ぐ天井部29cとが一体形成されたスプリングカバー29が圧入固定されている。天井部29cの下面と、被圧入部15の上面に位置する前記スプリングシート部4との間には、リターンスプリング31が圧縮状態で装着され、プランジャ8を上方へ付勢している。ケーシング11の開口端部内周の段付き部には、スプリングカバー29の外側筒29aに摺接するシールリング20が装着され、該シールリング20は同開口端部内周の溝に嵌着されたストッパリング22に下方から係止して抜けないようになっている。21はシールリング20のインサート金具である。
【0020】32はプランジャ8からケーシング11の開口端部を被いケーシング11の外周にまで配されるダストカバーであり、ケーシング11の外周に配された筒部33と、該筒部33の上端を塞ぐプレート状の蓋部34とが一体に形成されている。蓋部34の内周縁は、プランジャ8の上部に一体形成されたフランジ部9と天井部29cとの間に挟持され、ダストカバー32はプランジャ8と共に上下動するようになっている。
【0021】以上のように構成された油圧式オートテンショナ10によれば、バッフル1が設けられているので、ケーシング11が高周波を受けたり高振幅したりして、その開口端部側から低圧油室24に貯油されたオイル27に気泡28が巻き込まれた場合であっても、低圧油室24におけるオイル27の振動が規制されて気泡28の細分裂が防止され、もってオイル27の泡立ちが抑制される。また、気泡28は隙間5を通過しにくいため、バッフル1より下方に流入して高圧油室23に混入することがなく、もって油圧式オートテンショナ10の機能が低下するおそれもない。
【0022】次に、図4は、第二実施形態の油圧式オートテンショナ10を示し、バッフルの構造が異なる点においてのみ第一実施形態と相違する。従って、第一実施形態と共通の部分については図4に第一実施形態と同一符号を付して説明を省略する。本実施形態のバッフル40は、内筒17のシリンダ部17a周りに配されてその上縁がケーシング11の内周面との間に前記隙間5を形成する、下側ほど縮径した円錐状の隔壁部41と、隔壁部41の下縁から内周へ伸びてその内周面が内筒17の外周面に当接するスプリングシート部42とを備える。スプリングシート部42はケーシング11の被圧入部15の上面に設置されてリターンスプリング31を受け、その下縁から下方に向かってはケーシング11の被圧入部15に圧入固定される取付部43が突設されている。本実施形態の油圧式オートテンショナ10によっても、第一実施形態と同様の効果が得られる。
【0023】なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)隙間5を形成する代わりに、バッフル1,40自体(例えば、フランジ部3又は隔壁部2,41)にオイル27は通すが気泡28は通しにくいような狭い幅をもったスリット又は同様の小さい径をもった小穴を形成すること。スリットの方向、長さ、数は特に限定されない。小穴の数、分布も特に限定されない。
(2)バッフルの構造を変更し、隙間5を、バッフルと内筒17の外周面とのあいだに形成すること。
【0024】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明に係る油圧式オートテンショナによれば、低圧油室におけるオイルの泡立ちを抑制することができるとともに、低圧油室でオイルに巻き込まれた気泡が高圧油室内に混入するのを防止することができ、もって機能低下のおそれがないという優れた効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
【出願日】 平成11年10月15日(1999.10.15)
【代理人】 【識別番号】100096116
【弁理士】
【氏名又は名称】松原 等
【公開番号】 特開2001−116092(P2001−116092A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−293147