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【発明の名称】 油圧機械式駆動装置用の下限速度制御装置及びその作動方法
【発明者】 【氏名】ブライアン ディー クラス

【氏名】ケヴィン ジェイ ルーショー

【氏名】チャールズ イー ローズ

【要約】 【課題】無段変速機の変速比の制御によりエンジン負荷を制御するための装置。

【解決手段】装置は、エンジンで駆動される無段変速機を備える。また、装置は、エンジンの出力速度を検知し、エンジン12の出力速度を示すエンジン速度信号を生成するようにされたエンジン速度センサ80、及び、機械走行速度を検出し、機械走行速度を示す走行速度信号を生成するようにされたエンジン速度センサ76を備える。更に、装置は、エンジン速度信号を下限速度値と比較し、エンジン速度信号と下限速度値との間の差を示す積分誤差信号を生成し、機械の走行速度に基づいて積分利得値を与え、下限速度要求信号を生成するために比例・積分帰還制御装置を介して積分誤差信号を変更し、下限速度要求信号に基づいて命令信号を生成するように作動できる電子制御装置を備える。命令信号は、エンジン負荷を制御するため、無段変速機16の変速比を制御するために使用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの負荷を制御するための装置であって、前記エンジンにより駆動される無段変速機と、前記エンジンの出力速度を検出し、前記エンジンの前記出力速度を示すエンジン速度信号を生成するようにしたエンジン速度センサと、機械走行速度を検出し、前記機械走行速度を示す走行速度信号を生成するようにした走行速度センサと、(i)前記エンジン速度信号を第1の下限速度値と比較し、前記エンジン速度信号と前記第1の下限速度値との間の差を示す積分誤差信号を生成し、(ii)前記積分誤差信号を比例・積分帰還制御装置を介して変更して、下限速度要求信号を生成し、かつ、(iii)前記下限速度要求信号に基づいて命令信号を生成するように動作可能である電子制御装置とを備え、前記命令信号は、前記無段変速機の変速比を制御して、前記エンジンの負荷を制御するために使用されることを特徴とする装置。
【請求項2】 前記電子制御装置は、前記機械走行速度に基づいて、積分利得値を与えるように動作可能であることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】 高い積分利得値は、比較的低い機械走行速度のために使用されるとともに、低い積分利得値は、比較的高い機械走行速度の低減のために使用されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】 前記無段変速機は、可変容量ポンプを備え、前記可変容量ポンプの容量は、前記命令信号を受けることに応じて変えられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】 前記無段変速機は、可変容量モーターを備え、前記可変容量モーターの容量が、前記命令信号を受けることに応じて変えられることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項6】 前記命令信号は、目標機械速度設定値から前記下限速度要求信号を減じることによって生成されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項7】 前記目標機械速度設定値は、所定の加速度限界によって制限され、前記所定の加速度限界は、前記目標機械速度設定値と共に変化することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】 前記電子制御装置は、(i)前記エンジン速度信号を第2の下限速度値と比較し、前記エンジン速度信号と前記第2の下限速度値との間の差を示す比例誤差信号を生成し、(ii) 前記積分誤差信号を、比例・積分帰還制御装置を介して変更して、前記下限速度要求信号の積分成分を生成し、かつ、(iii)前記比例誤差信号を、比例・積分帰還制御装置を介して変更して、前記下限速度要求信号の比例成分を生成するように動作可能であり、更に、前記第2の下限速度値は、前記第1の下限速度値のエンジン速度と等しいかそれより高いエンジン速度におけるものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項9】 無段変速機に関連付けられたエンジンの負荷を制御する方法であって、前記エンジンの出力速度を検出し、前記エンジンの出力速度を示すエンジン速度信号を生成する段階と、機械走行速度を検出し、前記機械走行速度を示す走行速度信号を生成する段階と、前記エンジン速度信号を、第1の下限速度値と比較し、前記エンジン速度信号と前記第1の下限速度値との間の差を示す積分誤差信号を生成する段階と、前記機械走行速度信号に基づいて、積分利得値を求める段階と、前記積分誤差信号を、比例・積分帰還制御装置を介して変更して、下限速度要求信号を生成する段階と、前記下限速度要求信号に基づいて命令信号を発生する段階と、前記エンジンの負荷を調整するように、前記命令信号を用いて前記無段変速機の変速比を制御する段階とを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】 前記第1の下限速度値以下に低下したエンジン速度に応じて、前記比例・積分帰還制御装置を作動させる段階を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】 第2の下限速度値以下に低下したエンジン速度に応じて、前記比例・積分帰還制御装置の比例項を起動させる段階を更に含み、前記第2の下限速度値は、前期第1の下限速度値よりも高いエンジン速度におけるものであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項12】 前記発生する段階は、目標機械速度設定値から前記下限速度要求信号を減じて前記命令信号を生成する段階を更に含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項13】 前記第1の下限速度値以下に低下した前記エンジン速度に応じて、前記比例・積分帰還制御装置を起動させる段階と、前記目標機械速度設定値に達した変更機械速度設定値に応じて前記下限速度制御の作動を解除する段階とを更に含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項14】 エンジンの負荷を制御するための装置であって、前記エンジンによって駆動される無段変速機と、前記エンジンの出力速度を検出し、前記エンジンの出力速度を示すエンジン速度信号を生成するようにされたエンジン速度センサと、機械走行速度を検出し、前記機械走行速度を示す走行速度信号を生成するようにされた走行速度センサと、(i)前記エンジン速度信号を第1の下限速度値と比較し、前記エンジン速度信号と第1の下限速度値との間の差を示す積分誤差信号を生成し、(ii)前記機械走行速度と前記積分誤差信号とに基づいて積分利得値を与え、(iii)比例・積分帰還制御装置を介して積分誤差信号を変更して、下限速度要求信号を生成し、かつ(iv)前記下限速度要求信号に基づいて命令信号を生成するように動作可能な電子制御装置とを備え、前記命令信号は、前記無段変速機の変速比を制御して、前記エンジンの負荷を制御するために使用されることを特徴とする装置。
【請求項15】 高い積分利得値は、比較的高い正の積分誤差のために使用され、低い積分利得値は、低い負の積分誤差のために使用され、更に中間の積分利得値は、高い負の積分誤差のために使用されることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】 前記無段変速機は、可変容量ポンプを備え、前記可変容量ポンプの容量が、前記命令信号を受けることに応じて変えられることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項17】 前記無段変速機は、可変容量モーターを備え、前記可変容量モーターの容量が、前記命令信号を受けることに応じて変えられることを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項18】 前記命令信号は、目標機械速度設定値から前記下限速度要求信号を減じることによって生成されることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項19】 前記目標速度設定値は、所定の加速度限界によって制限され、前記所定の加速度限界が、目標機械速度設定値と共に変化することを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】 無段変速機に関連付けられたエンジンの負荷を制御するための方法であって、前記エンジンの出力速度を検出し、前記エンジンの出力速度を示すエンジン速度信号を生成する段階と、機械走行速度を検出し、前記機械走行速度を示す走行速度信号を生成する段階と、前記エンジン速度信号を、第1の下限速度値と比較し、前記エンジン速度信号と前記第1の下限速度値との間の差を示す積分誤差信号を生成する段階と、前記機械走行速度と前記積分誤差信号とに基づいて積分利得値を求める段階と、比例・積分帰還制御装置を介して前記積分誤差信号を変更して、下限速度要求信号を生成する段階と、前記下限速度要求信号に基づいて命令信号を発生する段階と、前記命令信号を用いて前記無段変速機の変速比を制御して、前記エンジンの負荷を調整する段階とを含むことを特徴とする方法。
【請求項21】 前記第1の下限速度値以下に低下したエンジン速度に応じて、前期比例・積分帰還制御装置を作動させる段階を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】 第2の下限速度値以下に低下したエンジン速度に応じて、前記比例・積分帰還制御装置の比例項を起動させるとともに前記第1の下限速度値以下に低下したエンジン速度に応じて前記比例・積分帰還制御装置の積分項を起動させる段階を更に含み、前記第2の下限速度値は、前記第1の下限速度値よりも高いエンジン速度におけるものであることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項23】 前記発生する段階は、目標機械速度設定値から前記第1の下限速度要求信号を減じて前記命令信号を生成する段階を更に含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項24】 前記第2の下限速度値以下に低下した前記エンジン速度に応じて前記比例・積分帰還制御装置を起動させる段階と、前記目標速度設定値に達した変更機械速度設定値に応じて前記下限速度制御の作動を解除する段階とを更に含むことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、全体的には、エンジンと無段変速機とを含む駆動装置用の制御装置に係り、より詳細には、エンジン負荷を調整するために、ポンプ容量、モーター容量、及び適切なクラッチ係合を制御する油圧機械式無段変速機用の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】多くの機械、特に土木作業機械では、その機械のトラクション・ホイール或いは履帯を駆動するために静油圧駆動装置が使用されている。この機械の原動機エンジンは、エンジンスロットルによって所定速度で作動するように設定されることが多い。そして、機械の速度は、エンジンスロットルを調節することなく、静油圧駆動装置における油圧部品の1つの容積を制御することによって調整できる。
【0003】数ある公知の静油圧駆動装置に共通する問題点の1つは、油圧部品を作動させるとエンジンに負荷がかかり、この負荷により、エンジンストール、エンジンラグ、更に、過剰なエンジンドループとして知られる現象が引き起こされ、作業機械の生産性を低下させてしまうことにある。大半の作業機械では、作業者は、油圧部品の容量を手動で制御してエンジン負荷を制御することを強いられる。しかしながら、これは退屈な作業でもあり現実に行うのは困難である。他の作業機械では、エンジン速度に応じて油圧部品の容量を制御する電子制御装置が使用されている。このような装置では、油圧部品に必要な調節を行うために要求される時間が、エンジン速度の変化に応じて命令信号を発生するのに必要な時間に比べ遥かに大きいため、不安定な状態となる可能性がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した問題の少なくとも1つを克服することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の第1の観点によれば、エンジンの負荷を制御する装置が提供される。該装置は、エンジンで駆動される無段変速機を備える。また、該装置は、エンジンの出力速度を検知し、エンジンの出力速度を示すエンジン速度信号を生成するようにしたエンジン速度センサ、及び、機械走行速度を検出し、機械走行速度を示す走行速度信号を生成するようにした走行速度センサを含む。更に、該装置は、エンジン速度信号を第1の下限速度値と比較して、エンジン速度信号と第1の下限速度値との間の差を示す積分誤差信号を生成し、機械走行速度に基づいて積分利得値を供給し、下限速度要求信号を生成するために比例・積分帰還制御装置を介して積分誤差信号を変更し、且つ、下限速度要求信号に基づいて命令信号を生成するように動作可能な電子制御装置を備える。命令信号は、エンジンの負荷を制御するように無段変速機の変速比を制御するために使用される。
【0006】本発明の第2の観点によれば、無段変速機と関連付けられたエンジンの負荷を制御するための方法が提供される。この方法は、エンジンの回転速度を検出し、エンジンの回転速度を示すエンジン速度信号を生成する段階と、機械走行速度を検出し、機械走行速度を示す走行速度信号を生成する段階とを含む。また、この方法はエンジン速度信号を、第1の下限速度値と比較し、エンジン速度信号と第1の下限速度値との間の差を示す積分誤差信号を生成する段階を含む。更に、この方法は、該機械の走行速度信号と積分誤差とに基づいて積分利得値を求める段階と、下限速度要求信号を生成するために、比例・積分帰還制御装置を介して積分誤差信号を変更する段階とを含む。更に、この方法は、下限速度要求信号に基づいて命令信号を発生する段階と、エンジンの負荷を調整するように、命令信号を用いて無段変速機の変速比を制御する段階とを含む。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明の理解を深めるために添付図面を参照されたい。本発明は、様々な形に変更、変形することが可能であるが、その特定の実施形態を図面に例示し本明細書において詳細に説明する。しかしながら、開示した特定の形式に本発明を限定する意図はなく、むしろ、本発明は、請求範囲によって定められる本発明の精神及び範囲内にある全ての変更例、均等物、及び変形例を包含するものであると理解されるべきである。
【0008】エンジン12を備えた作業機械(図示されず)で使用される変速装置10が示される。図示の変速装置10は、無段変速式のものであり、機械式変速機14、無段変速機16、マイクロプロセッサ内蔵の制御装置18、検出装置20、及び、設定値入力装置22を含む。図示の変速装置10は、油圧機械式無段変速機であるものとして示されるが、本発明は、油圧式、電気式、もしくは電気機械式無段変速機を含む他のタイプの無段変速機に対して同じように適用できる。作業装置24は、最終駆動軸26を介して変速機10に連結される。
【0009】機械式変速機14及び関連するクラッチ制御装置28は、歯車装置30を介してエンジン12のエンジン出力軸13に対して動作するように連結される。機械式変速機14は、歯車装置30を介してエンジン12と、モーター出力軸34を介して無段変速機16とに動作するように連結された組合せ遊星歯車装置30を備えている。組合せ遊星歯車装置32の出力は、最終駆動軸26に連結される。また、機械式変速機14は、切換え高速クラッチ36、38と低速クラッチ40とを備える。クラッチ制御装置28は、パイロット・ポンプ42のような、加圧パイロット流体源に連結される。クラッチ制御装置28は、制御装置18からの電気信号に応じて作動し、それぞれの速度クラッチ36、38及び40の係合、解除を制御する。
【0010】無段変速機16及び関連する油圧制御装置44は、ポンプ入力駆動軸46を介してエンジン12に対して動作するように連結される。無段変速機16は、可変容量ポンプ48と、可変容量ポンプ48の容量を制御するポンプ容量制御装置50とを備える。更に、無段変速機16は、可変容量モーター52と、可変容量モーター52の容量を制御するモーター容量制御装置58とを備える。可変容量モーター52は、可変容量ポンプ48に対して導管54、56によって流体的に連結される。油圧制御装置44は、パイロット・ポンプ42に連結され、制御装置18からの電気信号に応じて作動し、それぞれポンプ及びモーターの容量制御装置50、58の作動を制御する。ポンプ48もしくはモーター52の容量を変えることによって、最終駆動26とエンジン出力軸13との間の総変速比が変えられる。
【0011】設定値入力装置22は、要求される機械速度信号を生成するために、最大速度位置からゼロ速度位置まで移動可能な速度ペダル62を有する速度入力機構60、中立位置から前進もしくは後退位置まで選択的に移動可能な方向制御レバ66を有する方向制御機構64、及び、第1の位置と第4の位置との間で選択的に移動可能である速度レバ70を有する速度範囲制御機構68を備える。目標機械速度設定値は、上記要求機械速度信号と作業機械の加速度限界(以下に記載される)とに基づくものである。制御装置18は、制御用ソフトウエアを記憶するRAMとROM(図示されず)とを備える。好ましい実施形態にあっては、そのソフトウエアは、目標エンジン速度を表すエンジン・ガバナ用の値を含む。第1の下限速度値は、目標エンジン速度に基づいており、制御装置18が、エンジン12がラグ状態にあると判断し、更に、エンジンラグを低減するために、比例・積分帰還制御装置(以下に記述される)の出力の積分成分に基づいて変速比を変えなければならないと判断するエンジン速度を表す。また、第2の下限速度値も、目標エンジン速度に基づいており、制御装置18が、エンジン12がラグ状態にあると判断し、更に、エンジンラグを低減するために、比例・積分帰還制御装置(以下に記述される)の出力の比例成分に基づいて変速比を変えなければならないと判断するエンジン速度を表す。
【0012】検出装置20は、ポンプ入力軸46の速度を検出する働きをするエンジン速度センサ76を備え、エンジン12の回転速度を表すエンジン速度信号を制御装置18に送る。変速機速度センサ78は、モーター出力軸34の速度を検出する働きをし、モーター出力速度を表すモーター出力速度信号を制御装置18に送る。走行速度センサ80は、最終出力駆動軸26の速度を検出する働きをし、機械の走行速度を表す機械走行速度信号を制御装置18に送る。
【0013】ここで、制御装置18から見た、エンジンの下限速度制御100に関係する論理ブロック図を示す図2に沿って本発明を説明する。エンジン下限速度制御100は、加算接点105において、第1の下限速度値をエンジン速度センサ76からのエンジン速度信号と比較し、第1の下限速度値とエンジン速度との間の積分誤差、即ち差を示す積分誤差信号を生成する。第2の下限速度値は、第2の下限速度値とエンジン速度との間の比例誤差、即ち差を示す比例誤差信号を生成するために、加算接点106においてエンジン速度信号と比較される。更に、エンジン下限速度制御100は、比例・積分帰還制御装置110を備える。積分誤差信号及び比例誤差信号は、比例・積分帰還制御装置110を通され、積分誤差信号に基づいた積分成分と、比例誤差信号に基づいた比例成分とを有する下限速度要求信号を生成する。
【0014】更に、比例・積分帰還制御装置110は、積分利得を下限速度要求信号の積分成分に対して、また、比例利得を下限速度要求信号の比例成分に対して与える働きをする。比例利得は、帰還制御装置110が下限速度要求信号にある比例成分の影響を増加させたり減少させたりできるのに対して、積分利得は、帰還制御装置110が下限速度要求信号にある積分成分の影響を増加させたり減少させたりできるようにする。
【0015】次いで、下限速度要求信号は、命令値を生成するために、加算接点115において、速度入力機構60から受けた目標機械速度設定値から減算される。目標機械速度設定値は、速度入力機構60から、その命令値に与えられる加速度限界とともに導き出される(図5参照)。命令信号は、(i)それぞれポンプ48及びモーター52の容量を制御するため、油圧制御装置44に伝達され、また、(ii)適切なクラッチ36、38及び40を係合するためにクラッチ制御装置28に伝達される。ポンプ48とモーター52との容量を制御することによって、また、クラッチ36、38及び40の係合を制御することによって、変速機装置10の総変速比を変える。総変速比を変えることによって、作業機械の実走行速度を変更する。変更された機械速度設定値は、目標機械速度設定値より小さく(図6参照)、従って、エンジン12にかかる負荷を減じ、それによってエンジン12が受けるラグ量を低減することはいうまでもない。
【0016】ここで、図3を参照する。本発明の第1の実施形態で使用される積分利得値が示されており、それによって帰還制御装置110は、機械走行速度に基づいて、積分利得を下限速度要求信号の積分成分に与えられる。積分利得値は双曲線関数として示されているが、この積分利得値は様々な形態をとることができ、比較的高い積分利得値は、比較的低い機械走行速度のために使用され、また、比較的低い積分利得値は、比較的高い機械走行速度のために使用される。第1の実施形態では、従来技術公知の形式である2次元の参照用テーブルが、図3に示される積分利得値を記憶するのに使用される。積分成分用のそれぞれの積分利得値は、根軌跡及びボーデ設計法を用いて判断される。比例利得値はまた、設定信号上への下限速度要求信号にある比例成分の影響を増加させたり減少させたりのいずれかをするために、下限速度要求信号の比例成分に対して与えることができるのはいうまでもない。
【0017】ここで、図4を参照する。本発明の第2の実施形態で使用される積分利得値の図表が示されてあり、帰還制御装置110は、機械走行速度及び積分誤差、即ち実際のエンジン速度と第1の下限速度値との間の差に基づいて、積分利得を下限速度要求信号の積分成分に与える。積分利得値が特定の3次元表面として示されているものの、積分利得値は多数の表面を形成することができ、そこでは、(i)比較的高い積分利得値は、比較的低い機械走行速度にために使用され、(ii)比較的低い積分利得値は、比較的高い前進及び後退機械走行速度のために使用され、(iii)比較的高い積分利得値は、高い正の積分誤差がある場合に使用され、(iv) 中間の積分利得値は、高い負の積分誤差がある場合に使用され、また、(v)比較的低い積分利得値は、低い正の、もしくは、負の積分誤差がある場合に使用される。第2の実施形態にあっては、従来技術において公知の型である3次元の参照用テーブルが、図4に示される積分利得値を記憶するのに使用される。比例利得値はまた、機械走行速度及び比例誤差(ここにおいて比例誤差は第2の下限速度値と実エンジン速度との間の差である)に基づいて下限速度要求信号の比例成分に与えることができるのはいうまでもない。
【0018】ここで、図5を参照する。目標機械速度設定値を計算するために使用される加速度限界が示されている。目標機械速度設定値は、エンジン12のラグとは無関係に、要求機械速度に到達するために、制御装置18が設定することになる機械走行速度である(図6参照)。図5に示される加速度曲線は、総変速比が変化するにつれての、エンジン12のトルク出力で最大限得ることができるものに比例している。加速度曲線は、エンジン12の最大トルク特性に比例するものであり、この加速度曲線を、目標機械速度設定値を計算するために使用することによって、作業機械が目標機械速度設定値に向かって加速を行う場合、妥当な負荷がエンジン12に確実に加えられる。図5に示される特性曲線は、特定のエンジン12が有するトルク特性に合致するため、大きく変えることができるのはいうまでもない。例示的なエンジン12に関して、低い必要機械速度において、命令信号はより高い割合の加速度を命令し、一方、より高い必要機械速度においては、命令信号はより低い割合の加速度を命令する。
【0019】
【産業上の利用可能性】作動にあっては、制御装置18は、エンジン12がラグ状態にあるかどうか、即ち、エンジン速度が第2の下限速度値以下に低下しているかどうかを判断し、それに応じて、(i)ポンプ48 及び/又は モーター52の容量を増加もしくは減少させ、また、(ii)作業機械の総変速比を変化させるために、適切なクラッチ36、38及び40を係合させたり、解除したりする。作業機械の総変速比を変化させることによって、エンジン負荷を減じ、エンジン12のラグを防止するように機械走行速度を減少させる。より詳細には、本発明の第1の実施形態を用いる場合、第1の下限速度値以下に低下したエンジン速度に応じて、制御装置18は、機械走行速度が比較的低い場合にはエンジン負荷を減少させる命令信号を発生するために、積極的な積分利得値を使用し、また、機械走行速度が比較的高い場合にはエンジン負荷を減少させる命令信号を発生するために、穏やかな積分利得値を使用する。それに代えて、第2の実施形態を用いる場合、第1の下限速度値以下に低下したエンジン速度に応じて、制御装置18は、(i)機械走行速度が比較的低い場合、もしくは、積分誤差が高い正の値の場合にはエンジン負荷を減少させる命令信号を発生するために、積極的な積分利得値を、(ii)積分誤差が大きな負の値の場合にはエンジン負荷を減少させるために使用される命令信号を発生させるために、中間の積分利得値を、また、(iii)機械走行速度が比較的高い場合、もしくは、積分誤差が小さな負の、あるいは、小さな正の値の場合にはエンジン負荷を減少させるために使用される命令信号を発生するために、穏やかな積分利得値を使用する。作業機械を駆動するに必要なエンジン負荷を低減することによって、エンジン12から出力を受けている他の装置にエンジンの出力を供給することができる。
【0020】ここで、図6を参照するが、図6は、目標機械速度設定値及び変更機械速度設定値をエンジン速度に対して比較した、本発明に関連する図2に示される下限速度制御100の作動例を示すものである。記述された下限速度制御100は、(1)エンジンが下限速度になっている、即ち、エンジン速度が第2の下限速度値以下に低下している、もしくは、(2)比例・積分帰還制御装置の積分項が、正でゼロでない値にある、という2条件の内の1を満足させるのに応じて、間欠的に作動し、起動される。図6上の点Aから点Bに至る曲線部分を参照する。下限速度制御は停止されているものとして示される。しかしながら、エンジン速度が第2の下限速度値以下に低下した場合(図6Aにおいて点B′で示される)、次いで、エンジン速度を第2の下限速度値以下に低下させる負荷が増大することにより、エンジンが所謂ラグ状態になり、それによって下限速度制御100が起動する。
【0021】下限速度制御が作動状態にある場合、制御装置18は、図3に示される本発明の第1実施形態、もしくは、図4に示される本発明の第2実施形態の、何れかからの積分利得値を下限速度要求信号の積分成分に対して与え、点B及び点Cの間の変更機械速度設定値に従うように作業機械に設定をする変速機10の総合比を変える。例示的実施形態にあっては、一定である比例利得が下限速度要求信号の比例成分に対して与えられる。しかしながら、その比例利得は、図3に示される積分利得と類似した、機械速度に対する対応関係を割り付けるか、もしくは、図4に示される積分利得と類似した機械速度と比例誤差とに対して対応関係を割り付けることができるであろう。点B及び点Eの間で変更機械速度設定値を設定することによりエンジン12にかかる負荷を緩和し、更にエンジン12が受けるラグ量を低減する。
【0022】エンジン12にかかる負荷が減少した場合(点線で描かれた曲線上の点Dとして示される)、下限速度制御は、作業機械の変更機械速度設定値が目標速度設定値(点Eとして示される)に達するまで作動状態を維持する。変更機械速度設定値が目標速度設定値に達した後、下限速度制御は停止する。点Dと点Eとの間の遷移は、下限速度要求信号にある積分項を「巻き戻している」と称される。
【0023】エンジン12にかけられた負荷が、エンジン12の最大トルク特性に対し確実に比例たものとするために、図5に示される加速度限界が目標機械速度設定値に与えられる。加速度限界をエンジン12の最大トルク特性に比例している目標機械速度設定値に与えらることによって、エンジン12に妥当な負荷が確実にかけられる。
【0024】下限速度要求信号にある比例成分と下限速度要求信号にある積分成分のために独立した下限速度値を使用することは、下限速度制御100にとって有利であることはいうまでもない。例えば、下限速度制御100にある比例成分は、エンジン速度が第2の下限速度値以下に低下すると起動できるだろうし、一方、第2の下限速度値が第1の下限速度値以上である場合には、その積分成分はエンジン速度が第1の下限速度値以下に低下すると起動できるだろう。第2の下限速度値は、制御装置18が負荷の増加を「予測」し、また、これが比例制御であることから、エンジン速度が大きく低下しないようにすることができる。一方、積分成分に基づいて総変速比を変更することによって、エンジン速度をゼロ誤差安定状態とする。従って、第1の下限速度値は、エンジン12が、与えられた負荷条件の下で最大出力で運転されるような特定のエンジン速度において選択されなければならない。従って、下限速度要求信号の積分成分に基づいて変速比を変更することにより、エンジンは、与えられた負荷条件下において最大出力で運転される。
【0025】本発明は、添付図面及び上記記述により詳細に図解され記述されたが、そのような図解、記述は例示であって特徴部を限定するものではないとみなされるべきものである。更に、好ましい実施形態のみが図解され記述され、しかも本発明の精神に含まれるあらゆる変形例、変更例は保護されることを求めるものと理解されたい。
【出願人】 【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
【出願日】 平成12年8月18日(2000.8.18)
【代理人】 【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔 (外9名)
【公開番号】 特開2001−108098(P2001−108098A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願2000−248574(P2000−248574)