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【発明の名称】 作業機の前後進切換え機構
【発明者】 【氏名】三井 武彦

【要約】 【課題】前進側から後進側の全範囲にわたって操作レバーの操作方向を折返すことなく実質上一方向への操作方向で前進側から後進側及びその逆への切換え及び増減速操作ができる作業機の前後進切換え機構を提供する。

【解決手段】中立操作範囲の前進操作範囲側に把持部16aを移動操作させることによって操作レバー16を前進側変速部材17に係合させ、中立操作範囲の後進操作範囲側に把持部を移動操作させることによって操作レバー16を後進側変速部材18に係合させ、上記操作レバーを前進側または後進側変速部材に係合させた後、その係合を維持したまま、この把持部を、前進または後進操作範囲内を移動操作させることによって、この把持部の移動量を、各変速部材に連結された伝達手段19,20を介して、前進操作範囲と後進操作範囲とでそれぞれ独立の伝達経路で変速機構部9に伝達する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】前後進切換え及び変速用の操作レバーと、該操作レバーに連結された前後進の切換え及び変速機構を構成する走行駆動装置を有し、前記操作レバーの把持部は、(a):機体左右方向に移動操作させ作業機の前記走行駆動装置を前進側または後進側の何れかに切換える第1操作範囲、(b):前記第1操作範囲の一端部からこの第1操作範囲に略直交する一方側に操作レバーの把持部を移動させ、その移動量に応じて、第1操作範囲から遠ざかるにつれて前進速度を増加させるように作業機の前進速度を増減させる第2操作範囲、および(c):前記第1操作範囲の他端部からこの第1操作範囲に略直交する他方側に操作レバーの把持部を移動させ、その移動量に応じて、第1操作範囲から遠ざかるにつれて後進速度を増加させるように作業機の後進速度を増減させる第3操作範囲、の各範囲を移動操作可能な作業機の前後進切換え機構において、前記第1操作範囲の第2操作範囲側に把持部を移動操作させることによって操作レバーを前進側変速部材に係合させ、前記第1操作範囲の第3操作範囲側に把持部を移動操作させることによって操作レバーを後進側変速部材に係合させ、前記操作レバーを前進側または後進側変速部材に係合させた後、その係合を維持したまま、この把持部を、第2または第3操作範囲内を移動操作させることによって、この把持部の移動量を、各変速部材に連結された伝達手段を介して、第2操作範囲と第3操作範囲とでそれぞれ独立の伝達経路で前記走行駆動装置の変速機構部に伝達することを特徴とする作業機の前後進切換え機構。
【請求項2】上記前進側および後進側変速部材は、機体左右方向に延びる1つの軸芯回りに回動自在であり、前記操作レバーは、前記軸芯と略同軸の他の軸芯回りに回動自在で且つこの軸芯と略直交する方向に延びるさらに他の軸芯回りに回動自在であることを特徴とする請求項1に記載の作業機の前後進切換え機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、除雪機や耕運機等の作業機の前後進切換え機構に関する。
【0002】
【従来の技術】摩擦円板式無段変速機構を有する除雪機が特開平10−68108号公報に記載されている。この公報記載の除雪機においては、略前後方向に設けられたガイド溝に沿って走行変速レバーを移動操作させ、摩擦板(エンジンの回転が伝達される円板に押接されている)を、スプライン軸上で摺動させて円板上をその直径方向(一側外周部←→中心部←→他側外周部)に移動させることにより、変速および前後進の切換えを行っている。
【0003】このような前後進切換え構造は、変速装置が円板や摩擦板等からなり、この摩擦板を、円板上で一方の外周側から他方の外周側まで直径方向に移動させるだけで、前進高速→前進低速→中立位置→後進低速→後進高速の切換えを行うことができるので、これと関連して走行変速レバーの移動操作も単に前後方向に移動させるだけで、この走行変速レバーの移動を、リンク機構を介して容易に摩擦板に伝達できる(走行変速レバー→リンク→摩擦板連結アーム→連結環→摩擦板)。このような走行変速レバーを前後方向に移動させる動作は、その方向と走行方向が一致するので、運転者の操作感覚上操作がしやすい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記摩擦円板式無段変速機構を用いた前後進切換え機構では、走行変速レバーの回動操作が、前進側および後進側ともに同一の伝達経路(走行変速レバー→リンク→摩擦板連結アーム→連結環→摩擦板)を介して摩擦板に伝達されるので、走行変速レバーの回動操作量に応じて摩擦板を移動させる回動操作の伝達特性が前進側と後進側で全く同じになる(前進側のレバー比特性を決定すれば後進側のレバー比特性も必然的に決定される)。このため、例えば同じ走行変速レバーの回動操作量で後進側を前進側より低速走行とするような、前進側と後進側のレバー比をそれぞれ相互に無関係に任意に設定して双方ともに最適な伝達特性を得ることは困難である。
【0005】一方、各種車両等の単独の変速装置として、歯車変速装置やVベルト自動変速装置がシフト切換え装置と組合せて用いられている。このような変速装置は、変速レバーによりシフト切換え装置を前進、後進または中立に切換え、切換えた状態で同じ変速レバーで変速比を変えるように回動操作する。この場合、中立から前進または後進に切換わった状態で、低速側から高速側へ変速比を変えるための変速レバー操作の動きは前進側および後進側ともに同じ方向である。したがって、変速レバーにより前進高速→前進低速→中立位置→後進低速→後進高速の切換えを行う場合、この変速レバーの回動動作方向は、前進側から後進側に移行する際、中立位置から折返して逆向きに回動させることになる。一般に運転操作感覚上、変速レバーの操作経路は、前進側の変速レバーを後方に移動させて速度を落とし、同じ方向にそのまま移動させて後進側に切換え、同じ方向にさらに回動させることにより後進側で増速するような動きとする一方向往路であることが好ましい。しかしながら、レバー経路が、往復経路となる折返し動作をしないでこのような同じ方向への一方向往路の回動操作で前後進を駆動操作することは従来の歯車式変速装置やVベルト自動変速装置では困難であった。
【0006】本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、操作レバーにより前後進の切換え及び変速機構を駆動する場合に、前進側から後進側の全範囲にわたって操作レバーの操作方向を折返すことなく実質上一方向への操作方向で前進側から後進側及びその逆への切換え及び増減速操作ができる作業機の前後進切換え機構の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明においては、前後進切換え及び変速用の操作レバーと、該操作レバーに連結された前後進の切換え及び変速機構を構成する走行駆動装置を有し、上記操作レバーの把持部は、(a):機体左右方向に移動操作させ作業機の前記走行駆動装置を前進側または後進側の何れかに切換える第1操作範囲、(b):前記第1操作範囲の一端部からこの第1操作範囲に略直交する一方側に操作レバーの把持部を移動させ、その移動量に応じて、第1操作範囲から遠ざかるにつれて前進速度を増加させるように作業機の前進速度を増減させる第2操作範囲、および(c):前記第1操作範囲の他端部からこの第1操作範囲に略直交する他方側に操作レバーの把持部を移動させ、その移動量に応じて、第1操作範囲から遠ざかるにつれて後進速度を増加させるように作業機の後進速度を増減させる第3操作範囲、の各範囲を移動操作可能な作業機の前後進切換え機構において、前記第1操作範囲の第2操作範囲側に把持部を移動操作させることによって操作レバーを前進側変速部材に係合させ、前記第1操作範囲の第3操作範囲側に把持部を移動操作させることによって操作レバーを後進側変速部材に係合させ、上記操作レバーを前進側または後進側変速部材に係合させた後、その係合を維持したまま、この把持部を、第2または第3操作範囲内を移動操作させることによって、この把持部の移動量を、各変速部材に連結された伝達手段を介して、第2操作範囲と第3操作範囲とでそれぞれ独立の伝達経路で前記走行駆動装置の変速機構部に伝達することを特徴とする作業機の前後進切換え機構を提供する。
【0008】この構成によれば、操作レバーを変速機構に連結するための前進側変速部材と後進側変速部材が備り、これらの前進側および後進側変速部材を別部材で構成し、これらの何れか一方に操作レバーを選択的に係合させるとともに、操作レバーの移動操作量を、前進側と後進側とでそれぞれ独立の伝達経路で変速機構部に伝達するようにしたので、例えば、変速部材に対する伝達部材(伝達経路を構成する部材)の寸法や連結位置を前進側と後進側とで変えることにより、操作レバーの移動操作量を変速機構部に伝達する際の伝達特性を前進側と後進側とで互いに無関係、且つ、それぞれ任意に設定してそれぞれに対し最適な条件で設定することができる。
【0009】また、歯車伝達装置やVベルト自動変速装置等の変速装置を用いた場合、前進高速→前進低速→中立位置→後進低速→後進高速の切換え操作において、変速装置あるいは切換え装置が前後進切換えの際に往復動作する場合であっても、操作レバーは一方側から他方側への一方向往路の操作で前後進切換え及び変速が簡単な構造で構成できる。
【0010】好ましい構成例では、上記前進側および後進側変速部材は、機体左右方向に延びる1つの軸芯回りに回動自在であり、上記操作レバーは、前記軸芯と略同軸の他の軸芯回りに回動自在で且つこの軸芯と略直交する方向に延びるさらに他の軸芯回りに回動自在であることを特徴としている。
【0011】この構成によれば、操作レバーと前進側変速部材または後進側変速部材とを係合させた後、操作レバーを回動操作したとき、前記係合部が擦れて係合部に摩擦抵抗を生じ、その分、回動操作力が重くなったり係合部に偏摩耗を起こすということがない。すなわち、操作レバーを回動操作する場合に、この操作レバーをその操作方向を途中で逆の方向に戻す往復経路とすることなく、実質上(途中の中立位置での左右方向の操作を含み)一定の前後方向の一方向往路の動きでその一端部から他端部の範囲で前進側から後進側までを駆動操作することができる。
【0012】なお、操作レバーを作業機の機体に対し垂直方向に突出させて設けた場合にはその回動操作方向は、作業機の機体に対し前後方向となり、機体の壁面等から水平方向に突出させた場合にはその回動操作方向は、作業機の機体に対し上下方向となる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る除雪機の全体を側面から見た要部構成図である。
【0014】除雪機1は、エンジンEの出力軸上に、機体駆動用プーリ2および除雪用プーリ3を有する。機体駆動用プーリ2は、ベルト4を介して駆動プーリ5に連結され、後述のように前後進切換えや変速機構を介して機体を走行駆動する。除雪用プーリ3は、ベルト6を介して雪巻き込み用プーリ7に連結され、機体前方から雪をかき込んで放出口8より噴出させて放出する。
【0015】エンジンEに連結された駆動プーリ5は駆動軸59に装着され、これを回転駆動する。この駆動軸59は、後述するように無段変速装置9を介して前後進切換え装置10に接続され、駆動輪11を回転駆動してこの駆動輪11と従動輪13間に巻回されたトラック12を駆動して機体を走行させる。
【0016】機体後部にはハンドル14および操縦パネル15が備る。操縦パネル15には、先端に把持部16aを設けた操作レバー16が上方に突出して備る。この操作レバー16の下端部に、略扇形状の前進側変速部材17および後進側変速部材18が後述のように係止する。前進側および後進側変速部材17,18にはそれぞれ別個に伝達ロッド19,20が接続され、その下端部で軸27を介して連結され、共通の変速駆動用リンク機構21に連結される。
【0017】操作レバー16にはさらに前後進切換え装置10を切換え動作させるための切換え駆動ワイヤ22が後述のように連結される。
【0018】図2は、上記作業機1を後方から見た図である。操作レバー16は、軸24廻りに矢印Aのように機体左右方向に回動操作可能であり、これに連動して切換え駆動ワイヤ22のインナーワイヤ(図示しない)をプッシュプル動作させて前後進切換え装置10を駆動し、駆動軸23を介して前進または後進方向に駆動輪11を回転駆動する(後述の図6、図8参照)。
【0019】前進側および後進側変速部材17,18はそれぞれその先端の屈曲した係止片17a,18aを介して操作レバー16に係合する。各係止片17a,18aには、図3に示すように、スリット25,26が形成されている。操作レバー16を機体左右方向に矢印Aのように回動操作することにより、この操作レバー16が一方のスリット25または26内に嵌入する。嵌入した状態で、嵌入した側の前進側または後進側変速部材17または18を前後方向に回動操作して変速装置9を駆動する。この場合、伝達ロッド19,20およびリンク機構21の作用により、前進側および後進側変速部材17,18はそれぞれ逆方向に移動し、例えば、操作レバー16を前進側変速部材17に係止させて矢印Bのように前方に移動させると、後進側変速部材18は自動的に矢印Cのように後方に移動する(後述)。
【0020】前進側および後進側変速部材17,18にはそれぞれ伝達ロッド19,20が連結され、これらの伝達ロッド19,20はその下端部で連結され、変速駆動リンク機構21に連結される。この連結構造については、後述の図8を参照して詳述する。
【0021】図4は操縦パネル15部分の平面図であり、図5は操作レバー16の操作範囲の説明図である。図4に示すように、操縦パネル15のほぼ中央部に操作レバー16のガイド溝39が形成される。このガイド溝39は、図5に示すように、中央部の左右方向に延びる第1操作範囲39aと、この第1操作範囲9aの左端から前方に延びる第2操作範囲39bと、第1操作範囲39aの右端から後方に延びる第3操作範囲39cとにより形成される。中央部の第1操作範囲39aは中立位置である。第2操作範囲39bは前進側の操作範囲であり、操作レバー16が前方(中立位置から遠ざかる方向)に移動するに従って前進方向に増速する。第3操作範囲39cは後進側の操作範囲であり、操作レバー16が後方(中立位置から遠ざかる方向)に移動するに従って後進方向に増速する。
【0022】図6は、操作レバー16部分の詳細構成図である。操作レバー16は、その下端部の機体左右方向(図面に垂直方向)に延びる軸芯40廻りに矢印Dのように回動操作可能である。前進側および後進側変速部材17,18も同様にこの軸芯40廻りに矢印F,Gのように回動可能である。前進側変速部材17には、伝達ロッド19が軸17b廻りに回動可能に枢着される。同様に、後進側変速部材18には、伝達ロッド20が軸18b廻りに回動可能に枢着される。伝達ロッド17,18が枢着される軸17b、18bは相互に軸芯40の反対側に軸芯40を挟んで設けられる。これらの伝達ロッド19,20は、その下端部で軸27(図1)を介して相互に回動可能に連結されている。
【0023】したがって、操作レバー16を一方の変速部材、例えば前進側変速部材17に係合させてこれを矢印Fのように回転させると、伝達ロッド19は矢印Hのように略その長手方向に沿って上下動作する。これにより、その下端部の軸27はレバー28(図8)を介して機体側に固定された軸29(図8)廻りに矢印K(図8)のように回動し、後進側の伝達ロッド20を矢印Jのように略その長手方向に沿って前進側の伝達ロッド19と同じ方向に上下動作させる。この後進側伝達ロッド20の上下動作がその上端部の軸18bを介して後進側変速部材18に伝達され、軸芯40に関し前進側変速部材17と反対側にあるこの後進側変速部材18を前進側変速部材17と対称的に矢印Gのように回動動作させる。これにより、前述の図3で説明したように、前進側および後進側変速部材17,18の上端の係止片17a,18aは、相互に逆方向に移動することになり、一方の係止片に操作レバー16を係入してこれを移動操作すると、他方の係止片は自動的にこれと逆方向に移動する。
【0024】操作レバー16は、前述のように機体左右方向に延びる軸芯40廻りに回動可能であるとともに、この軸芯40に直交して操作レバー16の延びる方向に対して交差する方向に延びる軸24廻り回動可能である。これにより、操作レバー16は、中立位置の第1操作範囲39a(図5)内で左右方向に移動可能となる。軸24は、機体側のフレーム43に固定されたスリーブ42内にその軸廻りに回動可能に嵌挿されて保持される。スリーブ42から突き出た部分の軸24にレバー45が固着される。このレバー45の端部に切換え駆動ワイヤ22のインナーワイヤ22aが取付けられる。これにより、操作レバー16を中立位置で左右に回動操作することにより、インナーワイヤ22aをプッシュプル動作させて切換え装置10(図1)を、後述のように前進側または後進側に切換える。
【0025】図7は、切換え装置10の詳細構成図である。切換え駆動ワイヤ22のインナーワイヤ22aの端部が、切換え装置10の上面に設けた側面視がL字状のリンクレバー46の縦片46cの上端部に結合される。縦片46cの下端部に軸部46bが一体接合される。軸部46bは保持板56により切換え装置10上に回動可能に支持される(後述の図9参照)。この軸部46bの端部46aが切換え軸47の上端部に当接する。切換え軸47はスプリング48により常に上方に付勢される。前述の操作レバー16を機体左右方向に回動操作することにより、インナーワイヤ22aが矢印Pのようにプッシュプル動作する。これにより、リンクレバー46が、保持板56を挿通する軸部46b廻りに回動し、その端部46aが矢印Qのように回動して、切換え軸47を上方または下方に移動させる。
【0026】切換え軸47は、スリーブ軸54内に上下にスライド可能に装着される。この切換え軸47は、そのほぼ中央部にスリーブ軸54の内径とほぼ等しい外径の太径部47aとその上下両側に形成された細径部47b,47cとを有する。スリーブ軸54の下部には軸55が圧入されて一体化される。この軸55の下端部には、傘歯車のピニオン55aが設けられ、駆動輪11(図1)の駆動軸23上に装着した相手側の傘歯車(図示しない)と噛み合ってこの駆動軸23を回転動作させる。
【0027】スリーブ軸54には上下2段の位置にそれぞれ3個ずつボール49,50(図では上下それぞれ1個ずつのみ示す)が外側に突出可能に填め込まれる。切換え軸47が上方に移動すると、その太径部47aが上側のボール49を外側に押出す。逆に切換え軸47が下方に移動すると、その太径部47aが下側のボール50を外側に押出す。
【0028】スリーブ軸54には上下のボール49,50に対応した上下2段の位置に、スリーブ軸54から分離して(すなわち、スリーブ軸54に対し回転可能な)傘歯車52,53が装着される。これらの傘歯車52,53は、エンジン側から変速装置を介して駆動される変速伝達軸51の端部のピニオン51aと噛み合い、それぞれ相互に逆方向に回転する。
【0029】操作レバーによりワイヤ22を介して、例えば切換え軸47を上方向に移動させて上側のボール49を外側に押出すと、このボール49が上側の傘歯車52と係合してスリーブ軸54およびこれと一体の軸55を上側の傘歯車52と一体に結合して、軸55をこの上側の傘歯車52とともにこれと同じ方向(例えば前進方向)に回転させる。逆に、切換え軸47を下方向に移動させて下側のボール50を外側に押出すと、このボール50が下側の傘歯車53と係合してスリーブ軸54およびこれと一体の軸55を下側の傘歯車53と一体に結合して、軸55をこの下側の傘歯車53とともにこれと同じ方向(後進方向)に回転させる。
【0030】このようにして、操作レバー16を中立位置の第1操作範囲39a(図5)内で機体左右方向に回動操作することにより、切換え装置10を前進側または後進側に切換えることができる。なお、図7は、上下のボール49,50がともにスリーブ軸54内に引込んで上下いずれの傘歯車52,53とも係合しない中立位置の状態を示す。
【0031】図8は、操作レバーと変速装置9とを連結するリンク機構21の構成図である。また、図9は変速装置9および切換え装置10部分の平面図であり、図10はそのA−A矢視図である。
【0032】図8に示すように、前進側および後進側の伝達ロッド19,20の下端部同士を連結する軸27は、レバー28を介して軸29の一端部に連結される。軸29は車体フレーム30側に回動可能に保持される。軸29の他端部にはレバー38の上端部が固着される(図2参照)。レバー38の下端部にはリンクロッド31が枢着される。リンクロッド31は、板金製の連結枠32を介して駆動部材33に連結される。連結枠32の側面には開口37が形成される。この開口37を通して変速装置9の駆動プーリ36の一部が外側に突出する(図2、図9参照)。これにより連結枠32を機体の内部側に寄せて設けることができ、リンク機構21全体をコンパクトに機体フレーム内に収めることができる。
【0033】駆動部材33は、変速装置9を動作させるための駆動枠34の右側面に連結される。この駆動枠34は、機体フレーム(図示しない)に対し、軸35廻りに矢印R(図9)のように回動可能に取付けられる。駆動枠34の中間部には、駆動軸59の位置の上下2箇所に長孔58が形成される。この長孔58内に、変速装置の押圧部材62に固定された上下2個の各押圧ボルト57が長孔に沿って移動可能に挿入される。これにより、操作レバーによるリンク機構21を介した往復動作(矢印R)に応じて、駆動枠34が軸35廻りに回動する。駆動軸59には、エンジン側からプーリ5を介して回転が伝達される(図1参照)。
【0034】変速装置9は、駆動軸59(図2、図9、図10)上に装着された駆動プーリ36およびVベルト61を介してこの駆動プーリ36に連結された従動プーリ60により構成される。駆動プーリ36は、対向してV溝を形成する一対の円錐状固定プーリ36aおよび可動プーリ36bからなる。固定プーリ36aは駆動軸59に固定され、可動プーリ36bは駆動軸59上を軸方向にスライド可能である。可動プーリ36bは操作レバーに連結された押圧部材62により押圧駆動され駆動軸59上をスライドする。これにより、固定プーリ36aとの間のV溝の幅が変り、このV溝に装着されたVベルト61のプーリ半径方向の位置が変る。これにより、変速比が無段で連続的に変化する。
【0035】従動プーリ60は、変速伝達軸51上に装着された固定プーリ60aおよび可動プーリ60bからなる。変速伝達軸51は、前述のように、切換え装置10に連結される(図7参照)。固定プーリ60aはこの変速伝達軸51に固定され、可動プーリ60bは変速伝達軸51上を軸方向にスライド可能である。固定プーリ60aおよび可動プーリ60b間には、駆動プーリ36と同様にV溝が形成され、Vベルト61が巻回される。この場合、駆動プーリ36と従動プーリ60では、固定プーリと可動プーリの軸方向の位置が逆に配置される。すなわち、図9に示すように、駆動プーリ36では、固定プーリ36aが軸後方側(図の左側)に配置され可動プーリ36bが軸前方側(図の右側)に配置される。一方、従動プーリ60では、固定プーリ60aが軸前方側(図の右側)に配置され、可動プーリ60bが軸後方側(図の左側)に配置される。このように配置することにより、駆動プーリ36側では、押圧部材62に押されてV溝幅が狭まりVベルト61がプーリ外側に移動するにつれて固定プーリ36aの傾斜面36cに沿って軸後方側に移動する。これに対応して、従動プーリ60側では、一定長のVベルト61が内側に移動する。このとき固定プーリ60aが軸前方側に配置されているため、Vベルト61はその傾斜面60cに沿って駆動プーリ36と同じ軸後方側に移動する。これにより、駆動プーリ36のV溝と従動プーリ60のV溝の位置が常に整合してVベルト61が歪むことなく回転伝達することができる。
【0036】駆動プーリ36および従動プーリ60の可動プーリ36b,60bにはそれぞれ反力緩衝機構63が設けられる。この反力緩衝機構63は、各可動プーリ36b,60bの背面側に設けた圧縮スプリング67と、螺旋状の傾斜ガイド64と、この傾斜ガイド64上を転動するローラ65とにより構成される。操作レバーにより無段変速装置9の可動プーリ36b,60bを駆動する場合、Vベルトを介して可動プーリ側からその反力が操作レバーに伝達される。この場合、反力は、スプリング67とともに傾斜ガイド64を介してローラ65で受けられるため、反力が半径方向と軸方向の2方向の分力に分解される。したがって、操作レバーに作用する力となる軸方向の分力が小さくなる。このような反力緩衝機構63を駆動プーリ36および従動プーリ60の両方に設けることにより、操作レバーによる押圧部材62に対する押圧駆動力を大幅に軽減することができ、操作が容易に行われ操作感覚が向上するとともに駆動手段の構成部材を小型軽量化することが可能になる。なお、駆動プーリおよび従動プーリを構成する各可動プーリおよび固定プーリの部品としての互換性や汎用性を高めるために、固定プーリ36a,60aの背面側にも可動プーリと同様に傾斜ガイド64が備っている。
【0037】図11は、操作レバーに対する反力をさらに軽減するための変速部材部分の構造を示し、(A)は正面図、(B)は側面図である。前進側変速部材17にピン68を設け、このピン68に引張りスプリング70の一端を係止する。機体フレーム71((B)図)にピン69を設け、スプリング70の他端を係止する。スプリング70は、操作レバー16が中立位置(図示した状態)のときに、変速部材17,18の軸芯40と整合する位置に配設する。この場合、機体フレーム71側のピン69の位置を矢印Sのように位置調整可能にすることが望ましい。この位置調整のための構成としては、例えば機体フレーム71側に長孔(図示しない)を設けその長孔内でピン69を矢印Sのように位置調整可能に装着し、調整した位置でネジ等により固定する構成等とすることができる。
【0038】このようにスプリング70が軸芯40を通る中立位置では、スプリング70は変速部材17に対し引張り力を付与しない。操作レバー16を軸芯40廻りに回動操作して前進方向または後進方向に駆動すると、ピン68が回動してスプリング70の位置が軸芯40の位置から外れる。これにより、スプリング70の引張り力が変速部材17に作用し、変速部材17をさらに同じ駆動方向に回転するように付勢する。したがって、操作レバー16の操作力は変速装置側からの反力に抗して軽減される。前述のように、前進側および後進側変速部材17,18は連動するため、操作レバー16を前進側または後進側の何れの方向に回動操作しても反力に抗するスプリング70の作用力を得ることができ、操作力を軽くできる。この場合、操作レバー16の回転操作量を多くするほどスプリング70の引張り力が大きくなるように、各ピン68,69の取付け位置等を定めておくことが望ましい。
【0039】以上説明した実施形態においては、Vベルト式無段変速装置を用いた構成を示したが、本発明は歯車式変速装置に対しても適用可能である。また、上記実施形態は除雪機であるが、本発明はこれに限定されず、耕運機や除草機あるいはブルドーザやショベルカー等の建設車両その他各種作業機に対し適用可能である。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、本発明では、操作レバーを変速機構に連結するための前進側変速部材と後進側変速部材が備り、これらの前進側および後進側変速部材を別部材で構成し、これらの何れか一方に操作レバーを選択的に係合させるとともに、操作レバーの移動操作量を、前進側と後進側とでそれぞれ独立の伝達経路で変速機構部に伝達するようにしたので、例えば、伝達ロッド等の伝達経路を構成する部材の寸法や取付け位置を前進側と後進側とで変えることにより、操作レバーの移動操作量を変速機構部に伝達する際の伝達特性を前進側と後進側とで互いに無関係、且つ、それぞれ任意に設定してそれぞれに対し最適な条件で設定することができる。
【0041】また、歯車伝達装置やVベルト自動変速装置等の変速装置を用いた場合、前進高速→前進低速→中立位置→後進低速→後進高速の切換え操作において、変速装置あるいは切換え装置が前後進切換えの際に往復動作する場合であっても、操作レバーは一方側から他方側への一方向往路の操作で前後進切換え及び変速が簡単な構造で構成できる。
【出願人】 【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
【出願日】 平成11年10月6日(1999.10.6)
【代理人】 【識別番号】100100284
【弁理士】
【氏名又は名称】荒井 潤
【公開番号】 特開2001−108094(P2001−108094A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−285994