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【発明の名称】 自動変速機のフェールセーフ装置
【発明者】 【氏名】村上 新

【氏名】大竹 正訓

【氏名】大坪 秀顕

【要約】 【課題】フェールによって、所定の変速状態を設定するための係合装置を係合させることのできない事態が生じることを未然に回避でき、しかも新たなバルブ類の追加を必要としない装置を提供する。

【解決手段】入力された油圧を調圧レベルに応じた油圧に調圧して係合装置C1 ,C2 に出力するとともに調圧に伴って排圧の生じる制御弁50,70を備えた自動変速機のフェールセーフ装置であって、前記入力された油圧を調圧して前記係合装置C1 ,C2 に供給できないフェールが生じた場合に、前記制御弁50,70における排圧の生じる箇所を所定の油圧の供給部に連通させる切換手段30,60が設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力された油圧を調圧レベルに応じた油圧に調圧して係合装置に出力するとともに調圧に伴って排圧の生じる制御弁を備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記入力された油圧に基づく油圧を前記係合装置に供給できないフェールが生じた場合に、前記制御弁における排圧の生じる箇所を所定の油圧の供給部に連通させる切換手段が設けられていることを特徴とする自動変速機のフェールセーフ装置。
【請求項2】 前進走行のための複数の走行レンジに対応して切り換えられてそれぞれの走行レンジに応じたレンジ圧を出力する第1のバルブと、前進走行する際に油圧が供給されて係合する係合装置と、入力ポートから供給された前進走行のための第1のレンジ圧を調圧して出力ポートから前記係合装置に出力するとともに調圧に伴ってドレーンポートに排圧を生じさせる制御弁とを備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記制御弁の入力ポートが閉じられるフェールが生じた場合に、前記第1のバルブから出力される前進走行のための第2のレンジ圧をその制御弁におけるドレーンポートに供給する切換機構を備えていることを特徴とする自動変速機のフェールセーフ装置。
【請求項3】 後進走行する際に油圧が供給されて係合する係合装置と、入力ポートから供給された後進走行のためのレンジ圧を調圧して出力ポートから前記係合装置に出力するとともに調圧に伴ってドレーンポートに排圧を生じさせる制御弁とを備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記入力ポートを出力ポートに連通させることのできないフェールが生じた場合に、前記ドレーンポートを後進走行のためのレンジ圧源に切り換えて接続する切換機構を備えていることを特徴とする自動変速機のフェールセーフ装置。
【請求項4】 油圧ポンプで発生させた油圧をライン圧に調圧するとともに調圧に伴って排圧の生じる第1の調圧弁と、係合装置を係合させるための、前記ライン圧より低圧の係合圧を、前記ライン圧を元圧として調圧をおこなって出力するとともに排圧の生じる第2の調圧弁と、前記第1の調圧弁の排圧を元圧として調圧をおこなって出力する第3の調圧弁とを備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記第1の調圧弁の排圧を、前記第2の調圧弁の排圧の生じる箇所に供給する油路を備えていることを特徴とする自動変速機のフェールセーフ装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、係合装置を油圧によって係合させることにより所定の変速状態を設定する自動変速機に関し、特にその係合装置に対する油圧の供給をフェール時においても確実に実行することのできるように構成したフェールセーフ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば車両用の自動変速機は、クラッチやブレーキなどの複数の係合装置を選択的に係合・解放させることにより、動力の伝達経路を変更して所定の変速状態を達成するように構成されている。その係合装置として、油圧によって係合する多板クラッチや多板ブレーキが広く用いられており、またその係合・解放の切り換えのための油圧制御装置は、例えば電磁弁から出力する信号圧によってシフトバルブなどの所定のバルブを動作させてそのバルブから係合圧を出力させるように構成されている。
【0003】自動変速機の変速制御を油圧によっておこなう場合、上記のように複数のバルブが関与することが多く、そのために、いずれかのバルブに機械的もしくは電気的な異常が生じると、所期の変速状態を達成できなくなる場合がある。このような異常すなわちフェールが生じた場合にそのフェールによる影響を回避して所期の変速状態を達成するいわゆるフェールセーフ機構を備えた自動変速機が特開平5−302670号公報に記載されている。
【0004】この公報に記載された自動変速機は、コーストカットオフバルブに対するソレノイドバルブからの信号圧をコースト状態で遮断することによりコーストカットオフバルブを介して所定のブレーキに係合圧を送り、これを係合させることによりエンジンブレーキを効かせる自動変速機であって、他のソレノイドバルブで制御されるロックアウトバルブを設け、フェールによってコーストカットオフバルブに信号圧が印加された場合には、そのロックアウトバルブを動作させてこのロックアウトバルブからコーストカットオフバルブにエンジンBレンジ圧を供給し、フェールによってコーストカットオフバルブに印加されている信号圧にそのエンジンBレンジ圧を対抗させて作用させることにより、エンジンブレーキ状態を確保するように構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記の公報に記載された自動変速機では、ソレノイドバルブもしくはその信号圧を受けて動作するコーストカットオフバルブのフェールによってエンジンブレーキが効かない状態が生じると、ロックアウトバルブを他のソレノイドバルブの信号圧で動作させて、フェールにより生じている信号圧を実質的にキャンセルする油圧を生じさせるようになっている。したがって上記従来の自動変速機では、そのような油圧を生じさせるロッアウトバルブを新たに設ける必要がある。またそれに伴ってそのロックアウトバルブを動作させるための信号圧を生じさせる制御およびその信号圧を供給する油路などが必要になる。このように上記従来の自動変速機では、フェールが原因となって生じる異常な動作状態を回避するために、新たなバルブなどの構成が必要になり、装置が大型化し、またコスト高になる可能性があった。
【0006】この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、装置を大型化することなくフェールセーフを確立することのできる自動変速機のフールセーフ装置を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、入力された油圧を調圧レベルに応じた油圧に調圧して係合装置に出力するとともに調圧に伴って排圧の生じる制御弁を備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記入力された油圧に基づく油圧を前記係合装置に供給できないフェールが生じた場合に、前記制御弁における排圧の生じる箇所を所定の油圧の供給部に連通させる切換手段が設けられていることを特徴とするフェールセーフ装置である。
【0008】したがって請求項1の発明では、制御弁に入力した油圧をその制御弁から調圧して出力できないフェールが生じた場合、その制御弁の排圧の生じる箇所に油圧が供給される。その排圧は、制御弁が調圧をおこなっている場合に生じるものであるから、上記のフェールによって、排圧の生じる箇所が係合装置に出力する箇所に連通することになり、したがってその排圧の生じる箇所から油圧を供給することにより、係合装置に係合圧を供給することが可能になる。そして、このように排圧の生じる箇所への前記供給部からの油圧の供給は、既存のバルブにより油路を開閉することにより実行することができる。したがって請求項1の発明では、新たなバルブなどの制御機器を追加せずに、フェール時でも前記係合装置を係合させ、所定の変速状態を確保することができる。
【0009】また、請求項2の発明は、前進走行のための複数の走行レンジに対応して切り換えられてそれぞれの走行レンジに応じたレンジ圧を出力する第1のバルブと、前進走行する際に油圧が供給されて係合する係合装置と、入力ポートから供給された前進走行のための第1のレンジ圧を調圧して出力ポートから前記係合装置に出力するとともに調圧に伴ってドレーンポートに排圧を生じさせる制御弁とを備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記制御弁の入力ポートが閉じられるフェールが生じた場合に、前記第1のバルブから出力される前進走行のための第2のレンジ圧をその制御弁におけるドレーンポートに供給する切換機構を備えていることを特徴とするフェールセーフ装置である。
【0010】したがって請求項2の発明では、前進走行のために係合させる係合装置に、制御弁に対する第1のレンジ圧を元圧として係合圧を供給できなくなった場合、第1のバルブを切り換えて第2のレンジ圧を出力させることにより、前記制御弁に対してそのドレーンポートから油圧を供給でき、これが係合装置に係合圧として供給されて係合装置が係合する。したがって請求項2の発明では、第1のバルブから出力可能な第2のレンジ圧および制御弁のドレーンポートとを利用して、フェール時に係合圧を発生でき、新たなバルブなどを追加せずにフェール時の前進走行を確保できる。
【0011】さらに、請求項3の発明は、後進走行する際に油圧が供給されて係合する係合装置と、入力ポートから供給された後進走行のためのレンジ圧を調圧して出力ポートから前記係合装置に出力するとともに調圧に伴ってドレーンポートに排圧を生じさせる制御弁とを備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記入力ポートを出力ポートに連通させることのできないフェールか生じた場合に、前記ドレーンポートを後進走行のためのレンジ圧源に切り換えて接続する切換機構を備えていることを特徴とするフェールセーフ装置である。
【0012】したがって請求項3の発明では、制御弁の入力ポートに供給した油圧を後進走行のために係合させる係合装置に出力できないフェールが生じた場合、その入力ポートからレンジ圧を供給することに替えてドレーンポートからそのレンジ圧を供給し、これを出力ポートから係合装置に供給する。そのため、フェール時であっても後進走行のための係合装置に油圧を供給してこれを係合させ、後進走行を確保することができる。また、このようなドレーンポートへのレンジ圧源からのレンジ圧の供給は、既存のバルブにより油路を開閉することにより実行することができる。したがって請求項3の発明では、新たなバルブなどの制御機器を追加せずに、フェール時でも前記係合装置を係合させ、後進状態を確保することができる。
【0013】そして、請求項4の発明は、油圧ポンプで発生させた油圧をライン圧に調圧するとともに調圧に伴って排圧の生じる第1の調圧弁と、係合装置を係合させるための、前記ライン圧より低圧の係合圧を、前記ライン圧を元圧として調圧をおこなって出力するとともに排圧の生じる第2の調圧弁と、前記第1の調圧弁の排圧を元圧として調圧をおこなって出力する第3の調圧弁とを備えた自動変速機のフェールセーフ装置において、前記第1の調圧弁の排圧を、前記第2の調圧弁の排圧の生じる箇所に供給する油路を備えていることを特徴とするフェールセーフ装置である。
【0014】したがって請求項4の発明では、第1の調圧弁が最も高い油圧を出力し、したがってその排圧もある程度高い油圧となっている。係合装置に対する係合圧を調圧する第2の調圧弁が、ライン圧に基づく油圧を出力できなくなると、その第2の調圧弁の排圧の生じる箇所に、第1の調圧弁の排圧が供給される。これは、第3の調圧弁の入力圧であり、したがって係合装置には、第3の調圧弁の入力圧と同じ圧力の油圧が係合圧として供給され、その係合状態が確保される。そしてこれは、油路の追加のみで達成でき、新たなバルブなどの制御機器を必要としない。
【0015】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明を図に示す具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とすることのできる自動変速機の一例を示すと図3のとおりである。図3に示す例は、ハイブリッド駆動装置における自動変速機として構成した例であり、第1の動力源としての内燃機関1および第2の動力源としての電動機2の動力を個別にもしくは合成して出力するように構成されている。その内燃機関1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃料を燃焼して動力を出力する動力装置である。以下の説明では、内燃機関をエンジン(Eng.)1と記す。
【0016】また電動機2は、要は、電流が供給されることにより回転して動力を出力する動力装置であって、同期型などの各種の形式のモータを使用することができ、さらには発電機能を備えた電動機を使用することができる。以下の説明では、電動機として発電機能を備えたものを例として示し、電動機をモータ・ジェネレータ(M/G)2と記す。
【0017】これらエンジン1およびモータ・ジェネレータ2の動力を個別にもしくは合成して出力する装置としてダブルピニオン型遊星歯車機構3を主体とした動力伝達装置が設けられている。この遊星歯車機構3は、外歯歯車であるサンギヤ4と、このサンギヤ4と同心円上に配置した内歯歯車であるリングギヤ5と、サンギヤ4に噛合する第1ピニオンギヤ6およびこの第1ピニオンギヤ6とリングギヤ5とに噛合した第2ピニオンギヤ7とを自転かつ公転自在に保持したキャリヤ8とを回転要素とし、これら3つの回転要素の間で差動作用をおこなう公知の構成のものである。
【0018】これらの回転要素のうちサンギヤ4にエンジン1の出力軸(例えばクランクシャフト)が連結されている。エンジン1としてレシプロエンジンを使用した場合には、燃料の間欠的な燃焼によるトルクの変動すなわち振動が生じるので、その振動を吸収もしくは緩和するために、エンジン1とサンギヤ4との間にダンパ機構(図示せず)を介在させてもよい。また、キャリヤ8にモータ・ジェネレータ2のロータ2rが連結されている。
【0019】さらに、リングギヤ5とケーシング9との間にブレーキB1 が設けられている。このブレーキB1 はリングギヤ5を選択的に固定するためのものであって、ケーシング9との間に設けた多板ブレーキやバンドブレーキなどの摩擦係合式の装置を使用することができる。
【0020】出力部材である出力軸10がエンジン1と同一軸線上に配置されている。この出力軸10に対して動力を選択的に伝達するための連結手段として2つのクラッチが設けられている。すなわちキャリヤ8と出力軸10とを選択的に連結する第1クラッチC1 と、リングギヤ5と出力軸10とを選択的に連結する第2クラッチC2 とが設けられている。これらのクラッチC1 ,C2 は、油圧によって係合・解放する多板式のもの以外に、噛み合い式のクラッチなど各種の形式のものを使用することができる。
【0021】前記出力軸10が変速機11に連結されている。この変速機11は、変速比を変更して駆動トルクを増減するためのものであって、遊星歯車機構を主体として構成された有段式の変速機や、同期切換機構(シンクロナイザー)などによって回転部材の連結関係を変更するタイプの有段式変速機、ベルト式の無段変速機、トロイダル式の無段変速機などの各種の変速機を使用することができる。図1には、ベルト式の無段変速機11を模式的に示してある。
【0022】この無段変速機11は、公知の構成のものであって、溝幅を変更することのできる駆動プーリ12と従動プーリ13とを平行に配置し、これらのプーリ12,13に対するベルト(図示せず)の巻き掛け半径を、各プーリ12,13の溝幅を変更することにより変更して変速比を連続的に変化させるように構成されている。
【0023】その従動プーリ13と平行にカウンタ軸14が配置され、これら従動プーリ13とカウンタ軸14とが1対のカウンタギヤ15,16によって連結されている。また、このカウンタ軸14に取り付けられた他のギヤ17が出力ギヤ18に噛合している。この出力ギヤ18は、一例としてディファレンシャル装置のリングギヤである。
【0024】上記の遊星歯車機構3も差動作用をおこなうから、その機能を利用して各種の走行モードを選択することができる。その各種の走行モードは、前記のブレーキB1 およびクラッチC1,C2 を選択的に係合させることにより設定される。その制御をおこなうために油圧制御装置20と、その油圧制御装置20に制御信号を出力する電子制御装置(T−ECU)21と、油圧制御装置20の油路の切り換えをおこなうシフト装置22とが設けられている。その油圧制御装置20は、各種の切換弁や調圧弁ならびに制御のための信号圧を出力するソレノイドバルブなどを主体として構成されている。また、電子制御装置21は入力される各種のデータに基づいて演算をおこない、その結果に基づいて油圧制御装置20におけるソレノイドバルブに指示信号を出力し、所定の走行モードを設定するように構成されている。さらに、シフト装置22は、シフトレバー23によって各走行モードに対応するレンジ(ポジション)を選択するように構成されている。
【0025】そのレンジは、パーキング(P)、リバース(R)、ニュートラル(N)、ドライブ(D)、ブレーキ(B)の各レンジである。これらのレンジのうち、パーキングおよびニュートラルの各レンジは、車両を停止状態に維持するレンジであり、各クラッチC1 ,C2 が係合することはない。また、ドライブおよびブレーキの各レンジは前進走行のためのレンジであり、前記ブレーキB1 が連結状態(係合状態)になることはない。さらにリバースレンジは、後進走行のためのレンジであり、第1のクラッチC1 が連結状態(係合状態)となってキャリヤ8が出力要素とされる。そして、各レンジに応じて後述する走行モードが設定されるようになっている。
【0026】また、各走行モードに応じてエンジン1およびモータ・ジェネレータ2を駆動・停止する必要があるので、エンジン1およびモータ・ジェネレータ2のそれぞれのための電子制御装置(EーECU、MG−ECU)24,25が設けられている。上記の各電子制御装置21,24,25は、演算処理装置(CPUもしくはMPU)と記憶装置(RAM、ROM)ならびに入出力インターフェースを主体とし、入力されたデータと予め記憶しているプログラムとに従って演算をおこない、その演算結果に応じた信号を出力するように構成されている。そして、各電子制御装置21,24,25が、同じく電子制御装置であるハイブリッド制御装置26にデータ通信可能に接続されている。このハイブリッド制御装置26が走行モードを判断して各電子制御装置21,24,25に制御信号を出力するように構成されている。これらの電子制御装置21,24,25およびハイブリッド制御装置26で使用されるデータを例示すれば、車速、アクセル開度(図示しないアクセルペダルの踏み込み量)、シフト装置22で選択されているレンジ信号、前記モータ・ジェネレータ2に対して充放電するバッテリ(図示せず)の充電状態(SOC:State of Charge)、バッテリ温度、変速機11で設定されている変速比などである。
【0027】ここで走行モードについて説明すると、各レンジに応じて図4に示す各走行モードが設定される。すなわちドライブレンジおよびブレーキレンジでは、ETCモードと、直結モードと、モータ走行モードとが設定される。そのETCモードは、相対的に大きい駆動力が要求されている際に設定されるモードであって、エンジン1の出力トルクを遊星歯車機構3およびモータ・ジェネレータ2によって増幅して出力するモードである。したがってこのモードでは、第2クラッチC2のみが係合させられる。すなわち遊星歯車機構3におけるサンギヤ4にエンジン1のトルクが入力されてこれが入力要素となり、また、キャリヤ8にモータ・ジェネレータ2が連結されてこれが反力要素となり、さらにリングギヤ5が第2クラッチC2 を介して出力軸10に連結されてこれが出力要素となる。この場合、エンジン1からサンギヤ4にトルクを入力すると、キャリヤ8がサンギヤ4とは反対方向に回転しようとするが、そのキャリヤ8にモータ・ジェネレータ2によってエンジン1の回転方向の反力トルクを入力すると、出力要素であるリングギヤ5には、エンジン1から入力されたトルクを、遊星歯車機構3のギヤ比(サンギヤの歯数とリングギヤの歯数との比)に応じて増幅したトルクが生じる。その結果、大きい駆動力を得ることができる。またこの場合、遊星歯車機構3の3つの回転要素は相対回転する。そして特に、キャリヤ8によって保持されているピニオンギヤ6,7の回転数が、サンギヤ4やキャリヤ8の回転数より大きくなる。
【0028】直結モードは、主としてエンジン1によって走行するモードであって、遊星歯車機構3の全体を直結状態として走行するモードである。したがって各クラッチC1 ,C2 が共に連結状態(係合状態)に制御される。その結果、遊星歯車機構3における2つの回転要素すなわちキャリヤ8とリングギヤ5とが一体化するように連結されるので、遊星歯車機構3の全体が一体化される。その結果、エンジン1の出力するトルクがそのまま出力軸10に伝達される。したがってこの走行モードは、エンジン1の運転効率の良い比較的低負荷の定速走行の際に設定される。なおこの場合、モータ・ジェネレータ2から出力して駆動トルクを大きくしてもよく、あるいはエンジン1のトルクでモータ・ジェネレータ2を駆動して発電をおこなうこともできる。
【0029】モータ走行モードは、モータ・ジェネレータ2のみによって走行するモードであり、したがって第1クラッチC1 のみが連結状態(係合状態)となってモータ・ジェネレータ2が出力軸10に直接連結される。モータ・ジェネレータ2の出力トルクはその回転数に拘わらず制御することができるので、このモータ走行モードは発進の際に設定される。
【0030】したがって車両が走行する場合、モータ走行モードで発進し、その後にエンジン1を駆動し、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との回転数がほぼ一致した時点で直結モードに切り換えられる。その発進の際あるいは直結モードで走行している際に、アクセルペダルが大きく踏み込まれて要求駆動力が大きくなった場合、ETCモードが設定されてエンジン1による駆動力をモータ・ジェネレータ2の出力で補助(アシスト)することになる。また、これらいずれの走行モードにおいても、モータ・ジェネレータ2と出力軸10とがトルク伝達可能に連結されるので、減速時には車両の有する走行慣性力によってモータ・ジェネレータ2を回転させてエネルギーの回生をおこなうことができる。
【0031】ニュートラルレンジとパーキングレンジとでは、ニュートラル状態と、充電モードと、極低温時のエンジン起動との各駆動状態が設定される。ニュートラル状態は、遊星歯車機構3が動力の伝達の機能を果たさない状態であり、したがって各クラッチC1 ,C2 およびブレーキB1 が解放状態とされる。
【0032】また、充電モードは、出力軸10に動力を伝達しない状態でエンジン1によってモータ・ジェネレータ2を駆動する動作状態であり、ブレーキB1 のみが係合状態とされる。したがって遊星歯車機構3のリングギヤ5を固定した状態でサンギヤ4をエンジン1によって回転させることになるので、キャリヤ8が出力要素となってこれがサンギヤ4とは反対方向に回転する。すなわちモータ・ジェネレータ2がエンジン1によってエンジン1とは反対方向に駆動され、その結果、モータ・ジェネレータ2が発電作用をおこなう。
【0033】さらに、極低温時でのエンジン1の起動には、大きいトルクが必要となるので、モータ・ジェネレータ2によってエンジン1を駆動してエンジン1を起動する。これは、上記の充電モードでの動力の入出力状態が反対の状態である。すなわちブレーキB1 のみを係合させてリングギヤ5を固定した状態でモータ・ジェネレータ2をエンジン1の正回転方向と反対方向に駆動する。その結果、キャリヤ8が逆回転することにより、サンギヤ4およびこれに連結されているエンジン1が正回転し、エンジン1が起動される。
【0034】リバースレンジは、後進走行するためのレンジであって、その動力源としてモータ・ジェネレータ2およびエンジン1のいずれも使用することができる。すなわちモータ走行モードが可能であって、第1クラッチC1 のみを係合させてモータ・ジェネレータ2を出力軸10に直接連結し、その状態でモータ・ジェネレータ2を逆回転させることにより、出力軸10を後進走行方向に回転させる。その場合、モータ・ジェネレータ2の出力トルクは、回転数に拘わらず制御できるので、第1クラッチC1 を完全に連結状態としたまま後進方向に発進することができる。
【0035】これに対してエンジン1によって後進走行する場合には、遊星歯車機構3で反転機能を生じさせるとともに、ブレーキB1 での伝達トルクを次第に増大させてショックのない発進をおこなう。すなわちフリクション走行モードである。具体的には、ブレーキB1 を係合状態としてリングギヤ5を固定し、また第1クラッチC1 を連結状態(係合状態)としてキャリヤ8を出力要素とする。この状態でサンギヤ4をエンジン1によって正回転させると、キャリヤ8が逆回転(後進走行方向の回転)する。しかしながら、エンジン1を始動する場合には、エンジン1に出力軸10からの負荷を掛けることができないうえに、ニュートラル状態から後進走行する際にブレーキB1 を直ちに係合状態とすると出力軸10のトルクが急激に増大し、ショックが生じる。そのため、エンジン1の動力で後進走行する場合、ブレーキB1 を解放してリングギヤ5に反力トルクを与えないことにより、出力軸10のトルクを零にしておき、その状態からブレーキB1 を次第に係合させてリングギヤ5の反力トルクを徐々に増大させる。すなわちブレーキB1を解放状態からスリップ状態を経て次第に完全に係合させる。こうすることにより、出力軸10のトルクが零から次第に増大するので、円滑に発進することができる。
【0036】上述した自動変速機は、エンジン1および/またはモータ・ジェネレータ2の出力した動力を遊星歯車機構3を介して無段変速機11に伝達し、ここで更に変速して出力するように構成されている。その無段変速機11は、駆動側(入力側)の回転体である駆動プーリと従動側(出力側)の従動プーリとに、伝動部材であるベルトを巻き掛け、そのベルトと各プーリとの間に生じる摩擦力でトルクを伝達するように構成されている。したがって伝達可能なトルクを大きくするためには、ベルトの張力すなわちプーリによるベルトの挟圧力を大きくする必要があり、そのために油圧制御装置20で発生する油圧を高くする必要がある。これに対してブレーキB1 やクラッチC1 ,C2 などの係合装置に要求される油圧は、プーリによるベルトの挟圧のための油圧に比較してかなり低圧でよい。そのために、油圧制御装置20は、無段変速機11でのベルトの挟圧力に要求される油圧と、係合装置や潤滑などに要求される油圧とを調圧するように構成されている。これに加え、フェール時であっても前後進を確保するいわゆるフェールセーフ機構を備えている。
【0037】図1にその一例を示してある。ここに示す例は、フェール時に少なくとも第2クラッチC2 を係合させて前進走行を確保し、また第1クラッチC1 を係合させて後進走行を確保するように構成した例である。図1において符号30は、マニュアルバルブを示しており、前記シフト装置22におけるシフトレバー23によってスプール31をその軸線方向に前後動させるように構成されている。すなわちこのマニュアルバルブ30は、シフト装置22によって選択できるシフトポジション(レンジ)に合わせてP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)、B(ブレーキ)の各ポジションにスプール31を移動させるように構成されており、さらにそれらの各ポジションに応じて油圧(レンジ圧)を出力するように構成されている。
【0038】より具体的には、軸線方向でのほぼ中央部に、係合装置に対する係合元圧として調圧されたライン圧(PL)が入力される入力ポート32が形成されており、DポジションおよびBポジションでは、この入力ポート32を第1出力ポート33に連通させ、ここからDレンジ圧、Bレンジ圧を出力するようになっている。また、NポジションおよびRポジションならびにPポジションでは、入力ポート32を第2出力ポート34に連通させ、ここからNレンジ圧、Rレンジ圧、Pレンジ圧を出力するようになっている。この第2出力ポート33に常時連通された第2入力ポート35が形成されており、Rポジションでこの第2入力ポート35が第3出力ポート36に連通させられ、したがってRポジションを選択した場合のRレンジ圧がこの第3出力ポート36から出力されるようになっている。さらに、Bポジションが選択された場合に入力ポート32に連通される第4出力ポート37が設けられており、ここからBレンジ圧を出力するようになっている。
【0039】このマニュアルバルブ30における第1出力ポート33と第3出力ポート36とが、シャトルバルブ40におけるそれぞれ異なる入力ポート41,42に接続されている。このシャトルバルブ40は、いずれかの入力ポート41,42に印加された油圧によって移動体を移動させることにより、出力ポート43を開くとともに、印加されている油圧の低い方の入力ポートを閉じるように構成されたバルブであり、したがってDレンジ圧およびBレンジ圧とRレンジ圧とのいずれかを出力するように構成されている。その出力ポート43が、第1クラッチC1 の係合圧を制御するC1 コントロールバルブ50の入力ポート51に接続されている。
【0040】このC1 コントロールバルブ50は、スプール52に作用する軸線方向力すなわち調圧レベルに応じた油圧を出力する調圧バルブであって、そのスプール52の一端側にスプリング53が配置され、かつそのスプリング53とは反対側に信号圧ポート54が形成され、デューティ制御されてデューティ比に応じた油圧を出力するソレノイドバルブ(以下、仮に第2ソレノイドバルブと記す)55が、その信号圧ポート54に接続されている。またスプール52の位置に拘わらず開かれている出力ポート56が軸線方向でのほぼ中央部に形成されており、その出力ポート56に対してスプリング53側に入力ポート51が形成され、これとは反対に信号圧ポート54側にドレーンポート57が形成されている。そして、その出力ポート56が第1クラッチC1 のサーボ油室(図示せず)に接続される一方、スプリング53を収容している端部に形成したフィードバックポート58に出力ポート56が、オリフィス59を介して連通させられている。
【0041】したがって入力ポート51と出力ポート56とが連通することにより、第1クラッチC1 に油圧が供給されてその係合圧が次第に高くなると、スプリング53と共にスプール52を押圧する力が、信号圧ポート54に印加された第2ソレノイドバルブ55の油圧に基づく軸線方向力より大きくなり、その結果、スプール52によって入力ポート51が閉じられ、かつドレーンポート57が開かれて、出力ポート56がドレーンポート57に連通する。そして、第1クラッチC1 の油圧およびフィードバックポート58の油圧が低下するので、スプール52がスプリング53を圧縮する方向に移動し、ドレーンポート57が閉じられるとともに、再度、入力ポート51と出力ポート56とが連通して第1クラッチC1 に油圧が供給される。すなわち信号圧ポート54に印加される油圧(信号圧)が高いほど、出力する油圧が高くなるように構成されている。また、その調圧作用をおこなっている間に、ドレーンポート57から油圧が排圧されるようになっている。言い換えれば、出力ポート56を入力ポート51とドレーンポート57とに選択的に連通させることにより調圧をおこなうようになっている。
【0042】なお、上記の第2ソレノイドバルブ55は、通電のないオフ状態で油圧(信号圧)の出力を止めるいわゆるノーマルクローズタイプのソレノイドバルブである。したがってこの第2ソレノイドバルブ55に断線などの通電が遮断されるフェールを生じると、C1 コントロールバルブ50の信号圧ポート54に油圧が印加されないので、入力ポート51が遮断されてここに供給されている油圧が出力されないようになっている。
【0043】そのドレーンポート57がカットバックバルブ60のリバース出力ポート61Rに接続されている。このカットバックバルブ60は、前述した無段変速機11におけるベルト(図示せず)の張力を高低二段に切り換えるための油圧(信号圧)を出力する切換バルブであって、その油圧の出力・遮断の切り換えに併せて、Rレンジ圧およびBレンジ圧の出力・遮断をおこなうようになっている。
【0044】具体的に説明すると、スプール62の一端部側にスプリング63が配置されるとともに、これとは反対側に信号圧ポート64が形成され、この信号圧ポート64にオン・オフ制御されるソレノイドバルブ(以下、仮に第1ソレノイドバルブと記す)65が接続されている。また、前記のリバース出力ポート61Rを挟んで、スプール62の軸線方向での両側に、リバース入力ポート66Rとドレーンポート67Rとが形成されている。さらに、ブレーキ出力ポート61Bが形成されるとともに、このブレーキ出力ポート61Bを挟んで、スプール62の軸線方向での両側に、ブレーキ入力ポート66Bとドレーンポート67Bとが形成されている。またさらに、カットバック入力ポート68とカットバック出力ポート69とが、互いに隣接した形成されている。
【0045】そのカットバック入力ポート68に入力された油圧をカットバック出力ポート69から出力することにより、無段変速機11に供給する油圧を相対的に低レベルに設定して、ベルトの張力を下げるようになっている。この状態は、第2ソレノイドバルブ65から信号圧を出力して、スプール62をスプリング63側に移動させることにより達成され、同時に、リバース出力ポート61Rが、リバース入力ポート66Rに対して遮断され、かつドレーンポート67Rに連通され、またブレーキ出力ポート61Bが、ブレーキ入力ポート66Bに対して遮断され、かつドレーンポート67Bに連通されるようになっている。また反対にカットバック出力ポート69から油圧を出力させないことにより、無段変速機11に供給する油圧を相対的に高レベルに設定して、ベルトの張力を大きくするようになっている。この状態は、第2ソレノイドバルブ65が信号圧を出力しないことによ、スプール62をスプリング63側に移動させて達成され、同時に、リバース出力ポート61Rが、ドレーンポート67Rに対して遮断され、かつリバース入力ポート66Rに連通され、またブレーキ出力ポート61Bが、ドレーンポート67Bに対して遮断され、かつブレーキ入力ポート66Bに連通されるようになっている。
【0046】そして、リバース入力ポート66Rが前記マニュアルバルブ30の第3出力ポート36に接続されて、Rレンジ圧が選択的に供給され、またブレーキ入力ポート66bがマニュアルバルブ30の第4出力ポート37に接続され、ここにBレンジ圧が選択的に供給されるようになっている。なお、前記第1ソレノイドバルブ65は、一例としてノーマルクローズタイプのものであって、オン状態で信号圧を出力し、オフ状態で信号圧を出力しないように構成されている。
【0047】つぎに第2クラッチC2 の係合圧を制御する構成について説明すると、この第2クラッチC2 に対して、前述したC1 コントロールバルブ50と同様なC2 コントロールバルブ70が設けられている。このC2 コントロールバルブ70は、スプール72に作用する軸線方向力すなわち調圧レベルに応じた油圧を出力する調圧バルブであって、そのスプール72の一端側にスプリング73が配置され、かつそのスプリング73とは反対側に信号圧ポート74が形成され、電流値に応じた油圧(信号圧)を出力するリニアソレノイドバルブ(以下、仮に第3ソレノイドバルブと記す)75が、その信号圧ポート74に接続されている。またスプール72の位置に拘わらず開かれている出力ポート76が軸線方向でのほぼ中央部に形成されており、その出力ポート76に対してスプリング73側に入力ポート71が形成され、これとは反対に信号圧ポート74側にドレーンポート77が形成されている。そして、その出力ポート76が第2クラッチC2 のサーボ油室(図示せず)に接続される一方、スプリング73を収容している端部に形成したフィードバックポート78に出力ポート76が、オリフィス79を介して連通させられている。
【0048】したがって入力ポート71と出力ポート76とが連通することにより、第2クラッチC2 に油圧が供給されてその係合圧が次第に高くなると、スプリング73と共にスプール72を押圧する力が、信号圧ポート74に印加された第3ソレノイドバルブ75の油圧に基づく軸線方向力より大きくなり、その結果、スプール72によって入力ポート71が閉じられ、かつドレーンポート77が開かれて、出力ポート76がドレーンポート77に連通する。その結果、第2クラッチC2の油圧およびフィードバックポート78の油圧が低下するので、スプール72がスプリング73を圧縮する方向に移動し、ドレーンポート77が閉じられるとともに、再度、入力ポート71と出力ポート76とが連通して第2クラッチC2 に油圧が供給される。すなわち信号圧ポート74に印加される油圧(信号圧)が高いほど、出力する油圧が高くなるように構成されている。また、その調圧作用をおこなっている間に、ドレーンポート77から油圧が排圧されるようになっている。言い換えれば、出力ポート76を入力ポート71とドレーンポート77とに選択的に連通させることにより調圧をおこなうようになっている。
【0049】なお、上記の第3ソレノイドバルブ75は、通電のないオフ状態で油圧(信号圧)を出力するいわゆるノーマルオープンタイプのソレノイドバルブである。したがってこの第3ソレノイドバルブ75に断線などの通電が遮断されるフェールを生じると、C2 コントロールバルブ70の信号圧ポート74に油圧が印加されるので、入力ポート71が出力ポート76に連通されて第2クラッチC2 に係合圧が供給されるようになっている。
【0050】そして、C2 コントロールバルブ70のドレーンポート77が前述したカットバックバルブ60におけるブレーキ出力ポート67Bが接続されている。したがってマニュアルバルブ30によってブレーキレンジを選択した状態で、高出力状態となることにより、すなわち第1ソレノイドバルブ65から信号圧を出力させずにカットバックバルブ60の信号圧ポート64に油圧を印加させないことにより、C2 コントロールバルブ70のドレーンポート77にBレンジ圧が供給されるようになっている。
【0051】さらに、ブレーキB1 の係合圧を制御する構成について説明すると、このブレーキB1 に対して、前述したC1 コントロールバルブ50と同様なB1 コントロールバルブ80が設けられている。このB1 コントロールバルブ80は、スプール82に作用する軸線方向力すなわち調圧レベルに応じた油圧を出力する調圧バルブであって、そのスプール82の一端側にスプリング83が配置され、かつそのスプリング83とは反対側に信号圧ポート84が形成されている。この信号圧ポート84に前記第3ソレノイドバルブ75が接続されている。またスプール82の位置に拘わらず開かれている出力ポート86が軸線方向でのほぼ中央部に形成されており、その出力ポート86に対してスプリング83側に入力ポート81が形成され、これとは反対に信号圧ポート84側にドレーンポート87が形成されている。そして、その出力ポート86がブレーキB1 のサーボ油室(図示せず)に接続される一方、スプリング83を収容している端部に形成したフィードバックポート88に出力ポート86が、オリフィス89を介して連通させられている。
【0052】したがって入力ポート81と出力ポート86とが連通することにより、ブレーキB1 に油圧が供給されてその係合圧が次第に高くなると、スプリング83と共にスプール82を押圧する力が、信号圧ポート84に印加された第3ソレノイドバルブ75の油圧に基づく軸線方向力より大きくなり、その結果、スプール82によって入力ポート81が閉じられ、かつドレーンポート87が開かれて、出力ポート86がドレーンポート87に連通する。その結果、ブレーキB1 の油圧およびフィードバックポート88の油圧が低下するので、スプール82がスプリング83を圧縮する方向に移動し、ドレーンポート87が閉じられるとともに、再度、入力ポート81と出力ポート86とが連通してブレーキB1 に油圧が供給される。すなわち信号圧ポート84に印加される油圧(信号圧)が高いほど、出力する油圧が高くなるように構成されている。また、その調圧作用をおこなっている間に、ドレーンポート87から油圧が排圧されるようになっている。言い換えれば、出力ポート86を入力ポート81とドレーンポート87とに選択的に連通させることにより調圧をおこなうようになっている。
【0053】なお、上記の第3ソレノイドバルブ75は、前述したようにノーマルオープンタイプのソレノイドバルブであるから、この第3ソレノイドバルブ75に断線などの通電が遮断されるフェールを生じると、B1 コントロールバルブ80の信号圧ポート84に油圧が印加されるので、入力ポート81が出力ポート86に連通されてブレーキB1 に係合圧が供給されるようになっている。
【0054】前述したように上記の自動変速機は、無段変速機11で要求される油圧が高く、これに対してブレーキB1 やクラッチC1 ,C2 を係合させるために必要な油圧が相対的に低いので、油圧ポンプで発生させた油圧を、先ず、無段変速機11で要求される第1のライン圧に調圧し、その第1のライン圧を元圧として係合装置用の第2のライン圧に調圧するように構成されている。そのための調圧機構を図2に示してある。油圧ポンプ90は、エンジン1もしくはモータ・ジェネレータ2によって駆動されるように構成され、あるいは図示しない他の電動機によって駆動されるように構成されている。その吐出圧を第1のライン圧に調圧するプライマリーレギュレータバルブ91が設けられている。このプライマリーレギュレータバルブ91は、スプール92を挟んでスプリング93とフィードバックポート94とを設けるとともに、スプリング93側に信号圧ポート95を設け、さらにスプール92の中間部に相当する位置に、スプール92によって選択的に連通・遮断される入力ポート96とドレーンポート97とを設けた調圧バルブである。
【0055】その入力ポート96にオイルポンプ90の吐出口が油路98によって接続されるとともに、入力ポート96とフィードバックポート94とがオリフィス99を介して連通されている。そのフィードバックポート94に油圧が印加されると、受圧面積の差によってスプール92をスプリング93側に押圧する圧力が生じるように構成されている。したがってスプリング93の弾性力と信号圧ポート95に印加される油圧とに応じた油圧が油路98に生じるように構成されている。
【0056】この油路98に生じる相対的に高圧の第1ライン圧を元圧として係合装置用の相対的に低圧の第2のライン圧を調圧するライン圧モジュレータバルブ100が設けられている。このライン圧モジュレータバルブ100も出力圧をフィードバック圧としてスプールに印加することにより調圧をおこなうバルブであって、スプリング101によって軸線方向での一方向に押圧されたスプール102を有しており、そのスプール102の軸線方向での中間部に相当する箇所に、スプール102の位置に拘わらず常時開口している出力ポート103が形成され、この出力ポート103を挟んで、スプール102の軸線方向での両側に、入力ポート104とドレーンポート105とが形成されている。すなわちスプール102がスプリング101に押されて移動することにより入力ポート104と出力ポート103とが連通し、また反対にスプール102がスプリング101側に移動することにより出力ポート103がドレーンポート105に連通するようになっている。
【0057】さらに、スプール102を挟んでスプリング101とは反対側にフィードバックポート106が形成され、ここに出力ポート103がオリフィス107を介して連通されている。そしてこのフィードバックポート106に油圧が印加されることにより、スプール102をスプリング101側に押圧する圧力が生じるようになっている。したがってライン圧レギュレータバルブ100は、スプリング101の弾性力に応じた油圧が出力ポート103に生じるように構成されている。
【0058】さらに、前記プライマリーレギュレータバルブ91のドレーンポート97が油路108によってドレーンポート105に接続されている。この油路108は、フェール時にも出力ポート103に油圧を生じさせるフェールセーフのための油路であって、ライン圧モジュレータバルブ100がクローズドフェールした場合、すなわち入力ポート104が閉じられるフェールが生じた場合に、プライマリーレギュレータバルブ91のドレーンオイルをライン圧モジュレータバルブ100のドレーンポート105に導き、フェールによってそのドレーンポート97が出力ポート103に連通していることにより、結局、プライマリーレギュレータバルブ91のドレーンオイルを係合装置のための係合圧としてライン圧モジュレータバルブ100から出力させるようになっている。
【0059】また、図2において、符号110は潤滑油圧を調圧する潤滑バルブを示し、スプール111を挟んでスプリング112とフィードバックポート113とが設けられている。また、スプール111の軸線方向での中間部に相当する位置に、スプール111によって連通・遮断される入力ポート114とドレーンポート115とが形成されている。そして、入力ポート114とフィードバックポート113とがオリフィス116を介して連通され、さらにその入力ポート114がプライマリーレギュレータバルブ91のドレーンポート97に接続されている。したがってこの潤滑バルブ110は、スプリング112の弾性力に応じた油圧が入力ポート114に生じるように構成されている。
【0060】ここで、上述したプライマリーレギュレータバルブ91およびライン圧モジュレータバルブ100ならびに潤滑バルブ110のそれぞれの調圧レベルについて説明すると、プライマリーレギュレータバルブ91による最高調圧値が最も高く、ついでライン圧モジュレータバルブ100の調圧値が高く、潤滑バルブ110の調圧値が最も低くなっている。したがって前記の油路108を介してライン圧モジュレータバルブ100に供給される油圧が、このライン圧モジュレータバルブ100による調圧値より低いので、ライン圧モジュレータバルブ100がクローズドフェールした場合には、正規の油圧より低圧の係合圧がライン圧モジュレータバルブ100から出力される。
【0061】上述した油圧回路の作用について次に説明する。先ずライン圧の発生について説明すると、油圧ポンプ90が駆動されて吐出した油圧は油路98に供給され、その結果、プライマリーレギュレータバルブ91の入力ポート96に油圧が印加される。その入力ポート96の油圧がフィードバックポート94にも作用するので、当初、スプリング93および信号圧ポート95に作用する油圧によって押圧されていたスプール92に、これらと反対方向の圧力が次第に作用する。入力ポート96は当初、出力ポート97に対して遮断されているので、オイルポンプ90が油圧を吐出し続けることにより油路98の油圧が次第に高くなり、それに伴ってフィードバックポート94の油圧すなわち油路98に生じる油圧が高くなると、スプール92がスプリング93および信号圧ポート95に作用する油圧に抗して移動し、ドレーンポート97が開かれる。すなわち油路98の油圧は、それ以上には高くならず、結局、スプリング93の弾性力および信号圧ポート95に作用している油圧に基づいて決まる油圧(第1のライン圧)が油路98に生じる。
【0062】その油路98の第1のライン圧がライン圧モジュレータバルブ100の入力ポート104に供給されている。出力ポート103に現れる油圧が低い状態では、スプール102がスプリング101に押されてフィードバックポート106側に移動してるので、入力ポート104が出力ポート103に連通している。その結果、出力ポート103の油圧が高くなると、これと同様にフィードバックポート106の油圧が高くなるので、スプール102がそのフィードバックポート106の油圧に押圧されてスプリング101を圧縮する方向に移動し、入力ポート106が閉じられるとともに、ドレーンポート105が出力ポート103に対して連通する。その結果、出力ポート103に現れる圧力は、スプリング101の弾性力で決まる圧力となる。このようにして調圧された第2のライン圧すなわち係合装置用のライン圧が、図1に示すマニュアルバルブ30の入力ポート32に供給される。
【0063】一方、プライマリーレギュレータバルブ91が調圧作用をおこなうことに伴って、前述したようにドレーンポート97から排圧が生じ、これが潤滑バルブ110の入力ポート114に供給されている。これと同じ圧力がフィードバックポート113に印加されているので、入力ポート114の油圧が低い状態では、その入力ポート114が閉じられており、そのために排圧が次第に高くなる。その結果、フィードバックポート113の油圧が次第に高くなってスプール111がスプリング112の弾性力に抗して移動すると、入力ポート114が開かれてドレーンポート115に連通する。そのため、入力ポート114に現れる油圧はそれ以上に高くなることがなく、したがって潤滑バルブ110は、スプリング112の弾性力に応じた油圧に調圧をおこなう。
【0064】ブレーキB1 やクラッチC1 ,C2 には、このようにしてライン圧モジュレータバルブ100で調圧された油圧が供給されるが、異物の噛み込みなどによってライン圧モジュレータバルブ100にクローズドフェールすなわち入力ポート104が閉じたままとなるフェールが生じると、油路98から供給される第1のライン圧を元圧とした油圧を出力できなくなる。
【0065】その場合、スプール102が図1の下側に固定されることになるので、出力ポート103がドレーンポート105に連通したままとなる。そのドレーンポート105がプライマリーレギュレータバルブ91のドレーンポート97に油路108によって連通されていて、プライマリーレギュレータバルブ91が調圧作用をおこなうことに伴って生じる排圧が、ライン圧モジュレータバルブ100のドレーンポート105に供給されている。そのため、上記のようなフェール(バルブスティック)が生じた場合、プライマリーレギュレータバルブ91の排圧がライン圧モジュレータバルブ100の出力ポート103から出力される。
【0066】この排圧は、潤滑バルブ110によって潤滑油圧に調圧されているから、ライン圧モジュレータバルブ100が正常に機能している場合に得られる油圧より低いが、ブレーキB1 やクラッチC1 ,C2 を係合させることのできる油圧である。したがってライン圧モジュレータバルブ100にフェールが生じても、係合装置の係合圧が確保され、図4に示すいずれのモードも設定することが可能になる。
【0067】つぎにブレーキB1 および各クラッチC1 ,C2 の係合・解放の制御について説明する。先ず、ニュートラルレンジが選択されている場合およびパーキングレンジが選択されている場合について説明すると、これらのレンジでは、マニュアルバルブ30の入力ポート32が第2の出力ポート34のみに連通し、したがってB1 コントロールバルブ80の入力ポート81に油圧が供給される。この状態で第3ソレノイドバルブ75をオン制御してその電流値を最大にすれば、第3ソレノイドバルブ75が信号圧を出力しないので、B1 コントロールバルブ80の信号圧ポート84に油圧が印加されず、その結果、入力ポート81が閉じた状態となるので、ブレーキB1 は解放状態に維持される。他方、各クラッチC1 ,C2 には、マニュアルバルブ30の第2第1出力ポート33から油圧が出力されていないことにより係合圧が供給されず、したがってこれらのクラッチC1 ,C2は解放状態に維持される。すなわち全ての係合装置が解放されてニュートラル状態となる。
【0068】この状態から第3ソレノイドバルブ75の電流値を次第に下げると、それに応じて信号圧が高くなり、これがB1 コントロールバルブ80の信号圧ポート84に印加される。すなわちB1 コントロールバルブ80の調圧レベルが次第に高くなり、それに伴ってブレーキB1 の係合圧(すなわちトルク容量)が次第に高くなる。こうしてブレーキB1 が係合することにより、図4を参照して説明した充電モードを設定することができる。また、極低温時には、モータ・ジェネレータ2によってエンジン1を起動することが可能になる。
【0069】つぎにドライブレンジが選択された場合について説明する。ドライブレンジでは、前述したように、マニュアルバルブ30の第1出力ポート33のみが入力ポート32に連通し、この第1出力ポート33から油圧が出力される。この第1出力ポート33は、シャトルバルブ40を介してC1 コントロールバルブ50の入力ポート51が接続される一方、C2 コントロールバルブ70の入力ポート71が接続されていて、これらの入力ポート71,51に係合圧が供給される。
【0070】この前進走行の状態でアクセルペダル(図示せず)の踏み込み角度(アクセル開度)が小さいなどのことによって要求駆動力が小さいことが判断されると、第1クラッチC1 についての第2ソレノイドバルブ55がオン制御される。その結果、第2ソレノイドバルブ55からC1 コントロールバルブ50の信号圧ポート54に信号圧が供給され、その信号圧に応じた調圧がC1 コントロールバルブ50で実行される。こうして所定の圧力の油圧が第1クラッチC1 に供給されてこれが係合する。この状態は図4に示すようにモータ走行モードであり、モータ・ジェネレータ2がキャリヤ8および第1クラッチC1 を介して出力軸10に直結されているので、モータ・ジェネレータ2を駆動することにより前進走行することができる。
【0071】これに対して、アクセルペダルの踏み込み角度(アクセル開度)が大きいなどのことによって要求駆動力が大きいことが判断されると、第2クラッチC2 についての第3ソレノイドバルブ75がオフ制御される。その結果、第3ソレノイドバルブ75からC2 コントロールバルブ70の信号圧ポート74に信号圧が供給され、その信号圧に応じた調圧がC2 コントロールバルブ70で実行される。こうして所定の圧力の油圧が第2クラッチC2 に供給されてこれが係合する。この状態は図4に示すようにETCモードであり、エンジン1に連結されたサンギヤ4が入力要素となり、モータ・ジェネレータ2に連結されたキャリヤ8が反力要素となり、さらに第2クラッチC2 によって出力軸10に連結されたリングギヤ5が出力要素となる。
【0072】したがってエンジン1を起動するとともに、モータ・ジェネレータ2を逆回転状態から正回転方向に次第にトルクを出力させると、それに伴って出力軸10のトルクが次第に正回転方向に増大する。その出力軸10のトルクは、エンジン1の出力トルクを、遊星歯車機構3のギヤ比に応じて増大したトルクとなり、その結果、要求に応じた駆動トルクを得ることができる。
【0073】モータ走行モードで発進した後、もしくはETCモードで発進した後、エンジン1とモータ・ジェネレータ2との回転数が等しくなると、第1および第2のクラッチC1 ,C2 が共に係合状態に制御される。これは、上述したように第2ソレノイドバルブ55および第3ソレノイドバルブ75を電気的に制御することにより実行される。こうして遊星歯車機構3の2つの回転要素が連結されることになるので、その全体が一体回転し、エンジン1の出力トルクが出力軸10に伝達される。すなわち直結モードであって、エンジン1によって前進走行することになる。
【0074】上述した前進走行の場合、エンジン1を駆動力源とするモードとモータ・ジェネレータ2を駆動力源とするモードとが可能であるが、モータ・ジェネレータ2を駆動するためには、バッテリ(図示せず)の充分量が充分にあることが必要であり、またモータ・ジェネレータ2の出力トルクが必ずしも大きくない。したがって万が一のフェールの際には、エンジン1を駆動力源とするモードを設定することが好ましい。すなわち、フェールが発生しても第2クラッチC2 は係合させる必要がある。
【0075】このフェール時の制御は、以下のとおりである。ドライブレンジを選択している状態でC2 コントロールバルブ70がクローズドフェールし、あるいは第3ソレノイドバルブ75が断線などのオフフェールを生じると、スプール72が図1に示すようにスプリング73側に移動した状態に維持され、入力ポート71が閉じたままとなる。したがってこのままであれば、第2クラッチC2 が解放状態となってリングギヤ8を出力軸10に連結できないので、ETCモードあるいは直結モードを設定できない。
【0076】そのため、モータ走行モードで発進した後、アクセルペダルを踏み込んで要求駆動力を増大させても、あるいはエンジン1を起動した状態でETCモードで発進するべくアクセルペダルを大きく踏み込んでも、第2クラッチC2 が係合しないことにより、要求した駆動力が発生しない。この状態では、エンジン1のスロットル開度が増大することによりその回転数が増大しており、これに対して車速が増大していないから、エンジン回転数と車速との間に齟齬が生じる。これを電気的に検出し、ハイブリッド制御装置26もしくは自動変速機用の電子制御装置21が、ブレーキ(B)レンジへのシフトを促す警告を発する。これは、音声もしくは警告音もしくは文字表示あるいはランプの点灯などによっておなわれる。その警告に従ってブレーキレンジにシフトすると、マニュアルバルブ30の入力ポート32が第4出力ポート37に連通され、ここからBレンジ圧がカットバックバルブ60のブレーキ入力ポート66Bに出力される。
【0077】前述したように、要求駆動力が大きい場合には、無段変速機11におけるベルトの挟圧力を高くする必要があるので、カットバックバルブ60は第1のライン圧を高くするために、カットバック入力ポート68を閉じるように動作する。すなわち、要求駆動力が大きいことにより、第1ソレノイドバルブ65がオフ制御されて信号圧を出力せず、カットバックバルブ60の信号圧ポート64に油圧が印加されなくなる。その結果、カットバックバルブ60のスプール62が図1の左半分に示すように、信号圧ポート64側に移動する。それに伴ってブレーキ入力ポート66Bがブレーキ出力ポート61Bに連通する。そのため、マニュアルバルブ30の第4出力ポート37から出力されたBレンジ圧が、カットバックバルブ60を介してC2 コントロールバルブ70のドレーンポート77に供給される。
【0078】C2 コントロールバルブ70のクローズドフェール状態では、その出力ポート76がドレーンポート77に連通したままとなるので、結局、Bレンジ圧がドレーンポート77から出力ポート76を経て第2クラッチC2 に供給され、これが係合する。すなわち、第2クラッチC2 が係合することにより、前進走行のためのモードのうち、ETCモードを設定することが可能であり、少なくともリンプフォーム走行(退避走行)を確保することができる。
【0079】なお、上記の第4出力ポート37をマニュアルバルブ30に設けることにより、前進走行中に第2クラッチC2 を強制的に係合させることが可能になる。しかしながら、第2クラッチC2 を係合させる前進走行モードは、エンジン1による大きい駆動力を必要とする場合であり、したがってマニュアルバルブ30をブレーキポジションに切り換える以前に、アクセルペダルを大きく踏み込むなどのことによって要求駆動力が大きくなっており、それに伴って第3ソレノイドバルブ75の出力する信号圧によってC2 コントロールバルブ70が制御され、第2クラッチC2 が係合させられている。そのため、一般には、正常な前進走行状態でマニュアルバルブ30をブレーキポジションにシフトしても、第2クラッチC2が既に係合していてこれを強制的に係合させることにはならないので、ショックが生じることはない。
【0080】さらに後進走行について説明する。後進走行するためにマニュアルバルブ30をリバースポジションに設定すると、入力ポート32が第2出力ポート34に連通するとともに、これに接続されている第2入力ポート35が第3出力ポート36に連通させられる。したがってRレンジ圧が第2出力ポート34からB1 コントロールバルブ80の入力ポート81に供給される一方、第3出力ポート36からシャトルバルブ40を介してC1 コントロールバルブ50の入力ポート51に供給され、さらに第3出力ポート36からカットバックバルブ60のリバース入力ポート66Rに供給される。
【0081】リバースレンジを選択している状態での要求駆動力が小さい場合、ハイブリッド制御装置26がモータ走行モードを判断し、第1クラッチC1 のみを係合させる制御を実行する。すなわち第1クラッチC1 についての第2ソレノイドバルブC2 をオン制御して信号圧をC1 コントロールバルブ50の信号圧ポート54に印加する。その結果、スプール52がスプリング53側に移動して入力ポート51が出力ポート56に連通するので、係合圧(Rレンジ圧)が第1クラッチC1に供給されてこれが係合する。その状態でモータ・ジェネレータ2を後進走行方向に回転させることにより、モータ・ジェネレータ2の駆動力で後進走行することができる。
【0082】これに対して後進走行時にアクセルペダルが大きく踏み込まれるなど要求駆動力が大きい場合には、フリクション走行モードが選択される。すなわち第1クラッチC1 を係合させた状態でブレーキB1 を次第に係合させることにより、すなわちブレーキB1 を滑り状態から次第に係合させることにより、出力軸10のトルクを徐々に増大させ、滑らかに後進方向に発進する。この制御は、第3ソレノイドバルブ75が出力する信号圧を次第に増大させることにより、B1 コントロールバルブ80の信号圧ポート84に印加する油圧を次第に高くすることにより、すなわちB1 コントロールバルブ80の調圧レベルを増大させることによりおこなう。その場合、事前にエンジン1を駆動しておくことにより、キャリヤ8およびこれに第1クラッチC1 によって連結してある出力軸10が後進方向に回転し、エンジン1の動力によって後進走行することができる。
【0083】このような後進走行についてフェールが生じた場合、少なくとも第1クラッチC1 を係合させれば、モータ・ジェネレータ2の動力で走行することができる。そのための制御について説明すると、電気的なフェールによって全てのソレノイドバルブがオフ状態となったり、もしくは第2ソレノイドバルブ55がオフフェールしたり、あるいはC1 コントロールバルブ50がクローズドフェールした場合、C1 コントロールバルブ50の信号圧ポート54に信号圧が印加されないので、そのスプール52が信号圧ポート54側に移動し、入力ポート51が閉じたままとなる。すなわち入力ポート51に供給される油圧を出力できなくなる。
【0084】その場合、後進走行するべくアクセルペダルを踏み込むからモータ・ジェネレータ2の回転数が増大し、これに対して第1クラッチC1 が係合していなければ車速がでないので、モータ・ジェネレータ2の回転数と車速との齟齬によってフェールが判断される。その判断により、もしくはアクセルペダルが踏み込まれて要求駆動力が大きいことにより、第1ソレノイドバルブ65がオフ制御される。また、全部のソレノイドバルブがオフ状態となるフェールであれば、第1ソレノイドバルブ65も当然、オフ状態となる。その結果、カットバックバルブ60の信号圧ポート64に信号圧が印加されないので、そのスプール62がスプリング63に押圧されて信号圧ポート64側に移動し、リバース入力ポート66Rがリバース出力ポート61Rに連通する。このリバース出力ポート61RがC1 コントロールバルブ50のドレーンポート57に接続されているので、結局、Rレンジ圧がカットバックバルブ60を介してC1 コントロールバルブ50のドレーンポート57に供給される。
【0085】このドレーンポート57はフェールによって出力ポート56に連通しているので、Rレンジ圧がドレーンポート57から出力ポート56を経て第1クラッチC1 に供給され、これが係合する。リバースレンジで第1クラッチC1 のみが係合するモードはモータ走行モードであり、したがって上述したフェールが生じてもモータ・ジェネレータ2によって後進走行することができる。
【0086】このようなフェールが生じた状態でパーキングもしくはニュートラルのいずれかレンジを選択すれば、第1クラッチC1 にRレンジ圧が供給されなくなってこれが解放される。これに対してB1 コントロールバルブ80の入力ポート81にマニュアルバルブ30からPレンジ圧もしくはNレンジ圧が供給される。したがって第3ソレノイドバルブ75によってB1 コントロールバルブ80の調圧レベルを制御することにより、ブレーキB1 を係合させることができる。これは、図4に示すように充電モードであって、エンジン1を駆動することによりモータ・ジェネレータ2を発電機として駆動し、バッテリに充電することができる。また、全てのソレノイドバルブがオフとなるフェールの場合には、第3ソレノイドバルブ75に通電できないことにより、これが信号圧を出力するので、B1 コントロールバルブ80を介してブレーキB1 に油圧を供給でき、充電モードを設定することが可能である。
【0087】したがって後進走行についてのフェールが生じた場合、前述したようにモータ走行モードでリンプフォーム走行をおこない、バッテリの充電量(SOC)が低下した場合には、マニュアルバルブ30をニュートラルポジションもしくはパーキングポジションにシフトして充電をおこなうことにより、走行を継続することができる。
【0088】上述した係合装置用のライン圧の調圧のフェール、前後進のフェールのいずれの場合であっても、この発明に係る上記の装置では、正常時にはドレーン箇所として使用されている油路系統を、入力系統として使用するので、各バルブに新たなポートを設定する必要がない。またそのドレーン系統(フェール時の入力系統)に油圧を切り換えて導くための切換手段や切換機構は、既存の切換バルブを転用でき、したがって新たなバルブを追加することなくフェールセーフを確立することができる。
【0089】ここで上記の具体例とこの発明との関係を説明すると、先ず、請求項1の発明については、各クラッチC1 ,C2 が係合装置に相当し、C1 コントロールバルブ50およびC2 コントロールバルブ70が制御弁に相当し、マニュアルバルブ30およびカットバックバルブ60が切換手段に相当する。請求項2の発明については、マニュアルバルブ30が第1のバルブに相当し、第2クラッチC2 が係合装置に相当し、C2 コントロールバルブ70が制御弁に相当し、さらにカットバックバルブ60が切換機構に相当する。請求項3の発明については、第1クラッチC1 が係合装置に相当し、C1 コントロールバルブ50が制御弁に相当し、マニュアルバルブ30がレンジ圧源に相当し、カットバックバルブ60が切換機構に相当する。請求項4の発明については、オイルポンプ90が油圧ポンプに相当し、プライマリレギュレータバルブ91が第1の調圧弁に相当し、ブレーキB1 および各クラッチC1 ,C2 が係合装置に相当し、ライン圧モジュレータバルブ100が第2の調圧弁に相当し、潤滑バルブ110が第3の調圧弁に相当し、さらに油路108が請求項4の油路に相当する。
【0090】なお、上述した具体例では、遊星歯車機構および無段変速機からなる自動変速機を対象として説明したが、この発明は上記の具体例に限定されないのであって、複数組の遊星歯車機構を主体として歯車変速機構を構成した有段式の自動変速機やトロイダル式の無段変速機からなる自動変速機などを対象とする装置に適用することができる。また、各制御弁あるいはバルブもしくは切換手段などは、要は、各請求項に記載した構成を備えていればよいのであって、図に示す構成に限定されない。
【0091】
【発明の効果】以上説明したように請求項1の発明によれば、制御弁に入力した油圧をその制御弁で調圧して出力できないフェールが生じた場合、その制御弁の排圧の生じる箇所に油圧が供給される。その排圧は、制御弁が調圧をおこなっている場合に生じるものであるから、上記のフェールによって、排圧の生じる箇所が係合装置に出力する箇所に連通することになり、したがってその排圧の生じる箇所から油圧を供給することにより、係合装置に係合圧を供給することが可能になる。そして、このように排圧の生じる箇所への前記供給部からの油圧の供給は、既存のバルブにより油路を開閉することにより実行することができ、したがって請求項1の発明によれば、新たなバルブなどの制御機器を追加せずに、フェール時でも前記係合装置を係合させ、所定の変速状態を確保することができる。
【0092】また、請求項2の発明によれば、前進走行のために係合させる係合装置に、制御弁に対する第1のレンジ圧を元圧として係合圧を供給できなくなった場合、第1のバルブを切り換えて第2のレンジ圧を出力させることにより、前記制御弁に対してそのドレーンポートから油圧を供給でき、これが係合装置に係合圧として供給されて係合装置が係合し、したがって請求項2の発明によれば、第1のバルブから出力可能な第2のレンジ圧および制御弁のドレーンポートとを利用して、フェール時に係合圧を発生でき、新たなバルブなどを追加せずにフェール時の前進走行を確保できる。
【0093】さらに、請求項3の発明によれば、制御弁の入力ポートに供給した油圧を後進走行のために係合させる係合装置に出力できないフェールが生じた場合、その入力ポートからレンジ圧を供給することに替えてドレーンポートからそのレンジ圧を供給し、これを出力ポートから係合装置に供給するので、フェール時であっても後進走行のための係合装置に油圧を供給してこれを係合させ、後進走行を確保することができる。また、このようなドレーンポートへのレンジ圧源からのレンジ圧の供給は、既存のバルブで油路を開閉することにより実行することができるから、請求項3の発明では、新たなバルブなどの制御機器を追加せずに、フェール時でも前記係合装置を係合させ、後進状態を確保することができる。
【0094】そして、請求項4の発明によれば、第1の調圧弁が最も高い油圧を出力し、したがってその排圧もある程度高い油圧となっているので、係合装置に対する係合圧を調圧する第2の調圧弁が、ライン圧に基づく油圧を出力できなくなると、その第2の調圧弁の排圧の生じる箇所に、第1の調圧弁の排圧が供給される。これは、第3の調圧弁の入力圧であり、したがって係合装置には、第3の調圧弁の入力圧と同じ圧力の油圧が係合圧として供給され、その係合状態が確保される。そしてこれは、油路の追加のみで達成でき、新たなバルブなどの制御機器を必要としないので、装置を大型化することなくフェールセーフを確立することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月8日(1999.10.8)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2001−108091(P2001−108091A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−288679