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【発明の名称】 変速機の油圧制御装置
【発明者】 【氏名】村上 新

【氏名】大竹 正訓

【氏名】小島 真一

【要約】 【課題】油圧制御装置の小型化・軽量化を図り、かつ、摩擦係合装置の損傷を防止し、かつ、摩擦係合装置の制御応答性を向上する。

【解決手段】トルクの伝達経路に変速機と摩擦係合装置とが設けられており、変速機が、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材とを摩擦接触させるとともに、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材との接触位置を変更することにより変速をおこない、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材との接触圧が油圧により制御されるとともに、摩擦係合装置の係合・解放を油圧により制御される変速機の油圧制御装置において、油圧源の吐出圧を、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材との接触圧の制御に用いる第1の油圧に制御する第1の調圧機構と、第1の油圧を、摩擦係合装置を係合させる油路に供給する第2の油圧に低下させる第2の調圧機構とを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トルクの伝達経路に変速機と摩擦係合装置とが設けられており、前記変速機が、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材とを摩擦接触させるとともに、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触位置を変更することにより変速をおこない、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触圧が油圧により制御されるとともに、前記摩擦係合装置の係合・解放が油圧により制御される変速機の油圧制御装置において、油圧源に接続されている油路の油圧を調圧することにより、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触圧を制御する油路に供給する第1の油圧を出力する第1の調圧機構と、この第1の調圧機構から出力された第1の油圧を調圧することにより、前記摩擦係合装置を係合させる油路に供給する第2の油圧を出力する第2の調圧機構とを備えていることを特徴とする変速機の油圧制御装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材との接触圧が高油圧の油圧により制御され、摩擦係合装置の係合・解放が低圧の油圧により制御される変速機の油圧制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、変速比を段階的(不連続的)に、かつ、自動的に制御することのできる有段変速機は、複数の遊星歯車機構を有する歯車変速機構と、歯車変速機構のトルク伝達経路を切り換えるための複数の摩擦係合装置と、これらの摩擦係合装置の係合・解放を油圧により制御する油圧制御装置とを備えている。このような有段変速機においては、所定の条件に基づいて、摩擦係合装置に作用する油圧を制御することにより、摩擦係合装置の係合・解放が制御されて変速がおこなわれる。油圧制御装置の油圧源の吐出油圧は、油圧回路全体の元圧であるライン圧よりも高く設定されているために、油圧源の吐出圧をそのまま摩擦係合装置の係合圧として用いた場合は、いわゆる変速ショックが生じる問題がある。そこで、油圧源の吐出圧を所定圧まで減圧してから、摩擦係合装置の係合圧として用いる自動変速機の油圧制御装置の一例が、特開平8−285067号公報に記載されている。
【0003】この公報に記載された自動変速機はエンジンの出力側に配置されているとともに、この自動変速機は、トルクコンバータと複数の遊星歯車機構を有する歯車変速機構と複数の摩擦係合装置と油圧制御装置とを備えている。この油圧制御装置は、油圧源としてのオイルポンプと、オイルポンプの吐出圧を車速とスロットル開度とに応じたライン圧に調圧するプライマリレギュレータバルブと、ライン圧が入力され、かつ、各シフトポジションに対応して油圧を出力するマニュアルバルブと、エンジンブレーキ力を必要とするシフトポジションにおいて、マニュアルバルブから出力される油圧を、摩擦係合装置の油圧サーボに対する供給圧に減圧するモジュレータバルブとを有している。そして、エンジンブレーキ力を必要とするシフトポジションが選択された場合は、所定の変速段を設定する場合に係合される摩擦係合装置に供給する油圧よりも減圧した油圧を、その摩擦係合装置に供給することにより、エンジンブレーキ時の変速ショックを抑制することができるとされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、変速比を自動的に制御することのできる変速機には、上記公報に記載されているような有段変速機のほかに、変速比を無段階(連続的)に制御することのできる無段変速機がある。この無段変速機の一例として、駆動側プーリおよび従動側プーリならびにベルトを備えたベルト式無段変速機が挙げられる。前記駆動側プーリおよび従動側プーリの外周には、V字形状の溝がそれぞれ形成されているとともに、各溝にベルトが巻き掛けられている。また、駆動側プーリおよび従動側プーリの溝幅を制御する油圧制御装置が設けられている。
【0005】そして、駆動側プーリ側の溝幅を制御することにより、ベルトの巻き掛け径が変化し、その変速比が制御される。また、従動側プーリの溝幅、言い換えれば、ベルトに対する挟持力を調整することにより、ベルトの張力が制御される。このようにして、駆動側プーリおよび従動側プーリとベルトとの接触圧が制御されることにより、無段変速機に入力されるトルクおよび変速比に応じたトルク伝達容量を確保することができる。
【0006】一方、ベルト式無段変速機においては、駆動側プーリおよび従動側プーリと、駆動側プーリおよび従動側プーリの外周側に配置される部品との位置関係により、駆動側プーリおよび従動側プーリの外径が制約される。このため、ベルト式無段変速機の単独では、変速比の制御幅を拡大することに限界がある。そこで、エンジンから車輪に至るトルクの伝達経路に、ベルト式無段変速機と、上記公報に記載されているような遊星歯車機構および摩擦係合装置を備えた変速機とを直列に配置することにより、変速比の制御幅を拡大するようにしたレイアウトが提案されている。このレイアウトを採用した車両においては、油圧制御装置の部品点数を抑制し、かつ、小型化・軽量化を図る観点から、従動側プーリの溝幅を制御する油圧と、摩擦係合装置の係合・解放を制御する油圧との元圧を吐出する油圧源は、同一であることが好ましい。
【0007】ところで、ベルト式無段変速機と歯車変速機構を有する変速機とを比較すると、その動力の伝達形式に相違があり、そのため、ベルトの挟圧力を生じさせるための油圧と、摩擦係合装置の係合に必要な油圧とに差が生じる。すなわち、ベルト式無段変速機の場合は、比較的小さい外径の駆動側プーリおよび従動側プーリと、ベルトの円周方向の一部とが摩擦接触してトルク伝達容量が確保される構成であるのに対して、歯車変速機構を有する変速機においては、比較的外径の大きい摩擦係合装置が全周に亘って摩擦接触することにより、トルク伝達容量が確保される構成である。つまり、従動側プーリの溝幅を制御するために必要な油圧の方が、摩擦係合装置を係合させるために必要な油圧よりも高くなる。
【0008】しかしながら、油圧源の吐出圧を高油圧に制御するとともに、この高油圧を摩擦係合装置側に供給すると、摩擦係合装置に至る油圧回路の構成部品の強度を、高油圧に耐えられる状態にしなければならず、油圧制御装置の大型化および大重量化ならびに製造コストの上昇を招く問題があった。さらに、油圧源の吐出圧がそのまま摩擦係合装置に作用することになり、摩擦係合装置側にも高油圧圧対策が必要になり、その大型化および大重量化ならびに製造コストの上昇を招くとともに、摩擦係合装置が損傷する可能性があった。
【0009】この発明は、上記の技術的課題に着目し、油圧制御装置の小型化および軽量化ならびに低コスト化を図ることができるとともに、摩擦係合装置の損傷を未然に防止することができる変速機の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段およびその作用】上記の目的を達成するためにこの発明は、トルクの伝達経路に変速機と摩擦係合装置とが設けられており、前記変速機が、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材とを摩擦接触させるとともに、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触位置を変更することにより変速をおこない、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触圧が油圧により制御されるとともに、前記摩擦係合装置の係合・解放が油圧により制御される変速機の油圧制御装置において、油圧源に接続されている油路の油圧を調圧することにより、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触圧を制御する油路に供給する第1の油圧を出力する第1の調圧機構と、この第1の調圧機構から出力された第1の油圧を調圧することにより、前記摩擦係合装置を係合させる油路に供給する第2の油圧を出力する第2の調圧機構とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】したがって、この発明によれば、油圧回路のうち、第2の油圧とは異なる油圧の第1の油圧、例えば高油圧が作用する油路が可及的に短くなる。このため、高油圧対策を施す必要のある油圧回路構成部品が減少し、かつ、油圧回路構成部品が可及的に薄肉化される。また、第1の油圧が第2の油圧に調圧されて摩擦係合装置側の油路に供給されるため、摩擦係合装置および摩擦係合装置に至る油路には、高油圧対策が不要になる。さらに、摩擦係合装置の係合圧が、第2の油圧より第1の油圧に依存していないために、第1の油圧のバラツキによる摩擦係合装置の係合油圧のバラツキが解消される。
【0012】
【発明の実施の形態】つぎにこの発明を図に示す具体例に基づいて説明する。先ず、この発明で対象とすることのできるパワートレーンの一例を示すと図2のとおりである。図2に示す例は、ハイブリッド車のパワートレーンの一例であり、動力源1の出力側に動力合成装置2が設けられているとともに、動力合成装置2の出力側に無段変速機3が設けられている。つまり、動力源1および動力合成装置2ならびに無段変速機3が直列に配置されている。そして、無段変速機3から出力されたトルクが車輪4に伝達されるように構成されている。
【0013】まず、動力源1は、第1の動力源としての内燃機関5と、第2の動力源としての電動機6とを有している。内燃機関5としては、例えば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジンなどを用いることができる。以下の説明では、内燃機関5をエンジン5と記す。このエンジン5は、吸排気装置(図示せず)、燃料噴射装置(図示せず)、点火装置(図示せず)、冷却装置(図示せず)などを備えた公知のものである。エンジン5の吸気管には、アクセルペダルの操作、または、アクセルペダルの操作状態以外の条件に基づいて、その開度を制御することのできる電子スロットルバルブ(図示せず)が設けられている。
【0014】また電動機6は、電力が供給されることにより回転して動力を出力する動力装置である。電動機6としては、同期型などの各種の形式のモータを使用することができ、さらには発電機能を備えた電動機を使用することができる。以下の説明では、電動機6として発電機能を備えたものを例として示し、電動機6をモータ・ジェネレータ6と記す。
【0015】前記動力合成装置2は、エンジン5またはモータ・ジェネレータ6の少なくとも一方の動力(言い換えればトルク)を、個別にもしくは合成して出力する機能と、動力合成装置2の出力側の回転方向を制御する(つまり、正逆回転させる)機能とを有している。言い換えれば、動力合成装置2は、車両の前進・後進を切り換える機能を有している。この動力合成装置2は、公知の遊星歯車機構7と、公知の複数の摩擦係合装置C1,C2,C3とを有している。複数の摩擦係合装置C1,C2,C3としては、いわゆる湿式多板クラッチやバンドブレーキなどを用いることができる。
【0016】湿式多板クラッチは、動力合成装置2の入力部材(図示せず)または出力部材(図示せず)を中心として配置位置された環状のクラッチプレートおよび環状のクラッチディスクを複数有している。これらのクラッチプレートおよびクラッチディスクは、入力部材または出力部材の軸線方向に交互に配置されている。バンドブレーキは、遊星歯車機構7の回転要素の回転を選択的に固定するものであり、その回転要素の外周側に設けられている。これらの摩擦係合装置C1,C2,C3の係合・解放は、油圧室およびシリンダならびにピストンなどを有する油圧サーボ機構(図示せず)により、制御されるように構成されている。
【0017】前記無段変速機3は、動力合成装置2の出力側に対してトルク伝達可能に接続された駆動側シャフト8と、駆動側シャフト8と相互に平行に配置された従動側シャフト(言い換えればカウンタシャフト)9とを有している。駆動側シャフト8にはプライマリプーリ10が設けられており、従動側シャフト9側にはセカンダリプーリ11が設けられている。プライマリプーリ10は、駆動側シャフト8に固定された固定シーブ12と、駆動側シャフト8の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ13とを有している。そして、固定シーブ12と可動シーブ13との対向面には、相互の組合せによりV字形状の溝M1を構成する方向に傾斜した保持面14,15が形成されている。
【0018】また、可動シーブ13を駆動側シャフ8の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ13と固定シーブ12とを接近・離隔させる油圧アクチュエータ16が設けられている。この油圧アクチュエータ16は、シリンダ17の内部に形成された油圧室18と、可動シーブ13に接続され、かつ、油圧室18の油圧に応じて駆動側シャフト8の軸線方向に動作するピストン19とを備えている。
【0019】一方、セカンダリプーリ11は、従動側シャフト9に固定された固定シーブ20と、従動側シャフト9の軸線方向に移動できるように構成された可動シーブ21とを有している。そして、固定シーブ20と可動シーブ21との対向面には、相互の組合せによりV字形状の溝M2を構成する方向に傾斜した保持面22,23が形成されている。
【0020】また、可動シーブ21を従動側シャフト9の軸線方向に動作させることにより、可動シーブ21と固定シーブ20とを接近・離隔させる油圧アクチュエータ24が設けられている。この油圧アクチュエータ24は、シリンダ25の内部に形成された油圧室26と、可動シーブ21に接続され、かつ、油圧室26の油圧により従動側シャフト9の軸線方向に動作するピストン30とを備えている。
【0021】上記構成のプライマリプーリ10の溝M1およびセカンダリプーリ11の溝M2に対して、ベルト31が巻き掛けられている。ベルト31の幅方向の両側には、保持面14,15,22,23に接触する接触面32が形成されている。なお、前記従動側シャフト9の出力側に対して、車輪4がトルク伝達可能に接続されている。
【0022】つぎに、動力合成装置2および無段変速機2を制御する油圧制御装置33の油圧回路の一部を、図1および図3に基づいて説明する。この実施形態においては、オイルポンプ34で発生させた油圧を、先ず、無段変速機3のベルト31の挟圧力として要求される第1のライン圧に調圧し、その第1のライン圧を元圧として、摩擦係合装置C1,C2,C3を係合させるために要求される第2のライン圧(クラッチ元圧)に調圧するように構成されている。
【0023】オイルポンプ34は、エンジン5もしくはモータ・ジェネレータ6によって駆動されるように構成され、あるいは図示しない他の電動機によって駆動されるように構成されている。その吐出圧を第1のライン圧に調圧するプライマリーレギュレータバルブ35が設けられている。このプライマリーレギュレータバルブ35は、スプール36を挟んでスプリング37とフィードバックポート38とを設けるとともに、スプリング36側に信号圧ポート39を設けてある。この信号圧ポート39に対して、リニアソレノイドバルブ39Aの出力ポート39Bが接続されている。さらにスプール36の中間部に相当する位置に、スプール36によって選択的に連通・遮断される入力ポート40とドレーンポート41とを設けた調圧バルブである。入力ポート40には、前記油圧室18および油圧室26が相互に並列に接続されている。
【0024】その入力ポート40にオイルポンプ34の吐出口が油路42によって接続されるとともに、入力ポート40とフィードバックポート38とがオリフィス43を介して連通されている。そのフィードバックポート38に油圧が印加されると、受圧面積の差によってスプール36をスプリング37側に押圧する圧力が生じるように構成されている。したがってスプリング37の弾性力と信号圧ポート39に印加される油圧とに応じた油圧が油路42に生じるように構成されている。
【0025】この油路42に生じる相対的に高油圧の第1ライン圧を元圧として、摩擦係合装置C1,C2,C3の係合に用いられ、かつ、相対的に低圧の第2のライン圧を調圧するライン圧モジュレータバルブ44が設けられている。このライン圧モジュレータバルブ44も出力圧をフィードバック圧としてスプールに印加することにより調圧をおこなうバルブであって、スプリング45によって軸線方向での一方向に押圧されたスプール46を有しており、そのスプール46の軸線方向での中間部に相当する箇所に、スプール46の位置に拘わらず常時開口している出力ポート47が形成され、この出力ポート47を挟んで、スプール46の軸線方向での両側に、入力ポート48とドレーンポート49とが形成されている。すなわちスプール46がスプリング45に押されて移動することにより入力ポート48と出力ポート47とが連通し、また反対にスプール46がスプリング45側に移動することにより出力ポート47がドレーンポート49に連通するようになっている。
【0026】さらに、スプール46を挟んでスプリング45とは反対側にフィードバックポート50が形成され、ここに出力ポート47がオリフィス51を介して連通されている。そしてこのフィードバックポート50に油圧が印加されることにより、スプール46をスプリング45側に押圧する圧力が生じるようになっている。したがってライン圧モジュレータバルブ44は、スプリング45の弾性力に応じた油圧が出力ポート47に生じるように構成されている。
【0027】さらに、前記プライマリーレギュレータバルブ35のドレーンポート41が油路52によってドレーンポート49に接続されている。この油路52は、フェール時にも出力ポート47に油圧を生じさせるフェールセーフのための油路であって、ライン圧モジュレータバルブ44がクローズドフェールした場合、すなわち入力ポート48が閉じられるフェールが生じた場合に、プライマリーレギュレータバルブ35のドレーンオイルをライン圧モジュレータバルブ44のドレーンポート49に導き、フェールによってそのドレーンポート49が出力ポート47に連通していることにより、結局、プライマリーレギュレータバルブ35のドレーンオイルを、ライン圧モジュレータバルブ44の出力ポート47から出力させるようになっている。
【0028】また、図1および図3において、符号53は潤滑油圧を調圧する潤滑バルブを示し、スプール54を挟んでスプリング55とフィードバックポート56とが設けられている。また、スプール54の軸線方向での中間部に相当する位置に、スプール54によって連通・遮断される入力ポート57とドレーンポート58とが形成されている。そして、入力ポート57とフィードバックポート56とがオリフィス59を介して連通され、さらにその入力ポート57がプライマリーレギュレータバルブ35のドレーンポート41に接続されている。したがってこの潤滑バルブ53は、スプリング55の弾性力に応じた油圧が入力ポート57に生じるように構成されている。
【0029】ここで、上述したプライマリーレギュレータバルブ35およびライン圧モジュレータバルブ44ならびに潤滑バルブ53のそれぞれの調圧レベルについて説明すると、プライマリーレギュレータバルブ35による最高調圧値が最も高く、ついでライン圧モジュレータバルブ44の調圧値が高く、潤滑バルブ53の調圧値が最も低くなっている。したがって前記の油路52を介してライン圧モジュレータバルブ44に供給される油圧が、このライン圧モジュレータバルブ44による調圧値より低いので、ライン圧モジュレータバルブ44がクローズドフェールした場合には、正規の油圧より低圧の係合圧がライン圧モジュレータバルブ44から出力される。
【0030】前記ライン圧モジュレータバルブ44の出力ポート47に対して、調圧バルブ(コントロールバルブ)60,〜62が相互に並列に接続されている。調圧バルブ60は摩擦係合装置C1に対応するものであり、調圧バルブ60は、スプール63を挟んでスプリング64と信号圧ポート65とを設けるとともに、スプール63の中間部に相当する位置に、スプール63によって選択的に連通・遮断される入力ポート66およびドレーンポート67ならびに出力ポート68とを設けた調圧バルブである。この入力ポート66に、ライン圧モジュレータバルブ44の出力ポート47が接続されている。
【0031】また、調圧バルブ60に対応するリニアソレノイドバルブ69が設けられており、リニアソレノイドバルブ69の信号圧出力ポート70と信号圧ポート65とが接続されている。リニアソレノイドバルブ69は、供給される電力のオン・オフの割合、すなわちデューティ比に応じた信号圧を出力するものである。なお、出力ポート68には、摩擦係合装置C1の係合・解放を制御する油圧室71が接続されている。したがって、スプリング64の弾性力と信号圧ポート65に印加される油圧とに応じた油圧が、出力ポート68から出力されるように構成されている。
【0032】また、調圧バルブ61は摩擦係合装置C2に対応するものであり、調圧バルブ61は、スプール72を挟んでスプリング73と信号圧ポート74とを設けるとともに、スプール72の中間部に相当する位置に、スプール72によって選択的に連通・遮断される入力ポート75およびドレーンポート76ならびに出力ポート77とを設けた調圧バルブである。この入力ポート75に、ライン圧モジュレータバルブ44の出力ポート47が接続されている。
【0033】また、調圧バルブ61に対応するリニアソレノイドバルブ78が設けられており、リニアソレノイドバルブ78の信号圧出力ポート79と信号圧ポート74とが接続されている。リニアソレノイドバルブ78は、供給される電力のオン・オフの割合、すなわちデューティ比に応じた信号圧を出力するものである。なお、出力ポート77には、摩擦係合装置C2の係合・解放を制御する油圧室80が接続されている。したがって、スプリング73の弾性力と信号圧ポート74に印加される油圧とに応じた油圧が、出力ポート77から出力されるように構成されている。
【0034】さらに、調圧バルブ62は摩擦係合装置C3に対応するものであり、調圧バルブ63は、スプール81を挟んでスプリング82と信号圧ポート83とを設けるとともに、スプール81の中間部に相当する位置に、スプール81によって選択的に連通・遮断される入力ポート84およびドレーンポート85ならびに出力ポート86とを設けた調圧バルブである。この入力ポート84に、ライン圧モジュレータバルブ44の出力ポート47が接続されている。
【0035】また、調圧バルブ62に対応するリニアソレノイドバルブ87が設けられており、リニアソレノイドバルブ87の信号圧出力ポート88と信号圧ポート83とが接続されている。リニアソレノイドバルブ87は、供給される電力のオン・オフの割合、すなわちデューティ比に応じた信号圧を出力するものである。なお、出力ポート86には、摩擦係合装置C3の係合・解放を制御する油圧室89が接続されている。したがって、スプリング82の弾性力と信号圧ポート83に印加される油圧とに応じた油圧が、出力ポート86から出力されるように構成されている。
【0036】上記構成の車両全体を制御する総合制御装置(ECU)90が設けられている。この総合制御装置90は、油圧制御装置33およびモータ・ジェネレータ6を制御するコントローラ(図示せず)ならびにエンジン5を制御する電子制御装置(図示せず)に対して、相互に信号通信可能に接続されている。この総合制御装置90は、演算処理装置(CPUまたはMPU)および記憶装置(RAMおよびROM)ならびに入出力インターフェースを主体とするマイクロコンピュータにより構成されている。
【0037】この総合制御装置90に対しては、エンジン回転数センサ91の信号、エンジン冷却水温センサ92の信号、アクセル開度センサ93の信号、スロットル開度センサ94の信号、シフトポジションセンサ95の信号、プライマリプーリ10の回転数を検出する入力回転数センサ96の信号、セカンダリプーリ11の回転数を検出する出力回転数センサ97の信号、エンジン5の吸入空気量センサ98の信号、モータ・ジェネレータ6に電力を供給するバッテリ99の充電量を示す信号、油圧制御装置33の作動油(オイル)の温度を検出する油温センサ100の信号などが入力されている。
【0038】そして、出力回転数センサ97の信号に基づいて車速が求められる。また、エンジン回転数センサ91の信号および入力回転数センサ96の信号ならびに出力回転数センサ97の信号などに基づいて、無段変速機3の変速比が求められる。一方、総合制御装置90からは、エンジン5を制御する信号、モータ・ジェネレータ6を制御する信号、動力合成装置2を制御する信号、無段変速機3を制御する信号、油圧制御装置33を制御する信号が出力される。
【0039】ここで、この実施形態の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すれば、プライマリプーリ10がこの発明の駆動側回転部材に相当し、セカンダリプーリ11がこの発明の従動側回転部材に相当し、ベルト31がこの発明の伝動部材に相当し、オイルポンプ34がこの発明の油圧源に相当し、第1のライン圧(言い換えれば高油圧)がこの発明の第1の油圧に相当し、第2のライン圧(言い換えればクラッチ元圧)がこの発明の第2の油圧(言い換えれば低油圧)に相当し、プライマリレギュレータバルブ35がこの発明の第1の調圧機構に相当し、ライン圧モジュレータバルブ44がこの発明の第2の調圧機構に相当する。
【0040】上記構成の車両においては、総合制御装置90に入力される各種の信号、例えば、シフトポジションおよびアクセル開度ならびに車速に基づいて、車両に対する要求駆動力が判断される。そして、この判断結果に基づいて、エンジン5の駆動・停止と、モータ・ジェネレータ6の駆動(言い換えれば力行)・停止・発電(言い換えれば回生)とを制御するモードが選択される。エンジン5に対しては、例えば、燃料噴射装置、点火装置、電子スロットルバルブなどを制御する信号などが出力される。モータ・ジェネレータ6に対しては、モータ・ジェネレータ6の駆動時に供給する電流値を制御する信号、モータ・ジェネレータ6の回生時に回生制動力を制御する信号などが出力される。
【0041】また、前記モードの選択に基づいて、各摩擦係合装置C1,C2,C3の係合・解放の態様が選択されるとともに、油圧室71,80,89の油圧が制御される。各摩擦係合装置C1,C2,C3の係合・解放の態様の選択により、無段変速機3に入力されるトルク(動力)の伝達状態もしくは、動力合成装置2の出力部材の回転方向の切り換えなどがおこなわれる。ここで、各摩擦係合装置C1,C2,C3の係合圧は、動力合成装置2に入力されるトルクに基づいて制御される。
【0042】さらに、総合制御装置90には、エンジン5の最適な運転状態を選択するためのデータが記憶されている。そして、このデータと車両の走行状態、例えば、アクセル開度および車速とに基づいて、無段変速機3の変速比が制御される。具体的には、油圧室18の油圧を制御することにより、プライマリプーリ10の溝M1の幅が制御される。これと同時に、無段変速機3に入力されるトルクおよび無段変速機3の変速比に基づいて、油圧室26の油圧を制御することにより、セカンダリプーリ11の溝幅M2が制御される。
【0043】このようにして、ベルト31の巻き掛け半径が変化して無段変速機3の変速比が制御されるとともに、ベルト31に対するセカンダリプーリ11の幅方向の挟持力(挟圧力)が制御される。ここで、無段変速機3に入力されるトルクは、エンジン5のトルク、モータ・ジェネレータ6のトルク、動力合成装置2の状態などに基づいて判断される。このようにして、ベルト31の張力、言い換えれば、ベルト31とプライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11との接触面圧が制御される。つまり、ベルト31のトルク伝達容量が制御され、トルクの伝達時にベルト31が滑ることが抑制される。
【0044】ところで、無段変速機3と動力合成装置2とを比較すると、その動力の伝達形式に相違がある。このため、ベルト31の挟圧力を生じさせるために必要な油圧と、摩擦係合装置C1,C2,C3を係合させるために必要な油圧とが異なる。すなわち、無段変速機3の場合は、比較的小さい外径のプライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11と、ベルト31の円周方向の一部とが摩擦接触してトルク伝達容量が確保される構成である。言い換えれば、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11とベルト31とが相対移動することにより、トルクの伝達がおこなわれる。
【0045】これに対して、動力合成装置2においては、比較的外径の大きい摩擦係合装置C1,C2,C3が全周に亘って摩擦接触することにより、トルク伝達容量が確保される構成である。言い換えれば、摩擦係合装置C1,C2,C3が係合されてトルクの伝達が行なわれる場合には、構成部品同士は相対移動しない。このため、セカンダリプーリ11に対応する油圧室26の油圧の方を、摩擦係合装置C1,C2,C3を係合させる油圧室71,80,89のいずれかの油圧よりも高く設定する必要がある。
【0046】上述した油圧回路の作用について次に説明する。先ずライン圧(PL)の発生について説明すると、オイルポンプ34が駆動されて吐出した油圧は油路42に供給され、その結果、プライマリーレギュレータバルブ35の入力ポート40に油圧が印加される。一方、アクセル開度および車速などの駆動力要求に基づいて、リニアソレノイドバルブ39Aが制御され、リニアソレノイドバルブ39Aから出力された信号圧が信号圧ポート39に入力される。このため、当初は、スプリング37および信号圧ポート39に作用する油圧により、スプール36がフィードバックポート38側に押圧されている。
【0047】そして、前記入力ポート40の油圧がフィードバックポート38にも作用するので、フィードバックポート38側に押圧されているスプール36に、これとは反対方向の圧力が次第に作用する。入力ポート40は当初、出力ポート41に対して遮断されているので、オイルポンプ34が油圧を吐出し続けることにより油路42の油圧が次第に高くなり、それに伴ってフィードバックポート38の油圧すなわち油路42に生じる油圧が高くなると、スプール36がスプリング37および信号圧ポート39に作用する油圧に抗して移動し、ドレーンポート41が開かれる。すなわち油路42の油圧は、それ以上には高くならず、結局、スプリング37の弾性力および信号圧ポート39に作用している油圧に基づいて決まる高油圧の油圧(第1のライン圧)が油路42に生じる。
【0048】その油路42の第1のライン圧がライン圧モジュレータバルブ44の入力ポート48に供給されている。出力ポート47に現れる油圧が低い状態では、スプール46がスプリング45に押されてフィードバックポート50側に移動してるので、入力ポート48が出力ポート47に連通している。その結果、出力ポート47の油圧が高くなると、これと同様にフィードバックポート50の油圧が高くなるので、スプール46がそのフィードバックポート50の油圧に押圧されてスプリング45を圧縮する方向に移動し、入力ポート48が閉じられるとともに、ドレーンポート49が出力ポート47に対して連通する。その結果、出力ポート47に現れる圧力は、スプリング45の弾性力で決まる低圧の油圧(言い換えれば、第2のライン圧もしくはクラッチ元圧)となる。このようにして調圧された第2のライン圧、すなわち摩擦係合装置C1,C2,C3の係合用のライン圧が、調圧バルブ60,61,62の入力ポート66,75,84に供給される。
【0049】一方、プライマリーレギュレータバルブ35が調圧作用をおこなうことに伴って、前述したようにドレーンポート41から排圧が生じ、これが潤滑バルブ53の入力ポート57に供給されている。これと同じ圧力がフィードバックポート56に印加されているので、入力ポート57の油圧が低い状態では、その入力ポート57が閉じられており、そのために排圧が次第に高くなる。その結果、フィードバックポート56の油圧が次第に高くなってスプール54がスプリング55の弾性力に抗して移動すると、入力ポート57が開かれてドレーンポート58に連通する。そのため、入力ポート57に現れる油圧はそれ以上に高くなることがなく、したがって潤滑バルブ53は、スプリング55の弾性力に応じた油圧に調圧をおこなう。
【0050】つぎに、摩擦係合装置C1,C2,C3の係合・解放について説明する。まず、摩擦係合装置C1の解放時には、リニアソレノイドバルブ69がオフされる。このため、スプリング64の押圧力によりスプール63が信号圧ポート65側に押圧されて所定位置で停止している。したがって、入力ポート66がスプール63により閉じられているとともに、出力ポート66とドレーンポート67とが連通する。このようにして、油圧室71の油圧が低下し、摩擦係合装置C1が解放される。
【0051】これに対して、摩擦係合装置C1の係合時には、動力合成装置2に入力されるトルクに基づいて、リニアソレノイドバルブ69のデューティ比が制御されるとともに、リニアソレノイドバルブ69から出力された信号圧が信号圧ポート65に入力される。すると、信号圧ポート65の油圧とスプリング64の押圧力とのバランスにより、スプール63がスプリング64側に押圧されて、ドレーンポート67がスプール63により遮断されるとともに、入力ポート66と出力ポート68とが連通される。このようにして、リニアソレノイドバルブ69のデューティ比の制御に基づいて、クラッチ元圧が、調圧バルブ60によりさらに低圧に調圧されて油圧室71に供給され、摩擦係合装置C1が係合する。
【0052】また、摩擦係合装置C2の解放時には、リニアソレノイドバルブ78がオフされる。このため、スプリング73の押圧力によりスプール72が信号圧ポート74側に押圧されて所定位置で停止している。したがって、入力ポート75がスプール72により閉じられているとともに、出力ポート77とドレーンポート76とが連通する。このようにして、油圧室80の油圧が低下し、摩擦係合装置C2が解放される。
【0053】これに対して、摩擦係合装置C2の係合時には、動力合成装置2に入力されるトルクに基づいて、リニアソレノイドバルブ78のデューティ比が制御されるとともに、リニアソレノイドバルブ78から出力された信号圧により、信号圧ポート74の油圧が高油圧になる。すると、信号圧ポート74の油圧とスプリング73の押圧力とのバランスにより、スプール72がスプリング73側に押圧されて、ドレーンポート76がスプール72により遮断されるとともに、入力ポート75と出力ポート77とが連通される。このようにして、リニアソレノイドバルブ78の制御に基づいて、クラッチ元圧が、調圧バルブ61によりさらに低圧に調圧されて油圧室80に供給され、摩擦係合装置C2が係合する。
【0054】さらに、摩擦係合装置C3の解放時には、リニアソレノイドバルブ87がオフされる。このため、スプリング82の押圧力によりスプール81が信号圧ポート83側に押圧されて所定位置で停止している。したがって、入力ポート84がスプール81により閉じられているとともに、出力ポート86とドレーンポート85とが連通する。このようにして、油圧室89の油圧が低下し、摩擦係合装置C3が解放される。
【0055】これに対して、摩擦係合装置C3の係合時には、動力合成装置2に入力されるトルクに基づいて、リニアソレノイドバルブ87が制御されるとともに、リニアソレノイドバルブ87から出力された信号圧が信号圧ポート83に入力される。すると、信号圧ポート83の油圧とスプリング82の押圧力とのバランスにより、スプール81がスプリング82側に押圧されて、ドレーンポート85がスプール81により遮断されるとともに、入力ポート84と出力ポート86とが連通される。このようにして、リニアソレノイドバルブ87のデューティ比の制御に基づいて、クラッチ元圧が、調圧バルブ62によりさらに低圧に調圧されて油圧室80に供給され、摩擦係合装置C3が係合する。
【0056】以上のように、オイルポンプ34の吐出圧を、プライマリレギュレータバルブ35により高油圧(第1のライン圧)に調圧して油圧室26に作用させるとともに、第1のライン圧をライン圧モジュレータバルブ44によりクラッチ元圧に減圧し、ついで、調圧バルブ弁61,62,63により、クラッチ元圧をさらに低圧の油圧に減圧して油圧室71,80,89に作用させている。
【0057】このため、油圧制御装置33の油圧回路において、高油圧が伝達される油路が可及的に短くなる(油圧回路全体において、高油圧が伝達される油路の占める割合が少なくなる)。したがって、高油圧対策を必要とする油圧回路構成部品が減少し、かつ、油圧回路構成部品の肉厚を可及的に薄くすることができ、油圧制御装置33の小型化および軽量化ならびに低コスト化を図ることができる。さらに、高油圧が伝達される油路の低減にともない、油圧回路におけるオイル漏れが抑制され、オイルポンプ34を駆動する動力損失の低減を図ることができる。
【0058】また、プライマリレギュレータバルブ35により調圧された第1のライン圧が、ライン圧モジュレータバルブ44により中間圧まで減圧されている。このため、各調圧バルブ60,61,62がオープンフェールした場合、つまり、入力ポート66,75,84の少なくとも一つが開放されたままになるフェールが生じた場合でも、各油圧室71,80,89にはクラッチ元圧(中間圧)が作用し、第1のライン圧が直接作用することが回避される。したがって、摩擦係合装置C1,C2,C3および油圧サーボ機構などのようなクラッチハード系に、強度アップなどの高油圧対策を施す必要がなく、その小型化および軽量化ならびに低コスト化を図ることができるとともに、その損傷を防止することができる。
【0059】さらに、第1のライン圧をライン圧モジュレータバルブ36により中間油圧に減圧し、ついで、中間油圧を各調圧バルブ61,62,63により減圧するように構成されている。このため、各調圧バルブ61,62,63における高油圧対策が不要となり、油圧制御装置33の小型化および軽量化ならびに低コスト化を図ることができる。さらに、調圧バルブ60,61,62に入力される油圧が、第1のライン圧に依存していないために、第1のライン圧のバラツキによる調圧バルブ60,61,62の出力油圧のバラツキが解消され、かつ、第1のライン圧の低圧化によるヒステリシスが低減される。したがって、調圧バルブ60,61,62の作動応答性が向上して、第1のライン圧を、摩擦係合装置C1,C2,C3の係合油圧にまで迅速に減圧することができる。
【0060】さらにまた、ライン圧モジュレータバルブ44がクローズドフェールした場合、すなわち入力ポート48が閉じられるフェールが生じた場合は、プライマリーレギュレータバルブ35のドレーンオイルをライン圧モジュレータバルブ44のドレーンポート49に導くことができる。つまり、ライン圧モジュレータバルブ44は、フェールによってそのドレーンポート49が出力ポート47に連通しているために、プライマリーレギュレータバルブ35のドレーンポート41の油圧を、ドレーンポート41および出力ポート47を介して各調圧バルブ60,61,62の入力ポート66,75,84に入力することができる。したがって、ライン圧モジュレータバルブ44がクローズドフェールした場合でも、車両のリンプフォーム走行(退避走行)に必要な油圧を確保することができる。なお、ここで入力ポート66,75,84に作用する油圧は、正規の油圧(クラッチ元圧)より低圧である。
【0061】また、ライン圧モジュレータバルブ44のドレーンポート49からの排出オイルを、油路52を経由して潤滑系統に送ることができる。このため、オイルポンプ34の吐出量を低減することができ、この吐出量の低減分に対応して、オイルポンプ34を駆動するための動力が低減され、結果的に燃費を向上することができる。
【0062】なお、この実施形態においては、変速機としていわゆるトロイダル式の無段変速機を用いることもできる。トロイダル式の無段変速機は、円弧面を有する入力ディスク(駆動側回転部材)および出力ディスク(従動側回転部材)と、入力ディスクおよび出力ディスクの円弧面に接触するパワーローラ(伝動部材)とを有している。そして、入力ディスクおよび出力ディスクとパワーローラとの接触圧を高油圧により制御し、この高油圧を低油圧に制御して摩擦係合装置を係合させる油路に供給することになる。なお、トロイダル式の無段変速機の動力伝達原理は、トラクション伝動であるが、この発明においては、このトラクション伝動も摩擦接触の一例として把握している。
【0063】また、動力合成装置2に代えて、摩擦係合装置の係合・解放により変速比が段階的(不連続)に制御される有段変速機が搭載されている車両に対しても、この実施形態を適用することができる。このように、有段変速機の出力側に無段変速機が配置されているレイアウトにおいては、無段変速機に入力されるトルクが増加し易くなるために、無段変速機のセカンダリプーリの挟持圧を制御する油圧と、摩擦係合装置の係合に必要な油圧との差が一層大きくなり、この実施形態が一層有効に機能することになる。また、摩擦係合装置の入力側、つまり、動力源から摩擦係合装置に至るトルクの伝達経路に、無段変速機が設けられている車両に対しても、この実施形態を適用することができる。
【0064】さらにまた、調圧バルブ60,61,62に代えて、調圧機能を備えていない切り換えバルブを用いることができる。つまり、ライン圧モジュレータバルブ44により調圧されたクラッチ元圧が、摩擦係合装置C1,C2,C3の係合油圧として用いられる。なお、この場合は、上記の調圧バルブ60,61,62およびリニアソレノイドバルブ69,78,87に代えて、オン・オフソレノイドバルブが用いられる。
【0065】ここで、上記の具体例に基づいて開示されたこの発明の特徴的な構成を記載すれば以下のとおりである。すなわち、動力源から車輪に至るトルクの伝達経路に変速機と摩擦係合装置とが設けられており、前記変速機が、駆動側回転部材および従動側回転部材と伝動部材とを摩擦接触させるとともに、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触位置を変更することにより変速をおこない、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触圧が油圧により制御されるとともに、前記摩擦係合装置の係合・解放を油圧により制御する切り換え機構(調圧バルブ)を備えている変速機の油圧制御装置において、油圧源の吐出油圧を、前記駆動側回転部材および前記従動側回転部材と前記伝動部材との接触圧の制御に用いる高油圧に制御する第1の調圧機構と、この高油圧を低油圧に制御して前記切り換え機構の入力側に供給する第2の調圧機構とを備えていることを特徴とする変速機の油圧制御装置。
【0066】
【発明の効果】以上説明したようにこの発明によれば、油圧回路全体において、第2の油圧とは異なる第1の油圧、例えば高油圧が伝達される油路が可及的に短くなるために、高油圧用の対策を施す油圧回路構成部品が減少し、かつ、油圧回路構成部品を可及的に薄肉化することができる。したがって、油圧制御装置の小型化および軽量化ならびに低コスト化を図ることができる。また、第1の油圧が第2の油圧に低下されて摩擦係合装置を係合させる油路に供給されるために、摩擦係合装置およびその油路に高油圧対策を施す必要がなく、その小型化および軽量化ならびに低コスト化を図ることができるとともに、その損傷を防止することができる。さらに、摩擦係合装置の係合油圧が、第1の油圧に依存していないために、第1の油圧のバラツキによる摩擦係合装置の係合油圧のバラツキが解消され、摩擦係合装置の作動応答性が向上する。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月8日(1999.10.8)
【代理人】 【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 丈夫
【公開番号】 特開2001−108089(P2001−108089A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−288643