トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 走行車両の変速装置
【発明者】 【氏名】兵頭 修

【氏名】家木 邦彦

【氏名】竹本 裕二

【氏名】山下 暢

【要約】 【課題】変速段をアクチュエータの駆動を介して切り替えるトラクタ等では、変速操作が簡単で確実になった反面、例えば高速走行中の変速段から超低速の変速段に変速する場合、いわゆるエンジンブレーキ状態となって急激な減速ショックを生じるという課題が有った。

【解決手段】変速段をアクチュエータ(133,134…)の駆動を介して切り替えるトラクタ等の変速装置において、前記変速装置には、変速段を切り替え車速を増速または減速操作する際、車軸回転数の変化を予想して目的の変速段に到達する以前に途中の変速段を経由するか否かを判定する制御手段備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数組の変速部(32,33)を組み合わせて複数の変速段を設定可能とすると共に、前記変速段をアクチュエータ(133,134…)の駆動を介して切り替える走行車両の変速装置において、前記変速装置には、変速段を変速操作する際、目的の変速段に到達する以前に途中の変速段を経由するか否かを判断する制御手段を備えたことを特徴とする走行車両の変速装置。
【請求項2】 前記制御手段は、現在の車軸回転数と目的の変速段に設定された基準車軸回転数との比較に基づき目的の変速段に到達する以前に途中の変速段を経由するか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の走行車両の変速装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、トラクタ等の走行車両の変速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】トラクタの変速装置は、前後進変速部と主変速部と副変速部とからなり、前後進変速部で前進と後進を切り替えるとともに、主変速部による主変速と副変速部による副変速の組み合わせで多数段(たとえば16段)の変速位置を設定している。そして、従来のトラクタにおいて、これら各変速部をシンクロメッシュ機構で構成したものや、油圧クラッチ機構で構成したもの、シンクロメッシュ機構と油圧クラッチ機構とを組み合わせて構成したもの等があり、特開平7−217729号公報に示されるように、これら機構をアクチュエータの駆動により切り替えるものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記のような多段の変速段をアクチュエータの駆動を介して切り替えるトラクタでは、変速操作が簡単で確実になった反面、例えば高速走行中の変速段から超低速の変速段に変速する場合、エンジンの回転が大減速比の歯車変速機を介して回転軸と接続することとなるので、いわゆるエンジンブレーキ状態となって急激な減速ショックを生じるという課題が有った。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題はつぎの構成によって達成される。すなわち、請求項1の発明では、複数組の変速部(32,33)を組み合わせて複数の変速段を設定可能とすると共に、前記変速段をアクチュエータ(133,134…)の駆動を介して切り替える走行車両の変速装置において、前記変速装置には、変速段を変速操作する際、目的の変速段に到達する以前に途中の変速段を経由するか否かを判断する制御手段を備えたことを特徴とする走行車両の変速装置とした。
【0005】また請求項2の発明では、前記制御手段は、現在の車軸回転数と目的の変速段に設定された基準車軸回転数との比較に基づき目的の変速段に到達する以前に途中の変速段を経由するか否かを判断することを特徴とする請求項1に記載の走行車両の変速装置とした。
【0006】また、請求項2の発明では、前記制御手段は、現在の車軸回転数と目的の変速段に設定された基準車軸回転数との比較により目的の変速段に到達する以前に途中の変速段を経由するか否かを判定することを特徴とする請求項1に記載のトラクタの変速装置とした。
【0007】
【発明の効果】以上のように構成した請求項1の発明では、前記制御手段により増速または減速操作を行う際、目的の変速段に到達する以前に途中の変速段を経由するか否かを判断し、特に請求項2の発明では、前記判断を現在の車軸回転数と目的の変速段に設定された基準車軸回転数との比較に基づき判定する構成としたので、状況に応じた迅速且つ安全な変速段の切り替えを行うことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の制御手段を有する変速装置を設けたトラクタの一実施例について説明する。図3に示すトラクタ1は、前後四輪駆動車両であって、機体の四隅部に前輪2、2と後輪3、3を備えている。前輪2、2を支持する前車輪軸ケース5は前フレーム7の下側に取り付けられ、後輪3、3を支持する後車軸ケース6、6は、ミッションケース8の後部側面に取り付けられている。
【0009】前フレーム7の中央上側にはエンジン10が搭載されている。ハンドル16は、これを左右回転させると、前輪2、2が舵取り揺動するようになっている。また、変速シフトレバー17は、これによって変速操作するようになっている。
【0010】図4はこのトラクタの伝動機構図、図5は油圧回路とその制御回路を示す図である。まず、伝動機構の概要について説明する。エンジン10の回転動力は、ミッションケース8に入力される。ミッションケース8の入り口部には主クラッチ30が設けられ、エンジン10の回転動力からの伝動力を入り切りするようになっている。主クラッチ30を経た動力は、前輪及2び後輪3を駆動する走行駆動力と、外部動力取出用のPTO駆動力の二系統に伝動分岐される。走行駆動力は、前後進変速部31、主変速部32、副変速部33からなる走行変速装置を経て後輪デフ装置34に伝動され、左右の後輪3、3を駆動する。また、走行変速装置で変速された後の動力は、4WD切替装置35を経由し、ミッションケース8の前面部に取り出され、それから前輪伝動軸5aにより前車軸ケース5(図3参照)内の前輪デフ装置36に伝動され、左右の前輪2,2を駆動する。
【0011】一方、PTO駆動力は、PTO正逆転装置37とPTO変速装置38を経由し、ミッションケース8の背面部から後方に突出するPTO軸39に取り出される。PTO軸39の突出部に各種作業機(図示省略)ヘの伝動軸が着脱自在に伝動連結するようになっている。
【0012】次に、走行変速装置の各変速部の構造について説明する。前後進変速部31は、主クラッチ軸S1の回転を前後進変速軸S3に正転または逆転方向に選択的に切り替えて伝動する変速部である。主クラッチ軸Slの後端部に取り付けたギヤG1が中継軸S2のギヤG2に噛み合い、更にそのギヤG2はニードルベアリングにより前後進変速軸S3に回転自在に嵌合する前進ギアG3に噛み合っている。また、中継軸S2には前記ギヤG2とは別にギヤG4が取り付けられており、そのギヤG4がカウンタ軸S4のカウンタギアG5を介して、前後進変速軸S3にニードルベアリングにより回転自在に嵌合する後進ギヤG6に噛み合っている。そのため、前進ギヤG3と後進ギヤG6は互いに逆方向に回転するようになっている。
【0013】前進ギヤG3及び後進ギヤG6は、湿式多板油圧クラッチ構造の前進クラッチCFと後進クラッチCB(図5参照)により前後進変速軸S3に伝動連結される。主変速部32は、前後進変速軸S3と一体回転するように設けた主変速駆動軸S6で4段階に分けられた変速段の中の1段階を選択して変速してから、これと平行に設けた主変速従動軸S7へ伝動する変速部である。主変速駆動軸S6には1速駆動ギヤG9、2速駆動ギヤGl0、3速駆動ギヤG11及び4速駆動ギヤG12がそれぞれ回転自在に嵌合させて設けられ、また主変速従動軸S7には1速従動ギヤG13、2速駆動ギヤG14、3速従動ギヤG15及び4速従動ギヤG16が対となる前記駆動ギヤG9〜G12と常時噛合する状態で一体に取り付けられている。これら4対の主変速ギヤの伝動比は、4速ギヤ、3速ギヤ、2速ギヤ、1速ギヤの順に大きくなっている。
【0014】各駆動ギヤG9〜G12はシンクロメッシュ機構により主変速駆動軸S6に伝動連結される。すなわち、主変速駆動軸S6にハブがスプラインで嵌合し、更にそのハブの外周部にスリーブがスプラインで嵌合し、そのスリーブに形成された溝にキーが嵌り込み、そのキーの軸方向両側にリングが駆動ギヤG9、G10(またはギアG11、G12)の円錐部に対向して設けられている。ミッションケース8の外部に設けたプッシュプル油圧シリンダA、Bで作動されるシフタ56によりスリーブを軸方向いずれかに動かすと、摩擦によりリングの回転が円錐部に伝わり、駆動ギヤと主変速駆動軸S6の回転速度が同調し、更にスリーブを動かすと、スリーブのスプライン部が駆動ギヤG9、G10、G11またはG12のスプライン部と噛み合って、主変速駆動軸S6と駆動ギヤG9、G10、G11またはG12とが完全に伝動連結された状態となる。前記油圧シリンダA、Bはそれぞれ主変速用ソレノイドバルブV2、V3(図5参照)によりプッシュ・プル制御される。
【0015】主変速駆動軸S6と1速駆動ギヤG9が伝動連結されると「1速」シフトとなる。主変速駆動軸S6と2速駆動ギヤG10が伝動連結されると「2速」シフトとなる。主変連駆動軸S6と3速駆動ギヤG11が伝動連結されると「3速」シフトとなる。また、主変速駆動軸S6と4速駆動ギヤG12が伝動連結されると「4速」シフトとなる。ハブ側の回転ギヤG9、G10、G11、G12の回転を円滑に同調するには伝動上手側もしくは下手側からの動力を遮断する必要があるため、前後進変速部31もしくは副変速部33を「中立」にしてシフトチェンジする。
【0016】副変速部33は、主変速従動軸S7の回転を第一副変速軸S8と第二副変速軸S9へ4段階の変速段の中の一つに選択的に変速して伝動する変速部である。主変速従動軸S7の筒状部と一体の高速クラッチボスに形成されたギヤG17が、第二副変速軸S9に回転自在に嵌合する中速クラッチボスに形成されたギヤG18と減速伝動するように噛み合っている。また、高速クラッチボスに形成されたもう一つのギヤG19が、中継軸S10に一体に設けたギヤG20と減速伝動するように噛み合い、且つ中継軸S10に一体に設けたもう一つのギヤG21が、第一副変速軸S8に回転自在に嵌合する低速クラッチボスに形成されたギヤG22に減速伝動するように噛み合っている。
【0017】更に、低速クラッチボスに形成されたもう一つのギヤG23が、第二副変速軸S9に回転自在に嵌合する超低速クラッチボスに形成されたギヤG24に減速伝動するように噛み合っている。したがって、各クラッチボスは常時一体回転し、その回転速度は高速クラッチボス、中速クラッチボス、低速クラッチボス、超低速クラッチボスの順に大きくなっている。
【0018】また、第一副変速軸S8にスプラインで嵌合するギヤG25が、第二副変速軸S9にスプラインで嵌合するギヤG26に噛み合っている。更に、ギヤG26と一体のギヤG27が、4WD切替装置伝動軸S11のギヤG28に噛み合っている。なお、第一副変速軸S8の後端部には、後輪デフ装置34に伝動するドライブピニオンG29が一体形成されている。
【0019】高速クラッチボス及び低速クラッチボスと第一副変速軸S8とは副変速クラッチCH、CL(図5参照)により伝動連結され、中速クラッチボス及び超低速クラッチボスと第二副変速軸S9とは副変速進クラッチCM、CLLにより伝動連結される。これら副変速クラッチCH、CM、CL、CLLは、前記前進クラッチCFや後進クラッチCBと同様の湿式多板油圧クラッチ機構であって、副変速用ソレノイドバルブV4、V5、V6、V7(図5参照)でそれぞれ入・切制御される。
【0020】各副変速クラッチCH、CM、CL、CLLを作動させる作動油は、ミッションケース8内に充填されている潤滑油の一部を油圧ポンプ(図示せず)で吸引加圧し、それを第一副変速軸S8または第二副変速軸S9内に設けた油路を通して油室へ送り込むようになっている。
【0021】副変速クラッチCHを入とすると、高速クラッチボスの回転が第一副変速軸S8へ伝動され、更にその第一副変速軸S8の回転がドライブピニオンG29より後輪デフ装置34へ伝動されると共に、ギヤG25、G26の組み合わせ、及びギヤG27、G28の組み合わせを介して4WD切替装置伝動軸S11ヘ伝動される「高速」シフトとなる。
【0022】副変速クラッチCMを入とすると、中速クラッチボスの回転が第二副変速軸S9に伝動され、更にその第二副変速軸S9の回転が、ギヤG26、G25の組み合わせにより第一副変速軸S8へ伝動され、ドライブピニオンG29より後輪デフ装置34へ伝動されると共に、ギヤG27、G28の組み合わせにより4WD切替装置伝動軸S11へ伝動される「中速」シフトとなる。
【0023】副変速クラッチCLを入とすると、低速クラッチボスの回転が第一副変速軸S8へ伝動され、更にその第一副変速軸S8の回転が、ドライブピニオンG29より後輪デフ装置34へ伝動されると共に、ギヤG25、G26の組み合わせ、及びギヤG27、G28の組み合わせを介して4WD切替装置伝動軸S11へ伝動される「低速」シフトとなる。
【0024】副変速クラッチCLLを入とすると、超低速クラッチボスの回転が第二副変速軸S9へ伝動され、更にその第二副変速軸S9の回転が、ギヤG25、G26の組み合わせにより第一副変速軸S8へ伝動され、ドライブピニオンG29より後輪デフ装置34へ伝動されると共に、ギヤG27、G28の組み合わせにより4WD切替装置伝動軸S11へ伝動される「超低速」シフトとなる。
【0025】いずれの副変速クラッチCH、CM、CL、CLLもクラッチ切の状態にすると主変速部32から前後輪への伝動を断つと共に前後輪の惰性による回転が主変速部32へ伝わるのを遮断する「中立」シフトとなる。伝動側の摩擦板と被伝動側の摩擦板の圧着及び離反は油圧により瞬時に行われるので、副変速部33のシフトチェンジは迅速かつ円滑になされる。
【0026】このように副変速部33は、原動軸である主変速従動軸S7の延長線上に第一変速軸S8を設け、その第一変速軸S8に前記主変速従動軸S7から当該第一変速軸S8への回転動力を入・切する2つの油圧クラッチCH、油圧クラッチCLを設けると共に、前記第一変速軸S8と平行に第二変速軸S9を設け、その第二変速軸S9に前記主変速従動軸S7から当該第二変速軸S9への回転動力を入・切する2つの油圧クラッチCM、油圧クラッチCLLを設け、4段階に変速可能に構成している。
【0027】本発明においては、電磁制御されるアクチュエータ、すなわち油圧クラッチCF、油圧クラッチCB、油圧クラッチCH、油圧クラッチCM、油圧クラッチCL、油圧クラッチCLL、および主変速シリンダA、主変速シリンダBで各変速部31、32、33をシフトチェンジし、その各アクチュエータを制御装置100(図1参照)で制御する構成とした。
【0028】図1に示す制御装置100はマイクロコンピュータ101、入力インターフェース102、出力インターフェース103、タイマー時計104,ROM105、106及びRAM107よりなり、入力インターフェース102には変速シフトレバー17(図6参照)の基部に設けられたシフト位置センサ110の信号、増速ボタン17aの増速スイッチ111の信号、減速ボタン17bの減速スイッチ112の信号、前車輪2の車軸に設けた車軸回転センサ113の信号、クラッチガイドスイッチ114の信号、クラッチペダルスイッチ115の信号、車速感知用回転センサ116の信号を入力し、これらの信号をマイクロコンピュータ101で演算処理し、各アクチュエータの駆動コイル121、122、123、124、125、126、127、128を制御して電磁弁V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7(図5参照)を作動して油圧回路の開閉を行い、主変速シリンダ133〜134及び副変速クラッチ135〜138の操作を行う。
【0029】図2は制御装置100の制御のフローを示したもので、図7は変速シフトレバー17の主変速、副変速、変速位置とトラクタの車速との関係を示し、図8は基準車軸回転数と変速位置との関係を示し、また表A1は変速位置と主変速、副変速の組み合わせ関係を示し、表A2は変速位置と車速と前車輪車軸回転数との関係を示すものでいずれも変速位置が16段の例を示している。
【0030】図6には変速シフトレバー17の斜視図を示す。トラクタ1の走行中など高速走行から代かきプラウ、ロータリあるいは超低速に減速する場合には、それぞれ変速シフトレバー17を走行17cから代かきプラウ17e、ロータリ17fあるいは超低速17gにシフトすることで行い、変速領域をそれぞれ指定できる。また、ボタン17a、17bを押すことで変速段を指定することができる。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】次に図2のフローを説明する。変速シフトレバー17をシフトして変速操作を行うと、F1で変速シフトレバー17の基部に設けられたシフト位置センサ110の信号が現在のシフト位置(Pr)として読み込まれ(例えば、「走行域16段であるときはPr=16」が読み込まれる。)、次いでF2で前輪の回転数を車軸回転センサ113で現在の車軸回転数(Rr)が読み込まれる(例えば、Rr=2900と読む。)。F3で変速シフトレバー17による作業域変更があるか否か待機する。ここでNOであれば(例えば、「走行」から「超低」になる。)F4でタイマー時計104に予め設定した一定時間の経過を待ち、再度車軸の回転数を検出するため(車速の変化を見ている)、F1に戻る。
【0034】F3で変速シフトレバー17による作業域変更がYESであれば、F5で変速先の領域の中で、中間の変速段(表A2中の*マーク)の変速位置(Px)へ変速されるようにプログラムされている(例えば、「超低」の変速位置(表A2中の*マーク)であるPx=3が選択される。)。
【0035】次にF6において急激な減速を防止するために、仮の変速位置(表A2中の*マーク)(Px)に対する基準車軸回転数(Rx)を読み込み(例えば、Px=3ではRx=47.3となる。)、F7で基準車軸回転数(Rx)と現在の車軸回転数(Rr)との比較演算が行われ、減速であるか、増速であるか判断する。
【0036】現在の車軸回転数(Rr)が小さくて、Rx<RrがNO、つまり増速であれば制御のフローはF7からF10に進む。F10では現変速段から表A2の*マークの段に変速され、制御フローは完結してリターンに入り、スタートに戻る。現在の車軸回転数(Rr)が大きくて、Rx<RrがYES、つまり減速であれば制御のフローはF7からF8に進む。そして、現在の車軸回転数Rrに設定減速率X%を掛けた値(Rr’)を計算する(例えば、X=20%と設定してPr=16、Rr=2900(センサー値)とすると、Rr’=2900×0.2=580を計算する。)。
【0037】次に変速位置(表A2中の*マーク)(Px)の基準回転数(Rx)と計算値(Rx’)段とを比較して、Rx≧Rx’ならF10に進み、Rx<Rx’なら(例えば、前記Rx=47.3はRx’=580より小さいので)、F11に進む。F11では基準主軸回転数(Rx)が現在の車軸回転数(Rr)以上で、かつ最低速の変速位置(Px’)を選択し(Rr’=580rpm以上で最低速の11段へ変速し)、変速を開始する。
【0038】次いで、変速位置(Px’)の基準車軸回転数をRrとして置き換え(例えば、Px’=11の基準回転数は621rpmなので、Rr=621に置換し)、F8に戻るループに入り、Rx≧Rx’となるまで、このループを繰り返し(例えば、621rpm×0.2=124.2なので7段が選択され、再び172×0.2=34.4が得られる3段が選択されてF10に移る。)、制御のフローはリターンに入り完結する。
【0039】さらに減速するには減速押しボタン17b(図6参照)を押せばよい。この場合変速シフトレバー17の操作は行っていないから制御フローはF1、F2、F3、F4、F1をたどり、減速押しボタン17bを3回押した場合にはPx=1に変速される。
【0040】このように本発明の制御装置100によれば、増速する場合は従来と全く同じように迅速に増速できるうえ、減速する場合は制御のフローがF8、F9、F11、F12のループを一巡するたびに変速シフト位置を低下するように作用し、必ず途中の変速シフトを経由して、たとえば上記の例では走行のPr=16からPr=11、Pr=7を経由して超低速のPr=3に変速されるから、走行中のシフト位置から超低速に変速する場合でも急激な減速ショックを避けることができ、車軸の回転を基準として、この減速具合を予想し、急減速の場合はその間にシフト位置を段階的に下げるので、オペレータの安全上もきわめて有効な効果を奏する。
【0041】本発明の第二の実施例では、停止状態ではシフト指示が大きく飛んでも、一気にシフトし、スピーディなシフトを行い、車体が動いている状態では、オペレータがシフトを大きく飛ばした時(例えばロータリモードから走行モードへまたはその逆等)でも、変速を一気に飛ばすのでなく、間に一時シフト部を設け、ある一定時間接続した後指示のシフトへ変速し、安全性を向上させるものである。
【0042】本実施例の制御のフローを示す図9において、変速シフトレバー17を操作するまでの間はF1、F2、F3、F4のフローとなり、図2と全く同様であり説明を省略する。変速シフトレバー17(図6参照)を操作するとF3はYESとなりF5で操作後の変速シフトレバー17の位置Pxを読み込むことも図2と同様である。次に、F21においてトラクタ1の車体が停止しているか、または設定速度以下であるかを演算する。
【0043】トラクタ1の車体が停止しているか、または設定速度以下である場合にはF21はYESとなりF22で変速シフトレバー位置Pxへ変速開始する。制御のフローはリターンとなって一連の制御動作を完了する。F21においてトラクタ1の車体が走行しているか、または設定速度以上である場合にはF21はNOとなり、制御のフローはF23に移り、ここではPrとPxとの間であってPrに隣接する変速シフト位置Pr’を読み込み、ついでF24で変速シフト位置Pr’へ変速を開始し、F25で一定時間の経過を待ち、F26でPrとPr’とは等しいか演算する。
【0044】F26でPrとPr’とが等しくなくてNOの場合は、F27でPrをPr’に読み替えてF23に戻る。F23では新しいPrとPxとの間であってPrに隣接する変速シフト位置Pr’を読み込み、ついでF24で変速シフト位置Pr’へ変速を開始し、F25で一定時間の経過を待ち、F26でPrとPr’とは等しいか演算する。PrとPr’とが等しくYESの場合は制御のフローはリターンに入り完結する。
【0045】本実施例の作用を具体的に説明すると、図9において、変速シフトレバー17を操作するまでの間は制御のフローはF1、F2、F3、F4をループして、トラクタ1が停止していればF1でPr=0、F2でRr=0となり、これらの値を保持し続ける。
【0046】いま変速シフトレバー17を図6の中立(N)17dから走行17cへシフト操作すると、F3で操作後の変速シフトレバー17の位置Px=14であり、F3はYES、次にF21においてトラクタの車体が停止しているので、F21はYESとなり、F22で変速シフトレバー17の位置Px=14の走行へ変速開始する。制御のフローはリターンとなって一連の制御動作を完了する。
【0047】変速シフトレバー17を図6の中立(N)17dから代かきプラウ17e、ロータリ17f、または超低速17gへシフト操作する場合も、それぞれ同様にF21はYES、F22で変速シフトレバー17の位置Px=8(代かきプラウ)、変速シフトレバー17の位置Px=5(ロータリ)または変速シフトレバー17の位置Pr=1(または2、3、4のいずれか)(超低速)にそれぞれ変速開始して制御のフローはリターンとなって一連の制御動作を完了する。
【0048】変速シフトレバー17が図6の超低速17g、ロータリ17fまたは代かきプラウ17eにある状態からロータリ17f、代かきプラウ17eまたは走行17cへシフト操作して増速する場合は、すでにトラクタ1は走行(移動)しており、それぞれの信号すなわち、F1でPr、F2でRrの値を保持し続けているところへ、F3で変速シフトレバー17の信号Pxが読み込まれるので、F3はYES、F4はトラクタは走行(移動)しておりRrの値はゼロでない(または車速感知用回転センサ116の信号が設定速度以上)からF21の演算はNOとなりF23、F24、F25、F26のフローに入る。
【0049】いま変速シフトレバー17を図6の超低速17gから走行17cへシフト操作すると、F1でPr=1(または2、3、4のいずれか)、F3はYES、F5はPx=14走行を読み込み、F21はNOでF23に進む。F23においてPr=1(または2、3、4のいずれか)とPx=14との間でPr=1(または2、3、4のいずれか)に隣接する変速シフトレバー位置Pr’=5(ロータリ)を読み込む。F24でPr’=5のロータリへ変速開始し、F25で一定時間経過して変速が終わるのを待ち、F26でPr’=5とPx=14とを比較演算して、NOであるから制御のフローはF27にループして、F27で現在の変速シフトレバー位置Pr=1(または2、3、4のいずれか)を新しい値Pr=5に読み替えて、F23にもどる。
【0050】F23でPr=5とPx=14との間でPr=5に隣接する変速シフトレバー位置Pr’=8(代かきプラウ)を読み込む。F24でPr’=8(代かきプラウ)へ変速開始し、F25で一定時間経過して変速が終わるのを待ち、F26でPr’=8とPx=14とを比較演算して、NOであるから制御のフローは再びF27にループして、F27で現在の変速シフトレバー位置Pr=5を新しい値Pr=8に読み替えて、F23にもどる。
【0051】F23でPr=8とPx=14との間でPr=8に隣接する変速シフトレバー17の位置Pr’=14の走行を読み込む。F24でPr’=14走行へ変速開始し、F25で一定時間経過して変速が終わるのを待ち、F26でPr’=14とPx=14とを比較演算して、PrとPr’とが等しくYESであるから制御のフローはリターンに入り完結する。
【0052】超低速17gからロータリ17fまたは代かきプラウ17eへ変速シフトレバー17を操作した場合、ロータリ17fから代かきプラウ17eまたは走行17cへ変速シフトレバー17を操作した場合、あるいは代かきプラウ17eから走行17cへ変速シフトレバーを操作した場合のいずれの場合も制御のフローはF21からF23、F24、F25、F26をたどる。
【0053】ノークラッチシフトのトラクタ1において、シフト指示を行う作業モード設定レバーをシフトした時、車速センサにて本体の動性を感知し、変速制御を車体が動いている時と停止している時により別パターンの制御を行うので、停止状態ではシフト指示が大きく飛んでも、一気にシフトし、スピーディなシフトを行い、車体が動いている時、オペレータがシフトを大きく飛ばした時(例えばロータリモードから走行モードへ、またはその逆等)は、変速を一気に飛ばすのでなく、間に一時シフト部を設け、ある一定時間一時シフト部へ接続した後、段階的に順次に指示のシフトへ変速するので、安全性を向上させ、運転操作性が改善できる効用がある。
【0054】本発明の第三の実施例は次の通りである。この実施例は16段ノークラッチ機において、H速からLL速への変速(降段)(とび段)時における変速ショックを低減するために降段制御するものである。なお、クラッチペダルを踏み込んでの変速時は、この制御は行わない。
【0055】現在使用されているトラクタの16段ノークラッチ機は降段制御がないため、H速からLL速にシフトするとフルブレーキ状態となり、オペレータに対して危険である。また、本機に対して負荷が大きく油圧クラッチの短寿命、破損の原因となる。
【0056】そこで本実施例では次のような制御を行う装置を設けた。図10に示すように、減速時のショック低減及び油圧クラッチの長寿命を図る制御のフローのうちF1、F2、F3、F4、F5は図2および図9と同様であり説明を省略する。ただし減速制御だけを行う場合はF2を省略することができる。
【0057】変速シフトレバー17を操作するとF3はYESとなり、F5で操作後の変速シフトレバー17の位置Pxを読み込むことも図2、図9と同様である。次に、F30においてPrとPxとを比較演算する。Pxが大であれば変速シフトレバー17の操作は増速であるから制御のフローは、図9のF22と同様に、F22’に移りPxへ変速開始して、リターンで制御のフローを完結する。
【0058】Pxが小であれば変速シフトレバー17の操作は減速であるから制御のフローは、図10のF31に進む。F31ではPr=Hを演算して、NOであればF32に進む。F32ではPr=Mを演算して、NOであればF33に進む。F33ではPr=Lを演算して、NOであればPr=LLであり制御のフローはリターンに進み、完結する。
【0059】F31でPr=Hを演算して、YESであればF36に進み、Pr=Mに読み替えを行い、F37でPr=Mへ変速を開始する。F38で一定時間の経過を待ちF39に進む。F39でPr=MとPxとを比較演算して、YESであればPx=Pr=Mであり制御のフローはリターンに進み、完結する。
【0060】F39でPr=MとPxとを比較演算して、NOであればF40に進み、Pr=Lに読み替えを行い、F41でPr=Lへ変速を開始する。F42で一定時間の経過を待ちF43に進む。F43でPr=LとPxとを比較演算して、YESであればPx=Pr=Lであり制御のフローはリターンに進み、完結する。
【0061】F43でPr=LとPxとを比較演算して、NOであればF34に進み、Pr=LLに読み替えを行い、F35でPr=LLへ変速を開始する。制御のフローはリターンに進み、完結する。F32でPr=Mを演算して、YESであればF40に進み、Pr=Lに読み替えを行い、F41でPr=Lへ変速を開始する。F42で一定時間の経過を待ちF43に進む。F43でPr=LとPxとを比較演算して、YESであればPx=Pr=Lであり制御のフローはリターンに進み、完結する。
【0062】F43でPr=LとPxとを比較演算して、NOであればF34に進み、Pr=LLに読み替えを行い、F35でPr=LLへ変速を開始する。制御のフローはリターンに進み、完結する。F33でPr=Lを演算して、YESであればF34に進み、Pr=LLに読み替えを行い、F35でPr=LLへ変速を開始する。制御のフローはリターンに進み、完結する。
【0063】第三の実施例の作用は以下の通りである。変速シフトレバー位置Hから減速する場合は、H→M→L→LL、H→M→L、またはH→M、変速シフトレバー位置Mから減速する場合は、M→L→LL、またはM→L、または変速シフトレバー位置Lから減速する場合は、M→L→LLのように必ず隣接する変速シフトレバー位置を経過して減速するので、現行16段ノークラッチ機で降段制御がないため、H速からLL速にシフトするとフルブレーキ状態となり、オペレータに対して危険であることを防止でき、また、トラクタ本機に対して負荷が大きく油圧クラッチの短寿命、破損の原因を取り除くことができるなど格別の効果を奏することができる。
【0064】また、変速シフトレバー17としてクラッチを電気式に入切するノークラッチ機構における牽制ガイドつきの構成としても良い。これは、トラクタ1などの主機を変速する場合、ノブを押し込むことによりスイッチが作動し、クラッチが確実に切れ、クラッチが接続されたまま変速されて破損するような不具合を防止することを目的としたものである。
【0065】クラッチを電気式に入・切するノークラッチ機構における変速シフトレバー17の構成としては実用新案出願公告昭39−28770号公報に開示されたものがあり、トラクタなど走行車両の主機を変速する場合、変速シフトレバー17のノブを押し込むことによりスイッチが作動し、クラッチが切れてから変速シフトレバーの操作を行うようにして、クラッチが接続されたまま変速されて破損するような不具合を防止する考案が示されているが、変速シフトレバー17のノブを押し込まず、直接変速シフトレバー17をシフトすることもできるので、その場合はスイッチが作動せず、クラッチが接続されたまま変速されて変速装置が破損するような不具合を防止することはできなかった。
【0066】本実施例は図11および図12に示すように、変速シフトレバー17の頂部201に、中空であって下部の外径Dに比べて上部の外径dが小である段付きスリーブ202を、変速シフトレバー17の軸方向に摺動自在に遊嵌し、かつ段付きスリーブ202の頂部にノブ203を固着し、段付きスリーブ202の内部にスイッチ部204を設け、スイッチ部204は接点205、206、絶縁物207、208、およびリード線209、210からなる。
【0067】そしてノブ203を押し込むと接点205、206が閉じてスイッチがONとなり、ノブ203から手を離すと変速シフトレバー17と段付きスリーブ202の間に装着したコイルバネ211などの弾性部材によって段付きスリーブ202が上昇し、スイッチ部204は接点205、206が離隔してOFFとなるよう構成する。
【0068】さらに、変速シフトレバー17の変速位置を示すガイドプレート220に変速シフトレバー17の変速指示位置に対応して段付きスリーブ202の下部の外径Dよりも若干大きい直径D’の円形開口を持つガイド穴部221、221’、・・・と、ガイド穴部221、221’、・・・の間を結ぶ段付きスリーブ202下部の外径Dよりも小さく、段付きスリーブ202の上部の外径dよりも若干大きい幅d’のガイド溝部222、222’、・・・とを設けて、変速シフトレバー17の牽制ガイドプレート220を構成したことを特徴とする。
【0069】この変速シフトレバー17をシフト操作しようとするとき、もしノブ203を押し込むことなく変速シフトレバー17をシフト操作すると、段付きスリーブ202の外径Dの大径部が直径D’の円形開口を持つガイド穴部221、221’、・・・から脱出できないためシフト操作ができないが、ノブ203を押し込んでから変速シフトレバー17をシフト操作すれば、段付きスリーブ202の外径Dの大径部はガイドプレートの下側に入り込み、段付きスリーブ202の外径dの小径部はガイドプレートの幅d’のガイド溝部222、222’、・・・を通過してシフト操作が可能になる。
【0070】コイルバネ211伸張時の変速シフトレバー17と段付きスリーブ202との間隔をH1、段付きスリーブ202の外径変化部とガイドプレート220の裏面との距離をH2、スイッチ部204の接点205と206との距離をH3として、H1>H2>H3の関係を保つことにより、スイッチ部204の接点が閉じた後でなければ段付きスリーブ202はガイドプレートの幅d’のガイド溝部222、222’、・・・を通過できないので、変速シフトレバー17の変速操作もスイッチ部204の接点が閉じた後でなければできなくなり、従って、スイッチ部204の接点が閉じてクラッチが切れた後に変速シフトレバー17をシフトして、変速操作を行うことができるので、クラッチが接続されたまま変速シフトレバー17をシフトして、変速装置を破損するような不具合を確実に防止できる効果を奏する。
【0071】また、変速シフトレバー17は次のような構造にしても良い。トラクタ1等の走行装置の変速シフトレバー17は、レバー17を前後にシフトして変速するほかに変速シフトレバー17の頭部に押しボタン17a、17bを設けて一つの変速シフト位置において変速微調整を行うことができるようにしたものがある。この変速シフトレバー17は、押しボタン17aまたは17bを一回押すことにより一段ずつ増速または減速できるが、トラクタ1等の使用状況によっては変速の度合いが細かすぎるので、このような場合には押しボタン17aまたは17bを二回以上続けて押す必要があり、操作が迅速を欠き、煩雑となる欠点があった。
【0072】そこで図13に示すように変速シフトレバー17の頭部に通常の増速押しボタン17a、減速押しボタン17bのほかに二段飛び増速押しボタン17h、および二段飛び減速押しボタン17iを設ける構成とした。二段飛び増速押しボタン17h、または二段飛び減速押しボタン17iを一回押すことにより二段ずつ増速または減速できて、変速操作が迅速となり、簡単となる効果を奏することができる。
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【出願日】 平成8年5月14日(1996.5.14)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−108088(P2001−108088A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願2000−285268(P2000−285268)