| 【発明の名称】 |
車両の変速制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】新美 康彦
【氏名】山中 康司
【氏名】坂 鉱一
【氏名】宮川 和仁
【氏名】城田 雄一
【氏名】木下 宏
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| 【要約】 |
【課題】空調装置の冷房要求度合に応じた変速比制御により、乗員の冷房フィーリングを向上させる。
【解決手段】車両エンジン4により駆動される圧縮機1を有する冷凍サイクルRの蒸発器9により車室内を冷房する。入力回転数Niと出力回転数Noとの変速比(Ni/No)を車両の運転状態に応じて無段階または多段階に自動制御する変速機24を備え、冷房始動直後のクールダウン時のように冷房要求度合が大きいときは、変速比(Ni/No)の補正により車両エンジン4の回転数を高くする。これにより、圧縮機1の回転数を高めて、クールダウン性能を向上することができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)の蒸発器(9)により車室内を冷房する空調装置と、入力回転数(Ni)と出力回転数(No)との変速比(Ni/No)を車両の運転状態に応じて無段階または多段階に自動制御する変速機(24)とを備える車両の変速制御装置であって、前記空調装置による冷房要求度合が所定値より大きいときに、前記冷房要求度合が大きくなるにつれて前記変速比(Ni/No)を、車両の運転状態に応じて決まる基準変速比(A0)より大きくなる方向に補正することを特徴とする車両の変速制御装置。 【請求項2】 車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)の蒸発器(9)により、車室内を冷房する空調装置と、入力回転数(Ni)と出力回転数(No)との変速比(Ni/No)を車両の運転状態に応じて無段階または多段階に自動制御する変速機(24)とを備える車両の変速制御装置であって、前記空調装置による冷房要求度合が所定値より小さいときに、前記冷房要求度合が小さくなるにつれて前記変速比(Ni/No)を、車両の運転状態に応じて決まる基準変速比(A0)より小さくなる方向に補正することを特徴とする車両の変速制御装置。 【請求項3】 前記冷房要求度合が所定値より小さいときに、前記冷房要求度合が小さくなるにつれて前記変速比(Ni/No)を前記基準変速比(A0)より小さくなる方向に補正することを特徴とする請求項1に記載の車両の変速制御装置。 【請求項4】 前記冷房要求度合に応じて変速比補正値(B)を演算する第1演算手段(S232)と、前記基準変速比(A0)を演算する第2演算手段(S131)と、前記基準変速比(A0)を前記変速比補正値(B)により補正して前記変速比(Ni/No)を演算する第3演算手段(S132)とを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両の変速制御装置。 【請求項5】 前記冷房要求度合を、a.前記蒸発器(9)の温度(TE)と蒸発器目標温度(TEO)との偏差(En)、b.車室内温度(TR)、c.前記蒸発器(9)の冷却度合に関連する物理量、d、車室内への目標吹出温度(TAO)、e.乗員により設定される車室内設定温度(Tset)、f.前記車室内温度(TR)と前記車室内設定温度(Tset)との偏差(En’)のいずれか1つに基づいて判定することを特徴とする請求項1に記載の車両の変速制御装置。 【請求項6】 前記圧縮機(1)は前記蒸発器(9)の冷却度合に応じて吐出容量を変化させる可変容量型圧縮機であり、前記圧縮機(1)の吐出容量が小さくなるにつれて前記冷房要求度合が小さいと判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の変速制御装置。 【請求項7】 前記圧縮機(1)は前記蒸発器(9)の冷却度合に応じて断続制御される固定容量型圧縮機であり、前記圧縮機(1)の稼働率に関連する情報が小さくなるにつれて前記冷房要求度合が小さいと判定することを特徴とする請求項2に記載の車両の変速制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動制御により変速比を無段階または多段階に変更できる変速機を備えた車両の変速制御装置において、特に、空調装置の冷房要求度合に応じて変速比を制御する変速制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、特開平11−20459号公報において、空調装置の暖房要求度合に応じて変速比を制御する変速制御装置が記載されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上記の従来技術では、空調装置の暖房要求に対応する変速比の制御が記載されているのみであって、空調装置の冷房要求に対応できるものではない。 【0004】本発明は上記点に鑑みて、空調装置の冷房要求度合に応じた変速比制御により、乗員の冷房フィーリングの向上を図ることを第1の目的とする。 【0005】また、本発明は空調装置の冷房要求度合に応じた変速比制御により、車両エンジンの燃費の向上を図ることを第2の目的とする。 【0006】また、本発明は可変容量型圧縮機を用いる空調装置において、変速比制御により圧縮機消費動力の低減を図ることを第3の目的とする。 【0007】また、本発明は固定容量型圧縮機を用いる空調装置において、変速比制御により圧縮機断続(オン、オフ)に伴うショックの低減を図ることを第4の目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車両エンジン(4)により駆動される圧縮機(1)を有する冷凍サイクル(R)の蒸発器(9)により車室内を冷房する空調装置と、入力回転数(Ni)と出力回転数(No)との変速比(Ni/No)を車両の運転状態に応じて無段階または多段階に自動制御する変速機(24)とを備える車両の変速制御装置において、空調装置による冷房要求度合が所定値より大きいときに、冷房要求度合が大きくなるにつれて変速比(Ni/No)を、車両の運転状態に応じて決まる基準変速比(A0)より大きくなる方向に補正することを特徴とする。 【0009】これにより、冷房始動直後のクールダウン時のように冷房要求度合が大きいときは、変速比(Ni/No)の補正により車両エンジン(4)の回転数を高くして、圧縮機(1)の回転数を高めることができる。そのため、蒸発器(9)の冷房能力(クールダウン性能)を向上でき、乗員の冷房フィーリングを向上できる。 【0010】請求項2に記載の発明では、冷房要求度合が所定値より小さいときに、冷房要求度合が小さくなるにつれて変速比(Ni/No)を基準変速比(A0)より小さくなる方向に補正することを特徴とする。 【0011】これにより、車室内温度が設定温度付近まで低下した後の能力制御域のように冷房要求度合が小さいときは、変速比(Ni/No)の補正により車両エンジン(4)の回転数を低くすることができ、車両エンジン(4)を低回転・高トルクの高効率領域に移行させて、車両エンジン(4)の燃費を改善できる。 【0012】しかも、エンジン回転数の低下により圧縮機(1)の回転数を低くすることができるので、次のような効果を発揮できる。すなわち、圧縮機(1)が蒸発器(9)の冷却度合に応じて吐出容量を変化させる可変容量型である場合は、圧縮機回転数の低下により圧縮機容量を大きくして、圧縮機効率を向上できるので、圧縮機消費動力を低減して、エンジン燃費を一層改善できる。 【0013】また、圧縮機(1)が蒸発器(9)の冷却度合に応じて断続制御される固定容量型である場合は、圧縮機回転数の低下により圧縮機(1)のオン周期が長くなる。これにより、圧縮機1の断続回数を低減して、断続(オン、オフ)に伴うショックを低減できる。 【0014】請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の車両の変速制御装置において、車室内の冷房要求度合が所定値より小さいときに、冷房要求度合が小さくなるにつれて変速比(Ni/No)を基準変速比(A0)より小さくなる方向に補正することを特徴とする。これにより、請求項1と請求項2の作用効果を併せ奏することができる。 【0015】請求項4に記載の発明のように、冷房要求度合に応じて変速比補正値(B)を演算する第1演算手段(S232)と、基準変速比(A0)を演算する第2演算手段(S131)と、基準変速比(A0)を変速比補正値(B)により補正して変速比(Ni/No)を演算する第3演算手段(S132)とを備えることにより、請求項1ないし3の変速制御装置を具体的に構成できる。 【0016】請求項5に記載の発明のように、請求項1において、冷房要求度合は、a.蒸発器(9)の温度(TE)と蒸発器目標温度(TEO)との偏差(En)、b.車室内温度(TR)、c.蒸発器(9)の冷却度合に関連する物理量、d、車室内への目標吹出温度(TAO)、e.乗員により設定される車室内設定温度(Tset)、f.車室内温度(TR)と車室内設定温度(Tset)との偏差(En’)のいずれか1つに基づいて判定することができる。これらa〜fの信号値の変化により変速比を良好に補正できる。 【0017】請求項6に記載の発明では、請求項2において、圧縮機(1)が蒸発器(9)の冷却度合に応じて吐出容量を変化させる可変容量型圧縮機であり、圧縮機(1)の吐出容量が小さくなるにつれて冷房要求度合が小さいと判定することを特徴とする。 【0018】これにより、圧縮機(1)が可変容量型である場合に、能力制御域のように冷房要求度合が小さいときは、変速比(Ni/No)の補正により車両エンジン(4)の回転数を低くして圧縮機回転数を低下させることができる。これにより、圧縮機容量を大きくして、圧縮機効率を向上できるので、圧縮機消費動力を低減して、エンジン燃費を一層改善できる。 【0019】請求項7に記載の発明では、請求項2において、圧縮機(1)が蒸発器(9)の冷却度合に応じて断続制御される固定容量型圧縮機であり、圧縮機(1)の稼働率に関連する情報が小さくなるにつれて冷房要求度合が小さいと判定することを特徴とする。 【0020】これにより、固定容量型圧縮機(1)が固定容量型である場合に、能力制御域のように冷房要求度合が小さいときは、変速比(Ni/No)の補正により車両エンジン(4)の回転数を低くして圧縮機回転数を低下させることができる。これにより、圧縮機(1)のオン周期が長くなるので、圧縮機1の断続回数を低減して、断続(オン、オフ)に伴うショックを低減できる。 【0021】なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。 【0022】 【発明の実施の形態】(第1実施形態)図1は本発明の第1実施形態の全体構成図であり、車両用空調装置の冷凍サイクルRには冷媒を吸入、圧縮、吐出する圧縮機1が備えられている。圧縮機1は動力断続用の電磁クラッチ2を有し、圧縮機1には電磁クラッチ2のプーリ2aおよびベルト3を介して車両エンジン4の動力が伝達される。電磁クラッチ2への通電は空調用電子制御装置5により断続され、電磁クラッチ2の断続により圧縮機1の運転が断続される。 【0023】圧縮機1から吐出された高温、高圧の過熱ガス冷媒は凝縮器6に流入し、ここで、図示しない冷却ファンより送風される外気と熱交換して冷媒は冷却されて凝縮する。この凝縮器6で凝縮した冷媒は次に受液器7に流入し、受液器7の内部で冷媒の気液が分離され、冷凍サイクルR内の余剰冷媒(液冷媒)が受液器7内に蓄えられる。 【0024】この受液器7からの液冷媒は膨張弁(減圧手段)8により低圧に減圧され、低圧の気液2相状態となる。この膨張弁8からの低圧冷媒は蒸発器(冷房用熱交換器)9に流入する。この蒸発器9は車両用空調装置の空調ケース10内に設置され、蒸発器9に流入した低圧冷媒は空調ケース10内の空気から吸熱して蒸発する。 【0025】膨張弁8は蒸発器9の出口冷媒の温度を感知する感温部8aを有する温度式膨張弁であり、蒸発器9の出口冷媒の過熱度を所定値に維持するように弁開度(冷媒流量)を調整するものである。蒸発器9の出口は圧縮機1の吸入側に結合され、上記したサイクル構成部品によって閉回路を構成している。 【0026】空調ケース10は空調空気の通風路を構成するものであって、空調ケース10において、蒸発器9の上流側には送風機11が配置されている。そして、送風機11の吸入側(図1の上側)には図示しない内外気切替箱が配置され、この内外気切替箱から切替導入された車室内の空気(内気)または車室外の空気(外気)が送風機11により空調ケース10内に送風される。 【0027】空調ケース10内で、蒸発器9の下流側には、車両エンジン4の温水(冷却水)を熱源として空気を加熱する温水式ヒータコア(暖房用熱交換器)12が設置されている。この温水式ヒータコア12の側方にはバイパス通路13が形成され、温水式ヒータコア12を通過する温風とバイパス通路13を通過する冷風との風量割合をエアミックスドア14により調節するようになっている。このエアミックスドア14は、冷温風の風量割合の調節により車室内への吹出空気温度を調節する温度調節手段を構成する。 【0028】さらに、空調ケース10の空気下流端には、車室内乗員の上半身に空気を吹き出すフェイス吹出口15、車室内乗員の足元に空気を吹き出すフット吹出口16、フロントガラス内面に空気を吹き出すデフロスタ吹出口17が形成され、これらの吹出口15〜17は図示しない吹出モードドアにより切替開閉される。なお、上記したエアミックスドア14および吹出モードドアはリンク機構等を介してサーボモータのような電気駆動手段により駆動される。 【0029】また、空調ケース10内で、蒸発器9の空気吹出直後の部位にサーミスタからなる蒸発器吹出温度センサ(蒸発器冷却度合検出手段)18が設けられている。 【0030】なお、圧縮機1として、本例では外部からの制御信号により吐出容量を可変する外部可変容量型圧縮機を用いている。この外部可変容量型圧縮機1は公知のものであり、例えば、斜板型圧縮機において吐出圧と吸入圧を利用して斜板室の圧力を制御する電磁式圧力制御装置を持つ容量可変装置19を備え、斜板室の圧力を制御することにより斜板の傾斜角度を可変してピストンのストローク、すなわち圧縮機吐出容量を連続的に変化させることができる。 【0031】上記容量可変装置19の通電は空調用電子制御装置5により制御され、例えば、容量可変装置19の制御電流Inを増大させると、圧縮機吐出容量が減少するようになっている。圧縮機1の吐出容量の増減および電磁クラッチ2の断続は蒸発器5の温度(蒸発器吹出温度)が所定の目標温度となるように蒸発器5の冷却能力を制制するために行われる。これにより、蒸発器5のフロスト防止、圧縮機1の省動力等の制御を行うことができる。 【0032】ところで、空調用電子制御装置5には、上記したセンサ18の他に、空調制御のために、内気温、外気温、日射量、エンジン冷却水(温水)温度等を検出する周知のセンサ群20から検出信号が入力される。また、車室内計器盤近傍に設置される空調制御パネル21の操作スイッチ群からも操作信号が入力される。 【0033】さらに、空調用電子制御装置5は、車両側のエンジン用電子制御装置22および変速機制御装置23に接続されており、これら制御装置5、22、23相互間にて信号を入出力できるようになっている。エンジン用電子制御装置22は周知のごとく車両エンジン4の運転状況等を検出するセンサ群(図示せず)からの信号に基づいて車両エンジン4への燃料噴射量、点火時期等を総合的に制御するものである。 【0034】車両エンジン4には変速比を無段階(連続的)に変更できる無段変速機(CVT)24が備えられており、この無段変速機24は、周知のように車両エンジン4側に連結される入力側可変プーリと、駆動輪側の駆動軸に連結される出力側可変プーリとを有し、この両可変プーリの間をベルトにより連結するとともに、この両可変プーリのプーリ幅を油圧機構の油圧(ライン圧)により連続的に変化し得る構成になっている。 【0035】従って、油圧機構のライン圧制御によりプーリ幅を変化させて、変速比を無段階に変更できる。ここで、変速比は無段変速機24の入力回転数Niと出力回転数Noとの比(Ni/No)である。変速機制御装置23は、車両エンジン4のスロットル開度、車速等の運転条件に応じて上記油圧機構のライン圧を演算し、変速比を制御するものである。 【0036】次に、本実施形態の作動を説明する。図2は変速機制御装置23による変速機制御の基本フローを示しており、ステップS110にてタイマ、制御フラグ等の初期化を行い、次に、ステップS120にて、車両運転状態(エンジンスロットル開度、エンジン回転数、車速等)の信号、空調用電子制御装置5で算出される変速比補正値等を読み込む。 【0037】次に、ステップS130にて、無段変速機24での変速比を決めるライン圧を含む各種制御値を演算する。このライン圧演算の詳細は後述の図7により説明する。次のステップS140にて、無段変速機24のライン圧が上記演算値となるように油圧機構を制御して無段変速機24の変速比制御を行う。 【0038】図3は空調用電子制御装置5による空調制御の基本フローを示しており、ステップS210にてタイマ、制御フラグ等の初期化を行い、次に、ステップS220にて、センサ18からの蒸発器吹出温度TE、センサ群20からの内気温TR、外気温TAM、日射量TS、エンジン冷却水温度TW等のセンサ信号、空調制御パネル21の操作スイッチ群の操作信号(設定温度Tset等)を読み込む。 【0039】次に、ステップS230にて空調自動制御のための各種制御値を演算する。この制御値の演算は公知のものと同じでよいので、簡単に説明すると、図4はステップS230による演算の概要を示し、ステップS231の目標吹出温度TAOは車室内を乗員の設定した設定温度Tsetに維持するために必要な車室内への吹出温度であって、TAOはTset、TAM、TR、TSに基づいて演算する。 送風機11の風量BLWはTAOに基づいて演算し、エアミックスドア14の開度SWは、TAO、TE、TWに基づいて演算する。また、蒸発器12の目標吹出温度TEOはTAO、TAM等に基づいて演算し、容量可変装置19の制御電流Inは実際の蒸発器吹出温度TEと蒸発器目標吹出温度TEOに基づいて演算する。そして、ステップS232にて変速比補正値Bを演算する。この変速比補正値Bの演算の詳細は後述する。 【0040】次に、ステップS240に進み、各種制御値を各機器に出力して、空調の自動制御、すなわち、圧縮機1の容量制御、電磁クラッチ2の断続制御、送風機11の風量制御、エアミックスドア14の開度制御等を行う。 【0041】図5および図6は変速比補正値Bを演算するための制御マップであり、図5は冷房始動直後のクールダウン時のように冷房熱負荷が大きくて、実際の蒸発器吹出温度TEが蒸発器目標吹出温度TEOより高い場合に適用される制御マップであって、実際の蒸発器吹出温度TEと蒸発器目標吹出温度TEOとの偏差Enに基づいて変速比補正値Bを演算する。この偏差Enは冷房要求度合を表す代表的な指標(情報)であり、冷房始動直後のように冷房要求度合が大きいときほど、偏差Enが大きくなる関係にある。 【0042】図5では、実線■、破線■、1点鎖線■の3つの制御マップを例示しており、制御マップ■の例では、偏差Enが所定値Eno(図示の例では5℃)より大きい範囲では、偏差Enが大きくなるにつれて(冷房要求度合が大きくなるにつれて)変速比補正値Bを1より大きくする。但し、図5の例ではB=1.5を上限にしている。 【0043】そして、車室内の冷房が進行して偏差Enが上記所定値Eno以下になると、蒸発器吹出温度TEが冷房要求度合を満足するレベルまで低下したと判定して、変速比補正値Bを1.0(補正なしの中立値)とする。 【0044】なお、制御マップ■では変速比補正値Bを中立値の1.0と上限値との間で連続的に変化させているのに対して、制御マップ■では変速比補正値Bを段階的に変化させている。また、制御マップ■は上記所定値Eno=0とし、偏差Enが0に減少するまで、変速比補正値Bを中立値の1.0に向かって連続的に減少させる特性にしている。 【0045】ここで、図5に示すように、冷房要求度合として、上記偏差Enの代わりに、車室内温度TR、蒸発器吹出温度TE、車室内への目標吹出空気温度TAO、車室内温度TRと車室内設定温度Tsetとの偏差En’(=TR−Tset)等を使用してもよい。 【0046】一方、図6は車室内の冷房が進行して上記偏差Enが所定値Eno以下となる能力制御域に適用される制御マップであって、冷房始動直後のクールダウン時から能力制御域に移行すると、変速比補正値Bの演算は図6の制御マップによる演算に切り替わる。 【0047】本実施形態のように可変容量圧縮機1を用いている場合は、冷房要求度合を表す指標(情報)として圧縮機1の容量を用い、この圧縮機容量が小さくなるにつれて、変速比補正値Bが1.0より小さくなる。ここで、圧縮機容量は具体的には前記した容量可変装置19の制御電流Inにより判定することができる。 【0048】次に、本発明の特徴とする変速比制御について説明すると、図7は図2のステップS130の具体例を示すもので、ステップS131のマップによりスロットル開度θと車速SPDに基づいて基準変速比A0を演算する。すなわち、基準変速比A0は車両運転状態に基づいて決定されるもので、ステップS131のマップにおける1.7〜2.5の数値は、前述した無段変速機24の入力回転数Niと出力回転数Noとの比(Ni/No)により決まる変速比の値であり、無段変速機24であるから、この変速比の値は実際には連続的に変化させることができる。 【0049】なお、ステップS131のマップにおいて、変速比2.5側は通常のギヤ式変速機におけるロー(Lo)ギヤ側に相当し、変速比1.7側は通常のギヤ式変速機におけるトップ(Top)ギヤ側に相当する。 【0050】次のステップS132において最終的な出力変速比Aを、A=A0×Bの数式により算出する。すなわち、車両運転状態に基づいて決定される基準変速比A0を、冷房要求度合に基づいて決定される変速比補正値Bにて補正することにより、最終的な出力変速比Aを得る。そして、次のステップS133において上記出力変速比Aを得るために必要なライン圧を演算する。 【0051】ところで、夏期の冷房始動直後のように冷房熱負荷が非常に大きい時、つまり、冷房要求度合が非常に大きい時は、前述の図5による制御マップにおいて偏差Enも非常に大きな値となるので、変速比補正値Bは上限値まで増加する。その結果、出力変速比Aは変速比補正値Bにより基準変速比A0を大きくする方向(ローギヤ側)に補正される。 【0052】このように出力変速比Aを増大側(ローギヤ側)に補正することにより、車両エンジン4の回転数が高められるので、圧縮機1の回転数も高くなる。これにより、蒸発器9への循環冷媒流量が増加して蒸発器9の冷房能力を増大できるので、冷房始動時に車室内温度を急速に低下させて、乗員の冷房フィーリングを向上できる。 【0053】図8は上記効果の説明図で、横軸は冷房始動後の経過時間である。本発明によると、出力変速比Aの補正による圧縮機回転数の上昇によって冷房能力を増大できるので、車室内温度TRを設定温度Tsetまで低下させるに必要な時間を従来技術(出力変速比Aの補正なし)に比較してT2からT1まで短縮できる。 【0054】一方、車室内温度TRが設定温度Tset付近まで低下した後は、蒸発器9のフロストを防止するように蒸発器9の冷房能力(冷却度合)が制御される。この冷房能力制御は、具体的には冷凍サイクルRにおいて圧縮機1の吐出容量を増減することにより、行うことができる。 【0055】ここで、圧縮機1の効率は最大容量時に最高になるので、図9に示すように、同一冷房能力に対する圧縮機消費動力は部分容量時(例えば、50%容量時)に比して最大容量時(100%容量時)の方が減少する。 【0056】そこで、車室内温度TRが設定温度Tset付近まで低下した後の能力制御域(定常運転域)には、図6の制御マップを用いて変速比補正値Bを中立値の1.0より小さくすることにより、出力変速比Aを基準変速比A0よりも小さくする方向(トップギヤ側)に補正する。 【0057】このように出力変速比Aを減少側(トップギヤ側)に補正することにより、車両エンジン4の回転数が低くなるので、圧縮機1の回転数も低くなる。これにより、空調の能力制御域に入ってからでも、圧縮機1の吐出容量を最大容量あるいはそれに近い容量に維持できる期間が長くなり、圧縮機消費動力を低減できる。 【0058】また、エンジン4側においても、出力変速比Aを減少側(トップギヤ側)に補正することにより、図10のエンジン性能線図に示す等出力線上でa点からb点(低回転、高トルク域)に運転状態が移行し、エンジン4自体の効率も向上する。 【0059】つまり、空調の能力制御域では、出力変速比Aの減少側への補正により圧縮機消費動力の低減とエンジン4の効率向上を同時に達成でき、エンジン4の燃費を向上できる。 【0060】次に、図11は本第1実施形態における外部可変容量圧縮機1の容量制御の具体例を示すもので、実際の蒸発器吹出温度TEと、目標蒸発器吹出温度TEOとの大小をステップS233、S234で比較して、圧縮機1の吐出容量増減の信号(容量可変装置19の制御電流In)をステップS235、S236で演算する。 【0061】なお、本例では、ステップS235にて、圧縮機吐出容量を増加させるべく制御電流Inを減少させ、一方、ステップS236にて圧縮機吐出容量を減少させるべく制御電流Inを増加させる。 【0062】(第2実施形態)第1実施形態では圧縮機1として吐出容量を連続的に変化させる外部可変容量圧縮機を用いる場合について説明したが、第2実施形態では、圧縮機1として吐出容量を段階的に変化させる外部可変容量圧縮機を用いている。 【0063】図12(a)は第2実施形態による圧縮機1の段階容量制御を示すもので、ステップS2330〜S2333にてTEとTEOとの大小関係を比較して、ステップS2334〜S2336で圧縮機1の大容量信号、小容量信号、および電磁クラッチ2のオフ信号を演算する。これにより、TEの変化に対して、圧縮機1の大容量運転、小容量運転、クラッチオフ(圧縮機停止)が図12(b)のように切替制御される。 【0064】(第3実施形態)第1、第2実施形態では圧縮機1として吐出容量を連続的または段階的に変化させる外部可変容量圧縮機を用いているが、第3実施形態では圧縮機1として吐出容量を変化させない固定容量型圧縮機を用いている。 【0065】図13(a)は第3実施形態による固定容量型圧縮機1のオン、オフ制御を示すもので、ステップS2340〜S2341にてTEとTEOとの大小関係を比較して、ステップS2342、S2343で電磁クラッチ2のオン、オフ信号を演算する。これにより、TEの変化に対して、圧縮機1のオン、オフが図13(b)のように制御される。 【0066】第3実施形態のように圧縮機1として固定容量型圧縮機を用いる場合に、前述の能力制御域(定常運転域)において、出力変速比Aを変速比補正値Bにより基準変速比A0よりも小さくなる方向(トップギヤ側)に補正すると、車両エンジン4の回転数が低くなって、圧縮機1の回転数が低くなることにより、圧縮機1のオン周期が長くなる。これにより、圧縮機1のオン、オフ回数を低減して、オン、オフに伴うショックを低減できる。 【0067】固定容量型圧縮機1を用いる場合は能力制御域での冷房要求度合を表す指標として、図6に記載のように圧縮機1のONーOFF制御時の稼働率あるいは圧縮機1(電磁クラッチ2)のON時間を使用できる。ここで、圧縮機稼働率は、圧縮機ON時間/(圧縮機ON時間+圧縮機OFF時間)であり、請求項7の「圧縮機稼働率に関連する情報」とは上記圧縮機稼働率および圧縮機ON時間を包含する概念である。 【0068】(他の実施形態)なお、図6のステップS131の変速比マップでは、スロットル開度と車速とから基準変速比A0を演算しているが、ディーゼルエンジン車では、アクセル踏み込み量と車速とから基準変速比A0を演算すればよい。 【0069】また、変速比を無段階に自動制御する無断変速機24の代わりに、通常のギヤ式変速機に比してはるかに多段階に変速比を自動制御できる変速機を使用することもできる。 【0070】また、上述の実施形態では、無段変速機24における入力側可変プーリと出力側可変プーリのプーリ幅を油圧機構の油圧(ライン圧)により連続的に変化させるものについて説明したが、油圧機構を必要としない複合ベルト方式の無段変速機に本発明を適用することができる。更に、ベルトを用いないトロイダル方式の無断変速機に本発明を適用することができる。 【0071】また、蒸発器吹出温度TEは蒸発器冷却度合を代表する物理量であるが、蒸発器冷却度合は蒸発器フィン温度、蒸発器配管温度、冷媒蒸発圧力(低圧圧力)に基づいて判定してもよい。 【0072】また、図5では、車室内温度TRと車室内設定温度Tsetとの偏差En’(=TR−Tset)に基づいて冷房要求度合を判定する例を示したが、偏差En’の代わりに、車室内設定温度Tsetだけに基づいて冷房要求度合を判定してもよい。また、外気温TAMは冷房熱負荷に大きな影響を及ぼすので、外気温TAMに基づいて冷房要求度合を判定してもよい。 【0073】また、図1では、電磁クラッチ2のオン、オフ制御を空調用電子制御装置5により行うようにしているが、電磁クラッチ2のオン、オフ制御をエンジン用電子制御装置22により行うようにしてもよい。 【0074】また、空調用電子制御装置5、エンジン用電子制御装置22および変速機制御装置23をそれぞれ独立に構成せずに、これら制御装置5、22、23を1つの装置に一体化してもよい。 【0075】また、空調装置の構成も図1に示すものに限定されることなく、種々変形可能であり、例えば、車室内への吹出空気温度を調節する温度調節手段として、冷温風の風量割合を調節するエアミックスドア14の代わりに、温水式ヒータコア12の温水流量を調節する温水弁を用いてもよい。また、冷凍サイクルRも、受液器7の代わりに、圧縮機吸入側にアキュムレータを配置するアキュムレータサイクル等であってもよいことはもちろんである。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004260 【氏名又は名称】株式会社デンソー
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| 【出願日】 |
平成11年10月14日(1999.10.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100100022 【弁理士】 【氏名又は名称】伊藤 洋二 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−108086(P2001−108086A) |
| 【公開日】 |
平成13年4月20日(2001.4.20) |
| 【出願番号】 |
特願平11−292606 |
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